砂漠の姫と近侍の少年
砂漠のどこかにあるオアシスの国、クヴァサ。ファラオの治めるその国は湧き出る地下水と生い茂る自然に囲まれ、辺りの過酷な砂漠とは打って変わって豊かな国。比較的規模の小さい国ではあるが、その分国民すべての言葉に耳を傾け、行き届いた政治を行なっている
これは、そんな砂中の楽園クヴァサのお話
……………………………………………
「母様!」
ぱたぱた、と城の廊下を駆ける一人の少女。褐色の肌と、自分の背丈よりも大きなコブラを連れるその少女はファラオ。このクヴァサを治めている女王の一人娘、いわゆる姫だ。名をプリシラという
「おうプリシラ、どうした?そんなに急いで」
プリシラが玉座の間に着くと、母親、アリアがおどけた調子で話しかけてくる
「もう!用があるから今すぐ来い、と私を呼んだのは母様でありましょう!」
「くくっ、そうであったな」
ケラケラと笑う母。プリシラにとって、母にからかわれるのは日常茶飯事とはいえ、腹が立たない訳ではない
「…それで、用事とは一体何なのですか?」
「おう。プリシラ、今日は12歳の誕生日であろう。だからプレゼントをやろうと思うてな」
「本当ですか⁉」
だが、からかわれてムスッとしていたプリシラもまだまだ幼い子供。プレゼントとなれば一転して花が咲いたような笑顔に早変わりする
「母様母様!プレゼントは何なのですか?」
「ああ、とびきりいい物だ。エルム!入ってよいぞ!」
『はっ…はい!失礼いたします!』
母の呼ぶ声に反応して、奥にある両親の自室から、ガチガチに緊張した声と共に誰かが出てくる
それは、背丈は自分と同じくらい、サラサラの茶髪を耳の下あたりで切り揃えた、真面目そうな少年だった
「…?母様、彼は?」
「プレゼント」
「……は?」
……………………………………………
私の名はプリシラ。砂漠の王、ファラオの子。我が国クヴァサにおける姫という奴である
先月、私は12歳の誕生日を迎え、父様母様からはプレゼントをいただいた。今までのプレゼントは、可愛らしいアクセサリーだったり、豪華な食事だったりしたのだが、今年は……
『姫様ー、起きていらっしゃいますかー?』
今年の誕生日に頂いたのは、私の部屋の戸を叩きながら、呑気な声で呼びかけてくる、エルムという少年だった
あの日、プレゼントだとあやつを差し出された時、母様が何を言っているのか全く理解できなかった
母様が言うには、「もう12歳、そろそろ近侍の一人ぐらい持たねば王族としての自覚が出んだろう」とのこと。エルムは、私の近侍、兼、近衛兵として両親が雇った兵士志願の少年だそうだ
「…ん……ぁふ…おはよう……いま起きた…」
『おはようございます。朝食は如何致しますか?』
「んー……ヨーグルト…」
『かしこまりました。用意してきますので、その間にお着替えを』
「むぅ…わかっている…」
コツコツ、と部屋から離れていく音が聞こえる
この1ヶ月で、エルムの奴も王室にかなり慣れたようだ。初日なんかはガッチガチで、身の回りの世話なんて本当に出来るのかと心配だったが、全くの杞憂であった。もとよりエルムは気配りのできる性分らしく、時間を経て仕事に慣れてきてからの気の配り様は、正に痒いところに手が届く、とでも言ったものか。とにかくエルムは、まだ緊張が多少残っているものの近侍としての仕事を全うしている
『姫様ー、朝食の用意が整いましたー。お着替えはお済みになられましたかー?』
「…ぅおっ、もう出来たのか!すまん、まだだ!」
なんて物思いにふけっていたら、気づけばそこそこ時間が経っていたようだ。急いで着替えなければ
『…あっ、アリア様。おはようございます』
『おう、エルムか。朝早くからご苦労』
部屋の外から、エルムと母様の会話が聞こえてくる。母様も目を覚ましたようだ
『プリシラはまだ寝ておるのか?』
『いえ、只今お着替え中で…』
『ほう……おいエルム、プリシラの着替えを手伝ってやれ』
『え……えぇっ⁉何を仰って……』
『いいから、行ってこい』
『ぁ……ぅ……は……はい……』
……ん?
