桃ちゃんは桃しか食べない
桃ちゃんはグリーンワームだ。名前が桃だからというわけじゃないだろうが、桃しか食べない。それは桃ちゃんのこだわりゆえだ。
だからか、桃ちゃんの身体はとても甘い、良い匂いを放っている。
「桃ちゃん、重い」
「女の子に重いとか言っちゃダメだよ、にいちゃん」
寝転んでスマホを眺めていたら、従兄弟の桃ちゃんが身体にのしかかってきたのだ。
まだ年齢が二桁になったばかりの子供とはいえ、その身体はしっかりと肉がついていて重さがある。しかし幼さを示すかのように、胸はなかった。
「何見てんの」
「映画。一緒に見るか?」
桃ちゃんがこくこく頷いて、揃って横に顔を向ける。
その様子を見たおばさんが言った。
「あら、懐いてるわねー。でも桃、あんまりショウに面倒かけちゃダメよ」
「大丈夫」
「あんたねぇ……ショウ、ごめんね」
「いえいえ、毎度のことですし」
こうして親戚が集うと、どうも子供は暇になってしまうのだ。同い年の子がいれば気も紛れるのだろうが、俺はもう無邪気にはしゃぐ年齢を過ぎている。
とはいえ、親たちの話に入れるほど大人でもない。
一緒に映画を観るのは、時間を潰すのにちょうどよかった。
大人たちが酒に飲まれていく様子は教育に悪いだろうと判断した俺は、抱きついて離れない桃ちゃんを身体にぶら下げたまま縁側へと出た。
木の床が冷たく、風が心地いい。大人たちの話し声が壁に隔たれて、ざわざわと流れた。
しばらく映画を観ていると、桃ちゃんがあ、と声を上げた。
「どした?」
「にいちゃ、その」その顔は赤くなっている。「なんか、当たってる」
あちゃあ。俺は片手で顔を隠した。
映画がちょうどベッドシーンに入って、多感な俺の息子が反応してしまったのだ。そうならないように祈っていたのだが、実際に下半身に感じる熱も相まって無駄だったようだ。
興奮に茹だりそうな頭の中で、どこか冷静な自分がいた。
「えと、どうしよ」
「どうもしなくていいから……ごめん、気持ち悪かったら離れてくれ」
罪悪感が半端無い。
謝る俺に、桃ちゃんはぶんぶんと首を振った。
「だ、大丈夫。大丈夫だから」
「え、あ、はい」
俺は打つ手を見失った。
桃ちゃんから離れてくれると思っていたのだが、大丈夫と言われてしまうと無理やり桃ちゃんを剥がすのは悪い気がしてくる。
それに、伝わってくる熱が心地いいというのは間違いでは無いのだ。
桃ちゃんも俺が感じている不思議な興奮に包まれているようで、恐る恐るというふうに体重をかけ直してくる。
「つ、辛くないの? これ……」
「いや、そりゃまあ。多少は、辛いです」
何を言っているんだ俺は。照れのあまり小学生女子に敬語を使う男子高校生がそこにいた。
桃ちゃんが、すっと身体を浮かせた。腰にかかっていた重さがふわりとなくなる。
紅潮した顔で言う。
「い、入れとく?」
僕は絶句した。そりゃあ、こういう話題になった時点であわよくば、という気持ちが無かった訳ではない。
桃ちゃんも魔物娘だし、別にいいのでは? でも、それは流石にマズイだろうと興奮と常識が交差する。
硬直する僕の前で、桃ちゃんが僕の顔色を伺いながら疣足で器用にジッパーを開けていく。
僕は何も言えなかった。
勢いよく飛び出した肉棒が、桃ちゃんの腹にぴたんと当たった。
腰を浮かせた桃ちゃんの秘裂が、先端をずぶりと呑み込んでいく。
「いい、よね?」
反応のない僕を了承したと見なしたのか、桃ちゃんの身体は再び元の位置に戻った。腰に重さがかかる。
