1話流れ流され
「駄目だな。これが文字という事は分かるけど、全然読めんわ」
革表紙の書物の内容を見て、俺は呟く。俺の隣に居た少女は、
「言葉は分かるけど文字は駄目みたいだね。読むには一から勉強しないといけないよ」
と言う。俺は
「ミコさん。すまないけど誰か文字を教えてくれる人を頼めないか。やっぱ文字が読めないと不便だし」
と少女。ミコさんに頼む。ここに来て彼女の仕事を手伝おうと思っているが、やはり文字が読めるのと読めないのとでは大違いだろう。ミコさんは、
「ルカ。前にも言ったけど私の事はミコでいいよ。後、文字なら私が教えましょう!」
と言った。俺は
「いいのか?ミコさ……ミコは他にも仕事があるんだろう?」
と言う。
「大丈夫大丈夫。マコと代わり代わりにやっているしね。貴方に教える時間ならあるよ」
とミコ。まぁ本人がそう言うなら良いかと思いながら
「分かった。じゃあ宜しく頼むよミコ先生」
と頭を下げる俺であった。
突然ながら俺には何故か過去の記憶がない。ルカというのも、ミコがつけてくれた名前で元々の名前は分からない。初めてこの島に来た時、俺は海辺に居た。何故だか身体のあちこちが痛く訳が分からなかった。そうして1時間程呆然としていた所、俺を発見したのがこの島の警備だった。
あれよあれよと屋敷に運ばれ、手当てを受けたのだが。記憶喪失しているのだから当然といえば当然だが屋敷の人達が話すことは意味が分からなかった。いや、言葉は通じていたが話の内容はさっぱりだった。
「この人、まだ人間ですよ。いや、ここは魔界ですしインキュバスになるのも時間の問題だと思いますけど」
「人相はジパング辺りの者みたいだけど、この島からジパング地方は遠すぎますよね?」
「魔物でない人間なら反魔物領の人だろうけど、この近くで船が難破したなんてニュースは聞きませんでしたね」
「この島は反魔物領に遠くはないけど近くもないからね。海難にあったなら海の魔物達に救助されてないとおかしい」
「実際周辺海域の方たちに聞いても何も知らなかったようね」
魔界?魔物?そんな話を聞いているうちに、俺はある違和感に気づいた。見かける男性は普通の人間の様だったが、女性が明らかにおかしかった。獣の様な耳が頭から生えていたり、下半身が蛇の様になっている。俺は混乱しながらもベッドから身体を起こした。その時、
「大丈夫?まだ寝ててもいいよ」
とベッドの側に居た、白い髪が先端に近付くにつれ青くなり時折黄色い模様が入った長髪の、角や翼、尻尾が生えた美少女が俺に話しかけて来た。俺は思わず、
「君は?」
と彼女に問うた。彼女は
「私はミコ・サウスタンプ。貴方、名前は分かる?」
と言った。俺は、
「俺は、お、俺は……」
と自分の名前を言おうとして言えなかった。そんなもの記憶になかったからだ。それを見たミコは
「やっぱり記憶喪失なのね。無理に思い出さない方がいいわよ。貴方は今とても疲れているの。ゆっくり休みなさい」
と言いながら優しく俺を寝かせた。俺は、
「あ、ありがとう。ところでここはどこなんだ?」
と聞く。するとミコと名乗った彼女は
「ここはハウオラ島。私……というか私の一族が所有する島よ」
と答える。そして続けて
「貴方が倒れてる所を見つけた時はびっくりしたわ。でも命に別条がなくてよかった。それにしてもどうしてあんな所に倒れていたの?」
と聞かれる。俺は
「えっと。気が付いたら砂浜で倒れていて……。ここって日本じゃないんですか?外国ですか?」
と聞いた。ミコは
「ニホン?何処かしら?少なくとも私は聞いたことがないかな」
と答えた。俺も日本という故郷のことは朧気ながら知ってはいたが、ここは日本の名も入ってこないくらい遠い場所なのだろうか?この現代にそんな馬鹿なと思うが。しかし俺にはそれ以外に思い当たる節がなかった。
「うーん、まぁとりあえず身体の調子が良くなるまでゆっくり休んでいて。後で医者を呼んできますから」
と言ってミコは部屋を出て行った。それから少しして、ミコさんが再び部屋に入ってきた。