ガチャ「……ひめさまっ…!お…おおお手伝いっ…いたしますっ!」
「ぎゃーっ⁉なな…なに入って来とるんだお前は!」
突然、エルムが扉を開けて部屋に入ってくる。着替えている途中で下着姿だった私は咄嗟に毛布を集めて体を隠す
「ご…ごめんなさいっ…!ひめさまっ……ですが…うぅ…」
「くははっ!お前がさっさと着替えんからだ!そんなにダラダラしたいなら二人でゆっくりするがよい!」
エルムの肩越しに母様を見ると、ゲラゲラと笑っている。よくよくエルムを見ると、顔は真っ赤、体の動きはまるで無理やり動かされているかのように不自然で、目尻に涙を溜めながら申し訳なさそうな視線を送ってきている
「母様っ!エルムに『王の力』つかいましたねっ!」
王の力
ファラオに備わる特殊な力。簡単に言えば凄まじいカリスマの事。その力をもって命令すれば、よほどの強い意志の持ち主でなければ抗うことはまず不可能だという
「くくっ、さて何のことやら。ではなー」
「おっ、まっ…母様っ!お待ちください!」
「ひ…ひめさまぁ…!ごめんなさいぃ…!」
「あっ!ちょ、まてエルム!大丈夫だ!自分でやる…きゃーっ!」
……………………………………………
「……はぁ…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
「おうプリシラ、エルム。今朝はお楽しみであったなぁ」
「母様っ!」
着替えを終えて食堂に向かうと、下卑たニヤケ顔で母様が、おそらくエルムが私に用意してくれたヨーグルトを食べていた
あの後、結局エルムに手伝われながら服を着替えた。壊れたように「ごめんなさい」と繰り返しながら私の服を仕替えようとするのを見ていたら、断るに断れなかったのだ
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
「エルムも、あれは…その、仕方なかったからな!全部母様の所為でお前は何にも悪くないから、な?もう謝らなくてもよい」
「ひ…姫様ぁ……ありがとうございます…!」
「うむ。あと、お前の用意してくれたヨーグルトも母様に食べられてしまったようだ。すまんがもう一度、朝食の用意をお願いできるか?私とエルムので、二人分だ。一緒に食べよう」
「は…はいっ!ただいまっ!」
「急がなくていいからなー」
エルムはようやく謝るのを止め、食堂に併設されている厨房の方にパタパタと駆け足で向かっていった
(ふふ…エルムは素直で可愛いなぁ)
あんな従順な姿を見ていると、まるで飼い犬を見ているかのようなホッコリした気持ちになる。なんだかんだ言って、母様からのプレゼントは本当にとびきりいい物だった
「……で?今朝はどこまでいったんだ?ん?」
当の母様は、ニヤニヤと下卑た問いかけをしてくるが
「もう…着替え以外に何もしておりません!」
「ちぇっ、つまらんなぁ。時間が足りんかったか?」
「そんなんじゃないです!その、そういう事は、ちゃんと同意の下でやるべきで…」
「ふぅん…でもそんな答えが出るということは、お前は少なからずそういう事を想像したんだな?」
「なっ!そ…それは……ぅぅ…」
「くくっ、照れずともよい。あんなに可愛らしい男の子に尽くされて、意識してしまうのも無理はないからなぁ」
確かに、エルムのことを忠犬の様だと可愛がる一方で、私はあやつに少なからず思いを寄せている
「……ですが、エルムは私の近侍、つまりは部下。自分の部下とそんな仲になろうだなんて……」
「んー?ではプリシラよ、エルムが他の誰かに取られてしまってもよいのか?」
「………それは…嫌です……けど…うぅ…」
「ま、そうやって悩むのも恋の醍醐味よの」
母様はそう言って立ち上がると。私の頭をポンポンと撫でて
「後悔はせんようにな、恋愛相談ならいつでも受けてやるぞ」
いつに無くまじめなトーンで言って、食堂を後にした
「母様……」
「プリシラ様〜、お待たせしました〜♪」
母様と入れ違いになるタイミングで、お盆を持ったエルムが厨房から戻ってくる。その足取りは軽く、表情は満面の笑み。見るからにご機嫌だ
(……恋…かぁ)
そんなご機嫌なエルムを見ていると、私の胸はキュンと締め付けられる。きっとこの気持ちはそうなのだろう
(でも…エルムは近侍だ…お仕事の関係なんだ。そんな気持ちは…うぅ……)
「プリシラ様?どうなさいました?」
「……へぁっ⁉やっ…いや!何でもない!さ、食べよう!」
