「アメリア！きつくないか？」
「これくらいの山道、大丈夫です。あなたは？」
「あ、いや首の帯だ」
「程よい具合で。これなら不用意に下を向いても大丈夫です」
道なき道を通ったりするために雅之進は彼女の首を支える帯を作っていた
急な斜面を降りなければならない時など、結構重宝している

元同心である菊池雅之進とデュラハンのアメリアは、異国やあやかしといった者に対して排他的な政策をしているお上の目をくぐりぬけ自由に暮らせる大陸へ渡ろうと旅路を急いでいた
アメリアは、見た目からして肌の色、金髪、長い耳そしてうっかりすると落ちてしまうその首であるから、すぐに異形のものと知れてしまうため、雅之進は同心であった頃の知識を使い、主要な街道を避け裏街道や山岳の峰、獣道を通っていた
「街道筋を通れればこんな苦労はしなくてもよいのにな」
「申し訳ありません。私の首が落ちなければ・・・」
「何、そんなおまえだからこそ惚れたのだ。街道筋には関がある。どのみちあちらは通れんさ」
太平の世ではあるが今だ主要な街道には関所が置かれている。その取調べも緩くなっているが、少しでもリスクは取り除いておきたいと雅之進は考えていた
とはいえ、人はいないが別のリスクが伴う。道がないため通行において非常に危険が常に付きまとう。他にも熊や狼、危険な昆虫など何が潜んでいるかわからない
人がいない・・・と言っても中には山師や、サンカと呼ばれる都や里などとはまったく違う独自の文化を持っている山の民も存在している。言葉が通じればよいがその多くはこちらの言葉を知らないらしい
幸い今の所そんな人々に会うことはなかった

そんなある日、
深山の頂から里が見える辺りに来ていた
下の辺りを望むとそこには大きな街があるようであった
遠目に大きな五重の塔や寺々、街の様子はここから見ると碁盤の目のように整っている。そんな街を囲むように、水田には日の色をした絨毯が敷き詰められている
古より伝わる古都であった
雅之進らは、今お上が政を開いている都から西へ西へと歩いてきた。そんな旅路も中間に来ているようであった

鬱蒼とした山の中を歩いていると、遠くの山の頂に寺が見えた
「雅之進。あんな所に建物が見えます」
「うん？山寺か・・・。こんな山奥にあるということは、修験者たちが使っている山なのだろう。・・・どうするか」
「寺・・・前に山の中で見つけた寺は廃墟でしたね」
「あの時は久方ぶりに屋根がある場所で、そなたとすごせたからよかったな」
「あそこへ行ってみますか？」
「本来、あのような寺は女人禁制だ。が、どのみちこのまま進めばあの辺りに行くのであろうから、ついでに寄らしてもらおうか」
と、ダメモトで寄ってみることにした
　

険しき山の中にその寺はあった。樹齢数百年を越すであろう木々が生い茂り、その根元にはむき出しの岩岩が人が立ち寄るのを拒むかのように巨大な岩肌を晒している。ただただ圧倒されるばかりである
どのような技を持って寺が建立されたかは知らぬ。ただそれはそこを訪れた者に自然の荘厳さを語りかける
寺へは道と呼べるものはなく、獣道に等しき道が続くのみであった

『貴様ら、寺に何用か？』
唐突に声がかかった
「何者！？」
『ここは修験者の山！女人を連れ込むことはまかりならん！即刻、立ち去れ！！』
野太い声は木々に反響してその声の主がどこにいるのかを分かりづらくしている
雅之進には分からなかったが、アメリアは“ふっ”と鼻で笑うと、
「笑止！貴様とて女子ではないか！姿を見せよ！！」
と言って、アメリアは背負っていた剣を抜くと木の上へ飛んだ
「はぁぁぁぁっ！やあっ！！」
そして、烈迫の気合とともにとある枝を切り払った
『えっ？！きゃぁぁぁぁぁ』

ガサガサ・・・ズサッ！・・・

木の上からなにかが落ちたようだ
「・・・よく分かったな」
「わたしは、これでも一軍を率いたこともある身。このような子供だましに引っかかりませぬ」
そう言うと、涼やかに剣を背に収めた
何かが落ちたその場所に行くと、修験者の格好をした者が尻をさすっていた
「いったー。ったくなによー」
「貴様！未熟な技で我等を欺けると思うたか？」
「いいじゃない！本当に女は禁制なんだもの」
「私の目は節穴だと言いたいのか？貴様、この国のハーピー種のようだが？女であることは間違いないであろう？」
「アメリア？ハーピー種とは何ぞ？」
「ハーピー種とは、鳥人のことです」
「あやかしなのか・・・」

