読切小説
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後ろの席の同級生ハクタク先生との学習的セックス
んんん、と声を噛み殺しながら振り向いた俺を、志貴野はニヤニヤしながら見ていた。

いきなり背中をつついてきたのだ。
いや、もう彼女の趣味が俺の背中をつつくことだと言っていいかもしれない。それくらい、志貴野は俺の背中をつついてくる。しかも授業中に。

「やめ、ろっつってんだろ!」

授業中なので俺が小声で言っても彼女はくすくす笑うばかりである。
俺はやきもきした。

「声出そうなの! 背中弱いって知ってんだろ」

「うん、知ってる」

志貴野が顔色ひとつ変えずに言うのにおののいていると、「坂本」と先生が俺を呼んだ。

「なんですか?」

「なんですかじゃない。授業中にイチャつくな。授業中だぞ」

「えぇ……俺悪くない……」

やや理不尽な先生の言葉に前を向くと、後ろから動く気配がして咄嗟に振り向いた。
楽しげに口を歪める志貴野がそこにいた。

「つついてほしかった?」

俺はむすっとして前を見た。
現状こそ問題ないが、志貴野のたび重なる授業妨害で、成績がいつ落ちるかと不安なのだ。



志貴野はハクタクだ。だから、というのもあるかもしれない。
成績が非常に優秀なのだ。成績さえあればいいという進学校だからか、優秀すぎて先生も手がつけられない厄介な存在となっている。

一方俺ときたら。
背中をつつかれていなくても成績は常に中の下だ。
背中をつつかれ始めてから授業に集中するようになったので成績がちょっと上がったという度し難い存在なのだ。
自然と自主勉強もするようになった。

そしてその助けとなるのも彼女だ。
志貴野は勉強するときにとても頼り甲斐がある存在なのだ。
普段俺の背をつついて授業妨害する弱みがあるからか、快く先生役を引き受けてくれるのだが。

「体勢がおかしい……」

「いつもこうじゃん」

図書館で。

彼女は俺の隣に座っている。
ここまではいい。

椅子を少し俺の方に傾けている。
問題を一緒に見るためだ。何もおかしくはない。

手を俺の背もたれに乗せている。
なんだこれ。

「んんぃっ……」

そして俺がミスをするとつついてくる。

「いやおかしいだろ!」

志貴野がジト目を浮かべる。

「声大きいよ。ここ図書館だよ?」

「わかってるわい!」

俺はひそひそと叫んだ。我ながら器用だ。だいたいこんなことをいつもやっているから、慣れてしまったのだ。

うちの学校の図書館はややアクセスが悪いからか、人は少ない。とはいえ普通に話すのはご法度だ。それが図書館というものだ。

俺が真面目に勉強しようとしてるのにこいつときたら。
しかし最早俺の真面目な勉強には必要不可欠な存在になっているのだ。背中をたびたびつつかれたとしても効率が違いすぎる。

彼女が心を読んだかのようにドヤ顔を決めた。
うざ……。
彼女が心を読んだかのように背中をぐりぐりしてきて痛い痛い「痛い!」俺は堪り兼ねて志貴野の手を掴んだ。

「え、ちょ。なに……? なんで?」

「別に心は読んでないからね」

「がっつり読んでんじゃねーか」

彼女はやれやれと言わんばかりにため息をついた。

「確かに私たちハクタクは情報のやり取りできるけど、触ってないとダメだからね」

「へー、そうなん……あ、もしかしてつついてるときに情報くれたりしてんの?」

そうだとすれば成績が上がるのも当然だ。
目の前の志貴野が突然すごくいい奴に見えてくる。それどころか美少女がさらに美しくなった気さえする。夕焼けに染まる白い髪も相まって、どこかの神と言われても信じられそうなほど。
彼女はんー、と指を立てて口元に当てると悪戯っぽくクスリと笑った。その笑みは背筋を何かがぞくりと伝うほどに美しい。

「いや? そんなことしてないよ。そんなのズルじゃん」

「でもそれじゃただの迷惑な人じゃん!」

感動が霧散したのは一瞬だった。

「ていうか何? じゃあなんでノータッチで心読んじゃったわけ?」

「顔にでかでかと書いてあるんだもん」

「書いてねーよバッチリ洗顔済みだわ」

「油性ペンなんでしょ」

彼女はバッサリと切って捨て、「ほらほら問題集やらなくていいの?」と煽り倒してくる。
俺はぐぅんと唸り声をあげて正論に負けた。
そして志貴野の手を離して学生の本分に取り組み始めたのだ。

とすん、と背もたれに手が置かれる。振動が伝わってくる。
横目でチラリと見た志貴野は、どうしようもなく楽しそうだった。



「んひぁっ」

授業中に突然背中をつついてくる生態を持つ魔物娘。それが俺の後ろの席にいる魔物娘だ。
奇妙な魔物娘は常にニコニコしていて、お姉さん風の大人びた顔立ちをしていてとてもかわいい。そして牛っぽいツノと牛っぽくないふわふわくるくるした尻尾を持ち、牛の魔物娘らしく巨乳を誇っている。
後ろの席の魔物娘に新種の可能性を探っていると「坂本」と先生が俺の名を呼ぶ。

「最悪イチャつくのはいいけど喘ぐな。私の有難いお話の途中だぞ」

「はい……」

今のは完全に俺の油断が原因だった。
昨日の神懸かり的な美しさをしていた志貴野を思い出していたのだ。悪戯っぽい笑み。指が当たって歪む唇。それがずっと頭に焼き付いて離れない。
授業に集中するとは何だったのか。

ちらりと後ろを見ると、顔を赤らめた志貴野が信じられないものを見る目を向けてきていた。
今までは何だかんだ大きめの吐息で済んでたからな。まさか喘ぎ声を聞かされるとは思ってなかっただろう。俺も顔が赤くなっている自信がある。

くそう。俺は内心で毒づいた。
気を張って声を出さないようにしていたのに、一瞬の油断で水の泡になった。
授業に集中しなければならないとはわかっているが、背中をつつかれるかも、と思うたびにあの姿が連想されてしまい手が止まるのだ。

認めたくない。認めたくないが、俺は恐らく恋をしてしまったのだ。
ぐぬぬ。
しかし俺が恋をしたのは後ろの席に座り背中にゲリラ攻勢を仕掛けてくる魔物娘ではなく、夕陽を受けて神秘的に微笑む神獣様なのだ。
そう考えれば少しはマシだった。



マシなのは授業中だけだった。

「まさか喘ぐなんてねぇ。授業中、何考えてたのかなぁ〜?」

図書館にて。
俺の座る椅子の背に手を掛けたその姿はまるで彼氏ヅラをする男のようだった。
彼女役の俺はウブな小学生のようにドギマギした。

「べっ、別に! 何も考えてないし」

「本当か〜?」

「嘘つく意味ある?」

強気に出てシラを切り通すことにした俺の耳元に、志貴野がそっと口元を寄せた。身体が緊張に固まるのがわかる。周囲の音が消え去った気がした。

「実は」そして言う。「ちょっと情報読んじゃったんだよね」

「えっ」

「いや、ただ単にね? 手が止まってたから、分かんないとこあったのかなって思ったんだけど。そしたら、あの。イメージが」

志貴野が顔を赤らめてもにょもにょと言葉を誤魔化した。
俺は顔が白くなるやら赤くなるやらで気を失いそうだった。
自覚したばかりの恋心を、よりにもよって本人に知られてしまったのだ。端的に言って死にたい。

志貴野は指をつんつんしてしおらしい様子を見せた。

「私も、その。勝手に読んじゃって、悪いと思ってるから。だからお詫びって言うか」

そして、はい。と手を差し出してくる。

「お手」

「えっ。うん」

俺がそっと手を乗せると、更に挟むように手を乗せて包んでくる。
柔らかい手の感触。白くたおやかな指の暖かさ。俺の手が握られているという実感。
それら以外は全て脳内から消えていった。


と、思いきや。
唐突にどこからか浮かんでくる光景。
毛に包まれた肢体の先にある蹄。魔物娘の膝から下だけが見えている。ぺたんと硬質な床に伸ばされていた。

しゃー、とシャワーの水音がして、湿気の多い空気に包まれているのを感じる。
風呂場だ。風呂場の床に足を伸ばして座り込んでいるようだ。

『んっ、ふぁっ、んぅっ』

そして艶やかな声。多分に湿り気を含んだ細い喘ぎ声に合わせて、膝がぴくぴくと動いている。


一体何が行われているのかを知覚した瞬間、目の前にいたのは俺の手をそっと解放する志貴野だった。

気がつけば俺の息は荒くなっていた。息子は完全に臨戦態勢だ。
志貴野の顔も真っ赤になっている。射し込んでくる夕焼けのせいではない。それよりもよほど赤い顔の中で、細められた瞳は確かに潤いに満ちていてーー。

