連載小説
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ジパングという国で山羊たちは
只今、ジパングに向かい飛行中…

ジパングにつく手前、シャレムは魔女に渡された

「ジパング観光ブック ウェストノース編 R18」を眺めていた

いくつかはカキツバタから聞いていた話や

自分が教皇になる前の時代の話と似ていたが

どうやら自分の知らないうちにジパングという国も大きく変わっていたようである

ジパングという国は大戦後、地方ごとに自治が組まれ

ウェストノース地方は北東の方に位置するらしい

元々ウェストノース地方は、北には魔物娘が、南には人間が住み着いており

大戦時は、それはそれはお盛んだったらしい

しかし大戦後は交流都市が北寄りに作られたため

今はそこがウェストノース最大の繁華街となっているそうだ

人間側が勝っていたらもっと南寄りだったとかの学説があるが

それは読み飛ばした

そして、その繁華街に建っているサバトこそ

「第28号のウェストノース支部か」

できた当初は割と忙しい時期で、代理に行ってもらうことにしたため

土地柄どころか支部長すら知らない

「いや、知らないわけではないんだぞ…顔は覚えている」

写真でな

しかし、今回はそれが好機となっていると考えられる

「つまり、お忍びでってやつだ」

お忍び旅行か、いやぁ名前がいい

お忍び旅行…

「誰も自分のことを知らないわけだからなあ…ぐふふ」

ぽわんぽわんぽわ〜ん…

『げへへ…幼女ちゃん服脱げよ…』

『キャー!誰か助けて−!』←こっち私

『ぐああ!てめえ!何するんだ!』

『その子を…離したまえ…』

『お、お兄ちゃん…!』



「おお〜いいぞぉこれ。私がちゃんと幼女やってる…げへへ…」

っと妄想もそろそろ止めて、支部の方にも連絡を入れておかねば

勝手に行っても支部長いなかったら困るし

とりあえず直接会って、お忍びで回れるルートでも教えてもらいたいし

そんなこんなで、シャレムは支部長のタケマルに魔力を飛ばしてみた

『タケマルです!もしもし、バフォメット様ですか!』

すぐに帰ってきた

「お、おう…そうだけど?」

『お怪我はありませんか!?途中襲われたりとか?』

「え?いや、何もないけど…」

『こちらから飛ばそうと思ったのですが、とても繋がりにくくて…』

「あ、そうだったの」

結構な速さで飛んでいるからかなぁ

『『顔は覚えてる』とか聞こえたので、だれかとお話しされているのか』

「」

『途中『キャー!』とか『げへへ…』ってのが聞こえたので襲われているのかと』

「…」

『…バフォメット様?返事がありませんが大丈夫ですか!?』

「あ…」

『バフォメット様!?』

「あぁ、うん…そう、そう!実は襲われていた!でもな!そっちの迷惑にかけたくないなあ
 
 って思って、ねえ〜!」

『…』

「…ね?」

『バフォメット様…』

「ごめんって」

『私…感動いたしました…!まだ会ってもいない私などにお気遣いして頂けるその御心…!

