蜥蜴と青年と
チュン・・・・チュン、チュン
『・・・・・・・・・・んぁ・・・』
目が覚める
目の前のは金色・・・・・・・フューの髪
俺の右腕を枕に眠っている美貌
視線を下に下げるとメロンが二つたわわに実って・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・ハダカやん。
ベランダで抱きしめあった後、俺たちはどちらともなくベッドに向かった。
それは氷を放置していれば融けるように、雨が降れば地面が固まるように、想いが通じ合った男女なら至極当然のことだった。
フューを起こさない様に腕を抜き、身体を起こす。
昨晩の行為の後、疲れてそのまま寝てしまったのでベッドはいろんな液体でえらいこっちゃだった。
・・・・・・・・・・初めてだったのに、何回もヤッちゃったからな・・・・
えーと、すっかり発情したフューに覆い被さられてそのまま２人で卒業して、放心したフューから主導権を奪ってヤッて・・・・・・・・・・・数えんのめんどいな・・・・・・
とりあえず、朝の日差しを入れようとベッドから降りる。
カーテンを開けようとすると、視界に入る右腕。
手首から先の無い、俺の右腕。
昨夜、あれだけ忌々しく、苦々しく、俺を絶望の底へ追いやったこの腕。・・・・・・・・・フューの気持ちを受け入れた後は、彼女を護った誇らしい勲章だ。
泣いたカラスがもう笑った。と言われそうな心情の変化だなと、自分で苦笑する。
そんな気分にさせてくれた女神を振り返って見ると・・・・・・・
＆
ベッドの上で丸まっていた
体育座りのまま横に倒れた形で。まさに「＆」こんな形で
ハダカで寒いのか、とも思ったが俺もハダカだ。
もじ彼女が変温動物であったとしてもそれ程の室温ではないはずだ。
・・・・・・・・・・・どうやら、イジケているらしい。
カーテンを開けるのを中断し、俺は何故か不機嫌な女神様のご機嫌を伺うためにベッドに戻った
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いじけてます。
ええ、いじけてますとも。なにか？
なんでいじけてるかって？
愛する人と一つに結ばれて幸せですよ。今私は世界一幸せですとも
・・・・・・・・・・・・・・・・でも、魔物の本能って知ってる？
魔物はその本能として男性を襲うわけですよ。
で、襲うってことは、こちらが主導権握るってことですよ。
つまり、魔物は女性上位が好みということだ。
サキュバスとかドラゴンとかデュラハンとかオーガとか、皆騎乗位好きでしょ？
私もその例に漏れず、いつか運命の人に負けたら組み敷いて上から攻めてやろうと妄想して、そんな状況をオカズに一人エッチもしてきた・・・・・・・・・・
でも・・・・・・・・・・・
今、カーテンを開けに行った男は、ベッドの上ではＳだった・・・・・・・
最初こそ妄想どうりだったが・・・・・・・・私が初めての快楽に放心している間に形勢を逆転され・・・・・・・・その後は・・・・・・・・・
悔しい・・・・・・・・でもっ！！
彼が私を組み敷いて、彼の分身が私の中を蹂躙して、中も外も彼に支配されて・・・・・・・
一戦終わって彼が私の中から出ていっても休憩と称して指でいぢめてくる
『身体が冷めちゃうだろ？』
と耳元で囁かれたときは身体の芯からゾクゾクした
後ろから攻められた時は敏感な尻尾をこれでもかと撫でられた・・・・・
『もう・・・・尻尾らめぇ・・・・』
と言っても優しく鱗に逆らって撫でられてイッてしまった
結論を言うと
すごくきもちよかった
ええ、気持ちよかったですとも
彼のお陰で、私は本当はマゾなんだと分かりました。
でも腑に落ちないので丸まってます。
『おい、フュー？』
不機嫌の原因がやってきた。
昨日の悔しさをちょっとでも晴らすため、黙って返事しません。
『・・・・？、どうしたんだ？・・・・・・・・。』
ん？
彼がベッドに上がって・・・・・私のお尻に右腕を付けて・・・・・・・
『わぁー、まるでフィストファkk『やめろ』
身を挺したブラックジョークを吐こうとしていたので尻尾で彼の喉を絞める。
