1.さくら草
寒い寒い冬の時期から、ようやく抜け出た今日この頃
暖かな日差しがやってくる
朝はまだまだ寒さも残るが、昼にはうとうととしたくなるような陽気
そんな日差しに誘われるように草木の蕾が膨らんで
あたたかな日々を待ち焦がれているといった
そんな頃…
とある町…
明け五つ頃とある店の裏手から一人の男が中へと入っていった
「ごめんよ!洗い屋でござい!召し物、腰巻、ふんどしなんでも洗うよ!」
「はーい!」
男が呼びかけると中から、女が出てきた
「あら、ジロさん!これなんだけれど、今日もお願いね」
「あいよ!いつものようにまっさらにしてやんよ」
「頼んだわー」
「いつもご贔屓にしてくださっているんだ。まかせとけ!」
男は、洗い屋であった
名を、次郎
お得意様を回り、こうして洗い物を受け取っていくのだ
「あっ!おみつー?洗い物ないー?ジロさん来てるの!太夫の洗い物ない?」
女が店の廊下に少し見えた少女に声を掛ける
まだあどけなさが残る少女がこちらに小走りでやってきた
「ジロおにぃちゃん!おはようございます!」
「おみっちゃん!おはよう!今日もいい天気だな」
「うん!」
元気いっぱいの返事。それは、“おみつ”と言う名の少女
おかっぱ頭で、赤い着物を着て、帯には握りこぶし位のコロコロと鳴る土鈴を付けている
くりくりっとした可愛い目が印象的な女の子
この店の太夫お付の禿(かむろ)で遊女の作法や接客などを習っていた
いつも明るく元気いっぱいなので、皆からおみっちゃんと呼ばれて可愛がられていた
「んで、洗い物はないかい?」
「うん!ちょっと待ってね?」
とてとて…と店の奥へと小走りに行くと風呂敷に包んだものを持ってきた
「ジロおにぃちゃんお願い!」
「おう!任せとけ!」
受け取った風呂敷を小脇に抱える
そうして、頭を撫でてやる
「よしよし…おみっちゃんも今日一日頑張れよ?にぃちゃんも頑張るからなぁ!」
「やん…撫で撫でしないでよぅ…」
嫌がっているふりをしているけど、顔はまんざらでもない
撫でてやらないとむくれてしまうことがあるから、いつも撫てやるのが次郎の日課だった
「よしよし、おみっちゃんを撫で回したところで俺も仕事に戻るかな」
「もう!おにぃちゃんたらぁ…」
髪を手櫛ですきながら非難を上げるが、その顔は満面の笑み
「ははは、んじゃ。また後でな…」
そう言って、次郎はその店を後にした
おみつの笑顔を見て今日も何かいいことがありそうだと思う次郎だった
お得意様を回って、洗い物を回収
仕事場へと戻ってそれらをよく洗う
すえた臭い、女の臭い・・・いろいろな臭いが染み付いている
いい臭いではないが仕事だと割り切って洗う
遊里の店の場合は人の体液も付いているから念入りに洗ってやる
そして、干して畳んでまた届ける
そんな毎日。けれど、あの遊郭へ行くのは楽しみだった
あのおみっちゃん。いつも明るく元気いっぱいで次郎の心をほんわかとさせてくれるのだ
幼いのにいつも一生懸命。なにがあっても頑張っている姿を見ると、自分も頑張らなければと力が湧いてくる
その日、足どり軽く乾いた洗い物を届けに来ると、女がやってきて言った
「ジロさん。ちょっといい?」
「ん?なんだい?」
「実はね?ジロさんが来たら案内してくれって頼まれているの…」
「ん?どこへ?」
「太夫の所へ…」
「太夫に?」
「ええ。なんでも相談したいことがあるとかで・・・」
「俺にかい?」
「そうみたい。だから、来て?」
「わかった…」
案内される店の中…
柱や壁はところどころ朱色に塗られている
次郎は物珍しくて、キョロキョロとしてしまった
昼はこんなにも明るく開けたように見える
女郎達も、自然な雰囲気でとても男を惑わすような感じではない
気軽にジロさんと声を掛けてくれる様は、どこにでもいる女達に見える
おしろいもこの時間は付けてはおらず、鏡の前で数人で笑いあっている様子や、客からの贈り物で騒いでいる様子などは、年頃の娘たちそのままであった
それが、夜になればあの妖しく、淫靡な雰囲気に様変わりするのだ
次郎は夜の遊里へと来たことは、ない
洗い物を届けるのが遅くなってしまったときに来たのみだ
男の欲望を受け止める為にどことなく顔つきまで変わってしまっている女達
薄暗い行灯の光に照らされて、誘うように、受け容れるように男と交わろうとする様
揺らめく光が影を操り、違う生き物へと変貌させてしまったかのように、その目つきすら変える。
昼の明るく朗らかな顔は、夜には獲物を狙う猫のような目つきで妖しく微笑み嗅いだ事もないようなにおいをその身に着けて、華やいだ衣装を纏っているのだろう
そんな昼と夜の違いに戸惑いを感じ得なかった
商売抜きで誘われたこともあるが…
どうも、その違和感が拭えなくて断ってしまった
そんなことを考えていると太夫の部屋とやらに着いてしまった
「太夫はいまここにいないから、呼んでくるわね?」
「…ああ」
「中に入っていて?」
この店一番の売れっ娘。その美貌、ひと目見ただけで男を虜にしてしまうその雰囲気…
彼女が微笑みかけただけで、男をいとも簡単に惹き付けてしまうそんな不思議な女だった
この街一番のお店の旦那やどこかの偉い侍まで遙々遠方からやってくるほどだった
当然、次郎も惹かれたがこんな洗い屋の男…櫻を愛でるようにひと目見ればそれで十分と思えるほどだった
そんな、憧れの女。それに呼ばれていると言う…
普段、太夫がいる部屋に案内された次郎…
そのどこか格式高い部屋は、大層居心地が悪かった
こんなところ縁のないと思っていただけに…
見たこともない鏡のように光を反射させるつやを持つ漆塗りの箱、どこかの都を描いた…まるで天竺を描いたような雅な金屏風
普段まず、お目にかかることのない品々…
上を仰ぎ見れば、部屋の欄間には見事な櫻が透かし彫りに咲いていた
見たことも触ったこともないふかふかの座布団に身を縮めるように座っていると、太夫がやってきた
「ようこそいらっしゃいました次郎さん」
「なにか御用があるという事ですが?」
「次郎さんに頼みたいことがあります」
頼みたいこと?
「?」
「おみつのことです…」
「おみっちゃん?」
意外な名を出されて戸惑う次郎
「はい。あの子もずいぶん長く私のお付きをやっているのですけど…ちっとも大きくならないようなのです」
「…そうだなぁ。同じくらいにやってきた娘がもう禿から新造…客取るようになったしなぁ。禿だった頃は、おみっちゃんと同じくらいの女の子だったのに、今はもう女ってぇ体つきだしなぁ」
「はい。それをおみつは気にしているのです…。見た目は明るく元気に振舞っているけど…」
「…大きくなれねぇのはなにかワケでもあるのかい?」
「ええ…」
太夫は少し目を伏せると、うつむき気味に語り始めた…
「次郎さん…私ね?淫魔なの…」
「え?」
「人の女ではないの…」
「?…どういうこと?」
「待ってね…」
そういうと、太夫は立ち上がり屏風の後へと隠れた
衣擦れ音
次郎はどきまぎした…
「次郎さん」
顔を上げると驚いた
誰もを惹きつける太夫の裸体…
心の中の獣を刺激されるような動悸のような疼きを感じる。…見ているとだんだんと心の臓が早く脈打つのが分かる
無意識にそれを目に焼き付けようと全身をくまなく見ていると、その腰あたり…体と比べれば小さいが翼が…あった
腰と尻辺りから伸びる尾
太夫の頭にも角が伸びている
黒かった瞳は、赤く…一度目を合わせたら吸い込まれてしまうかのような惹き付けられてしまうかのような瞳だ
ごくりと喉が鳴る
「た…太夫…」
「次郎さん…どう?」
「あっうわ…きれいだ。人じゃないなんてそんな事どうだっていいじゃぁねぇか…」
「よかった…」
いつまでも見ていると飛び掛ってしまいそうで、無理に次郎は目を反らした
「それで、おみっちゃんとどう関係があるんだ?」
再び衣擦れ音…
着物を着直すとまた次郎の目の前に座った
「おみつは…私の娘なの…」
「太夫の?!」
「あの子も私と同じ淫魔になるはずだった…でも、いつまでも子供のまま。私ね?気付いたの…あの子は、淫魔でも大きくなれない種なんだって…」
「そんなのがあるのかい?」
「ええ。稀にそういうのが生まれてくるの…。幸い、ここの主人は私の本当の素性を知っているから、おみつについては私の好きにしていいって言ってくださっているの」
「そうかい…」
「それでね?次郎さん?あなたにおみつのこと…頼みたいの」
「俺にかい?」
「あなたに一番懐いているから…あの娘の支えになって…」
どこか懇願するような太夫に、知らずに返事を返していた
「わかった。俺もおみっちゃんのことをいつも気に掛けていたし、こんな俺でいいのならば任せてくれ」
「ありがとう」
そう言って笑った太夫。その顔は、慈愛に満ちた母親の笑顔だった
シャランッ!