 今わたくし…猛烈に感動しております!』

「あ…ああ、そう」

『すいません…感動して、涙が…!少し切ります!!』

泣き声を含ませながら、タケマルは強引に魔力を切った

「…」

仕方ねえよなぁ…

「仕方ねえよ…」

独身だからなぁ…

「独り言ぐらい勝手に出てくるよなぁ…はぁ…」

はぁ…

「死にたい」

心の声が口に出る

独身教皇のボッチ歴は伊達ではなかった

〜〜〜

タケマルとの魔力がまた繋がった

『すいません、お見苦しいところを伝えてしまいました』

「いいよ、お互い様だし」

『え?そうでしたか?』

「違うよ」

『え、あぁ、はい』

「で、早速つながったところ悪いんだけど」

『「はい」』

「後ろいるよ」

「へ?」

タケマルが振り向くと、シャレムがそこに立っていた

「うわあ!ば、バフォメット様!」

「…やっぱバフォメットにバフォメットって呼ばれるのは、なんか違和感あるなあ」

サバトの教皇として勤めることができるのはバフォメットであるが

支部長もまた、バフォメットでなければならない

タケマルもまた、力ある魔物娘

バフォメットであった

「い、いやでも、教皇を冠するあなた様は、やはりバフォメットと呼ばれるべき

 存在でありまして」

「固いなあ…もっとラフでいいのに」

「…すいません、それはちょっと」

「まあいっか」

これもいつも通りのことだ、慣れっこである

それよりもだ

「実は今回、早く来たのには訳があってさ」

「は、はい!」

このままいうのも芸がない、少しもったいぶってみよう

「『設立10年祭』までって、まだ時間あるよね?」

「え、えぇ…あと1ヶ月以上はありますが?」

「そう…そこで私は、このジパングを堪能するためにあえて早く来たんだ」

ここで少し間を空ける…

「…どう」

「おし」

…被った

ごめん、間をとりすぎたよね

場の空気が更に冷える前に、私はいうことにした

「お忍びで、ね」

「お忍び…で?」

「そう、お忍びで」

「お忍び…で?」

タケマルが面を食らった顔をしている

少し悪戯であったかもしれない

突然来たと思ったらお忍びで旅行したいと言ってくるのだ

私も悪い上司になったものだ

「えっと…」

「それで、お忍びで回れるお店とかを教えてもらえるといいんだけど」

そう、教えてくれるだけでいい

そのあとの流れは、私の頭の中で組まれている『お兄ちゃん探すぞの旅 

ウェストノース編』に任せるだけでいいのだから

だから、さ!早く!

「バフォメット様は…外の様子をご覧になられ、て?」

タケマルが拙い声で伺ってくる

「うん?ああ、ここに入るのに最速で侵入したからまだ観てないな」

すると、タケマルがおもむろにテレビを付け出した

『えぇ〜バフォメット様、ですか…素晴らしいですよねぇ〜
 
 そんな方が来られるなんて、ホントありがたいですよぉ』

『一度でいいから、やっぱ会ってみたいですよねえ』

『このお店では「設立10年祭」に合わせて、バフォメット様
 
 グッズが売られていましたが、もう無くなっております!』

『バフォメット様のことを考えると、幸せになります』

『僕もそうです』



「えっと」

すると、タケマルがおもむろに刃物を腹に突き付けていた

「ちょ!ちょっと待て!待て待て!」

「すいません!不肖タケマル…!バフォメット様のご意向を察する力が
 
 足りておらずこんな事態に!切腹致します!」

「それが切腹か!見たいけど!でも待って!だめだから!