「……はい♪」
色々悩んだ挙句、とりあえず今は難しいことは考えずに朝食をとることにした。悶々とした気持ちを切り替えて、私は朝食のヨーグルトに手を付けた
……………………………………………
「…………」
朝食を終えて部屋に戻るや否や、私はベッドに倒れこむ
「うぅ……だめだ…ドキドキする…」
前からエルムに好意は抱いてはいたが、それは親しい「近侍」に対する好意止まり。だが今朝の母様の言葉でエルムのことを恋愛対象だと認識しだしたら、私の中でその好意は「好きな異性」に対する好意に完全に変わってしまった
隣同士の席でいつも通りに朝食を摂る、そんな何気無い場面ですら心臓がバクバクした
それは勿論その日の朝食だけではない
毎朝エルムが起こしにくると考えるだけで、ワクワクして眠りが浅くなり
趣味の散歩でも隣にエルムがいると思うだけで、目線がそっちにとられてしまい
部屋にいる時もふと考えればエルムのことを考えていて、ドアをノックされればエルムが来たのかと期待して
でもいざ本当にエルムだったら緊張して声が上ずってしまう
「………」ペラ……
そんな私は今、自室のベッドに転がって本を読んでいる。母様が「後学の為に読んでおけ」と私に下さった恋愛漫画だ。きっと母様は内容を選んだのだろう、この漫画は一国の姫とその執事の恋路を姫視点で描いた物、まさに今の私のような状況だ。表紙の隅っこや背表紙に、まるで何かを隠すかの様に不自然に貼られたシールがあるのは気になったが、別段重要なものではないのだろうと気にしないことにした
「…………」ペラ………ペラ
漫画というのは不思議なもので、上手いこと次の展開が気になる様になっている。それにつられて私の指は勝手にページをめくる
やがて物語はクライマックス、姫が執事に想いを伝えると、執事はそれに応えるようにキスをして、そのまま流れるようにベッドに…
「ぇ…あっ…うそ、こんな事まで……」
そのまま漫画は濡場に突入してしまう。ベッドに無防備に仰向けになる姫の服を優しく脱がせ、優しく愛撫。そして……
「……………ゴクリ…」
本当にこれはただの恋愛漫画なのだろうか、ただの恋愛漫画にこんなに濃厚な濡場はあるのだろうか。そんな疑問は夢中になっている私には浮かんでこなかった
「……ドキドキ…」
更に読み進めていくと、姫の『滅茶苦茶にして…』という言葉を皮切りに執事の責めが激しくなり、まるで獣のようにお互いを貪りあう二人
「……ぁぅー」
とにかく夢中で読み進め、最後まで漫画を読み切った頃には全身がぽかぽかと火照っていた
夕食を食べてから読み始めて、気が付けばすでに外は真っ暗、大体20時くらいだろうか。窓から入り込む夜の砂漠の冷たい風が火照った体をなでて心地良い
「……エルムと恋仲になれば…私も…」
エルムとこんな事が出来るのだろうか
体の火照りのせいなのか、普段は考えもしないような事まで妄想してしまう。一度初めてしまうと中々止まらず、やがて、自分でも気付かぬ内に秘部に手をあてがっていた
「…っ……♡…っ…………♡」
一人きりの部屋にクチクチと控えめな水音と声を我慢している時のくぐもった音が響く。初めはうつ伏せのままだったが、弄りづらいのか体は自然と体勢を変え、仰向けになって自慰を続ける
「あっ♡……ふっ……♡」
空いている方の手は服の下に潜らせて乳首を摘んでコリコリと転がす。快感が体をピクピクと震わせる
「…んっ♡エルッ…ムゥ……♡」
頭の中では、愛しい彼が、エルムが私の体をいじってくれる。小説に出てきた執事のように、優しく、いとおしがるような手つきで
そんな彼の名を口に出すと、まるで本当に目の前にエルムが、従順で可愛いあの近侍が本当にいるように思えて、自分を慰める手がエルムの物に感じられて快感が膨れ上がる
「はっ……♡エルムっ♡エルム…っ♡もっとぉ…♡」
一度口を開いてしまえば我慢なんてできはしない。堰を切ったように声があふれ出す
快感も高まり、体はビクビクと跳ね、手の動きも速くなる。こうなってしまえば周りの状況なんてわかったものではない。内から外に対する防音魔術を施してある自室にいる、という安心感からか、自慰も声もどんどん激しくしていってしまう
コンコン『プリシラ様ー。今日は街で面白いお菓子を買ってきたんですー!折角ですのでお茶にしませんかー?』
「あっ…♡そこっ♡いっ…いぃ……♡ふゃっ…⁉…っひぅっ♡」
…今何か聞こえたような?
