<ミステリーツアー>2.降り立った先は…?!
「誰ですか?!!」
視界がはっきりしてくると目の前に広がる光景に慌ててしまった
視界いっぱいにやわらかそうな色艶のいい大きなおっぱい…
胸元を強調するように大きく開いた黒い服
その服からはみ出るようなふくらみ…
谷間はこんなにもはっきりとした影を…
「お目覚めになられましたか?」
落ち着くような清んだ声に視線を上へと移すと、鮮やかな赤い唇とすっと伸びる鼻…そして、ワインのように澄んだ赤い瞳が見えた
「え?あ?ええ?!・・・っ!ああっ!!はい!…はい大丈夫です!!」
その瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚えて取り乱した
「慌てずとも…。さぁ、落ち着いて?」
その人のだろうか?すべすべとした手が頬を撫でる
「?!いやっ!はい!大丈夫ですっ!・・・いや!本当に大丈夫です!!」
頭がついて行かない。何故か気が動転して心臓がバクバクいっている
落ち着こうと深く息をしようとするのだが、その人から漂う甘い香りを吸うたびに頭がぼぅっとしてきてそれだけで慌ててしまう
「もうっ。落ち着いてくれないと説明が出来ないじゃないですか」
ぷくっと頬を膨らましてそういったその人…なんだか可愛らしかった
「いや!本当に大丈夫なのでっ!…離れてもらえますか?!」
なんとかそう口に出来たが…
「仕方ないですねぇ…」
その人は、ちょっと考える素振りをすると、怯える子供をあやすようにその胸で私の頭を包み込んだ
「え?!いやっ!!あの…」
ますます慌ててその胸から逃れようとする私をしっかりとその腕で抱きしめる
「しーーー。落ち着いてくださいな。慌てることはないのですよ?」
ますます甘い香りが強くなる
その匂いが肺を満たす…と、頭がだんだんぼうっとしてきて気持ち良くさえなってくる
いつしか、すがるように頭を預けていた
やさしく頭を撫でる感触・・・あったかな人肌の温もり……落ち着く…
すっかり、体の力が抜けたのを確認したようでその人は静かに抱きしめるのをやめてくれた
「ふふ。こんにちは」
「…こんにちは」
「わたしは、ララノアと申しますよろしく」
「ララノアさんですか。私は、深井 秀樹と申します・・・。あなたはガイドさんですか?」
ぼうっとした頭のまま訪ねる
「はい。今日そして明日。このツアーのガイドをさせていただきます」
そう言うと、少し頭を下げた。つられて頭を下げると彼女の腰あたりにもあのバッチが見えた
「立てますか?」
その声で、はじめて自分の今の体勢に気が付いた
尻餅をついたように地面に転がっていた…情けない格好に慌てて立とうとすると手を貸してくれた
「大丈夫です・・・あっ…ありがとうございます」
「ふふっ。さて、これでようやく説明ができますわ」
「申し訳ない…」
改めて、彼女を見る
やはり、刺激的に大きく前の開いた服と大きな胸元に目が行く
次に、顔…
銀髪なのか白髪なのか…つやつやとして触って撫でたくなるようなサラサラの髪の毛を腰くらいまで伸ばしていて、この人も角みたいなものをつけていた。耳は映画のエルフみたいに尖っていて、後ろ…腰あたりに白い翼を…そして、白いしっぽみたいなものをつけている
…MIKの人はコスプレでの接客が流行っているのだろうか?
コスプレが気になる…ということを除けば間違いなく美人だ
そんなことを考えていると・・・
「・・・深井様?聞いておられますか?」
「え?!・・・すみません。まったく聞いていませんでした」
「もう!仕方がないですね!いいですか?これからまず最初の目的地、牧場に行きます。その際、決して赤いものを持っていてはいけませんよ?それと、言われたこと以外はしないでくださいね?襲われても知りませんからね?」
「は?襲われる?そんなに危険なところなのですか?」
「それと、ツアーの日程を楽しめなくなってもいいほどそれが好きになってしまった…もしくは、好きなのでしたら止めるなんて事はしません。むしろ、すべてを愛してあげてくださいとしか言えませんが・・・」
なんのことかまったく分からない。含みを持ったその言い方に疑問が湧くだけだった
「?・・・ガイドさん?さっきからなんのことなのですか?」
「・・・いえ。今のところ、説明できるのはこのくらいです。ツアーやわたしが語る“危険”についてのご説明をご理解いただくのは牧場へと着いてからに致しましょう。さぁ、魔方陣の中心へとお進みください」
「あの、さっきから理解できないことが・・・魔法陣ってこの床に書いてある丸い円のことですよね?そういえば、あのアパートの部屋からどうやってあなたの所へと来れたのかもまだ説明を受けていないし・・・ここはどこなんでしょう?」
やっと気が付いたかのように辺りを見回したけれど、見えるこの部屋はアパートの一室とは到底思えない
相変わらず暗い。でも、やたら広いし黒いタイル張りのような部屋で部屋の隅には小さな蝋燭の明かりが揺らめいていた
「・・・」
ガイドさんは、私の前に向かい合わせに立つと片手を宙に出して何事かぶつぶつと言っている
と・・・あの時のように床が光り始め!
ガイドさんのもう片方の手が私の腰を抱きしめた・・・
「あえ?」
驚愕に目を見開いた途端に目の前が真っ白になった・・・
「・・・さま」
誰かが呼んでいる
「ふ・・・さま」
前にも同じような・・・
「深井様!」
「・・・あれ?ガイドさん??」
どうやら気を失っていたみたいだ・・・
暗い室内と打って変わって外の光が目に入った
「さぁ、大変お待たせいたしました。目的地のエルリード牧場です」
牧場・・・
その言葉に、周りを見渡すと目の前にガイドさん・・・
その向こう・・・
一面の緑の草原が広がっていた
「ぁ 」
茫然自失…あいた口が塞がらないとはこのことを言うのだろうか?
さっきは薄暗い部屋にいたというのに、目の前の光景は・・・
雲が多く曇りがちな空…緑の草原…少し離れた所に石造りの家が見える
まんま、どこかの牧場だった
「では、牧場主さまをお呼び致しますね?」
ガイドさんはとっとと家の中へと入っていった
しばらくして、誰かを伴って出てきた
二人の男女・・・
この牧場をやっているというエルリード夫妻だという
旦那さんはいかにも牧場の人らしく浅黒く日に焼けごつごつとした手をした体のがっしりとした人だった
恐そうな人ではなく寧ろやさしそうな笑顔がよく似合う人だった
奥さん…は、すごい人だった。何って胸が…
シャツがはちきれそうなほどの大きさのものがそこに納まっていた
冬瓜…いや…スイカ…もっと大きいだろうか?
