11単位 『軽音部?(前編)』
気がつけば冬。
魔界にも季節という概念があるようで、最近は厚着をして過ごすことが多くなった。
いやそもそも、この魔立酷視姦大学には空調設備というものが一切存在しない。
そんな馬鹿な!
腐っても大学だぞ!?
「ハ…ハ……ハッックショイ!!!」
「まったく、随分と派手なくしゃみだな」
「主様、大丈夫ですか?」
「う〜ん…風邪とかではないと思う」
ちなみに今いるのは俺達PT専用の宿舎内。
半円形のソファーで向き合うように座っている(内1名は空中をフワフワ)。
部屋の中は広々としており、10人は余裕で収納できる程のスペースは十分にある。
自炊するためのキッチンや浴槽付きの豪華なシャワー室、生活に必要な家具も一通り揃えられていて、一言で言えば至れり尽くせり……なのだが。
「わたしは〜別に大丈夫よ〜?」
「私もだ。寒いと思ったことなど1度もない」
「ダメですよ、お2人共。主様は生身の人間なんです、小生達魔物と一緒にしてはいけません」
「脆弱ですみません……」
「ぬ、主様を責めているわけではありませんよ!?」
俺の膝の上に両手を乗せアワアワとするコヨミさん。
おおう…珍しい光景だ。
「ロイ君も不便な身体してるよね〜? 防御力は高いのに〜」
「いろんな意味でマリィのことが羨ましいよ」
「だったらお前も霊体になってみるか? 私が手伝ってやるぞ?」
「怖いこと言うな!」
「レイラ、なんてことを言うのですか!? 主様を亡き者にしようなどと!」
そうだそうだ!
コヨミさん、もっと言ってやれ!
「霊体にしなくとも、小生と交わり続ければインキュバスとして生まれ変わり……」
「う〜〜ん! この大学はなんて快適なんだろうあはははハハハHAHAHA!!!」
寒い?
ナニソレオイシイノ?
某日。
「ただいま〜」
「おかえりなさいませ、主様」
「ロイ君おっか〜」
「おい、どこへ行っていたのだ?」
「ん、ちょっと理事長に呼び出しくらってさ」
「またあのクソロリババァか……!」
「レイラ、女の子が『クソ』などと口に出してはいけませんよ? せめて『ロリババァ』と言ってください」
「う、うむ」
ババァは良いんだ。
「それでロイ君、理事長はなんて〜? もしかして、わたしのこと〜?」
「あ〜、うん。半分はマリィのことかな」
「ということは、また何かのご依頼ですか?」
理事長からの呼び出し=依頼というのが最近鉄板になりつつある。
いや、依頼というか強制労働?
「依頼って程でもないけど…ほら、マリィがサークル管理責任者をクビになっただろ? 最近その後任を見つけたみたいで、一応サークル棟の様子を見に行けって」
「まったく……またその類か」
「特に何かする、ということではないようですね?」
「まぁ…そうなんだけど。理事長が、『様子見ついでに面白そうなサークルがあれば参加するのも良いのではないかのう?』って」
「はぁ、なるほど」
サークルの話は恐らく理事長の好意。
様子見に行かせることをはぐらかすための口実でないと信じている。
……信じてますよ、理事長。
「主様、御供致します」
「コヨミさん、ありがとう」
龍の化身であるコヨミさんが真っ先に同行を申し出てくれた。
よし、ということはレイラも……
「私はパスだ」
「……え? どうしてさ?」
「ババァの言いなりになるのはもうゴメンだ。コヨミ、ロイを頼んだぞ」
そう言い残すと、レイラは部屋から出て行ってしまった。
「レイラ……もう、仕方ないですね。申し訳ありません主様、レイラを責めないであげてください」
「いやいや、そんなことしないって。理事長に使われるの前から嫌がってたし、無理に連れていくのは可哀想だよ」
「主様……」
コヨミさんはポッと顔を赤くする。
あれ、なんでコヨミさんの好感度上がってるんだ?