部屋の片隅にある鈴付きの紐を太夫は引っ張った
部屋の向こうから、カラコロと土鈴の音と、とてとてと足音が近づいてくる
「しつれいします…」
と声が聞こえ、おみつが入ってきた
その時、一瞬…あれ?っというような顔をしたおみつ
「おみつ?次郎さんのお帰りです。送ってさしあげなさい」
「はい。わかりました太夫。次郎さんこちらへ…」
「では、太夫」
「はい。よろしく頼みました」
にっこりと笑った太夫
そんな太夫と次郎をおみつは訝しげに見ていた
「さぁ、おみっちゃん行こう?」
「…はい」
先を行くおみつの顔は優れなかった
その日、いつものように洗い物を取りに来て再び洗い物を持ってやって来ると、いつもの女が待っていた
「ジロさん。ねぇ…なんだかおみっちゃんの元気がないの…何か知らない?」
「おみっちゃんが?」
「ジロさんが、太夫に呼ばれてからなんだけれど…なんだか妙にしゅんとしちゃって…覇気がないの」
「?…いや…わからねぇな。そういやぁ朝、見なかったな…」
「おみっちゃんがいつも懐いているのはジロさんでしょう?だから、何か知らないかと思って…」
「…とにかく、何があったかおみっちゃんに聞いてみるわ」
「お願いね」
そうして、女はおみつを呼びに行った
おみつがやって来た
いつもだったら、とてとてと足どりは軽そうなのに、今は重そうだ
話を聞くためにとある部屋へ入る
どこか暗いおみつ…
「こんちには!おみっちゃん!」
いつものように挨拶をする次郎
「…こんにちは」
? 声は暗く、どこかよそよそしい
「どうした?おみっちゃん」
「…どうもしないよ」
「なんだか、元気ねぇな」
「……」
「どうしたんだよう…」
しばらく、何も言ってくれなくなったおみつ
どうしたものかと思案していると、おみつが重たそうに口を開いた
「…おにぃちゃんは…太夫のことすきなの?」
「…なんでそう思ったんだ?」
「だって…おにぃちゃん。この前、楽しげにしてたじゃない…」
「部屋に呼ばれたときのこと?」
頷くおみつ
「まぁな。確かに太夫のことは好きだぜ?俺も男だしなぁ」
「やっぱり…」
悲しそうに顔を伏せるおみつ
「でも、それは知り合いということからだぜ?」
「おみつよりも太夫の方がいい?」
「おみっちゃん。なに言ってんだ?俺はおみっちゃんも好きだぜ」
「わたし、おにぃちゃんのこと好き。でも、おにぃちゃんが太夫のこと好きだって言うのなら…」
「…おみっちゃん。言いたいことはなんとなく分かった。だが、俺と太夫じゃぜんぜんつり合わないよ。太夫は言ってみりゃ櫻よ。櫻っていうのは、可憐で華やかで煌びやかで逞しく綺麗に見えるそんな花だろう?誰もが目を奪われ、誰もが好きになる、誰もが憧れる。櫻って言うのはそんな花だ。嫌いだなんていう奴はそうそういねぇ。けどな…俺も憧れるが、手の届かねぇもんだ。だから…よ、おみっちゃんが思っていることなんてこれっぽっちもないぜ?」
「うそっ!だって太夫、ジロさん見るとうれしそうな顔するもん!あの時なんて、ジロさんの隣で笑ってたもん!あの笑い方はお客さんに見せる顔じゃないもん!!」
「なぁ、おみっちゃん。櫻ってのは上に咲いてるだろう?俺にゃぁ眩しくっていけねぇや。眩しすぎるすぎるんだ。それにあんまり上ばかり見てると首が痛くなってくらぁな。だからよ、俺には手の届かねぇ人なのよ。わからねぇかい?」
「わからないよぉ!おにぃちゃん」
「上ばかり見てるとな?下に見えるもんも見えなくなっちまうんだぜ?」
「下に見えるもの?」
「なぁ、おみっちゃん。…櫻の時期に咲くのは、それだけじゃないんだぜ?櫻に似つつもさくらな花を知らねぇかい?」
「?」
「さくら草だよ。おみっちゃん」
「さくら草?」
「ああ。櫻に似た花をつけながら地に咲いているんだ。俺はあっちの方が好きだなぁ」
「…あんなちっちゃい花を?咲いてても誰も見ようとはしないよ?」
「俺は、ちぃっちゃいとも、影の薄い花だとも思ってねぇよ。きれいな花を咲かせてピンと上を向いて咲いてるじゃねえか。それが、おみっちゃんと重なっちまってよぉ…」
「わたしぃ?」
「ああ。いつも明るく元気に頑張ってるじゃねぇか。俺は、そんなおみっちゃんのこと…好きだぜ」
「おにぃちゃん…」
「太夫とか他のねぇさんとか見習って、まっすぐ頑張って生きてるおみっちゃんのこと俺、好きだぜ」
「っ…おにぃちゃぁぁん!」
にっこりと笑い掛けてやると悲しげな顔が、ぱぁぁぁっと明るい顔になったおみつ
「ほら、おいで?抱っこ」
「うん!」
胸に飛び込んできたおみつを大事に抱きしめる次郎
「えへへ…」
髪を何度もなでてやる
「おにぃちゃん…」
気持ちよさそうに目を細めて撫でるに任せているおみつ
「だから、気にするな。おみっちゃんが望むならいつだって側にいてやるよ?」
「ほんとうに?」
「本当の本当…だから、な?」
「うん!」
それから、いつもの元気を取り戻したおみつ
次郎が店にやってくるといつもべったりと傍らにいるようになった
「おみっちゃん。いつもジロさんにべったりとしているわね…なんだか妬けちゃうわ」
「ははは。おみっちゃんもいい年頃と言うところなんでしょ」
「そうねぇ。恋をしてもいい頃よね」
「恋…」
「あーあ。わたしにもいい人現れないかしら…」
「ねぇさんなら、そのうちいい人あらわれますよ」
「そうだといいけどねぇ…」
昼すぎ…
いつものように洗い物を届けると…部屋へと誘われた
「おにぃちゃん…」
「どうした?おみっちゃん」
「…抱っこ」
「よし…おいで?」
抱っこしてやると照れたように顔を赤くする
「えへへ…おにぃちゃん?」
「ん?」
ちゅ…
「え?」
「こうするとね?おにぃちゃん喜ぶって太夫が…」
唇に、小鳥がついばむように口づけをするおみつ…
「おみっちゃん…」
ちゅっ
今度は、次郎が口づけしてあげた
「えへ…えへへ…」
ますます真っ赤になるおみつ
すぐそばで見つめていると、なんだかどうしようもなく可愛くて抱きしめたくなってきた
「おみっちゃん」
「ん?なぁに?おにぃちゃん」
「いやぁ…」
ギュッと抱きしめてあげる
体に感じる彼女のあたたかな温もり
なんだか、体が熱い
間近に見るおみつ…いつも間近で見ているのにとても可愛く見えた
「…ねぇ。おにぃちゃん」
「なんだい?」
「おにぃちゃんのお股…なにかがおみつのお尻に当たっているよ?」
「え?」
ちょっと退くとおみつは着物の下に、大きくなっているところを指差した
「おにぃちゃんのおちんちん?」
「あっ…いや…」
「おにぃちゃんのおちんちん…」
おみつは着物を除けてふんどしのに隠れている分身を探し出してしまった
「…おっきい」
驚いた様子でまじまじと見つめるおみつ
見られていることでますます大きくなる分身…
「お…おい。おみっちゃん」
じーっと見つめるおみつ鼻先まで寄って見つめている
と……
チロッ
「!」
小さく赤いおみつの舌が先を舐めた
「えへ…えへへ」
「おみっちゃん。なんで…」
「太夫が、男の人はこうするととても喜ぶんだよって」
「太夫ぅ…」
そうして、おみつはぺろぺろと舐めはじめた
「おみっちゃ…だめ」
「おにぃちゃん…おちんちんびくびくってしてるよ?」
「っ…ぅぁぁぁぁ…おみっちゃん…」
おみつに舐められている。それは子猫が乳を飲むようにちろちろとぺろぺろと控えめになめてくる。くすぐったいような気持ちよさが心を溶かしていく
幼い子にこんなことさせていいのか?と背徳的な心とどんどんともっとしたいという欲望が頭の中をぐるぐると駆け回る…
「おにぃちゃん。気持ちいい?」
「くぅぅぅ…」
「くるしそう…ねぇおにぃちゃん。我慢しなくてもいいんだよ?」
「おみっちゃ…ん。我慢なんか…してな…ぃ」
「んじゃぁ…もっと舐めてあげるね」
あむ…と、頬張ると小さな口の中で分身を転がし始めた
「ん…じゅる…んんん…おにひちゃん…」
両足の間で丸まって、小さな手を添えて分身をやさしく掴むと頬張るように口の中で転がす
「きもちいい?」
上目使いでそう繰り返すおみつ
「ああっ。おみっちゃん気持ちいい…」
「…よかったぁ」
そう言いながらも舌と口で飴玉を転がすように舐め、ころころとしゃぶる
「おにひちゃん…?なんだかこの袋のお玉とおちんちんがビクビクしてきたよ?」
せり上がる射精感を必死で耐える次郎…
「っく…」
歯を食いしばる次郎
「おにぃちゃん。苦しそう…待ってね?」
そう言うと今度は口に入れられるだけ入れて扱き始めた
「う…ちゅる…じゅ…うん…あう…む…ちゅっ…ちゅる……」
「あああ!おみっちゃ…俺…もう…!」
「おにぃちゃんが泣きそうな顔してる…。うん!いいよぅ我慢しなくていいよぅ!」
健気にもそう言ってくれるおみつ。けれども、口を放してくれない。そのまま舐めしゃぶる
そんな様子にとうとう、限界が…
「うっ!」
「ふわぁ!」
どくどくと小さな口に精が吐きだされる
口に収まりなくなったのが溢れだす
小さな口は白い精で汚れてしまってた
「おにぃちゃん…の…おしっこ?」
こくんこくんとちいさのどが動いて、飲み込んでいく。
飲み込むごとに、瞳の焦点が合わなくなってきたように見えた
だんだんと飲み込むごとに、目がとろんとしてきていく
口からこぼれて顎にたれている精を手で掬ってぺろぺろと舐め取っていく
それがどうしょうもなく、淫靡で他の女郎達にも負けないぐらい妖しい顔をしていた
「おみっちゃん……」
自分の手についた精を赤く小さな舌で丹念に舐め取るその姿…
それがどうしようもなく、我慢できないほど可愛かった
手を舐め続けるおみつをぎゅっと抱きしめる
「…おにぃちゃん?」
おみつは、蕩けたような顔をしてとろんといつまでもしていた
次郎も、そんなおみつがどうしょうもなく可愛くて彼女をほしいと感じていた
いつしか、彼女の唇を奪っていた
とろんとした目が一瞬驚いたようだったが、それはすぐに喜びの目に変わった
口を開いてやり、かわいい舌を見つけ出す
精の味なのか変な味がしたが、構わずにおみつの舌を舐める
ちろちろと動くその舌…
