始まりは全滅END
「……やれやれ、と」
空が夕日に染まる中、崩れた城塞を振り返った。あそこにあるのは、敵と味方の死体だけ。大事な書類、金などは、司祭たちが先に運び出してしまった。俺たち囚人兵はその時間稼ぎとして、この砦で殿をやらされたのである。
相手は親魔物派組織とは違う、火山地帯の少数民族たちだった。信仰の違いや土地の利権問題で教団に虐げられ、先祖の土地を守るために武装蜂起したという。まあ、囚人兵の俺に与えられる情報なんて僅かだから、詳しい事情は知らないし、そもそも政治に興味なんてない。俺はただ、生きるために戦うだけだ。
ひとつ確かなのは、敵が俺たち教団を心底憎み、果敢な攻撃を繰り返してきたということだ。先日の戦いではヨボヨボの老人や十歳かそこらの餓鬼まで、蛮刀を振りかざして突撃してきたくらいだ。結果、今日を以て城塞の守備隊は全滅、幸か不幸か、俺は生き残った。
俺に残ったのは愛用の武器であるフレイルと、砦から持ち出した保存食と水、少しばかりの金。手に入れた物は……自由か。
俺も元はまともな兵士だったが、罪を犯して囚人兵部隊へと放り込まれた。三年生き延びれば釈放されることになってはいたが、毎回捨て駒同然の任務に放り込まれ、逃げ出そうとすれば後ろの味方に弓矢で射殺されるのだ。三年生き残るなど、至難の業。
同じ囚人兵の仲間たちは全滅したが、俺は生き残った。今なら逃げ出しても、教団には分からないだろう。それでも見つかれば追われることとなるのだから、自由には程遠いかもしれない。それでも、自分の腕一本で生きていく方が、今までよりはマシだ。
さて、とりあえず何処かの町を目指そう。できれば教団の目の届かない所で、傭兵の斡旋所でも見つけて、次の戦場へ……
「……ん?」
足音が聞こえた。一歩一歩砂を踏みしめるその音は、戦場を歩きなれた者の足運びだった。教団か、敵か……どちらにしろ、斬る。これからの自由のために。
身構えながら振り向き、俺は息を呑んだ。
そこにいたのは、深紅の髪に褐色の肌の女。腰からトカゲのような尾が生えており、さらに手足も爬虫類のような形状で、魔物であることを示している。だが俺はそれよりも、その肉体の美しさに目を奪われた。乳房や股間、その他手足の一部のみが布や鱗状らしき鎧で覆われているだけで、腹部や太腿が惜しげなく曝け出されている。無駄のない筋肉と、女体の脂身を兼ね備えた肉体だ。
そして金色の瞳は、真っすぐ俺を観ていた。間合いを測っていることが、肌で分かる。
ふいに、彼女は歯を見せて笑った。
「……教団の兵士かい?」
綺麗なアルトの声で、そう尋ねてくる。
「……仲間が全滅したんでな。自由に生きようと思う」
正直に話して、相手の出方を見ることにした。囚人兵とはいえ教団の下で戦っていた身……彼女たち魔物からすれば、立派な敵だ。殺そうとしてくるかもしれないが、俺は彼女に興味が尽きなかった。
「ふうん。どうするのさ?」
「まだ決めていない」
「そっか。なら丁度いい」
彼女は腰に吊るした剣を、一気に鞘から引き抜いた。二本の剣を一本の鞘に収納できるタイプのようで、それを両手に握る。片刃・幅広の剣で、刃紋が荒々しくうねっている。切れ味よりも重量で叩き斬ることを目的とした代物で、常人なら一本を両手で振りまわすところだろうに、二刀流とは。
やる気か……?