なんか、頭に牛の角みたいなものと牛のしっぽみたいなものを着けているし
それにしても…大きい。ガイドさんも大きいが…比べられない
・・・何を考えているんだ!二人の女性の胸を見比べてしまったのを恥じた
でも、二人とも胸を凝視してしまったことをなんとも感じていないかのようにニコニコとしている
「うちのヤツの胸は大きいだろ?」
旦那さんもそんな様子に満足したらしくニコニコと話しかけてくれた
「はい・・・。なんていうか、ここまで大きいのは…」
「初めてか。なら、うちの・・・も満足してもらえっかな?」
「きっと満足してもらえるわよ。うちらの自慢なんですもの…」
彼らは、そう頷き合うと準備があるからと言って家の中へと入っていった
「ガイドさん?一体何を?もしかして?」
牧場といえば・・・牛・・・そして乳搾りだが・・・まさかあの奥さんの?!
私も若い男…ありえないことを想像してしまう…
「そう♪お約束の乳搾りです♪緊張しますとそれが牛さんにも伝わってしまいますから気持ちを楽にネッ♪」
普通の牛らしい。なんだか残念のようなほっとしたような…複雑な気分だ
「準備にお時間が掛かってしまいますから、深井様は少しの間散歩なさってはいかがでしょうか?」
「・・・」
草原を見渡す。確かにのんびりとのびのびできそうだ
「わかりました。少し散歩してみます・・・」
ガイドさんは様子を見に行くといって行ってしまった
膝位の牧草が緩やかな風に揺れている
向こうの方では、牛が日向ぼっこをするように腰を下ろしていて実にのほほんとしていた
彼らの近くには犬もいて、横になっている牛の背で一緒になって横になっているのがここからでもよく見えた
「ふわぁ・・・」
都会の汚い空気と違って、いっぱいに吸い込むだけで肺が満たされるような濃い空気だった
相変わらず、空は曇っているが…
草原の開放感
時計などいりもしないゆっくりとした時の流れ…
人工的で耳障りな音もまったくせず、風と草が揺れるのみの音がするこの牧場にリラックスしてしまっていた
腰を下ろす
牧草のいい香りがする
このなにもないのどかさが心を落ち着かせてくれる
時間に追われ、仕事に追われ…いつの間にか自分が本当に生きたい方向へと生きていたかも疑問に思う毎日・・・
せめて、今の時だけは・・・
「ふぅ・・・」
手足を投げ出し・・・横たわる
風の音が子守唄となって目の前がまどろみに包まれていく・・・
いつしか眠りへと落ちていってしまった
「深井さま〜…?深井さま〜!準備が整いましたのでこちらへ〜」
遠くで呼ばれている声がした…
「深井さま〜?あ・・・」
近くに誰かの気配・・・
「ふふ。よく眠っています」
顔を覗き込まれているような気がする
「本当にのびのびと寝てらっしゃる・・・起こすのが可哀相ですわ・・・でも・・・深井さま〜・・・」
あの澄んだ声が聞こえた
「・・・あれ?ガイドさん?・・・はふぅ・・・おはようございます」
「はい。おはようございます。よく眠っていらっしゃいましたね」
「・・・こんなにリラックスしたのは久しぶりです。準備が出来たんですね?じゃぁ、待たせるわけにも行かないし…行きましょう」
「はい」
ガイドさんについていく
少しの間だったが・・・本当にのびのびと落ち着いた時間だった
名残惜しい・・・そんな気がした
石造りの家の前には、小さなテントのようなものがあつらえてあった
ここからでは牛の姿は確認できない
中に入るように勧められたので、入ってみることにする
・・・
中は狭かく、低かった
身を屈めてその中へと入る
小さな椅子がありそこに座る
ふにょん・・・
心地いいクッションみたいなものが頬にあたった
足元ばかりに気を取られていてすぐ横にあるものに気づかなかった
「え?!」
天井の板から何かがぶら下がっていた
白い袋に入ったもの・・・
テントの外に夫妻の姿が見えた
「深井さん。俺達夫婦の自慢のコだ。きっと気に入ってくれるって信じているぞ」
「味も絶品よ。気に入ったらもらってあげてね!」
自慢のコ?もらってあげる?
牛のことだよなぁ・・・
「んじゃ、いくべ!」
旦那さんは、そう言って白黒の袋を外した
「あっ・・・」
こっこれは・・・
桃色の色艶のいい乳房がぶら下がっている・・・
牛?の乳房・・・?
どこかの牧場で絞っているのを見た事があるが…こんな形の乳ではなかったような気がする
どうみても人のそれ・・・でも、ここまで大きいのは・・・
いや、奥さんのそれも唖然とするほどのものだった
ならば、これは?!
「触ってやってください」
その言葉に我に返って恐る恐る両手で掬い上げるように手に持ってみた
「あ・・・温かい…」
人肌くらいのあたたかさ
すべすべとしていてさわり心地は…最高
自然と揉みたくなる柔らかさ…
『あ・・・ん・・・』
「?!」
今・・・頭の上から色っぽい声が…小さかったけど…やっぱり牛じゃない?!
今度は慎重に揉んでいく
大きな水風船のような重さとスポンジかマシュマロのような感触にいつしか夢中になって揉んでいた
「深井さん。揉むだけでなくて今度は、乳を搾ってやってくれな。んで、このコの味を愉しんで欲しいんだ」
乳の搾り方を教えてもらう
乳房から乳首へと押し出すように・・・と教わり…
「恐る恐るだと痛くなっちまうからなるべくそうしないでやってくれ。あと、リズムよくするとこのコもイイと思うはずさ」
覚悟を決めて搾る
ぴゅっ!…ぴゅぅっ!
『あはぁ…♪』
艶かしい声に心が跳ねる。この牛はどんなコなのだろうか…
いつの間にか手が慣れたのか
ぴゅーっ!ぴゅーっ!と搾れるようになっていた
搾ると気持ちよさそうな声がする
その声がもっと聞きたくて搾る手を止められない
しばらくして・・・
「大分貯まったようなのでそろそろ、その味を味わってみてください」
奥さんの声にまたまたはっとした・・・
乳を受けていた瓶の乳をマグに注ぐ
「・・・」
目を瞑ってその匂いを嗅ぐ
そこらの店で売っている牛乳しか知らない私だが…牛乳臭くなく甘くてやさしい匂いがした
飲んでみる
「おおお!」
甘い…しつこくなくまろやかな口当たりで後味はさっぱりとしているのにとても濃厚だ
後を引く…
飲んでも飲んでもまた飲みたくなる…
こんな牛乳は初めてだ
気が付けば・・・瓶の中の乳を飲み干していた
「・・・あっ」
「うまかったかい?」
「とても!こんなうまいのは初めてです」
「そうかい。よかったらそのまま口につけて飲んでもいいんだよ?」
「本当ですか?!」
白く美しい…それでいて大きな乳房…顔を埋めてみたくなるような…
それが目の前にある
思わず鼻息が粗くなる
粗い息が当たるのがわかるのか、その乳房は少し揺れている。赤く充血した乳首は誘うかのようにひくひくと震えている
思わずむしゃぶりついた
『あっ?!やん!!』
びくっと一瞬したが・・・すぐに吸い付くとまた甘い声を出し始めた
『あ・・・ん…そんな…勢いよく吸っちゃ・・・ああ…ん』
口の中のこりこりっとした乳首の感触
『ん…はぁぁ…んっ!乳首そんなかんじゃっ…だめぇ…ああ…ん…』
顔いっぱいに圧し掛かるような乳房の重さ…
至福とはこういうことを言うのだろうか?