もう・・・・・・仕方ない・・・・・・
『昨夜、泣いてた奴とは思えないな・・・・・』
『そうだな。ふふふ・・・・・・・・キミのお陰だよ。』
ありがとう、と微笑みながら言われると、先ほどの不機嫌はどこへ行ったのか。心が暖かくなる。
現金な奴だ、私も。
『私は、ただお前と一緒に居たいと言っただけだ。乗り越えたのはクー自身の強さだよ。』
『いや、フューが居たからこの腕を誇りに換えることができたんだ。ありがとう。』
『クー・・・・・』
『フュー、大好きだ・・・・・・』
『ああ、私もだ・・・・・・・』
顔を赤く染めたクーが私の肩を抱いて迫ってくる・・・・・・・
ああ・・・・・・あと数センチ・・・・・・・・
触れたらきっと、止まらない・・・・・・・・・・朝からなんて・・・・・・・・・・昨日の情事のせいでまだベトベトに汚れた身体なのに・・・・・・・・・・そんな・・・・・・・・・・・・なんて理想通り・・・・・・・・・・・
さあ、抱いて・・・・・・・・あともう少し・・・・・・・・・
「はーい！！ストップ！！！！」
いきなりドアが開けられ、反射的に身体を離す。
「もう、イチャイチャすんのはいいけど私たちが居ることも忘れないでね。」
『は、母上！！！』
『ミラルドさん！！？』
「お父さんも居るわよｗｗ」
「ふごー！！！」
ドアの向こうにはツヤツヤしている母上と猿轡を噛まされ鎖でぐるぐる巻きにされた父上がいた
「ゆうべはおたのしみでしたねｗｗｗｗ」
『フュー・・・・・・・これはいったい・・・・・？』
『あー、すまない、忘れてた。』
クーの逃走を防ぐために窓には私、玄関に父上、そしてドアの外に母上が待機していたのだ。里のことはいいのか？と聞いたら「もう大丈夫よ。そんなことより娘の幸せよ！」と言っていた。
『つ・・・・・つまり・・・・・』
青ざめるクー。
そうだ。その通りだ。
「ごちそうさまでしたｗｗｗｗ」
「ふごおおおおおお！！！！」
おそらく、ドア越しに一晩中私たちの情事を聞いていたのだ。人が悪い。
私を溺愛している父上が乱入しないように縛って。あ、血の涙流してる。
「この人にも困ったものよ。いい加減娘離れさせないと。」
「ふご！！ふご！！！ふごおおおおおお！」
『・・・・・・で、母上。私たちの朝の情事を邪魔したからにはそれなりの理由があるのでしょう？』
「あ、そうだった。クーレスト君、君にいいお話があるんだけど、」
『・・・・・・え？なんでしょうか？』
「と、その前に、まず身嗜みを整えてきなさい。この人もフューのベトベトな姿は見たくないだろうしｗｗｗ」
「ふごーーー！！！」
父上の目から流れる血の量が増えた。仕方ない。
『クー、風呂に入るぞ。』
『ああ・・・・・・・って、一緒に！！？』
『そうだ。』
『え・・・いや、でも・・・・・・』
『どうしたんだ？昨日散々弄んだくせに。』
『そうだけど。じゃなくて・・・・・
『ん？もちろん身体は私が隅から隅まで洗ってやるぞ。』
『それは嬉しi、じゃなくて・・・・・・・アルテアさん、キミのお父さんが・・・・・・・・』
「ふご！ふが！！」
『フューと一緒に入ったら殺すって視線が・・・・・・・・・』
『なに、気にすることはない。』
『いや、でも・・・・・・・・・』
「いいから入ってきなさい。この人は私が押さえてるから。」
『ありがとう母上。いくぞ、クー。』
『あ、ああ・・・・・・・』
まだ戸惑うっている様子のクーを引きずり風呂場に向かう。
後ろからまるで娘を助けられなかったと言わんばかりの悲痛な「ふごおおおおおお！！！」が聞えてきたが気にしない。
まったく、父上にも困ったものだ。
身支度を整えた俺たちはフューの両親が待つリビングに向かう。
フューのお父さん、アルテアさんは落ち着きを取り戻したようで、今はどっしりと構えている。
「先程は取り乱して済まなかった。」
『まったくだ。』
『フュー・・・・・』
「返す言葉もない。とりあえず、クーレスト君。里を救っていただき感謝する。」
『いえ。俺はただ、フューの事を助けたかっただけです。・・・・・・・あ、里の方はどうなんですか？』
