読切小説
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二十年の初恋
目を通した原稿から視線を上げると、どこかぼんやりした先生がこちらを不安そうに見上げていた。

「先生、今月の原稿はとりあえずOKです。推敲あったらまた来ます」

「ん……」

先生は雷獣だ。
原稿を傷めないように常にアースしているためか、ダウナーな性格をしている。

そしてアースしていても不安なのか電化製品を一切使わないため、この時代には珍しいフルアナログの漫画家だ。
ただ、電話すらないため全て僕が直接出向く必要がある。

「中村」

帰ろうとしている僕を先生が呼び止める。
何かあったのかと目線を投げると、先生は目を逸らして恥ずかしそうに言った。

「アレ。してほしい……」

僕と先生が先月から始めたのが、マッサージだ。

前にいたアシスタントが辞めてからというもの、先生の身体は固まっていくばっかりだった。
見るからに体調が悪くなっていた先生に事情を聞くと、前はそのアシスタントがマッサージをしてくれていた、と言われ。
僕がやることとなったのだ。

僕は小さくを唾を飲んだ。
このマッサージが曲者なのだ。僕がさっさと帰ろうとしたのには理由がある。

手を引かれ、座り込んだ先生につられて正座。電線として床に細かく引かれた金属が当たって少し痛い。言われるがままにその細い肩を掴む。
こんな子供みたいな体格、折れてしまいそうな腕でさえ僕よりも力があるんだから不思議なものだ。

「あっ」

ぐっと力を入れると先生が熱っぽい息を吐く。
ばちりと静電気が生まれ、ふわりと浮いたサラサラの髪が僕の腕に纏わりつく。僕にもじんわりと電流が流れる。
それは僕の身体を伝って、アース用に床に引いた金属線へと逃げていく。
尻尾の先端がが気持ち良さげにゆらゆらと揺れた。

今月もまた、一段と凝っている。

「ずっとアースしてたから……」

先生が言い訳するように言った。
本来なら身体に流れている電流が勝手に身体を解してくれる。しかしアースしているとそれがなくなる。
だから僕が代わりに解しているのだが。

「んっ、ふぅっ」

先生の浮いた声が、縋るように絡まる髪を伝った電流が、僕の熱をくすぐるように刺激する。
誤魔化すように腕に力を入れると、ほんのちょっとだけ強い電流が誤魔化しを咎めるように僕の身体を荒らす。

これがこのマッサージが曲者たる由縁だ。

長い黒髪の獣系幼女。先生は真っ当な成人女性だが、後ろ姿がどう見ても幼女だ。ただお尻だけはなかなか大きい。

先生が成人しているのは知っている。
同級生だからだ。なんなら小学生、中学生時代の写真もある。
ただ、その頃から二十年ほど経った今でも、先生の身体は成長していないだけだ。お尻は昔から大きかった。これは間違い無い。

僕はこれを続けていけばそのうちロリコンになるのではないかと恐怖している。

「中村……?」

僕がぼーっとして腕を止めていたからか、先生が肩越しにこちらを見る。ぴくぴくと頭上の獣耳が動く。
不思議そうに瞬く眠たげな蒼い瞳。紅潮している頬が愛らしい。

本当のところを言うと僕はもう既にダメだった。
恐怖しているのは、先生以外に反応しやしないだろうな、という点だ。

「あ。あ、すいません。腕揉みますね」

実のところ、肩を揉んでいるうちはまだマシなのだ。
厄介なことにアシスタントだったアラクネさんは、実に丁寧に全身を揉み解していた。
そのせいで僕は、なんとか胴体は免れたものの、腕と脚の全てを丹念にマッサージしなければならなくなっている。

先生が少しこちらに寄る。
長い髪がふわりと僕の腹に張り付く。シャンプーのいい匂いに酩酊しそうになった。尻尾が僕の膝に当たった。

先生の二の腕は細い。そして本来は柔らかいそれが、絵を描き続けて酷使され、強張っている。
僕はそっと指を沈めた。

「ふぁっん」

先生は声を上げたくて上げているわけではない。前にそう聞いた。
ただ、少し気持ちよくなると身体を流れる電流が、勝手に強張りを解して快感を生み、声を上げさせるのだ。

だから僕の下手くそなマッサージでもいいのだ。僕は下腹部を僅かに伝う電流を感じながらも、先生の二の腕を揉み押していた。

「なっ、中村っ」先生の切羽詰まった声がエロい。「脇のところも」

先生はこうしてリクエストを出してくる。そしてその言葉に従うと先生に強い電流が走るのが見てとれる。僕にもちょっとだけ強い電流が流れる。

先生はどうすれば気持ちよくなるかわかっているのだ。

そして、おそらく。それが一般的な性感帯と呼ばれる場所に近いことを理解していない。
いや、理解はしているだろう。しかし実感がないんじゃないか。

元アシスタントのアラクネ、ヤマネさんはかつて僕に言った。

『あの子、絶頂したことないらしいの。オナニーもしないようにしてるって。種族的にしょうがないのかもしれないけど、可哀想よね』

おそらく事実なのだろう。
雷獣は身体に電気が一定量蓄積しないと達することができない。僕が個人的に調べると、そう書いてあった。
もしかしたらアースし続けているかぎり、性欲も無くなっているんじゃないだろうか。

雷獣が絶頂する時に放たれる電流はとても強力で、電化製品が壊れるのは言わずもがな、周囲のものが発火することもあるほどらしい。
電化製品に溢れたこの時代に、雷獣は普通に生活するのも難しいのだ。

「ふぅっ、んっ、あっ」

それでも先生がこうして電流に艶かしい声を上げるのは、きっと魔物娘の本能によるものだ。
魔物娘の本懐を果たしたい先生の身体と、それを許せない環境。その狭間に先生の心がある。

僕は少し悲しくなりながら、先生の二の腕を丁寧に揉んだ。

そしてこれまた悲しいことに、僕はしっかりと反応してズボンの中で痛みを発していた。僕はどうしようもないクソ野郎だった。

「ん」

先生が腕から手のマッサージをお望みだった。
困ったことに、この時は先生がぐったりと僕にもたれ掛かる。そしてその際、膝に座ってくるのだ。秋口特有の涼しさに子供じみた体温が心地よい。ふかふかの尻尾が邪魔にならないように身体に巻き付けられて暖かい。