そんな気もしたが、すぐに快感の波にさらわれてしまう
『…姫様ー?…もしかして、もうお休みになってますか?』
「ふ…っ♡んっあっ…♡ぁ…あああっ♡」
『………入りますよー?』
「あっ♡くるっ…♡イくっ♡従者に体弄られてイっちゃうぅっ!♡」
ビクッ…!ビクビクッ!
そして私はフィニッシュを迎える。体は一際激しく震え、股の間は大洪水。なにより、エルムのことを想いながらの自慰は今までのどんなものより気持ちが良かった
「…ぁふ……♡えるむぅ…♡」
しかも、一度だけの自慰では、その興奮は治りはしない
体の熱はますます上がり、指は自然と秘部への刺激を再開しようと伸びて行く
…そういえば、あの漫画では。姫が執事に一度イかされたあと、姫が何か言って、それを皮切りに執事が…
確か、そのセリフは……
「…えるむ…♡私を…滅茶苦茶に…して…?」
そう口にすると、体の熱がみるみる上がっていく。セリフというのはまるで魔法のようだ。キャラクターになりきってセリフを発すると、まるで自分がその物語の中の入り込めている気分になる。その証拠に、私の耳には、まるでかの漫画の執事のように息を荒げるエルムの息遣いが聞こえてくるようだ
ガラーン!ガランガラン……
「……?」
そんな妄想のさなか、すぐ近くで大きな金属音がしてハッとする
(何の音だ?部屋のドアは閉めておいた………は……ず…)
心の中で悪態をつきながら音のした方を見る、そこにあるのは床でグワングワンと回る銀のトレイ、そして
「プ……プリシラ……さま…」
そして、病気かと疑いたくなるほどに息を荒げ顔を赤らめて立ち尽くす、我が近侍、エルムの姿
「……………ぁ…ぁああああああああああああああああっ!?ななななななななんでっ!エルムがここにっ!?ドアはしっかり閉めたはずっ!?」
「ごごごごごめんなさいっ!ですがっ…その…鍵がかかってなくてっ、ドアの表札も『入室可』のままでしたのでっ!」
「えっ………………あああああああああああああっ!」
自分が素っ裸なのも忘れて、急いでドアを確認しに行く。そこには確かに、普段入室されてもオッケーな時にかけている『入室可』の札が掛けてある。漫画に夢中になっていたせいでその確認をぬかってしまったようだ。外から開けられたということは、鍵についてもそういうことだろう
「あああ……あぁ………ぁ…」
(見られた…あんな淫らな姿を…よりにもよってエルムに……)
いやらしい奴だ、変態だ、なんて思われてしまっただろうか。幻滅されたのではないか。そんな想像をしたら体から力が抜け、その場にぺたりと座り込んでしまう
ポン…
「ぅううう……ぅ?」
そんな私の肩に、エルムは優しく手を置いてくれる。とてもやさしい、いつもの手。そこから伝わる温もりからは、私への嫌悪は感じられない
もしかして、慰めてくれるのだろうか。こんな卑しい私を…
「えぅ……エルム…?」
エルムのほうを振り返ってみると
「……ふーっ……ふーっ…………!」
ものすごく息を荒げていた
顔は先ほどから変わらずに真っ赤っ赤、それどころか顔から蒸気が立ち込めるのが目に見えるほどに、顔の火照りは悪化していた
口は大きく開いていて、肩を使って思い切り体内の空気を交換している。それにかかりきりになっているせいか、口の端からはタラりとよだれが垂れているのが見受けられる
そして何より、目だ。エルムの目はギンギンに血走っており、軽く恐れを感じるほどの剣幕で私を見つめて、否、凝視している。
「…ひ…ぁっ!……」
その目を見ていて、やっと私は自分が一糸まとわぬ姿なのを思い出し、とっさに両手で秘部と胸を隠そうとする…が
ガシッ、ガシッ、ググッ…
その私の両手は、今まで肩に置かれていたエルムの手に、目にもとまらぬ速さの動きで捕まれてしまう。その力は、いつもののほほんとしたエルムと同じ人物だとは思えないほどに強かった