修験者姿の女は雅之進とアメリアの二人をみて何かを考え込むように頭を捻っている
「・・・どこかで・・・？」
しばらく考え込んでいた修験者姿の女は驚いたような声を上げた
「あなた！あの時の！！」
「？。何処かで会ったかな？」
「“解”！」
女は何事かを叫ぶと、雅之進にも女の本当の姿が見えた
胴は女、腕はカラスのように黒い翼、足は鳥の足
紛れもなく、あの時の旅ガラスだ
「おまえは、あの時の旅ガラス！」
「やっぱり！私のカンは当たっていたわね。そっちの貴方は櫃の首の人でしょう？」
「なんのことだ？」

アメリアが仮死状態に陥ったあと、彼女の部下達はようやく胴が極東にあるジパングに流れ着いたのを突き止めた
しかし、ジパングには独特の文化があり、その上、魔物とあやかし間での対話などほとんどない。そのため、何かあった場合には他種間での話し合いを受け持つ天狗なる種がいるらしいのだが、彼らに助けを求めたらしい。そうして彼らは条件しだいで引き受けたらしい
そこで、天狗の下級種であるカラス天狗にお鉢が回ってきたらしい
天狗種には“神通力”と呼ばれる魔法に似た術を持っている為、この旅ガラスも容易にアメリアの首の本体を見つけ出すことが出来たようだった

「そうだったのか。そなたが私を雅之進のところへと運んでくれたのだな。礼を申す」
「いいのよ！貴方の部下と言う人達からいろいろもらったから」
「いろいろ？」
「それは・・・」

『ヨメナ！！また旅人を誑かしたのか！！』
と、唐突に寺の方から声が掛かった
「誑かすなど、そのようなことはしておりませぬ！」
『とにかく、お客人を中へ！』
「はーい。わかりました」
と、ようやく寺へ入れるようであった

雅之進とアメリアは本堂の仏殿へと通された
そこには、齢30半ばくらいか、見た目若々しく精悍な面持ちの僧侶と思しき人影があった
「わしの名は、清嶽（せいがく）という」
「わたしは、ヨメナ。本当の名があるけれど、こちらのほうが気に入っているからそう呼んで？」
「私は、菊池雅之進。そして、こっちの連れは家内のアメリアです」
「雅之進の妻アメリアです。わたくしは・・・」
「あいや、アメリア殿と申されましたな。その先は言われますな。こちらは一切承知」
清嶽殿はすべて分かっているといいたげに、頭を振った
「よろしいので？」
「構わぬのでは？わしは、破戒僧でありましてな。細かいことは拘らないのです」
「清嶽殿と申されましたな。修験の寺はあやかしも女人も立ち入り禁止と伺っておりましたが？」
「いかにも。しかし、ここはあまりにも山奥にありすぎるのと、この・・・ヨメナがいたずらをするものだから今ではすっかり訪ねてくる者もおらぬ様になってしまったのじゃ」
そう言うと清嶽殿は、カッカッカとお可笑しそうに笑った
「わたしが悪いみたいじゃない。ここは正真正銘の天狗がいる修験山なのよ！もうちょっとありがたがってもいいじゃない！」
「天狗と申してもこんなわっぱ、しかも何かあるとイタズラしかしないようではありがたみも何もないわな」
そう言われると、ヨメナはふくら面になった
「本来、わしは修験者ではないのだが、ここの近くにはよい丹（に）が採れる故にここに住み着いてしまったのよ」
「丹と言うことは清嶽殿は画や書をやっておられると？」
丹というのは赤色の岩絵具、顔料のこと。一般に硫化水銀という
「さよう。この山より麓にある街の寺で坊主をしながらやっておりました。まぁ下手の横好きというやつですなぁ」
「清嶽の画はうまいんだよ。ひと目見るや否や古都の金持ちや風流人たちがこぞって買い求めるほども腕前」
「そこまで、言うならば是非見てみたいと思うのですが？」
「いやいや、わしの腕ではない。ただ物珍しいだけであろうよ。書や画は寺の修繕などで金子が用入りになった時だけ山を降り、売りにだしておるしだい」
そういうと、清嶽殿は奥の間へと案内してくれた