この姿勢だと、常に息子にぴりぴりと快楽が走っている。もしかしたら先生は僕を誘っているのではと思っている。

先生は小さくて軽い。膝に座っても、頭頂部が僕の口元にある。意識しまくっている僕は少し呼吸に困る。いい匂いだ。獣耳が僕の吐息に震える。

僕が先生に後ろから抱きつくように手を伸ばすと、そこに先生が腕を乗せてくる。
大きな尻とは違って胸は昔のままキッズサイズなので、ハプニングは起こらない。

「……? なんか、今変なこと考えなかった?」

「いえ、特には」

「……ならいい」

この体勢は先生のお気に入りだ。僕の肩口に頭を預けて「極楽……」とか言ってる。
僕にとっては地獄だ。
先生が顔を傾けて、じいっと僕の顔を見上げている。ぴりぴりとした、小さく柔らかな身体が僕に密着している。
その極楽を、手の届かないところから見ているのが僕だ。

「ん、ふ、あっ」

先生が僕を見ながら喘ぎ声を上げる。投げ出した脚がぴくぴくと震える。その度に発生した電流が、直接伝わる分強い電流が僕の身体を下っていく。
先生の大きな尻と、僕の脚の隙間で快楽が跳ねる。そして脚から金属へと虚しく流れていく。

「ん、あっ、これ、気持ちいっ」

先生は臆面もなく言う。
先生には、気持ちいいとかの感情が無いわけじゃない。ただ、その先を知らない。先生にとっては、気持ち良さはするすると流れ出て行ってしまうものだ。

それは作風にも反映されていて、作中の人物は大抵幸せを追求する途中で、何らかの壁にぶつかりリタイアする。
その無念さの描写は、読んでいると胸が苦しくなるほどで。

僕は、先生が少しでも幸せになれるならば、とリクエストに応える。

「指、擦って」

先生の指先にはインクが滲んでいる。
それを自分の指に擦り付けるように、僕は指を絡めた。
先生がこんなことで喘ぐ。
僕はこんなことで気持ちよくなって。
ほんと最悪だ。

脚のマッサージをするときは、先生はいつも僕と向かい合って膝に脚を乗せてくる。
しかし今日は違った。

「先生?」

先生は僕の上に座ったまま胡座をかいた。しかし僕が正座したままなので何分バランスが悪い。
先生はじたばたしてから立ち上がった。

「脚崩して」

僕が胡座をかくと、そこに先生がすっぽりとはまる。正座の時よりちょっと楽だ。
無論僕のブツが先生の尻に密着しているのだが、先生は残酷にも何度か座り心地を確かめるように尻をぐにぐにと動かして、尻たぶの間に丁度挟まるようにセットしてしまったのだ。先生から伝わる電流が強まる。

先生がちらりと僕を見て言う。

「脚、揉んで」

その顔は自分が何をしているのかを理解していることを示していた。
僕の肉棒がぴくりと震え、先生の身体からぱしりと一際強い電流が流れた。

先生は気持ちよくなろうとしている。
気持ちよくなった先を知りたがっている。

僕は、それがきっと手に入らないものなのだろうことをわかっていながらも、先生を抱きしめるようにその獣の足に手を伸ばした。もふもふだ。触っていると気持ちいい。

「ふあ、んっ、ふぅ」

僕に自ら包まれるように先生が身体を押し付けてくる。尻尾が僕を先生に引き寄せる。ぱりぱりと先生から流れる電流が、全て僕を伝って電線に逃げていく。
本来の触れ合いなら、きっと高め合うことで電流が強まっていくのだろう。それが今は、蓋をされたように低いところで止まっている。

流れてしまった電流は捨てられるわけじゃない。電力会社が買い取り、なかなかの金額になっていると聞いた。
でもそれで先生は幸せなのか。

先生の脚を撫でるたびに、揉み込むたびに、電流が虚しく放たれる。僕は気持ちよくなる。先生も気持ちよくなる。でもそれはすぐに逃げていく。
僕はいい。男の快感はもともと一瞬だ。でも先生は違う。ずっと気持ちいいはずのものがどこかに行ってしまうのはどれだけ虚しいのだろう。

先生はいつか言っていた。

『漫画の中では、幸せになっていいから』

先生の作品では、主人公だけは必ず、どんな手を使ってでも壁を乗り越えて幸せになる。そこで話が終わる。

でも。先生は。

壁にぶつかり、倒れてしまった脇役なんじゃないですか。

事細かに描かれた悲劇に苦しむ脇役に、自分を重ねているんじゃないですか。

先生は僕の顎に頬を擦り付けて無邪気に笑う。

「んっ、ふ、幸せっ」

幸せなものか。僕は苛立ちを先生の脚にぶつける。先生が啼く。流れ去った電流がお金になる。暖かい気持ち良さが消え、冷たいお金に変わる。
これは幸せなのだろうか。

「りょうくんっ、もっとっ」

先生が小学生時代の呼び名で僕を呼ぶ。
先生の身体はその時から変わっていない。

「さきちゃん」

「ん、あっ、ふふっ、久しぶりに、それ聞いたぁっ」

僕も子供の頃のように呼ぶと、先生から流れる電流が強まった。

僕の悲しみは、もしかしたら、さきちゃんを置いて僕だけが大人になってしまったことにあるのかもしれない。

僕は子供の頃、さきちゃんが好きだったのだ。

僕はさきちゃんを置いて大人になり、偶然さきちゃんを先生と呼ぶようになったところで、高校進学で切れた僕らの関係は再び繋がった。

脚を揉み終えると、先生がぱっと立ち上がった。身体にじんわり伝わっていた熱と電流かさっぱり消えてどこか寂しい。

「楽になった。ありがとう」

「それは良かったです」

マッサージを終えると、僕らの関係が一歩下がった。あるいは、さきちゃんが先生になるまでの時間の分だけ進んだ。

先生が伸びをして言う。

「眠い。もう帰っていいよ」

「はい。……あ、原稿細かくチェックしたらまた来ますね」

「ん」

先生はすげなく手を振った。
僕は心なしか落ち込みながら、先生の家を出たのだった。

「りょうくん……今はまだ……」

扉が閉まるとき、ぽつりと呟かれた先生の声は僕に届かなかった。



「寒っ」

秋ともなると、夕方はもう寒いし薄暗い。

かつては小学校へと続いていた道を歩く。およそ二十年前。数々の思い出がそこにはあった。

しかし今は別の人が住んでいたり、リフォームして様変わりしたり、今まさに目の前にある、工事中を示すとても大きなテントに覆われていたりして、どんどんと時代を進んでいく。どんどんと思い出が壊れていく。