「エ……エルム…?あの……」
「ひ……ひひひひひ…姫さまっ!!」
「ひゃっ…ひゃいっ!?」
そのままエルムは私の正面に回り込んで目の前に膝立ちになり、目を合わせながら叫んだ。ものすごい勢いだったので、思わず私も敬語で返事をしてしまう
見つめあう、真っ赤に血走った目にジワッと涙が浮かび始める。目玉には今にもグルグルの渦模様が浮かんできそうなほどだ
「すぅーー……はぁーー……」
だが、エルムは大きく深呼吸をすると、覚悟を決めたような表情になって、
「ふふふふっ…不肖っ!このっ、エルムがっ!ひっ…ひひ姫様っ…をっ……!め…めめめっ…滅茶苦茶にっ!させていただきますっ!!」
そう、高らかに宣誓した。高らかすぎて、最後のほうはやけくそ気味に目をつむって、胸をそらしていたほどに、高らかと
「……な…なんじゃそりゃあっ!?どうした急にっ!何か変なものでも食べっ……ぁ」
そこまで言って、私はさっきの自慰の時の自分の言動を思い出す。たしかあの時、最後に…
『…えるむ…♡私を…滅茶苦茶に…して…?』
(あっ……あれかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)
おそらく、あのセリフに心がこもりすぎたのか、私の『王の力』がセリフを私の命令だと誤認識したのだろう
「まっ…まてっ!違うっ!あれは私の本心では…無くは…無い…けどっ……と、とにかくあれは違うのだっ!とまれっ!とまれーっ!」
「あぅ…姫様…姫さまっ、ひめさまっ!ひめさまぁっ!」
「ひぃぃっ!?」
どれだけ制止の言葉、それも魔力を込めた『王の力』による言葉を掛けても止まることは無い。目ではギロギロと私の体を隅々まで見まわしながら、ぐいぐいと私の体をベッドのほうに移動させながら、隙あらば押し倒そうとしてくる
(エルムが…あのいつもポヤポヤしているエルムがこんな積極的に私を求めてっ…♡……じゃないっ!流石にこれはヤバイ気が……)
一瞬、このままでもいいか、と思いもしたが、なんとか思いとどまって抵抗を続ける
だが、あんなに可愛くて優しいエルムも元はといえば兵士を志願していた男の子。たしなみ程度の運動しかしていない私は到底力で敵うはずもなく、なすすべもなくベッドに押し倒された
「やっ…待って…」
「むりっ…ですぅ!あんな御姿っ…他でもないっ…姫様に見せられてっ…!」
横たわる私に覆いかぶさりながら、私の上にのしかかるエルム
「あんなっ…素敵な命令されてしまったらっ…!我慢できるわけっ…ないっ!です!」
「そ…そんな…ひぅっ!?」
言いきるや否や、エルムは私の乳首に乱暴にむしゃぶりついてくる。先の自慰でビンビンに勃ってしまった乳首はあまりにも敏感で、一口咥えられただけで頭が真っ白になる
「ぁむ…ぢゅっ…ぢゅぅぅぅっ!」
「やっ♡そんな急にっ……ひぐぅっ!?」
そして、当のエルムの攻め方も、私の妄想に出てきた、優しく愛撫では無く。ただ一心不乱に、まるで極度の空腹時に見つけた食料に食らいつく動物のように乳首を舐めしゃぶる
「ぢぅっ、ぢゅぱっ、ぁむっ、じゅるるっ」
「あ゛っ!はっ……ぁぁ…♡やぁっ♡ぁっ…ぁああっっ」ビクビクッ、ビクンッ
だがそんな暴力的な攻めも、相手は愛しきあの近侍、嬉しくないわけがない。頭では部下とこんな関係になるなんて駄目だと思いつつも、私の体は愛しの人の攻めの前に、いともたやすく力を抜いて絶頂を迎えてしまう
「はむっ…ぢゅぱっ…ぁ、ひめっ…しゃまっ♡」
「ぁっ…くひっ!?」
エルムも私に抵抗する力が残っていないことを察したのか、腕を押さえつけていた手を放して、左手で私の体を抱き、右手で洪水を起こしている私の秘所をいじくりだした
「まっ…♡いったばっかっ…りっ…♡やっ♡」
「むぢゅっ…♡ちゅぅぅっ♡れるっ…♡」
「はひっ♡ぃっ……ぁあっ♡」ビクンッ!