「私と闘おう? きっと楽しいよ」
彼女は屈託のない笑みを浮かべた。美しい。今まで出会ったどの女性よりも魅力的で、そして強い。匂いで分かる。こいつは生粋の戦士だ。彼女の赤い尻尾に、本物の炎が燃え上がるのを見た。そういう魔物なのだろうが、もしかしたらこれは彼女の感情を表しているのかも知れない。
俺に湧き上がった感情は、一つ。
戦ってみたい。
「……いいだろう。人間との戦いも飽きてきた」
俺もフレイルを構える。脱穀用の農具から生まれた打撃武器で、様々なタイプがあるが、俺が使っているのは歩兵用の長柄の物だ。先端には金属製の短い棒が鎖で繋がれており、これを叩きつけて攻撃するのだ。刃物より安上がりなので、囚人兵部隊にも多く配備されていたのだが、俺としても使いなれた武器だ。何より、防御されにくいのがいい。
「じゃあ……行くよ!」
先に仕掛けてきたのは彼女の方だった。脅威的な瞬発力で間合いを詰め、右手の剣で斬りかかってくる。かなりの速度だが、俺とて伊達に生き残ってきたわけじゃない。
フレイルの柄で、彼女の一撃を受け流す。横へ捌いたのに、ずっしりとした重さが腕にかかる。心地よい。
続いて、石突を彼女の腹部目がけて突きいれた。しかし今度は、彼女が左の剣で受け流した。
一歩後退しながら、フレイルを大きく振って殴りつけた。遠心力の加わったその一撃は、今まで多くの人間の頭蓋を割ってきた。
彼女は剣の峰で柄の方を受け止めるが、鎖で繋がれた短棒の方は止まらない。慣性に従い、彼女の肩目がけて短棒が繰り出される。これが鎖系武器の恐さだ。
だが彼女は、すかさずもう片方の剣で短棒を弾いた。反射速度が速い上に、両腕を自在に使いこなしている。
笑みを崩さず、彼女は斬りかかってくる。俺は体捌きで交わしつつ、フレイルを叩きつけた。
彼女が後ずさって回避すれば、俺はすかさず突きに派生させる。
彼女が紙一重でかわして懐に飛び込んでくれば、俺は蹴り技で反撃する。
武器同士がぶつかり合い、火花が散る中で、彼女の肉体は躍動し、尻尾の炎が大きく燃え上がっていく。彼女の笑顔は崩れない。戦いの場で緊張感に絶えられず笑ったら、必ず負ける。だが彼女の笑顔はそんな素人の愚行でも、相手に対する挑発でもない。俺との闘いを心から楽しんでいる、子供のような笑顔だ。
なら、もっと楽しませてやろう。もっと燃え上がらせてやろう。そして俺も楽しもう!
「セヤァッ!」
踏み出しながら、渾身の力で横殴りに叩きつける。この角度なら、柄と短棒の両方を防御することはできない。バックステップで避ける暇もない。
しかし彼女は、垂直跳びで回避した。腰の高さで打ち込んだフレイルを、俺の顔の高さまで跳躍して回避したのである。
さすが魔物、優れた身体能力……だが、どうにでもしてくれと言っているような物だ!