さきちゃんと、さきちゃんに、先生に執着する僕を置いて。

さきちゃんが子供の頃に壊して、新しくされた街灯は、今はもうボロボロだ。
明るかったさきちゃんの性格がちょっとずつ暗くなっていったのはあの頃からかもしれない。

さきちゃんは外に出たがらない。

大型バッテリーを詰めたカバンを持たないといけないし、街灯や信号、自動販売機など道にも電気で動くものはいっぱいある。
道行く人もスマホを持っているし、パソコンを気軽に手から提げていたりする。

鋭い風が道ばたの植木を揺らした。
冷たい世の中だ。僕は毒づいた。

いくら暖かい家があったって、それを外から見ている側からすれば寒さが際立つだけだ。

僕は先生の暖かさを思い出した。

僕だけは先生が安心して寄りかかれる熱でありたいと思った。

冬の日はさらに冷え込むだろうな。

先生を抱きしめたらあったかくて気持ちいいだろうな。電流がびりびり走って。先生が腕の中で啼いた光景が蘇る。

気がつけば勃起しかけていた。

僕はつくづくクソ野郎だった。

近々なんらかの壁にぶちあたり脇役としてくたばるだろう。
その時は先生を守って退場する役でありたい。その意志だけは硬かった。





原稿を受け取ると、胡座をかいていた僕の股間に先生がどっかりと座った。むっちりした尻がすっぽりとはまる。すぐさま尻尾が僕のお腹に巻きついた。

秋の晴れた日は薄着で足りる。先日よりも近い先生の熱に股間が反応した。
僕は努めて冷静に首を傾げた。

「先生?」

先生は不満そうに僕を見上げた。

「足。手抜いてた?」

「あー……」

太ももに当てられた手からぴりりとお叱りの電流が流れた。息子がハッとして頭を上げる。やめろ下げとけ。

先生にとって幸せかどうか。それを考えていると、どうしても強い快感に繋がりそうなところに手を出せなかったのだ。

期待が高ければ高いほど、失望は大きくなる。
その失望を僕が先生に押し付けるのは、どうしようもなく怖かったのだ。

「やり直して。一から」先生はキリッとして言った。「大丈夫だから」

大丈夫。その意味は先生が一番良く知っているだろう。
さきちゃんが先生になるまでの時間を僕は知らない。
きっと、ずっと苦しんで来たのだろう。十五年。人生の半分以上を。
その先生が大丈夫と言うのなら。

「わかりました」

僕は前屈みになった先生の、その細い肩に両手を置いた。

前より薄着だからか、肩の形が良く分かる。肩から手は文句を言われていないが、一からとのリクエストなので、ちょっとずらした場所をマッサージすることにした。

「あぐっ」

ぐい、と押すと先生の背中が跳ねた。
そのまま、ぐるぐると一定の力で圧迫する。

「あ、ふ」

ぴしぴしと電流が生まれ、手がじんわりと快感に痺れる。髪の毛がくるくると纏わりつく。

少しずつ圧迫する点を上げていく。
背中から首の付け根。首筋を通って髪の裾まで。手が首に回ったので、ついでに横の筋も軽く押しておく。絡みつく髪が増えた。

「あ゛ーっ、んん゛ー。これ、好きぃ」

先生がおっさんのような声を出す。
やっぱりか。電流が下に誘導されていく分、上の方への刺激が少ないのだ。先生の場合、それはつまり解れにくいってことでもある。

「先生、頭掴んで良いですか?」

「ん? いいけど」

頭をがっしり掴んで獣耳の後ろの頭皮を揉むと、案の定強めに電流が走った。性感の伴わない気持ち良さなら、僕も悩まなくていい。

電流はやたらめったら絡みついてくる髪を通して腕に伝わっている。それは胴体から尻に抜けていて、先生に布数枚で密着している肉棒にはほとんど来ていないのがその証拠だ。ちょうどいいアンテナだった。

「ふおっ!? おーっ? こっ、これ、もっとしてぇ」

先生がたいそうお気に召した。なかなか聞けない声だった。
僕はチンコを添えて頭皮マッサージしたら髪が纏わり付いて気持ちいいだろうななんて考えていた。
貫禄のクソ野郎だった。

電流が収まってきて、髪がするすると流れるようになったところで腕に移行する。
正直、ここからは気が進まない。
きっと先生の身体に電流が流れて、そういう意味で気持ちよくなってしまうだろうから。

先生が眠気の解れたぱっちりとした目で僕を見た。その目はまるで元気だったころのさきちゃんのようで。
大きな目がにっこりと笑う。あの頃のように。

「大丈夫だから」

「……わかりました」

先生が腹を括っているのに俺が腹を括らないのは情けない。
腕に手を添えると、先生の身体にそれだけで電流が走る。肉棒にもしっかり流れている。ここからは我慢の時間になるだろう。

先生の柔らかい皮膚を、俺の指が揉み込む。

「ふっ、あっ」

僕は丹念に先生の腕を揉み尽くした。

そして足に移り、揉みながら獣毛を撫で付けて先生の太ももに手がかかろうかという時だった。
そのことに気がついたのは。
先生のショートパンツの股間が濡れている。

固まった僕を見上げた先生が恥ずかしそうに言った。

「あ……気にしないで。続けて」

とても難しいリクエストだった。
とりあえず、僕は真面目な顔をして膝裏を押し始めた。

それはそれとして僕はクソ野郎なので、息子はしっかりと主張して先生の尻を圧迫していた。
先生が座りづらそうに大きな尻を何度も揺らす。それでまたはっきりと形を持った肉棒は、最終的に歪んだ尻たぶの間にめり込む形で落ち着いた。もう定位置だ。

太ももを揉む。ラフなショートパンツの外側から揉むと、先生がそっとシワを作って短くし、素肌に触れさせる。白い肌が眩しい。
びりびりと痺れる。先生は顔を赤らめて僕を見ていて、明らかに性感を求めていた。絶頂には足りない快感が先生の中を走り回る。

「はぁっ、ひっ、つ、続けてっ」

そのまま付け根まで手をズラすたびに、先生は喘ぎ声をあげながらショートパンツを短くしていく。付け根が液体で濡れている。

「ふっ、んっ、んあっ」

それでもなお先生の身体はピクピク動くだけで、絶頂時の緊張は到底生まれない。

「りょ、りょうくん。こっちも」

先生が僕の名前を呼んだ。腕の中の先生が、小学生だった時のさきちゃんになる。
さきちゃんが足を組み替えて左足を上にする。電流を流されながらのその動作に息子が張り切って存在感を示した。