抱きしめながら、手はその小さな体の帯を弛めに掛かっていた
しゅるっ
という音を残して帯が解けた。そのちいさな赤い着物を脱がしてやる
きれいだった
白い肌
赤子のようにもちもちと弾力を持ちながらやんわりとした感触
ふんわりともしてる
唇を一旦離し今度は首筋をなめ伝いながら、まだ未発達の胸の膨らみを頬張る
「やぁ…」
その甘えた声…
一気に欲望を刺激された
じゅるじゅると音を立てながら嘗め吸い、ぽっちりとした小豆のような乳首をあま噛みする
「あふぁ…おにぃちゃん…。やぁ…」
「おみつ…嫌なのか?それともいいのか?」
「やぁ…」
おみつはぐいぐいと頭を抱きしめる
やめないでと言いたげに…
片手でその小さな体の感触を愉しんでいると、違和感があった
腰とお尻辺りになにかぶつかる
おかしいと思って胸から顔を離してみる
「やぁ…やめないで…」
抱きしめている片手を離し揉みながらその乳首をこねてやる
肩越しに腰を見るとそこには…
あの太夫に見た蝙蝠の様な翼と先が桃のような形の尾があった
見れば耳の形も人のそれから、尖った形へと変化している
違う種だとか言っていてもやはり、親子なのだろう…
この心の底から彼女を抱きしめたいという感情、彼女もまちがいなく淫魔だということなんだ…
「おにぃちゃん…」
彼女の手が分身をこすこすと触る…
分身は痛いほど勃っていた
さっきから、また彼女に精を放ちたくて、心が焦れる…
もう、淫魔だとか妹だとかそんなことはどうでもよかった。ただただこのちいさな子と快楽を共にしていたかった
再び、胸にしゃぶりつきながら乳首を刺激してやる
「あっああ、やぁ…」
うれしそうな声が耳朶に響く
胸をあじわいながらも、下に手を伸ばす
毛も生えていないつるつるとした所を撫で回しながら…
甘い声を出しながら嫌がろうともぜずに、するに身を任せている
下の口に手が行き着くと満遍なく擦ってやる
「あ…あああ…おにぃちゃん…なんか、へんだよぅ」
「なにが変なんだぃ?」
変と言われて手を止めると、自分で擦り付けてきた
「ああぁ…おまたが…おまたが…」
「これがいいのかい?」
「うん。おにぃちゃんのおててが…おみつのおまたを…に…」
だんだんとそこが濡れてきた
指を中へと入れるとしっとりとしていて放さないかのようによく締まる
「おにぃちゃん…。なんか…なんかへんだよぅ」
秘唇まわりを揉んでやる
「あ…ああ…あん」
揉むと中に入れた指が擦れるのか、甘い声を上げて腰を揺らしている
「おにぃちゃん…へんだよぅ…」
顔を見ると真っ赤でおかっぱ頭から尖って長く伸びた耳が櫻のように桃色に変わっていた
おもわず顔を上げて、口に含んでレロレロと舐めてやる
「ふわっ!」
突然のことに驚いたらしく、びくっとして尻餅をついてしまった
「だ…大丈夫か?おみっちゃん」
「う…うん大丈夫。ねぇ…おにぃちゃん…」
「なんだい?」
彼女の視線が腰を見つめていて離れない
そこには、痛いほどはちきれてる分身があった
「おにぃちゃん…おちんちん…」
「それは…」
「おちんちん…ほしい…よぅ」
「っ!」
なんだか今の言葉…背筋に…
「ねぇ。おみつにちょうだい?」
「…あ…あああ」
彼女の目が赤く光ったように思った
ほしい。ちょうだい…その言葉が頭の中をぐるぐると廻り回る
たまらなく、彼女に入れてやりたい
抱きかかえて、寝かせてやる
股をひらくおみつ
「おにぃちゃん…」
期待するかのような眼つきに何かが弾けたような気がした
「いくよ…」
「ん」
その小さな入り口に手を添えて少しずつ入れていく
ある程度濡らしていたとはいえきつい…
「あ…あああ…いた…痛いよう…」
「…っ…くっ!」
ずりずりと奥へ奥へ……
おみつの悲鳴…
「ちからを抜いて!おみっちゃん!」
やめたくともやめられなかった。その声に、すこしだけ力が抜けたおみつ。そんな彼女に何度も呼びかけた
「もう少し!もう少しだ!!」
急に何かが中で阻むようなそんな感じがした
「おにぃちゃん。おみつは我慢するよぅ…だから…ねぇ…」
とにかく、楽にしてやりたくてそのまま突き進む
阻んでいたものは突然、つぷっと抵抗できなくなったかのようになった
「あっああああ!い…いた…!」
痛がりように一旦引き抜くと分身に血が付いていた
「ぁっぁぁぁ…これは…」
「はぁはぁはぁ…お…おにぃちゃん…」
抱きしめて口づけしてやる
「すまない。おみっちゃん…」
「ちゅ…うんんん…おにぃちゃん…おみつ大丈夫。だから…ね?」
瞳に涙を溜めながらも、一生懸命に微笑むおみつ
「よく頑張った。けど、もうすこしこのままでいよう」
次郎はすこし体を浮かせると、おみつに言った
「おみっちゃん?見えるか?俺とおみっちゃんつながっているんだ」
「おにぃちゃん…」
「俺たち、ひとつになったんだ」
「おにぃちゃんとひとつ…」
「そうだよ。俺たちはふたりでひとつなんだ」
「おにぃちゃんとおみつでひとつ…ひとつ!」
ぱぁぁぁっと顔が明るくなる
その途端、きゅっとおみつの膣が次郎の分身を締め付けた
「うぁ!」
「ねぇ…おにぃちゃぁん……?きもちよくなろう?わたしぃ…もっとおにぃちゃぁんのことぉ…きもちよくなってほしいぃ…」
「おみっちゃん」
あつく濡れそぼったおみつのあそこにいまにも出してしまいそうなほど、気持ちよかった
けれども、自分だけが気持ちよくなるのではなく、痛がってようやくつながりあった喜びを二人で感じたかった
「うごくよ?」
「うん」
にこりと笑ったおみつは幸せそうだった
腰を動かし始めると次郎はすぐに余裕がなくなった
分身を持っていかれるようにその中は吸い付いてきたのだ
ぴったりとして放さないかのように。腰を引くと放すまいときつくなる。突き入れようとすると、入れやすいようにゆるんできつくと波打つように分身に刺激が与えられるのだ
あまりの気持ちよさに腰が止まらない
耳からは、おみつが名を呼ぶ声と甘い吐息ががひっきりなしに聞こえてきて、そんな声をもっと聞きたい。もっとこの声をよがらせてやりたいと、思うようになっていた
ちいさな体なのに、こちらの体を受け止めて一心に受け入れてくれるおみつ。すべてを飲み込もうとするように、その中は絶えず伸縮して吸い付いて放そうとしないのだ
ずっと…ずっと…いつまでも続くと思っていたが…そのときは迫っていた
「あああああんんっ!おみつ…おみつは…おにぃちゃぁぁぁぁん!」
「おみつ!!…っく!!」
ドクドクとその小さなお腹の中へと欲望が吐き出された
けれど、それがまたいままでとは違った感触を生み出した
「うっ…あっあっぁぁぁ…」
「あっおにぃちゃぁぁぁぁぁ!!」
とんでもなくあついどろどろとしたものに、もう一度ふたりでイッてしまうほどの気持ちよさ…
いつまでも、ふたりでその余韻に浸っていた
「…おにぃちゃん」
「おみつ…可愛かったよ…」
「えへへへ…」
「……」
「……」
その後、いつまでもふたり口づけを交し合っていた…
髪を優しく撫でてやると気持ちよさそうに目を細める
胸の中で幸せそうに微笑むおみつを見ながら、次郎も幸せを噛み締めていた…
しばらくして、我に返った
…しまったあんまりにも可愛くてついやってしまった
いつの間にか…おみつは疲れたのか寝てしまった
布団を敷いてそれに寝かせてやると、とても幸せそうな顔して寝ている
髪を撫でてから、厠へと行こうと部屋を出ようとした
戸を開けると…
大勢の女達が興味深々と集まっていた…
「ジロさん!おみつとやっていたの?」
「ジロさんはちっちゃい娘の方が好きだったんだ…」
「まっ昼間からやるとは…ジロさんも隅に置けないわねぇ…」
「それで?どうなのよ?」
「ジロさんはおみっちゃんのことどう思っているの?」
「……」
ストッ
なにも答えずに戸を閉めた
『ああっ逃げた!』
『ジロさーん』
『ジローさーん…』
…まさか
聞き耳を立てられていたとは…
おみつの顔を見てから覚悟を決めて、戸を開ける
「出てきた」
「それでどうなの?」
「おみっちゃんは?」
「おみっちゃんは疲れたのか寝てる。んで、俺は…おみっちゃんのこと好きだよ。抱っこしてたらなんだかすごく可愛く見えてきて…。気が付いたらおみつが俺のちんこを弄んでいたんだ…それで…」
額に手を当てながらあの時のことを考える。なぜそうなったのかよくわからないけれど…とても可愛く見えた
「そうなんだ。おみつにジロさんとられちゃうとは思わなかったわ…」
「……」
「これから…どうするの?」
「わからない。欲望にまかせてしちゃったからな…」
『どうしたの?』
そんな時、突然廊下の奥から声が掛かった
「あっ!太夫ねぇさん」
「実は…ジロさんとおみつが…」
女達から事情を聞く太夫…
話を聞いているその顔は、だんだんとうれしそうに笑っている
「ジロさんとおみつ…。それはよかったわねぇジロさんありがとう。これでようやくおみつも女になれた」
「いや。太夫…俺は…」
「いいえ、ありがとうジロさん。それで…おみつは?」
「寝ている」
部屋の中には幸せそうな顔したおみつが見える
「本当にうれしかったのね。幸せそう」
「抱っこしていたら、なんだかとても可愛く見えて…」
「ふふふっ」
とてもうれしそうに笑う太夫
「ジロさん。あの娘のことよろしく頼みます」
「え?ああ。それは構わないが…」
次郎に一礼すると、太夫は去っていった
「太夫がジロさんとおみっちゃんこと認めてくれたの?!」
「よかったわね!ジロさん」
「ああ」
皆に聞かれていたのはどうかと思うが、認めてくれて良かったと思う
翌朝、洗い物を取りに行くといつもの女が首を傾げて言った
「ジロさん…おみっちゃん…」
「おみっちゃんがどうかしたのか?」
「うん。あの後、すぐに起きたんだけれどみんなで冷やかしたら、覚えてないっていうの…」
「ん?覚えてないって?」
「ジロさんと恋人同士になったんだねって聞いたら、そうなの?って」
「恥ずかしいから、はぐらかしたんじゃないのかい?」
「そうなのかと思ったんだけれど…本当に覚えてないみたいなの…」
「……」