「もらった!」
空中で身動きの取れない彼女に、全力で突きを繰り出す。
しかし彼女はあろうことか、胸の前で剣を交差させ、その一撃を受け止めたのだ。本当に凄まじい反射神経……そして、闘争本能。これが、魔物との闘いなのか。
衝撃で吹き飛び、それでも何とかバランスを保って着地する彼女。尻尾の炎は激しく燃えあがり、渦巻いていた。
それよりも……俺は彼女の股間部分に目が止まった。そこを覆っている黒い布が、何かで濡れているのだ。それどころか、染み出した粘液が褐色の太腿にまで伝い、ぬらぬらとした光沢を放っている。明らかに汗ではない。
「……魔物ってのは面白いもんだな」
戦闘で発情する性癖……大した変態だ。まあ、俺もさっきから勃ちっぱなしだが。
「あんたの炎が、私を焦がしたんだよ……けど!」
彼女は二本の剣を振り上げ、突進してくる。
そして二本同時に振り下ろされた剣を、俺はフレイルで薙ぎ払った。金属音とともに、彼女の剣は軌道がそれた。
「もっと……もっとだ!」
「ああ……そして、お前も俺を焦がしてみろ!」
……更に、武器同士がぶつかりあった。
俺のフレイルは彼女の体に数個の痣をつけ、彼女の剣は俺の体に数個の切り傷をつけた。しかし、決定打は無い。いずれもかすり傷だ。
武器がぶつかりあう度に、彼女の重みが腕に伝わってくる。彼女の美しさがそのまま力となり、襲いかかってくるかのように。
「うおおおおっ!」
彼女が左手の剣を振り上げた。俺は受け流してカウンターを叩き込むべく、構えを取る。
しかし彼女は予想外の行動に出た。
その剣を捨てたのだ。
重量感のある刀身が、地面に落ちる。その瞬間、彼女は右手の剣に空いた左手を添えていた。
「ッ!」
咄嗟に受け止めた瞬間、凄まじい衝撃とともにフレイルの柄が真っ二つに斬られた。身を逸らして、辛うじて切っ先を避ける。
自分から武器を捨てることで相手の視線を誘導し、すかさず両手持ちでの一撃……凄いの一言に尽きる。力任せと見せて、駆け引きも心得ているようだ。
だが。
「まだだァ!」
今俺の手には、短くなったフレイルと、折られた柄がある。まず柄の方を突き出し、腹を狙う。彼女は咄嗟に避けて剣を振り上げた。
俺のフレイルは柄を折られて、リーチは短くなったが……それは至近距離で取りまわしやすくなったことを意味する!
振り上げられた剣を握る手に、俺はフレイルを叩きつけた。
「ぐあっ!?」
苦痛に顔を歪め、さすがの彼女も剣を取り落とした。続いて繰り出した柄が、今度は彼女の肩を捉える。手ごたえあり。
「ぐ……っ!」
刹那、顔面に衝撃。
彼女の正拳突きを喰らってしまったのだ。脳髄にまで突き抜けるような衝撃を堪え、俺は体勢を立て直す。
そして彼女の腹部目がけて、飛びこむようにひざ蹴りをお返しした。
腹を押さえてよろめく彼女。だが、未だに笑っていた。俺もまた、たまらなく楽しかった。
彼女と俺がそれぞれ一歩前に出て、顔が近付く。ふいに、彼女の顔が急接近した。
避ける間もなく唇が触れ合う。
「んっ……」
俺たちはどちらからともなく、舌を絡ませはじめた。流し込まれてくる唾液を、喉を鳴らして飲み下していく。
そのまま夢中で唇を吸いながら、俺達はゆっくりと地面に膝を着く。それでもキスは終わらない。まるで攻め合うかのように、互いの口腔を味わう。息が苦しくなっても、唾液が口から漏れ出しても終わらない。
俺はフレイルを手放し、彼女の背中に手を回した。そのままグっと抱き寄せると、彼女も俺を抱きしめ、豊満な乳房が俺の胸板にぐにゃりと潰れた。触れ合っているうちに、彼女の肉体が戦士のものから、女のものに変化していることに気づく。
すでに日は落ち、空には星が瞬き始めていた。
呼吸を思い出したかのように、唇が離れる。息を整え、彼女は口を開いた。