左足はもう、最初から限界までショートパンツがめくり上げられていて、濡れた白い肌が太ももの付け根にシワを作って僕を誘った。
それでも僕は丁寧に足の先から揉み解して、撫で回して、ゆっくりと手をそこに近づけていく。

長い時間をかけて、ようやく辿り着く。
さっきと変わらない、強烈で、でも絶対に足りない快感が生まれては消えていく。

「りょ、両方いっぺんにっ」

両手で太ももの付け根を押す。もう僕の手はびちゃびちゃで、電流をより感じやすいようになっている。
強い電流が流れるたびに、さきちゃんが嫌々をするように僕に頭を擦り付けた。獣耳がグニグニと潰される。
ついでに尻をむちむちと押し付けられて息子が先端から涙を流したのがわかった。このバカ息子……。

しばらく圧迫して、反応が減ってきたところで僕は手を離した。

「ま、待って。りょうくん」

離れた手をさきちゃんが掴んだ。僕よりも力が強い。僕はふっと手から力を抜いた。

「なに」

「まだ、やめないで」

「でも、さきちゃん」

渋る僕の前で、さきちゃんは。
ショートパンツの中に、ゆっくりと僕の手を差し込んで。

「まっ」

パンツ一枚を隔てて、さきちゃんのアソコがある。さきちゃんの興奮が電流になって、じんじんと僕に、肉棒に伝わる。
手を逸らして、間違っても触れないようにする。

「ここも」さきちゃんが僕を見上げて言う。「触って」

僕は何も言えない。ただ首を振る僕に、さきちゃんが繰り返した。

「いいから、触って。大丈夫だから」

「でも」

「触って」

さきちゃんの大きくて蒼い目が、キラキラと無邪気に僕を見上げている。
紅潮した頬。柔らかそうなピンク色の唇が動いた。
僕は。

「触って」

指を下ろした。

「あっ」

強い電流。指が痺れて触れたまま固定される。さきちゃんの身体が揺れた。僕の首に両手を回してぐりぐりと尻を押し付けてくる。限界が近い。僕はそう感じた。

「あっ、ふっ、も、もっとっ!」

電流の快感と矢鱈に押し付けられる肉感に、僕は射精しないようにするので精一杯だった。

気がつけばさきちゃんの尻尾が僕の手に巻きついていた。

「さきちゃ、まっ」

軽く当たっているだけだった手が強く押し付けられる。

「あ゛っ! ひぃっ! やぁっ!」

更に強い電流の快感。
さきちゃんの腰がぐいぐいと動いて、その分肉棒への圧迫感が強まる。その分手が押し付けられる。

これでさきちゃんが絶頂していないのが信じられなかった。
これで射精していないのは、僕が全力で歯を噛み締めて耐えていたからだ。

さきちゃんを置いて、暖かい家に入るのだけは嫌だったのだ。



さきちゃんが満足したのかため息をついて立ち上がる。

僕は感動していた。バカ息子。お前案外やるじゃねえか。息子はだらだらと涙を流していたのかやたらパンツが気持ち悪いが、射精した感覚はなかった。

「は、はは」笑みが零れた。食いしばっていた歯が開放される。

顔を上げると、さきちゃんがやきもきと不満を全身で表現しながら僕を指差して言った。

「あーもうっ! りょうくんは女心が分かってない!! というか魔物娘心!! 今日はもう帰って! またね!」

「???」

僕は突然よくわからない感情に包まれた。
そしてよくわからないままに笑顔のさきちゃんとバイバイと手を振りあって部屋を出て、よくわからないままに歩き始めた。

かつては小学校へと続いていた道を歩く。
二十年前の数々の思い出も、今は脳が反芻を拒んだ。

今は別の人が住んでいたり、リフォームして様変わりしたり、今まさに目の前にある、工事中を示すとても大きなテントに覆われていたりしている物件も。

きっとその全てを置き去りにしてさきちゃんは時代をフっとばしていったのだ。

さきちゃんに、先生に執着する僕も置き去りにされてしまった気がする。

今はただただ、濡れたパンツが冷たかった。

あんなに晴れていた空も、雲が出ていて今にも雨が降りそうだ。

女心と秋の空。僕にはわからないものだ。ちゃんと天気予報を見ておこう。

いや、なんで?





それはそれとして僕は先生の部屋へと無邪気に足を進めていた。実を言うと、僕は先生が大好きなので大抵のことは笑って許せる。

笑う理由はそれだけではない。ようやく発電室を利用する目処が立ったのだ。

基本的に雷獣は絶頂してはいけないことになっているが、例外となる場所がある。その一つが発電所の中にある、発電室だ。

そういう場所で絶頂を繰り返し雷獣としての経験を積むと、電流をコントロールできるようになっていく。そうなれば日常生活でも問題なくなる。

先生は発電所までの道中が億劫なのか、以前に勧めた時も力なく首を振るばかりでダメだった。しかし、今回そこを解決することができたのだ。

解決の鍵はトラックだ。
中に導電体のキューブと大量のバッテリーを載せてもらった。
電力会社に何度も相談して、なんとか用意してもらえたものだ。なんせ合計価格がクソ高い。僕個人でどうにかなるレベルじゃなかった。

代わりにとんでもない発電量を請求されたが、分割払いでもいいらしいので問題ない。僕は先生と何度も通うつもりでいるのだ。

先生の住むアパートが見えた。前にトラックが止まっている。

「すいませんわざわざ。今日はよろしくお願いします」

おそらく運転手であろうと声をかけると、トラックにもたれ掛かっていた雷獣のお姉さんがこちらに気が付いた。
彼女はニカッと笑う。

「いいのよ気にしないで。噂の子がどんな子か興味あったし」

「噂の子?」

僕が伝えたのは、道路に出るのを怖がっていてまだ絶頂経験がないってことだけだ。
雷獣さんがにやりと口の端を上げた。

「ちょっとね。色々あるの」



答えてくれない雷獣さんを尻目に、僕は首を傾げながら先生の部屋へと向かった。
もしかしたら雷獣って種族には、僕によくわからないことを言う使命でもあるのかもしれない。