レイラをフォローしただけなのに。
「あ〜じゃぁわたしもパs……」
「マリィは強制的にって理事長が」
「そ、そんな〜!?」
「マリアベルさん? 前任者なんですから、後任の方にご挨拶へ伺うのは当然ですよ?」
「ふぁ〜い……ふえ〜ん;;」
哀れ、マリィ。
というかコヨミさん、容赦ない。
サークル棟にて。
任意同行のコヨミさんと強制連行のマリィを引き連れ、歓喜や悲鳴の飛び交う雑然とした廊下をゆっくりと歩く。
あぁちなみに、さっき後任の責任者の人に挨拶がてら近況を聞いてみた。
まっっったく問題ないとのこと。
むしろこんな楽な役職を放り出すアホな魔物が存在するのだろうかと前任者をボロクソ言っていた。
もちろんマリィは名乗り出ることができず、俺達の後ろでシクシクと泣いていた。
可哀想だけど、こればっかりはどうにもならない。
果たしてこれがマリィの人生のターニングポイントとなるのだろうか(※既に死んでいます)。
「えぐっ…ぐす……」
「よしよし、良い子良い子」
コヨミさんの膨よかお胸に顔を埋めて泣きじゃくるマリィ。
羨ましいという感情よりも、どうしてゴーストに触れられるのかという好奇心の方が大きい。
おっと、細かい詮索はNGだった。
「さすがに色々なサークルがありますね」
「面白そうっていう基準だと、全部面白そうに見えるなぁ」
「でもね〜、実際は1つのサークルに1人か2人っていうところが多いのよ〜?」
「へぇ〜」
やっぱりそういうオチか。
後任の人が来てからは1万あったサークルが3千まで減った。
これはそういったサークルを削減することによって実現したのだろう。
「じゃぁマリィ、君のオススメなんかあったりする?」
「オススメ〜? う〜ん……」
顎に手を当てて考え込むマリィ。
体が少しずつ薄くなっていき、一瞬消えたかと思えば俺の背後から突然姿を現した。
さすがはゴースト。
「そうだ〜! 『軽音部』なんてどお〜?」
「軽音部……あぁ、音楽の?」
「そうそう。4人の女の子達がやってて〜、と〜っても上手なのよ〜!」
「それは、是非1度聞いてみたいものですね」
「確かに。見学とかできるのかな?」
「サークルだから〜、基本自由よ〜?」
「よし、決まりだ」
マリィ案内の下、俺達はその軽音部とやらに足を運ぶこととなった。
うん、楽しみだ!
Gas'em up with the greens and let her go!
Stand back, stand clear as she puts on a show!
So cute yet fierce, is she from hell!?
I cannot tell, yet I don't even want to know!
So you wanna be a trail blazer!
Kickin'dirt like a hell raiser!
Take the reins, but don't react slow!
It's time to feel the force of the anal!
So you think you can ride this girl!
You better put them on this girl!
Saddle up, if you think you can ride in this rodeo!
Are we in hell!? I don't know, to the dirt, let's roll!
You're loco If you think you're gonna hide this girl!
Everybody's gonna wanna ride your girl!
It's berserker style in a cowgirl position!
Gonna ride her straight through hell in this cowgirl position!
「「「………」」」
超ヘヴィメタルな軽音部だった。
軽音部というか重音部?