「ミコさん。どうかしましたか?」
と俺は未だ混乱が収まらない中、応対する。するとミコさんは少し顔をしかめて、
「私はミコじゃない……マコ・サウスタンプ……ミコの双子の妹よ」
と言った。俺は
「えっ?」
と驚いた。そういえば、彼女はミコさんに比べて、髪の色が暗いような……マコは
「私とミコを間違えるなんて、かなり疲れているみたいね……まったく、こんな人が私達の運命の人の訳ないじゃない」
と言った。後半は小声で聞き取れなかった。俺は
「えっ、何て言ったんです?」
と聞き返すが、マコは
「なんでもありません!とにかく安静にしてください!」
と怒ったように言って出て行ってしまった。俺は
「なんで怒っているんだろう」
と思いながら、しばらく寝ることにした。
◇ ◇ ◇
「マコ!どうだったあの人?」
「どうも何も、信じられないわ。私とミコを間違えたのよ?私には運命の人なんてものには思えなかったわ」
「私達は双子だし、初見の人が間違えてもしょうがないよ〜。私はね、信じているの。あの人がこの島にやってきたのは偶然……に見せかけて神様の誰かが私達に引き合わせてくれたって」
「まさか……主神か何かだとは思ってないでしょうね。あの神からすれば私達魔物は敵でしょ」
「まあ、私は主神さんを崇めている訳じゃないけどね?でもホテルはあるけど未婚の男性なんて滅多に訪れない島に来たんだよ?日々の仕事を頑張っている私達にもついに春が来たと思うでしょ!?」
「貴女が島の領主代理として今までも頑張って来たのは私も知ってる。けど……」
「けど?」
「あんな身元不明男、私達が相手にするほどの者じゃないわ、大人しく本土のサバトに引き渡した方が身の為になる」
「ここに置いてあげようよ!あの人傷はまだ治り切ってないし明らかに自分の置かれた状況を分かってないのよ。彼を守ってあげたいと思わないのマコ?」
「分かったよ……これは別に彼のためじゃない。この島の治安を守るためだからね」
「ありがとう。やっぱり持つべきものは姉妹だよね」
「そういうこと言わないの」
ミコ・サウスタンプ、マコ・サウスタンプは、サウスタンプ家の次期当主であり、サキュバスである。彼女達はハウオラ島の管理を任されており、普段は屋敷の管理をしたり、ハウオラ島唯一のホテル、ホテルガッツセレクトの支配人として活動している。この二人は普段から仲が良いが、マコがミコに厳しい一面もある。それは二人が互いに互いを信頼し合っている証拠でもあるのだが。マコはミコと比べて冷静な性格だが、恋愛に関しては素人だった。そんなミコマコが一目惚れをした相手。それが今回の話の主人公である。
◇ ◇ ◇
それから3日後、俺はミコ達屋敷の使用人達の看病のお陰で体調がよくなった。そして俺は屋敷の中を見て、ミコやマコってもしかしなくともお金持ちのお嬢様なのか?と思った。だって使用人とかメイドとか執事とかいたら普通そう思うじゃん。そして俺は
「すみません。俺が倒れていた所って一体どこですか?」
と聞くと、ミコが答えてくれた。
「ハウオラ島の東にある、ザス浜ってところだよ。その辺りは50メートルくらい沖へ行くと、潮の流れが速くなるんだ」
「へぇーそうなんですか」
俺は適当に相槌を打つ。するとミコは少し心配そうな顔で
「ところで貴方の名前は?記憶喪失なんだっけ?」
と聞いてきた。
「あ、はい。名前は思い出せないです。というより、自分が誰で、どうしてここにいるのかも分かりません」
と俺は正直に答える。ミコは
「うーん、それじゃ名前がないと呼びにくいなぁ……。そうだ!君の名前、私がつけてあげる!」
と笑顔で言う。俺は少し焦った。俺が覚えているのは日本人だったということと、現代社会の知識だけなのだ。なので異世界風の名前をつけられると困る。俺は
「えっ?ミコさんがですか?」
と聞き返した。すると彼女は
「うん!私こう見えてもネーミングセンスには自信があるんだ。……よし、決めた!君の名前は……ルカだ。どう?」