絶頂を迎えてすぐの敏感なアソコをグチョグチョにかき回されて、体がビクンビクンと跳ねる。エルムはそんな私の様子にもお構い無し、依然愛撫の手を止めることは無い。それどころかさらに攻めの手は激しくなり、私はたやすく二度目の絶頂に達してしまう
「はっ…はぁっ……♡ぁ…ふぅ……♡」
と、そんなところでやっとエルムの手は止まってくれる。私は快感の嵐から解放されて安堵の息を漏らすと同時に、なぜ急に止まったのかという疑問が沸き、ふとエルムを見やる
「ぅっ…姫…さまぁ…僕…もうっ………!」
そこには、私の下腹部に膝立ちのような姿勢で跨ったまま、苦しそうな顔で息を荒げるエルムの姿。その手は両方とも股間のあたりに伸びており、その手の伸びる先にはズボンを押し上げて自己主張をするエルムのモノ
(ぁ……♡エルムの…おちんちん………♡今度はあれが私の中に…♡)
さっき読んだ漫画の通りならば、我慢の利かなくなったエルムが私の秘所にアレを突き立てて…
「……っ!…ふっ…ぅ……っ………め…だ……」」
だが、エルムの様子が少しおかしい。私から顔をそらし目を瞑り、何かブツブツと呟きながら股間を押さえつけている。さながら、一杯に詰まったタンスに何かを無理やり片付けようとしているかの如くギュウギュウと
「エルム…?」
「……っ………だめ…だっ……僕はっ…姫様の近衛っ……!近衛が姫様を汚してっ…どうするっ…んだっ…!」
どうやらエルムは、自分の立場を考えて最後の一線だけは超えないように踏み留まろうとしてくれているようだ。それも、『王の力』さえも跳ね除ける程、一度は情欲に流された理性を取り戻す程に強い意志で。どこまでも真面目で従順で仕事熱心で、そんな姿に私の心はキュンキュンと刺激される
(でも……我慢するのが辛そうってことは…エルムも私の事……)
エルムも私の事を、女として見てくれているのだろうか
私に襲い掛かるのを我慢している、我慢するということは本当は襲い掛かりたい気持ちがある、ということ……だよな?
「ふーっ………ふーっ………ふぅっ…姫さまっ、ま…満足して…いただけました…かっ…?もう…お時間も遅いっ…ですし、そろそろお休みに…」
私が考えを巡らせる少しの間の内に、エルムは何度か深呼吸をして心を落ち着かせ、いつものように笑顔で話しかけてくる。その笑顔は明らかに無理をしている、作り笑いだと一目で分かる程無理やりなものだった
そんな無茶な顔を見た途端、私の中で何かが切れた。具体的に言えば、我慢とか理性とかが、プッツンと
「…エルムッ!」
「わっ!?」
自らの股間を抑え込んでいるエルムの腕を掴み、それを引っ張ってエルムの体をこちら側に引き倒す。警戒していなかったのか、筋力で劣る私でも軽々と引っ張ることができた
そのままエルムの体を逃さない様にぎゅっと抱きしめて自由を奪う。抑えていた腕を引っ張ったので、私のお腹には硬くて熱い棒状のモノがエルムのズボン越しに押し付けられる
「ひっ、姫さまっ!何をっ……!」
突然のことで困惑したのか、はたまた己の逸物が私に当たっていることに対する恥じらいか、エルムは慌てふためいている。顔が先程に増して真っ赤っかになっているのは、私に対して興奮してくれているから…だと嬉しいな
「エルムっ……命令だ、よく聞け」
「……っ…は…はいっ…?」
抱きしめたことで目の前にまで来たエルムの顔に、自分から更に顔を寄せて、くすぐるような声で耳打ちする
「………私を、もっと滅茶苦茶に…して?」
「−−っ!?」