「み、耳が痛い〜〜〜;」
「……えっと、歌詞はどういう内容なんだろ」
「と、とても…はしたない内容です……///」
「そ、そうなんだ」
顔を真っ赤に染めあげ俯くコヨミさん。
というか博学だなぁこの人。
と、部屋の入口で呆気にとられている俺達に気がついたのか、軽音部4人衆は演奏を中断しこちらに歩み寄ってきた。
「なんだなんだ? 入部希望者か?」
「お、おいリツ…いきなり失礼じゃないか?」
「ええ!? 入部してくれるの〜!?」
「また仲間が増えるんだね♪」
「え…あぁいや! ちょっと見学をと思って……」
いきなり話しかけられたため一瞬反応が遅れてしまった。
「な〜んだよ! それならそうと始めから言えって!」
「は、はぁ」
「だ、だからリツ! 失礼だってば!」
「えー? 別にイイじゃんかよー?」
「お前が良くても私が耐えられないんだよ!?」
部員同士の言い争い。
俺達3人は完全に置いてけぼり。
「まぁまぁ2人共。とりあえず、自己紹介しない?」
「ムギちゃんの言う通りだよ〜! まずはあたし達『軽音部』の事を知ってもらわないと〜!」
「えー? めんどくさいなぁ……」
「リツ! お前は部長だろ!?」
「わ、わかったわかったって! まったく、ほんとミオは真面目なんだからさー」
「お前が不真面目過ぎるんだ!」
何だろう、このやりとり。
騒がしいというか、姦しいというか。
どちらにせよ何か新鮮だ。
「じゃ、まずはオレからな」
1人目がズイッと前に出てくる。
さっきまでとても強気な態度で接してきた『ゴブリン』だ。
「リツってんだ。一応軽音部の部長やってる。あぁ、担当はドラムスな!」
非常にサバサバした自己紹介だ。
薄茶色の髪はショートカット、カチューシャで前髪をまとめている。
まぁ、見た感じ豪快で大ざっぱな印象を受ける。
ある意味部長という役職が板に付いている。
「は〜い、次はあたしね〜」
ギターを心底大事そうに抱えながら、『セイレーン』の女の子が登場。
「ユイっていいます! 見ての通り、パートはリードギターでボーカルも兼ねてま〜す!」
こちらも濃い茶髪のショートカットだが、リツ部長とは対照的にのんびりフワッとした印象を受ける。
大きな目とやや下がり気味な眉毛がそんな性格を物語っている。
「じゃ、わたし行くね?」
ここで姿を現したのは、巨……心優しいことで有名な『ホルスタウロス』。
「えっと、ムギといいます。担当はキーボードで、趣味は美味しいお菓子を食べることです。 あっ、皆で食べる方がもっと好きです」
最後にニコリとスマイル。
ホルスタウロスにしては珍しく饒舌。
髪は長い金髪で、ハリのある双瓜はJ……いや、Kは超えているであろう。
少しおっとりとしているが、その佇まいからはどこか気品のようなものが感じられる。
太い眉毛がなんとも可愛らしい。
「わ、私が最後か」
「ミオちゃん、頑張ってね!」
「あ、あぁ」
ムギ嬢と交代する形で、砂漠の女王『アヌビス』が登場。
「ミ、ミ…ミオだ。パートはベースで…た、たまにボーカルもやる。本当はあまり目立つようなことをしたくないんだが……」
腰にまで及ぶ長い髪が特徴的な黒髪美人。
リツ部長を控えめに叱る様子から、そこまで攻撃的な印象を受けない。
恥ずかしがり屋……なのかな?
「ご丁寧にどうも。俺はロイっていいます」
「コヨミです」
「マリアベルで〜す」
とりあえずこれで自己紹介は終了。
えっと、少しまとめてみよう。
ゴブリンのリツ部長。
セイレーンのユイ。
ホルスタウロスのムギ。
アヌビスのミオ。
う〜ん、そうそうたるメンバーだ。
「それじゃぁ挨拶も済んだことだし、皆でお茶しませんか? ちょうど良さそうなお菓子も持ってきてるし、紅茶と一緒にどうですか?」
「ムギちゃんナイスアイディア〜!」
「お、それいいな! 細かい話は食いながらでいいだろ。なっ、ミオ?」
「あ、あぁ」
そんなわけで軽音部4人衆と俺達3人は、ティータイムを共に過ごす運びとなりました。
……ここ、軽音部だよな?
