連載小説
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『骸骨と俺』
「ん……? 今歩いてるこの道…どこか見覚えがあるなぁ」
「ゼロの故郷が近いってことぉ〜?」
「自信は無いけど…」
「小さい頃の記憶は、意外と残ってるものっすよ!」
「とは言っても、15年以上も前の記憶だからなぁ…」

たとえ覚えていたとしても、15年も時が経っていれば風景も変わってくるというもの。
でもやはり…見覚えがあることは確か。

「俺の記憶が確かなら、この森を抜けさえすればヘルゼンに着けると思うんだけど…」

視界が開けた。
そして…予想は見事的中。
いや、俺の記憶は正しかった。

「っ! ようやく…ようやく着いた……」

故郷ヘルゼン。
一目見た瞬間に、ここが自分の故郷だと悟った。
………不意に涙が頬を伝う。

「ここがゼロの…」
「マネージャーの故郷…」

めぼしいものは何もない。
それでもこの村は俺の生まれた地。

「………ただいま」

15年ぶりの帰郷に、俺は涙を流す他なかった。






「初めまして、ガゼルさん」
「おお! お前がゼロンか! 手紙だけのやり取りで、実際会うのは初めてだな!」
「そうですね。 あの…すいません…何から何まで、色々と面倒をお掛けして……」
「なぁに気にすんな! あいつの遺言だ、残された家族を…ルークとゼロンを頼むってな」
「兄貴が…そんなことを?」
「死ぬ間際まで勝手な奴だったが…どうにも憎めねえ野郎でな。 俺に任せとけ!!って言ってやったら、幸せそうな顔して眠りやがった…」
「………」
「生憎魔王は倒せなかったが、あいつは満足してた。 『楽しい旅が出来て良かった』ってよ」
「そうですか…」
「顔見せに行ってやんな。 墓は村の裏手にある」
「…わかりました」

やっぱりいい人だ、ガゼルさんは。

「それとゼロン、お前に一つ聞いておきたいことがあるんだが…」
「なんでしょう?」
「村の真ん中で騒ぎを起こしてる魔物2人は、お前の連れか?」
「え? はい、連れなら確かにいますけど………ってうおおおおおおおいい!?」

な、なにやってんだよあいつら!?

「ちょっ…おいリム! 村人(男性)を追いかけ回すのはやめろって!!」

あっちでは……

「セラーーー!! きみが歌うと村人達(男性)が集まってきちゃうだろー!?」

あぁ…俺の故郷が……。
って、落ち込む前に2人を止めないと…!!

「頼むからやめてくれえええええ!!!」

俺の声が虚しく木霊した……………






「うぅ…マネージャーひどいっすよぉ〜……」

たんこぶを頭に乗せたセラが涙目で訴えてくる。

「名を売ろうって気持ちはわかるけど、もう少し場所を考えてくれ…」
「そうだよセラぁ、ちゃんと場所を考えないと……」
「リムはしばらく飯(唾液)抜きだからな」
「ええ〜〜〜!?」

とりあえず2人には制裁。

「村の真ん中で暴れたんだ、当然の報いさ」
「「むぅ〜〜〜!!」」
「あれ、お仕置きが足りなかったかな?」
「「ごめんなさい……」」
「あと墓地に入ったら静かにしててくれよ?」
「「はぁ〜〜い…」」

村の裏手に位置する墓地。
本来は余所者の立ち入りを固く禁じている、かなり神聖な場所らしい。
でもリムとセラは俺の連れということで特別に許可が出た。

「というか許可は下りたけど…ムリして一緒に来る必要無かったんじゃないか?」
「ウチはマネージャーの御家族に挨拶したいっす。 『契りはちゃんと済ませましたよ』って!」
「婚前挨拶みたいだなぁ…」
「どっちも同じようなものっすよ!」
「同じか…?」

俺…セラと結婚しなくちゃいけないのかなぁ……?