「あんたらさぁ、図書館でイチャつくのやめてくれる?」

「わひゃあ!」

突如かけられた声に、鼻が触れ合いそうな距離にいた俺たちは飛び退いた。
だん、と机に手をついてなんとか転ぶのを防ぐ。

司書さんがわざとらしくため息をついた。

「そういうのはせめて保健室でやってね。まぁここの雰囲気良いのは認めるけど、本が傷むのは無視できないわ」

「ごめんなさい」

俺たちは揃って頭を下げた。
とりあえず、もう勉強という空気でもなくなってしまったため帰宅することになった。

この日から、俺と志貴野の関係が明確に変わることになる。



水色の床の風呂場に甘い嬌声と水音が響く。見えるのは白い毛に包まれた太ももの途中までだ。

『坂本ぉっ♡んっ♡もっとぉ♡』

俺は背中をつつかれたくすぐったさと情報量に耐えられなかった。

「んふぅっ」

「サァカモトォ! 喘ぐなァ!」

「はい!」

今日も先生が叫ぶ。大体一日一回のペースだ。
しかし俺たちは怒られるべくして怒られているのだ。
あの日から、志貴野はつついてくるときに情報を送って来るようになった。

それらは直に俺の脳に記憶されるせいで全然色褪せないまま、ここ数日は授業にもまともに参加出来ずに妄想に耽っている。

俺としては参加しようとしてるのだが、背後から僅かに音がするたびに妄想に入ってしまうのだ。

「んっ」

また来た。
今度は光景ではなく女性の膣の断面図だ。どこをどう弄るのが気持ちいいか、という情報。それらが志貴野の好みとともに送られてくる。

完全に俺がセクハラされているが、俺も負けてはいない。
ペンを立ててサインを出し、背中をつつかせる。
読み取らせたのは張り切っている時の俺の息子のイメージだ。平均より少し逞しい自慢の息子である。

「んふっ」

横目で確認すると、志貴野がニヤニヤと笑いを堪えていた。

そんなことをしていると、ついに先生が言った。

「坂本。志貴野。廊下に立ってろ」

俺たちは廊下に立った。
そっと俺の手に志貴野が手を添える。
伝わってきたのは罪悪感のような、謝罪の感情。
俺はその手を握ってゆるゆると首を振った。
クラス担任の授業だからと気を抜いて、調子に乗りすぎたのはお互い様だ。

ぽわんとした甘い感情が伝わってくる。つられて俺もなんだか幸せになる。
この感情は初めてだ。
俺はドキドキしながら誘いをかけた。
といっても、俺の家、自分の部屋で勉強してる光景を思い浮かべただけであるが。

しかし効果は覿面だった。
ぎゅ、と強く手が握られる。

甘い感情にどこか淫らなものが混じり始めたとき、チャイムが鳴った。

「お前らやりすぎ。俺のとこにめっちゃ報告来てんだぞ」

廊下に出てきた担任が手早く説教してくる。
俺たちはうなだれた。

「はい」

「付き合い始めの気持ちはわかるが、他の生徒もいるからな」

「付きっ……」

俺たちの反応に、先生が眉をひそめる。

「なんだ? まだ告白してないのか?」

「あの、そのですね」

珍しく志貴野がわたわたしていた。かわいい。
先生が顔に手を当ててため息をついた。

「坂本、そういうのはお前がちゃんとやれよ。志貴野はハクタクだから想いが伝わるっても、お前が言葉にするのが大事だぞ……マジで。言葉大事よ」

担任の先生は白蛇と結婚している苦労人だ。しみじみと告げられた言葉には実感が伴っていた。
俺は少し感動した。

「先生……」

「次から保健室使っていいから、そのへんはっきりさせとけよな。じゃ」

しかしニヤニヤしながら言われた最後の言葉に、俺たちはそろって赤面するのだった。

保健室は、別名プレイルームだ。

志貴野がこわごわと俺の手に触れ、さっき伝えた情報を送り込んでくる。
俺の部屋で、勉強している光景だった。



おかしいなぁ。俺はそう思いながらペンを動かした。
紛れもなく俺の部屋だ。隣に志貴野が座っている。
そこまではいい。望んだ状態だ。
やわらかな巨乳が俺の身体に当たっている。
最高。
背中に腕が回されている。
俺は背中に触れられるのをイチャイチャすることだと認識し始めている。なのでこれも問題ない。

なぜあのやりとりの後で、俺たちは真面目に勉強しているのだろうか。
志貴野が俺の肩におでこを擦り付けている。かわいい。

「ん……」

そこ違うよ、と言わんばかりに志貴野が整然とした解答法を送ってくる。背中も、つつくというより撫でるような動きになっている。

完全に志貴野のおかげであるが、すらすらと解き進められるのは楽しいものだ。
とはいえそろそろ限界だった。俺はペンを置いた。

「坂本……?」

正面から見据えた志貴野が小首を傾げた。俺は言った。

「ユウでいいよ」そして呼びかける。「志貴野」

志貴野は緊張したように顔を強張らせた。

「……ユウくん。私も、リンでいい。リンが、いい」

それすらもかわいい。
覚悟は既に決まっていた。志貴野……リン以外考えられない。
気は早いかもしれないが、言葉にしておきたかった。
俺は言った。

「リン……リンさん。俺と結婚してください」

リンはしばらくぷるぷる震えて、絞り出すように答えてくれた。

「ょ、よろしく、お願いします」

ぎゅ、と握られた手からゆるりと力が抜けた。



「ゆーくんっ♡ んっ♡ ぅっ好きっ」

腕の中のリンが喘ぐ。
俺の視界に入るのは、反芻したせいで既に何度も見た気さえするリンの膝から先。
床が俺の部屋のフローリングだという点と、膝から上は毛布で隠されていて見えないという点。そして、俺の脚も一緒に投げ出されているという点が違う。

記憶をちょっとずつ上書きするのだという言葉に頷いたことを後悔するくらい、腕の中で震えるリンは可愛らしい。

リンは俺に重なるように脚の間に座って、俺の腕を抱き込んだまま身体を毛布でくるんで見えなくしているのだ。
肩越しに見えるのは、見慣れた毛布とピクピク震える膝から先。角の主張が激しくて横顔までは見えないが、耳の先が赤くなっていた。
ただ、ぐいぐいと押し付けられる背中の熱と、指先に直接感じるぬめった熱の質が違うことくらいはわかる。

「ゆーくんっ♡ ゆーくんっ」

「なんだよ」

「すきっ♡」

「俺も好きだ」

きゅ、と軽く腕に力を入れるとリンがぎゅうう、と身体を強張らせる。指先が締め付けられ、出るはずもない精液を搾り取ろうとしている。
イったのだ。
しかし俺は構わず指を動かした。
イったから終わりというわけではない。

記憶を上書きするのには、相当なインパクトがない限り回数が必要だと語ったリンが、今日はひたすら手淫をするのだと言ってきたのだ。
躊躇いはなかった。

「もっ♡ ぉ゛っ♡ イっ♡ イってるのにっ♡」

リンが身を捩り、大きな胸が腕にぐにぐにと押し付けられて形が変わっているのが見えなくともわかる。

「今日はちゃんと、ひたすら弄ってやるから」

弄り方については前々から送られてきた情報があるから間違いない。なんせその通りに動かせばいいのだ。
ハクタクであるリンのエロ知識の貯蔵量は頭がおかしいレベルらしく、そこから丹念に厳選したオナニーはそれはそれは気持ちいいそうだ。リンが普段行なっているオナニーはつまりそれだ。

「イ゛っ♡ イぐっ♡♡ ぉ゛っ、ーーーッ♡♡」

「おっと」

リンが腰を跳ね上げさせるのに合わせて指を離す。
処女膜がまだ残っているのに、迂闊に動かれると破れてしまうかもしれない。今まで注意して破らないようにしてきたらしいし、これで失うのは流石にもったいない。

「リン、腰揺らすな」

「むりぃっ♡♡」

愛撫も決して荒っぽいものにならないように、入り口付近を指で押したり、撫でたりするのに収まっているにもかかわらず、リンは既に出来上がっていた。
リンの割れ目は脚と同じく毛に包まれていて、周辺の毛は全てしとどに濡れ切っていた。
むわりとした熱気が毛布のなかに充満している。