 せめて説明してからにして!だめだけど!」

〜〜〜〜

タケマルから刃物を取り上げ落ち着かせること小一時間

なんとか状況を説明してもらえるようにはなった

「それで、本部から先に来ることが伝えられていた、と」

「はい」

「それで、それをもう先に流してしまった、と」

「はい」

「…うん、私もまさかここまで歓迎されているとは思わなんだ」

「すいません…それで、その」

「うん…」

これではお忍びどころか、落ち着いてジパングを見て回ることもできないだろう

正直、しょげた

「これからのことに、なるんですけど」

「うん、分かってるよ…公務でしょ?」

「あ、そのこともあるんですけど、それは4月まで大丈夫かと思います」

「あ、そうなの」

てっきり、すぐしてくれって言われると思った

「ここらへんでお忍びってのは、難しいと思うのです…ですが」

「ですが?」

「実は、繁華街となっているのはこの辺あたりで、ちょっと出ると

 田舎が広がっているんですよね」

「へー、そうなんだ」

「はい、それでですね、これなんですが」

タケマルが取り出したのは、ウェストノースの地図であった

「今いるのはこの辺なのですが」

「うん」

「ここから北に行くと、山脈が広がっているのですが」

「うん」

「温泉がたくさんあるそうなんです、よね」

「…うん?温泉?」

「はい、それも」

「それも?」

「秘湯が、たくさんあるそうで」

「秘湯…秘湯?」

秘湯って…あっ、ガイドブックにもあったあれか

「ああ、あれか…でもガイドブックにも結構」

「ああ、見られていたのですね…でも、あれってほんの一部なんです」

「え、そうなの?」

「はい、うちに何人か温泉マニアがいるのでよく聞くのですが

 それでも、マニアでも知らないのも多いのだとか…つまり」

「つまり?」

「『秘湯巡り』などは、いかがでしょうか?」

「秘湯巡り…かぁ」

温泉、それはあったかいお湯に肩まで浸かり、疲れをとるもの

秘湯、それは隠された温泉

ガイドブックにもあったが、そんな情報まではなかった

「必要でしたら、護衛やマニアを連れて行ってくださっても構いませんので

 これでしたら、お忍びでも、回れるんじゃないかと」

「…」

「秘湯のあるあたりは、大体山の方だと聞きますし

 そのあたりは田舎ばかりで、まだ情報が伝わってないと思います」

「…なあ」

「はい?」

「いいなあ、それ」

山羊は独り、ふけっていた

日々の疲れでも癒しながら、ぶらりと散歩をしながら…

『げへへ…幼女ちゃん服脱げよ…』

『キャー!誰か助けて−!』←こっち私

『ぐああ!てめえ!何するんだ!』

『その子を…離したまえ…』

『お、お兄ちゃん…!』



「げへへ…あるなあ」

「ば、バフォメット、さま?」

「うん、護衛はいらないや、マニアも」

「そ、そうですか」

「どの辺にありそうとか、それだけ教えてもらってもいい?」

「あ、はい!それは地図のこの辺かと…」

タケマルが地図にあらかたのメモをしていく

その間、シャレムはせっせと荷物をまとめていた

本部から持ってきたものが、色々とあるのだ

「…こんな感じだと思いますね、どうぞ」

「うん!ありがと!」

「!」

「じゃ!いってくるわ!!」

荷物をまとめたシャレムは、最速でまた、誰にもばれないように

支部から離れていった

「バフォメット様…いい笑顔してたなあ…

 秘湯、見つけられるといいのだけど」

シャレムのいなくなった支部長室は、少しだけ静かに

寂しそうな空気を残していた

「明るい人だったな…はじめは少し暗い顔も見えたから

 心配だったけど…」

方向を間違ってないか、魔力をつないで確認しようと思ったが

止めておくことにした

「きっと、襲われたってのも嘘なんだろうな…あんなにすごい人が

 襲われるわけないし」

そう、きっと

「素敵な男の人と、会話していたに違いない」

突然、部屋の電話が鳴った

「はい…あ、あなた…もう、こっちにかけないでって言ったじゃないの、もう…

 うん…ありがと、私も…うん、愛してる」

〜〜〜〜

シャレムは空を飛びながら、タケマルのことを思い出していた

「いい子だったなあ、タケマルちゃん…にしても

 あの、ザ・仕事人って感じ」

なんだか、思い出すものがある

「…きっと、彼氏なんかいないんだろうなあ、連れ出してあげればよかった」

2頭の山羊は、お互いに勘違いをしていることに気づかない

決定的で、凄惨な勘違いを

「まあいっか。それじゃ!秘湯めぐろっか!」

それに気づくのは、もっと後のことであるが今は語るべからず

シャレムは向かうことにした

ウェストノース地方の山脈、ディープウェザーへと
17/11/25 05:31更新 / てんぷらやさん
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■作者メッセージ
約、1年と半年ぶりとなります…てんぷらやさんです

まさか次に投稿するのが、こんなに遅くなってしまうとは

そしてまさか、投稿できるとは思っていませんでした…

憶えている方はお久しぶりでございます

はじめましての方は初めましてになります

これからも不定期に投稿できればとは思いますが

どうぞ末永く、本当に末永く楽しんでいただけますと幸いです

それではコメントの方を…

「ジパングの男にバッフォイされるのでしょうか?」

どうでしょうねぇ…MURABITOされるか、ONSENされるか

今ではなんとも…

「性格的に要領が悪いほど…」

要領は悪くないんですよ、きっと。他があかんのです、きっと。

コメントなど、どしどし募集しております!よろしくお願いします!

voteしてくださった方も、本当にありがとうございます…励みになります

それでは〜

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