「じゃぁ…リムは?」
「アタシ? アタシはゼロと一緒にいたいからだよぉ♪」
「あぁ、そう…」

そんなことだろうと思った…。
そんなこんなで家族の墓を見つけた。

「これが俺の家族の…」

いろいろと報告しないといけないなぁ。

「2人とも、少しの間だけ静かにしててくれ」
「うん!」
「マネージャー、ウチも挨拶していいっすか…?」
「あぁ、みんなも喜ぶよ」
「はいっす!」

俺とセラは墓前で手(羽)を合わせる。
(リムは後ろでウネウネしている)

「………(来るのが遅くなってごめん。 葬式には出たかったんだけど…こっちでは爺ちゃん達も同時期に死んじゃって、いろいろと大変だったんだ。 まさか、みんなが一斉に死ぬなんて夢にも思わなかったよ。 ルークのこともあるけど、ほんと…ガゼルさんには感謝してもしきれないよ)」
「…マネージャーとは……体を許しあった仲で……ブツブツ………」
「zzz…zzz……」

リムのやつ寝てるな…?
そしてセラは何を報告してるんだ…?

「………(そうそう、この2人は俺の連れなんだ…驚いたろ? 魔物だけど、2人とも優しい子だよ。 ちょっと躾する必要があるんだけど…)」
「…デビューしたあかつきには……正式に結婚を……ブツブツ………」
「zzz…zzz……」


……
………






故郷というのは実に不思議だ。
村の事なんてまるで覚えていないというのに、村を見た瞬間に自分の故郷だと認識できた。
深層心理の記憶…っていうやつかな?
まぁ、それはまた今度考えよう。
今はガゼルさん宅にお邪魔している。

「紹介しよう。 こいつは俺の嫁、フランだ」
「あなたがゼロンね? 夫から話しは聞いているわ」
「あ…は、初めまして……」
「見ての通り、フランは『エキドナ』だ。 今は妊娠中だから安心しろ、襲われたりはしねえからよ!」
「ちょっとガゼル、人を淫婦みたいな言い方しないでちょうだい…」
「夜のお前はいつも淫乱だと思うんだが?」
「っ!? もう……///」
「………」

仲がよろしいようで。
人間と魔物の壁を越えた禁断の愛…本当にあるんだなぁ。
人間が一方的に受けるだけかと思ってた。

「そうそうゼロン、ルークなら2階に寝かしつけてあるわ。 後で見てらっしゃいな」
「あ、はい。 そうします」
「起こしちゃだめよ?」 

魔物も人間の赤ん坊を世話できるんだ…。

「それと…後ろの娘達とは、どういった関係なのかしら?」
「えっ?」

う〜ん…どういった関係かと言われてもなぁ……。

「もう将来を誓い合ったりしたの?」
「ええっ!? あ…いや〜それは……」

即答でNOとは言えない。
セラとは途中からノリノリでヤりまくってたからなぁ…。
ちなみにリムは例外。

「もしかして…本当に?」
「ノーコメントでお願いします…」
「まぁ…ふふっ…あなたもやっぱり男の子ね♪」
「おいおいゼロン! お前もなかなか隅に置けねえなあ!」
「は、はぁ…」

フランさんに嘘は通じない…そんな気がしたから正直に答えた。
そしてフランさんは後ろの2人に顔を向ける。

「リムちゃんに、セラちゃん…だったかしら?」
「は、はいっす… / うん……」 

心なしか、2人からは緊張の面持ちが窺える。
ムリもない…目の前にはエキドナがいるわけだし。

「そんなに怖がらなくてもいいわよ?」
「「………」」
「う〜ん、困ったわねぇ…」

そして少し考えてから……

「今となっては、わたしはゼロンの母親みたいな存在なの」
「「………」」
「これでも息子の行く末を心配してるのよ…」
「「………」」
「だ・か・ら…」
「「………」」
「ゼロンのこと…好きにしていいわよ♪」
「「はい! 『お義母さま』!!!」」
「うおおおおおおいいい!?」

なんてこと言い出すんだこの人は!?

「ちょ、ちょっとフランさん!?」
「あら、いいじゃない♪ 減るもんじゃないでしょ?」
「減ります! 減りますって!!」
「あら…母であるわたしの言うことが聞けないのかしら?」
「ええええええええええ!?」

散々いじめられた……………






「リム…起こすなよ?」
「わかってるって♪」
「うわ〜…小さいっすねぇ……」

ルークと初対面。
まだ1歳にもなっていないらしい。
兄貴の息子だからか、どことなく俺にも似ている気がする。

「ねぇ、セラぁ…」
「ウチも同じこと考えてたっす…」

眠っているルークの顔を凝視する2人。
何か気が付いたのかな?

「マネージャー…」
「ん?」
「ゼロはルークの叔父さんなんだよね〜?」
「そうだけど?」
「「………」」

な、なんだ?