目の前の角が震えている。俺の好奇心が刺激された。

「んふっ♡ やぁっ、くすぐったいよ♡」

語尾はどこまでも甘い。
角の付け根に舌を這わせたのだ。
白い髪に唾液がついて、艶が一層増した。

「気持ち良くない?」

「全部ぅっ♡全身気持ちぉっ♡ 気持ちよくて、んっ♡ わかんないっ♡」

ぎゅう、と腕が強くリンの身体に押し付けられる。大きな胸の感触が心地いい。が、制服を着たままなので、シワにならないかは少し心配だ。

あと心配なのはベタついてやまない股間だ。
異常な硬さと熱で放出を待ち望むそれは、我慢汁を垂れ流してズボンにまで染みやしないかと心配させてくるのだ。
リンの尻尾の付け根が時折当たってしまうのがまた曲者で、その度に射精欲が少しずつ膨れ上がる。

「んぅっ♡つらいよねっ、ごめんね♡」

「いいよ」

自分の棒を弄っているよりもリンの穴を弄っている方が楽しいからな。
俺はリンの触り方を確認しながら、リンの割れ目を撫で付け続けた。



『んふっ♡ ぁっ♡ ゆーくんっ♡ ぅぁっ♡』

昨日は結局本当に手で弄っただけで、それ以上のことは何もしなかった。オナニー禁止を言い渡されたせいで身体が奇妙に熱っぽい。
律儀に守っているのは『明日、私がやってあげるから』と言われたからに他ならなかった。

『ゆーくんっ♡ しゅきっ♡ お゛っ♡ イぐっ♡』

それはそれとして授業中に背中をつついてくるのは変わらない。
つつかれるたびに昨日の光景がフラッシュバックして、リンが濡れた声で俺の名を呼んでくる。

「んくっ」

先生が叫ぶ。

「坂本ぉ!」

「すいません!」

またやってるよ、とクラスのどこかから聞こえた。
現代文の先生はデーモンだ。バシバシと教科書を叩いて鳴らす様子はなかなかの威圧感がある。

「志貴野、お前もだ。もし次に坂本が喘ぎ声を上げたら私が坂本と二人っきりで特別補習を行う」

「おっ」志貴野が慌てて声を上げる。「横暴ですっ」

「うるせーやい!」先生が悔しそうに言った。「見せつけるんじゃねー! こちとら独身だぞ!」

俺はぼそりと呟いた。

「ていうか、背中をつついたらじゃなくて声を上げたらなんすね……」

「私は授業中の青春も大事だと思ってるからな。趣深い。そういう悪戯にも学生の風情があろうというものだ」

私にもそんなのがあってほしかったと先生は過去を嘆き、授業を再開した。
その後つつかれることはなかった。ただ、時折尻の辺りを後ろから足蹴にされ、そのたびに昨日の喘ぎ声を聞かされてただけだった。
俺の背中の敏感さへの信頼が厚い。



俺の部屋に着いて、まず行うことは参考書を開くことだ。リンは妙にこのスタイルに拘った。

「勉強はね、セックスなんだよ」

生真面目な顔でそう言った彼女は今、俺の左肩にもたれて手を俺の股間に伸ばしていた。
残った手がノートを軽く押さえている。
俺の右手は普通にペンを握っているが、左手はリンの股座へと伸ばされている。

「ほら、次の問題解けたらまた擦ってあげるから」

リンが耳元で甘く囁く。
問題を解き進めるたびに、僕とリンの手が少しだけ動く。
酷く興奮しているはずなのに、落ち着いた時間が流れた。

「んっ……ふぅっ……♡」

リンの手はしっとりしていて柔らかい。芯のある柔らかさがジッパーから飛び出した僕の肉棒を優しくしごき、お返しとばかりに僕の掌がパンツを脱いだ彼女の股間を優しく撫でる。

頭がおかしくなりそうなほどのもどかしさだがギリギリ問題に取りかかれるだけの集中力が残っている。それはきっとリンが制止するタイミングが絶妙だからだ。

問題を解いている間は、お互いに股間に触れずただただ甘やかな時間が流れる。
太ももを揉んでみたり。お腹をさすったり。
リンも肩におでこを擦り付けてきたり、胸元を優しく撫でてきたり。

「ゆーくん、好きぃ」

「俺も好きだ」

「んふふっ!」

可愛い。
リンがいないともう二度と勉強と名の付くものはできないかも、なんてことを思った。

「あ」

「今日の分、終わっちゃったね?」

そっとリンが身体を離す。勉強の合間にだけ触れていいというのが今日のルールだからだ。
俺はしばらくリンを呆然と見ていたが、急に失われた体温が心まで冷やしたかのような気持ちになって、再び参考書へと向かった。

「あと3ページだけやるか」

「えらいね、ゆーくん」

ぎゅ、と抱きついて来たリンが頭を撫でてくる。
我ながら単純だが、これ以上ないほど問題を解くスピードが上がっているのを感じた。

「んっ♡ ゆーくん♡ そこぉっ♡」

そしてリンの手の動きも、俺の手の動きも早くなっている。
といっても元が異常に緩かっただけで、今もまだ普段より余程遅い。それでも得られる快感は桁違いだ。

「くっ……」

解法のミスの発見速度も奇妙なほどに早い。俺は恋人のために戦う戦士のような心境で問題に向かっていた。

「私は何も問題の情報あげてないからね?」

約束でしょ、と俺の様子を満足げに見ているリンが言う。
約束。というかルールだ。
俺たちが交わしたルールはそれだけではない。俺が射精するまでリンも絶頂しないというのもその一つだ。

「んぁっ♡ ゆーくんっ♡ つよぉっ♡」

問題を解き終わるたびに、リンを気持ちよくさてやりたいという思いが強まっていく。
俺の指の動きが激しくなるにつれ、リンの手が肉棒に与える刺激も強くなっていく。
射精る、という予感がした途端に、肉棒に触れていた手が離れて刺激が止まった。
リンの目は参考書に向けられている。

「もう、ちょっとで。終わっちゃうね」

問題はあと二問ある。俺も、りんも、息が荒くなっている。

「リン」俺は取引を持ちかけた。「二問続けてやるから、最後に射精したい」

んん〜? とリンが妖艶に目を細める。恐ろしく卑猥なものを感じさせる笑みの中に、目を惹きつける可愛らしさが隠れている。

「じゃあ」そして耳元で囁いてくる。「終わったら、五分だけ触りあいっこしよっか」

俺は猛スピードで問題に取りかかった。
解法に従って手を動かしながら、直後の小問に目を通して解き方を先んじて組み立てていく。

「ほら、がんばれ、がんばれ♡」

なぜか集中を阻害しない囁き声が頭に響く。リンの手が妖しく背筋を這い回る。

異常なほどスムーズに解き終わったとき、俺たちは呆然と見つめあった。
興奮が全ての先に立って、どう手を動かせばいいのかわからなかった。

リンも顔を紅くして、何かを言おうとしたのか艶めいた唇をもにょりと動かした。しかし声が出ていない。同じく蠱惑的な紅色の瞳がふるふると震えて、俺を誘っていた。

引き込まれる。
そう感じた瞬間に、唇が合わさっていた。

「ん……」

もっちりとした柔らかさを感じ取りながら、俺たちは至近距離で見つめ合い、どちらからともなく相手を悦ばせようと手を伸ばしあった。

射精と絶頂をほぼ同時に迎え、飛び散った液体を処理した後、俺たちは再び唇を重ねた。
五分はとうに過ぎていた。
性感の伴わない子供のような口付けをしながら、ぼんやりと瞳で想いを繋げあった。
手はお互いの背に回されて、決して離れないようにと強く求めあっていた。大きな胸が潰れて、確かなしこりの存在感を押し付けてくる。
ふ、と唇が離れる。

「ファーストキス、しちゃった」

「俺もだ」

俺たちは微笑み合い、また微睡むように唇を交わした。

ふと気がつくと、外はもう暗くなっていた。
玄関にて。

「じゃあ、また明日」

ちゅ、とごく自然に唇が重なる。
むふん、と満足げに口の端を吊り上げるリンの可愛らしさに、思わずまた抱きしめてしまう。
しかし、リンがそっと俺の手を解く。瞳が優しげに細められる。

「また明日、だよ。ゆーくん」

「あ、あぁ」

背を向けたリンの尻尾に飛びつきたくなる衝動を抑えながら、俺はその背中を見送ったのだった。



異変に気がついたのは授業中だった。

なんと俺の息子が本気を出していたのだ。
エロいことを考えていたわけではない。

いや、正しくはエロいことは考えていたが、今まではこれほど勃起することはなかったのだ。

教科書のちょっとした問題を解き終わるたびに息子がまるで快感を得たかのようにズボンの中で張り切って苦しむ。

俺は先生に断りを入れてトイレに向かった。
排尿してバシャバシャと顔を洗っている時には、もう息子は落ち着いていた。パンツに染みた我慢汁が気持ち悪い。

顔に冷水を浴びせながら、冷静になった頭で理由を考える。それはすぐに見つかった。

『ゆーくんの記憶を上書きしたいの』

記憶の中の上目遣いのリンに、息子がパワーを取り戻しかける。
俺は勘違いしていたのだ。
リンが言っていた"記憶"とは、なにもリンに与えられたオナニー情報だけではなかった。