〜ステータス〜
ロイ:L12(人間)
戦闘スタイル:モンク
固有特性:不撓不屈(瀕死時、敵から受ける全てのダメージを10分の1に抑える)
人の子(状態異常にかかりやすい)
追記:固有特性『不撓不屈』が優秀。防御系の特技と相性が良いため、ボス戦を含めたあらゆる場面での活躍が期待できる。ステータスが平均的に高く、その中でも攻撃力と防御力の成長が早い。戦闘中に特技を編み出すなどトリッキーな行動も特徴。多くの可能性を秘めた主人公らしい存在。
HP 114
MP 70
レイラ:Lv12(ドラゴン)
戦闘スタイル:バーサーカー
固有特製:竜王の威厳(戦闘不能になっても1度だけ最大HPの半分の状態で復活)
火に愛されし者(敵から受ける火属性ダメージ全てを無効化)
追記:全種族中トップクラスのHP量を誇る。全体攻撃の火炎がレベルと比例して強力になっていく。渾身の一撃が出やすく敵のHPを削る優秀なアタッカーとして活躍できる。固有特性『竜王の威厳』の性能は高いが、意識的に使うことができないので意外と使いづらい。味方の状態異常を強引に治すことができるのは、特技ではなく、きっと彼女の優しさ。
HP 133
MP 40
コヨミ:Lv13(龍)
戦闘スタイル:侍
固有特性:先制(ターン始めに一定確率で最初に行動する)
水神(敵から受ける全ての水・氷属性ダメージを無効化。また味方への水・氷属性
ダメージを半減)
追記:攻撃力が群を抜いて高い反面、防御力の伸びが非常に悪い。自己強化や即死攻撃など使いやすい特技が揃っているが、MPがそれほど多くないため連用ができない。サポートアタックにMPを消費しない即死効果が付与されているため、ジリ貧の際は一発逆転を狙える。先制が地味に便利。実はロイのおかげでステータスが微妙に上がっている。愛の力?
HP 104
MP 52
マリアベル:Lv15(ゴースト)
戦闘スタイル:トリックオアトリート
固有特性:霊体(全ての物理攻撃を無効化。アンデッド種からの物理攻撃は受ける)
死者(戦闘不能になった際、数ターン経つとHP全快で復活することがある)
追記:固有特性『霊体』が便利すぎる。魔法への耐性も高く、仮に死んでも自力で復活することができるので、HPの低さがそれほど気にならない。MP量も豊富で、開幕から威力の高い魔法を連発することができ非常に使いやすい。ただ欠点を挙げるとすれば、レベルが上がってもHPがほとんど伸びないということ。戦闘中たまに逃走するのはご愛嬌。
HP 64
MP 154
魔界にも季節という概念があるようで、最近は厚着をして過ごすことが多くなった。
いやそもそも、この魔立酷視姦大学には空調設備というものが一切存在しない。
そんな馬鹿な!
腐っても大学だぞ!?
「ハ…ハ……ハッックショイ!!!」
「まったく、随分と派手なくしゃみだな」
「主様、大丈夫ですか?」
「う〜ん…風邪とかではないと思う」
ちなみに今いるのは俺達PT専用の宿舎内。
半円形のソファーで向き合うように座っている(内1名は空中をフワフワ)。
部屋の中は広々としており、10人は余裕で収納できる程のスペースは十分にある。
自炊するためのキッチンや浴槽付きの豪華なシャワー室、生活に必要な家具も一通り揃えられていて、一言で言えば至れり尽くせり……なのだが。
「わたしは〜別に大丈夫よ〜?」
「私もだ。寒いと思ったことなど1度もない」
「ダメですよ、お2人共。主様は生身の人間なんです、小生達魔物と一緒にしてはいけません」
「脆弱ですみません……」
「ぬ、主様を責めているわけではありませんよ!?」
俺の膝の上に両手を乗せアワアワとするコヨミさん。
おおう…珍しい光景だ。
「ロイ君も不便な身体してるよね〜? 防御力は高いのに〜」
「いろんな意味でマリィのことが羨ましいよ」
「だったらお前も霊体になってみるか? 私が手伝ってやるぞ?」
「怖いこと言うな!」
「レイラ、なんてことを言うのですか!? 主様を亡き者にしようなどと!」
そうだそうだ!
コヨミさん、もっと言ってやれ!
「霊体にしなくとも、小生と交わり続ければインキュバスとして生まれ変わり……」
「う〜〜ん! この大学はなんて快適なんだろうあはははハハハHAHAHA!!!」
寒い?
ナニソレオイシイノ?