ただ、見えない所で確かに繋がっていて、ぷにぷにとした柔らかい肉が暖かく剛直をくるんでいた。
ふ、と息をついた桃ちゃんが言う。
「思ったよりは、気持ちよくないね」
「だ、大丈夫……?」
僕がようやく絞り出した一言に目をパチクリさせると、桃ちゃんは申し訳なさげににへらと笑った。
「や、気持ちいいのは気持ちいいけど。友達はすっごい気持ちいいって言ってたのに、やっぱり私はまだ子供なのかなぁ」
むわり、と熟れた桃の香りがした。
今までと何も変わらない桃ちゃんの匂いに、しかし僕の頭はそれを別物だと認識し、突き立てた肉棒にまとわりつく果肉を意識させてくる。
桃ちゃんは僕の胸にぺとりと頬を当てた。
「ほら、続き見ようよ」
「あ、あぁ」
さっきまでと何ら変わりのないはずの姿勢で、しかし先ほどまでは身体を隔てていたものが噛み合ったからか、さらに密着感を感じる。
僕は落ち着きのないままに、勝手に進んでいた映画を巻き戻して再生し直した。
ベッドシーンの最初からだ。
疲れ切った男優がベッドに倒れるように寝転ぶと、女優の魔物娘がからかうように側に寝転ぶ。
自然と始まった画面の中のまぐわいに、僕はどうしようもなく腰を動かしたくなった。桃ちゃんも同じようで、きゅっきゅっと映画に合わせて肉棒への圧迫が強まる。
桃ちゃんがぽつりと尋ねる。
「にいちゃん。き、気持ちいい?」
僕は何と返すのがいいのかわからなくて、桃ちゃんの頭を撫でた。
気持ちいいのは気持ちいいが、動けたらもっと気持ちいいだろうという確信があった。
そうして頭を撫で続けていると、膣内に変化があった。肉棒にまとわりついていた媚肉が、水気を含みはじめたのだ。露骨に快感が増した。
桃の匂いが強まる。
ぶじゅりと媚肉を肉棒に押し付けるたびに、桃ちゃんがふーっ、ふーっと細く息を吐く。
桃の香りのするそれを嗅いでいると、どこかほっとするような、力の抜けるような感覚がして。
「ぉっ、ん」
桃ちゃんが小さく喘いだ。
僕は射精してしまったのだ。動きのない、セックスとも呼べないような緩い繋がりで。
すっかり力が抜けて、射精を止められない。
僕は長く長く射精を続けた。
それが終わると、また桃ちゃんが膣肉だけを動かして、きゅむきゅむと肉棒を刺激してくる。
たちまち肉棒は張り詰め、また桃ちゃんの最奥に放とうとその身を深く突き立てていた。
ちょうどそんな時だった。
「あら、仲良しねー」
お婆ちゃんがにこにこしながら廊下を歩いてきた。
お婆ちゃんからは、僕らはただぐうたらと映画を見ているようにしか見えないからか、何でもないように話しかけてくる。
だらりと汗が顔を伝うのを感じた。
「あ、そうだ。桃、おやつがあるわよ。持ってきてあげようか」
「お願ぁい」
桃ちゃんが甘えた声で言うと、お婆ちゃんは「はいはい」と部屋に入っていく。
その間も、じゅるじゅると媚肉を動かして肉棒に甘えるのをやめないものだから、僕は頷くのでいっぱいいっぱいだった。
お婆ちゃんが見えなくなると、桃ちゃんが僕を見上げてニヤニヤする。
「危なかったね」
「危なかったっていうかっ……」
僕は口をパクパクさせた。
きゅうぅ、と強く肉棒が圧迫されて、飛び出そうとしていた文句を黙殺する。
「ほら、大きな声出したらバレちゃうよ」
「全く、誰のせいで……ん?」
桃ちゃんの頭をぐりぐりした時に、触覚から何か液体のようなものが垂れているのに気がついたのだ。
手についたそれの匂いを嗅いでみると、酷く甘い匂いがする。熟れきった桃の匂いだ。