リンは俺の生活全てに侵食しているのだ。今までの生活にも、全て。
俺はぞっとすると同時に興奮して勃起した。
もう一度顔を洗う羽目になった。

ようやく落ち着いて教室に戻り、性的な意味ではなく問題に取り掛かっていると。
とん、と尻の上に何かが当てられた。蹄だ。

『んぁっ♡ ゆーくん♡』『好きっ』『ゆーくんっ』『ゆーくん♡ しゅきぃっ♡』

たちまち頭の中をリンが占める。声に反応して、今までのリンとの触れ合いが浮かび上がってくる。
確認するまでもなく、息子がフルパワーをアピールしていた。
ニヤつくリンの顔を見て俺は思った。
魔物娘は優しくない。性的な意味で。



帰り道。
いつものように、少し恥ずかしそうなリンの手を握ると、突然見たことのない光景が目の前に広がった。
部屋だ。
シックな落ち着いた装いで纏められていて、それでも確かに生活感のある女子の部屋。

俺が驚いてリンを見ると、リンは俺の予想が正しいかのように微笑んで歩き出した。
俺はたちまち緊張して、ぎゅっと強くリンの手を握った。交互に交わされた指の柔らかさが強く意識されて、更に恥ずかしくなった。

リンがくすくすと笑う。そして小声で言う。

「安心して。まだシないから」

その言葉で俺は落ち着いて、それでも奇妙な興奮が胸の中に渦巻いて、どこか残念なような楽しいようなざわつく心を宥めるのに必死になった。

しかし彼女はまた俺を振り回す。

「今日からしばらくの間は、親いないから。何時になっても大丈夫だよ」

俺はもうどうすればいいかわからなくなって、手を引かれるがままにリンについていくのだった。



俺は童貞だ。
女兄弟もおらず、女子の部屋に入ったことはない。
俺はリンの部屋に入って、言われるがままに座り込み、いい匂いがするやら可愛らしい私服が目に入るやらでキョドり倒した。

えっ? 女子の部屋に入ったらどうすればいいの? 流石に参考書を開くのは違う気がする。いや、でもそれも悪くはないかもしれないな。
俺の中で勉強は既に性的なニュアンスを含むものになっていた。

隣に腰を下ろしたリンがもたれかかってくる。
艶やかな唇が動いた。

「明日さ」

「うん」

「休みじゃん」

「日曜日だしな」

「うちさ」リンの顔が紅潮している。「しばらく親いないし、今日は泊まっていかない?」

俺は無言でスマホを取り出し、親に『友達んち泊まるわ! 急でゴメン!』と連絡した。
断る選択肢はなかった。

返信で親が許可したのを横で見ていたリンが、にんまりと興奮を隠しきれない笑みを浮かべた。

「シャワー、浴びよっか」



俺は死ぬのか?
このまま心臓が破裂するのではないだろうか。そんな危惧を抱くほどだ。
そして命の危機に晒されたとき、男は子孫を残すべく勃起状態になるという。
つまり息子が全力で勃起しているのは、そういう理由であって。
決して邪な思いによるものではない。俺が興奮しているからではない。きっとそうだ。

しかし俺が現実逃避している間にも時間は進む。
背後でガラリと扉が開く音がした。

心臓が破裂した。

曇ったガラスに、俺の肩越しに肌色が見える。
ここは風呂場。
リンに送られた光景そのままの、俺にとってはもう性的な空間となり果てたバスルームだ。
俺は裸でそこにいる。全裸で、服を脱いだリンが入ってくるのを待っているのだ。興奮しないのは無理がある。
いくらシャワーを床に向けて音を立てていても、気は全然散ってくれない。

バスチェアに座っていた俺に近づくにつれ、鏡に映るリンが俺の姿に隠れていく。

ぴとり。

身をかがめたリンが俺の背中にくっついて、首筋にキスを落とした。胸が背中に触れる感触がいやにはっきりと感じられた。

リンが俺の手ごとシャワーを鏡に向けた。
さああ、と曇りが解けてリンの紅潮した楽しげな顔が露わになる。

「じゃあ、やろっか」

「や、やるとは」

んん〜? とリンが俺にもたれる。むにゅりと柔らかい肉が圧をかけてくる。
何想像してんの? 彼女はくすくすと笑った。

「まだシないって言ったでしょ?」

すっと離れた彼女が俺の前に回る。
目を逸らす暇もなく、彼女は裸体を俺の目に晒した。

白い白い肌。透き通るようなそれは僅かに赤みを帯びているのに、確かな白さを感じさせる。
同じく白い髪。印象深かった、夕焼けに赤く染まった髪が上書きされていく。濡れたような白に。側頭部から突き出た角さえ美しい。
その中で確かに紅い瞳と唇は、確かに淫靡に細められて。ちろりと紅い舌が覗いた。

声も出せないまま視線を下げていく。

巨乳。おっぱいだ。まさしくおっぱいと呼称すべき、大きな二つの山。山頂の桃色乳首が、白に浮かび上がるように主張している。
そして綺麗な括れと妙に卑猥に映るへそを通って、魔物娘であることを示す、ハクタクであることを示す白い毛が目に入った。

腰骨を覆うように生えたそれは、まるで何かを強調するかのように下弦を描いている。
強調されているのは股間に縦に入っている紅い傷。割れ目。おまんこ。剛直を受け入れる、リンの最も"女の子"な部分。俺の視線に反応するかのようにヒクついて、魅力的に涎を垂らしている。

愛液の垂れた先、すらりと流れる毛に覆われていてもわかる、健康的にむっちりとした太ももが擦られて目を惹く。
その下にあるのは奇妙な紋様だ。白い毛の中に、緑の毛が混じって螺旋を描いていた。
彼女がハクタクである証。その下の蹄すら知性を感じさせるかのような。

美しい獣だ。
神獣。そんな言葉が頭をよぎる。
きっと俺はこの光景を一生忘れないだろう。
風呂に入るたびに思い出すのは間違いない。また一つ、上書きされる。

俺の舐め回すような視線に照れたリンが身をよじる。括れが強調され、大きい尻の後ろからくるくるふわふわとした尻尾が目に入る。先端に向かうにつれ薄緑のグラデーションが入っていた。

ふふ、とリンが笑う。

「ゆーくん、すっごい顔してる。でも、今日はまだダメだからね。セックスは、しないよ」

「セックスは、って……」

リンが俺の肩に触れる。

『ゆーくんっ♡ もっと♡ もっと触ってぇっ♡』

何度も反芻した、リンの風呂場でのオナニー。
リンがにんまりと期待に顔を歪めた。

「今度は、ゆーくんが私を上書きして?」



リンは俺の膝の上に座った。鏡にリンの身体が映る。
挿入はなし、と言っていたとおり、俺の肉棒はリンの尻に押されて直立し、ふわふわの尻尾に包まれている。毛がさらさらまとわりついて、これはこれでクセになりそうな気持ち良さがある。

リンが俺の手を引いて、抱きしめさせるように抱え込む。指先に感じるのは、濡れた毛のツヤツヤした感触。
リンが俺を見た。

「触って?」

ぎゅ、と手が押し付けられる。
背中が俺の胸に密着した。

そ、と指先で毛を撫で付ける。

「んっ♡ ふぅっ♡」

こぽ、と愛液が空気を押し出しながら垂れてくる。
俺はそれを丹念に染み込ませるかのように押し込み、塗り広げ、揉み込んでいく。

「ゆーくん♡ ねっ♡」

「なに?」

「キしゅっ♡ キスしよっ♡」

断る理由はなかった。
ちゅ、ちゅと唇を吸い合う合間に、息が小刻みにつかれる。

「ゆーくんっ♡」リンが言う。「ごめんねっ♡ んっ♡ わたしっ、わがままでっ♡ぉっ♡」

「いいよ」俺は返した。鏡を見て言う。「すごい光景だし」

艶やかな横顔。
細い首筋。
ぷるぷると震える双丘。
刺激に合わせて動く腹。
肝心の部分が俺の手に隠れて見えなくて、俺は強調するために割れ目を指で広げた。
鏡に映るリンの姿は、俺が今までに見たどんなエロ画像よりも淫猥だった。