「強い……あんた、強いな」
感動した口調で、彼女は言った。それがたまらなく嬉しい。
「そっちこそ、大した技だ。誰に習った?」
「父上と母上に。あんたは?」
聞き返されて、自分の記憶を引っ張り出す。誰かの指導を受けた記憶はほとんど見つからず、ただ武器を振ったことと、敵と味方が死体に変わっていくビジョンだけが呼び起こされる。
「……ガキの頃、気が付いたら戦場に放り出されていた。それから無我夢中で生きてきたら、こうなった」
「なるほど、それでこんなに強いんだ」
彼女はそっと、俺に体重をかけてきた。どういうつもりなのか薄々察したので、抵抗せずに押し倒される。褐色の肢体が俺に圧しかかり、その背後では未だ燃えあがる尾が揺れている。
「私はジュリカ。あんたは?」
「名前はいろいろあるが……お前には、スティレットと呼んでほしい」
少年兵として戦闘を強要されて以来、俺に名前なんて無かった。呼び名だけはやたらと増えていったが、的を射た呼び名だと思うのはこの「スティレット」という名だ。
元は短剣の名前で、刃は無く、鋭い切っ先による刺突で鎖帷子を貫くための武器だ。普通の短剣は日常生活にも使われるが、刺突専用のスティレットは戦闘専用のため、市街地などでは民間人の所持は禁止されている。俺と同じように、戦場にしか居場所がない。
「スティレット……あんたが好きになった。もう放さない」
「そのまま返すよ、ジュリカ。一目惚れだ」
俺はジュリカの胸へ手を伸ばし、ブラ状の甲殻をずらした。褐色の乳房がたゆんと揺れ、その先端には桜色の乳首がつんと立っていた。両手で揉んでやると、彼女は嬉しそうな声をあげる。
「んっ……嫁にしてくれよ、いいだろ?」
「ああ、そして毎日夫婦喧嘩だ」
「あはっ、それ最高!」
ジュリカは俺の顔面に胸を押し付けてきた。柔らかい感触が顔を覆い、甘い汗のニオイが鼻を刺激する。
しかし彼女はすぐにそれを止め、股間を覆う布を外しにかかった。戦闘中から愛液でぐちゃぐちゃになっていたその布は、ぬるっと糸を引いて外れる。そして、ぬらぬらとした無毛の女性器が曝け出された。
俺もズボンの金具を外し、自分の男根を引っ張り出す。
その瞬間、ジュリカはその上に跨り、一気に根元までくわえ込んだ。ぬぶっと豪快に音を立て、男根が呑み込まれる。
「くはあああああっ♪」
彼女の純潔を突き破った俺の男根は最奥部に到達し、そのぬめりと温かさにうち震えた。彼女は蕩けきった顔で結合部を見つめながら、痛いはずなのに腰を振り始めた。単調な往復運動、やがて前後左右へのひねりも加えた複雑な腰遣いと、リズミカルに責めてくる。まるで外側から手で握られているかのような強烈な締め付けと、ヒダの摩擦が男根を刺激した。
そしてジュリカの笑顔がことさら俺を高め、俺はお返しに下から腰を突き上げた。
「あんっ♪ あんっ♪ ふああんっ♪」
突いた回数に応じて、可愛い声でジュリカは啼く。彼女の口元から垂れた熱い唾液が、俺の頬に落ちた。手を伸ばして、彼女の胸に実った褐色の果実を揉み、肌触りと弾力を楽しむ。果汁が滴ってきそうな先端部分をきゅっとつまむと、ジュリカは身をよじらせて喘いだ。
「あはぁ……もう、イっちゃう……スティレットぉ!」
感極まったのか涙さえ流しながら、ジュリカは俺を思い切り抱きしめた。それでも腰だけは器用に激しく動き、俺の精を搾りとろうとする。
そしてとうとう、お互い限界に達してきた。
「うっ……出すぞ、中でいいな?」
「あたりまえっ……だっ……ふああああああん♪」
お互い戦闘中に発情していたのだから、達するのも早い。ジュリカが強烈な抱擁と共に絶頂。ほぼ同時に、俺も彼女の体内に射精した。激しく脈打つ男根を、ジュリカの膣は搾りとるように締め付け、まるで全ての精液を彼女に注ぎ込んでいるような感覚だった。