「ルークからは…マネージャーと同じ匂いがするっす」
「えっ?」
「アタシ達魔物を惹き付ける匂いがするんだよぉ…」
「ま、まさか…まだ赤ん坊だぞ?」
「ま、間違いないっすよ」
「うん…やっぱりゼロと同じ匂いがする……」
「………」

おいおい…。

「血は争えないっすねぇ〜」
「ほんとだね〜」
「受け継いでほしくないスキルだよ、それ……」

ルーク、大きくなったら………魔物に気をつけろ!!!






「ごちそうさまでした、とても美味しかったっす!」
「良かった♪ 頑張った甲斐があったわ」
「料理ができるなんて、ほんと羨ましいっす…」
「少し練習すれば、セラちゃんもきっと上手になるわよ」
「でも……」
「好きな人のためなら、なんだってできちゃうものよ?」
「っ!? そ、そ…そういうつもりで言ったわけじゃ……///」
「ふふっ…素直じゃないんだから♪」

食器をガゼルさんと洗っている途中、気になる会話がチラチラと聞こえてくる。

「モテモテだなあゼロン! ありゃ相当惚れ込んでるんじゃねえか?」
「一応アイドルとそのマネージャーという関係なんですけど…」
「んなもん肩書きだけだ! それでどうだ? この際今夜、お前達の愛を再確認しあうってのは…」
「自分の家でそんなことさせるんですか!?」
「別に俺は一向に構わねえぞ? それにフランなんて大喜びするぜ? なんだったら、あのリムって子も一緒に…」
「自分にはまだ早いと思います…」
「お、そうか? まぁそうだな、『3P』はお前にはまだ早いな!」
「いや、そっちの早いじゃなくて…」

意外と下ネタ好きなガゼルさん。

「そういえばリムのやつ、どこ行ったんだろ?」
「ルークの所で一緒に寝てると思うぜ?」
「あいつは暇があれば寝てるなぁ…」
「寝る子は育つって言うだろ?」
「あれ以上育ったら困ります! いろんな意味で!」

変態に磨きがかかるのは勘弁願いたい。

「おお、そうだゼロン! お前に一つ頼みたいことがある」
「はい、なんでしょう? なんだって頼まれますよ!」
「そうか? そいつは心強いな!」

お世話になっている借りを少しでも返しておきたい。

「実はな…お前が昼間に行った裏手の墓地に、最近村で妙な噂が広まってるんだ」
「妙な噂…ですか?」
「ああ。 なんでも、夜中に墓場から物音がするって話だ」
「墓場に幽霊が出るのは当たり前なんじゃないですか?」
「なんだ、お前は怖がらないのか?」
「いや、怖がるもなにも…幽霊がいてこその墓場ですし……」
「図太い神経持ってるな、ゼロン…」
「そうですか?」

幽霊が怖いなんて思わない。
むしろ会ってみたいと思う程。

「まあ怖くねえなら話は早い。 要は墓場に行って、その物音の正体を突き止めてやってほしいんだ」
「村人が怖がっているんですか?」
「そうだ。 みんなお前みたいだったら良かったんだが…そうもいかねえしな」

いわゆる『ゴーストバスター』ってやつかな?

「わかりました。 やらせていただきます」
「そうか、助かる! 実は言うとな、俺もこの手の話は苦手でな…」
「フランさんはご存じで?」
「いや、知らないだろうぜ」
「秘密にしておきます」
「是非そうしてくれ…」

