連載小説
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しんだいしゃ

「準備できたって! 行こ!」

 人形の手が僕の手を引いた。今の女の子のことを話すべきか迷ったけど、その間にサヨさんは弾むような足取りで紺色の客車へ向かっていく。狐のような女の子の姿はもう、どこにも見えなくなっていた。
 客車の入り口に立つ人形駅員が、微笑みながら中へ入れてくれた。連結部から乗り込むと、中はカーテンで仕切られた寝台車。

「ほら、隣に寝て」

 赤い靴を脱ぎ、サヨさんが寝台の1つへ寝転ぶ。青い瞳が期待に輝いているのが分かった。ベッドで彼女と2人……自然と期待してしまう。風呂場でやったことの続きを。




ーー大事なところ同士を繋げるのって、もっと気持ちいいんだろうなーー



ーーでも、それはもうちょっと後にしよっかーー



 あの言葉が頭をよぎって、僕もいそいそとベッドへ上がった。1人用の小さな寝台だから、僕たちの体は否応無しにくっつく。間近に笑顔と、吸い込まれそうな青い瞳があった。サヨさんに言われてカーテンを閉めると、辺りは闇に包まれた。

「ね。手、握って?」
「うん……」

 手探りで手を繋いで、暖かさと球体関節の独特な感触を味わう。互いの息がかかる距離。
 むにゅっ、と柔らかいものが手に当たった。サヨさんが僕の手を、抱きしめるように胸へと導いたのだ。浴衣姿の布越しでも、あの柔らかさが伝わってくる。
 指を閉じたり開いたりして、ふくらみを揉んでしまう。サヨさんは嫌がらないし、むしろ「もっと触って」とばかりに胸を押しつけてくれた。

「シューさん」

 うっとりとした、けれど高揚した声で、彼女は囁いた。

「好き、だよ」

 ストレートな言葉。今日出会ったばかりなのに、と風呂場では思った。けれど、今は僕も同じ思いだ。

「僕も好きだよ。サヨさんが、すごく……」

 そう答えたとき、体がふわりと浮き上がった気がした。
 寝台が急に広々として、暗闇の中にキラキラと光が輝き出す。星空……というより、星の海なのか。上下左右、見渡す限り星でいっぱいの景色の中、僕とサヨさんは2人で漂っていたのだ。

「えへへ……♥」

 嬉しそうなサヨさんが、唇を近づけてくる。それに応えて、キスを交わした。今の状況が分からなくても、サヨさんと2人でいられるのは無条件で嬉しい。そして何よりも、ファーストキスだった。

「んちゅっ、ちゅりゅっ……♥」

 作り物のはずの唇は、ぷるぷると柔らかくて。
 舌はほんのりと、屋台で食べていたあんず飴の甘い味がして。

 たまらずにサヨさんを抱きしめる。おさげにした髪を撫でて、こちらの胸板に押しあてられる、おっぱいの感触に興奮する。
 ちょっとだけ唇を離して息継ぎした後、彼女の背中に回した手を、今度はその下半身……お尻へやった。今更セクハラとか気にするような仲じゃないと断言できるから。というか、サヨさんの方も何故か僕のお尻を撫で回していた。

「んぅ ちゅっ、ひゅ、き……」

 キスを続けながら味わう、人形のお尻。布越しでも分かる、柔らかさと弾力。間近で直接見たら、きっとそれはもう魅力的だろう。肛門はあるのだろうか、食事はしていたけど排泄はするのだろうか、なんていう疑問は頭の片隅へ追いやった。

 僕の臀部をまさぐる彼女の指も、何だかいやらしい、淫らな手つきだった。その手で男根を撫でてもらったからそう感じるのかもしれない。
 そしてその肉棒は、浴衣の布を押し上げて激しく怒張していた。強く抱き合っているため、当然ながらサヨさんの下腹部へ押しつける格好になっている。このままでも出してしまいそうな気がしたけど、それだと満足できないだろう。

 唇が離れ、僕らは互いの顔を見つめた。青い瞳が潤んでいる。

「……この寝台車、お互いの心が通じ合っているとね、2人だけの世界へ行けるの」

 2人だけの世界、という単語にどきっとした。そしてサヨさんが浴衣の裾を捲り上げたから、ますますどきっとした。
 下に何も履いていなかったのだ。太ももと腰を繋ぐ大きな球体関節、そしてつるりとした、綺麗な、女の子の大事な割れ目が丸見えだった。