あとからあとから喉を潤す乳…飲んでも飲んでも湧き出すように口の中に溜まって行く
『もうひとつのおっぱいもぉ・・・』
もうひとつの乳も搾ってという意味だったのかもしれないが、私にはもう一つも吸って欲しいという意味と受け取った
もう一つの乳首も一緒に口へと入れる
『ああっんっ…ふたつともいっぺんに♪』
乳首をあまがみして刺激してやるとさっきよりももっと多くの乳が溢れてきた
「あっ溢れっ!ん・・・ん・・・うん…うまい・・・止まらない!止めたくない!!」
『あん♪吸ってる・・・いっぱい♪いっぱいすってくれてるよぅ♪♪♪』
無我夢中でむしゃぶりついていた私に満足したのか旦那さんが言った
「深井さん。わたし達の自慢のコに直に会ってみるかい?」
「え?」
…この美しくおいしい乳を持つコと顔を合わせてみないかという・・・
「・・・お願いします」
一瞬の躊躇の後どんなコなのか興味もあったので顔をあわせてみる事にした
テントを取り払うと・・・机のようなものに寝そべる女の子?がいた
「っ!?」
やはり、牛ではなかった。そんなもう分かりきっていたことにショックを受けながらまじまじと観察した
だぶついたズボンのようなものを穿いている。…が、足は白黒のストッキングのようなものを穿いていた
尻には牛のしっぽのようなものがあって・・・ぱたぱたと動いていた
「ハンナ?深井さんよ。起きてご挨拶なさい」
ハンナと呼ばれた少女?は起き上がりこっちを見た
「あっ!?」
顔を見て心が躍った
クリクリの眼つきが可愛らしいその子は、驚いた顔をしてから満面の笑顔をしたのだ
「エルリード牧場にようこそ!わたしはそこの両親の娘でハンナといいます。少しでもこの牧場の役に立ちたくてこんな企画をしちゃいました」
えへへと笑う女の子・・・その笑顔にまったくいやらしさはない
「・・・」
「フカイさん?きょとんってしちゃってどうしたの?」
「あっ・・・い、いや・・・ぁ・・・」
「あーもしかして、ハンナのこと子供とか思っているんでしょ」
「・・・あ・・・あの・・・ガイドさん」
「はい?」
「私・・・この娘のおっぱい吸っちゃったんですけど・・・」
「そうですねぇ」
「いや、“そうですねぇ”じゃなくて!いいんですか?まさか美人局なんてことじゃ・・・」
「つつもたせって何〜?フカイさん」
「…なんだろうね。あはっあはははは…」
目の前が急速に真っ暗になっていく・・・
なんてことをしてしまったんだ?
常識的に考えてもおかしいだろこれ…
「深井様?これもツアーの1イベントですよ?何と勘違いなさっているかはわかりませんが、お気を確かに」
「そうなんですか…これも1イベントなんだ…。イベント?!ちょっと待ってください!ツアー企画とは言え、知らない男に胸絞らせて、乳まで吸わせる奴がどこにいるんですか!」
「んふふ〜ここにいますよ〜♪」
「深井さんさえ気にいってくれたらいいんだ。娘だって誰にでも触らせたりしないさ。お前さんを気に入ったからこそ触ってもらってもいいって思ったんだ。深井さん、だから決して美人局なんていうことじゃないんだ」
夫妻そろっての言葉に仰天した
「フカイさん・・・ありがとうございます。ハンナこと心配てくれたのね?でも・・・誰にでもこんなことさせないよ?あなたにいい旅をしてほしいからこうしたの・・・」
「だからといって、そんな大事なことを…」
「わたしは魔物だからそんなこと気にしないよ?…するけど…気にしないよ?」
ちょっと待て…今なんて言った?
“魔物”?
まもの・・・ってなんだ?
「・・・あの…」
「はい?なんでしょう深井様」
「…まもの…ってなんでしょう?」
一同を見渡すが…言っている意味が分からなかったらしい
「「「?」」」
皆が何を言っているんだ?という顔をした
やがて思い出したようにガイドさんが言った
「ああ!失念していましたわ!深井さんにはこの世界のことと、わたしたち魔物についての説明をしていませんでした。奥様とかハンナちゃんを見ても普通にしてらっしゃるんで…忘れていました」
うっかりしていたというようにペロッと舌を出したガイドさん
「ねぇおとーさん。魔物を知らない人っているの?」
「いるもんなんだなぁ…どっかの世界からやって来たとは聞いたが…魔物がいない世界なのかな?」
「あらあら。知らないんだったら知ればいいのよ〜。深井さん〜こっちにいらっしゃいな〜」
奥さんのほわほわっとした言い方にふらふらと近づくと、突然抱きしめられた
「おっ奥さん?!何を?!!」
「おかーさん!」
「ハンナもいらっしゃい〜?」
「うん」
ハンナちゃんといっしょにその胸で抱きしめられて
のほほんとした声が聞こえてきた
「わたしたちは〜まものって呼ばれてます」
「はぁ」
「人ではないんです〜」
「…? そうなんですか?」
「はい〜」
「・・・」
「むかしは〜恐れられていました〜。でもぉ、わたしたちをみて〜、おそろしいですかぁ?」
「こわい?」
ハンナちゃんも目の前で私の顔をじっと見ながら言った
「・・・ぜんぜん。むしろ…かわいい」
「ありがとう!フカイさん!」
抱きつくハンナちゃん
奥さんのおっぱいとハンナちゃんに抱きつかれて極楽気分に浮かれてしまう…
「ふふふふ・・・このまま、ハンナのお婿さんになってくれないかしら…」
「え?何か言いました?」
「ふふふっ…なんでも〜ないですよぉ」
耳がおっぱいで塞がっていたからなんと言ったのか聞き取れなかった
ハンナちゃんは赤い顔をして意味深な顔をしてこちらを見ていた
「なんだろう?」
「なんでもないよ?フカイさん。それより、わたしたちまものは人のことが大好きなの♪わかった?」
「そうなのか…でも、いまいちわからない」
「では、それからの説明はわたしが承りますわ」
微笑ましそうに見守っていたガイドさんが口を開いた
聞いたかぎりでは、その内容はどこかで聞いた話しだった。けど、途中から興味深いものとなった
魔王がいて、人と当然のように殺しあってた。でも、ある日魔王が交代した。サキュバスに…
その影響で、魔物という存在は女しかいなくなり、男がいなくなった
サキュバスは、好色な性格。人を見れば男であろうが女であろうが交わろうとするもの
“精”と言っている生命エネルギーを食べ物としていて、精は男しか作り出せないから魔物は男を誘惑するようになった…
子を成す為にも、増して男の存在が不可欠となった…とまぁ要約すればこんな感じらしい
「わかりましたか?」
「…なんとなく。…だから襲われるって言っていたのか。でも、奥さんとかハンナちゃんとかに襲われているわけじゃないし?ガイドさんだって見るからに魔物って人なんでしょう?なら…」
「深井様。そのバッチをなぜ肌身離さずと言っているかわかりますか?」
「これ?」
MIKと書かれた500円玉くらいのバッチ。なんの変哲のないモノに見えたが…何か仕掛けがあるのだろうか?