仕事内容『墓場の物音を探れ!』
セラも幽霊の類は苦手ということで待機。
リムと2人で夜中の墓場へ向かうことにした。





「夜中にゼロと2人っきりなんてぇ…すっごく燃えてくるよぉ〜……///」
「その情熱を幽霊探しに費やしてくれよ…?」

墓場の入り口付近にて。
時刻は日付の変わった午前2時頃。
辺りは真っ暗闇、ランプの光のみが頼り。
セラとガゼルさん曰く、『いかにも出そう』な時間らしい。

「リムは幽霊怖くないのか?」
「幽霊よりフランさんの方がよっぽど怖いよぉ〜!」

魔物の感性は良くわからない…。

「お墓を壊すなよ? ご先祖様達の大事な住居なんだから」
「わかってるって♪」
「………」

語尾に♪を付けるせいでどうにも不安になってくる。

「じゃぁ行こう。 とりあえず墓地をぐるっと一周するから、何か感づいたら教えてくれ」
「うん!」

というわけで探索開始。
とりわけ霊感があるわけでもないし、始めからリムの魔力的探知に頼らざるを得ない。

「ゼ〜ロ〜とエッチ♪ ゼ〜ロ〜とエッチ♪♪」
「………」

聞き流しておこう。
それが一番安全だと思った。



そして探索開始から20分後。

「ゼ〜ロ〜とエッ………んん〜?」

リムの魔力センサーが何かを捉えた。
ちなみにこの怪しい歌を20分間も聞かされ続けた俺。

「リム、どうした?」
「あっちの方から魔力の反響があるよぉ!」
「魔力の反響?」
「アタシの魔力に反応するのは魔物だけなんだけどぉ…」

ということは…
「幽霊じゃなくて……魔物?」
「そうかもしれないねぇ」
リムを連れてきて正解だった。

「どうするのぉ?」
「行ってみよう…慎重にな」

リムの指し示した方向に足を運ぶ。
そして今更だけど、ダークスライムの万能さにも驚く。

「どんな種類の魔物かは…さすがにわからない?」
「う〜ん…何かがいるってことだけは確かなんだけどぉ……」
「そっか。 正直ゴーストだったらお手上げだよ」
「どうしてぇ?」
「彼女達には実体が無いから、空気と戦うようなもんだよ。 それともリムなら戦えるのか?」
「リムはムリ!」(逆から読んでも……)
「……狙って喋ったな?」
「さぁね〜♪」

ガサッ……

「むっ!?」
「え? なになに〜?」
「しっ! 静かに…」

前方から気配を感じる。
というかリムのやつ…物音には鈍感ってどういうことだよ?

「そこに誰かいる…」
「むぅ…? 暗くて良く見えないよぉ〜」

魔力探知以外の能力はまるでダメだなコイツ…。

「そこにいるのは誰だ!!」

思い切って挑発してみた。

「………」
「………」

返事はない。

「ゼロの勘違いだったり?」
「いや、そんなはずは…」
「…人…間……?」
「うああああああ!? / いやああああああ!!!」

思わず悲鳴をあげてしまった。

「………?」
「び、びっくりしたぁ…」
「ほんと…心臓が飛び出るかと思ったよぉ〜…」
「そんなもん無いだろ?」
「そうだった♪ てへ♪♪」
「てへって、お前なぁ…」
「………???」

俺達のやりとりをただ呆然と眺めている魔物1名。

「いやいや、そんなことはどうでもいい! えっと…きみは確か『スケルトン』…だったかな?」
「……そう」


『スケルトン』
魔力により、人間の骨に意志が宿った魔物。
本能的に活動することが多い。
方法によっては手懐けることも可能。
アンデット、又ゴーレムなのかは定かではない。


「きみは、どうしてこの村の墓場に?」
「……わからない」
「え? わからない?」
「………」

記憶喪失…なわけないか。

「……気付いたら…ここ…来てた」
「夢遊病とかぁ〜?」
「リムは黙ってろ…」

気付いたら来てた…か。
目的も無しにこんな場所に来るはずはない。
きっと何か理由があるはずだ。

「えっと…ここに来た理由で、何か思い当たる節はないかな?」
「………」
「やっぱり夢遊病?」
「うるさい…」

覚えてないか、無理もない。
この子はスケルトン。
ただでさえ存在が曖昧なのに、記憶なんて残ってるはずが……
「……匂い」
「えっ?」
「……匂い…した」
「匂い?」
はて…なんのことだ?
ヘルゼンに独特な匂いなんてないしなぁ…。
う〜ん……。

「……あなた…同じ匂い…する」
「え、俺?」

香水の類は付けてないぞ?

「ねぇねぇゼロぉ」
「ん、なんだよ?」
「その子の言ってる匂いって、ゼロンのエッチな匂いのことじゃないかなぁ?」
「俺の…エッチな匂い?」

どんな匂いだよ……いや待てよ!?
同じことをセラにも言われたことがある。

『エッチな匂い=魔物を惹き付ける』

ということは…この子は俺の匂いを感じ取って来たってことか?
いや、それだと辻褄が合わない。
なぜなら、俺がヘルゼンに帰郷する前から、この子はここの墓場を徘徊していたはず。
ん〜〜〜?
わからない……。
それとも俺と同じ匂いってことは、ルークに引き寄せられたとか?
いや、これも違う。
仮にそうだとしても、この子が墓場にいる理由が説明できない。
う〜〜〜ん……。