先生は部屋にいた。外に出ようと言うと、先生はふるふると首を振った。

「やだ」

「ちゃんと車用意してますから」

先生はぶるりと身体を震わせた。

「車も壊れるから」

「大丈夫なやつですから。発電所行きましょう」

先生はきょとんと顔を上げた。

「発電所? なんで?」

「なんでってそりゃ」

先生が絶頂するためと告げるのはセクハラになるのか? 僕は自問自答した。
十中八九セクハラだろう。下手したら事案だ。

先生の蒼い目が悪戯っぽく細められた。端が少しつり上がった唇がぷるりと動く。

「なんで?」

セクハラされているのは僕だった。
セクハラする前にセクハラ返しをされていた。
僕はキリっとした顔で言った。

「先生のためです」

「やだ」

先生はぷいっと顔を逸らした。
僕はため息をついて、先生を抱き上げる。

「やだぁ」

そんなことを言いながらも先生は僕の身体にしっかりと尻尾を回して身体を擦り付ける。エロい。ぴりぴりした電流の刺激に息子がテントを設営した。

目の前で先生の赤らんだ顔がにへらと笑う。

「りょうくん、今日は部屋でだらだらいちゃいちゃしよ? ね?」

先生じゃなくさきちゃんだった。

「ダメ」

僕はすげなく断った。
僕はさきちゃんを置いて暖かい家に入りたくないが、そろそろ僕の息子も限界である。僕は我慢強いと自認しているが、ふとクソ野郎の面が出てもおかしくないやつだとも知っている。
となると、さきちゃんと一緒に行くしかないのだ。

「さきちゃん」

「やなの」

「着いたらエッチしようね」

「……じゃあ行く」

そういうことになった。
ちょろいぜ。



僕の胸元に顔を押し付けるさきちゃんを抱き上げたまま、部屋を出てトラックに向かう。
雷獣さんが困ったように言った。

「あれ? えと、15歳未満は使えないんだけど……」

その子じゃないよね、と雷獣さんはきょろきょろと辺りを見回す。
僕は言った。

「大丈夫です。成人してます」

「えっ嘘ぉっ!? じゃあ、こ、この子があの!? どう見ても10歳行ってないガチペドじゃん! 魔女結社とかアレ系!?」

雷獣さんはテンションを上げて可愛い可愛いと連呼した。わかる。
そしてさきちゃんと目を合わせて言う。

「おにーさんがロリコンで良かったねぇー」

「うん」

さきちゃんが恥ずかしそうに顔を僕の胸に押し付ける。可愛い。こんなの見たら誰でもロリコンになる可愛さだ。
僕はもうロリコンなのでいくら見てもいい。

「ヤバ。ガチ可愛い。娘にしたいわ。どうやって育てたの?」

「さぁ?」

可愛いのには同意だ。だがさきちゃんは一体どうやって育ったんだろうな。僕は重要なところを知らない。
雷獣さんがさきちゃんにそっと言った。言い方が完全に幼児に対するものだ。

「また今度でいいから、どうやったか教えてくれるかなぁ?」

「わかった」

さきちゃんが顔を埋めたまま言う。

僕らは雷獣さんに急かされるように、トラックの中に積まれた導電体キューブに乗り込んだ。

狭いし暗い。
青白い電流が目立ちポワポワとさきちゃんの輪郭を浮かび上がらせる。その一部が僕を伝い消える。問題なく電流が流れていた。
居心地はとても良いとは言えないが、僕が下敷きになっていればさきちゃんが少しは楽だろう。

キューブの扉を持った雷獣さんが言った。

「中は真っ暗になるけど、雷獣なら問題無いよね。じゃ、ごゆっくり」

キューブの扉が閉まる。

狭い空間の中で、さきちゃんが僕の胴の上で、腕の中で丸くなる。可愛くて愛しい顔が目の前にある。
さきちゃんの輪郭だけが青白く光っている。片っ端から僕に流れてくるが、その頃にはまた輪郭が浮かび上がっている。

さきちゃんの蒼い目がぱっちりと僕を見る。僕の頬に、さきちゃんの細い指が添えられた。電流が伝う。
少しだけ強まった息遣いが聞こえる。電流が強まる。流れ去っても、また流れてくる。
サラサラとした髪と、ぴんと立った獣耳が。紅潮した頬が。見るからに柔らかそうな、薄く開かれた唇が。
ゆっくりと近づいてくる。
蒼い瞳が閉じられて。睫毛までがはっきり見えた。

ファーストキスは、痺れるようなレモンの味がした。
強い電流が四方八方に散る。
さきちゃんに触れているところ以外の感覚が消える。
柔らかい唇の感触と、そこから伝わった電流だけが僕の脳に刻まれた。
さきちゃんをぎゅっと抱きしめると、さきちゃんの熱と電流が感じられた。

二十年の初恋が実ったという実感が幸せを生む。その幸せに僕は包まれていた。さきちゃんと触れる感覚が、流れる電流が僕の全てだった。

涙が出ていた。涙を伝った電流が目元に流れて涙腺を緩ませる。
滲む視界の中で、さきちゃんも目の端から涙を垂らしていた。
さきちゃんも同じ幸せに包まれていればいいな。僕はそれだけを願ってさきちゃんを抱きしめていた。

何も知らない子供のように。
僕らは唇の先だけでキスをし続けて、二十年の時を埋めることに没頭した。



「お二方ー! 着きましたよ……えっ……えと……」

元気よくキューブの扉を開けた雷獣さんが困惑する。僕らが涙を流しながら唇を重ねているのを見たのだ。

さきちゃんが顔を離す。そして唇をぺろりと妖艶に舐めた。

「ここからは、大人の時間だね」

そう言って、僕を置いてトラックを出て行く。
呆気に取られていた雷獣さんが僕に尋ねる。

「ウソ、エッロ……ねえ、どんなドラマがあったの?」

僕は言った。

「二十年の初恋が実ったんですよ。お互いに」

ここからは大人の時間だ。
もう、取り残された時代にさきちゃんはいない。
僕はトラックを降り、さきちゃんの後をゆっくりと追いかけた。

雷獣さんが言った。というか叫んだ。魂の叫びだった。

「……二十年の初恋、してぇーなぁー!!」

発電室はもう目の前だ。僕は足を進めた。



発電室に入ると、更衣室がある。
ここで裸になるのだ。雑に投げ捨てられていたさきちゃんの服を畳んで、僕も服を脱ぐ。

既に肉棒はバキバキだ。さきちゃんの胴体の半分行かないくらいか。
さきちゃんの服に当てて確かめる。うん。半分行ってるな。早希ちゃんのお尻は大きいので、感覚が掴めなくなることがある。