「これは！」
「なんと！」
決して煌びやかではないがたしかに唸りたくなるような画であった
どうやら、紙の大きさから襖戸に使われるものの様である
小川の流れに沿って花が咲いておる。その花の透き通るような藍が強烈に栄える
そんな涼しげな画であった
「これから、冬だと言うのにこんな涼しげなのではな」
「清嶽。仕方がないわよ今まで良質な藍色が手に入らなかったのだから」
「うむ。良質な藍色が手に入ったのもお前のおかげだな。ヨメナ！そうと決まれば気合を入れてこれを仕上げなければな。すまんがお二方を部屋へあないしてくれ」
「はい！」

部屋に着くとヨメナは茶をだしてくれた
「ヨメナ殿。あの藍の色は？いささか通常の青ではないようだが？」
「ああ、雅之進さんは分かるのか。それについては、さっきの話に戻ります。アメリアさんの部下と言う人の・・・」
話を聞くと、ヨメナはなかなか満足いく藍がでない清嶽殿を見て苦心し、いろいろなところへと出向き藍を探した
染料の藍、鉱物の藍など絵具に使えそうなものを探して・・・
通常、画に使う藍は藍銅鉱（アズライト）を使う。これは孔雀石に極わずかに含まれるだけであり、60ｇで米一俵になるほどの希少なものであった
そんな貴重なものを探していたヨメナの元にとある話が持ち込まれた
異国の魔物たちがとあるものを探しているという
話からすると魔界という別天地の軍に所属する身分の高いモノ？らしい
ジパングで藍を探しだすより、なにか他の方法はないものかと考えていた彼女はこの話に乗った
そうして、神通力を使用し雅之進の家にあるものを発見したという訳であった
アメリアの部下は、礼に藍銅鉱やジパングでは産出されない瑠璃（ラピスラズリ）を送ったのだった
「私の部下達はそこまでして私を気遣ってくれたのか・・・」
「そんな気遣いが我等を引き合わしたのか・・・」
そんな話を聞いて雅之進は感慨深げに肯いた
「だから、礼などいらないと言ったの。おかげでわたしは清嶽と結ばれることも出来たし」
「それは、めでたい」
「ありがとう。わたしのヨメナという名は、野菊の一種から来ているの。この頭につけている頭襟（ときん）が菊の花を連想させるとかいってわたしにこの名を送ってくれた。アメリアさん貴方のおかげね。貴方がここに流れ着かなかったら今のわたしたちはなかったかもしれない」
そういうと、彼女はにっこりと笑った


「アメリア。俺は果報者だな」
「なんですか？急に」
二人きりになった雅之進はアメリアに膝枕で耳掃除をしてもらっていた
「おまえが、あそこに流れ着いてくれたおかげでこんな幸せな時を送っているのだからな」
「雅之進。あなたが私を保護してくれたおかげですよ。普通は首が取れるものなど気味が悪がって捨ててしまうものです」
「正直、時期が時期だけに忘れていたと言うのが本当の所だ。それに、首と胴一つにしたらどうなるのか興味もあったしな。気味の悪さよりも好奇心の方がまさっていたな」
「私もこうしていられて幸せです」
ちゅっ！
と、口付け
「アメリア」
「雅之進」
見つめ合っているうちにむらむらしてきた
「雅之進。ここでは清嶽殿たちに悪いですから中へ」
「ああ」
部屋へ入り、アメリアが障子を閉めたとたんに雅之進は後から抱きしめた
そして、胸を揉みしだき、そのままの姿勢で後に座る
「雅之進！」
アメリアはそのままの姿勢で首を回しキスをしてきた
首に関節がないデュラハンはこんなときに便利だ
前だろうが後ろ向きだろうがお互いいつでも見つめ合ってキスできるのだから
ディープキスをしながら、服を脱がす。彼女も後手で器用に雅之進の帯を解いていく
さっきから、いきり立ったものが彼女の背にあたっている
それを感じてアメリアもどんどん昂っているようだ
雅之進が下の茂みの手をやるとそこはもうすでに相当滴っていた
そのままその周囲をいじくってやる
「あ・・・あああっ・・・あん！・・・あふっ・・・雅之進！さっきから胸とか下を触ってばかりで！・・・もうあなたのがほしい！あなたのが痛いほど勃っているのを感じるわ。あなたも気持ちよくなって！！」
「ああ！では、いくぞ！」
そのままの姿勢で膣へいれていく
柔らかでありながら侵入したものを締め出そうと膣が締まりそれがとても気持ちいい
「アメリア！とてもよいぞ！締め付けが！とても！！」
「あなたのが！あなたのが入って！！くる！」
そうして、彼女を少し押し倒し、尻を持ち上がらせて、腰を使い始めた
「あっああん！そっそこ！！あああん・・・いい！」
後から覆いかぶさり背を舐めながら胸を揉む
「あっああ・・・ああああ・・・いいっ・・・ああん」
一番感じるのか少し他と声色が違う所がある。そこを責めていく
「あっあっあっ！だめ・・・いやっ！あん！・・・あん！・・・あああ」
「アメリア！俺そろそろ・・・！」
「・・・い、いっしょに！あっ・・・うんっっいっしょにぃ！！」
お互いに動きが激しくなる
これが最後とばかりに強く腰をいれた
「あああああっっっ！あーーーーん！！」
「くっくぅぅぅぅぅ！！」
そんな睦み合いは続いた
久しぶりに精も根も使い果たしたような交わりに至福を感じるふたりであった