「それで、心配になって太夫に言ったら、心配要らないって…ジロさんも分かってくれるからって…」
「俺が分かる?太夫が?」
「そうみたい…」
「うーん。よくわからないが…そういうものなのかもな…」
「なにか知っているの?」
淫魔で普通とは違う種とか言っていたこととなにか関係があるなら、そういうものなのかもしれない
「いや、よくわからんけど…。おみっちゃんは、それを抜かせばいつも通りなんだろう?」
「ええ」
「じゃぁいいや。普段の記憶もなくなっちゃったとかだったら大変だけれどな…」
「そういうもの?」
「俺がおみっちゃんを好きなことに変わりはないよ。それで?本人は何か言っていた?」
「おにいちゃんと恋人どうしだったらいいなって…」
「そっか。今、おみっちゃんはどうしてる?」
「そろそろジロさんが来るから、洗い物まとめてると思うけど…」
二人で廊下の奥を覗き込む
どこからか、コロコロとしたあの土鈴の音が聞こえてきた
「あっ!おにぃちゃん!!」
次郎を見たおみつの顔がぱぁぁぁっと明るくなったのが見えた
「じゃぁ、あたしはこれで…あとよろしくね?」
「ああ。またあとで」
とてとてと大きな風呂敷を抱えてやってきた
「おにぃちゃん!おはよう!!はいこれ!」
「おはよう!おみっちゃん。うん…受け取った」
「あのね?…おにぃちゃん。おかしなことがあったの」
「うん?なんだろう?」
「みんながね?わたしとおにぃちゃん…恋人さんになったって…言うの」
「うん」
「ほんとぅ?」
「うん。…ちゅっ!」
そう言って、いつものように頭を撫でるついでに口づけしてみた
「おにぃちゃん?!…おにぃちゃぁぁぁん!!」
びっくりとした顔をして、幸せそうな笑顔を浮べるおみつ
「おみっちゃん。恋人同士の時間はまた後でな?期待しててな?さて、仕事に戻るよ…またな、おみっちゃん」
「うん!」
記憶がなくなったといっていたが…特にこれといって変わった様子はない
少し安心…さて、今日も仕事頑張りますかね…
お得意様へのお届けを早々に終わらせた次郎
うきうきとおみつの元へとやってきた
「よう!おみっちゃん」
「おにぃちゃん。お仕事もういいの?」
「おう、今日はもう店じまいだ」
「おにぃちゃぁん!」
突然、抱きついてきたおみつ
「おう!」
小さな体が足に抱きついて、すりすりと頬擦りしている
「おみっちゃん。ここではあれだから…部屋に行こう」
前に借りた部屋に行くと、そこで座る
目線がちょうどおみつと同じくらいになった
目と目が合う。たちまち潤んだ瞳に目が釘付けになった
「おにぃちゃん…」
「おみつ…」
ちゅ…と何も言わずとも口づけが始まる
「ちゅ…ちゅ…おにぃ…ちゅぅ…」
「みつ…うん…ちゅ…」
小さく可愛い唇を舐めると、みつも舌をだしてきた
舌先を絡めあう
「ちゅ…ちゅる…ぢゅ…」
「…ちゅ…ぢゅるっ…」
「おにひちゃん…おにひちゃんの…」
みつの舌を愉しみながら次郎は、着物の隙間からおみつの股に手を入れた
「ふわぁ!」
そこはもうすぐにわかるほど、しっとりと濡れていた
前は、まったくこんなことなかったのに、今度はもう濡れていた
「…おみつ?お漏らししちゃだめじゃないか」
「おにぃちゃん…わたしぃ、お漏らしなんてしてないもん」
「じゃぁ…これは?」
濡れた手を鼻先に持っていってやる
「……これはぁ…」
「いけない子だなぁおみつは…このままじゃぁ着物が濡れちゃうからおにいちゃんがふき取って上げるよ」
抱き上げて寝かせてやる
そして、着物の前を開いておみつの股間に顔を近づけた
「おにぃちゃん!…そんなとこ、見ないでよぅ」
恥ずかしいのか足を閉じてしまった
「恥ずかしいことなんてないよ?おみつは恋人さんなんだから…さぁ見せてごらん」
「おみつがおにぃちゃんの恋人さん?」
「そうさ。だからみせてごらん?」
そう言うと、おずおずと開いた
さっきよりもぐっしょりと濡れている
うすい紅色のそこから期待するかのように汁が滴り落ちる
ちょっと顔を上げておみつを見る
真っ赤な顔をして、どうするの?というような目で見つめていた
ちゅっ
「ふわっ!」
ちゅ…れろれろ…
「やぁん…ああ…」
ちゅ…ぢゅ…れろ…
溢れる水を舐め取りながら舌先で入り口にある隠れていた蕾を探し当てるとコロコロと転がしてやる
「あ…あああ…おにぃちゃん…おにひちゃん!なんか…なんかへんだよぅ…おまたが…おまたが…」
舐めれば舐めるほど溢れ出てくる汁…
だんだんと喘ぎ声が熱くなってきた
「ああああ…やぁん…あん…」
ももで頭を締め付けるおみつ
喰らいつくようにそこを責める
「あっ…あっ…ああ。やぁ…なっ…なんか…なんかくるよぅ…おにひちゃん…やぁぁぁ…おにひちゃん!!」
下の口に舌を差し入れ丹念に舐める
手を伸ばしその小さな胸の小豆を爪で引っかくように摘む
頭をぎゅうぎゅうと締め付ける
「やぁぁぁぁぁ!おにひちゃん、おにひちゃん…あぁぁぁぁぁぁ!!」
イッてしまったのか体をしならせてビクビクと震えるおみつ
くったりとしてしまった
「…やりすぎたか?」
体を抱き寄せて抱きしめる
荒い息はだんだんと治まっていった
「おにぃちゃん…」
「だいじょうぶか?おみつ…」
「うん…。おにぃちゃん?あのね?」
「うん?」
「おにぃちゃんにおみつの…もらってほしいの…」
「え?」
「おみつもおにぃちゃんのおちんちん…ほしい…の……」
「……」
「だめぇ?」
「だめなものか!」
抱きかかえ、少し体を浮かせてやる
「おみつ?行くよ?」
「…うん」
少しずつ入れていってやる
「う…ううん。あん…おにぃちゃん…」
「痛いかい?」
「……」
我慢するかのようにふるふると頭を振る
すこしずつ…すこしずつ…
口づけしながら、彼女の中へと…
前に一度入れたというのに、きつい
「やん…やぁぁぁぁ」
痛いのか涙を浮べながら受け容れてくれるおみつ
あるとこまで来た時に、何かが阻むように行く手を遮った
「え?」
前に…まさかこれは?
そのうちに阻んでいたものは突然、つぷっと抵抗できなくなったかのように入っていった
「やぁぁぁぁ…。いた…いたぁ…」
「大丈夫か?おみつ!」
弱弱しくも頭を振る
「おにぃちゃん…わたしぃ…やっと…」
「ああ。俺たちはひとつになれたんだ」
「おにぃちゃん!だいすきぃ」
ちゅ…ちゅぅ…
気が付けば、互いに腰を揺らしていた
愛おしさと
気持ちよさを追い求めるように…
くちづけをしながら互いを感じるように腰を使う
腰を使えば使うほど、心の中の獣が頭をもたげたように、おみつをほしがる
「おにいちゃん!おにぃちゃん!もっとぉ…もっとぉ…!」
「ああっ…おみつぅ!すきだぁ…!」
「みつもっ…みつも!だいしゅきぃっ…おにぃちゃん!おにぃちゃん!!も…もうわたしぃ…わたしぃ!!」
「おみつ…ああ、おみつぅ!!」
腰のふりはゆっくりとしたものから、小刻みに早く追い込むように二人打ちつけていく
「おにぃちゃん!おにぃちゃん!!なにか…なにかが来るよう!!
「ああああ…っっくぅぅぅ!!」
どくどくと、分身からおみつの中へと吐き出しているのがわかる
「ああっぁぁぁぁぁ…おにぃちゃん!」
いっぱいに抱きついてくるおみつ
「ジロちゃん…だいしゅき!」
「おみつ…ちゅ…」
その後、気だるさにふたりいつまでも身を任せていた…
その日、また太夫に呼ばれた
「ジロさん、ありがとう。最近のおみつとても幸せそう」
「いや…俺なんて」
「ううん。今までのおみつはどこか寂しげで、一生懸命頑張っていた。でも今はいつもとても楽しそう」
「…そうか」
「それで…今日来てもらったのは…」
突然、太夫が少し廊下のほうを伺うような素振りをした
「?」
「…おみつ?そこにいるの?居るならば入って来なさい」
………
…ころん
小さくあの土鈴の音が聞こえた
「…失礼します」
すっと戸が少し開いたと思ったら、すーーーっと開いておみつが入ってきた
「おみつ?お客様との話に聞き耳を立てていてはダメよ?」
「…はい」
「おみつも女郎の何たるかを習っているのだから、例えどんな話でも聞き耳を立てるなんていうことはしてはいけないの、分かった?」
「…はい」
おみつは泣きそうな顔で俯いている
「おみつ?ジロさんのこと、好きなのね?」
「…はい」
「わたしがジロさん盗っちゃうと思った?」
「はい…」
「…ふふ」
頷くおみつにやさしく微笑む太夫
「ジロさん。おみつに何か言ってあげて」
「おみつ。聞き耳を立てるなんてダメじゃないか」
「…はい…ジロちゃん…」
しゅんと肩を落とすおみつ
「俺が太夫となにかするとでも思ったの?」
「……」
「そんなことあるわけないじゃないか」
「でも!ジロちゃん…」
「でもじゃない」
「……」
今にも泣きそうなおみつ
「おみつ?ほら、おいで?」
手を差し伸べてやるとおずおずとやってきた
「俺がおみつを悲しませるようなことすると思ったか?」
「……」
「そんなことあるわけないじゃないか。だから、おいで?」
「おにぃちゃぁん!!」
すがり付くように胸に飛び込んできたおみつ
そのまま、抱きしめてやる
「ふふふ。すっかり、仲良しさんね」
「太夫…」
「おみつも幸せ者ね」
「そうかもな」
「それで、今日来てもらったのは、おみつのことなんだけれど……」
「体と記憶のこと?」
「そう。契ってもすぐに忘れてしまうし、体もすぐに元に戻ってしまうの。けれど安心して?記憶は出来ないみたいだけれど、体は覚えている。だから、どんどんジロさんを求めるようになる」
「そうか…ならよかった」
「…なんのお話してるの?」
「おみつが可愛いってことをさ!」
「可愛い…♪ 」
そう言って真っ赤になるおみつ
「だから、ジロさんいつまでもおみつをよろしくお願い」
「任せといてください!」
「ジロちゃん」
「おみつ…ちゅっ!」
そんな二人を見てやさしく微笑む太夫…
店の庭には、大きな櫻の木がある
次郎とおみつが結ばれ、互いのことを認めあった翌日、二人のことを祝うように一斉に咲き出した
それと共に、その足元…薄い桃色、濃い桃色といった櫻のような花をつけた草が一斉に咲いた