鏡越しに目が合ったリンが、唇に吸い付きながら何度もその光景を送り込んでくる。

「しゅき♡ ゆーくん♡ 結婚しよっ♡」

「言われなくても」

きゅう、と裂傷が指に吸い付いてくる。
強張る身体。弛緩と同時に蜜が弾ける。

「う゛っ♡ んっ♡ ふっ♡ べろ、出しぇっ♡」

俺は舌をリンに吸わせながら、リンの柔らかな肉穴を執拗に解した。

何度目かの絶頂。もう覚えていない。
手の動きも緩くして、右手の掌で股間全体を撫で回し、左手で腹を撫でたり、軽く押しこんだりしているときだった。
そっと唇を離したリンが、ふさふさと尻尾を揺らして言う。

「ゆーくん、つらそっ♡ んっ♡」

そして器用に手を回して、尻尾ごと緩くしごいてくる。

「リンっ、それっ」

複雑に絡まる毛の感触もそうだが、リンの、ハクタクの神性を汚している背徳感に背筋が震える。
リンもそれは感じているようで、息を荒げて責め立ててくる。

「ゆーくんっ♡ ゆーくんで私を染めてっ♡」

「ぐっ、出すぞっ」

元々限界が近かったのだ。
腰から後頭部に痺れが走り、肉棒が何度も痙攣しながらリンの尻尾を犯しつくす。

「ぁっ♡ イっ♡ イ゛くぅっ♡」

同時にリンも大きな快感の波に飲まれて、激しい絶頂を迎えていた。
魔物娘にとっては媚薬に等しい精液の香りが鼻腔から脳を犯す。
それを吸うとどうなるか。リンの知識にはあった。しかし。

「ぁふぁ♡ うそぉ♡ こ、こんなのぉ♡」

聞いてない、とばかりにリンはその場に崩れ落ちた。「お、おい。大丈夫か」と支えることは出来たが、リンはぴくぴくと鼻を動かしながら、射精を終えて尚硬い肉棒をぽんやりした顔で見つめていた。

「ぉ、お掃除するから」

「いやいいよ」

無理すんなよ、と言おうとしたら「するのぉ!」と退行したかのように駄々を捏ねる。

それなら、と俺は股間に顔を近づけるリンの頭を撫でながら、幾分か冷静になった頭でさてどうしたものかと考えた。
すらりとした背、そこにかかる美しい髪は見ているだけでも大いに興奮する。
おっぱいを触るのもいいな。揺れるそれは世の男が求めてやまないものだろう。ロリコン以外。
ううむ、と考えていると、背の伸びる先でふりふりと揺れる尻尾が目に付いた。

俺の精液塗れになってしまった尻尾。我ながら恐ろしい量の射精だ。
纏めて手コキに使われたからか、今や元々の神秘性を感じさせる毛の流れはめちゃくちゃだ。薄緑色も、ところどころ精液で白くなってしまっている。

うず、と心が沸き立った。
穢したい、と昏い欲が溢れた。

その想いに応えるかのように、頭にブラッシングの手順が流れ込んでくる。
股間に顔を埋めたリンが、肉棒越しに目を細めていた。

「私に、ゆーくんを覚えさせて?」

息の混じった言葉に、肉棒の先端から垂れた透明の液体が答えた。

俺はバスルーム内にあったブラシを手に取った。

「はっ♡ ぁっ♡ ゆーくんっ♡」

リンが鼻を亀頭に押し付けながら、竿にちゅっちゅとキスを落としてくる。
ブラシで尻尾を撫で付けるたびに、精液が伸びて隅々まで浸透していく。奇妙な光沢が生まれていく。
酷く支配欲の満たされる光景。

「今度から、尻尾洗うたびにこの匂いを思い出そうな」

俺はリンの顔を肉棒に押し付けるように頭を撫でた。
記憶の上書き。
より卑猥な、下劣な行為が日常に付随していく。

「う゛っ♡ はっ♡ これぇっ♡」

尻尾の毛が少しずつ整っていく。
リンが鈴口に鼻を押し付けて吸い上げる。
舌が根から先端へと何度も伝っていく。

そのたびにリンの身体が震える。
恐る恐る先端が咥えられる。

「ぐっ……」

ぷるんとした唇の感触が亀頭を包む。舌が裏筋を細くなぞる。
堪らず脚が震えた。
先端を咥えられただけでこの快感だ。

リンはその快感を俺に与えられたことを喜ぶかのように目を細めて、ずぶずぶと肉棒を飲み込んでいった。

しばらくすると、尻尾の付け根からブラシを通すたびにリンの身体が震えるようになった。
リンは既に磨かれきった肉棒に顔を押し付けて、時折舌を出して舐めたりしながら快感を受け入れていた。

「はぁ♡ これ、落ち着く……んっ♡」

溢れた我慢汁を自ら顔になすりつけながらリンが言う。
俺はほぼブラッシングの終わっている尻尾を余計に愛撫しながら尋ねた。

「次はどうするんだ?」

リンが可愛らしくはにかんだ。おぞましいプレイを経てもなお、リンは美少女だった。

「ゆーくんは、どこを穢したい?」

俺はさらりとその頭を撫でた。

風呂場でやることは限られている。特にシャワーの場合。
それら全てを網羅するのは無理だ。
シャワーのように精液が出たら大変な事態だしな。
髪に精液を塗りこむのもいいが、そんなに精液は出ないだろう。俺はまだインキュバスになっていないし、かなりの量を尻尾に吐き出してしまった。
それに、それよりもしたいことがあった。

洗いっこというやつだ。
俺は魔物娘ではなく知識もそれほどないため、自然とプレイも可愛らしいものになる。

「んぅ♡ ふっ♡ ぁっ♡」

ぷし、と飛んだ愛液が俺の身体を伝って落ちる。
泡に塗れた手がリンの身体を這うたびに喘ぎ声を上げるものだから、すっかり勃起していた。今更だが。

そして。

「おぉ……」

思わず声が出た。
たっぷりとボリュームのある胸を下から持ち上げると、かなりの重量感と滑り落ちそうななめらかさがあるのだ。
泡の滑りも手伝っているのだろうが、掬い上げて揉むとつるんと逃げられてしまいそうになる魅惑の果実だ。

たっぽたっぽと揺らしているだけでも楽しい。

「ゆーくん……」

リンはジト目でも可愛いなあ。俺はそっと肩に手を移した。
おっぱいは重たいからオナニーにも使ってないらしい。風呂に入ったとき、つまり冬季限定メニューだと教えてくれた。
わかった、と俺は頷いた。次は風呂用意しといて貰おう。

「あと、これ以上おっきくなったら怖いし……」

俺は丹念に育てることを決めた。

そして肩から腕を揉むように洗い、首筋に手を這わせたときにそれは起こった。

「も、もうちょっと」

リンがおねだりしてきたのだ。
俺の手が首を包んでいるのをたいそう気に入ったようだ。

「リンってマゾ?」

俺はさりげなく尋ねた。
蹴り上げられた脚が途中で止まり、ねだるように俺の脚に絡み甘えてくる。

「違うもん」リンは紅潮して言った。「ただ、その。アレなだけ」

アレ。とは。
締めすぎないように注意しながら少しだけ手に力を込めると、リンがにへらと笑う。

そして頭に首輪のカタログのイメージが唐突に浮かんできた。

俺は頷いた。

「アレだな」

えへへ、とリンが笑った。
思わず頭を撫でてしまったのはやむを得ないだろう。

首輪の件を了承したと取ったのか、リンは首筋から手を離してもにこにこ笑っていた。

さて、次は。
いよいよ手が腰に伸びる。

リンの秘裂からは既に愛液が流れ出ていて、周囲の毛が変色してしまっている。
俺は頷いて、リンを立ち上がらせた。

「あっ♡ んっ♡」

リンの喘ぎ声に合わせて、割れ目からこぽこぽと淫液が湧き出てくる。
俺はそれを真正面から見ながら、リンの安産型の尻を揉んでいた。

「ゆー、くんっ♡ 息が、当たって♡」

いつの間にか荒くなっていた息が、リンの割れ目に悪戯していたらしい。
俺はそのまま尻を引き寄せてリンの割れ目に口をつけた。

「あっ♡ イっちゃ♡ んふっ♡」

ぷし、と口の中にしょっぱいような甘いような、されど確実に淫靡な味が広がる。
唇が陰唇とキスしただけで、まだ舐めてもいない。大した刺激もないのに絶頂しているのだ。

もし舌を這わせたり、クリトリスに強く吸い付いたらどうなってしまうのだろうか。
そう思ったときにはもうむしゃぶりついていた。

「ぁあっ♡ はげしっ♡ ゆーくんっ♡」

リンが身をよじる。
どんな顔をしているのか見たくても、頭を押し付けられているからもう下腹部しか目に入らない。
唇と舌で挟んだクリトリスを吸い上げていると、尻を探る手が毛の生えていない窄まりを見つけた。