「そう。それにはいろいろな術が施されております。例えば…」
・魅了などの誘惑系の魔法や石化などの身に危険をもたらす術から身を守る術
・人が高い魔力が漂っている・もしくはその身に受けた場合インキュバスと言う存在になってしまうためにそうならないように魔力を弾く防御の術
・自己の精神の昂りを押さえ、冷静にするための術
などなど・・・が施されているらしい
「深井様は、ご旅行中。まだ、ご自宅へと帰る必要があるのですからこれらに対する備えが必要なのですわ」
「これがなかったら?」
「最初に、わたしが深井様を見た途端に襲っていたでしょう…」
ガイドさんが舌なめずりするようにペロッと舌を出してみた
「…?!」
何か…ぞくりと背筋を通り抜けて行った
「それと、男を確保した魔物は他の男に見向きしなくなりますの」
「そうなんですか。じゃあ、寄ってくるのは相手がいない魔物さんということになるのですか?」
「はい。先ほど魔力を受けるとインキュバスになってしまうと言いましたが、男を獲得した魔物は相手に自分の魔力を注ぐのです。だから、注がれた男は誰かのモノ…誰かいい人がいるってわかりますの」
「そうなんですか…マーキングみたいなものか…」
「その習性を利用して、そのバッチにはわたしの魔力が微量に含まれているのです。だから、襲われることはないですけどね」
「ふぅ。魔界か…すごいツアーがあったもんだ」
「フカイさん。わたしたちは人と仲良くなりたいの。むかしみたいに争いなんてしたくないの…」
「ハンナちゃん…大丈夫だよ。私だって争いは好きじゃない。むしろ、仲良くなりたいと思う」
「仲良くしてくれる?」
「もちろん!」
「よかったぁ」
腰に抱きついて無邪気に見上げるハンナちゃん…ええ娘や…
こんな可愛い娘と仲良く出来るなんて…
「ちなみに、ハンナちゃんは牛さん?」
「うん!ほるすたうろすっていうの」
「ふ〜む。そうなのか」
「みのたうろすっていう牛さんを知ってる?」
「ああ。聞いたことがあるな。気性が激しくて力持ちだったっけ?」
神話だかゲームだかで出てくる怪獣だ
「わたしたちは、みのさんと同じ先祖を持っているの。でも、力ずくで人を襲うのではなくて、人といっしょに仲良くやろうって思った種なの」
そうなのか。だから、襲おうともしないんだ
奥さんやハンナちゃんのほわわんとした雰囲気はそこからきているんだ
ホルスタウロスについて教わっていると、奥さんと旦那さんの元気な声が聞こえてきた
「さぁ!深井さん!お昼にしよう!」
「うちで〜獲れた〜新鮮なお肉の数々と〜わたしたちの〜お乳で作った〜ものよ〜」
「フカイさん!食べて?たくさんあるから!」
「おっ!じゃあ遠慮なく!
夫妻とハンナちゃんの出してくれた昼ごはん・・・
とてもおいしかった
のどかな牧場とそこで育まれた食べ物…そして、二人のお乳で作った乳製品…
「は、はは。いや〜どれもおいしいです〜。それに、こんなにものんびりとゆったりとした時間を過ごすのは久しぶりでよかったです。来た甲斐がありましたよ」
「そうかい?よかったなぁ。ここはいつでものんびりと出来るし、うちの婿になればいつでもこういうのが食べられるぞ〜?」
「わたしも〜そろそろ息子がほしいわぁ」
「え?!」
「もう!おかーさん!!」
思わずハンナちゃんと顔を見合わせてしまう…
とたんに、真っ赤になってしまった…
「・・・」
「ははははっ!旅の終わりにでも考えておいてくれや!深井さんならいつでも歓迎だぞ〜!息子よ!!」
「深井さん〜?いつでも〜“お母さん”って呼んでいいのよ〜!」
盛り上がる二人…
今の私はどんな顔をしているのだろうか?