僕は早希ちゃんのパンツの匂いを嗅ぎながら覚悟を固めた。
自他共に認めるクソ野郎だが、やらないやつは男じゃないだろう。

ここまで来れば、急ぐことはない。発電室の利用の時間制限は三日間もある。

僕はゆっくりと扉を開ける。

暗い部屋。僕はその壁が、床が絶縁材で出来ていることを知っている。

その部屋の中に、いつになくパチパチと電気を迸らせる先生が、青白い光を纏って立っていた。

「さきちゃん」僕は尋ねた。「どう? 電気は変に流れてない?」

さきちゃんは戸惑いながら言った。

「うん。初めての感覚で、ちょっと慣れないかも」

さきちゃんはなだらかなおっぱいも、白く柔らかそうなお腹も、そこにある妙に卑猥に感じるおへそも隠していない。

そしてその下にある、いやらしく愛液を垂らす、ぴったりと閉じた筋も隠していない。

僕はじわじわと纏う電気を大きくしているさきちゃんに言った。

「じゃあ、エッチしよっか」

「ダメ」さきちゃんは僕を止めた。「待って」

その前に言うことがあるでしょ、と。

確かにそうだ。僕は頷いた。

さきちゃん。

何? りょうくん。

好きだ。結婚してください。

ばちぃ、とさきちゃんの纏った電気が一気に広がった。
ギリギリ僕には届いていない。
だが、僕が一歩踏み出せば、その電気に身体を侵されるだろう。

さきちゃんが細い腕で身体を抱きしめて言葉を絞り出す。

「ぁっ! これっ! ぜ、絶頂っ!? すご、ひぃっ!」

僕は聞こえてるかもわからないさきちゃんに言った。

「じゃあ、さきちゃん。エッチしよっか」

僕の身体が青白い稲光に呑まれた。



次の瞬間、さきちゃんが大きなお尻を僕の胸元に乗せて、僕の顔を見ていた。びりびりと電流が伝わってくる。

「あ、起きた」

「え? あれ?」

さきちゃんはころころと笑った。

「りょうくんね、失神したんだよ。精液だらだら流しながら」

僕は溜め込んだ精液が無駄に消費されたことに落ち込んだ。
その様子をみてさきちゃんが淫らに笑う。

「いい匂いだったよ」続ける。「安心して? りょうくんはもうインキュバスになってるから、これからは私の絶頂にも耐えられるようになっていくからね。それにいっぱい射精できる」

「えっ」

聞いてない。僕の頬をさきちゃんがつつく。

「なんで気付いてないのかな。前も、精液出してもらおうとしてたのに耐えちゃうし。普通なら電流無くても、射精してもおかしくなかったんだよ?」

「えっ」

さきちゃんは僕の眉間にびしっと指を突きつけた。そして言う。というか怒る。

好きな人が気持ち良かったらこっちも気持ちいいの! わかった!?

僕はおずおずと頷いた。

ところで、僕もさきちゃんも全裸なので、直接肌が触れ合っているわけで。
さきちゃんが垂らした愛液は電気を帯びてて気持ちよくて、僕は完全に勃起していたのだ。

それにさきちゃんが気付いた。揺れていた尻尾が当たってしまったのだ。その際に出そうになったのは秘密だ。
"先生"の時のようなジト目で僕を見る。

「りょう。ムードは?」

このちょっと怒ったさきちゃんも好きだな。
僕は心からそう思い、さきちゃんを抱き寄せてキスをした。

小さな口に、僕の舌が割って入る。
ぴりぴりとした唾液と、反射的に応えようとする小さな舌の柔らかさが気持ちいい。

少し遅れて電流が走った。
今度は問題なく耐えられる。ただ、失神を耐えられるだけで射精を耐えられるわけじゃないというのがポイントだ。

しかしさきちゃんは気付いていないのでセーフだ。

一心不乱に僕の口を貪ろうとしているけど、舌が短くて届かないのが可愛い。
僕が舌を出すと、それに舌を絡めて電流を流してくる。
僕はさきちゃんの絶頂を一緒に感じながら、その甘い舌を、歯を、口蓋を貪り尽くした。

荒く息をしているさきちゃんが落ち着くまでの間に、シャワーで精液を排水口に流す。
さきちゃんの足元に水を掛けると、さきちゃんの電流を受けた水が流れていく。

さきちゃんが落ち着いた。

「りょう」

「何?」

半分"先生"が混ざった状態で名前を呼ばれると、それだけで僕は背筋が震える。
さきちゃんは言った。

「アレ、してほしい」

いつものように、いつもと違うことをするのだ。
それがさきちゃんの覚悟であることは、その目から見て取れた。

その場に胡座をかく。肉棒が屹立している。すぐに定位置に着くだろうから待ってろよ。

「さきちゃん」僕はさきちゃんを呼んだ。

「早希、って呼んで」さきちゃんは言う。「これからは、私もりょうって呼ぶから」

それが、僕たちの時代が、空白の二十年が繋がった証拠だった。
もう子供じゃないのだ。もう子供じゃいられない。
僕は言った。

「早希、座って」

「ん」

早希が僕の上で胡座をかく。尻尾を僕に巻きつけて、何度も執拗に大きな尻を押し付けて肉棒を刺激する。
びりびりと電流が流れる。早希も興奮しているのだ。
僕は早希の尻に射精した。そのことに満足した早希が、尻たぶをわざわざ持ち上げて剛直を重厚に挟み込むように整える。

「じゃあ、頭からやって」

「ん」

そういえば、獣耳はあんまり責めたことはなかった。
僕はいい機会だとばかりにその柔らかな獣耳を揉んだ。くすぐったい電流が流れる。早希の感覚が電流になって僕に流れてくる。

早希の気持ち良さがわかる。
獣耳の内側に行くほど、電流の気持ち良さが増えていく。

「あっ、ふぁっ」

気持ち良さを追い求める。
どんどん深く指が入る。中で少し動かすたびに、早希が気持ちよくなる。僕も気持ち良くなって、早希の尻たぶが溢れた精液に塗れる。

魔物娘は生身の人間に傷つけられるほどヤワじゃない。
ぐりぐりと指を推し進めると、中指と薬指の先端が奥に当たった。
早希が絶頂する。僕も絶頂した。肉棒が遠慮なく精を尻尾に放つ。僕を締め付けていた尻尾が少し緩んだ。
そのまま何度か奥の壁を指で擦って手を抜く。
絶頂していた早希が振り向いて言う。