「うぉっ……?!」
思わず声が出た。
肉棒が張り詰めたのがわかる。突き刺さった肉を勝手に掻き分けて、最奥を突いてもなお進もうとしている。
肉の塊に思い切り腰を振りたいという昏い欲望を押し殺して、僕は桃ちゃんに尋ねた。
「これは……?」
「それは分泌液だよ」桃ちゃんが恥ずかしそうに言った。「触角から出るの」
「ああ、あの……」
彼女らグリーンワームは、身を守るために人の筋肉を弛緩させる液体を分泌していると聞いたことがある。
だが。僕は首を傾げた。
「こんなに、匂い濃かったか?」
というか、弛緩どころか張り詰めているんだが……。
気がつけば、辺り一帯の空気全てが桃ちゃんの匂いに包まれていた。どこかいやらしさを感じる、強い桃の匂いだ。
桃ちゃんがにひひと笑った。
「私も大人になるんだ」
たらり、と触角から液体が垂れた。
「えっ」
疑問を抱いた瞬間、力の抜けた身体から勝手に精が漏れた。排尿のような感覚で精液が流れ出て目の前がチカチカ光る。
全身に力を込めて耐えようとしても全く力が入らない。
僕はそのまま、行き過ぎた快楽に気を失った。
「んふっ、はっ、うっ」
誰かが喘いでいる。
なにやら暖かい風呂にでも入っているような感覚。その中で、しっかりと覆いかぶさってくる何かが重さを伝えてくる。
払いのけようとするが、手がやたら重くて全く動かない。
「あ、にいちゃん。おはよー」
「も、桃ちゃん?」
ぼんやりとした頭が、目の前にある桃ちゃんの顔を認識した。
薄暗い、白い壁の中に僕らはいた。壁が薄いのか、外からの光をぼんやりと中に伝えてくる。あの強い桃の香りが湿気とともに充満していて、僕の身体が浸かるくらいまで、ぬるい液体が溜まっている。
僕は下半身が吸い込まれているような快感を無視して尋ねた。
「ここは……?」
「私の蛹の中だよ」
僕に乗っかって、ぺたぺたとゆっくり腰を動かしている桃ちゃんが言う。
底が丸くなっているのに合わせて僕の身体も丸まっていて、胸までしか届かないはずの顔が目の前にあった。
ちゅ、と唇を合わせて唾液がだらだらと流し込まれる。
それを飲み込む度に、腰の感覚が一新されて力の入らない射精の快感が全身を走る。
触角から延々と液体を垂らす桃ちゃんがふうと息を吐いた。
「私も蝶々になるの」
どういうことか尋ねたかったが、僕は快感に掠れた声を上げるので精一杯だった。
そのままぼんやりと射精し続けることしばし。
気がつけば、口元まで液体が溜まっていた。
だらだらと垂れる分泌液が固まって、隙間を無くしていく。
「それじゃ、おやすみ。大人になったらまた会おうね」
意識のぼやけた僕に、桃ちゃんが唇を合わせてくる。
口を開いて、隙間がないようにぴったりと。
力の入らない舌を弄ばれているうちに、液体はどんどん溜まっていき、ついに眼も覆われた。力が抜けて瞼が勝手に閉じる。
そして、何も分からなくなった。
力の抜けた身体は感覚が希薄で、肉棒に伝えられる熱と快感しか感じ取れなくなってからどれほど経っただろうか。
「う……?」
瞼に熱く湿ったものが押し当てられる感覚に目を覚ますと、桃ちゃんが僕の顔をぺろぺろ舐めていた。
「あ、にいちゃん。おはよー」
桃ちゃんだ。
肉付きの良かった身体はすっかりと細くなり、全ての脂肪が胸に集まったかのようだった。その背中で、濡れた蝶の翅が鮮やかに光を反射していた。
髪や肌の色までまるっきり変わってしまっていたが、それは桃ちゃんだと僕にははっきりとわかった。