再び、しかも今度は意識して発動させる『王の力』。効果は覿面な様で、エルムの真っ赤な顔は、不意打ちの抱擁にたいする困惑の表情から、劣情を必死に抑え込む表情へと逆戻りした
そこに畳み掛ける様に、私は今まで我慢してきた胸の内を告白する
「私…まだ、足りないっ…エルムもそう…なのだろ?」
「ぅ……でもっ…!僕はっ…」
「私を汚すわけにはいかない、か?もうっ…当の私が汚してくれと言ってるのだ、気にしなくて良い」
「ぁ………でも……」
これだけお膳を立てても尚、エルムは我慢を続ける。だがその表情からは、既に限界を迎えていることが容易に見て取れた。もうひと押しだ
「エルム…さっきも言ったが…私はまだ満足してないんだ…♡エルムも辛いんだろう?なら、一緒に……」
「……よ……よろしいの…ですか?僕なんかが……姫様を…」
静まっていたエルムの息が、ふっ…ふっ…と再び荒くなる
「…♡あぁ、もちろんだ♡お前『なんか』ではない、エルム『だから』、良いのだ♡」
私はエルムを抱きしめていた腕を離すと、両手を広げて
「さぁ…来て♡」
「……っ!姫…さまっ!」
「きゃっ♡」
そこでエルムの我慢も切れたようで、ズボンを勢いよく脱ぎ捨てる。その股間には、小ぶりで、まだ皮が残っていて完全には剥けておらず先端だけが露出した、未成熟なソレがピンと上向きに立っている。もうエルムもそれを手で隠そうとすることはせず、代わりにその手で私の腕をがっしりと掴み、押さえつけ、腰を少し浮かせてモノを私の股にあてがう
「ふっ……ぁっ…♡んっ…」
が、緊張や興奮のせいか狙いが定まらないようで、何度もお腹や足の付け根にモノが擦り付けながら小さく声を漏らすエルム。『王の力』の後押しがあるとはいえ、こんなにも必死になって私を求めている姿があまりにも愛おしく、また胸がキュンキュンと締め付けられた
やがて、ようやくモノの先端が私の入り口にあてがわれる
「い…挿れますよっ…」
「んっ…♡いい…ぞっ♡」
一言断ってから、エルムはゆっくりと腰を沈める
「…っ…♡あ…ぁっ…♡」
「んっ…きたっ…♡えるむのっ……♡」
私の中にジワジワと侵入する異物感。見た目では小ぶりだと感じたソレは想像よりも大きかった。熱を持ったソレを私は不快に感じることは無く、むしろ少し動くだけでソレが膣壁と擦れて極上の快感が全身を駆け巡る
「ぅあっ…♡どんどんっ…入ってっ…くっ…ぅ…♡」
「んぅっ…もっと…激しくっ…きてっ♡」
「はひぅっ!?まっ…♡〜〜っ♡」
「んひっ…♡キタっ♡」
大きすぎる快楽が怖いのか、じりじりと腰を沈めていくエルムだったが、さっきから辛抱たまらなくなった私にそれはもどかしくて仕方がないものであった。私は押さえつけられていた腕をやんわりとほどくと、両手をエルムの腰に回してズンと奥まで一気に落とした
エルムのモノは膣内を急に進んだおかげで皮が剥け、完全に露出したらしい亀頭が私の最奥に勢いよくキスをする。結構強めに落としたので少し痛みも感じたが、そんなものはエルムへの愛と、電流に打たれたかのような激しい快感の前に打ち消された。それよりもエルムは、心の準備ができていなかったようで
「っ…くぅっ…♡ひめしゃまっ…♡ごめんなひゃっ…♡あっ…♡」ビュッ…ビュクッ…
「んっ…♡来てるっ…中にあったかいのがっ…♡」
完全に蕩けきった顔で精を放っていた。今まで強く理性を保ち耐えてきた姿は何処へやら。いや、今まで耐えに耐えてきたから、それこそ張り詰めた糸が切れたかの様にこんなになっているのか。口は半開き、目は蕩けて焦点が合っていない。体も、私が手で抑え込むことをせずとも自然と奥にぐりぐりと押し付けているようだ……これ、大丈夫なのか?
