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憂鬱

 もしもタイムマシンがあったなら。
 僕はそれを使って、三日前の僕を殴り飛ばすだろう。
 それほど目に余る軽挙だった。肝試しなんて馬鹿なことはするべきではなかった。
 死ねばいいのに。自分。

 そんなことを思って眠りについたせいか夢を見た。
 タイムマシンに乗る夢だ。
 ポピュラーなドラえもんのタイムマシンではなく、まさかの青い電話ボックス。海外ドラマの影響が色濃く浮かび上がっている。
 ドアを開け、ボックスに入る。不思議な力が働いていて、中は外見よりも広い。
 ……………なんだかどっかで見たことのある部屋だ。まぁ、きっとこの部屋にも元ネタはあるのだろう。
 僕は部屋の中央にある機械を動かす。
 元ネタの通り、ガチャガチャと、乱暴に。
 ギュイイイイイイ!
 唸るようなエンジン音。
 ギュイイイイイイ!
 部屋が揺れる。
 僕は─────


「……………………………」
 目が覚めた。
「ぐぉぉぉぉっ……………」
 どうやら、エンジン音ではなくいびきのようだ。
 『こいつ』の。
「う、腕枕はやめろって言っただろうが…」
 『そいつ』は僕の右手を枕にして寝ていた。
 ………僕の耳元で大きないびきを流しながら。
 道理で変な夢を見るわけだ。
「はぁ………………」
 なんだか逆に疲れがたまった。
 そんな目覚めだった。



〜数時間後〜



 昼。
 ●●大の学食。
 カツカレーを独り黙々と食べているところに。
「此目(このめ)」
 同じ歴史学科の友人、リッチの躯野智慧(むくろの ちえ)がやってきた。
「おぅ、智慧」
「前、いいか?」
「どうぞどうぞ」
 ちょうど独りでは寂しいと思っていたところなのだ。
 智慧は僕の目の前の席に座り、ポケットから魔力補給ゼリーのパウチを取り出して一口吸った。
「ぷはぁ………あぁ、最近全然食欲が湧かないよ……」
 ダルそうに机に突っ伏す。溶けちゃいそうだ。
「まぁな」
 気温三十度の真夏日。ここ最近は夜も寝苦しく、なかなか体が休まらない。
「すんごいバテバテだわぁ…………腐りそう」
「やっぱアンデッドでも夏バテってあるのか?」
「あるよ〜まぁそこらへんは調節可だけどさ………特定の感覚機能をシャットアウトするからいざという時に困るんだよねぇ」
「大変だなーアンデッドも」
「うんうん────で、君はどうなんだい?カツカレーなんか食べちゃって。やっぱり夜のために精をつけなきゃイけない感じ?」
 ウケケ、と彼女は笑う。
 よくTwitterでも絡む彼女はすべて知っているのだ。三日前の肝試しの始終を。
「あぁ、そうだよ。食べなきゃやってらんねぇよ」
「それはもうビュッビュと出しちゃうわけ?彼女のナカに♥」
「………………」
「色々と大変そうだねぇ───まぁ自業自得かな。考古学者目指してるくせに馬鹿な行動とったから罰が当たったんだよ」
「返す言葉もございません」
 でもさ、ほんとキツいんだよ。
 死ぬよ?
 たった三日でこの感想だからね?
 毎朝起きたらすぐに『セックスしよ♥』ってせがまれるんだぜ?夜散々ヤったのに。
 しかも、シてあげたら干からびるほど散々搾られて、おまけに講義に遅刻することになるしな。
 今日は彼女が起きないうちに外に出れたから良かったものの……あんまり遅刻が続くとヤバい。
「ふぅん………私からしたらすごいうらやましい話なんだけれどもなぁ」
「お前に相談することではなかったかもな……」
「そうだねぇ♪私にできるアドバイスといえば、『ちゃんと男らしくリードしてあげなさい』だけだもの。ウケケッ」
「あいつをリード………」
 ぞっとする。きっと終わる頃にはミイラになってるだろう。
「その時は私が丁寧にマミーにしてあげるから安心なさい」
「絶対に死んでやるもんか」
 僕はカツカレーにがっついた。


「さて、どうする?私、午後は授業がないんだが」
 僕達は外をブラブラと歩いている。
 することがなにもない。
「僕もないな………でも、アパートには帰りたくない」
 朝できなかった分、ねだられるに決まっているのだ。
「ねだられる、ねぇ……でもさ、結局夜に先送りにされるだけじゃないの?」
「あいつ早く寝るから、夜はあんまり長くはシないんだよ」
 ただし、体ベトベトのままで寝やがるのだ。お風呂に行けと起こしてもぐずって行かないし……
 結局僕が抱えて運んでやることになるのだ。
「へぇ………ほんとその娘がうらやましくて仕方ないよ。大学にも行かず、こんないい男とセックスしまくりだなんて」
 ニヤニヤと智慧は僕を見つめてくる。
「あ〜あ、私も混ざりたいなぁ〜」
「………………」
「てゆーか、混ぜてくれない?私もコノメくんを狙ってたりしてたんだけど」
「ご冗談を」
「バレたか」
 それに、本当だとしても尚更搾り取られるだけなのでやめてほしい───
 ん?
 歩く先に人だかりが。
「なんだろ、路上ライブでもやってるのかな?」
「そうかもな」
 僕達はそれを避けそのまま進───