ぱきぱきと蛹の殻を破壊しながら、力の入るようになった身体を起こすとまだ挿入したままの桃ちゃんがきゅっとくっついてくる。
筋肉に力が入るようになったおかげで、僕も射精を耐えられるようになっていた。
僕は何て声をかけるか迷ってから、やっと口を開いた。
「ぉ、も。桃ちゃん、おめでとう」
久々に出した声はちょっと変で、ちょっと笑ってしまいそうだった。
それでも桃ちゃんはにっこりと笑って、「ありがとっ」と僕に唇を合わせてくる。
「大きくなったなぁ」
前はまんまるとしたフォルムも相まって小さく見えたし、実際小さかった。
それが今となっては、モデル顔負けのスタイルの良さになっている。ずいぶん背も伸びたし、なによりおっぱいが大きい。
桃ちゃんは楽しそうに笑った。前とは違った、清々しい桃の香りがした。
「にいちゃん、私のこと好き?」
「好きだ」
「えへへ!」
青く透ける翅がふわり、と動いた。
その勢いで桃ちゃんが立ち上がると、突き立っていた肉棒が解放された。前より確実に大きくなっている僕の息子はぐっちょりと液体に濡れていて、久々の外気がやたら涼しく感じた。
「さて……」
僕も立ち上がって周囲を見回した。
お婆ちゃん家の一室であるが、今や桃ちゃんの分泌液と蛹の殻で床が酷いことになっている。立ち込める桃の匂いは、もう染み付いて取れないだろうから諦めるしかないだろう。
「まずは掃除だな」
桃ちゃんもあたりを見回すと、恥ずかしそうに頷いた。
僕はぽりぽりと頭を掻いた。
「風呂入って、おばさんたちに挨拶もしないとなぁ」
「へ?」
僕は首を傾げた桃ちゃんに言ってやった。
「娘さんは僕が幸せにしますってさ」
その時の桃ちゃんの顔を、僕は一生忘れることはできないだろう。
それは、とても幸せそうな笑顔だった。
だからか、桃ちゃんの身体はとても甘い、良い匂いを放っている。
「桃ちゃん、重い」
「女の子に重いとか言っちゃダメだよ、にいちゃん」
寝転んでスマホを眺めていたら、従兄弟の桃ちゃんが身体にのしかかってきたのだ。
まだ年齢が二桁になったばかりの子供とはいえ、その身体はしっかりと肉がついていて重さがある。しかし幼さを示すかのように、胸はなかった。
「何見てんの」
「映画。一緒に見るか?」
桃ちゃんがこくこく頷いて、揃って横に顔を向ける。
その様子を見たおばさんが言った。
「あら、懐いてるわねー。でも桃、あんまりショウに面倒かけちゃダメよ」
「大丈夫」
「あんたねぇ……ショウ、ごめんね」
「いえいえ、毎度のことですし」
こうして親戚が集うと、どうも子供は暇になってしまうのだ。同い年の子がいれば気も紛れるのだろうが、俺はもう無邪気にはしゃぐ年齢を過ぎている。
とはいえ、親たちの話に入れるほど大人でもない。
一緒に映画を観るのは、時間を潰すのにちょうどよかった。
大人たちが酒に飲まれていく様子は教育に悪いだろうと判断した俺は、抱きついて離れない桃ちゃんを身体にぶら下げたまま縁側へと出た。
木の床が冷たく、風が心地いい。大人たちの話し声が壁に隔たれて、ざわざわと流れた。
しばらく映画を観ていると、桃ちゃんがあ、と声を上げた。
「どした?」
「にいちゃ、その」その顔は赤くなっている。「なんか、当たってる」
あちゃあ。俺は片手で顔を隠した。
映画がちょうどベッドシーンに入って、多感な俺の息子が反応してしまったのだ。そうならないように祈っていたのだが、実際に下半身に感じる熱も相まって無駄だったようだ。