隣に座るハンナちゃんは…顔が真っ赤だ
うつむいてもじもじとしてる
しっぽがぱたぱたと動いている様が、また微笑ましかった
そんな様子に思わず頭を撫でてしまう
「ハンナちゃん…」
「フカイさん…」
「…なんて言っていいか」
「うん」
「その…」
「うん」
「………ふわぁ…」
何かを言おうとしたけど、口から出たのは欠伸だった
「眠いの?」
「…いっぱい食べたから…」
「ふふふ…じゃぁ…」
そう言って自分の太ももをぽんぽんと叩くハンナ
「え?いいの?」
「ん。フカイさんなら…」
「…じゃぁ、失礼します」
お言葉に甘えて横になるとすばらしいかった
ふともものやわらかさと、おおきなおっぱいがやさしく包み込んでくれたのだ
「どう?」
「グッジョーブ!」
そのまま、まどろみに包まれて幸せな時間を過ごしたのであった
楽しい時間はあっという間に過ぎていく
牧場に来たのだし放牧の様子でも見せてもらおうとしたら、呼び止められた
「深井さま?大変申し訳ありません。そろそろ、次の目的地、植物園への移動時間となってしまいました」
「え?あ…そうなんですか?」
「…はい」
ハンナちゃんを見れば今にも泣き出してしまいそうな顔をしている
「フカイさん。また会えるよね?」
精一杯の笑顔でそう言った彼女の瞳は、どんどん涙が溜まってきている
「ああ。絶対来る!どんな形になろうとも絶対来るよ!」
「うん…うん!絶対だよ!」
「絶対だ!」
ぎゅっと抱きしめる
この旅がどんな形で終わることなろうともまた、彼女に会いに来ようと思うのだった
旅は、出会いあれば別れあり…
優しき夫婦と可愛いハンナ。見送りにこれでもかと手を振っている
こちらも、それに答えて手を振り返す
草原には、ガイドさんの魔方陣。眩しく目がくらむまで私は彼女達に手を振り続けた
そうして、彼女の泣き笑いを心に留め私達は次の目的地へと飛んで行った
視界がはっきりしてくると目の前に広がる光景に慌ててしまった
視界いっぱいにやわらかそうな色艶のいい大きなおっぱい…
胸元を強調するように大きく開いた黒い服
その服からはみ出るようなふくらみ…
谷間はこんなにもはっきりとした影を…
「お目覚めになられましたか?」
落ち着くような清んだ声に視線を上へと移すと、鮮やかな赤い唇とすっと伸びる鼻…そして、ワインのように澄んだ赤い瞳が見えた
「え?あ?ええ?!・・・っ!ああっ!!はい!…はい大丈夫です!!」
その瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚えて取り乱した
「慌てずとも…。さぁ、落ち着いて?」
その人のだろうか?すべすべとした手が頬を撫でる
「?!いやっ!はい!大丈夫ですっ!・・・いや!本当に大丈夫です!!」
頭がついて行かない。何故か気が動転して心臓がバクバクいっている
落ち着こうと深く息をしようとするのだが、その人から漂う甘い香りを吸うたびに頭がぼぅっとしてきてそれだけで慌ててしまう
「もうっ。落ち着いてくれないと説明が出来ないじゃないですか」
ぷくっと頬を膨らましてそういったその人…なんだか可愛らしかった
「いや!本当に大丈夫なのでっ!…離れてもらえますか?!」
なんとかそう口に出来たが…
「仕方ないですねぇ…」
その人は、ちょっと考える素振りをすると、怯える子供をあやすようにその胸で私の頭を包み込んだ
「え?!いやっ!!あの…」
ますます慌ててその胸から逃れようとする私をしっかりとその腕で抱きしめる
「しーーー。落ち着いてくださいな。慌てることはないのですよ?」
ますます甘い香りが強くなる
その匂いが肺を満たす…と、頭がだんだんぼうっとしてきて気持ち良くさえなってくる
いつしか、すがるように頭を預けていた
やさしく頭を撫でる感触・・・あったかな人肌の温もり……落ち着く…
すっかり、体の力が抜けたのを確認したようでその人は静かに抱きしめるのをやめてくれた
「ふふ。こんにちは」
「…こんにちは」
「わたしは、ララノアと申しますよろしく」
「ララノアさんですか。私は、深井 秀樹と申します・・・。あなたはガイドさんですか?」
ぼうっとした頭のまま訪ねる
「はい。今日そして明日。このツアーのガイドをさせていただきます」
そう言うと、少し頭を下げた。つられて頭を下げると彼女の腰あたりにもあのバッチが見えた
「立てますか?」
その声で、はじめて自分の今の体勢に気が付いた
尻餅をついたように地面に転がっていた…情けない格好に慌てて立とうとすると手を貸してくれた
「大丈夫です・・・あっ…ありがとうございます」
「ふふっ。さて、これでようやく説明ができますわ」
「申し訳ない…」
改めて、彼女を見る
やはり、刺激的に大きく前の開いた服と大きな胸元に目が行く
次に、顔…
銀髪なのか白髪なのか…つやつやとして触って撫でたくなるようなサラサラの髪の毛を腰くらいまで伸ばしていて、この人も角みたいなものをつけていた。耳は映画のエルフみたいに尖っていて、後ろ…腰あたりに白い翼を…そして、白いしっぽみたいなものをつけている
…MIKの人はコスプレでの接客が流行っているのだろうか?
コスプレが気になる…ということを除けば間違いなく美人だ
そんなことを考えていると・・・
「・・・深井様?聞いておられますか?」
「え?!・・・すみません。まったく聞いていませんでした」
「もう!仕方がないですね!いいですか?これからまず最初の目的地、牧場に行きます。その際、決して赤いものを持っていてはいけませんよ?それと、言われたこと以外はしないでくださいね?襲われても知りませんからね?」
「は?襲われる?そんなに危険なところなのですか?」
「それと、ツアーの日程を楽しめなくなってもいいほどそれが好きになってしまった…もしくは、好きなのでしたら止めるなんて事はしません。むしろ、すべてを愛してあげてくださいとしか言えませんが・・・」
なんのことかまったく分からない。含みを持ったその言い方に疑問が湧くだけだった
「?・・・ガイドさん?さっきからなんのことなのですか?」
「・・・いえ。今のところ、説明できるのはこのくらいです。ツアーやわたしが語る“危険”についてのご説明をご理解いただくのは牧場へと着いてからに致しましょう。さぁ、魔方陣の中心へとお進みください」
「あの、さっきから理解できないことが・・・魔法陣ってこの床に書いてある丸い円のことですよね?そういえば、あのアパートの部屋からどうやってあなたの所へと来れたのかもまだ説明を受けていないし・・・ここはどこなんでしょう?」
やっと気が付いたかのように辺りを見回したけれど、見えるこの部屋はアパートの一室とは到底思えない
相変わらず暗い。でも、やたら広いし黒いタイル張りのような部屋で部屋の隅には小さな蝋燭の明かりが揺らめいていた
「・・・」
ガイドさんは、私の前に向かい合わせに立つと片手を宙に出して何事かぶつぶつと言っている
と・・・あの時のように床が光り始め!
ガイドさんのもう片方の手が私の腰を抱きしめた・・・
「あえ?」
驚愕に目を見開いた途端に目の前が真っ白になった・・・
「・・・さま」
誰かが呼んでいる
「ふ・・・さま」
前にも同じような・・・
「深井様!」
「・・・あれ?ガイドさん??」
どうやら気を失っていたみたいだ・・・
暗い室内と打って変わって外の光が目に入った
「さぁ、大変お待たせいたしました。目的地のエルリード牧場です」
牧場・・・
その言葉に、周りを見渡すと目の前にガイドさん・・・
その向こう・・・
一面の緑の草原が広がっていた
「ぁ 」
茫然自失…あいた口が塞がらないとはこのことを言うのだろうか?
さっきは薄暗い部屋にいたというのに、目の前の光景は・・・
雲が多く曇りがちな空…緑の草原…少し離れた所に石造りの家が見える
まんま、どこかの牧場だった
「では、牧場主さまをお呼び致しますね?」
ガイドさんはとっとと家の中へと入っていった
しばらくして、誰かを伴って出てきた
二人の男女・・・
この牧場をやっているというエルリード夫妻だという
旦那さんはいかにも牧場の人らしく浅黒く日に焼けごつごつとした手をした体のがっしりとした人だった
恐そうな人ではなく寧ろやさしそうな笑顔がよく似合う人だった
奥さん…は、すごい人だった。何って胸が…
シャツがはちきれそうなほどの大きさのものがそこに納まっていた
冬瓜…いや…スイカ…もっと大きいだろうか?