某日。
「ただいま〜」
「おかえりなさいませ、主様」
「ロイ君おっか〜」
「おい、どこへ行っていたのだ?」
「ん、ちょっと理事長に呼び出しくらってさ」
「またあのクソロリババァか……!」
「レイラ、女の子が『クソ』などと口に出してはいけませんよ? せめて『ロリババァ』と言ってください」
「う、うむ」
ババァは良いんだ。
「それでロイ君、理事長はなんて〜? もしかして、わたしのこと〜?」
「あ〜、うん。半分はマリィのことかな」
「ということは、また何かのご依頼ですか?」
理事長からの呼び出し=依頼というのが最近鉄板になりつつある。
いや、依頼というか強制労働?
「依頼って程でもないけど…ほら、マリィがサークル管理責任者をクビになっただろ? 最近その後任を見つけたみたいで、一応サークル棟の様子を見に行けって」
「まったく……またその類か」
「特に何かする、ということではないようですね?」
「まぁ…そうなんだけど。理事長が、『様子見ついでに面白そうなサークルがあれば参加するのも良いのではないかのう?』って」
「はぁ、なるほど」
サークルの話は恐らく理事長の好意。
様子見に行かせることをはぐらかすための口実でないと信じている。
……信じてますよ、理事長。
「主様、御供致します」
「コヨミさん、ありがとう」
龍の化身であるコヨミさんが真っ先に同行を申し出てくれた。
よし、ということはレイラも……
「私はパスだ」
「……え? どうしてさ?」
「ババァの言いなりになるのはもうゴメンだ。コヨミ、ロイを頼んだぞ」
そう言い残すと、レイラは部屋から出て行ってしまった。
「レイラ……もう、仕方ないですね。申し訳ありません主様、レイラを責めないであげてください」
「いやいや、そんなことしないって。理事長に使われるの前から嫌がってたし、無理に連れていくのは可哀想だよ」
「主様……」
コヨミさんはポッと顔を赤くする。
あれ、なんでコヨミさんの好感度上がってるんだ?
レイラをフォローしただけなのに。
「あ〜じゃぁわたしもパs……」
「マリィは強制的にって理事長が」
「そ、そんな〜!?」
「マリアベルさん? 前任者なんですから、後任の方にご挨拶へ伺うのは当然ですよ?」
「ふぁ〜い……ふえ〜ん;;」
哀れ、マリィ。
というかコヨミさん、容赦ない。
サークル棟にて。
任意同行のコヨミさんと強制連行のマリィを引き連れ、歓喜や悲鳴の飛び交う雑然とした廊下をゆっくりと歩く。
あぁちなみに、さっき後任の責任者の人に挨拶がてら近況を聞いてみた。
まっっったく問題ないとのこと。
むしろこんな楽な役職を放り出すアホな魔物が存在するのだろうかと前任者をボロクソ言っていた。
もちろんマリィは名乗り出ることができず、俺達の後ろでシクシクと泣いていた。
可哀想だけど、こればっかりはどうにもならない。
果たしてこれがマリィの人生のターニングポイントとなるのだろうか(※既に死んでいます)。
「えぐっ…ぐす……」
「よしよし、良い子良い子」
コヨミさんの膨よかお胸に顔を埋めて泣きじゃくるマリィ。
羨ましいという感情よりも、どうしてゴーストに触れられるのかという好奇心の方が大きい。
おっと、細かい詮索はNGだった。
「さすがに色々なサークルがありますね」
「面白そうっていう基準だと、全部面白そうに見えるなぁ」
「でもね〜、実際は1つのサークルに1人か2人っていうところが多いのよ〜?」
「へぇ〜」
やっぱりそういうオチか。
後任の人が来てからは1万あったサークルが3千まで減った。
これはそういったサークルを削減することによって実現したのだろう。
「じゃぁマリィ、君のオススメなんかあったりする?」
「オススメ〜? う〜ん……」
顎に手を当てて考え込むマリィ。
体が少しずつ薄くなっていき、一瞬消えたかと思えば俺の背後から突然姿を現した。
さすがはゴースト。
「そうだ〜! 『軽音部』なんてどお〜?」
「軽音部……あぁ、音楽の?」
「そうそう。4人の女の子達がやってて〜、と〜っても上手なのよ〜!」
「それは、是非1度聞いてみたいものですね」
「確かに。見学とかできるのかな?」
「サークルだから〜、基本自由よ〜?」
「よし、決まりだ」
マリィ案内の下、俺達はその軽音部とやらに足を運ぶこととなった。
うん、楽しみだ!
