連載小説
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食後のティータイム
「シュリー、掃除終わったぜ」
「お疲れ様。お茶淹れたよ」

 シュリーはにっこり笑って、触手を使いティーセットを運んでくる。この教会は冠婚葬祭などの行事が無い限り、普段は暇だ。あとは時々子供や老人の集会で使われたり、音楽祭のようなものが開かれるくらい。だがいつ必要とされてもいいように、掃除だけはしっかりしなければならない。

「今日はテンガル産の紅茶か」
「正解。ヅギ、本当に舌が肥えてるね」
「傭兵稼業で稼いだ金、武具代とか以外は食費につぎ込んでたからな」

 ……オレはあの後、領主に取引を持ちかけた。領主はオレにこの町で暮らす市民権を与え、オレは領主からの依頼には格安の報酬で応じる、というものだ。もしまた領主の抹殺を誰かに依頼されたら、報酬次第では受けるかもしれない。もっとも、ルージュ・シティを丸ごと買える額の金じゃないと割に合わないが。ベルアン町の教団には一応顔を出し、「暗殺失敗した。ごめん」と報告した。その直後兵士達がオレを取り囲んだので、蹴散らして帰ってきたが。
 オレはあくまでも傭兵、そのスタンスは変える気はない。だが、剣にも収まる鞘……帰ってくる場所くらいはあってもいいんじゃないか、そう思えるようになったのだ。オレの全てを受け入れてくれる、シュリーという鞘が見つかったのだから。

 教会に住ませてもらうことになったが、一番心配なのは人食い・魔物食いであるオレがいるせいで、この教会から人足が遠のいてしまうことだった。誰が嗅ぎつけたのか、町の新聞に『人食い傭兵、牧師に就任!?』なんてデカデカと載っちゃったし。ところがこの町の連中は、その人食い男を一目見ようと教会に顔を出すようになった。そして「意外とイケメンだな」「オレこの前握手したぜ」「あ、何か食ってる」などと勝手なことを言って帰って行く。動物園の珍獣か、オレは。
 とにかく、オレにとってこの町は不自然なくらい住み心地が良かった。

「腹減った〜。クッキーよりも肉をくれ。主にお前の」
「もうっ、夜まで我慢してよ」

 私だってシたいの我慢してるんだから、と小声で付け加え、シュリーは苦笑する。彼女の触手はほぼ毎晩食べている。触手を焼きまくっているせいか彼女にお漏らし癖がついてきたようなので、しばらくは生で食うことになったが。
 ちなみにローパーは性交を続けて体内に卵ができると、それを他の女の体に産み付けて同族を増やすらしい。領主から「魔物としての本能は仕方ないが、他人に迷惑をかけるのはよくないので、卵は処分するように」とのお達しがあったため、卵はオレの口の中に産みつけるようにさせている。勿論そのまま噛みつぶして呑み込むわけだが、チョウザメの卵みたいで結構美味いんだこれが。

 こんな日々がこれからも続くだろう。だが依頼が来れば、そのときは【悪食】のヅギ=アスターとして傭兵の仕事に向かう。しかもこれからは必ず生きて帰らなければならない。今まで以上のプレッシャーだ。


 だが……。


 シュリーの前向きさを、少しは見習ってみてもいいかもしれない。
 そう思えるようになってきた。


「ヅギ、大好き」
「はいはい、オレもだよ」





END
11/01/25 22:04更新 / 空き缶号
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■作者メッセージ
ここまでお読みいただいて、ありがとうございます。

さて、モンハンの話になりますが、あのゲームのモンスターの中には食える奴が意外といるようで、それを魔物娘に応用できないかと思って生まれたのが今回の話です。
いくら食っても再生するし気持ちいいならOKじゃね?ってことでローパーに白羽の矢が立ちました。
けどあまり強調できなかったかも……。

ともあれ、お読みいただき本当にありがとうございました!
今後もぼちぼち頑張ります。

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