「心が繋がったから、今度は体も、繋がりたいの……♥」

 僕の下半身に視線を落とし、サヨさんはそこに手を触れた。僕の答えは決まっている。

「僕も、したい。サヨさんと繋がりたい」

 ぐっと自分の浴衣を捲り上げ、自己主張の激しい肉棒を解放してやる。サヨさんの膝枕で目覚めたときには元の大きさに戻っていたが、勃起すると風呂場で肥大したサイズになっていた。血管が浮いて、少しグロテスクなくらい怒張したそれを、人形の手が優しく撫でてくれる。
 その手つきの優しさに、またぴくんと反応してしまった。

「おちんちんさんがボッキして、おまんこさんが濡れてたら、繋がれるんだよね?」

 サヨさんは股を開く。球体関節の動きがよく見えて、それにさえ興奮を覚えてしまう。すると葡萄の粒を潰したような「ぷちゅっ」という音がして、ぴったりと閉じた割れ目から果汁のような愛液が垂れ始めた。人形だからか、こういうことも自分の意思でできるらしい。
 星々の明かりでぬめぬめと光るそれは太ももにまで垂れ、割れ目はほんの少しだけ開いて……中のピンク色が見えた。

「これで、できるかな……?」

 甘い匂いが、ふわりと漂った。濃縮された、女の子の匂い。
 辛抱たまらず、腰を前に出した。怒張した物を早くサヨさんに挿れたい。なのに肉棒は割れ目の入り口を滑って、サヨさんのおへその方へ行ってしまう。

 サヨさんはそんな肉棒を優しく握って、丁寧に入り口へ導いてくれた。

「ああっ」
「ふあぁんっ♥」

 僕たちは同時に声を上げた。ペニスは驚くほど簡単に、つるんと彼女の中へ入ってしまったのだ。

「あ……入ってるの、感じる……シューさんと、私、繋がってる……」

 うっとりと蕩けた笑顔で、涙を流しているサヨさん。感極まった、というのはこういうことか。

「シューさん、私の中ぁ、気持ちーい?」
「うん、温かくて……ぬるねるで……!」

 人形の膣内は、肉棒をぴったりとくるんで、優しく抱きしめてくれていた。ただそれだけでも、彼女と一つになれたというたまらない悦びがあった。
 サヨさんは僕の答えに満面の笑みを浮かべて、両手足で僕に抱きついてきた。

「んっ……こうやって、ぴったりくっつくと……シューさんの胸のドキドキ、すっごく伝わってくる……」

 そう言うサヨさんの目から、ぽろっと涙がこぼれ落ちた。キラキラ光る雫が星空の中へ漂っていく。その一粒が僕の方へ飛んできたので、思わずそれを口に入れてしまった。彼女の全てが愛おしくて。
 人形の涙は不思議な、甘い味がした。

「それじゃ、始めるね……」

 照れ臭そうに微笑むサヨさん。
 始める、って……?

「うっ、わ……⁉」

 突然、サヨさんの中がグニャっと蠢いた。股間にくすぐったさを感じる。ただ優しく肉棒を包んでいた膣内に、沢山の柔らかい粒が現れた。まるで皮をむいた小さな葡萄が、彼女の中にぎっしりと詰まっているような感じだ。それがぷるぷる震えながら蠢いて、肉棒全体を締め付け、くすぐってくる。

「ああぁっ、き、きもち、いい……っ!」
「ひゃ、あぅん♥ 私も、私もっ、気持ちいいっ♥」

 サヨさんも蕩けた表情で、歓喜の声を上げた。悶えるほどの気持ち良さを感じながら、その顔から目が離せない。

「んんんっきゃぅぅ♥ シューさん、シューさんっ!」

 全身で僕に抱きつきながら、再びキスをしてくるサヨさん。今度は少し舌を絡め合っただけだったけれど、その途端に膣内の蠢きが増した。沢山の粒にペニスが弄ばれ、快感がどんどん込み上げてくる。

「ねっ、シューさんっ♥ わたしの、私のこと、好き? ね、好きっ?」
「うぁっ、うっ!」

 好きだ。好きに決まってる。そう答えようとしても、気持ちよすぎて言葉にならない。
 潤んだ青い瞳が僕をじっと見て、サヨさんは僕から手足を離した。膣では肉棒をしっかり抱きしめたまま。