「ひっ♡ そこぉ♡ やらぁっ♡」

その声はどこまでも甘ったるい。
口がより強く割れ目に押し付けられる。
甘酸っぱい味が口に広がった。

探り当てた指を捉えたアナルが、逃がさないとでも言うようにぎゅっと抱きしめてくる。
少し動かすと、ほわりと緩んでぬるついた腸液が滲み出てくる。

「もっ♡ 汚ぃってぇっ♡」

リンがいやいやと首を振るのがわかった。
ちょうど俺はリンの身体を洗っている最中である。汚いという穴の表面を丁寧に擦り磨いてやると、脚をガクガクさせて頭に体重をかけてくる。
とはいえ支えきれるわけもなく、ずるずると滑り落ちたリンはくてんと尻もちをついてうな垂れた。

「汚いって言ったのに……」

汚いと言われたから洗ったのだとはとても言えなかった。
俺は空気の読める男なのだ。

背中に手を回してぽんぽん叩きながら「ごめんな」というと、リンはてれてれしながら言った。

「つ、次は。ちゃんと綺麗にしておくから」

リンが自分で洗浄したとしても、また俺が上書きしてやればいいのだ。
俺は密かに心に決めた。

胡座をかいた俺の脚に、とすりとリンが脚を投げ出す。

「次は脚ね」

「尻尾は?」

俺は悪戯っぽく尋ねた。リンが顔を紅潮させた。

「出るときに洗うからっ」

いちいち可愛いなこいつは。
俺は太ももを洗おうとして、毛が生えているならシャンプーの方がいいな、と手を伸ばそうとしたところで。

むに、とリンが蹄で肉棒を押した。蹄は思ったより硬くなく、痛みはなかった。
蠱惑的な笑みを浮かべたリンが言う。

「別に、これ、でもいいんだよ?」

ふに、と器用に金玉を押してくる。
俺もそれをしたいのはやまやまだったが、まだ脚を丸ごと染められるほど精液に余裕があるわけではない。
それに、この後リンに身体を洗ってもらう予定もあるのだ。

俺は黙って首を振り、シャンプーを手で泡立てた。

太ももというのは、股間が近くにあることを考えなくとも魅力的だ。
それは、大体の場合内ももの柔らかさに依存する。しかしリンのむっちりしたそこは、どう触っても柔らかいのだ。そのくせ芯がちゃんと通っていて肉感的であり、滑らかな毛はフォルムを強調するように流れている。
筋肉がピクピク動くのがまた愛らしい。

膝に近づくにつれ、毛の中にしっかりと関節が浮かび上がってくる。
リンはされるがままに俺のマッサージを受け入れた。

「なんか、偉くなったみたい……」

なら、と俺はリンの脚にある模様に口付けた。
そのままぺろぺろと舌で撫でつける。

リンが頭を撫でてくる。
ペットになったような気分だ。

「ゆーくんも首輪つける? お揃いの」

リンが首輪をつける前提で言ってくる。
俺はお揃いの首輪をつけているシーンを想像して、悪くはないかもしれないと思ってしまった。毒されている。それも心地いい。

洗い流される唾液を残念そうに眺めるリンをよそに、俺はリンの身体を洗い終えた。

「頭は後でね。多分汚れるから」

そう言ったリンが立ち上がり、俺を椅子に座らせる。

「今度はマットを準備しとかないとね」

そしてそんなことを言いながら、背中に抱きついてくる。むにゅり、と柔らかいものが押し当てられる。

男にとっての夢。ずきりと股間が痛みを放った気さえした。
おっぱいを擦り付けて身体を洗うという、本当に身体が綺麗になるんだかどうだかわからないプレイ。

「んっ、ふっ」

リンが自分で胸を押さえながら、背中をむちむちと擦ってくる。
ただ背中を擦られているだけなのに、やたらと気持ちがいい。
背筋を縦にくすぐる乳首のしこりがやけにはっきりと感じられた。

「じゃあ、次は前だね」

むにゅん。

俺の膝に浅く腰かけたリンが、胸板に豊満なおっぱいを重ねてくる。

「んふ、えっちい」

押し付けられて変形したおっぱいは見ているだけで興奮する。肉棒は既に硬さを完全なものとしていた。

「んふ。れろ……」

そして胸を押しつけながら、顔をぺろぺろと舐めてくる。
たっぷりと泡立ち石鹸の滑りを得た細い手が俺の背中を這い回る。

そのままおっぱいは下へとズレて行き、手で細かいところを擦り洗いながら。
いよいよ肉棒へと達した。
リンが鼻息を荒くする。

「それじゃ、洗いますねー」

まるでそういう店かのように言う。
しかしリンの顔は業務用の笑みなどとは程遠い、淫らな欲望に塗れたものだった。

もにゅ、と両側から押し当てられたそれが皮を引きずって上下する。
先端のしこりをわざとらしく当てて、竿をつたうように擦りあげてくる。
感覚としての気持ちよさはそこまでではない。
しかし、リンを全て支配したかのような錯覚が産む快感が、背筋をぞわりと走り抜けた。

限界が近いことを見て取ったリンが、おっぱいを左右から手で押さえて、飛び出した亀頭をぱくりと咥える。

裏筋に舌が当てられ、鈴口に舌が当てられ、くりくりとくすぐってくる。
限界だった。
俺は咄嗟にリンの角を掴んで、ぐいと腰を押し付けた。おっぱいが滑って肉棒から離れる。

「んぐっ?! ん゛、んん゛っ!」

リンの苦しそうな声すら支配欲を煽る。
腰に密着したリンの上目遣いから涙が滲み出て嗜虐欲を満たす。
それでもなお淫らに纏わり付いてくる舌が、わざとらしく鳴らされる喉が性感を募らせる。

「で、出るっ」

悲しいくらいに情けない声が出た。リンの目が嗜虐的に細まる。
手が尻に回されて、更に密着するように顔に腰を押し付けられた瞬間、俺は射精していた。

苦しいだろうに、声ひとつ上げずに精液を飲み込んでいく。
異物感にか嚥下を繰り返す喉がまるで精液を絞り出すかのように動く。
舌が射精直後の肉棒を労わるかのようにねっとりと撫で上げてくる。
リンは肉棒を頬張ったままにっこりと笑った。

お掃除フェラだけは譲れないと言わんばかりにリンはしばらく肉棒をぺろぺろしていた。いや、じゅぷじゅぷしていた。
そしてちゃんと綺麗になったところでようやく口を離した。

「それじゃ、腕と脚洗おっか」

再び屹立しつつある肉棒の前で、リンが面倒見のいい姉のように笑った。



明らかに普通の洗い方ではない。
とはいえ俺も止めるつもりはなかった。

「んっ♡ ぁっ♡ ゆーくん、気持ちいい?♡」

たわし洗い、だったか。
リンが股間をねちねちと動かし、伸ばした腕に擦り付けてくる。
リンにオナニーさせているような光景は酷く淫らで、興奮しているのかとろとろと流れ出る粘液が股間の動きを助けている。

三度目だというのに、恐ろしいほど勃起している。本番を待ち望む息子の気持ちはわかるが、今日はセックスしないのだ。
俺はちょっと湧いて出た辛い思いを、自分からリンの股間に腕を押しつけて喘がせることで誤魔化した。

「んっ、ごめんね。指はまだ入れさせてあげられないから」

リンは処女膜を大事にしている。
俺のためだ。俺が突き破るため。
興奮が増した。辛さも増す。
リンがふふんと淫靡に笑った。

腕を洗い終えたリンが得意げな顔のまま太ももに座ってくる。胸を押し付けてきたさっきとは違い、身体を反るようにしてその美しいフォルムを見せつけてくる。
思わず揺れる胸に手を伸ばそうとしたのだが。

「あっ、こら、ダメ。ちゃんと私が洗うとこ見てて」

と、健気なことを言ってくるので俺も手を伸ばせなくなった。
くにくにと擦りつけられるおまんこ。
本来は到底綺麗にならないものなのだろうが、太ももの毛や下腹部の毛があるお陰でちゃんと細かく洗われている実感がある。

そのまま脚を伸ばしたり膝で割れ目を震わせたりしていると、妙な感覚が湧き上がってくる。
排尿したい。
男というのは、射精後に小便したくなる生き物なのだ。なんかよくわからないがこれは男に共通する特徴だと聞いたことがある。