仮にも教団にいた俺が、今では魔物とまぐわっている。だが、これでいいと思った。戦闘狂には熱い女がお似合いだろう。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
……荒く息を整えるジュリカを見つめているうちに、彼女の膣内で男根は再び膨張しはじめた。膣の肉が押し開かれる感触に、彼女は目を輝かせる。
俺達の夜は、これから熱くなるようだ。
空が夕日に染まる中、崩れた城塞を振り返った。あそこにあるのは、敵と味方の死体だけ。大事な書類、金などは、司祭たちが先に運び出してしまった。俺たち囚人兵はその時間稼ぎとして、この砦で殿をやらされたのである。
相手は親魔物派組織とは違う、火山地帯の少数民族たちだった。信仰の違いや土地の利権問題で教団に虐げられ、先祖の土地を守るために武装蜂起したという。まあ、囚人兵の俺に与えられる情報なんて僅かだから、詳しい事情は知らないし、そもそも政治に興味なんてない。俺はただ、生きるために戦うだけだ。
ひとつ確かなのは、敵が俺たち教団を心底憎み、果敢な攻撃を繰り返してきたということだ。先日の戦いではヨボヨボの老人や十歳かそこらの餓鬼まで、蛮刀を振りかざして突撃してきたくらいだ。結果、今日を以て城塞の守備隊は全滅、幸か不幸か、俺は生き残った。
俺に残ったのは愛用の武器であるフレイルと、砦から持ち出した保存食と水、少しばかりの金。手に入れた物は……自由か。
俺も元はまともな兵士だったが、罪を犯して囚人兵部隊へと放り込まれた。三年生き延びれば釈放されることになってはいたが、毎回捨て駒同然の任務に放り込まれ、逃げ出そうとすれば後ろの味方に弓矢で射殺されるのだ。三年生き残るなど、至難の業。
同じ囚人兵の仲間たちは全滅したが、俺は生き残った。今なら逃げ出しても、教団には分からないだろう。それでも見つかれば追われることとなるのだから、自由には程遠いかもしれない。それでも、自分の腕一本で生きていく方が、今までよりはマシだ。
さて、とりあえず何処かの町を目指そう。できれば教団の目の届かない所で、傭兵の斡旋所でも見つけて、次の戦場へ……
「……ん?」
足音が聞こえた。一歩一歩砂を踏みしめるその音は、戦場を歩きなれた者の足運びだった。教団か、敵か……どちらにしろ、斬る。これからの自由のために。
身構えながら振り向き、俺は息を呑んだ。
そこにいたのは、深紅の髪に褐色の肌の女。腰からトカゲのような尾が生えており、さらに手足も爬虫類のような形状で、魔物であることを示している。だが俺はそれよりも、その肉体の美しさに目を奪われた。乳房や股間、その他手足の一部のみが布や鱗状らしき鎧で覆われているだけで、腹部や太腿が惜しげなく曝け出されている。無駄のない筋肉と、女体の脂身を兼ね備えた肉体だ。
そして金色の瞳は、真っすぐ俺を観ていた。間合いを測っていることが、肌で分かる。
ふいに、彼女は歯を見せて笑った。
「……教団の兵士かい?」
綺麗なアルトの声で、そう尋ねてくる。
「……仲間が全滅したんでな。自由に生きようと思う」
正直に話して、相手の出方を見ることにした。囚人兵とはいえ教団の下で戦っていた身……彼女たち魔物からすれば、立派な敵だ。殺そうとしてくるかもしれないが、俺は彼女に興味が尽きなかった。
「ふうん。どうするのさ?」
「まだ決めていない」
「そっか。なら丁度いい」
彼女は腰に吊るした剣を、一気に鞘から引き抜いた。二本の剣を一本の鞘に収納できるタイプのようで、それを両手に握る。片刃・幅広の剣で、刃紋が荒々しくうねっている。切れ味よりも重量で叩き斬ることを目的とした代物で、常人なら一本を両手で振りまわすところだろうに、二刀流とは。
やる気か……?
