8泊目 『ウサちゃんと一緒』
業務終了後。
ホノカの私室にて。
「それでーどんな感じっすかー?」
パチッ
「ん、なにが?」
「フランさんのことっすよー。お仕事の様子はどうっすかー?」
パチッ
「どうもなにも、1回教えたら完璧にこなしちまうんだ。非の打ちどころがない」
「さすがは『不思議の国』のキャリアウーマンっすねー♪ 苦労して引き抜いた甲斐があったっすー♪」
パチッ
「引き抜いた? 派遣されてきたんじゃないのか?」
「表向きはそうなってるっすねー」
パチッ
「全従業員の前でー『金を積まれて入りましたぁ♪』なんて言わせたらー、なんか感じ悪いじゃないっすかー」
「そりゃぁ、まぁな」
パチッ……パチッ……
「クロさんに対してはどうっすかー?」
「うん? フランの態度ってことか?」
「っす」
パチッ
「真面目で誠実、でもって向上心が高い」
「完璧じゃないっすかーノ」
パチッ
「見た目は、な」
「っす?」
「腹の奥じゃなに考えてんのかわからん。強いて欠点を挙げるとしたらそれぐらいだな」
「野心家で結構じゃないっすかー。可愛いもんっすよー」
「お前もな」
パチッ
「そんなー、『可愛い』だなんてー♪ うち照れちゃうっすよー♡」
「そこじゃねぇよっ」
「ははー♪ まぁそれはそうとー」
パチン!
「『王手』っすノ」
「あ」
クロード戦績、通算98戦中 1勝97敗
某日。
「せ〜んぱい♪ 今日はぁどんな事を教えてくれるんですかぁ?」
「その前にフラン、1つ聞きたいことがある」
「はいぃ、なんでしょうかぁ」
いつもニコニコ顔のフラン。
こいつの正体は気になるが、いざ問いただそうとすると何故だか罪悪感が湧いてくる。
そう思わせるこの笑顔も策略の内なのだろうか。
「? 先輩?」
今後のためにも、余計な詮索は避けるべきか?
いや、だが気になる!
そもそも『不思議の国』から来たという話も胡散臭い。
どこだよそれ? どこの大陸だ? それは実在すんのか?
くっそ…どうすりゃいい?
「………」
「せんぱ〜い?」
「………」
しかしいくら胡散臭いとはいえ、同じ旅館で働く仲間をこうも疑って良いものだろうか?
こいつ以外にも経歴不明・過去の話はタブーという従業員はけっこういるわけで……。
う〜む…やはり自重するべきか……。
「………」
チロチロ♪ ペロペロ♪
「………」
チュプチュプ♪ チュゥ〜〜〜♪
「……? うお!?」
腕組みしながら葛藤する俺の指を、フランは脇の死角から器用に『チューチュー』していた。
ダ○ソンも驚きの吸引力だ。
チュポンッ♪
「もぉ先輩ったらぁ、急に黙りこんじゃうなんてぇ、一体どうしたんですかぁ?」
「あ、あぁ、悪い。つかお前…今何してた?」
唾液の付着した自分の指を眺めながら、わかりきった質問をしてみた。
「なにってぇ、見ての通り『指フェラ』ですけどぉ」
「……ちなみにそれ、どんな意味があんの?」
「意味なんてありませんよぉ。先輩が反応してくれなかったのでぇ、どうにかして意識をわたしの方へ向けようとしただけですぅ」
「そ、そうなのか」
「はいぃ。先輩の指ぃ、とっても逞しかったですぅ♪」
「お、おう……?」
なんだ、このやりとりは…調子が狂う。
「それでぇ先輩、わたしに聞きたいことってぇなんですかぁ?」
「あ、あー……」
………。
「いや、やっぱり何でもない」
「え〜? そんな風に焦らされちゃうとぉ、逆に気になっちゃいますよぉ」
「別に焦らしてるわけじゃない。ただ…お前自身のことを、少し知っておきたいと思っただけだ」
「わたしのことぉ、ですかぁ?」
聞き返されたので、つい勢いで喋ってしまった。
が、
「いいですよぉ♪ 身長体重スリーサイズ、趣味性癖Gスポット…先輩にだったらぁなんだって教えちゃいますよぉ♪」
「い、いや、そういうことじゃなくてだな」
妙な食いつき方をしてきた。
まぁ、これはこれで好都合なのだが。
「じゃぁ、聞くぞ?」
「はいぃ♪」
さぁ……話してもらおうかっ。
「どっから来た?」
「『不思議の国』ですぅ」
「その『不思議の国』ってのは、どこにあるんだ?」
「ここからずっと南の方ですぅ」
「南の、どの辺りだ? 近くには何がある?」
「海や草原、砂漠なんかも見えますぅ」
「………」
どこだよ……。
「お前教える気あんの?」
「せ、先輩ヒドイですぅ! わたしぃ、必死に伝えようと頑張ってるんですよぉ!?」
「そ、そうか。悪い」
んー…別のことを聞くか。
「その首にかけてるニンジンは?」
「これはぁわたしの『常備薬』みたいなものですぅ」
「常備薬? どっか悪いのか?」
「そういうわけじゃないですぅ。そうですねぇ…『精神安定剤』と言えばぁわかりますかぁ?」
「ん? んーあーまぁ、なんとなく」
情緒不安定なのか?