なんか、頭に牛の角みたいなものと牛のしっぽみたいなものを着けているし
それにしても…大きい。ガイドさんも大きいが…比べられない
・・・何を考えているんだ!二人の女性の胸を見比べてしまったのを恥じた
でも、二人とも胸を凝視してしまったことをなんとも感じていないかのようにニコニコとしている
「うちのヤツの胸は大きいだろ?」
旦那さんもそんな様子に満足したらしくニコニコと話しかけてくれた
「はい・・・。なんていうか、ここまで大きいのは…」
「初めてか。なら、うちの・・・も満足してもらえっかな?」
「きっと満足してもらえるわよ。うちらの自慢なんですもの…」
彼らは、そう頷き合うと準備があるからと言って家の中へと入っていった
「ガイドさん?一体何を?もしかして?」
牧場といえば・・・牛・・・そして乳搾りだが・・・まさかあの奥さんの?!
私も若い男…ありえないことを想像してしまう…
「そう♪お約束の乳搾りです♪緊張しますとそれが牛さんにも伝わってしまいますから気持ちを楽にネッ♪」
普通の牛らしい。なんだか残念のようなほっとしたような…複雑な気分だ
「準備にお時間が掛かってしまいますから、深井様は少しの間散歩なさってはいかがでしょうか?」
「・・・」
草原を見渡す。確かにのんびりとのびのびできそうだ
「わかりました。少し散歩してみます・・・」
ガイドさんは様子を見に行くといって行ってしまった
膝位の牧草が緩やかな風に揺れている
向こうの方では、牛が日向ぼっこをするように腰を下ろしていて実にのほほんとしていた
彼らの近くには犬もいて、横になっている牛の背で一緒になって横になっているのがここからでもよく見えた
「ふわぁ・・・」
都会の汚い空気と違って、いっぱいに吸い込むだけで肺が満たされるような濃い空気だった
相変わらず、空は曇っているが…
草原の開放感
時計などいりもしないゆっくりとした時の流れ…
人工的で耳障りな音もまったくせず、風と草が揺れるのみの音がするこの牧場にリラックスしてしまっていた
腰を下ろす
牧草のいい香りがする
このなにもないのどかさが心を落ち着かせてくれる
時間に追われ、仕事に追われ…いつの間にか自分が本当に生きたい方向へと生きていたかも疑問に思う毎日・・・
せめて、今の時だけは・・・
「ふぅ・・・」
手足を投げ出し・・・横たわる
風の音が子守唄となって目の前がまどろみに包まれていく・・・
いつしか眠りへと落ちていってしまった
「深井さま〜…?深井さま〜!準備が整いましたのでこちらへ〜」
遠くで呼ばれている声がした…
「深井さま〜?あ・・・」
近くに誰かの気配・・・
「ふふ。よく眠っています」
顔を覗き込まれているような気がする
「本当にのびのびと寝てらっしゃる・・・起こすのが可哀相ですわ・・・でも・・・深井さま〜・・・」
あの澄んだ声が聞こえた
「・・・あれ?ガイドさん?・・・はふぅ・・・おはようございます」
「はい。おはようございます。よく眠っていらっしゃいましたね」
「・・・こんなにリラックスしたのは久しぶりです。準備が出来たんですね?じゃぁ、待たせるわけにも行かないし…行きましょう」
「はい」
ガイドさんについていく
少しの間だったが・・・本当にのびのびと落ち着いた時間だった
名残惜しい・・・そんな気がした
石造りの家の前には、小さなテントのようなものがあつらえてあった
ここからでは牛の姿は確認できない
中に入るように勧められたので、入ってみることにする
・・・
中は狭かく、低かった
身を屈めてその中へと入る
小さな椅子がありそこに座る
ふにょん・・・
心地いいクッションみたいなものが頬にあたった
足元ばかりに気を取られていてすぐ横にあるものに気づかなかった
「え?!」
天井の板から何かがぶら下がっていた
白い袋に入ったもの・・・
テントの外に夫妻の姿が見えた
「深井さん。俺達夫婦の自慢のコだ。きっと気に入ってくれるって信じているぞ」
「味も絶品よ。気に入ったらもらってあげてね!」
自慢のコ?もらってあげる?
牛のことだよなぁ・・・
「んじゃ、いくべ!」
旦那さんは、そう言って白黒の袋を外した
「あっ・・・」
こっこれは・・・
桃色の色艶のいい乳房がぶら下がっている・・・
牛?の乳房・・・?
どこかの牧場で絞っているのを見た事があるが…こんな形の乳ではなかったような気がする
どうみても人のそれ・・・でも、ここまで大きいのは・・・
いや、奥さんのそれも唖然とするほどのものだった
ならば、これは?!
「触ってやってください」
その言葉に我に返って恐る恐る両手で掬い上げるように手に持ってみた
「あ・・・温かい…」
人肌くらいのあたたかさ
すべすべとしていてさわり心地は…最高
自然と揉みたくなる柔らかさ…
『あ・・・ん・・・』
「?!」
今・・・頭の上から色っぽい声が…小さかったけど…やっぱり牛じゃない?!
今度は慎重に揉んでいく
大きな水風船のような重さとスポンジかマシュマロのような感触にいつしか夢中になって揉んでいた
「深井さん。揉むだけでなくて今度は、乳を搾ってやってくれな。んで、このコの味を愉しんで欲しいんだ」
乳の搾り方を教えてもらう
乳房から乳首へと押し出すように・・・と教わり…
「恐る恐るだと痛くなっちまうからなるべくそうしないでやってくれ。あと、リズムよくするとこのコもイイと思うはずさ」
覚悟を決めて搾る
ぴゅっ!…ぴゅぅっ!
『あはぁ…♪』
艶かしい声に心が跳ねる。この牛はどんなコなのだろうか…
いつの間にか手が慣れたのか
ぴゅーっ!ぴゅーっ!と搾れるようになっていた
搾ると気持ちよさそうな声がする
その声がもっと聞きたくて搾る手を止められない
しばらくして・・・
「大分貯まったようなのでそろそろ、その味を味わってみてください」
奥さんの声にまたまたはっとした・・・
乳を受けていた瓶の乳をマグに注ぐ
「・・・」
目を瞑ってその匂いを嗅ぐ
そこらの店で売っている牛乳しか知らない私だが…牛乳臭くなく甘くてやさしい匂いがした
飲んでみる
「おおお!」
甘い…しつこくなくまろやかな口当たりで後味はさっぱりとしているのにとても濃厚だ
後を引く…
飲んでも飲んでもまた飲みたくなる…
こんな牛乳は初めてだ
気が付けば・・・瓶の中の乳を飲み干していた
「・・・あっ」
「うまかったかい?」
「とても!こんなうまいのは初めてです」
「そうかい。よかったらそのまま口につけて飲んでもいいんだよ?」
「本当ですか?!」
白く美しい…それでいて大きな乳房…顔を埋めてみたくなるような…
それが目の前にある
思わず鼻息が粗くなる
粗い息が当たるのがわかるのか、その乳房は少し揺れている。赤く充血した乳首は誘うかのようにひくひくと震えている
思わずむしゃぶりついた
『あっ?!やん!!』
びくっと一瞬したが・・・すぐに吸い付くとまた甘い声を出し始めた
『あ・・・ん…そんな…勢いよく吸っちゃ・・・ああ…ん』
口の中のこりこりっとした乳首の感触
『ん…はぁぁ…んっ!乳首そんなかんじゃっ…だめぇ…ああ…ん…』
顔いっぱいに圧し掛かるような乳房の重さ…
至福とはこういうことを言うのだろうか?