「ほら、おみつ。さくら草が咲いたよ」
「うん!ジロちゃん。きれぃねぇ」
櫻の下で次郎はおみつを抱きかかえながら二人で花を楽しむ
「まぁな。でも、俺は華やかなサクラよりもこっちのサクラの方がもっと好きだな」
そう言っておみつの耳をちろっと舐める
「やん…」
「へへへ…」
櫻を見上げ枝先の花を見たその向こうに、店の二階で太夫が酒を飲みながら二人を見下ろしているのが見えた
太夫がにっこりと微笑んで頷いた
こちらも笑顔で挨拶する
「何見てるの?」
「櫻さ」
「…太夫」
おみつは、笑顔で手を振った
太夫も、笑顔で手を振っている
…やはり、親子なんだな。そう思うと、自然に笑みがでる
そんなことを思っていると、おみつが言った
「ジロちゃん。今、太夫に見惚れていたでしょ!」
「いいや、櫻に見とれていたんだよ」
「うそ!笑っていたじゃない!」
「そんなことはないよー。ちゅっ」
「やん…ごまかされないの!ジロちゃんのばか!」
「俺が好きなのはおみつだけさ!ちゅ…」
耳へ口づけをしてれろれろと舐めてやる
「やん…ジロちゃん…あっ…ああん」
「れろれろ…」
「ああん…」
戯れる二人
そんな様子をやさしく見守る太夫
櫻の木は満開で、いっぱいに空を仰ぎ見るさくら草が咲き誇る
その元で、甘い嬌声はいつまでも響いていた…
暖かな日差しがやってくる
朝はまだまだ寒さも残るが、昼にはうとうととしたくなるような陽気
そんな日差しに誘われるように草木の蕾が膨らんで
あたたかな日々を待ち焦がれているといった
そんな頃…
とある町…
明け五つ頃とある店の裏手から一人の男が中へと入っていった
「ごめんよ!洗い屋でござい!召し物、腰巻、ふんどしなんでも洗うよ!」
「はーい!」
男が呼びかけると中から、女が出てきた
「あら、ジロさん!これなんだけれど、今日もお願いね」
「あいよ!いつものようにまっさらにしてやんよ」
「頼んだわー」
「いつもご贔屓にしてくださっているんだ。まかせとけ!」
男は、洗い屋であった
名を、次郎
お得意様を回り、こうして洗い物を受け取っていくのだ
「あっ!おみつー?洗い物ないー?ジロさん来てるの!太夫の洗い物ない?」
女が店の廊下に少し見えた少女に声を掛ける
まだあどけなさが残る少女がこちらに小走りでやってきた
「ジロおにぃちゃん!おはようございます!」
「おみっちゃん!おはよう!今日もいい天気だな」
「うん!」
元気いっぱいの返事。それは、“おみつ”と言う名の少女
おかっぱ頭で、赤い着物を着て、帯には握りこぶし位のコロコロと鳴る土鈴を付けている
くりくりっとした可愛い目が印象的な女の子
この店の太夫お付の禿(かむろ)で遊女の作法や接客などを習っていた
いつも明るく元気いっぱいなので、皆からおみっちゃんと呼ばれて可愛がられていた
「んで、洗い物はないかい?」
「うん!ちょっと待ってね?」
とてとて…と店の奥へと小走りに行くと風呂敷に包んだものを持ってきた
「ジロおにぃちゃんお願い!」
「おう!任せとけ!」
受け取った風呂敷を小脇に抱える
そうして、頭を撫でてやる
「よしよし…おみっちゃんも今日一日頑張れよ?にぃちゃんも頑張るからなぁ!」
「やん…撫で撫でしないでよぅ…」
嫌がっているふりをしているけど、顔はまんざらでもない
撫でてやらないとむくれてしまうことがあるから、いつも撫てやるのが次郎の日課だった
「よしよし、おみっちゃんを撫で回したところで俺も仕事に戻るかな」
「もう!おにぃちゃんたらぁ…」
髪を手櫛ですきながら非難を上げるが、その顔は満面の笑み
「ははは、んじゃ。また後でな…」
そう言って、次郎はその店を後にした
おみつの笑顔を見て今日も何かいいことがありそうだと思う次郎だった
お得意様を回って、洗い物を回収
仕事場へと戻ってそれらをよく洗う
すえた臭い、女の臭い・・・いろいろな臭いが染み付いている
いい臭いではないが仕事だと割り切って洗う
遊里の店の場合は人の体液も付いているから念入りに洗ってやる
そして、干して畳んでまた届ける
そんな毎日。けれど、あの遊郭へ行くのは楽しみだった
あのおみっちゃん。いつも明るく元気いっぱいで次郎の心をほんわかとさせてくれるのだ
幼いのにいつも一生懸命。なにがあっても頑張っている姿を見ると、自分も頑張らなければと力が湧いてくる
その日、足どり軽く乾いた洗い物を届けに来ると、女がやってきて言った
「ジロさん。ちょっといい?」
「ん?なんだい?」
「実はね?ジロさんが来たら案内してくれって頼まれているの…」
「ん?どこへ?」
「太夫の所へ…」
「太夫に?」
「ええ。なんでも相談したいことがあるとかで・・・」
「俺にかい?」
「そうみたい。だから、来て?」
「わかった…」
案内される店の中…
柱や壁はところどころ朱色に塗られている
次郎は物珍しくて、キョロキョロとしてしまった
昼はこんなにも明るく開けたように見える
女郎達も、自然な雰囲気でとても男を惑わすような感じではない
気軽にジロさんと声を掛けてくれる様は、どこにでもいる女達に見える
おしろいもこの時間は付けてはおらず、鏡の前で数人で笑いあっている様子や、客からの贈り物で騒いでいる様子などは、年頃の娘たちそのままであった
それが、夜になればあの妖しく、淫靡な雰囲気に様変わりするのだ
次郎は夜の遊里へと来たことは、ない
洗い物を届けるのが遅くなってしまったときに来たのみだ
男の欲望を受け止める為にどことなく顔つきまで変わってしまっている女達
薄暗い行灯の光に照らされて、誘うように、受け容れるように男と交わろうとする様
揺らめく光が影を操り、違う生き物へと変貌させてしまったかのように、その目つきすら変える。
昼の明るく朗らかな顔は、夜には獲物を狙う猫のような目つきで妖しく微笑み嗅いだ事もないようなにおいをその身に着けて、華やいだ衣装を纏っているのだろう
そんな昼と夜の違いに戸惑いを感じ得なかった
商売抜きで誘われたこともあるが…
どうも、その違和感が拭えなくて断ってしまった
そんなことを考えていると太夫の部屋とやらに着いてしまった
「太夫はいまここにいないから、呼んでくるわね?」
「…ああ」
「中に入っていて?」
この店一番の売れっ娘。その美貌、ひと目見ただけで男を虜にしてしまうその雰囲気…
彼女が微笑みかけただけで、男をいとも簡単に惹き付けてしまうそんな不思議な女だった
この街一番のお店の旦那やどこかの偉い侍まで遙々遠方からやってくるほどだった
当然、次郎も惹かれたがこんな洗い屋の男…櫻を愛でるようにひと目見ればそれで十分と思えるほどだった
そんな、憧れの女。それに呼ばれていると言う…
普段、太夫がいる部屋に案内された次郎…
そのどこか格式高い部屋は、大層居心地が悪かった
こんなところ縁のないと思っていただけに…
見たこともない鏡のように光を反射させるつやを持つ漆塗りの箱、どこかの都を描いた…まるで天竺を描いたような雅な金屏風
普段まず、お目にかかることのない品々…
上を仰ぎ見れば、部屋の欄間には見事な櫻が透かし彫りに咲いていた
見たことも触ったこともないふかふかの座布団に身を縮めるように座っていると、太夫がやってきた
「ようこそいらっしゃいました次郎さん」
「なにか御用があるという事ですが?」
「次郎さんに頼みたいことがあります」
頼みたいこと?
「?」
「おみつのことです…」
「おみっちゃん?」
意外な名を出されて戸惑う次郎
「はい。あの子もずいぶん長く私のお付きをやっているのですけど…ちっとも大きくならないようなのです」
「…そうだなぁ。同じくらいにやってきた娘がもう禿から新造…客取るようになったしなぁ。禿だった頃は、おみっちゃんと同じくらいの女の子だったのに、今はもう女ってぇ体つきだしなぁ」
「はい。それをおみつは気にしているのです…。見た目は明るく元気に振舞っているけど…」
「…大きくなれねぇのはなにかワケでもあるのかい?」
「ええ…」
太夫は少し目を伏せると、うつむき気味に語り始めた…
「次郎さん…私ね?淫魔なの…」
「え?」
「人の女ではないの…」
「?…どういうこと?」
「待ってね…」
そういうと、太夫は立ち上がり屏風の後へと隠れた
衣擦れ音
次郎はどきまぎした…
「次郎さん」
顔を上げると驚いた
誰もを惹きつける太夫の裸体…
心の中の獣を刺激されるような動悸のような疼きを感じる。…見ているとだんだんと心の臓が早く脈打つのが分かる
無意識にそれを目に焼き付けようと全身をくまなく見ていると、その腰あたり…体と比べれば小さいが翼が…あった
腰と尻辺りから伸びる尾
太夫の頭にも角が伸びている
黒かった瞳は、赤く…一度目を合わせたら吸い込まれてしまうかのような惹き付けられてしまうかのような瞳だ
ごくりと喉が鳴る
「た…太夫…」
「次郎さん…どう?」
「あっうわ…きれいだ。人じゃないなんてそんな事どうだっていいじゃぁねぇか…」
「よかった…」
いつまでも見ていると飛び掛ってしまいそうで、無理に次郎は目を反らした
「それで、おみっちゃんとどう関係があるんだ?」
再び衣擦れ音…
着物を着直すとまた次郎の目の前に座った
「おみつは…私の娘なの…」
「太夫の?!」
「あの子も私と同じ淫魔になるはずだった…でも、いつまでも子供のまま。私ね?気付いたの…あの子は、淫魔でも大きくなれない種なんだって…」
「そんなのがあるのかい?」
「ええ。稀にそういうのが生まれてくるの…。幸い、ここの主人は私の本当の素性を知っているから、おみつについては私の好きにしていいって言ってくださっているの」
「そうかい…」
「それでね?次郎さん?あなたにおみつのこと…頼みたいの」
「俺にかい?」
「あなたに一番懐いているから…あの娘の支えになって…」
どこか懇願するような太夫に、知らずに返事を返していた
「わかった。俺もおみっちゃんのことをいつも気に掛けていたし、こんな俺でいいのならば任せてくれ」
「ありがとう」
そう言って笑った太夫。その顔は、慈愛に満ちた母親の笑顔だった
シャランッ!