「此目、ちょうどいいところ来た」

 ───めなかった。人だかりの中から伸びた手が僕を掴む。
「あん?なんだよ」
「『彼女さん』がいらっしゃってるぞー」
「!!!」
 慌てて人混みを掻き分け、その中心へ向かう。
 嘘だ。嘘だ
 嘘だ!そんな馬鹿なことが──

「あ!コノメ!」

「っ──────────」
 絶句。
 ベンチにゲイザーが座っていた。
 もちろん、『彼女』に他ならない。




「コノメ」
「…………………」
 彼女は椅子でふんぞり返り、僕はその足元に跪く。
 なんで僕が謝ってる雰囲気なんだよ……
「コノメおにーさん」
「…………なんでしょうか?」
「なんでこっそり出て行ったの?」
「……………遅刻するとヤバかったからです」
「ふぅん……」
 肯いてはいるものの、しかし納得はしていないようだ。
 足を所在なさげにぶらぶらと揺らしている。
 黒い変な半個体の物体に覆われているが、その上から見てもなかなかに綺麗な足をしている。
 いい感じに肉が付き、少女ながら艶めかしい曲線のふくらはぎ。少し目線をあげると、やはりちょうどいい肉質の太もも。
 足を揺らしたり、組んだりしているのでむちむちと形が変わる。
「ねぇ、何見てるの♥?」
「え、いや、別に。虚空を見つめていただけだ」
「へぇ…………」
 するするとストッキングを脱ぐように右足の黒い物体を剥がす。中からは小さくて真っ白なあんよが。
 ごくり、と喉が鳴ってしまう。
「うわぁ♥女の子の足で興奮してるの♥?アタシじゃなかったらドン引きだよ♥?」
「う、うるさいなぁ!誰のせいだと思ってんだよ!」
「まぁ、アタシのせいだよねぇ………」
 ニヤニヤと笑い、足をどんどん僕の顔に近づけていく。
「ねぇ…………どうしてほしい?」
「どうしてほしいもなにも……さっさと僕を解放しろ」
 さっきから動けない。きっとまた催眠術か何かを掛けられたのだろう。
「素直じゃないなぁ…………いいよ、それなら勝手にシちゃうから。『仰向けに寝転がって』」
「!」
 従順にも、僕はその言葉通り寝転がってしまう。
 逆らえない、やはり相当支配力は高いようだ。
「♪〜」
 彼女は器用に足だけでジッパーを下ろし、チンポを取り出した。
「はぁ♥今までの流れでこんなにバッキバキに堅くなるなんて……コノメって本当にどうしようもないね♥」
「ぐっ!」
「でも、心配しないで。アタシはそんな変態さんでも受け止めてあげるから…………愛しつくしてあげるから」
 にゅち、にゅち
「うっ!ぁ!」
「どう?小さいオンナノコから受ける足コキは?」
「な、く、ハンパねぇ…………」
 右は温もりのある素足、左はひんやりとしたゲイザージェル(そう名付けてみる)、それに挟まれながらしごかれる。
 そのコンビネーション。
 まさしくハンパない。
「あぁ汚いなぁ………足がお汁でねとねとしてきちゃったんだけど♥?」
 くちゅ、くちゅ
「はぁ、はぁ」
「ねぇ?気持ちいいでしょ?ねぇ?」
 グリグリと足の平で亀頭を踏みつけてくる。
「あ、あぁ、気持ちいいよ!」
 くちっ、くちゅ
「ふふふ………♥そろそろ出ちゃいそうかな♥?」
「あ、ああ!」
「じゃあ♥いっぱい足にかけて♥足で妊娠しちゃうくらいにせーしぶっかけて♥!」
「い、いくっ!」
 ビュッビュクビュクッ!
「くぁぅっ!」
「あぁ♥すごいぃ♥膝まで跳んできたぁ♥──それだけ気持ちよかったんだね?」
 黒と白、白と白。そのいやらしい色彩は彼女にとても似合っている。暑さでぼーっとする頭でそう思った。
「すごいプルプルしてる♥うわぁ♥糸引いてるし………いただきまぁす♥くちゅ♥ちゅく♥ぐちっ♥濃くてぇ♥イカ臭くてぇ♥苦くてぇ♥すっごく美味しいよぉ♥………んくっ」
 恍惚の表情で語りかけてくる彼女。
「ねぇ?まだ出せるよね?次は───こっちに出してほしいな」
 騎乗位。初めてあった日のことを思い出してしまう。
 あぁ、なんかいつまで経っても完全にリードなんてとれそうにないよなぁ………
 彼女は腰を落とし、チンポを挿入していく。
「き、きたぁ──♥コノメのチンポぉ♥」
 ぐりぐりと膣内が蠢いて、チンポに刺激を与えてくる。
 彼女は上下に、膣内のひだひだで僕のチンポをこすり始める。
「気持ちいいでしょ?アタシのおまんこ気持ちいいでしょ?ねぇっ?」
 にゅぷっ、にゅくっ
「ねぇ?ほら、気持ちいいって、言ってよぉ」
「な、なぁ……」
「?」