「里の方はもう復旧作業に入っている。４分の１の家が焼けたが、薬品庫や倉庫を直撃しなかったのが救いだった。」
「ああ。そのお陰で怪我人は粗方処置が済んだ。飢えている者も居ない。キミがあの魔導師を討ってくれたおかげだ。」
『そんな・・・・・・』
『胸を張れ、クー。お前が救ってくれたんだ。私はそんなキミの妻であることが誇らしいよ。』
『フュー・・・・・・』
『クー・・・・・・・』
「ん゛んん゛！！その話だが・・・・・・・・」
「私とアルテアで話したが・・・・・・・」
「「キミたちの結婚は認めません。」」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『『はあ？』』
「聞えなかったか？クーレスト君をフュニリィの夫として認めないと言ったんだ。」
『よし、父上、表に出ろ。』
『ちょ！！落ち着けフュー！！』
『離せクー！！私はこの過保護親父に焼きを入れねばならん。』
『それを待ってと言ってるんだ。ミ、ミラルドさんも何か言って下さいよ！』
「あら、私もあなた達の結婚は認めませんよ。」
『よし、母上、その喧嘩買ったぞ。』
『フュー！！』
『何故だ！！？どうして認めてくれないのですか！！！』
「クーレスト君がフュニリィより強いとは思えんからだ。」
『ぐ・・・・・・・』
『クーはちゃんと私との果し合いにも勝利しているのですよ！！！』
「んーーーー、でも私たち、その果し合いを見てないしぃ。」
『いけしゃあしゃあと・・・・・・・・・クーはこの里を救ってくれた英雄です！！それは父上も母上もお認めになってたではありませんか！それではだめなのですか！？』
「そのことは感謝している。だが、それがクーレスト君がお前より強いという証明にはならない。」
『ぐううう・・・・・・・・この分からずやどもめ・・・・・・・・・・、クーお前もなにか』
『そうですね。今の俺は彼女より弱いです。』
『クー！！！』
いきり立つフューを押さえて話を続ける。
俺だって諦めてないよフュー。
だって俺はキミが好きなんだから
『ミラルドさん。』
「何かしら？」
『先程、貴女は自分に「いい話」があると仰ってました。それがこの話だとは思えないのですが。』
「ふふふ、そう。正解よ。娘にも落ち着きとそのくらいの記憶力があればねぇ。」
『な！！母上！！！』
「そ、いい話。」
そう言うとミラルドさんは戸棚から地図と２通の手紙を持ってきた。片方の手紙は開封済みだ。
「昔旅をしていた頃に出会ったサイクロプスの友達からちょっと前に手紙が来たの。」
『母上の知り合いというと・・・・・・あの名匠スーミル殿ですか！？』
「そ。まあ彼女はまだまだ修行中とか言ってて、その二つ名は気に入ってないみたいだけど。」
『それで、そのスーミル殿がなんと？』
「ああ、そうそう、彼女は世界中を旅してて技術を磨いてたんだけど、なんと結婚してついに自分の店を持つことにしたんだって。」
『それはおめでたい。』
「うん。でも私たちは里の復興でそれどころじゃないの。だから、クーレスト君に代わりに行ってもらおうと思うの。」
『はぁ・・・・・・』
『・・・・・・む、分かったぞ母上。クーに新しく武器を作ってもらおうと』
「半分ハズレ。まあそれでもいいんだけど、それじゃあ勿体無いわね。」
『すると・・・・・・どうして？』
ふふふん、と笑うとミラルドさんは机に地図を広げある街を指差す
魔術錬金都市『ミッドベイガルズ』
「親魔物領の新興都市だ。街道の交差点に位置し商業も盛んだが、領主の方針によって錬金術、魔術魔法、医術、科学、など様々な学問や技術研究が奨励されている。」
「スーミルはここに工房を建てたそうよ。」
『医術、錬金術・・・・・・』
「彼女、鍛冶しか興味なかったのに医術とか魔術とか興味深々らしいわよ。」
『・・・・・・・・ミラルドさん。それって・・・・・・もしかして・・・・・・・・』
ありえない想像に、手が震える。
そんなことがありえるのだろうか・・・・・・
「ここに行けば右手、作ってもらえるんじゃないかしら？」
『そんな！！母上！！そんなことできる訳が』
「ここでは戦争で四肢を失った戦士のための義肢研究も盛んだそうだ。」