部屋の片隅にある鈴付きの紐を太夫は引っ張った
部屋の向こうから、カラコロと土鈴の音と、とてとてと足音が近づいてくる
「しつれいします…」
と声が聞こえ、おみつが入ってきた
その時、一瞬…あれ?っというような顔をしたおみつ
「おみつ?次郎さんのお帰りです。送ってさしあげなさい」
「はい。わかりました太夫。次郎さんこちらへ…」
「では、太夫」
「はい。よろしく頼みました」
にっこりと笑った太夫
そんな太夫と次郎をおみつは訝しげに見ていた
「さぁ、おみっちゃん行こう?」
「…はい」
先を行くおみつの顔は優れなかった
その日、いつものように洗い物を取りに来て再び洗い物を持ってやって来ると、いつもの女が待っていた
「ジロさん。ねぇ…なんだかおみっちゃんの元気がないの…何か知らない?」
「おみっちゃんが?」
「ジロさんが、太夫に呼ばれてからなんだけれど…なんだか妙にしゅんとしちゃって…覇気がないの」
「?…いや…わからねぇな。そういやぁ朝、見なかったな…」
「おみっちゃんがいつも懐いているのはジロさんでしょう?だから、何か知らないかと思って…」
「…とにかく、何があったかおみっちゃんに聞いてみるわ」
「お願いね」
そうして、女はおみつを呼びに行った
おみつがやって来た
いつもだったら、とてとてと足どりは軽そうなのに、今は重そうだ
話を聞くためにとある部屋へ入る
どこか暗いおみつ…
「こんちには!おみっちゃん!」
いつものように挨拶をする次郎
「…こんにちは」
? 声は暗く、どこかよそよそしい
「どうした?おみっちゃん」
「…どうもしないよ」
「なんだか、元気ねぇな」
「……」
「どうしたんだよう…」
しばらく、何も言ってくれなくなったおみつ
どうしたものかと思案していると、おみつが重たそうに口を開いた
「…おにぃちゃんは…太夫のことすきなの?」
「…なんでそう思ったんだ?」
「だって…おにぃちゃん。この前、楽しげにしてたじゃない…」
「部屋に呼ばれたときのこと?」
頷くおみつ
「まぁな。確かに太夫のことは好きだぜ?俺も男だしなぁ」
「やっぱり…」
悲しそうに顔を伏せるおみつ
「でも、それは知り合いということからだぜ?」
「おみつよりも太夫の方がいい?」
「おみっちゃん。なに言ってんだ?俺はおみっちゃんも好きだぜ」
「わたし、おにぃちゃんのこと好き。でも、おにぃちゃんが太夫のこと好きだって言うのなら…」
「…おみっちゃん。言いたいことはなんとなく分かった。だが、俺と太夫じゃぜんぜんつり合わないよ。太夫は言ってみりゃ櫻よ。櫻っていうのは、可憐で華やかで煌びやかで逞しく綺麗に見えるそんな花だろう?誰もが目を奪われ、誰もが好きになる、誰もが憧れる。櫻って言うのはそんな花だ。嫌いだなんていう奴はそうそういねぇ。けどな…俺も憧れるが、手の届かねぇもんだ。だから…よ、おみっちゃんが思っていることなんてこれっぽっちもないぜ?」
「うそっ!だって太夫、ジロさん見るとうれしそうな顔するもん!あの時なんて、ジロさんの隣で笑ってたもん!あの笑い方はお客さんに見せる顔じゃないもん!!」
「なぁ、おみっちゃん。櫻ってのは上に咲いてるだろう?俺にゃぁ眩しくっていけねぇや。眩しすぎるすぎるんだ。それにあんまり上ばかり見てると首が痛くなってくらぁな。だからよ、俺には手の届かねぇ人なのよ。わからねぇかい?」
「わからないよぉ!おにぃちゃん」
「上ばかり見てるとな?下に見えるもんも見えなくなっちまうんだぜ?」
「下に見えるもの?」
「なぁ、おみっちゃん。…櫻の時期に咲くのは、それだけじゃないんだぜ?櫻に似つつもさくらな花を知らねぇかい?」
「?」
「さくら草だよ。おみっちゃん」
「さくら草?」
「ああ。櫻に似た花をつけながら地に咲いているんだ。俺はあっちの方が好きだなぁ」
「…あんなちっちゃい花を?咲いてても誰も見ようとはしないよ?」
「俺は、ちぃっちゃいとも、影の薄い花だとも思ってねぇよ。きれいな花を咲かせてピンと上を向いて咲いてるじゃねえか。それが、おみっちゃんと重なっちまってよぉ…」
「わたしぃ?」
「ああ。いつも明るく元気に頑張ってるじゃねぇか。俺は、そんなおみっちゃんのこと…好きだぜ」
「おにぃちゃん…」
「太夫とか他のねぇさんとか見習って、まっすぐ頑張って生きてるおみっちゃんのこと俺、好きだぜ」
「っ…おにぃちゃぁぁん!」
にっこりと笑い掛けてやると悲しげな顔が、ぱぁぁぁっと明るい顔になったおみつ
「ほら、おいで?抱っこ」
「うん!」
胸に飛び込んできたおみつを大事に抱きしめる次郎
「えへへ…」
髪を何度もなでてやる
「おにぃちゃん…」
気持ちよさそうに目を細めて撫でるに任せているおみつ
「だから、気にするな。おみっちゃんが望むならいつだって側にいてやるよ?」
「ほんとうに?」
「本当の本当…だから、な?」
「うん!」
それから、いつもの元気を取り戻したおみつ
次郎が店にやってくるといつもべったりと傍らにいるようになった
「おみっちゃん。いつもジロさんにべったりとしているわね…なんだか妬けちゃうわ」
「ははは。おみっちゃんもいい年頃と言うところなんでしょ」
「そうねぇ。恋をしてもいい頃よね」
「恋…」
「あーあ。わたしにもいい人現れないかしら…」
「ねぇさんなら、そのうちいい人あらわれますよ」
「そうだといいけどねぇ…」
昼すぎ…
いつものように洗い物を届けると…部屋へと誘われた
「おにぃちゃん…」
「どうした?おみっちゃん」
「…抱っこ」
「よし…おいで?」
抱っこしてやると照れたように顔を赤くする
「えへへ…おにぃちゃん?」
「ん?」
ちゅ…
「え?」
「こうするとね?おにぃちゃん喜ぶって太夫が…」
唇に、小鳥がついばむように口づけをするおみつ…
「おみっちゃん…」
ちゅっ
今度は、次郎が口づけしてあげた
「えへ…えへへ…」
ますます真っ赤になるおみつ
すぐそばで見つめていると、なんだかどうしようもなく可愛くて抱きしめたくなってきた
「おみっちゃん」
「ん?なぁに?おにぃちゃん」
「いやぁ…」
ギュッと抱きしめてあげる
体に感じる彼女のあたたかな温もり
なんだか、体が熱い
間近に見るおみつ…いつも間近で見ているのにとても可愛く見えた
「…ねぇ。おにぃちゃん」
「なんだい?」
「おにぃちゃんのお股…なにかがおみつのお尻に当たっているよ?」
「え?」
ちょっと退くとおみつは着物の下に、大きくなっているところを指差した
「おにぃちゃんのおちんちん?」
「あっ…いや…」
「おにぃちゃんのおちんちん…」
おみつは着物を除けてふんどしのに隠れている分身を探し出してしまった
「…おっきい」
驚いた様子でまじまじと見つめるおみつ
見られていることでますます大きくなる分身…
「お…おい。おみっちゃん」
じーっと見つめるおみつ鼻先まで寄って見つめている
と……
チロッ
「!」
小さく赤いおみつの舌が先を舐めた
「えへ…えへへ」
「おみっちゃん。なんで…」
「太夫が、男の人はこうするととても喜ぶんだよって」
「太夫ぅ…」
そうして、おみつはぺろぺろと舐めはじめた
「おみっちゃ…だめ」
「おにぃちゃん…おちんちんびくびくってしてるよ?」
「っ…ぅぁぁぁぁ…おみっちゃん…」
おみつに舐められている。それは子猫が乳を飲むようにちろちろとぺろぺろと控えめになめてくる。くすぐったいような気持ちよさが心を溶かしていく
幼い子にこんなことさせていいのか?と背徳的な心とどんどんともっとしたいという欲望が頭の中をぐるぐると駆け回る…
「おにぃちゃん。気持ちいい?」
「くぅぅぅ…」
「くるしそう…ねぇおにぃちゃん。我慢しなくてもいいんだよ?」
「おみっちゃ…ん。我慢なんか…してな…ぃ」
「んじゃぁ…もっと舐めてあげるね」
あむ…と、頬張ると小さな口の中で分身を転がし始めた
「ん…じゅる…んんん…おにひちゃん…」
両足の間で丸まって、小さな手を添えて分身をやさしく掴むと頬張るように口の中で転がす
「きもちいい?」
上目使いでそう繰り返すおみつ
「ああっ。おみっちゃん気持ちいい…」
「…よかったぁ」
そう言いながらも舌と口で飴玉を転がすように舐め、ころころとしゃぶる
「おにひちゃん…?なんだかこの袋のお玉とおちんちんがビクビクしてきたよ?」
せり上がる射精感を必死で耐える次郎…
「っく…」
歯を食いしばる次郎
「おにぃちゃん。苦しそう…待ってね?」
そう言うと今度は口に入れられるだけ入れて扱き始めた
「う…ちゅる…じゅ…うん…あう…む…ちゅっ…ちゅる……」
「あああ!おみっちゃ…俺…もう…!」
「おにぃちゃんが泣きそうな顔してる…。うん!いいよぅ我慢しなくていいよぅ!」
健気にもそう言ってくれるおみつ。けれども、口を放してくれない。そのまま舐めしゃぶる
そんな様子にとうとう、限界が…
「うっ!」
「ふわぁ!」
どくどくと小さな口に精が吐きだされる
口に収まりなくなったのが溢れだす
小さな口は白い精で汚れてしまってた
「おにぃちゃん…の…おしっこ?」
こくんこくんとちいさのどが動いて、飲み込んでいく。
飲み込むごとに、瞳の焦点が合わなくなってきたように見えた
だんだんと飲み込むごとに、目がとろんとしてきていく
口からこぼれて顎にたれている精を手で掬ってぺろぺろと舐め取っていく
それがどうしょうもなく、淫靡で他の女郎達にも負けないぐらい妖しい顔をしていた
「おみっちゃん……」
自分の手についた精を赤く小さな舌で丹念に舐め取るその姿…
それがどうしようもなく、我慢できないほど可愛かった
手を舐め続けるおみつをぎゅっと抱きしめる
「…おにぃちゃん?」
おみつは、蕩けたような顔をしてとろんといつまでもしていた
次郎も、そんなおみつがどうしょうもなく可愛くて彼女をほしいと感じていた
いつしか、彼女の唇を奪っていた
とろんとした目が一瞬驚いたようだったが、それはすぐに喜びの目に変わった
口を開いてやり、かわいい舌を見つけ出す
精の味なのか変な味がしたが、構わずにおみつの舌を舐める
ちろちろと動くその舌…
抱きしめながら、手はその小さな体の帯を弛めに掛かっていた
しゅるっ
という音を残して帯が解けた。そのちいさな赤い着物を脱がしてやる
きれいだった
白い肌
赤子のようにもちもちと弾力を持ちながらやんわりとした感触
ふんわりともしてる
唇を一旦離し今度は首筋をなめ伝いながら、まだ未発達の胸の膨らみを頬張る
「やぁ…」
その甘えた声…
一気に欲望を刺激された
じゅるじゅると音を立てながら嘗め吸い、ぽっちりとした小豆のような乳首をあま噛みする