「あのさ」俺は言った。「小便したいんだけど」

俺の脛に割れ目を押し当てていたリンは目をぱちくりとさせて、何事も無かったかのように再び股間を動かし始めた。

「出せば、いいじゃん。私に」

そしてなんでもないかのように言う。

「おしっこのっ、掛け合いって、割と、んっ、メジャーなんだよ」

「本当に?」

「人間同士でも、やってたっらしいし、メジャー、んぁっ、なんじゃない? よし、終わったよー」

そして、終わったと言ったはずのリンは、ぺたりと床に座り込んで排尿欲により力を失いつつある俺の肉棒を見つめた。

「まだ?」

俺はキョドッた。

「や、あの。緊張して出なくなるタイプなんだけど」

というか、男の大半はそうだと思う。
そう告げると、リンは難しい顔をした。

「うんと、じゃあ。目ぇ閉じて」

言われるがままに目を閉じると、浴室にリンの澄んだ声がよく響いているのがわかった。

「息を、吸ってー。吐いてー」

言われるがままに深呼吸すると、自然と身体から力が抜けて、どっと重みを感じた。身体がリラックスすると同時に、湧き出るかのように陰茎の奥まで尿が降りた。

「あ、出るわ」

「あっ♡ 目、開けて?」

目を開けると、じょぼじょぼと排出された尿がリンの身体に跳ね、崩した正座にびしゃびしゃと飛び散っているのが見えた。
汚いはずなのにリンはどこか嬉しそうな顔をしていて。
肉棒に力が戻り始める。
俺はずきずきと頭痛がするほど興奮していた。
リンを、魅力的で理知的な女性を汚す感覚。
支配欲が尋常ではなく満たされ、子孫繁栄の礎にしろと本能が囁く。
しかし肉棒はもうダメだった。

期待の目をしていたリンだったが、肉棒が半勃ちで勃起を諦めたのを見て残念そうに立ち上がった。

「えいっ」

ちょろ、とその股間から呼び水が溢れる。そして、じょろろと熱い液体が俺の腹に飛んでくる。
奇妙な興奮。しかし。肉棒に狙いを合わせるかのようなその水流の勢いに、半勃起を保っていた肉棒が完全にノックアウトされた。
さっきまでは頑張っていたのに、一度リラックスしたらダメになってしまったようだ。

俺とリンはやりきったかのような顔で頷きあった。

「じゃ、流そっか」

今度の尻尾ブラッシングは、ちゃんと泡立っていた。



ご飯は家で作れない。材料がないそうだ。
そういうわけで、俺たちはイチャイチャしながらファミレスに向かっている。
ただ道中のイチャつきを見せびらかしたかったのではという疑念はあるが、奇遇にも俺もそういう欲があったので何も言わなかった。

「次は私が自分で作るから、ちゃんと見ててね」

リンは俺の肩に寄りかかりながら言った。
なんのイメージも送られては来ていないが、きっと裸エプロンとかそういうのだろう。想像すると、リンが少し顔を紅潮させた。

「ヘンタイ」

「お互い様だろ」

きゅう、と腕が強く抱かれる。
こうして俺たちは存分にイチャつきながら、ファミレスへと足を運んだのだった。



『んうっ♡』『ゆーくんっ♡ ぁっ♡』『しゅき♡ ぉう゛っ♡』

「リン?」

『ゆーくん♡ 好き♡』『んひっ♡』『ゆーくぅっ♡ もっ♡ もっろぉ♡』

ひたすらに淫靡な、バスルーム内の光景。
鏡に映ったリンが延々と脳内再生される。
ぴったりと身を寄せたリンが、料理が運ばれてきてからずっと送りつけてくるのだ。

イチャつくのはいいが、こうも視界を独占されると飯が食えない。
しまいには片手が抱かれて股間に押し付けられている。

「ファミレスだから……ファミレスだからセーフ……」

リンがうわ言のように繰り返す。
確かにファミレスは家族向けだけあってセックスできるように部屋も用意されているが、しかし今日はセックスしないという話なのだ。
俺は焦らしプレイの良さを理解していた。

リンに食事させるためにどうするべきか。
俺はカレーをなんとか口に運んだ。

そしてリンの顔をこちらに向けさせ、唇を合わせて流し込む。

溢れていた喘ぎ声の奔流が止まった。
リンがパニックになっているのか、キスのテクニックやカレーのレシピが頭に送られてきて少し笑った。

リンが咀嚼して飲み込むのを見届けて、また口付けでカレーを流し込む。

リンが目をとろんとさせ、見せつけるように咀嚼して喉を鳴らした。

「落ち着いたか?」

尋ねる俺を無視して、リンは慌てたようにグラタンを口に運ぶと何度か口を動かす。
そして「ん」と抱き込んだ俺の腕を引いてくる。

口を合わせると、どろどろになったグラタンが流れ込んでくる。舌が伸ばされて、口内に塗りつけるように擦られる。
どこまでも性的な行為で染められていく。
二度とグラタンをまともな目で見れそうにない。

俺たちはそうして、グラタンのチーズ味やカレーのスパイスを、そして時にカレーグラタンを楽しんだ。

やたら暑く感じるのはタバスコのせいだけではないだろう。

俺たちに当てられたかのように周りの客が顔を紅潮させてプレイルームに入っていく。

俺たち以外の客が席を立ってしばらくして、ようやく食事を終えて一息ついた俺たちの下に店員が来て言った。その顔も赤い。

「次からはルームの方でお願いします。マジで。なんなら料理も中に運びますんで」

俺たちは揃って頭を下げた。
自制できなくなっていたのだ。それはセックスのためにプレイルームに人が入っていくのを見るたびに酷くなっていた。

セックスしないという縛りが俺たち自身を苦しめていることに、俺は気がつき始めていた。
リンも、きっと気がついている。
いかに焦らしプレイと考えても、焦らした先にあるはずのものが無いのは辛い。

店を出たところで、きゅう、と腕が抱きしめられる。

「あの、ゆーくん。ごめん。もう、我慢できそうにないから、今日は帰って」

俺は頷いた。同じ意見だった。

もしリンが寝ているところを見てしまったら、止まらない予感があった。
リンも、きっと止まらない自信があるのだろう。

俺たちはその場で別れた。帰り道に青姦してしまう可能性も高かったからだ。

「テスト、終わったら。きっと……」リンが俺の背中に声をかけた。「ううん。絶対に、絶対にシようね」

俺は手を軽く上げて応えた。

少しすると、テストがある。

それが終われば長期休暇だ。
おそらくセックスし続ける日々になるだろう。俺はそんな予感がした。



俺たちはしばらく、先生が訝しむほどに平和な日々を過ごした。
背中をつつかれることもほとんどなくなった。
授業が終わる度に、そっと背中に手を当てられてぽかぽかと幸せな感情だけが伝えられた。

図書館での勉強も続いている。
一問解き終える度に、軽く唇を交わしてまた次の問題へ。
あまりにも自然に行ったそれに、司書さんも感嘆していた。

テスト終わりの快感を前提とした、幸せを共有するだけの交わり。
それは回を重ねるごとに強くなっていく。

そしてテスト当日。

一日目をつつがなく終え、二日目。

俺たちは揃って保健室受験を申し出た。

我慢の限界が近かった。



俺とリンは示し合わせたように言った。

「終わりました。回収してください」

監督の先生が呆れたようにテスト用紙を回収していく。
俺たちは保健室のベッドに腰掛けて、じっとりとキスを交わした。
唇を合わせて、制服の上から軽く身体を撫でるだけの、可愛らしい交わり。

テストを早々に終わらせて次のテストが始まるまでの間、ずっとこれを続ける。
そんなことを、朝から延々繰り返している。

目の前のリンが目を細めた。

ちゅ、と唇が離れる。
そして言う。

「あと一つだね」

「ああ」

俺は短く返事をして、また唇を合わせた。

次のテストまで、まだ時間はある。

「本当に学生かお前ら……」

先生の呆れ声を無視して、俺たちはたっぷりと己を高め合った。



そしてその時が来た。

「先生」

先生はもう細かく言わずとも察してくれた。

「私は出てるから。あんまうるさくすんなよ」

「はい」

それはおそらく無理だが、問答する余裕はなかった。

俺はカーテンの閉じられたベッドを見つめながら応えた。
リンは先に中に入っている。
きっと、俺を待っている。

リンの姿が頭に浮かぶだけで射精しそうになった。

カーテンをそっと開ける。

リンはベッドにぺたんと座っていた。

そしてなんでもないように言った。

「ベッドに上がりなよ、ゆーくん」

セックスが始まった。



しゅるり、とお互いの服を脱がせる。

リンの動きに淀みがないのは言わずもがなだ。俺もリンに情報を貰って、スムーズに服を脱がせられる。
興奮が煽られる。

俺たちは全裸になり、お互いの身体にも触れずに見つめ合っていた。
リンの身体は明らかに火照っている。
股間からとろとろと蜜を垂らしているのはお互い様だった。

「綺麗だ」

気づけば言っていた。

「全部、ゆーくんのだよ」

リンがぽーっとした顔で言う。
奇妙な全能感が俺を襲った。

「ああ」そして言う。「俺のものにする」

リンが頷いた。そっと唇が合わさり、声は出なかった。

俺たちはベッドに横になった。
お互いがお互いをコントロールできる、最も良い体勢だと思った。
リンが、そっと俺の肉棒に手を添えた。
狙いが定まる。

腰を前に出すと、ずぷりと入口が剛直を熱く出迎えた。リンの出来上がった肉穴も、埋めてくれるものを求めていた。しかし、それはふやけた処女膜が辛うじて防いでいた。

もっと奥まで来てよ、と甘えるようにチロチロと舐められるような感覚がするのは錯覚か、否か。どちらでもよかった。
俺は必死で射精を堪えながら、リンに口付けた。

「いいよな?」

「うん。ゆーくんのものになりたい」

す、と驚くほどあっさりと膜が崩れて肉棒を通した。ずぶずぶとハマって、腰が、腹が触れ合う。血は出なかった。
俺たちは自然と抱きしめ合った。胸が間で潰れて柔らかさを主張した。
涙を流したリンが言う。