「スーミルもその研究の最前線にいるみたいよ。」
『まさか・・・・・そんな夢みたいな・・・・・・・』
「クーレスト君。ここに、彼女への紹介状を書いたわ。後はキミしだいよ。」
ミラルドさんの言葉を聞いて右腕を見る。
先の無い、醜く、弱い腕。
右腕を見て、フューを見る。
この腕でも愛してくれると言ってくれた愛しい人。
そして、窓の外に視線が移る。
襲撃によって傷ついた里。
その傷を付けた男から今の俺はフューを護れるのか？
強くなりたい。
この愛しい人を護るために
ならば・・・・・・・
『行きます。その希望。この目で確かめます。』
『クー・・・・・・・・』
「うむ、よくぞ言った。流石は俺たちの娘が選んだ男だ。」
「そう言うと思って、用意しといたわよ。あなたの荷物と、あとちょっとした食糧も入れといたわ。」
ありがとうございます、と礼を言って自分の荷物を受け取る。
『クー・・・・・・・・・もし・・・・・・・』
『フュー、言いたいことは分かる。希望が砕かれた時の絶望は大きい。』
『なら！！私は、今のままでも！』
『大丈夫。俺はもうこの腕で嘆いたりしない。この腕は俺の誇りだよ。だから・・・・・・』
『・・・・・・・？』
『だから、もうちょっとだけ待っててほしい。絶対にキミを迎えにくる。』
『・・・・・・・・・・・・・・・』
『フュー？』
『やだ！！私も行く！！！』
「フュニリィ！！！」『フュー！！！』
『私も行く！！もう待ってるなんてまっぴらごめんだ！！！』
『え、でも！これは俺の問題であって』
『五月蝿い！黙れ黙れ！！！だいたいそんな腕で、慣れない左腕だけで長い旅をどう生き抜く！？』
『それは・・・・・・・・・』
『ほれ見ろ。私も着いていくぞ。お前１人では心配だ。』
『フュー・・・・・・・・』
『・・・・・・・・頼む。』
『・・・・・・・・・・・・・ああ、一緒に行こう。俺たちは、もう離れることは出来ないからな。』
『ありがとう！！クー！！！』
「ちょっと待て！！！お父さんそれは認めなi」
「そう言うと思って、フューの荷物も用意しておいたわ。」
「母さん！！！！？？」
「フュー。やっと手に入れた幸せ。逃がすんじゃないわよ。」
『ありがとう・・・・・母上・・・・・』
「いやいやいや、なに親子で抱き合って別れの挨拶してるの！？それ俺もしたい！！じゃなくて！！！！お父さんはまだ旅立ちを認めた訳じゃｎぶへぁ！」
ミラルドさんの裏拳が入った
「クーレスト君。フューをお願いね。」
『はい。今は護られる立場ですが、彼女を護りたいという気持ちに嘘偽りはありません。必ず、彼女を護る男になって戻ってきます。』
「いい目。私の息子と呼ぶに相応しいわ。必ず、戻ってきてね。」
そう言って、俺たちは旅立つ。
新たな希望を求めて
「いつまで寝てるの？」
「もう行ったか？」
「とっくに。良かったの？普通に見送りしなくて？」
「・・・・・・・泣いちまうかもしれないからな。」
「呆れた。情けない姿さらしちゃったのに？」
「父親が泣く姿なんて、子供に見せるわけにゃいかんだろ。」
「・・・・・・・それもそうね。」
「また・・・・・・・・寂しくなるな。」
「なら、もう１人作る？」
「望むところじゃ！」
『本当に良かったのか？』
『ああ。』
『本当に？』
『しつこいぞ。』
『・・・・・・・・・・一緒に来てくれてありがとう。』
『そんなことか。ふふふ。』
『なんだよ？』
『お前の夢はなんだ？』
『俺の夢？・・・・・・・冒険者になる、かな。』
『そうだ。夫の夢を応援するのは妻として当然だ。』
『そうか・・・・・・・』
『不満か？』
『いや、十分だ。フューはいい嫁さんになるな。』
『お前限定だ。お前以外の嫁になる気はない。お前も宣言していいぞ、「フューは俺の嫁！！」と。』
『いや・・・・・それは遠慮しとく。嫁には貰うがな。』
『もう私を離さないでくれよ・・・・・・』
『ああ、もちろんだ。』
愛し合う蜥蜴と青年は互いを想い、旅立った。
思い遣る剣と槍は互いを支えあい、もう折れることはない。
『剣と槍と、蜥蜴と青年と、私と俺と』 ＥＮＤ
『・・・・・・・・・・んぁ・・・』
目が覚める