「あふぁ…おにぃちゃん…。やぁ…」
「おみつ…嫌なのか?それともいいのか?」
「やぁ…」
おみつはぐいぐいと頭を抱きしめる
やめないでと言いたげに…
片手でその小さな体の感触を愉しんでいると、違和感があった
腰とお尻辺りになにかぶつかる
おかしいと思って胸から顔を離してみる
「やぁ…やめないで…」
抱きしめている片手を離し揉みながらその乳首をこねてやる
肩越しに腰を見るとそこには…
あの太夫に見た蝙蝠の様な翼と先が桃のような形の尾があった
見れば耳の形も人のそれから、尖った形へと変化している
違う種だとか言っていてもやはり、親子なのだろう…
この心の底から彼女を抱きしめたいという感情、彼女もまちがいなく淫魔だということなんだ…
「おにぃちゃん…」
彼女の手が分身をこすこすと触る…
分身は痛いほど勃っていた
さっきから、また彼女に精を放ちたくて、心が焦れる…
もう、淫魔だとか妹だとかそんなことはどうでもよかった。ただただこのちいさな子と快楽を共にしていたかった
再び、胸にしゃぶりつきながら乳首を刺激してやる
「あっああ、やぁ…」
うれしそうな声が耳朶に響く
胸をあじわいながらも、下に手を伸ばす
毛も生えていないつるつるとした所を撫で回しながら…
甘い声を出しながら嫌がろうともぜずに、するに身を任せている
下の口に手が行き着くと満遍なく擦ってやる
「あ…あああ…おにぃちゃん…なんか、へんだよぅ」
「なにが変なんだぃ?」
変と言われて手を止めると、自分で擦り付けてきた
「ああぁ…おまたが…おまたが…」
「これがいいのかい?」
「うん。おにぃちゃんのおててが…おみつのおまたを…に…」
だんだんとそこが濡れてきた
指を中へと入れるとしっとりとしていて放さないかのようによく締まる
「おにぃちゃん…。なんか…なんかへんだよぅ」
秘唇まわりを揉んでやる
「あ…ああ…あん」
揉むと中に入れた指が擦れるのか、甘い声を上げて腰を揺らしている
「おにぃちゃん…へんだよぅ…」
顔を見ると真っ赤でおかっぱ頭から尖って長く伸びた耳が櫻のように桃色に変わっていた
おもわず顔を上げて、口に含んでレロレロと舐めてやる
「ふわっ!」
突然のことに驚いたらしく、びくっとして尻餅をついてしまった
「だ…大丈夫か?おみっちゃん」
「う…うん大丈夫。ねぇ…おにぃちゃん…」
「なんだい?」
彼女の視線が腰を見つめていて離れない
そこには、痛いほどはちきれてる分身があった
「おにぃちゃん…おちんちん…」
「それは…」
「おちんちん…ほしい…よぅ」
「っ!」
なんだか今の言葉…背筋に…
「ねぇ。おみつにちょうだい?」
「…あ…あああ」
彼女の目が赤く光ったように思った
ほしい。ちょうだい…その言葉が頭の中をぐるぐると廻り回る
たまらなく、彼女に入れてやりたい
抱きかかえて、寝かせてやる
股をひらくおみつ
「おにぃちゃん…」
期待するかのような眼つきに何かが弾けたような気がした
「いくよ…」
「ん」
その小さな入り口に手を添えて少しずつ入れていく
ある程度濡らしていたとはいえきつい…
「あ…あああ…いた…痛いよう…」
「…っ…くっ!」
ずりずりと奥へ奥へ……
おみつの悲鳴…
「ちからを抜いて!おみっちゃん!」
やめたくともやめられなかった。その声に、すこしだけ力が抜けたおみつ。そんな彼女に何度も呼びかけた
「もう少し!もう少しだ!!」
急に何かが中で阻むようなそんな感じがした
「おにぃちゃん。おみつは我慢するよぅ…だから…ねぇ…」
とにかく、楽にしてやりたくてそのまま突き進む
阻んでいたものは突然、つぷっと抵抗できなくなったかのようになった
「あっああああ!い…いた…!」
痛がりように一旦引き抜くと分身に血が付いていた
「ぁっぁぁぁ…これは…」
「はぁはぁはぁ…お…おにぃちゃん…」
抱きしめて口づけしてやる
「すまない。おみっちゃん…」
「ちゅ…うんんん…おにぃちゃん…おみつ大丈夫。だから…ね?」
瞳に涙を溜めながらも、一生懸命に微笑むおみつ
「よく頑張った。けど、もうすこしこのままでいよう」
次郎はすこし体を浮かせると、おみつに言った
「おみっちゃん?見えるか?俺とおみっちゃんつながっているんだ」
「おにぃちゃん…」
「俺たち、ひとつになったんだ」
「おにぃちゃんとひとつ…」
「そうだよ。俺たちはふたりでひとつなんだ」
「おにぃちゃんとおみつでひとつ…ひとつ!」
ぱぁぁぁっと顔が明るくなる
その途端、きゅっとおみつの膣が次郎の分身を締め付けた
「うぁ!」
「ねぇ…おにぃちゃぁん……?きもちよくなろう?わたしぃ…もっとおにぃちゃぁんのことぉ…きもちよくなってほしいぃ…」
「おみっちゃん」
あつく濡れそぼったおみつのあそこにいまにも出してしまいそうなほど、気持ちよかった
けれども、自分だけが気持ちよくなるのではなく、痛がってようやくつながりあった喜びを二人で感じたかった
「うごくよ?」
「うん」
にこりと笑ったおみつは幸せそうだった
腰を動かし始めると次郎はすぐに余裕がなくなった
分身を持っていかれるようにその中は吸い付いてきたのだ
ぴったりとして放さないかのように。腰を引くと放すまいときつくなる。突き入れようとすると、入れやすいようにゆるんできつくと波打つように分身に刺激が与えられるのだ
あまりの気持ちよさに腰が止まらない
耳からは、おみつが名を呼ぶ声と甘い吐息ががひっきりなしに聞こえてきて、そんな声をもっと聞きたい。もっとこの声をよがらせてやりたいと、思うようになっていた
ちいさな体なのに、こちらの体を受け止めて一心に受け入れてくれるおみつ。すべてを飲み込もうとするように、その中は絶えず伸縮して吸い付いて放そうとしないのだ
ずっと…ずっと…いつまでも続くと思っていたが…そのときは迫っていた
「あああああんんっ!おみつ…おみつは…おにぃちゃぁぁぁぁん!」
「おみつ!!…っく!!」
ドクドクとその小さなお腹の中へと欲望が吐き出された
けれど、それがまたいままでとは違った感触を生み出した
「うっ…あっあっぁぁぁ…」
「あっおにぃちゃぁぁぁぁぁ!!」
とんでもなくあついどろどろとしたものに、もう一度ふたりでイッてしまうほどの気持ちよさ…
いつまでも、ふたりでその余韻に浸っていた
「…おにぃちゃん」
「おみつ…可愛かったよ…」
「えへへへ…」
「……」
「……」
その後、いつまでもふたり口づけを交し合っていた…
髪を優しく撫でてやると気持ちよさそうに目を細める
胸の中で幸せそうに微笑むおみつを見ながら、次郎も幸せを噛み締めていた…
しばらくして、我に返った
…しまったあんまりにも可愛くてついやってしまった
いつの間にか…おみつは疲れたのか寝てしまった
布団を敷いてそれに寝かせてやると、とても幸せそうな顔して寝ている
髪を撫でてから、厠へと行こうと部屋を出ようとした
戸を開けると…
大勢の女達が興味深々と集まっていた…
「ジロさん!おみつとやっていたの?」
「ジロさんはちっちゃい娘の方が好きだったんだ…」
「まっ昼間からやるとは…ジロさんも隅に置けないわねぇ…」
「それで?どうなのよ?」
「ジロさんはおみっちゃんのことどう思っているの?」
「……」
ストッ
なにも答えずに戸を閉めた
『ああっ逃げた!』
『ジロさーん』
『ジローさーん…』
…まさか
聞き耳を立てられていたとは…
おみつの顔を見てから覚悟を決めて、戸を開ける
「出てきた」
「それでどうなの?」
「おみっちゃんは?」
「おみっちゃんは疲れたのか寝てる。んで、俺は…おみっちゃんのこと好きだよ。抱っこしてたらなんだかすごく可愛く見えてきて…。気が付いたらおみつが俺のちんこを弄んでいたんだ…それで…」
額に手を当てながらあの時のことを考える。なぜそうなったのかよくわからないけれど…とても可愛く見えた
「そうなんだ。おみつにジロさんとられちゃうとは思わなかったわ…」
「……」
「これから…どうするの?」
「わからない。欲望にまかせてしちゃったからな…」
『どうしたの?』
そんな時、突然廊下の奥から声が掛かった
「あっ!太夫ねぇさん」
「実は…ジロさんとおみつが…」
女達から事情を聞く太夫…
話を聞いているその顔は、だんだんとうれしそうに笑っている
「ジロさんとおみつ…。それはよかったわねぇジロさんありがとう。これでようやくおみつも女になれた」
「いや。太夫…俺は…」
「いいえ、ありがとうジロさん。それで…おみつは?」
「寝ている」
部屋の中には幸せそうな顔したおみつが見える
「本当にうれしかったのね。幸せそう」
「抱っこしていたら、なんだかとても可愛く見えて…」
「ふふふっ」
とてもうれしそうに笑う太夫
「ジロさん。あの娘のことよろしく頼みます」
「え?ああ。それは構わないが…」
次郎に一礼すると、太夫は去っていった
「太夫がジロさんとおみっちゃんこと認めてくれたの?!」
「よかったわね!ジロさん」
「ああ」
皆に聞かれていたのはどうかと思うが、認めてくれて良かったと思う
翌朝、洗い物を取りに行くといつもの女が首を傾げて言った
「ジロさん…おみっちゃん…」
「おみっちゃんがどうかしたのか?」
「うん。あの後、すぐに起きたんだけれどみんなで冷やかしたら、覚えてないっていうの…」
「ん?覚えてないって?」
「ジロさんと恋人同士になったんだねって聞いたら、そうなの?って」
「恥ずかしいから、はぐらかしたんじゃないのかい?」
「そうなのかと思ったんだけれど…本当に覚えてないみたいなの…」
「……」
「それで、心配になって太夫に言ったら、心配要らないって…ジロさんも分かってくれるからって…」
「俺が分かる?太夫が?」
「そうみたい…」
「うーん。よくわからないが…そういうものなのかもな…」
「なにか知っているの?」
淫魔で普通とは違う種とか言っていたこととなにか関係があるなら、そういうものなのかもしれない
「いや、よくわからんけど…。おみっちゃんは、それを抜かせばいつも通りなんだろう?」
「ええ」
「じゃぁいいや。普段の記憶もなくなっちゃったとかだったら大変だけれどな…」
「そういうもの?」
「俺がおみっちゃんを好きなことに変わりはないよ。それで?本人は何か言っていた?」
「おにいちゃんと恋人どうしだったらいいなって…」
「そっか。今、おみっちゃんはどうしてる?」
「そろそろジロさんが来るから、洗い物まとめてると思うけど…」
二人で廊下の奥を覗き込む
どこからか、コロコロとしたあの土鈴の音が聞こえてきた
「あっ!おにぃちゃん!!」