と自信満々の顔で言った。俺は少し不安になったが、特に反論する理由もないので、
「はい。それでいいですよ」
と答えた。ミコは満足した様子で、
「やった!私の直感は間違ってなかった!よろしくねルカくん!」
と言って握手を求めてきた。俺は
「こちらこそよろしくお願いします。えっと、ミコさん」
と彼女の手を握った。こうして俺は、この世界での第二の人生を歩むことになったのだ。この屋敷に来て教えられたことは、ここは俺が知識として知っている現代社会とは丸っきり違う世界だと言うことだ。
この世界の人間ではない知的生命体、魔物はかつては人間と敵対していたが、今では魔物達は美貌と人間への愛を持つようになった。ちなみに俺は人間だが、ハウオラ島は魔界という地域に属しているので、いずれ魔物の雄であるインキュバスになるらしい。俺はそのことを知ったら恐れおののいたが、インキュバスになれば、老いからは解放され、病気にもかからないらしいので虫歯が治るならと受け入れた。
そしてミコ達を含むこの島の女性は人間はおらず、全員魔物だ。もしも俺の記憶が戻らずこの世界に留まるなら、魔物の誰かと結婚するのか?そんなこんなでミコ、或いはマコから俺はこの世界の知識を吸収していった。文字の読み方。初心者向けの魔法。ホテルの客として来るだろう様々な魔物。など様々に。そんな中、俺はふとした疑問を持った。それは
「ミコって、何歳なんだ?」
というものだ。俺はミコとマコの見た目は15〜16歳に見えるが、実年齢は30代後半か40代前半といった感じがしたので、つい気になってしまった。するとミコは
「普通に秘密だよ♪」
と言い、そして俺の耳元で
「結婚した相手には教えるよ♡」
ボソッと言われてしまった。マコの方を見ると、こちらは呆れた表情をしていた。どうやらミコのこういう行動に慣れているようだ。ミコは年齢の割に大人びた性格をしているのだろうか?まあ、そういうことにしておこう。
革表紙の書物の内容を見て、俺は呟く。俺の隣に居た少女は、
「言葉は分かるけど文字は駄目みたいだね。読むには一から勉強しないといけないよ」
と言う。俺は
「ミコさん。すまないけど誰か文字を教えてくれる人を頼めないか。やっぱ文字が読めないと不便だし」
と少女。ミコさんに頼む。ここに来て彼女の仕事を手伝おうと思っているが、やはり文字が読めるのと読めないのとでは大違いだろう。ミコさんは、
「ルカ。前にも言ったけど私の事はミコでいいよ。後、文字なら私が教えましょう!」
と言った。俺は
「いいのか?ミコさ……ミコは他にも仕事があるんだろう?」
と言う。
「大丈夫大丈夫。マコと代わり代わりにやっているしね。貴方に教える時間ならあるよ」
とミコ。まぁ本人がそう言うなら良いかと思いながら
「分かった。じゃあ宜しく頼むよミコ先生」
と頭を下げる俺であった。
突然ながら俺には何故か過去の記憶がない。ルカというのも、ミコがつけてくれた名前で元々の名前は分からない。初めてこの島に来た時、俺は海辺に居た。何故だか身体のあちこちが痛く訳が分からなかった。そうして1時間程呆然としていた所、俺を発見したのがこの島の警備だった。
あれよあれよと屋敷に運ばれ、手当てを受けたのだが。記憶喪失しているのだから当然といえば当然だが屋敷の人達が話すことは意味が分からなかった。いや、言葉は通じていたが話の内容はさっぱりだった。
「この人、まだ人間ですよ。いや、ここは魔界ですしインキュバスになるのも時間の問題だと思いますけど」
「人相はジパング辺りの者みたいだけど、この島からジパング地方は遠すぎますよね?」
「魔物でない人間なら反魔物領の人だろうけど、この近くで船が難破したなんてニュースは聞きませんでしたね」
「この島は反魔物領に遠くはないけど近くもないからね。海難にあったなら海の魔物達に救助されてないとおかしい」
「実際周辺海域の方たちに聞いても何も知らなかったようね」