目の前のは金色・・・・・・・フューの髪
俺の右腕を枕に眠っている美貌
視線を下に下げるとメロンが二つたわわに実って・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・ハダカやん。
ベランダで抱きしめあった後、俺たちはどちらともなくベッドに向かった。
それは氷を放置していれば融けるように、雨が降れば地面が固まるように、想いが通じ合った男女なら至極当然のことだった。
フューを起こさない様に腕を抜き、身体を起こす。
昨晩の行為の後、疲れてそのまま寝てしまったのでベッドはいろんな液体でえらいこっちゃだった。
・・・・・・・・・・初めてだったのに、何回もヤッちゃったからな・・・・
えーと、すっかり発情したフューに覆い被さられてそのまま２人で卒業して、放心したフューから主導権を奪ってヤッて・・・・・・・・・・・数えんのめんどいな・・・・・・
とりあえず、朝の日差しを入れようとベッドから降りる。
カーテンを開けようとすると、視界に入る右腕。
手首から先の無い、俺の右腕。
昨夜、あれだけ忌々しく、苦々しく、俺を絶望の底へ追いやったこの腕。・・・・・・・・・フューの気持ちを受け入れた後は、彼女を護った誇らしい勲章だ。
泣いたカラスがもう笑った。と言われそうな心情の変化だなと、自分で苦笑する。
そんな気分にさせてくれた女神を振り返って見ると・・・・・・・
＆
ベッドの上で丸まっていた
体育座りのまま横に倒れた形で。まさに「＆」こんな形で
ハダカで寒いのか、とも思ったが俺もハダカだ。
もじ彼女が変温動物であったとしてもそれ程の室温ではないはずだ。
・・・・・・・・・・・どうやら、イジケているらしい。
カーテンを開けるのを中断し、俺は何故か不機嫌な女神様のご機嫌を伺うためにベッドに戻った
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いじけてます。
ええ、いじけてますとも。なにか？
なんでいじけてるかって？
愛する人と一つに結ばれて幸せですよ。今私は世界一幸せですとも
・・・・・・・・・・・・・・・・でも、魔物の本能って知ってる？
魔物はその本能として男性を襲うわけですよ。
で、襲うってことは、こちらが主導権握るってことですよ。
つまり、魔物は女性上位が好みということだ。
サキュバスとかドラゴンとかデュラハンとかオーガとか、皆騎乗位好きでしょ？
私もその例に漏れず、いつか運命の人に負けたら組み敷いて上から攻めてやろうと妄想して、そんな状況をオカズに一人エッチもしてきた・・・・・・・・・・
でも・・・・・・・・・・・
今、カーテンを開けに行った男は、ベッドの上ではＳだった・・・・・・・
最初こそ妄想どうりだったが・・・・・・・・私が初めての快楽に放心している間に形勢を逆転され・・・・・・・・その後は・・・・・・・・・
悔しい・・・・・・・・でもっ！！
彼が私を組み敷いて、彼の分身が私の中を蹂躙して、中も外も彼に支配されて・・・・・・・
一戦終わって彼が私の中から出ていっても休憩と称して指でいぢめてくる
『身体が冷めちゃうだろ？』
と耳元で囁かれたときは身体の芯からゾクゾクした
後ろから攻められた時は敏感な尻尾をこれでもかと撫でられた・・・・・
『もう・・・・尻尾らめぇ・・・・』
と言っても優しく鱗に逆らって撫でられてイッてしまった
結論を言うと
すごくきもちよかった
ええ、気持ちよかったですとも
彼のお陰で、私は本当はマゾなんだと分かりました。
でも腑に落ちないので丸まってます。
『おい、フュー？』
不機嫌の原因がやってきた。
昨日の悔しさをちょっとでも晴らすため、黙って返事しません。
『・・・・？、どうしたんだ？・・・・・・・・。』
ん？
彼がベッドに上がって・・・・・私のお尻に右腕を付けて・・・・・・・
『わぁー、まるでフィストファkk『やめろ』
身を挺したブラックジョークを吐こうとしていたので尻尾で彼の喉を絞める。
もう・・・・・・仕方ない・・・・・・
『昨夜、泣いてた奴とは思えないな・・・・・』
『そうだな。ふふふ・・・・・・・・キミのお陰だよ。』