次郎を見たおみつの顔がぱぁぁぁっと明るくなったのが見えた
「じゃぁ、あたしはこれで…あとよろしくね?」
「ああ。またあとで」
とてとてと大きな風呂敷を抱えてやってきた
「おにぃちゃん!おはよう!!はいこれ!」
「おはよう!おみっちゃん。うん…受け取った」
「あのね?…おにぃちゃん。おかしなことがあったの」
「うん?なんだろう?」
「みんながね?わたしとおにぃちゃん…恋人さんになったって…言うの」
「うん」
「ほんとぅ?」
「うん。…ちゅっ!」
そう言って、いつものように頭を撫でるついでに口づけしてみた
「おにぃちゃん?!…おにぃちゃぁぁぁん!!」
びっくりとした顔をして、幸せそうな笑顔を浮べるおみつ
「おみっちゃん。恋人同士の時間はまた後でな?期待しててな?さて、仕事に戻るよ…またな、おみっちゃん」
「うん!」
記憶がなくなったといっていたが…特にこれといって変わった様子はない
少し安心…さて、今日も仕事頑張りますかね…
お得意様へのお届けを早々に終わらせた次郎
うきうきとおみつの元へとやってきた
「よう!おみっちゃん」
「おにぃちゃん。お仕事もういいの?」
「おう、今日はもう店じまいだ」
「おにぃちゃぁん!」
突然、抱きついてきたおみつ
「おう!」
小さな体が足に抱きついて、すりすりと頬擦りしている
「おみっちゃん。ここではあれだから…部屋に行こう」
前に借りた部屋に行くと、そこで座る
目線がちょうどおみつと同じくらいになった
目と目が合う。たちまち潤んだ瞳に目が釘付けになった
「おにぃちゃん…」
「おみつ…」
ちゅ…と何も言わずとも口づけが始まる
「ちゅ…ちゅ…おにぃ…ちゅぅ…」
「みつ…うん…ちゅ…」
小さく可愛い唇を舐めると、みつも舌をだしてきた
舌先を絡めあう
「ちゅ…ちゅる…ぢゅ…」
「…ちゅ…ぢゅるっ…」
「おにひちゃん…おにひちゃんの…」
みつの舌を愉しみながら次郎は、着物の隙間からおみつの股に手を入れた
「ふわぁ!」
そこはもうすぐにわかるほど、しっとりと濡れていた
前は、まったくこんなことなかったのに、今度はもう濡れていた
「…おみつ?お漏らししちゃだめじゃないか」
「おにぃちゃん…わたしぃ、お漏らしなんてしてないもん」
「じゃぁ…これは?」
濡れた手を鼻先に持っていってやる
「……これはぁ…」
「いけない子だなぁおみつは…このままじゃぁ着物が濡れちゃうからおにいちゃんがふき取って上げるよ」
抱き上げて寝かせてやる
そして、着物の前を開いておみつの股間に顔を近づけた
「おにぃちゃん!…そんなとこ、見ないでよぅ」
恥ずかしいのか足を閉じてしまった
「恥ずかしいことなんてないよ?おみつは恋人さんなんだから…さぁ見せてごらん」
「おみつがおにぃちゃんの恋人さん?」
「そうさ。だからみせてごらん?」
そう言うと、おずおずと開いた
さっきよりもぐっしょりと濡れている
うすい紅色のそこから期待するかのように汁が滴り落ちる
ちょっと顔を上げておみつを見る
真っ赤な顔をして、どうするの?というような目で見つめていた
ちゅっ
「ふわっ!」
ちゅ…れろれろ…
「やぁん…ああ…」
ちゅ…ぢゅ…れろ…
溢れる水を舐め取りながら舌先で入り口にある隠れていた蕾を探し当てるとコロコロと転がしてやる
「あ…あああ…おにぃちゃん…おにひちゃん!なんか…なんかへんだよぅ…おまたが…おまたが…」
舐めれば舐めるほど溢れ出てくる汁…
だんだんと喘ぎ声が熱くなってきた
「ああああ…やぁん…あん…」
ももで頭を締め付けるおみつ
喰らいつくようにそこを責める
「あっ…あっ…ああ。やぁ…なっ…なんか…なんかくるよぅ…おにひちゃん…やぁぁぁ…おにひちゃん!!」
下の口に舌を差し入れ丹念に舐める
手を伸ばしその小さな胸の小豆を爪で引っかくように摘む
頭をぎゅうぎゅうと締め付ける
「やぁぁぁぁぁ!おにひちゃん、おにひちゃん…あぁぁぁぁぁぁ!!」
イッてしまったのか体をしならせてビクビクと震えるおみつ
くったりとしてしまった
「…やりすぎたか?」
体を抱き寄せて抱きしめる
荒い息はだんだんと治まっていった
「おにぃちゃん…」
「だいじょうぶか?おみつ…」
「うん…。おにぃちゃん?あのね?」
「うん?」
「おにぃちゃんにおみつの…もらってほしいの…」
「え?」
「おみつもおにぃちゃんのおちんちん…ほしい…の……」
「……」
「だめぇ?」
「だめなものか!」
抱きかかえ、少し体を浮かせてやる
「おみつ?行くよ?」
「…うん」
少しずつ入れていってやる
「う…ううん。あん…おにぃちゃん…」
「痛いかい?」
「……」
我慢するかのようにふるふると頭を振る
すこしずつ…すこしずつ…
口づけしながら、彼女の中へと…
前に一度入れたというのに、きつい
「やん…やぁぁぁぁ」
痛いのか涙を浮べながら受け容れてくれるおみつ
あるとこまで来た時に、何かが阻むように行く手を遮った
「え?」
前に…まさかこれは?
そのうちに阻んでいたものは突然、つぷっと抵抗できなくなったかのように入っていった
「やぁぁぁぁ…。いた…いたぁ…」
「大丈夫か?おみつ!」
弱弱しくも頭を振る
「おにぃちゃん…わたしぃ…やっと…」
「ああ。俺たちはひとつになれたんだ」
「おにぃちゃん!だいすきぃ」
ちゅ…ちゅぅ…
気が付けば、互いに腰を揺らしていた
愛おしさと
気持ちよさを追い求めるように…
くちづけをしながら互いを感じるように腰を使う
腰を使えば使うほど、心の中の獣が頭をもたげたように、おみつをほしがる
「おにいちゃん!おにぃちゃん!もっとぉ…もっとぉ…!」
「ああっ…おみつぅ!すきだぁ…!」
「みつもっ…みつも!だいしゅきぃっ…おにぃちゃん!おにぃちゃん!!も…もうわたしぃ…わたしぃ!!」
「おみつ…ああ、おみつぅ!!」
腰のふりはゆっくりとしたものから、小刻みに早く追い込むように二人打ちつけていく
「おにぃちゃん!おにぃちゃん!!なにか…なにかが来るよう!!
「ああああ…っっくぅぅぅ!!」
どくどくと、分身からおみつの中へと吐き出しているのがわかる
「ああっぁぁぁぁぁ…おにぃちゃん!」
いっぱいに抱きついてくるおみつ
「ジロちゃん…だいしゅき!」
「おみつ…ちゅ…」
その後、気だるさにふたりいつまでも身を任せていた…
その日、また太夫に呼ばれた
「ジロさん、ありがとう。最近のおみつとても幸せそう」
「いや…俺なんて」
「ううん。今までのおみつはどこか寂しげで、一生懸命頑張っていた。でも今はいつもとても楽しそう」
「…そうか」
「それで…今日来てもらったのは…」
突然、太夫が少し廊下のほうを伺うような素振りをした
「?」
「…おみつ?そこにいるの?居るならば入って来なさい」
………
…ころん
小さくあの土鈴の音が聞こえた
「…失礼します」
すっと戸が少し開いたと思ったら、すーーーっと開いておみつが入ってきた
「おみつ?お客様との話に聞き耳を立てていてはダメよ?」
「…はい」
「おみつも女郎の何たるかを習っているのだから、例えどんな話でも聞き耳を立てるなんていうことはしてはいけないの、分かった?」
「…はい」
おみつは泣きそうな顔で俯いている
「おみつ?ジロさんのこと、好きなのね?」
「…はい」
「わたしがジロさん盗っちゃうと思った?」
「はい…」
「…ふふ」
頷くおみつにやさしく微笑む太夫
「ジロさん。おみつに何か言ってあげて」
「おみつ。聞き耳を立てるなんてダメじゃないか」
「…はい…ジロちゃん…」
しゅんと肩を落とすおみつ
「俺が太夫となにかするとでも思ったの?」
「……」
「そんなことあるわけないじゃないか」
「でも!ジロちゃん…」
「でもじゃない」
「……」
今にも泣きそうなおみつ
「おみつ?ほら、おいで?」
手を差し伸べてやるとおずおずとやってきた
「俺がおみつを悲しませるようなことすると思ったか?」
「……」
「そんなことあるわけないじゃないか。だから、おいで?」
「おにぃちゃぁん!!」
すがり付くように胸に飛び込んできたおみつ
そのまま、抱きしめてやる
「ふふふ。すっかり、仲良しさんね」
「太夫…」
「おみつも幸せ者ね」
「そうかもな」
「それで、今日来てもらったのは、おみつのことなんだけれど……」
「体と記憶のこと?」
「そう。契ってもすぐに忘れてしまうし、体もすぐに元に戻ってしまうの。けれど安心して?記憶は出来ないみたいだけれど、体は覚えている。だから、どんどんジロさんを求めるようになる」
「そうか…ならよかった」
「…なんのお話してるの?」
「おみつが可愛いってことをさ!」
「可愛い…♪ 」
そう言って真っ赤になるおみつ
「だから、ジロさんいつまでもおみつをよろしくお願い」
「任せといてください!」
「ジロちゃん」
「おみつ…ちゅっ!」
そんな二人を見てやさしく微笑む太夫…
店の庭には、大きな櫻の木がある
次郎とおみつが結ばれ、互いのことを認めあった翌日、二人のことを祝うように一斉に咲き出した
それと共に、その足元…薄い桃色、濃い桃色といった櫻のような花をつけた草が一斉に咲いた
「ほら、おみつ。さくら草が咲いたよ」
「うん!ジロちゃん。きれぃねぇ」
櫻の下で次郎はおみつを抱きかかえながら二人で花を楽しむ
「まぁな。でも、俺は華やかなサクラよりもこっちのサクラの方がもっと好きだな」
そう言っておみつの耳をちろっと舐める
「やん…」
「へへへ…」
櫻を見上げ枝先の花を見たその向こうに、店の二階で太夫が酒を飲みながら二人を見下ろしているのが見えた
太夫がにっこりと微笑んで頷いた
こちらも笑顔で挨拶する
「何見てるの?」
「櫻さ」
「…太夫」
おみつは、笑顔で手を振った
太夫も、笑顔で手を振っている
…やはり、親子なんだな。そう思うと、自然に笑みがでる
そんなことを思っていると、おみつが言った
「ジロちゃん。今、太夫に見惚れていたでしょ!」
「いいや、櫻に見とれていたんだよ」
「うそ!笑っていたじゃない!」
「そんなことはないよー。ちゅっ」
「やん…ごまかされないの!ジロちゃんのばか!」
「俺が好きなのはおみつだけさ!ちゅ…」
耳へ口づけをしてれろれろと舐めてやる
「やん…ジロちゃん…あっ…ああん」
「れろれろ…」
「ああん…」
戯れる二人
そんな様子をやさしく見守る太夫
櫻の木は満開で、いっぱいに空を仰ぎ見るさくら草が咲き誇る
その元で、甘い嬌声はいつまでも響いていた…
12/04/14 15:56更新 / 茶の頃
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