「ん? フンフン…」
「リム、なにしてんだよ?」

鼻をひくつかせるリム。
まぁスライムに鼻なんてあるのかは謎だけど…。

「あのね…そこのお墓から、ゼロと同じ匂いがするの。 それもかなり強烈だよぉ」
「な、なに? お墓から?」

そう言われてお墓に刻まれた名前を見てみる。

「お、おいおい…よりによって俺の家族の墓かよ……」

それは紛れもなく、俺の家族達が眠る墓だった。

「なぁリム…本当に間違いないのか?」
「うん。 この匂いゼロのかと思ってたから、今まで気が付かなかったの…」
「ふむ、ということは…」

スケルトンである彼女を引き寄せた…真犯人がわかった。
家族の内の誰かがそうだ。
いや、もう既に答えは出ている。

「リム…先に帰ってガゼルさんに報告してくれ。 『問題は解決した』って」
「ふえ? ゼロはどうするのぉ?」
「俺は…この子と話がしたい」
「…うん、わかったぁ」
「頼んだぞ?」
「はぁ〜い」

先にリムを家に帰した。
横槍を入れられると面倒なので。

「さて……」
「………」

墓場でスケルトンと2人きり。
そうそう体験できないシチュエーションだな、これは。

「きみがなぜこの墓場に来たのか、つい今し方わかった」
「………」
「原因は……」

死してなお、魔物を惹き付ける匂いを発する者。
それは…
「俺の…兄貴だ」
良く良く考えてみればわかったはず。
だって俺と兄貴は兄弟だぞ?
同じ匂いを持っていたとしても不思議じゃない。
さすが英雄…死んでも女を引き寄せるか……。

「きみがいくら探しても見つからないはずだ」
「………」
「匂いの主は、もう死んでるんだから」
「………」

彼女には酷かもしれないけど、これは言っておかなければならない。
もうこの世には存在しない匂いの主を、彼女は毎晩彷徨い探し続けてきた。
もう…自由にしてあげたい。

「どうか、兄貴を責めないでやってほしい…」
「……責める…?」

彼女は首を傾げる。

「……責める…しない」
「え?」
「……だって…代わり…見つけたから」
「そっか、ありがぁ……えっ?? 代わり?」
「……あなた…好き…美味しそう♪」
「ええ!?」

どうやら標的が俺に切り替わったらしい。
というか『好き…美味しそう』って、告白されてるのか捕食対象とされてるのかイマイチ判断し難い。

「……お腹…空いた…あなた…ほしい♪」

くそ…俺も男だ!
兄貴の尻ぬぐい…俺が代わりに請け負った!!

「……ん…暖かい…///」

ぎゅっと細い腕で俺を抱きしめる。
そもそもこの子は、兄貴のせいでお腹を空かせてるんだ。
満足するまで…付き合ってあげなくちゃ……………






「…んっ…んん……」
「あ…ぐっ…!」

あ…あれれぇ?
スケルトンって…元々は『骨』だよね?
なのに…どうしてこの子の中は………ううっ!?

ぶぴゅ…ぴゅぐ! びゅぐん! びゅううう〜〜〜………

「…あっ……///」
「うっ…うぅ……」

膣にはちゃんと肉壁や子宮が存在した。
いや、実際にあるのかどうかはわからない。
これは俺の肉棒のみの推測結果だから。
要するに外からは確認できないってこと。

「はぁ…はぁ…」
「…まだ…出る……?」
「きみが望むなら…はぁ…いくらでも…はぁ…はぁ……出してみせるさ……」
「…そう……♪」

再び始動。

「…あっ…んっ……」
「う、くぅ…! あぐ…はぁ…はぁ…」

彼女の体には、恐らく魔力的な何かが働いているのだと予測できる。
そうでなければこの名器の……あぁいや、この女性器の説明がつかない。
きっと彼女の体は複雑に入り組んだ構造を………うぐっ!!??

びゅ……ごびゅ!! ごぷっ…ごぷっ………

な…なんという搾取能力……!!
射精の回数を重ねる度に、その都度ザーメンの量が増加していく。
nの2乗ってところかな?
いやいや…何おかしな事を考えてるだ俺は……。
出し過ぎで思考回路が麻痺でも………あぐっ!!!???