ありがとう、と微笑みながら言われると、先ほどの不機嫌はどこへ行ったのか。心が暖かくなる。
現金な奴だ、私も。
『私は、ただお前と一緒に居たいと言っただけだ。乗り越えたのはクー自身の強さだよ。』
『いや、フューが居たからこの腕を誇りに換えることができたんだ。ありがとう。』
『クー・・・・・』
『フュー、大好きだ・・・・・・』
『ああ、私もだ・・・・・・・』
顔を赤く染めたクーが私の肩を抱いて迫ってくる・・・・・・・
ああ・・・・・・あと数センチ・・・・・・・・
触れたらきっと、止まらない・・・・・・・・・・朝からなんて・・・・・・・・・・昨日の情事のせいでまだベトベトに汚れた身体なのに・・・・・・・・・・そんな・・・・・・・・・・・・なんて理想通り・・・・・・・・・・・
さあ、抱いて・・・・・・・・あともう少し・・・・・・・・・
「はーい！！ストップ！！！！」
いきなりドアが開けられ、反射的に身体を離す。
「もう、イチャイチャすんのはいいけど私たちが居ることも忘れないでね。」
『は、母上！！！』
『ミラルドさん！！？』
「お父さんも居るわよｗｗ」
「ふごー！！！」
ドアの向こうにはツヤツヤしている母上と猿轡を噛まされ鎖でぐるぐる巻きにされた父上がいた
「ゆうべはおたのしみでしたねｗｗｗｗ」
『フュー・・・・・・・これはいったい・・・・・？』
『あー、すまない、忘れてた。』
クーの逃走を防ぐために窓には私、玄関に父上、そしてドアの外に母上が待機していたのだ。里のことはいいのか？と聞いたら「もう大丈夫よ。そんなことより娘の幸せよ！」と言っていた。
『つ・・・・・つまり・・・・・』
青ざめるクー。
そうだ。その通りだ。
「ごちそうさまでしたｗｗｗｗ」
「ふごおおおおおお！！！！」
おそらく、ドア越しに一晩中私たちの情事を聞いていたのだ。人が悪い。
私を溺愛している父上が乱入しないように縛って。あ、血の涙流してる。
「この人にも困ったものよ。いい加減娘離れさせないと。」
「ふご！！ふご！！！ふごおおおおおお！」
『・・・・・・で、母上。私たちの朝の情事を邪魔したからにはそれなりの理由があるのでしょう？』
「あ、そうだった。クーレスト君、君にいいお話があるんだけど、」
『・・・・・・え？なんでしょうか？』
「と、その前に、まず身嗜みを整えてきなさい。この人もフューのベトベトな姿は見たくないだろうしｗｗｗ」
「ふごーーー！！！」
父上の目から流れる血の量が増えた。仕方ない。
『クー、風呂に入るぞ。』
『ああ・・・・・・・って、一緒に！！？』
『そうだ。』
『え・・・いや、でも・・・・・・』
『どうしたんだ？昨日散々弄んだくせに。』
『そうだけど。じゃなくて・・・・・
『ん？もちろん身体は私が隅から隅まで洗ってやるぞ。』
『それは嬉しi、じゃなくて・・・・・・・アルテアさん、キミのお父さんが・・・・・・・・』
「ふご！ふが！！」
『フューと一緒に入ったら殺すって視線が・・・・・・・・・』
『なに、気にすることはない。』
『いや、でも・・・・・・・・・』
「いいから入ってきなさい。この人は私が押さえてるから。」
『ありがとう母上。いくぞ、クー。』
『あ、ああ・・・・・・・』
まだ戸惑うっている様子のクーを引きずり風呂場に向かう。
後ろからまるで娘を助けられなかったと言わんばかりの悲痛な「ふごおおおおおお！！！」が聞えてきたが気にしない。
まったく、父上にも困ったものだ。
身支度を整えた俺たちはフューの両親が待つリビングに向かう。
フューのお父さん、アルテアさんは落ち着きを取り戻したようで、今はどっしりと構えている。
「先程は取り乱して済まなかった。」
『まったくだ。』
『フュー・・・・・』
「返す言葉もない。とりあえず、クーレスト君。里を救っていただき感謝する。」
『いえ。俺はただ、フューの事を助けたかっただけです。・・・・・・・あ、里の方はどうなんですか？』
「里の方はもう復旧作業に入っている。４分の１の家が焼けたが、薬品庫や倉庫を直撃しなかったのが救いだった。」