「エルム…大丈夫か?」
「ひっ…ぁ♡ひめしゃまぁ…♡」
エルムの意識を確認しようと体をタップするが、まともな返事が返ってこない。しまった、流石に勢いが強すぎただろうか
だが、依然私の中にあるエルムの逸物は硬く勃起したまま
「……これは、まだイケるってこと…だよな♡」
まだまだ物足りない私はエルムの体をつかんだままゴロンと体位を変えてエルムの上に覆いかぶさる。へにゃへにゃになってしまっているエルムに抵抗する力は残っておらず、されるがままになっている
「エルムっ♡悪いがっ…んっ♡勝手に楽しませてっ…ふっ♡もらう…ぞっ♡」
「はひっ……ぁっ…ぉ…♡」
結局その後、私は満足して繋がったまま寝てしまうまで、小さく喘ぎ声を漏らしながらぴゅっぴゅと精を吐き出すエルムの上で激しく腰を振り続けた
……………………………………………
「おうプリシラ、エルム。昨晩はお楽しみであったなぁ」
翌日、目を覚ましてまず聞こえたのは、心底楽しそうにそんなことを言う母様の声だった
「…んぅ……?かあさ…ま……ぁっ!?母様っ!?なぜ私の部屋にっ!?……というかっ…!」
目を覚ましたばかり、昨晩私はエルムと繋がったままえ寝てしまったので、もちろんそのままである
「やっ……ぁ…みっ、見ないでくださいーっ!」
ベッドの上だったので、とっさに毛布を被って体を隠す
「ふん、見るなとは言っても昨晩からあんな状態だぞ?」
「はいっ…………?」
母様が指さす方を見ると
私の部屋のドアが全開になっている
……昨晩から…あの状態?
「…………はいぃぃぃぃぃっ!?ななななななっ…嘘ですよねっ!?ねっ!」
「くく…くははははっ!いやぁーしかしひどいものだなぁ?動けなくなったエルムの上であんなに激しく…しかもあんなに大きな声を出すんだものなぁ、おかげで昨晩はみんなムラムラして眠れなかったとか旦那、嫁に寝かせてもらえなかったとk」
「いやぁぁぁぁぁぁっ!」
なんということだ…よもや、私の痴態が昨晩垂れ流しになっていたというのか……
「あーっはっはっは!まぁいいではないか、お前らの仲なんて国中で知られていることだ!誰も何も言ったりせんさ」
「そういう問題じゃ…ああああぁぁぁぁぁ…」
「くくっ…さてと、ではエルムもお疲れのようだし、私が朝食を用意しておこうかね。ちゃんと身体あらっておけよ〜」
そう言うと、羞恥で頭を抱える私を尻目に母様は台所へ向かっていった
「ん……ぅん…ぁ、プリシラしゃま…♡おはょぅごじゃぃまふ…ぁ……」
丁度そのタイミングで私の騒ぎ様に気づいたのか、エルムがあくび交じりにいつも通りの呑気な挨拶をしてくる
「あ、あぁ…おはよう……エルム…」
「……?元気が無いようですが…ぁっ」
目を覚まして少し、エルムも昨日のことを色々と思い出したようで顔を真っ赤に染め上げてうつむいた。そして
「……ぁ、その、昨晩は…申し訳ございませんでした…。僕だけ先に意識を失っちゃって……」
と、心底申し訳なさそうに謝ってきた
「いっ…いや、エルムは悪くないぞ、アレは私が無理やりやっちゃった所為だから…」
お互い、そんなことを言った所為か、昨晩の記憶が頭の中に鮮明に蘇ってきて、改めて顔を真っ赤にしてしまう
「………つ、次こそ…僕がリードして見せますっ!…から…そのっ、えとっ、ふっ…不束者ですがっ…よろしく…おねがぃ…します」
「……くふふっ、それ、女のセリフではないのか?」
こうやってエルムと話をしていたら、悩んでいた色々な事がどうでもよくなってきた
すっかりいつもの調子に戻った…いや、今までよりもずっと深い仲になった私たちは、仲良く部屋の片づけや風呂を済ませ、いつも通り朝食を食べに食堂に向かったのだった
ちなみに、朝食は赤飯だった
17/09/25 02:27更新 / ウェラロア