「好きなら、好きだったら……ずぼずぼって、して……♥」

 期待に満ちた眼差しに促され、僕はゆっくり腰を引いた。肉棒に粒が擦れ、今にも漏らしそうだった。けれどまだ、我慢しないといけない。

「ふあぁぁ」

 気持ちいいのはサヨさんも同じ。感じている姿がたまらなく愛おしい。
 彼女の蕩けた顔をもっと見ていたい。そんな思いで、引いた腰をぐっと押し込む。

「んっきゃあん♥」

 2人だけの世界に、甘い叫びが響いた。引いて、突いてを繰り返す。彼女の奥に亀頭をこつこつぶつける。膣内にぎっしり詰まった粒の感触、綺麗な顔を崩してよがるサヨさん。今まで生きてきた中で最高の時だ。

「サヨさんっ、サヨさんっ、サヨさんっ!」
「ひゃぅっ、シューさんっ♥ うれし、い、よぉ……♥」

 サヨさんの涙が宙に漂う。けれど彼女自身が言う通り、嬉しそうで、気持ち良さそうだった。浴衣の胸元に手を入れて、大きな柔らかい胸を揉ませてもらう。人間のとは違う、でもそれ以上に魅力的な膨らみが、揉むたびに指の隙間からはみ出てくる。
 いつまでもこうしていたいけど、さすがに限界だった。気持ちよすぎる。

 そして何より、サヨさんが好きすぎる。

 人形の膣の、一番奥まで押し込んで、柔らかな体をしっかり抱きしめる。サヨさんもまた僕に抱きついてきた。蕩けきった顔が可愛い。でもきっと僕はもっと情けない顔をしていると思う。
 それでもいい。サヨさんにしか見られていないのだから。

「サヨさんっっっ!」

 彼女の名を叫びながら、肉棒が脈打つのに任せる。込み上げた勢いは風呂場のときより激しかった。あのときサヨさんの顔にひっかけたものを、今度は膣内へ注ぎ込む。

「あっ、ふぁぁぁっ♥ 出てるぅ……あっ、あついぃ♥」

 サヨさんの体が、ガクガクと震えた。その嬌声を聞いているのは、僕だけ。
 膣内がぎゅうっと締まり、中に詰まった粒が肉棒を圧迫してくる。それによってますます射精の勢いが増した。

「サヨさん、好き、だよ……っ!」

 頭が真っ白になるほど、気持ちいい。その中でようやく、言葉にできた。
 サヨさんは絶頂したまま、満面の笑みを返してくれた。浴衣がいやらしい液で汚れるのにも構わず、ずっと抱き合って、快感に酔いしれる。

 絶頂は長く続いた。今度は気を失うまではいかなかった。けれどもう、サヨさんのことしか考えられない。白くつるつるとした柔らかな肌も、大きな胸も、球体関節も、全部が愛おしい。

 射精がやっと終わり、息を整えていると、ぬるんと肉棒が抜けた。ごぼっ、と音がして、人形の股間から白濁が溢れた。

「あっ……」

 サヨさんは慌てて股を抑え、精液を大事そうに塞きとめる。彼女の下腹部が少し膨らんでいるような気がした。風呂場で聞いた『恩恵』の影響は凄いらしい。どれだけ出してしまったのだろう。

「……シューさん、ごめんね」

 ふいに謝られた。風呂場でのことを思い出し、僕が出したものを膣内から漏らしてしまったことを謝まっているのかと思った。
 けれど、続いたのは思わぬ言葉だった。

「私、嘘ついたことになっちゃう。現世に帰らせてあげる、って」

 アンティークのような手を精液で濡らしながら、彼女は苦笑した。

「帰って欲しくない。ずっと一緒にいてほしいの」

 手が汚れているからか、脚で抱きついてキスしてくるサヨさん。おさげの髪が揺れ、優しく頬に触れる。そして彼女のお腹が、僕の股間に当たって。

 キスを交わしている間に、出し尽くしたかと思った肉棒がゆっくり起き上がっていく。
 ……僕も、もう帰るのは嫌だ。その思いを代弁するかのように。


 唇が離れたとき、期待に満ちた青い瞳が目の前にあった。
 2人だけの世界で、僕らはまだまだ愛し合うことになりそうだ……

22/09/27 00:02更新 / 空き缶号
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