「つ、次。おっぱい触ってほしい」

僕はそっとなだらかなおっぱいに手を添えた。
限りなく平らだが、無いわけではない。余計なことを考えた僕の太ももに、ばちんと電流が流された。気持ちいい。

くるくると早希の乳首の周りを、僕の指がくすぐる。乳首にはまだ触れない。

「早希」僕は早希を見下ろして尋ねてみた。「どう?」

早希は切ない顔で僕を見上げる。

「意地悪」

「早希が質問に答えてくれたら触ってあげよう」

僕は意地悪した。

「オナニーしないってホント?」

「……ヤマネ?」

「うん」

うーん、と考えていた早希が、ゆっくり顔を上げてにっこりと笑った。

「ホントだよ。おっぱいでも、おまんこでも一人で気持ち良くなったことない。りょう専用って決めてたから」

とんでもない答えに僕は、思考停止してとりあえず乳首を手のひらで潰した。

「ひぎゃっ!? りっ、りょう! なんかっ、言ってっ!」

「ああ、ゴメン」

僕は胸をついついと指で弄りながら、秘密を打ち明けた。

「僕は、早希以外でオナニーしたことないよ」

「へっ?」

「ずっと、ちっちゃい早希のおっきいお尻のこと考えてた」

「ひっ、うゃあっ!?」

早希がイッた。僕もイく。
僕が長年夢見てきた以上に、早希の尻が僕で汚れていく。早希の背中が僕に染まっていく。

「ず、ズルい! そんなのっ、イっちゃ!」

早希はまたイッた。僕の目の前がチカチカ白い光に包まれる。僕は射精した。
連続絶頂。溜まった電気が早希のコントロール出来る範囲を超えつつあるのだ。きっとまた絶頂するだろう。

僕は早希に言った。

「お尻、手でちんぽに押し付けて」

早希はその言葉にも絶頂しながら、僕の言う通りにした。剛直の半ばが完全に尻に包まれる。

僕は乳首を捻って、早希がイッている間に下腹部に手を伸ばした。
へその下、早希の秘裂に指を下ろす。

「ぎぁっ! はっ! も、もうっ!」

今度はパンツもない。
手のひらを当てると、瞬く間に愛液が広がる。
早希がイく。早希の背が、尻尾が僕で染まる。
強い電流が愛液を通って伝わる。

「りょうっ! キしゅ、 キスしてっ!」

顎を上げた早希に、上から口を合わせる。
くちくちと僕の指が膣口を弄る。
僕の手が胸と腹を撫でる。
早希は尻を揉み込むように怒張に押し付けている。
早希も僕も、イッてない時間はなかった。



はっと目が醒めると、僕は床に寝かされていた。
早希が僕の太ももの上に、女の子座りしている。
早希の太ももの間には肉棒が生えていて、それは早希のへそを超えて更に上に達していて、胴の半分以上を示していた。

僕は尋ねた。

「入るの?」

早希は無邪気に笑った。

「入れるの。私はそのためにいるし、りょうもそのためにいるんだから」

僕が不安そうな顔をしているのを見ながら、早希は艶やかな笑みを浮かべて立ち上がった。

「全部入るとこ、見てて」

先端がくちりと噛み合う。
早希の媚肉はだらだらと愛液を垂らし、愛しい肉棒が奥まで入れるように口を開いた。

「私が、ちゃんと子供産んであげるから」

早希が身体を下げた。
電流が肉棒の一点に集中し、凄まじい快楽が生まれる。
ふやけた処女膜が破れる。蕩け切っていて血も流れない。

「一番奥で、一杯出して」

早希が脚を曲げるたびに、じわじわと肉棒に痛痒さが広がっていく。強い電流だが、絶頂の時ほどではない。
早希も耐えているのだ。
僕も耐えていた。

早希が脚を曲げ切っても、一番奥までは入っていなかった。いや、一番奥に達したために、肉棒が余っているのだ。
早希が脚を浮かせても、その全てを肉棒が支える。
早希は言った。

「諦めなきゃしょうがないかぁ」

「流石に、ここまでだな」

僕の言葉に、早希は不思議そうに首を傾げた。

「ん? 違うよ、諦めるのは」

早希が胸に手を当てる。おそらく今、子宮があるあたりだ。魔物娘の膣ほど不思議なものはないな、と僕は思った。
ばちり、と青白く電流が走った。

「赤ちゃん専用の部屋を、りょうと兼用にするって話」

早希が電流を流すたびに、子宮が弛緩して広がっていくのがわかる。亀頭に伝わった電流が肉棒を通して僕まで伝わる。

「りょうが好きって言った私のお尻、思いっきり押し付けてあげたいから」

子宮が緩む。ずるり、と勢いよく亀頭が入り込んだ。
子宮の先を目指すかのように穂先が壁を抉る。

早希が僕の顔に笑いかけると、ぽったん、と大きな尻が僕の太ももに落ちた。形が崩れる。

「ーーーーッ!」

早希が声なくイッた。僕もイく。一瞬、全ての音が消えた気がした。

ぷしり、と潮が飛ぶ。早希が電流に包まれる。僕が電流に呑まれる。僕が全て早希ちゃんに包まれたような感覚がした。

弛緩した子宮が僕の精液に押し広げられる。
ただ、長く伸びた膣の締め付けで精液は一切外に出てこない。
精液がある場所を示すかのように、青い光がばちばちと纏わりついていた。

早希の心臓の鼓動が剛直に響いてそれだけで気持ちいい。

ふぅっと息を吐いた早希が身体を捻る。肉棒にねちっこく纏わりつく媚肉が、こそげ落とすように肉棒を嬲る。その衝撃で僕は射精して、つられて早希が電流を放つ。

「もぅっ! りょうったら」

口ではそう言いながらも、早希は嬉しそうに笑った。

大きな尻をこちらに向けた早希が、肩越しにこちらを見た。尻尾がゆらゆらと浮いて、尻がよく見えるようにしている。

手でたぽたぽと尻たぶを持ち上げて、早希が蠱惑的に笑う。

「触ってもいいんだよ?」

長年想像の中では散々嬲り倒してきた早希の尻に、重たくも柔らかいそれに手を伸ばす。

やわやわと揉むと、早希が甘える犬のような声で啼いた。

「も、もっと激しく、ふぅっ、揉むかと思った」

「早希も気持ちいいでしょ?」

「んっ、気持ちっ、はっ、いいけどぉ」

僕が早希に挿入している間は、電流の逃げ場が無いのだ。
早希が絶頂すると、僕がそれに感電して射精する。精液に溜まった電流が早希に戻って、それがまた僕に来る。

だから、もう何をしても気持ちいい。

僕が上体を起こすと、尻尾が甘えるように腕に巻きついてくる。

「シャワー浴びよっか」

僕は提案した。
早希が不思議そうに首を傾げた。

「それはこれから分かるよ」

僕は、早希を貫いたまま立ち上がった。
我ながら恐ろしいもので、肉棒は完全に早希を支えてみせた。
早希との間で潰れたデカ尻が気持ちいい。
尻尾が身体に巻きついて、なんとか姿勢を正そうとする。
僕が早希の首に腕を回すと、縋るように早希が手を添えた。