「ああ。そのお陰で怪我人は粗方処置が済んだ。飢えている者も居ない。キミがあの魔導師を討ってくれたおかげだ。」
『そんな・・・・・・』
『胸を張れ、クー。お前が救ってくれたんだ。私はそんなキミの妻であることが誇らしいよ。』
『フュー・・・・・・』
『クー・・・・・・・』
「ん゛んん゛！！その話だが・・・・・・・・」
「私とアルテアで話したが・・・・・・・」
「「キミたちの結婚は認めません。」」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『『はあ？』』
「聞えなかったか？クーレスト君をフュニリィの夫として認めないと言ったんだ。」
『よし、父上、表に出ろ。』
『ちょ！！落ち着けフュー！！』
『離せクー！！私はこの過保護親父に焼きを入れねばならん。』
『それを待ってと言ってるんだ。ミ、ミラルドさんも何か言って下さいよ！』
「あら、私もあなた達の結婚は認めませんよ。」
『よし、母上、その喧嘩買ったぞ。』
『フュー！！』
『何故だ！！？どうして認めてくれないのですか！！！』
「クーレスト君がフュニリィより強いとは思えんからだ。」
『ぐ・・・・・・・』
『クーはちゃんと私との果し合いにも勝利しているのですよ！！！』
「んーーーー、でも私たち、その果し合いを見てないしぃ。」
『いけしゃあしゃあと・・・・・・・・・クーはこの里を救ってくれた英雄です！！それは父上も母上もお認めになってたではありませんか！それではだめなのですか！？』
「そのことは感謝している。だが、それがクーレスト君がお前より強いという証明にはならない。」
『ぐううう・・・・・・・・この分からずやどもめ・・・・・・・・・・、クーお前もなにか』
『そうですね。今の俺は彼女より弱いです。』
『クー！！！』
いきり立つフューを押さえて話を続ける。
俺だって諦めてないよフュー。
だって俺はキミが好きなんだから
『ミラルドさん。』
「何かしら？」
『先程、貴女は自分に「いい話」があると仰ってました。それがこの話だとは思えないのですが。』
「ふふふ、そう。正解よ。娘にも落ち着きとそのくらいの記憶力があればねぇ。」
『な！！母上！！！』
「そ、いい話。」
そう言うとミラルドさんは戸棚から地図と２通の手紙を持ってきた。片方の手紙は開封済みだ。
「昔旅をしていた頃に出会ったサイクロプスの友達からちょっと前に手紙が来たの。」
『母上の知り合いというと・・・・・・あの名匠スーミル殿ですか！？』
「そ。まあ彼女はまだまだ修行中とか言ってて、その二つ名は気に入ってないみたいだけど。」
『それで、そのスーミル殿がなんと？』
「ああ、そうそう、彼女は世界中を旅してて技術を磨いてたんだけど、なんと結婚してついに自分の店を持つことにしたんだって。」
『それはおめでたい。』
「うん。でも私たちは里の復興でそれどころじゃないの。だから、クーレスト君に代わりに行ってもらおうと思うの。」
『はぁ・・・・・・』
『・・・・・・む、分かったぞ母上。クーに新しく武器を作ってもらおうと』
「半分ハズレ。まあそれでもいいんだけど、それじゃあ勿体無いわね。」
『すると・・・・・・どうして？』
ふふふん、と笑うとミラルドさんは机に地図を広げある街を指差す
魔術錬金都市『ミッドベイガルズ』
「親魔物領の新興都市だ。街道の交差点に位置し商業も盛んだが、領主の方針によって錬金術、魔術魔法、医術、科学、など様々な学問や技術研究が奨励されている。」
「スーミルはここに工房を建てたそうよ。」
『医術、錬金術・・・・・・』
「彼女、鍛冶しか興味なかったのに医術とか魔術とか興味深々らしいわよ。」
『・・・・・・・・ミラルドさん。それって・・・・・・もしかして・・・・・・・・』
ありえない想像に、手が震える。
そんなことがありえるのだろうか・・・・・・
「ここに行けば右手、作ってもらえるんじゃないかしら？」
『そんな！！母上！！そんなことできる訳が』
「ここでは戦争で四肢を失った戦士のための義肢研究も盛んだそうだ。」
「スーミルもその研究の最前線にいるみたいよ。」
『まさか・・・・・そんな夢みたいな・・・・・・・』