魔界?魔物?そんな話を聞いているうちに、俺はある違和感に気づいた。見かける男性は普通の人間の様だったが、女性が明らかにおかしかった。獣の様な耳が頭から生えていたり、下半身が蛇の様になっている。俺は混乱しながらもベッドから身体を起こした。その時、
「大丈夫?まだ寝ててもいいよ」
とベッドの側に居た、白い髪が先端に近付くにつれ青くなり時折黄色い模様が入った長髪の、角や翼、尻尾が生えた美少女が俺に話しかけて来た。俺は思わず、
「君は?」
と彼女に問うた。彼女は
「私はミコ・サウスタンプ。貴方、名前は分かる?」
と言った。俺は、
「俺は、お、俺は……」
と自分の名前を言おうとして言えなかった。そんなもの記憶になかったからだ。それを見たミコは
「やっぱり記憶喪失なのね。無理に思い出さない方がいいわよ。貴方は今とても疲れているの。ゆっくり休みなさい」
と言いながら優しく俺を寝かせた。俺は、
「あ、ありがとう。ところでここはどこなんだ?」
と聞く。するとミコと名乗った彼女は
「ここはハウオラ島。私……というか私の一族が所有する島よ」
と答える。そして続けて
「貴方が倒れてる所を見つけた時はびっくりしたわ。でも命に別条がなくてよかった。それにしてもどうしてあんな所に倒れていたの?」
と聞かれる。俺は
「えっと。気が付いたら砂浜で倒れていて……。ここって日本じゃないんですか?外国ですか?」
と聞いた。ミコは
「ニホン?何処かしら?少なくとも私は聞いたことがないかな」
と答えた。俺も日本という故郷のことは朧気ながら知ってはいたが、ここは日本の名も入ってこないくらい遠い場所なのだろうか?この現代にそんな馬鹿なと思うが。しかし俺にはそれ以外に思い当たる節がなかった。
「うーん、まぁとりあえず身体の調子が良くなるまでゆっくり休んでいて。後で医者を呼んできますから」
と言ってミコは部屋を出て行った。それから少しして、ミコさんが再び部屋に入ってきた。
「ミコさん。どうかしましたか?」
と俺は未だ混乱が収まらない中、応対する。するとミコさんは少し顔をしかめて、
「私はミコじゃない……マコ・サウスタンプ……ミコの双子の妹よ」
と言った。俺は
「えっ?」
と驚いた。そういえば、彼女はミコさんに比べて、髪の色が暗いような……マコは
「私とミコを間違えるなんて、かなり疲れているみたいね……まったく、こんな人が私達の運命の人の訳ないじゃない」
と言った。後半は小声で聞き取れなかった。俺は
「えっ、何て言ったんです?」
と聞き返すが、マコは
「なんでもありません!とにかく安静にしてください!」
と怒ったように言って出て行ってしまった。俺は
「なんで怒っているんだろう」
と思いながら、しばらく寝ることにした。
◇ ◇ ◇
「マコ!どうだったあの人?」
「どうも何も、信じられないわ。私とミコを間違えたのよ?私には運命の人なんてものには思えなかったわ」
「私達は双子だし、初見の人が間違えてもしょうがないよ〜。私はね、信じているの。あの人がこの島にやってきたのは偶然……に見せかけて神様の誰かが私達に引き合わせてくれたって」
「まさか……主神か何かだとは思ってないでしょうね。あの神からすれば私達魔物は敵でしょ」
「まあ、私は主神さんを崇めている訳じゃないけどね?でもホテルはあるけど未婚の男性なんて滅多に訪れない島に来たんだよ?日々の仕事を頑張っている私達にもついに春が来たと思うでしょ!?」
「貴女が島の領主代理として今までも頑張って来たのは私も知ってる。けど……」
「けど?」
「あんな身元不明男、私達が相手にするほどの者じゃないわ、大人しく本土のサバトに引き渡した方が身の為になる」
「ここに置いてあげようよ!あの人傷はまだ治り切ってないし明らかに自分の置かれた状況を分かってないのよ。彼を守ってあげたいと思わないのマコ?」
「分かったよ……これは別に彼のためじゃない。この島の治安を守るためだからね」
「ありがとう。やっぱり持つべきものは姉妹だよね」
「そういうこと言わないの」