「ほっ、お゛っ、はっ」

僕が一歩歩くごとに、僕らの帯電量が増えていく。
とうとう精液が膣から溢れて、ぼたぼたと床に溢れる。
早希の膣肉が別れを惜しむようにきゅうきゅう締め付け、それでまた早希が絶頂して僕に射精させる。

ようやくシャワーの前まで来た時、早希はもう白目を向いていた。
それでも早希の尻尾はぱたぱたしているし、腕に縋り付く手は離れない。

シャワーを浴びていると、早希が正気を取り戻した。

「これ、好きかもー」

流れ落ちるぬるま湯が、僕らの帯電量を削り落としていく。
僕らは尻尾の付け根をくすぐったり腹越しに肉棒を揉んだりして発電していたが、徐々に帯電量は減っていく。

「あっ」

早希が何かに気付いたように胸に手を当てる。

帯電させて広げていた子宮が縮む。
伸びた膣が縮もうとして肉棒に密着する。
容量が減って精液が漏れ出る。
密着した子宮が電流を放つ。
それがまた流れ出ていく。
子宮口がカリに引っかかって亀頭の密着感が増す。
肉棒が完全に早希に密着している。

身体に溜まっていた電気が流れ切った早希が悲しい顔をした。

「りょうの子供たちが……」

僕は笑った。すぐにそんなこと言ってられなくなるよと。

僕は早希の脇腹を掴んだ。ここもぷにぷにしていて気持ちいい。
察した早希が焦って僕を止める。でももう遅い。

「あ゛あ゛ああっ!!」

密着した早希の媚肉を削りながらずるずると肉棒を入り口まで引き抜くと、早希が絶頂してばりばりと電流を流す。それの影響で子宮まで緩む。
僕は子供との兼用部屋になった子宮まで一気に剛直を突き入れて射精した。

「ーーーーッ!!」

目の眩むような射精。絶頂。
文字通り地に足の着いていない早希はそれをモロに受ける。
そしてその帯電もすぐに洗い流され、また僕らが密着する。

「ま、まっへ……」

やだね。僕は肉棒をゆっくりとピストンした。これぞセックスだ。
その度に早希は絶頂とクールダウンを繰り返して、とうとうだらりと力が抜ける。それでも肉棒が支える。

繋がったまま早希を床のマットに下ろして、うつ伏せの背を上から押さえつけたまま何度かピストンしていると、慣れてきたのか早希がぶるりと力を取り戻した。

「りょう、私っ、これすきぃっ」

僕も好きだ。打ち付けるたびに早希の大きな尻が揺れるのが心地いい。
更に密着感の増した膣肉が気持ちいい。
突っ込むたびに流れる電流が気持ちいい。
纏わりつく髪が気持ちいい。
僕は調子に乗って何度も早希をイかせた。

早希が叫ぶ。

「りょうっ! すきっ!」

僕は獣耳に向けて囁く。ぴくぴくと震える。

「早希。好きだ」

「もっとっ」

「愛してる」

きゅぅぅと締め付けが激しくなり、肉棒が抜けなくなる。
早希が切羽詰まったように言う。

「抜かないでっ、子宮に、精液ちょーだいっ! りょうの、子供を産みたいのっ!」

僕はその言葉を聞いて、引き抜きかけていた肉棒を戻して、そこで射精した。

「えへっ、もっとちょーだい」

にへらと笑った早希が可愛すぎて、僕は早希を抱え上げてシャワーから離れた。
そして何度かピストンして発電した時、早希が言った。

「もうっ、りょうったらぁ。油断しちゃダメ」

視界が反転する。
寝転んだ僕の上に、早希が背を向けて座っている。当然繋がったままだ。
あれ? 僕は首を傾げた。

「じゃあ、またずーっと、気持ちよくなろうねっ」

早希は手元に作り出した電流を、自分の胸に押し当てた。肉棒に衝撃走る。

僕が射精し、早希が絶頂し、僕がその衝撃で射精する。
僕と早希の間で電流がぐるぐると回る。
魅力的なお尻がぽったんぽったん上下する。

僕は、早希が電流のコントロール上手くなって良かった、なんてことを失神しそうな頭で考えていた。





まさか一回で発電量が足りるとは思っていなかった。それどころか、大幅にオーバーし、早希は表彰までされる始末だった。
僕らの三日間で、日本中の電気消費量の半年分にもなったらしい。

そのおかげか、実は結構なお偉いさんだった雷獣さんが、こっそりと教えてくれた。

早希のアパート近くの馬鹿でかいテント。あれは新作の発電室らしく、テスターとして早希がその専用使用者になったらしい。
というか、その申し出をしてたから噂になってたとか。
その発電室の中には居住空間もあるので、そこで生活していけるそうだ。

やっぱり早希は主人公だったんだな。壁を越えるために、僕の想像もつかない手段を取っていた。
僕が勝手に脇役扱いしてたのは、僕がその時に壁の手前にいたから、一緒にいるものだと思ってたんだろうな。

僕はちょっと情けなくなって、ちょっとほっとしていた。僕の中の先生は、救いがなさすぎたから。

アパートを引き払うときに、早希はボソッと言った。

「ここもまた、潰れるのかなぁ」

早希が住んでいたこの部屋からの景色も、長い時間をかけて様変わりしたことだろう。
僕はなんでもないことのように言った。

「それでも、また何かしら建つでしょ」

「そうだけど」

「何も変わらないよりは、ずっといい」

新しい変化は不安だけど、僕は変わらないものにずっと囚われていて。

偶然、そういう壁を越えて幸せになってしまった僕たちくらいは、この先も幸せに暮らしていかないといけないんだと思う。

早希は困った顔で笑った。

なにそれ。

僕は大げさに手を広げた。

ちょっとかっこいいこと言ってみたかっただけだよ。

でも。

早希が首を傾げた。

今度は、主人公が幸せになったあとの物語が読みたいかな。

幸せになってそこで終わり、ってのは寂しいってわかったから。

早希はそっとお腹に手を当てて。
そうだね、と笑った。

夕焼けに照らされたその顔は優しさに満ち溢れていて。

僕はそれを見て、エロゲのスチルっぽいな、とか思っていた。
最後までクソ野郎だった。

でもいいのだ。きっとこれは、トゥルーエンドだから。
19/07/31 07:18更新 / けむり

■作者メッセージ
デカ尻合法ロリ雷獣とひたすら発電して金もらう生活したいだけの人生だった

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