「私と闘おう? きっと楽しいよ」
彼女は屈託のない笑みを浮かべた。美しい。今まで出会ったどの女性よりも魅力的で、そして強い。匂いで分かる。こいつは生粋の戦士だ。彼女の赤い尻尾に、本物の炎が燃え上がるのを見た。そういう魔物なのだろうが、もしかしたらこれは彼女の感情を表しているのかも知れない。
俺に湧き上がった感情は、一つ。
戦ってみたい。
「……いいだろう。人間との戦いも飽きてきた」
俺もフレイルを構える。脱穀用の農具から生まれた打撃武器で、様々なタイプがあるが、俺が使っているのは歩兵用の長柄の物だ。先端には金属製の短い棒が鎖で繋がれており、これを叩きつけて攻撃するのだ。刃物より安上がりなので、囚人兵部隊にも多く配備されていたのだが、俺としても使いなれた武器だ。何より、防御されにくいのがいい。
「じゃあ……行くよ!」
先に仕掛けてきたのは彼女の方だった。脅威的な瞬発力で間合いを詰め、右手の剣で斬りかかってくる。かなりの速度だが、俺とて伊達に生き残ってきたわけじゃない。
フレイルの柄で、彼女の一撃を受け流す。横へ捌いたのに、ずっしりとした重さが腕にかかる。心地よい。
続いて、石突を彼女の腹部目がけて突きいれた。しかし今度は、彼女が左の剣で受け流した。
一歩後退しながら、フレイルを大きく振って殴りつけた。遠心力の加わったその一撃は、今まで多くの人間の頭蓋を割ってきた。
彼女は剣の峰で柄の方を受け止めるが、鎖で繋がれた短棒の方は止まらない。慣性に従い、彼女の肩目がけて短棒が繰り出される。これが鎖系武器の恐さだ。
だが彼女は、すかさずもう片方の剣で短棒を弾いた。反射速度が速い上に、両腕を自在に使いこなしている。
笑みを崩さず、彼女は斬りかかってくる。俺は体捌きで交わしつつ、フレイルを叩きつけた。
彼女が後ずさって回避すれば、俺はすかさず突きに派生させる。
彼女が紙一重でかわして懐に飛び込んでくれば、俺は蹴り技で反撃する。
武器同士がぶつかり合い、火花が散る中で、彼女の肉体は躍動し、尻尾の炎が大きく燃え上がっていく。彼女の笑顔は崩れない。戦いの場で緊張感に絶えられず笑ったら、必ず負ける。だが彼女の笑顔はそんな素人の愚行でも、相手に対する挑発でもない。俺との闘いを心から楽しんでいる、子供のような笑顔だ。
なら、もっと楽しませてやろう。もっと燃え上がらせてやろう。そして俺も楽しもう!
「セヤァッ!」
踏み出しながら、渾身の力で横殴りに叩きつける。この角度なら、柄と短棒の両方を防御することはできない。バックステップで避ける暇もない。
しかし彼女は、垂直跳びで回避した。腰の高さで打ち込んだフレイルを、俺の顔の高さまで跳躍して回避したのである。
さすが魔物、優れた身体能力……だが、どうにでもしてくれと言っているような物だ!