Gas'em up with the greens and let her go!
Stand back, stand clear as she puts on a show!
So cute yet fierce, is she from hell!?
I cannot tell, yet I don't even want to know!
So you wanna be a trail blazer!
Kickin'dirt like a hell raiser!
Take the reins, but don't react slow!
It's time to feel the force of the anal!
So you think you can ride this girl!
You better put them on this girl!
Saddle up, if you think you can ride in this rodeo!
Are we in hell!? I don't know, to the dirt, let's roll!
You're loco If you think you're gonna hide this girl!
Everybody's gonna wanna ride your girl!
It's berserker style in a cowgirl position!
Gonna ride her straight through hell in this cowgirl position!
「「「………」」」
超ヘヴィメタルな軽音部だった。
軽音部というか重音部?
「み、耳が痛い〜〜〜;」
「……えっと、歌詞はどういう内容なんだろ」
「と、とても…はしたない内容です……///」
「そ、そうなんだ」
顔を真っ赤に染めあげ俯くコヨミさん。
というか博学だなぁこの人。
と、部屋の入口で呆気にとられている俺達に気がついたのか、軽音部4人衆は演奏を中断しこちらに歩み寄ってきた。
「なんだなんだ? 入部希望者か?」
「お、おいリツ…いきなり失礼じゃないか?」
「ええ!? 入部してくれるの〜!?」
「また仲間が増えるんだね♪」
「え…あぁいや! ちょっと見学をと思って……」
いきなり話しかけられたため一瞬反応が遅れてしまった。
「な〜んだよ! それならそうと始めから言えって!」
「は、はぁ」
「だ、だからリツ! 失礼だってば!」
「えー? 別にイイじゃんかよー?」
「お前が良くても私が耐えられないんだよ!?」
部員同士の言い争い。
俺達3人は完全に置いてけぼり。
「まぁまぁ2人共。とりあえず、自己紹介しない?」
「ムギちゃんの言う通りだよ〜! まずはあたし達『軽音部』の事を知ってもらわないと〜!」
「えー? めんどくさいなぁ……」
「リツ! お前は部長だろ!?」
「わ、わかったわかったって! まったく、ほんとミオは真面目なんだからさー」
「お前が不真面目過ぎるんだ!」
何だろう、このやりとり。
騒がしいというか、姦しいというか。
どちらにせよ何か新鮮だ。
「じゃ、まずはオレからな」
1人目がズイッと前に出てくる。
さっきまでとても強気な態度で接してきた『ゴブリン』だ。
「リツってんだ。一応軽音部の部長やってる。あぁ、担当はドラムスな!」
非常にサバサバした自己紹介だ。
薄茶色の髪はショートカット、カチューシャで前髪をまとめている。
まぁ、見た感じ豪快で大ざっぱな印象を受ける。
ある意味部長という役職が板に付いている。
「は〜い、次はあたしね〜」
ギターを心底大事そうに抱えながら、『セイレーン』の女の子が登場。
「ユイっていいます! 見ての通り、パートはリードギターでボーカルも兼ねてま〜す!」
こちらも濃い茶髪のショートカットだが、リツ部長とは対照的にのんびりフワッとした印象を受ける。
大きな目とやや下がり気味な眉毛がそんな性格を物語っている。
「じゃ、わたし行くね?」
ここで姿を現したのは、巨……心優しいことで有名な『ホルスタウロス』。
「えっと、ムギといいます。担当はキーボードで、趣味は美味しいお菓子を食べることです。 あっ、皆で食べる方がもっと好きです」
最後にニコリとスマイル。
ホルスタウロスにしては珍しく饒舌。
髪は長い金髪で、ハリのある双瓜はJ……いや、Kは超えているであろう。
少しおっとりとしているが、その佇まいからはどこか気品のようなものが感じられる。
太い眉毛がなんとも可愛らしい。
「わ、私が最後か」
「ミオちゃん、頑張ってね!」
「あ、あぁ」
ムギ嬢と交代する形で、砂漠の女王『アヌビス』が登場。
「ミ、ミ…ミオだ。パートはベースで…た、たまにボーカルもやる。本当はあまり目立つようなことをしたくないんだが……」
腰にまで及ぶ長い髪が特徴的な黒髪美人。
リツ部長を控えめに叱る様子から、そこまで攻撃的な印象を受けない。
恥ずかしがり屋……なのかな?