あとからあとから喉を潤す乳…飲んでも飲んでも湧き出すように口の中に溜まって行く
『もうひとつのおっぱいもぉ・・・』
もうひとつの乳も搾ってという意味だったのかもしれないが、私にはもう一つも吸って欲しいという意味と受け取った
もう一つの乳首も一緒に口へと入れる
『ああっんっ…ふたつともいっぺんに♪』
乳首をあまがみして刺激してやるとさっきよりももっと多くの乳が溢れてきた
「あっ溢れっ!ん・・・ん・・・うん…うまい・・・止まらない!止めたくない!!」
『あん♪吸ってる・・・いっぱい♪いっぱいすってくれてるよぅ♪♪♪』
無我夢中でむしゃぶりついていた私に満足したのか旦那さんが言った
「深井さん。わたし達の自慢のコに直に会ってみるかい?」
「え?」
…この美しくおいしい乳を持つコと顔を合わせてみないかという・・・
「・・・お願いします」
一瞬の躊躇の後どんなコなのか興味もあったので顔をあわせてみる事にした
テントを取り払うと・・・机のようなものに寝そべる女の子?がいた
「っ!?」
やはり、牛ではなかった。そんなもう分かりきっていたことにショックを受けながらまじまじと観察した
だぶついたズボンのようなものを穿いている。…が、足は白黒のストッキングのようなものを穿いていた
尻には牛のしっぽのようなものがあって・・・ぱたぱたと動いていた
「ハンナ?深井さんよ。起きてご挨拶なさい」
ハンナと呼ばれた少女?は起き上がりこっちを見た
「あっ!?」
顔を見て心が躍った
クリクリの眼つきが可愛らしいその子は、驚いた顔をしてから満面の笑顔をしたのだ
「エルリード牧場にようこそ!わたしはそこの両親の娘でハンナといいます。少しでもこの牧場の役に立ちたくてこんな企画をしちゃいました」
えへへと笑う女の子・・・その笑顔にまったくいやらしさはない
「・・・」
「フカイさん?きょとんってしちゃってどうしたの?」
「あっ・・・い、いや・・・ぁ・・・」
「あーもしかして、ハンナのこと子供とか思っているんでしょ」
「・・・あ・・・あの・・・ガイドさん」
「はい?」
「私・・・この娘のおっぱい吸っちゃったんですけど・・・」
「そうですねぇ」
「いや、“そうですねぇ”じゃなくて!いいんですか?まさか美人局なんてことじゃ・・・」
「つつもたせって何〜?フカイさん」
「…なんだろうね。あはっあはははは…」
目の前が急速に真っ暗になっていく・・・
なんてことをしてしまったんだ?
常識的に考えてもおかしいだろこれ…
「深井様?これもツアーの1イベントですよ?何と勘違いなさっているかはわかりませんが、お気を確かに」
「そうなんですか…これも1イベントなんだ…。イベント?!ちょっと待ってください!ツアー企画とは言え、知らない男に胸絞らせて、乳まで吸わせる奴がどこにいるんですか!」
「んふふ〜ここにいますよ〜♪」
「深井さんさえ気にいってくれたらいいんだ。娘だって誰にでも触らせたりしないさ。お前さんを気に入ったからこそ触ってもらってもいいって思ったんだ。深井さん、だから決して美人局なんていうことじゃないんだ」
夫妻そろっての言葉に仰天した
「フカイさん・・・ありがとうございます。ハンナこと心配てくれたのね?でも・・・誰にでもこんなことさせないよ?あなたにいい旅をしてほしいからこうしたの・・・」
「だからといって、そんな大事なことを…」
「わたしは魔物だからそんなこと気にしないよ?…するけど…気にしないよ?」
ちょっと待て…今なんて言った?
“魔物”?
まもの・・・ってなんだ?
「・・・あの…」
「はい?なんでしょう深井様」
「…まもの…ってなんでしょう?」
一同を見渡すが…言っている意味が分からなかったらしい
「「「?」」」
皆が何を言っているんだ?という顔をした
やがて思い出したようにガイドさんが言った
「ああ!失念していましたわ!深井さんにはこの世界のことと、わたしたち魔物についての説明をしていませんでした。奥様とかハンナちゃんを見ても普通にしてらっしゃるんで…忘れていました」
うっかりしていたというようにペロッと舌を出したガイドさん
「ねぇおとーさん。魔物を知らない人っているの?」
「いるもんなんだなぁ…どっかの世界からやって来たとは聞いたが…魔物がいない世界なのかな?」
「あらあら。知らないんだったら知ればいいのよ〜。深井さん〜こっちにいらっしゃいな〜」
奥さんのほわほわっとした言い方にふらふらと近づくと、突然抱きしめられた
「おっ奥さん?!何を?!!」
「おかーさん!」
「ハンナもいらっしゃい〜?」
「うん」
ハンナちゃんといっしょにその胸で抱きしめられて
のほほんとした声が聞こえてきた
「わたしたちは〜まものって呼ばれてます」
「はぁ」
「人ではないんです〜」
「…? そうなんですか?」
「はい〜」
「・・・」
「むかしは〜恐れられていました〜。でもぉ、わたしたちをみて〜、おそろしいですかぁ?」
「こわい?」
ハンナちゃんも目の前で私の顔をじっと見ながら言った
「・・・ぜんぜん。むしろ…かわいい」
「ありがとう!フカイさん!」
抱きつくハンナちゃん
奥さんのおっぱいとハンナちゃんに抱きつかれて極楽気分に浮かれてしまう…
「ふふふふ・・・このまま、ハンナのお婿さんになってくれないかしら…」
「え?何か言いました?」
「ふふふっ…なんでも〜ないですよぉ」
耳がおっぱいで塞がっていたからなんと言ったのか聞き取れなかった
ハンナちゃんは赤い顔をして意味深な顔をしてこちらを見ていた
「なんだろう?」
「なんでもないよ?フカイさん。それより、わたしたちまものは人のことが大好きなの♪わかった?」
「そうなのか…でも、いまいちわからない」
「では、それからの説明はわたしが承りますわ」
微笑ましそうに見守っていたガイドさんが口を開いた
聞いたかぎりでは、その内容はどこかで聞いた話しだった。けど、途中から興味深いものとなった
魔王がいて、人と当然のように殺しあってた。でも、ある日魔王が交代した。サキュバスに…
その影響で、魔物という存在は女しかいなくなり、男がいなくなった
サキュバスは、好色な性格。人を見れば男であろうが女であろうが交わろうとするもの
“精”と言っている生命エネルギーを食べ物としていて、精は男しか作り出せないから魔物は男を誘惑するようになった…
子を成す為にも、増して男の存在が不可欠となった…とまぁ要約すればこんな感じらしい
「わかりましたか?」
「…なんとなく。…だから襲われるって言っていたのか。でも、奥さんとかハンナちゃんとかに襲われているわけじゃないし?ガイドさんだって見るからに魔物って人なんでしょう?なら…」
「深井様。そのバッチをなぜ肌身離さずと言っているかわかりますか?」
「これ?」
MIKと書かれた500円玉くらいのバッチ。なんの変哲のないモノに見えたが…何か仕掛けがあるのだろうか?