「もらった!」
空中で身動きの取れない彼女に、全力で突きを繰り出す。
しかし彼女はあろうことか、胸の前で剣を交差させ、その一撃を受け止めたのだ。本当に凄まじい反射神経……そして、闘争本能。これが、魔物との闘いなのか。
衝撃で吹き飛び、それでも何とかバランスを保って着地する彼女。尻尾の炎は激しく燃えあがり、渦巻いていた。
それよりも……俺は彼女の股間部分に目が止まった。そこを覆っている黒い布が、何かで濡れているのだ。それどころか、染み出した粘液が褐色の太腿にまで伝い、ぬらぬらとした光沢を放っている。明らかに汗ではない。
「……魔物ってのは面白いもんだな」
戦闘で発情する性癖……大した変態だ。まあ、俺もさっきから勃ちっぱなしだが。
「あんたの炎が、私を焦がしたんだよ……けど!」
彼女は二本の剣を振り上げ、突進してくる。
そして二本同時に振り下ろされた剣を、俺はフレイルで薙ぎ払った。金属音とともに、彼女の剣は軌道がそれた。
「もっと……もっとだ!」
「ああ……そして、お前も俺を焦がしてみろ!」
……更に、武器同士がぶつかりあった。
俺のフレイルは彼女の体に数個の痣をつけ、彼女の剣は俺の体に数個の切り傷をつけた。しかし、決定打は無い。いずれもかすり傷だ。
武器がぶつかりあう度に、彼女の重みが腕に伝わってくる。彼女の美しさがそのまま力となり、襲いかかってくるかのように。
「うおおおおっ!」
彼女が左手の剣を振り上げた。俺は受け流してカウンターを叩き込むべく、構えを取る。
しかし彼女は予想外の行動に出た。
その剣を捨てたのだ。
重量感のある刀身が、地面に落ちる。その瞬間、彼女は右手の剣に空いた左手を添えていた。
「ッ!」
咄嗟に受け止めた瞬間、凄まじい衝撃とともにフレイルの柄が真っ二つに斬られた。身を逸らして、辛うじて切っ先を避ける。
自分から武器を捨てることで相手の視線を誘導し、すかさず両手持ちでの一撃……凄いの一言に尽きる。力任せと見せて、駆け引きも心得ているようだ。
だが。
「まだだァ!」
今俺の手には、短くなったフレイルと、折られた柄がある。まず柄の方を突き出し、腹を狙う。彼女は咄嗟に避けて剣を振り上げた。
俺のフレイルは柄を折られて、リーチは短くなったが……それは至近距離で取りまわしやすくなったことを意味する!
振り上げられた剣を握る手に、俺はフレイルを叩きつけた。
「ぐあっ!?」
苦痛に顔を歪め、さすがの彼女も剣を取り落とした。続いて繰り出した柄が、今度は彼女の肩を捉える。手ごたえあり。
「ぐ……っ!」
刹那、顔面に衝撃。
彼女の正拳突きを喰らってしまったのだ。脳髄にまで突き抜けるような衝撃を堪え、俺は体勢を立て直す。
そして彼女の腹部目がけて、飛びこむようにひざ蹴りをお返しした。
腹を押さえてよろめく彼女。だが、未だに笑っていた。俺もまた、たまらなく楽しかった。
彼女と俺がそれぞれ一歩前に出て、顔が近付く。ふいに、彼女の顔が急接近した。
避ける間もなく唇が触れ合う。
「んっ……」
俺たちはどちらからともなく、舌を絡ませはじめた。流し込まれてくる唾液を、喉を鳴らして飲み下していく。
そのまま夢中で唇を吸いながら、俺達はゆっくりと地面に膝を着く。それでもキスは終わらない。まるで攻め合うかのように、互いの口腔を味わう。息が苦しくなっても、唾液が口から漏れ出しても終わらない。
俺はフレイルを手放し、彼女の背中に手を回した。そのままグっと抱き寄せると、彼女も俺を抱きしめ、豊満な乳房が俺の胸板にぐにゃりと潰れた。触れ合っているうちに、彼女の肉体が戦士のものから、女のものに変化していることに気づく。
すでに日は落ち、空には星が瞬き始めていた。
呼吸を思い出したかのように、唇が離れる。息を整え、彼女は口を開いた。
「強い……あんた、強いな」
感動した口調で、彼女は言った。それがたまらなく嬉しい。
「そっちこそ、大した技だ。誰に習った?」
「父上と母上に。あんたは?」
聞き返されて、自分の記憶を引っ張り出す。誰かの指導を受けた記憶はほとんど見つからず、ただ武器を振ったことと、敵と味方が死体に変わっていくビジョンだけが呼び起こされる。