「ご丁寧にどうも。俺はロイっていいます」
「コヨミです」
「マリアベルで〜す」
とりあえずこれで自己紹介は終了。
えっと、少しまとめてみよう。
ゴブリンのリツ部長。
セイレーンのユイ。
ホルスタウロスのムギ。
アヌビスのミオ。
う〜ん、そうそうたるメンバーだ。
「それじゃぁ挨拶も済んだことだし、皆でお茶しませんか? ちょうど良さそうなお菓子も持ってきてるし、紅茶と一緒にどうですか?」
「ムギちゃんナイスアイディア〜!」
「お、それいいな! 細かい話は食いながらでいいだろ。なっ、ミオ?」
「あ、あぁ」
そんなわけで軽音部4人衆と俺達3人は、ティータイムを共に過ごす運びとなりました。
……ここ、軽音部だよな?
〜ステータス〜
ロイ:L12(人間)
戦闘スタイル:モンク
固有特性:不撓不屈(瀕死時、敵から受ける全てのダメージを10分の1に抑える)
人の子(状態異常にかかりやすい)
追記:固有特性『不撓不屈』が優秀。防御系の特技と相性が良いため、ボス戦を含めたあらゆる場面での活躍が期待できる。ステータスが平均的に高く、その中でも攻撃力と防御力の成長が早い。戦闘中に特技を編み出すなどトリッキーな行動も特徴。多くの可能性を秘めた主人公らしい存在。
HP 114
MP 70
レイラ:Lv12(ドラゴン)
戦闘スタイル:バーサーカー
固有特製:竜王の威厳(戦闘不能になっても1度だけ最大HPの半分の状態で復活)
火に愛されし者(敵から受ける火属性ダメージ全てを無効化)
追記:全種族中トップクラスのHP量を誇る。全体攻撃の火炎がレベルと比例して強力になっていく。渾身の一撃が出やすく敵のHPを削る優秀なアタッカーとして活躍できる。固有特性『竜王の威厳』の性能は高いが、意識的に使うことができないので意外と使いづらい。味方の状態異常を強引に治すことができるのは、特技ではなく、きっと彼女の優しさ。
HP 133
MP 40
コヨミ:Lv13(龍)
戦闘スタイル:侍
固有特性:先制(ターン始めに一定確率で最初に行動する)
水神(敵から受ける全ての水・氷属性ダメージを無効化。また味方への水・氷属性
ダメージを半減)
追記:攻撃力が群を抜いて高い反面、防御力の伸びが非常に悪い。自己強化や即死攻撃など使いやすい特技が揃っているが、MPがそれほど多くないため連用ができない。サポートアタックにMPを消費しない即死効果が付与されているため、ジリ貧の際は一発逆転を狙える。先制が地味に便利。実はロイのおかげでステータスが微妙に上がっている。愛の力?
HP 104
MP 52
マリアベル:Lv15(ゴースト)
戦闘スタイル:トリックオアトリート
固有特性:霊体(全ての物理攻撃を無効化。アンデッド種からの物理攻撃は受ける)
死者(戦闘不能になった際、数ターン経つとHP全快で復活することがある)
追記:固有特性『霊体』が便利すぎる。魔法への耐性も高く、仮に死んでも自力で復活することができるので、HPの低さがそれほど気にならない。MP量も豊富で、開幕から威力の高い魔法を連発することができ非常に使いやすい。ただ欠点を挙げるとすれば、レベルが上がってもHPがほとんど伸びないということ。戦闘中たまに逃走するのはご愛嬌。
HP 64
MP 154
12/06/11 23:43更新 / HERO
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