「そう。それにはいろいろな術が施されております。例えば…」
・魅了などの誘惑系の魔法や石化などの身に危険をもたらす術から身を守る術
・人が高い魔力が漂っている・もしくはその身に受けた場合インキュバスと言う存在になってしまうためにそうならないように魔力を弾く防御の術
・自己の精神の昂りを押さえ、冷静にするための術
などなど・・・が施されているらしい
「深井様は、ご旅行中。まだ、ご自宅へと帰る必要があるのですからこれらに対する備えが必要なのですわ」
「これがなかったら?」
「最初に、わたしが深井様を見た途端に襲っていたでしょう…」
ガイドさんが舌なめずりするようにペロッと舌を出してみた
「…?!」
何か…ぞくりと背筋を通り抜けて行った
「それと、男を確保した魔物は他の男に見向きしなくなりますの」
「そうなんですか。じゃあ、寄ってくるのは相手がいない魔物さんということになるのですか?」
「はい。先ほど魔力を受けるとインキュバスになってしまうと言いましたが、男を獲得した魔物は相手に自分の魔力を注ぐのです。だから、注がれた男は誰かのモノ…誰かいい人がいるってわかりますの」
「そうなんですか…マーキングみたいなものか…」
「その習性を利用して、そのバッチにはわたしの魔力が微量に含まれているのです。だから、襲われることはないですけどね」
「ふぅ。魔界か…すごいツアーがあったもんだ」
「フカイさん。わたしたちは人と仲良くなりたいの。むかしみたいに争いなんてしたくないの…」
「ハンナちゃん…大丈夫だよ。私だって争いは好きじゃない。むしろ、仲良くなりたいと思う」
「仲良くしてくれる?」
「もちろん!」
「よかったぁ」
腰に抱きついて無邪気に見上げるハンナちゃん…ええ娘や…
こんな可愛い娘と仲良く出来るなんて…
「ちなみに、ハンナちゃんは牛さん?」
「うん!ほるすたうろすっていうの」
「ふ〜む。そうなのか」
「みのたうろすっていう牛さんを知ってる?」
「ああ。聞いたことがあるな。気性が激しくて力持ちだったっけ?」
神話だかゲームだかで出てくる怪獣だ
「わたしたちは、みのさんと同じ先祖を持っているの。でも、力ずくで人を襲うのではなくて、人といっしょに仲良くやろうって思った種なの」
そうなのか。だから、襲おうともしないんだ
奥さんやハンナちゃんのほわわんとした雰囲気はそこからきているんだ
ホルスタウロスについて教わっていると、奥さんと旦那さんの元気な声が聞こえてきた
「さぁ!深井さん!お昼にしよう!」
「うちで〜獲れた〜新鮮なお肉の数々と〜わたしたちの〜お乳で作った〜ものよ〜」
「フカイさん!食べて?たくさんあるから!」
「おっ!じゃあ遠慮なく!
夫妻とハンナちゃんの出してくれた昼ごはん・・・
とてもおいしかった
のどかな牧場とそこで育まれた食べ物…そして、二人のお乳で作った乳製品…
「は、はは。いや〜どれもおいしいです〜。それに、こんなにものんびりとゆったりとした時間を過ごすのは久しぶりでよかったです。来た甲斐がありましたよ」
「そうかい?よかったなぁ。ここはいつでものんびりと出来るし、うちの婿になればいつでもこういうのが食べられるぞ〜?」
「わたしも〜そろそろ息子がほしいわぁ」
「え?!」
「もう!おかーさん!!」
思わずハンナちゃんと顔を見合わせてしまう…
とたんに、真っ赤になってしまった…
「・・・」
「ははははっ!旅の終わりにでも考えておいてくれや!深井さんならいつでも歓迎だぞ〜!息子よ!!」
「深井さん〜?いつでも〜“お母さん”って呼んでいいのよ〜!」
盛り上がる二人…
今の私はどんな顔をしているのだろうか?
隣に座るハンナちゃんは…顔が真っ赤だ
うつむいてもじもじとしてる
しっぽがぱたぱたと動いている様が、また微笑ましかった
そんな様子に思わず頭を撫でてしまう
「ハンナちゃん…」
「フカイさん…」
「…なんて言っていいか」
「うん」
「その…」
「うん」
「………ふわぁ…」
何かを言おうとしたけど、口から出たのは欠伸だった
「眠いの?」
「…いっぱい食べたから…」
「ふふふ…じゃぁ…」
そう言って自分の太ももをぽんぽんと叩くハンナ
「え?いいの?」
「ん。フカイさんなら…」
「…じゃぁ、失礼します」
お言葉に甘えて横になるとすばらしいかった
ふともものやわらかさと、おおきなおっぱいがやさしく包み込んでくれたのだ
「どう?」
「グッジョーブ!」
そのまま、まどろみに包まれて幸せな時間を過ごしたのであった
楽しい時間はあっという間に過ぎていく
牧場に来たのだし放牧の様子でも見せてもらおうとしたら、呼び止められた
「深井さま?大変申し訳ありません。そろそろ、次の目的地、植物園への移動時間となってしまいました」
「え?あ…そうなんですか?」
「…はい」
ハンナちゃんを見れば今にも泣き出してしまいそうな顔をしている
「フカイさん。また会えるよね?」
精一杯の笑顔でそう言った彼女の瞳は、どんどん涙が溜まってきている
「ああ。絶対来る!どんな形になろうとも絶対来るよ!」
「うん…うん!絶対だよ!」
「絶対だ!」
ぎゅっと抱きしめる
この旅がどんな形で終わることなろうともまた、彼女に会いに来ようと思うのだった
旅は、出会いあれば別れあり…
優しき夫婦と可愛いハンナ。見送りにこれでもかと手を振っている
こちらも、それに答えて手を振り返す
草原には、ガイドさんの魔方陣。眩しく目がくらむまで私は彼女達に手を振り続けた
そうして、彼女の泣き笑いを心に留め私達は次の目的地へと飛んで行った
11/08/09 20:09更新 / 茶の頃
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