「……ガキの頃、気が付いたら戦場に放り出されていた。それから無我夢中で生きてきたら、こうなった」
「なるほど、それでこんなに強いんだ」
彼女はそっと、俺に体重をかけてきた。どういうつもりなのか薄々察したので、抵抗せずに押し倒される。褐色の肢体が俺に圧しかかり、その背後では未だ燃えあがる尾が揺れている。
「私はジュリカ。あんたは?」
「名前はいろいろあるが……お前には、スティレットと呼んでほしい」
少年兵として戦闘を強要されて以来、俺に名前なんて無かった。呼び名だけはやたらと増えていったが、的を射た呼び名だと思うのはこの「スティレット」という名だ。
元は短剣の名前で、刃は無く、鋭い切っ先による刺突で鎖帷子を貫くための武器だ。普通の短剣は日常生活にも使われるが、刺突専用のスティレットは戦闘専用のため、市街地などでは民間人の所持は禁止されている。俺と同じように、戦場にしか居場所がない。
「スティレット……あんたが好きになった。もう放さない」
「そのまま返すよ、ジュリカ。一目惚れだ」
俺はジュリカの胸へ手を伸ばし、ブラ状の甲殻をずらした。褐色の乳房がたゆんと揺れ、その先端には桜色の乳首がつんと立っていた。両手で揉んでやると、彼女は嬉しそうな声をあげる。
「んっ……嫁にしてくれよ、いいだろ?」
「ああ、そして毎日夫婦喧嘩だ」
「あはっ、それ最高!」
ジュリカは俺の顔面に胸を押し付けてきた。柔らかい感触が顔を覆い、甘い汗のニオイが鼻を刺激する。
しかし彼女はすぐにそれを止め、股間を覆う布を外しにかかった。戦闘中から愛液でぐちゃぐちゃになっていたその布は、ぬるっと糸を引いて外れる。そして、ぬらぬらとした無毛の女性器が曝け出された。
俺もズボンの金具を外し、自分の男根を引っ張り出す。
その瞬間、ジュリカはその上に跨り、一気に根元までくわえ込んだ。ぬぶっと豪快に音を立て、男根が呑み込まれる。
「くはあああああっ♪」
彼女の純潔を突き破った俺の男根は最奥部に到達し、そのぬめりと温かさにうち震えた。彼女は蕩けきった顔で結合部を見つめながら、痛いはずなのに腰を振り始めた。単調な往復運動、やがて前後左右へのひねりも加えた複雑な腰遣いと、リズミカルに責めてくる。まるで外側から手で握られているかのような強烈な締め付けと、ヒダの摩擦が男根を刺激した。
そしてジュリカの笑顔がことさら俺を高め、俺はお返しに下から腰を突き上げた。
「あんっ♪ あんっ♪ ふああんっ♪」
突いた回数に応じて、可愛い声でジュリカは啼く。彼女の口元から垂れた熱い唾液が、俺の頬に落ちた。手を伸ばして、彼女の胸に実った褐色の果実を揉み、肌触りと弾力を楽しむ。果汁が滴ってきそうな先端部分をきゅっとつまむと、ジュリカは身をよじらせて喘いだ。
「あはぁ……もう、イっちゃう……スティレットぉ!」
感極まったのか涙さえ流しながら、ジュリカは俺を思い切り抱きしめた。それでも腰だけは器用に激しく動き、俺の精を搾りとろうとする。
そしてとうとう、お互い限界に達してきた。
「うっ……出すぞ、中でいいな?」
「あたりまえっ……だっ……ふああああああん♪」
お互い戦闘中に発情していたのだから、達するのも早い。ジュリカが強烈な抱擁と共に絶頂。ほぼ同時に、俺も彼女の体内に射精した。激しく脈打つ男根を、ジュリカの膣は搾りとるように締め付け、まるで全ての精液を彼女に注ぎ込んでいるような感覚だった。
仮にも教団にいた俺が、今では魔物とまぐわっている。だが、これでいいと思った。戦闘狂には熱い女がお似合いだろう。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
……荒く息を整えるジュリカを見つめているうちに、彼女の膣内で男根は再び膨張しはじめた。膣の肉が押し開かれる感触に、彼女は目を輝かせる。
俺達の夜は、これから熱くなるようだ。
11/04/07 22:56更新 / 空き缶号
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