「お前何焦ってんだ?」

「………………え?アタシ、全然焦ってなんかないよ?」
 嘘だ。
「いいや、焦ってるよ。だって、お前、さっきから僕を気持ちよくすることばっか考えるてるじゃないか」
「だってコノメにも気持ちよくなってほしいし……」
 違う。
 きっと彼女が言いたいのはそんなことではない。
「意識してるかどうかはわかんないけど……もうちょっと落ち着いた方がいいんじゃないか?」
「…………」
 もっと自分のやりたいように……そう、ヤりたいようにやればいい。
 我慢しながらされても……僕も気まずくなってしまう。
「もし、今日の朝、黙っておいていったことが原因なら謝る………ごめん」
「…………じゃないよ」
「?」

「ごめんじゃないよ………ばかぁ!」

「どれだけ心配したと思ってるのさ!目が覚めたらいるはずのコノメが消えてて…………本当に本当に心配したんだからね!」
「……………」
 早く出ることに気を取られて、そのことを忘れていた。
 書き置きは残しておくべきだったか……
「怖かった…………また独りになっちゃうんじゃないかって本気で思ったんだよ!?」
 彼女の大きな目から、これまた大きな粒の涙が零れる。
「ごめん………ごめん」
 それしか言えない。
「もう嫌だ…………独りは嫌だよ…………」
 それ以上、言葉が続くことはなかった。
 彼女は泣く。
 寂しそうに、でも、少し安堵しているように泣く。
「…………僕は」
 言おう。気休めだと思われるかもしれないけれども、本当のことを。
「お前から離れるつもりはないさ」
「………でも、また出かけるんでしょ?アタシの視界から消えちゃうんでしょ?」
「そうじゃなくってだな…………心の話だよ」
「…………」
「お前の目に映らなくても僕の心はお前の傍にいる。お前の目に映らなくても僕はちゃんとお前を愛している。お前は独りじゃない」
「…………」
「だから少しだけ、お前の視界の外で僕に僕のするべきことをさせてくれないか」
 多分、それをしないと僕はお前を幸せにできないんだ。
「そうだな──朝は一緒に起きよう。セックス……はできないけれども、この前みたく一緒に朝御飯を食べよう。そして、お前には、僕を見送ってこう言ってほしい。『行ってらっしゃい』って」
 こうすれば、多分お前も今日ほど寂しい思いをせずに済むんじゃないか?
 また帰ってくるって思える───それがこの言葉に込められた魔法なんだと思う。
「大学から帰ってきたら、お前をちゃんと身体で愛してやるさ。少しだけは我慢してくれないか?」
「……………じゃあ」
 どうやら、涙は収まったらしい。

「『行ってきます』は、ちゅーと一緒じゃ駄目?」

「いいや、駄目なんて事はないさ」
 むしろ、いい。
「………わかった、でも、たまに我慢できなくなったら大学に行ってもいい?」
「…………しょうがないな」
 あそこに悪いやつはいない。きっとみんなこいつのことを邪険に扱ったりはしないだろう。
「えへへ、やったぁ♥」
 彼女はようやく笑った。
 とても可愛らしい笑顔。
 この娘を愛さずにいられる者がいるのだろうか───
「………………」
 彼女は『もう嫌だ』と言った。
 一度はあるのだ、独りだったことが。
 愛されなかったことが。
 それは僕が訪れるまで、洞窟で独りでいたことだろうか?
 それとも───
 今はいいか。


「……………ふぁー」
 結局、あの後も滅茶苦茶セックスした。
 おかげで疲れはとれないし腰とチンポは痛いしで散々だ。
 でも、少しだけ彼女と通じ合えた気がするのだ。
 現に、彼女はアパートで待って──

「あ、此目。ゲイザーちゃん来てるよ」

 サークルの部室、智慧に言われて駆けつけると───
「コノメ!寂しいから来ちゃった♥」
「お前なぁ…………」
 まぁ、いいだろう。
 正直、その方が楽しい。

16/08/27 23:11 鯖の味噌煮

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今回読みにくくてすみません!
[エロ魔物娘図鑑・SS投稿所]
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33