ごびゅうう〜〜〜〜…びゅぐううう〜〜〜〜〜〜…………

あ…あぁぁぁ……もう…限界……。
次の波が最後の砦になりそうだ…。
ていうか俺…何発出したんだろう…。
10発以上びゅるびゅるした記憶はある。

「…くる……♪」
「……っ!?」

彼女の言葉と同時に、俺に残った最後の子種達が放出された。
びゅるびゅるっと?
いや…。
ごびゅ〜〜〜っと?
いやいや…。
どばあああああああああああっと。

「ああああぁぁぁぁぁぁ………」

意識も一緒に射精してしまった俺……………






村の鶏が朝を告げる。
目を覚ますと、目の前には繋がったままの彼女とザーメンの池。
何とも言えない気分の中、彼女を起こしてガゼルさん宅に向かう。
(一応原因となった張本人も連れていく)

「きみ…日にあたっても平気なんだ?」
「……うん」
「てっきり朝は苦手なんだと思ってた」
「……前までは…ね」
「え?」
「……あなた…不思議…力…強まった」
「俺と…ヤったからってこと?」
「……そう」
「………」

スケルトンが進化した瞬間を目の当たりにした俺。

「それより…きみはこの後どうするんだい?」
「………?」
「ガゼルさんの事だから、きみのこと…そのまま逃がしてくれると思うけど……」
「……行く」
「え?」
「……一緒に」

一緒に……?

「一緒にって…俺と旅したいってことかな?」
「……そう」
「………」

まぁ…行く宛なんて無いだろうからなぁ……。
よし!!

「わかった。 その代わりに条件1つ!」
「………?」
「人前ではちゃんと変装すること……いい?」
「………(コクリ)」
「じゃぁ決まり! それと……名前は?」
「………?」
「そっか、名前なんて無いのか…」

あとでリムとセラに考えさせるかな。
おっと…とりあえずガゼルさんに報告しないと!






「名前っすか?」
「アタシ達が決めちゃっていいのぉ?」
「俺にはネーミングセンスがないから…」
「そうっすねぇ…」
「う〜ん…」

報告は無事終了。
予想通りスケルトンの少女は無罪放免。
2人の承認も取り、旅への同行が正式に決まった。
ヘルゼンからは既に旅立った。
変に長く居座ると、なんだか離れづらくなってしまう気がして…。

「骨…骨……ボーンなんてどうっすか?」
「まんまだなぁ…」
「じゃぁスケルトンだからぁ……スケちゃん!!」
「古い書物にそんな名前の役者を見たことがある」
「………?」

名前が決まらない。

「ネーミングセンス無いな、2人共……」
「そ、そんなことないっすよ!」
「そうだよぉ〜! 今日はちょっと調子が悪いだけだよぉ!」
「………(じ〜〜〜)」
「ほ、ほら! 早く決めてあげないと…し、視線が痛いから!」

う〜ん…名前…名前……。

……
………

「ルゥ……そうだ、ルゥなんてどうかな?」
「「………」」
「な、なんだよ?」

罵倒されるかと思ったが……
「落ち着いた感じの良い名前じゃないっすかぁ!」
「そ、そうか?」
「ゼロにしては上出来だよぉ〜!」
「俺にしてはってなんだよ……」
意外に好評。

「……ルゥ?」
「どうかな?」
「………」

ゆっくりと顔をあげる。

「……私…名前…ルゥ」
「はぁ…良かった……気に入ってくれたみたいだ!」
「やったっすね!」
「さっすがゼロぉ♪」

名前決定。

「じゃぁ改めて……よろしく、ルゥ!」
「……うん」



仲間が増えた。
スケルトンのルゥ。
成り行きにしては、いささか運命を感じるような出会いだった。
まぁ旅仲間は多いにこしたことはない。
きっと仲良くやっていけるだろう。

さて……次はどこを目指そうかなぁ?
………。
まぁいいか!
出たとこ勝負だ!



「……あなた…好き」
「えっ? なんだい?」
「………」





                      俺の旅は終わらない
10/02/07 00:54更新 / HERO
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■作者メッセージ
HEROです。
一言…難しかったです。
スケルトンのキャラ設定…濡れ場の展開…非常に悩みました。
最終的には無口キャラに落ち着きましたが…。

赤ん坊のルークにはあまり触れませんでした。
というより、赤ん坊のため絡ませることができませんでしたorz

まぁその………楽しんで読んでいただけたら幸いです!

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