「その眼鏡は? 目が悪いのか?」
「いえいえぇ、これは『興奮抑制機』ですぅ。レンズに魔力(淫性)を吸収するぅ特殊な加工が施されているんですぅ。これをかけてないとぉ、わたしすぐに発情しちゃうんですよぉ」
「ほ、ほー」
人1倍エロいってことか。
「んー、じゃぁ……」
「クロード様、お忙しいところ失礼致します」
「んあ? どした?」
質問する内容を考えていると、マリアがやや慌てた様子で声をかけてきた。
「トラブルが発生しました。至急解決に向かっていただけないでしょうか」
「なんで俺が!? そういうのお前かホノカの仕事だろうが!」
「申し訳ありません。マリアは争い事を好まない性分でして」
「重火器涼しい顔してぶっ放す奴が良く言うよ……」
はぁ…ここで粘っても仕方ないな。
「わかった、とりあえず行くだけ行く。マリアはホノカ呼んでこい。念のためな」
「かしこまりました」
「つーわけだ、悪いなフラン。業務は他の先輩方に教わってくれ」
「はいぃ、わかりましたぁ」
フランはニンジンの先端をペロリとなめると、
「わたしのことが知りたかったらぁ、いつでも聞いてくださいねぇ♪」
「あ、あぁ。今度聞かせてもらう」
とびっきりの笑顔を向けられた。
………。
相変わらず読めないやつだ。
フランについていくつか判明した。
@、相変わらず出所不明。
A、興奮抑制系の道具を複数携帯している。
整理すると微妙な情報ばかりだった。
うむ…まぁ、そんなに慌てる必要もないか。
一緒に働いてりゃそのうちわかるだろう……たぶん。
………。
「ふぅ」
フランは眼鏡を拭きながら呟く。
「やっぱりぃ、興味あるなぁ」
綺麗になったソレをかけ直すと、
「先輩のぉ……『遺伝子』♪」
不敵な笑みを浮かべるマーチヘアが、そこにいた。
〜旅館・施設紹介〜
『カジノ』
旅館の地下に位置する大型施設
女将が直々にディーラーを務めることもある
その場合、勝てる見込みはほとんどない……という噂
ホノカの私室にて。
「それでーどんな感じっすかー?」
パチッ
「ん、なにが?」
「フランさんのことっすよー。お仕事の様子はどうっすかー?」
パチッ
「どうもなにも、1回教えたら完璧にこなしちまうんだ。非の打ちどころがない」
「さすがは『不思議の国』のキャリアウーマンっすねー♪ 苦労して引き抜いた甲斐があったっすー♪」
パチッ
「引き抜いた? 派遣されてきたんじゃないのか?」
「表向きはそうなってるっすねー」
パチッ
「全従業員の前でー『金を積まれて入りましたぁ♪』なんて言わせたらー、なんか感じ悪いじゃないっすかー」
「そりゃぁ、まぁな」
パチッ……パチッ……
「クロさんに対してはどうっすかー?」
「うん? フランの態度ってことか?」
「っす」
パチッ
「真面目で誠実、でもって向上心が高い」
「完璧じゃないっすかーノ」
パチッ
「見た目は、な」
「っす?」
「腹の奥じゃなに考えてんのかわからん。強いて欠点を挙げるとしたらそれぐらいだな」
「野心家で結構じゃないっすかー。可愛いもんっすよー」
「お前もな」
パチッ
「そんなー、『可愛い』だなんてー♪ うち照れちゃうっすよー♡」
「そこじゃねぇよっ」
「ははー♪ まぁそれはそうとー」
パチン!
「『王手』っすノ」
「あ」
クロード戦績、通算98戦中 1勝97敗
某日。
「せ〜んぱい♪ 今日はぁどんな事を教えてくれるんですかぁ?」
「その前にフラン、1つ聞きたいことがある」
「はいぃ、なんでしょうかぁ」
いつもニコニコ顔のフラン。
こいつの正体は気になるが、いざ問いただそうとすると何故だか罪悪感が湧いてくる。
そう思わせるこの笑顔も策略の内なのだろうか。
「? 先輩?」
今後のためにも、余計な詮索は避けるべきか?
いや、だが気になる!
そもそも『不思議の国』から来たという話も胡散臭い。
どこだよそれ? どこの大陸だ? それは実在すんのか?
くっそ…どうすりゃいい?
「………」
「せんぱ〜い?」
「………」
しかしいくら胡散臭いとはいえ、同じ旅館で働く仲間をこうも疑って良いものだろうか?