「キス、しよ」

断る理由はなかった。
肉棒の先端まで吸われた気がして、微かに腰が揺れた。

「ぇっ♡ ーーーッ♡♡♡」

リンがイった。震える肉穴が、耐える肉棒を決壊させにかかる。
俺はまだ繋がっていたかった。しかしリンは言った。

「中にぃっ♡ 中に欲しいのっ♡♡ ちょうらいっ♡」

子宮口が鈴口にキスをして、肉棒の奥の精液を吸い出そうとしてくる。
それでも必死に耐えていたその時だった。

「ぉわっ」

俺の口から変な声が出た。
リンが背筋を指先でなぞったのだ。
にへら、とリンが笑った。

耐えていた肉棒が緩む。
子宮がチャンスとばかりに先端をホールドする。媚肉が逃さんとばかりに強く締め付けてくる。

「ぐっ」

「あっ♡ 出てるっ♡♡ ぁ゛っ♡ ぃっ♡ イクっ♡♡」

俺は射精した。
リンが安心させるかのように背中を撫でてくる。
俺はやれやれとため息を吐いた。

「一発目は、もっと焦らしたかったのに」

「ごめんね、っぁふっ♡ ぉっ♡ な、なんか。子宮が、飢えちゃって」

俺はリンの頭を撫で、肉棒が硬さを保っていることに気がつき軽く腰を揺すった。

「んっ♡ もうっ♡ 待ってよ、ゆっくり、やろ?」

「もうちょっと興奮してからね」

リンが目を逸らした。

「耐えられ、ぇっ♡ ぁっ♡ イ゛っ♡ イ゛ぐっ♡♡」

「はえーよ」

俺はピタリと腰を止めた。
そしてイかないように、ゆっくりと肉棒を引き抜く。

「ゆ、ゆーくん」リンが言った。「これ、辛いね」

「俺も辛い。けど最後が最高なんだよな」

俺が味わったあの幸福を、リンにも味わって欲しかった。

俺たちはしばらく、股間に触らずに穏やかに身体を愛撫し合った。勉強していた時のように。

そして落ち着いてくると、また挿入。

「ぁっ♡ イ゛っ♡♡」

「ちょ、まだ途中」

あまりにもイキやす過ぎるリンのせいで度々腰を止めながら、俺たちは絶頂しないような愛撫と挿入を繰り返した。

そして。

「ぁっ♡♡ イ゛っ♡ らめぇっ♡ イ、イってるのにっ♡ イケないのぉっ♡♡」

リンの奥まで挿入して、微動だにしていないのにリンはびくびく震えている。
痙攣した膣肉で肉棒を感じる度に甘イキしているが、刺激が足らなさすぎて深く絶頂できていないようだ。
俺も肉棒が形を保っているのかどうかわからないほど感じ、ただ射精だけを耐え続けていた。

「ぁっ♡ やっ♡♡ っふ♡ ふーっ♡ ふー、ぅっ♡」

少し引き抜く度に、リンの肉穴がカリに引っかかって絶頂しようとするので、その度に止めなければならない。
長い長い時間をかけて、俺たちはようやく挿入を解いた。

俺たちは息を荒げながら、最後の休憩を取ることにした。

「コーヒー、飲もうか」

保健室にあるコーヒーは先生の私物だが、後で謝れば許してくれるだろう。
俺たちはベッドに並んで腰掛けて、ゆっくりとコーヒーを啜った。
リンの身体が、湯気が出そうなほど火照っている。赤熱している。
恐ろしく興奮しているのに、冷静な頭がそこに同居していた。奇妙な感覚だ。

「私ね、今すっごい幸せなの」

「俺もだ」

こてん、とリンが俺の肩に額を当てた。
ぐいぐいと押し当ててくる。そして言う。

「私のことだけ見てて」

「うん」

「他の人は見ちゃやだよ」

「おう」

「先生もね」

「先生もかぁ」

それは難しいかもな。
リンは笑った。

「ゆーくん、寝転んで」

リンは騎乗位をご所望だ。俺はおとなしく寝転んだ。

リンがベッドの上で立ち上がる。

俺を見下ろして言う。

「今から」リンが舌舐めずりした。「ゆーくんのおちんちん、入れるとこちゃんと見ててね」

そそり立つ肉棒が期待に雫を垂らした。

リンが膝立ちになると、肉棒と肉穴の距離がぐっと縮まった。
とろとろと垂れる愛液が、肉棒をコーティングしてテカテカと光らせる。

ちょん、と先端が触れた。
勝手に開いた割れ目が、亀頭を正しい位置に誘導する。

リンが俺の顔を見た。

「ちゃ、ちゃんと見ててね? イくよ? いい?」

俺はその光景をちゃんと目に焼き付けてから、頷いた。

リンが表情に決心を示し、とんっと脚を浮かせた。

瞬間。体重が、肉棒と肉穴を激しく擦り合わせた。
肉棒を迎えようとしていた子宮が、その勢いに潰されながら突き上げられる。遅れて、たぽん、と尻が潰れる。

「ぁっ♡ ぉっ♡♡ お゛ぅっ♡ こりぇイ゛っ♡♡」

俺は射精していた。リンが低めの声でガチイキしながら無我夢中に腰を振る。
その度にきゅぽきゅぽと子宮がいちいち出迎えて、精液を出す場所はここだぞと主張してくる。

「ぁへぇっ♡ ぇあっ♡♡ こんにゃっ♡ ぎっ♡ ぎもぢぃっ♡♡」

俺が射精しようとも腰も、声も止まらない。
俺は何とか声を抑えようとその唇を吸うと、またそれで身体を震わせていた。

「ゆーくん♡ ゆーぐぅ♡ の、飲んで♡」

だらだらと垂れる涎を口に含むと、どくんと心臓が高鳴った気がした。かつてない急ピッチで精液が作られていくのがわかる。

「ぐっ」

噛み締めた歯に弾かれた涎が顎を伝う。
長い長い射精。その間もリンは腰を止めない。

リンが口で俺の唇を覆い隠して、その身体で押さえつけて、咥え込んだ肉棒からずるずると精液を啜る。
捕食されているのだ。そう感じた。
コーヒーの香りがする餌を飲まされながら。

「ん゛っ♡ ぅんん゛♡ ん、んぅっ♡」

口が塞がれたリンは鼻から喘ぎを漏らしながら、それでも決して口を離さない。
だらだらと溢れる唾液と涎は、余すところなく俺に与えられている。

俺が反撃しようと舌を伸ばしても、リンの機敏に動く舌が唾液を擦り付けながら送り返されるのだ。

動かそうとした手も、リンが目敏く手を重ねてくることで使えなくなる。

しばらくそうして犯されていると、リンがイキ続ける身体に慣れてきたのか、目を細めてようやく口を離してくれた。身体が上がり、接合部が見えた。

「んっ♡ ぁっ♡ ゆっ、ゆーくんっ♡♡ ねぇっ♡ 気持ちぃっ?」

「気持ち、いいよ」

俺は射精するときにいちいち力を入れずに、リンの中に垂れ流すことを覚えていた。
リンの舌を噛んでしまいそうだったからだ。

繋ぎ目からは、白濁した液体がドロドロと垂れ流されている。
リンが腰を動かすたびに、コポコポと湧き出る液でべったりと肉棒がコーティングされている。
愛液と精液の混合液だ。

リンがとすんと腰を下ろして、ぐいぐいと押し当ててくる。
バカになった子宮口がカリにハマって蠢き、媚肉が竿の真ん中を優しく舐め回してくる。

「ゆーくん、おちんぽバカになっちゃったね」

射精が止まらない。
俺たちはバカになってしまった腰を押し付け合いながら、ずっとそうやって交わったのだった。
19/08/30 05:53更新 / けむり

■作者メッセージ
ハクタクにねっとりセックスを教え込まれてもう気持ちよくなることしか考えられないようにされたいだけの人生だった

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