・・・・・・・・

「あのふたり、相当激しくやっているね」
「仕方あるまい。いままで気を落ち着ける場もないまま旅を続けたのであろう。あのような旅は時に息抜きも必要だ」
「清嶽。なんだかわたしもあなたがほしくなってきたんだけれども・・・」
「こんな真昼間からか？」
「だめ？」
「・・・仕方あるまい。そうなるのは目に見えていたしな。それに訪ねてくる者もおらぬだろう」
そういうと、清嶽とヨメナは奥の間に向った
二人が清嶽の寝所に来ると、待ちきれないとばかりにヨメナが清嶽に襲い掛かった
「清嶽！わたしもう我慢できないよ」
「わしもだ！」
互いに我慢できぬと抱き合い唇を吸う
「う・・・ん・・・ジュ・・・」
舌と舌が絡み合う。そうして、唾液が混ざり合う
そうして唐突にそれは離れた
「清嶽。もう、あたしのじんじんして我慢できなくなってる」
どうやら、すっかりあの二人にあてられた様であった
「わかった。では少々乱雑になるがゆくぞ？」
ヨメナは期待するような顔をして頭をふった
清嶽は痛いほど勃起しているモノをヨメナの膣にあてがうと少しずつ挿入していった
なかは、もうすっかり準備が出来ているようで溢れ出す汁が奥へ奥へと誘う
「ヨメナ。動くぞ？」
「うん。動いて！そうしていっぱいいっぱい満たして！！」
少しずつ腰を振るう。そうして、手では吸い付くような肌と程よい大きさの胸の感触を楽しみながら
片方の乳に吸い付く
程よい大きさながらその乳首はもうコリコリになっていた。それを吸ったり噛んだりむしゃぶる
そうすると、膣のしまりがきつくなり互いに快楽に嵌っていった
「あっ・・・ああっ！清嶽！そこっ！そこーーー！」
「どうした！ここがどうした？どうしたんだ？」
不意に動きを止めた清嶽
「やぁ！止めないで清嶽！止めちゃイヤァーーー！」
「ならばどうしたいんだ？ヨメナ！言わないと分からぬだろう？」
「さっきの！っっっさっきのところが気持ちいいのっ！！だからお願い動いて！」
「よぅしっ！！」
と、腰を動かし始めた清嶽。
再び嬌声が響きだした寝所。その睦み合いは続くのであった


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夕餉時、アメリア、ヨメナ、雅之進の因縁を聞いていた清嶽殿は驚いたようであった
「まさに、これは何かに導かれていたとしか思えないよね」
「はい。俺は、国を出たらもはや戻ることはないであろうと思っておりました故に、アメリアの恩人に会うことがあるなど夢にも思いませんでした」
「私も、首を届けてくれたものがあるとは聞いていたのですが。まさかこのような形で出会おうとは」
「御仏のお導きであったのだろう。こんな、因縁のある者達を再び集うようにお気を回してくれるとは真、御仏のご慈悲とはありがたきものよな」
「仏を信じていなかったの？」
「いいや。信じているとも。信じているからこそ、その慈悲深さに感心するのじゃ。そういえば二人は夫婦と申しておったが式は済まされたのかな」
「いいえ。二人で屠蘇を酌み交わす程度。婚礼をしたかったのですが、俺のよき理解者であった奴もあやかし者との婚礼など理解してはくれなかった故、今にいたります」
「さようか。もし？どうだろうここで婚礼の儀をされては」
「ここで？」
「さよう。御仏の導きによりその因縁深きもの同士で仏前婚礼をな。ちょうどここに坊主もおるしの」
「素敵！アメリアさんの白無垢姿きれいなんだろうなぁ」
「明日にでもそれを執り行おうと思うが如何か？」
「それは願ったり叶ったりです。なぁアメリア！」
「はい。お二方が立会人になっていただけるのでしたら、それは本望！」
「では、明日の昼辺りにでも執り行おう。ヨメナ支度をたのむぞ？」
「分かっています。雅之進さん？いつもと違うアメリアさんに仕立てて見せるわ！」
「アメリアならばどんな衣装でも心ときめくに違いないさ！」
「ヨメナ！惚気られてしまったぞ！」
「お熱いことで！さあ、明日のこともあるので今日はこの辺でお開きよ？」