こいつ以外にも経歴不明・過去の話はタブーという従業員はけっこういるわけで……。
う〜む…やはり自重するべきか……。
「………」
チロチロ♪ ペロペロ♪
「………」
チュプチュプ♪ チュゥ〜〜〜♪
「……? うお!?」
腕組みしながら葛藤する俺の指を、フランは脇の死角から器用に『チューチュー』していた。
ダ○ソンも驚きの吸引力だ。
チュポンッ♪
「もぉ先輩ったらぁ、急に黙りこんじゃうなんてぇ、一体どうしたんですかぁ?」
「あ、あぁ、悪い。つかお前…今何してた?」
唾液の付着した自分の指を眺めながら、わかりきった質問をしてみた。
「なにってぇ、見ての通り『指フェラ』ですけどぉ」
「……ちなみにそれ、どんな意味があんの?」
「意味なんてありませんよぉ。先輩が反応してくれなかったのでぇ、どうにかして意識をわたしの方へ向けようとしただけですぅ」
「そ、そうなのか」
「はいぃ。先輩の指ぃ、とっても逞しかったですぅ♪」
「お、おう……?」
なんだ、このやりとりは…調子が狂う。
「それでぇ先輩、わたしに聞きたいことってぇなんですかぁ?」
「あ、あー……」
………。
「いや、やっぱり何でもない」
「え〜? そんな風に焦らされちゃうとぉ、逆に気になっちゃいますよぉ」
「別に焦らしてるわけじゃない。ただ…お前自身のことを、少し知っておきたいと思っただけだ」
「わたしのことぉ、ですかぁ?」
聞き返されたので、つい勢いで喋ってしまった。
が、
「いいですよぉ♪ 身長体重スリーサイズ、趣味性癖Gスポット…先輩にだったらぁなんだって教えちゃいますよぉ♪」
「い、いや、そういうことじゃなくてだな」
妙な食いつき方をしてきた。
まぁ、これはこれで好都合なのだが。
「じゃぁ、聞くぞ?」
「はいぃ♪」
さぁ……話してもらおうかっ。
「どっから来た?」
「『不思議の国』ですぅ」
「その『不思議の国』ってのは、どこにあるんだ?」
「ここからずっと南の方ですぅ」
「南の、どの辺りだ? 近くには何がある?」
「海や草原、砂漠なんかも見えますぅ」
「………」
どこだよ……。
「お前教える気あんの?」
「せ、先輩ヒドイですぅ! わたしぃ、必死に伝えようと頑張ってるんですよぉ!?」
「そ、そうか。悪い」
んー…別のことを聞くか。
「その首にかけてるニンジンは?」
「これはぁわたしの『常備薬』みたいなものですぅ」
「常備薬? どっか悪いのか?」
「そういうわけじゃないですぅ。そうですねぇ…『精神安定剤』と言えばぁわかりますかぁ?」
「ん? んーあーまぁ、なんとなく」
情緒不安定なのか?
「その眼鏡は? 目が悪いのか?」
「いえいえぇ、これは『興奮抑制機』ですぅ。レンズに魔力(淫性)を吸収するぅ特殊な加工が施されているんですぅ。これをかけてないとぉ、わたしすぐに発情しちゃうんですよぉ」
「ほ、ほー」
人1倍エロいってことか。
「んー、じゃぁ……」
「クロード様、お忙しいところ失礼致します」
「んあ? どした?」
質問する内容を考えていると、マリアがやや慌てた様子で声をかけてきた。
「トラブルが発生しました。至急解決に向かっていただけないでしょうか」
「なんで俺が!? そういうのお前かホノカの仕事だろうが!」
「申し訳ありません。マリアは争い事を好まない性分でして」
「重火器涼しい顔してぶっ放す奴が良く言うよ……」
はぁ…ここで粘っても仕方ないな。
「わかった、とりあえず行くだけ行く。マリアはホノカ呼んでこい。念のためな」
「かしこまりました」
「つーわけだ、悪いなフラン。業務は他の先輩方に教わってくれ」
「はいぃ、わかりましたぁ」
フランはニンジンの先端をペロリとなめると、
「わたしのことが知りたかったらぁ、いつでも聞いてくださいねぇ♪」
「あ、あぁ。今度聞かせてもらう」
とびっきりの笑顔を向けられた。
………。
相変わらず読めないやつだ。
フランについていくつか判明した。
@、相変わらず出所不明。
A、興奮抑制系の道具を複数携帯している。
整理すると微妙な情報ばかりだった。
うむ…まぁ、そんなに慌てる必要もないか。
一緒に働いてりゃそのうちわかるだろう……たぶん。
………。
「ふぅ」
フランは眼鏡を拭きながら呟く。
「やっぱりぃ、興味あるなぁ」
綺麗になったソレをかけ直すと、
「先輩のぉ……『遺伝子』♪」
不敵な笑みを浮かべるマーチヘアが、そこにいた。
〜旅館・施設紹介〜
『カジノ』
旅館の地下に位置する大型施設
女将が直々にディーラーを務めることもある
その場合、勝てる見込みはほとんどない……という噂
14/01/18 19:36更新 / HERO
戻る
次へ