興奮に茹だりそうな頭の中で、どこか冷静な自分がいた。
「えと、どうしよ」
「どうもしなくていいから……ごめん、気持ち悪かったら離れてくれ」
罪悪感が半端無い。
謝る俺に、桃ちゃんはぶんぶんと首を振った。
「だ、大丈夫。大丈夫だから」
「え、あ、はい」
俺は打つ手を見失った。
桃ちゃんから離れてくれると思っていたのだが、大丈夫と言われてしまうと無理やり桃ちゃんを剥がすのは悪い気がしてくる。
それに、伝わってくる熱が心地いいというのは間違いでは無いのだ。
桃ちゃんも俺が感じている不思議な興奮に包まれているようで、恐る恐るというふうに体重をかけ直してくる。
「つ、辛くないの? これ……」
「いや、そりゃまあ。多少は、辛いです」
何を言っているんだ俺は。照れのあまり小学生女子に敬語を使う男子高校生がそこにいた。
桃ちゃんが、すっと身体を浮かせた。腰にかかっていた重さがふわりとなくなる。
紅潮した顔で言う。
「い、入れとく?」
僕は絶句した。そりゃあ、こういう話題になった時点であわよくば、という気持ちが無かった訳ではない。
桃ちゃんも魔物娘だし、別にいいのでは? でも、それは流石にマズイだろうと興奮と常識が交差する。
硬直する僕の前で、桃ちゃんが僕の顔色を伺いながら疣足で器用にジッパーを開けていく。
僕は何も言えなかった。
勢いよく飛び出した肉棒が、桃ちゃんの腹にぴたんと当たった。
腰を浮かせた桃ちゃんの秘裂が、先端をずぶりと呑み込んでいく。
「いい、よね?」
反応のない僕を了承したと見なしたのか、桃ちゃんの身体は再び元の位置に戻った。腰に重さがかかる。
ただ、見えない所で確かに繋がっていて、ぷにぷにとした柔らかい肉が暖かく剛直をくるんでいた。
ふ、と息をついた桃ちゃんが言う。
「思ったよりは、気持ちよくないね」
「だ、大丈夫……?」
僕がようやく絞り出した一言に目をパチクリさせると、桃ちゃんは申し訳なさげににへらと笑った。
「や、気持ちいいのは気持ちいいけど。友達はすっごい気持ちいいって言ってたのに、やっぱり私はまだ子供なのかなぁ」
むわり、と熟れた桃の香りがした。
今までと何も変わらない桃ちゃんの匂いに、しかし僕の頭はそれを別物だと認識し、突き立てた肉棒にまとわりつく果肉を意識させてくる。
桃ちゃんは僕の胸にぺとりと頬を当てた。
「ほら、続き見ようよ」
「あ、あぁ」
さっきまでと何ら変わりのないはずの姿勢で、しかし先ほどまでは身体を隔てていたものが噛み合ったからか、さらに密着感を感じる。
僕は落ち着きのないままに、勝手に進んでいた映画を巻き戻して再生し直した。
ベッドシーンの最初からだ。
疲れ切った男優がベッドに倒れるように寝転ぶと、女優の魔物娘がからかうように側に寝転ぶ。
自然と始まった画面の中のまぐわいに、僕はどうしようもなく腰を動かしたくなった。桃ちゃんも同じようで、きゅっきゅっと映画に合わせて肉棒への圧迫が強まる。
桃ちゃんがぽつりと尋ねる。
「にいちゃん。き、気持ちいい?」
僕は何と返すのがいいのかわからなくて、桃ちゃんの頭を撫でた。
気持ちいいのは気持ちいいが、動けたらもっと気持ちいいだろうという確信があった。
そうして頭を撫で続けていると、膣内に変化があった。肉棒にまとわりついていた媚肉が、水気を含みはじめたのだ。露骨に快感が増した。
桃の匂いが強まる。
ぶじゅりと媚肉を肉棒に押し付けるたびに、桃ちゃんがふーっ、ふーっと細く息を吐く。