ミコ・サウスタンプ、マコ・サウスタンプは、サウスタンプ家の次期当主であり、サキュバスである。彼女達はハウオラ島の管理を任されており、普段は屋敷の管理をしたり、ハウオラ島唯一のホテル、ホテルガッツセレクトの支配人として活動している。この二人は普段から仲が良いが、マコがミコに厳しい一面もある。それは二人が互いに互いを信頼し合っている証拠でもあるのだが。マコはミコと比べて冷静な性格だが、恋愛に関しては素人だった。そんなミコマコが一目惚れをした相手。それが今回の話の主人公である。
◇ ◇ ◇
それから3日後、俺はミコ達屋敷の使用人達の看病のお陰で体調がよくなった。そして俺は屋敷の中を見て、ミコやマコってもしかしなくともお金持ちのお嬢様なのか?と思った。だって使用人とかメイドとか執事とかいたら普通そう思うじゃん。そして俺は
「すみません。俺が倒れていた所って一体どこですか?」
と聞くと、ミコが答えてくれた。
「ハウオラ島の東にある、ザス浜ってところだよ。その辺りは50メートルくらい沖へ行くと、潮の流れが速くなるんだ」
「へぇーそうなんですか」
俺は適当に相槌を打つ。するとミコは少し心配そうな顔で
「ところで貴方の名前は?記憶喪失なんだっけ?」
と聞いてきた。
「あ、はい。名前は思い出せないです。というより、自分が誰で、どうしてここにいるのかも分かりません」
と俺は正直に答える。ミコは
「うーん、それじゃ名前がないと呼びにくいなぁ……。そうだ!君の名前、私がつけてあげる!」
と笑顔で言う。俺は少し焦った。俺が覚えているのは日本人だったということと、現代社会の知識だけなのだ。なので異世界風の名前をつけられると困る。俺は
「えっ?ミコさんがですか?」
と聞き返した。すると彼女は
「うん!私こう見えてもネーミングセンスには自信があるんだ。……よし、決めた!君の名前は……ルカだ。どう?」
と自信満々の顔で言った。俺は少し不安になったが、特に反論する理由もないので、
「はい。それでいいですよ」
と答えた。ミコは満足した様子で、
「やった!私の直感は間違ってなかった!よろしくねルカくん!」
と言って握手を求めてきた。俺は
「こちらこそよろしくお願いします。えっと、ミコさん」
と彼女の手を握った。こうして俺は、この世界での第二の人生を歩むことになったのだ。この屋敷に来て教えられたことは、ここは俺が知識として知っている現代社会とは丸っきり違う世界だと言うことだ。
この世界の人間ではない知的生命体、魔物はかつては人間と敵対していたが、今では魔物達は美貌と人間への愛を持つようになった。ちなみに俺は人間だが、ハウオラ島は魔界という地域に属しているので、いずれ魔物の雄であるインキュバスになるらしい。俺はそのことを知ったら恐れおののいたが、インキュバスになれば、老いからは解放され、病気にもかからないらしいので虫歯が治るならと受け入れた。
そしてミコ達を含むこの島の女性は人間はおらず、全員魔物だ。もしも俺の記憶が戻らずこの世界に留まるなら、魔物の誰かと結婚するのか?そんなこんなでミコ、或いはマコから俺はこの世界の知識を吸収していった。文字の読み方。初心者向けの魔法。ホテルの客として来るだろう様々な魔物。など様々に。そんな中、俺はふとした疑問を持った。それは
「ミコって、何歳なんだ?」
というものだ。俺はミコとマコの見た目は15〜16歳に見えるが、実年齢は30代後半か40代前半といった感じがしたので、つい気になってしまった。するとミコは
「普通に秘密だよ♪」
と言い、そして俺の耳元で
「結婚した相手には教えるよ♡」
ボソッと言われてしまった。マコの方を見ると、こちらは呆れた表情をしていた。どうやらミコのこういう行動に慣れているようだ。ミコは年齢の割に大人びた性格をしているのだろうか?まあ、そういうことにしておこう。
22/11/13 19:00更新 / MADNAG
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