翌日

雅之進はそわそわしていた。仏殿の中で花嫁が来るのを今か今かと待つ
「雅之進殿、そんなにそわそわすることもありますまい。ここは一つどーんと構えておくのが寛容かと」
「はい。しかし・・・」
「雅之進殿、無事大陸へ渡れたら如何なされるつもりか？」
「・・・。アメリアが傍にいてくれるのであらばどこへでも。彼女の故郷だという魔界でも、共に世界を旅するのでも。彼女の支えになるそのような立派な夫になって見せましょうぞ！！」
「それを聞いて安心いたしましたぞ。そなたらならばいかなる困難も乗り越えられるであろうの」
そうして、しばらくするとヨメナが神妙な顔をして仏殿へ入ってきた
「支度が整いました」
「うむ。ならば始めよう」

白無垢に包まれたアメリアがヨメナに付き添われて仏殿へ入ってきた。
雅之進はあまりの美しさに言葉を失った
いつもは普通の着物や無骨な甲冑に包まれているアメリアだったが、白無垢に包まれた彼女はまばゆいほどに見えた。目元は見えないが紅を引いている唇が新鮮だ
白き肌と無垢とがあいまってなんだか神々しくも見える
清嶽殿が短く咳をして我に返ったほどだ。いつまでも名残惜しく見ていたいと感じた
「では、婚礼の儀を行う。お二方、そこへ向かい合って座ってくれ」
静かに椅子へ座る
「では、参る。・・・本日、ここに二人の男女が御仏のお導きによって夫婦の契りを結び、とこしなえに偕老の契りを誓う。菊池雅之進よ、いついかなる時も妻を支え慕うことを誓うか？」
「菊池雅之進。天地天命にかけ、妻アメリアを愛すことをここに誓う！」
「デュラハン　アメリアよ。菊池雅之進を向え共に尽くしていくに相異ないか？」
「相異ございませぬ！菊池雅之進を一生の夫とし共に歩んでいく所存！」
「よし。ヨメナ。屠蘇をここへ」
「はい」
そうして、三々九度の杯を酌み交わし式は終わった

「いや！めでたい！やはりそなたらは似合いの夫婦ぞ？ヨメナ！宴の支度だ？酒と馳走を持ってきてくれ」
「はいただいま！」
その後、酒が入ってどんちゃん騒ぎ
雅之進とアメリアはもろんのこと、清嶽、ヨメナもまるで自分のことのように喜び合った


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そんな幸せな日々であったがいつまでも逗留するわけにはいかぬと、雅之進とアメリアは清嶽、ヨメナの誘いを断って旅立つことに決めた
そろそろ冬が来る。すでに時々かなり寒くなる時がある。山々が冬に覆われぬうちに旅立っておきたかった

旅立ちの日、清嶽殿は雅之進とアメリアの二人を思い描いたとかいう画を見せてくれた
そこには、荒波かかる磯で２羽の鷹が寄り添いながら今か今かと大空へと飛び上がらんとする画が描かれていた
「道中の無事を祈っておりますぞ」
「貴方達ならばどこへでも行けるわ。頑張ってね」
「清嶽殿、ヨメナ殿いろいろと世話になり申した。どうかお幸せに！お元気で！！」
「ヨメナ。無事にあちらへ渡ったら文をだすわ。清嶽様と幸せになってね」
「礼なら物がいいかなぁ」
「コラ！」
「あはははは。冗談！元気でね！！」

雅之進とアメリアが木々の間に隠れるまで、清嶽とヨメナはいつまでも見送っていた


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「清嶽殿もヨメナ殿も気持ちがいい、よい二人だったな」
「ええ。あの二人ならばよい夫婦になれるでしょう」
「俺たちも負けてはいられないな」
「はい！私たちも明日のために参りましょう！！」
清嶽とヨメナの二人が幸せになるのを祈りながら、山寺を後にする雅之進とアメリアだった


そしてこの二人にどんな明日が待っているかは、また次のお話・・・

■作者メッセージ
マジこの二人には幸せになってもらいたいと思う
難点はやる気と文章力が・・・下手の横好きとはこの俺の事だなぁ