「クーレスト君。ここに、彼女への紹介状を書いたわ。後はキミしだいよ。」
ミラルドさんの言葉を聞いて右腕を見る。
先の無い、醜く、弱い腕。
右腕を見て、フューを見る。
この腕でも愛してくれると言ってくれた愛しい人。
そして、窓の外に視線が移る。
襲撃によって傷ついた里。
その傷を付けた男から今の俺はフューを護れるのか？
強くなりたい。
この愛しい人を護るために
ならば・・・・・・・
『行きます。その希望。この目で確かめます。』
『クー・・・・・・・・』
「うむ、よくぞ言った。流石は俺たちの娘が選んだ男だ。」
「そう言うと思って、用意しといたわよ。あなたの荷物と、あとちょっとした食糧も入れといたわ。」
ありがとうございます、と礼を言って自分の荷物を受け取る。
『クー・・・・・・・・・もし・・・・・・・』
『フュー、言いたいことは分かる。希望が砕かれた時の絶望は大きい。』
『なら！！私は、今のままでも！』
『大丈夫。俺はもうこの腕で嘆いたりしない。この腕は俺の誇りだよ。だから・・・・・・』
『・・・・・・・？』
『だから、もうちょっとだけ待っててほしい。絶対にキミを迎えにくる。』
『・・・・・・・・・・・・・・・』
『フュー？』
『やだ！！私も行く！！！』
「フュニリィ！！！」『フュー！！！』
『私も行く！！もう待ってるなんてまっぴらごめんだ！！！』
『え、でも！これは俺の問題であって』
『五月蝿い！黙れ黙れ！！！だいたいそんな腕で、慣れない左腕だけで長い旅をどう生き抜く！？』
『それは・・・・・・・・・』
『ほれ見ろ。私も着いていくぞ。お前１人では心配だ。』
『フュー・・・・・・・・』
『・・・・・・・・頼む。』
『・・・・・・・・・・・・・ああ、一緒に行こう。俺たちは、もう離れることは出来ないからな。』
『ありがとう！！クー！！！』
「ちょっと待て！！！お父さんそれは認めなi」
「そう言うと思って、フューの荷物も用意しておいたわ。」
「母さん！！！！？？」
「フュー。やっと手に入れた幸せ。逃がすんじゃないわよ。」
『ありがとう・・・・・母上・・・・・』
「いやいやいや、なに親子で抱き合って別れの挨拶してるの！？それ俺もしたい！！じゃなくて！！！！お父さんはまだ旅立ちを認めた訳じゃｎぶへぁ！」
ミラルドさんの裏拳が入った
「クーレスト君。フューをお願いね。」
『はい。今は護られる立場ですが、彼女を護りたいという気持ちに嘘偽りはありません。必ず、彼女を護る男になって戻ってきます。』
「いい目。私の息子と呼ぶに相応しいわ。必ず、戻ってきてね。」
そう言って、俺たちは旅立つ。
新たな希望を求めて
「いつまで寝てるの？」
「もう行ったか？」
「とっくに。良かったの？普通に見送りしなくて？」
「・・・・・・・泣いちまうかもしれないからな。」
「呆れた。情けない姿さらしちゃったのに？」
「父親が泣く姿なんて、子供に見せるわけにゃいかんだろ。」
「・・・・・・・それもそうね。」
「また・・・・・・・・寂しくなるな。」
「なら、もう１人作る？」
「望むところじゃ！」
『本当に良かったのか？』
『ああ。』
『本当に？』
『しつこいぞ。』
『・・・・・・・・・・一緒に来てくれてありがとう。』
『そんなことか。ふふふ。』
『なんだよ？』
『お前の夢はなんだ？』
『俺の夢？・・・・・・・冒険者になる、かな。』
『そうだ。夫の夢を応援するのは妻として当然だ。』
『そうか・・・・・・・』
『不満か？』
『いや、十分だ。フューはいい嫁さんになるな。』
『お前限定だ。お前以外の嫁になる気はない。お前も宣言していいぞ、「フューは俺の嫁！！」と。』
『いや・・・・・それは遠慮しとく。嫁には貰うがな。』
『もう私を離さないでくれよ・・・・・・』
『ああ、もちろんだ。』
愛し合う蜥蜴と青年は互いを想い、旅立った。
思い遣る剣と槍は互いを支えあい、もう折れることはない。
『剣と槍と、蜥蜴と青年と、私と俺と』 ＥＮＤ
10/11/17 13:10更新 / 腐乱死巣
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