桃の香りのするそれを嗅いでいると、どこかほっとするような、力の抜けるような感覚がして。
「ぉっ、ん」
桃ちゃんが小さく喘いだ。
僕は射精してしまったのだ。動きのない、セックスとも呼べないような緩い繋がりで。
すっかり力が抜けて、射精を止められない。
僕は長く長く射精を続けた。
それが終わると、また桃ちゃんが膣肉だけを動かして、きゅむきゅむと肉棒を刺激してくる。
たちまち肉棒は張り詰め、また桃ちゃんの最奥に放とうとその身を深く突き立てていた。
ちょうどそんな時だった。
「あら、仲良しねー」
お婆ちゃんがにこにこしながら廊下を歩いてきた。
お婆ちゃんからは、僕らはただぐうたらと映画を見ているようにしか見えないからか、何でもないように話しかけてくる。
だらりと汗が顔を伝うのを感じた。
「あ、そうだ。桃、おやつがあるわよ。持ってきてあげようか」
「お願ぁい」
桃ちゃんが甘えた声で言うと、お婆ちゃんは「はいはい」と部屋に入っていく。
その間も、じゅるじゅると媚肉を動かして肉棒に甘えるのをやめないものだから、僕は頷くのでいっぱいいっぱいだった。
お婆ちゃんが見えなくなると、桃ちゃんが僕を見上げてニヤニヤする。
「危なかったね」
「危なかったっていうかっ……」
僕は口をパクパクさせた。
きゅうぅ、と強く肉棒が圧迫されて、飛び出そうとしていた文句を黙殺する。
「ほら、大きな声出したらバレちゃうよ」
「全く、誰のせいで……ん?」
桃ちゃんの頭をぐりぐりした時に、触覚から何か液体のようなものが垂れているのに気がついたのだ。
手についたそれの匂いを嗅いでみると、酷く甘い匂いがする。熟れきった桃の匂いだ。
「うぉっ……?!」
思わず声が出た。
肉棒が張り詰めたのがわかる。突き刺さった肉を勝手に掻き分けて、最奥を突いてもなお進もうとしている。
肉の塊に思い切り腰を振りたいという昏い欲望を押し殺して、僕は桃ちゃんに尋ねた。
「これは……?」
「それは分泌液だよ」桃ちゃんが恥ずかしそうに言った。「触角から出るの」
「ああ、あの……」
彼女らグリーンワームは、身を守るために人の筋肉を弛緩させる液体を分泌していると聞いたことがある。
だが。僕は首を傾げた。
「こんなに、匂い濃かったか?」
というか、弛緩どころか張り詰めているんだが……。
気がつけば、辺り一帯の空気全てが桃ちゃんの匂いに包まれていた。どこかいやらしさを感じる、強い桃の匂いだ。
桃ちゃんがにひひと笑った。
「私も大人になるんだ」
たらり、と触角から液体が垂れた。
「えっ」
疑問を抱いた瞬間、力の抜けた身体から勝手に精が漏れた。排尿のような感覚で精液が流れ出て目の前がチカチカ光る。
全身に力を込めて耐えようとしても全く力が入らない。
僕はそのまま、行き過ぎた快楽に気を失った。
「んふっ、はっ、うっ」
誰かが喘いでいる。
なにやら暖かい風呂にでも入っているような感覚。その中で、しっかりと覆いかぶさってくる何かが重さを伝えてくる。
払いのけようとするが、手がやたら重くて全く動かない。
「あ、にいちゃん。おはよー」
「も、桃ちゃん?」
ぼんやりとした頭が、目の前にある桃ちゃんの顔を認識した。
薄暗い、白い壁の中に僕らはいた。壁が薄いのか、外からの光をぼんやりと中に伝えてくる。あの強い桃の香りが湿気とともに充満していて、僕の身体が浸かるくらいまで、ぬるい液体が溜まっている。
僕は下半身が吸い込まれているような快感を無視して尋ねた。
「ここは……?」
「私の蛹の中だよ」
僕に乗っかって、ぺたぺたとゆっくり腰を動かしている桃ちゃんが言う。
底が丸くなっているのに合わせて僕の身体も丸まっていて、胸までしか届かないはずの顔が目の前にあった。
ちゅ、と唇を合わせて唾液がだらだらと流し込まれる。
それを飲み込む度に、腰の感覚が一新されて力の入らない射精の快感が全身を走る。
触角から延々と液体を垂らす桃ちゃんがふうと息を吐いた。
「私も蝶々になるの」
どういうことか尋ねたかったが、僕は快感に掠れた声を上げるので精一杯だった。
そのままぼんやりと射精し続けることしばし。
気がつけば、口元まで液体が溜まっていた。
だらだらと垂れる分泌液が固まって、隙間を無くしていく。
「それじゃ、おやすみ。大人になったらまた会おうね」
意識のぼやけた僕に、桃ちゃんが唇を合わせてくる。
口を開いて、隙間がないようにぴったりと。
力の入らない舌を弄ばれているうちに、液体はどんどん溜まっていき、ついに眼も覆われた。力が抜けて瞼が勝手に閉じる。
そして、何も分からなくなった。
力の抜けた身体は感覚が希薄で、肉棒に伝えられる熱と快感しか感じ取れなくなってからどれほど経っただろうか。
「う……?」
瞼に熱く湿ったものが押し当てられる感覚に目を覚ますと、桃ちゃんが僕の顔をぺろぺろ舐めていた。
「あ、にいちゃん。おはよー」
桃ちゃんだ。
肉付きの良かった身体はすっかりと細くなり、全ての脂肪が胸に集まったかのようだった。その背中で、濡れた蝶の翅が鮮やかに光を反射していた。
髪や肌の色までまるっきり変わってしまっていたが、それは桃ちゃんだと僕にははっきりとわかった。
ぱきぱきと蛹の殻を破壊しながら、力の入るようになった身体を起こすとまだ挿入したままの桃ちゃんがきゅっとくっついてくる。
筋肉に力が入るようになったおかげで、僕も射精を耐えられるようになっていた。
僕は何て声をかけるか迷ってから、やっと口を開いた。
「ぉ、も。桃ちゃん、おめでとう」
久々に出した声はちょっと変で、ちょっと笑ってしまいそうだった。
それでも桃ちゃんはにっこりと笑って、「ありがとっ」と僕に唇を合わせてくる。
「大きくなったなぁ」
前はまんまるとしたフォルムも相まって小さく見えたし、実際小さかった。
それが今となっては、モデル顔負けのスタイルの良さになっている。ずいぶん背も伸びたし、なによりおっぱいが大きい。
桃ちゃんは楽しそうに笑った。前とは違った、清々しい桃の香りがした。
「にいちゃん、私のこと好き?」
「好きだ」
「えへへ!」
青く透ける翅がふわり、と動いた。
その勢いで桃ちゃんが立ち上がると、突き立っていた肉棒が解放された。前より確実に大きくなっている僕の息子はぐっちょりと液体に濡れていて、久々の外気がやたら涼しく感じた。
「さて……」
僕も立ち上がって周囲を見回した。
お婆ちゃん家の一室であるが、今や桃ちゃんの分泌液と蛹の殻で床が酷いことになっている。立ち込める桃の匂いは、もう染み付いて取れないだろうから諦めるしかないだろう。
「まずは掃除だな」
桃ちゃんもあたりを見回すと、恥ずかしそうに頷いた。
僕はぽりぽりと頭を掻いた。
「風呂入って、おばさんたちに挨拶もしないとなぁ」
「へ?」
僕は首を傾げた桃ちゃんに言ってやった。
「娘さんは僕が幸せにしますってさ」
その時の桃ちゃんの顔を、僕は一生忘れることはできないだろう。
それは、とても幸せそうな笑顔だった。
19/09/09 22:25更新 / けむり