第三話
朝の市場というのはどこでも活気がある。輸入品なら西地区の港で買うべきだが、この町で作られた農産物なら南地区の直売所を尋ねた方がいい。この町はいわゆる緑明魔界のため、太陽の下で様々な農作物が育つのだ。領主がヴァンパイアでありながらもこのような緑明魔界になることは珍しいが、あの領主にはこの方が似合っている。
僕とミュリエルはカクテル用の果物を買うため、果樹園を訪れていた。毎朝テントが立ち並び、新鮮な収穫物が売られている。この町の木は大抵ドリアードが宿っており品質は素晴らしいが、うっかり果樹園へ踏み込むと亭主との営みを邪魔してしまうため注意が必要だ。
「わぁ、くだものがいっぱい!」
色とりどりの果実を見てミュリエルは目を輝かせた。カクテルだけでなくおつまみ用の果物も買うので、料理担当の彼女にも物を見てもらう。
この町は僕らの故郷にどこか似ている。人間と魔物、古い物と新しい物が混ざり合い、時を刻んでいる。そしてかつての僕らと同じような、子供達の笑い声が響く。そこをミュリエルと二人で歩いているうちに、心が子供の頃へ戻っていくように思えた。ガキ大将の呼び声に向かって、ミュリエルに手を引かれながら駆けていたあの頃へ。
だが隣を見てみると、そこにいるのは僕より背の低い『お姉ちゃん』、そして僕は彼女を『見下ろして』いる。すでに刻まれた時は後戻りできない。今は今のこの瞬間を、ミュリエルと共にいる時間を楽しむしかないのだ。
「このリンゴ買って、あとは……」
楽しそうに見ながらも良い物をしっかり選んでいる辺り、料理学校で真面目に学んできたことが分かる。バーではなく料理店で働けるくらいだ。これからできるだけミュリエルが腕を振るえるようにしてあげたい。
そんな彼女の傍らで僕も材料を吟味する。おつまみはミュリエルに任せるとして、カクテル用の果物を確保しなくてはならない。そして何よりも必要なのはライムだ。今夜作るカクテルには必須の材料なので、できるだけ良い物を選ばなくては。
「そこのおじょうさんって、ベッカーさんのいもうとさんですか〜?」
店番をしていたホブゴブリンの少女が、間延びした声で尋ねてくる。果樹園で働くゴブリンたちのリーダーだ。僕とミュリエルに血の繋がりがないことは見れば分かるだろうが、魔物たちの場合血縁関係でなくても「妹」と言ったりする。
「幼馴染みでね。彼女の方が年上なんだ」
「へぇ〜。すごいですね〜」
意味を本当に理解しているのだろうか。ホブゴブリンらしいのんきな態度に、僕も苦笑せざるを得ない。
するとミュリエルがトコトコと歩み寄ってきて、僕の腕に抱きついてきた。ワンピースの柔らかな肌触りとぬくもりを感じる。どうしても今朝の快楽を思い出してしまうが今は我慢だ。
「おねえちゃんってだけじゃなくて、いまはコイビトなんだよ!」
「わぁ〜、おめでとうございます〜!」
朗らかな笑顔で祝福され、嬉しいと同時に少し気恥ずかしい。するとホブゴブリンの少女は腰に着けたポーチを開け、中をまさぐった。
「え〜と、かっぷるで来ていただいたひとには〜、おみやげがありまして〜」
そう言って彼女が取り出したのは、細切れの果物が詰められた小さな瓶だった。中身はシロップ漬けになっているようで、黄金色に光り輝いている。瓶のフタには「試供品」と書かれており、果樹園の新作のようだ。
「とってもあまくておいしいので〜、食べてみてくださいね〜」
「わあ、ありがとう!」
ミュリエルが目を輝かせて受け取るのを見ると、やっぱりこういう所は子供のままなのだと思える。子供だったりしっかり者だったりする、大事な『お姉ちゃん』だ。
だが彼女の背中を追いかけていた頃から、僕にはいつも一つのわだかまりがあった。それは成長するに従って大きくなり、いつしか消えた。それでもあの気持ちが今の僕に繋がっているのは間違いない。いろいろなお客様を見て、失敗もして、悩んで……ようやく答えを出せた気がする。今夜はそれを見せるときだ。
「……お会計をお願いします」
「あ〜い、まいどあり〜」
硬貨を手渡しながら、僕は改めて背筋を伸ばした。
………
……
…
「この町って、ホントにいろいろなものがあるね」
一通り市場を回って帰路についたとき、ミュリエルの口から出た感想はそれだった。確かにルージュ・シティは交易も生産も盛んで、町中を探せば大抵の物は手に入る。さらに町を五つのブロックに分け、農業の盛んな南地区、港湾区である西地区ではこうした青空市場が開かれるのだ。荷物運搬の馬車などもあるため多量の買い物もしやすく、流通関係が細かな箇所まで整備されている。
だが領主に言わせれば、この町の原動力は市民にあるとのことだ。
「いろいろな人が住んでいるからね。領主が珍しいもの好きっていうのもあるけど」
「ふふっ、そうだね!」
ミュリエルは楽しそうに笑った。彼女は昨日来たばかりだが、領主についてはよく知っている。
東地区へ入ると農地の風景から一転し、工房が軒を連ねる職人街となった。ミュリエルは店を興味深そうに見つめながら果物のシロップ漬けをつまんでいる。
「……あ」
ガラス工房や宝石店などが目に入り、僕はふと考えた。彼女は昔からあまり着飾らず服もシンプルなものを好む。陽光の下を爽やかな白いワンピース姿で、麦わら帽子をかぶって歩く『お姉ちゃん』はとても眩しく、今も昔も輝いている。だが恋人にもなった今、そんな彼女に新しい服の一つも買ってやりたい。
「姉ちゃん、食材の他に欲しいものってない?」
お金はまだ持っている。このエリアでなら安い物から高い物まで取り扱っているはずだ。
「ほしいもの?」
「服とかアクセサリーとかでもさ」
「うーん……」
ミュリエルは青い目で辺りを見渡す。様々な工房が並ぶ職人通りの中、彼女が目を留めたのは看板に蜘蛛が描かれた店だった。蜘蛛は不気味に思われる虫であるが、親魔物領では『婦人服』を表すマークでもあり、実際その看板には『アラクネ・ワレリーの婦人服店』と書かれている。
「ほしいふくがあるの」
「分かった、じゃあそれをプレゼントさせてよ。恋人になった記念に」
「わぁ! ありがとう!」
花のような笑顔を浮かべる彼女の手を握り、僕は店のドアを開けた。食べかけのシロップ漬けは買い物袋に入れておく。
中からは生地の匂いが漂い、色とりどりの服が目に入る。魔物らしく男を誘うような露出の多い服や、敢えて落ち着いた雰囲気を出した服など様々だ。子供服までも男性の目を意識したデザインなのが全くもって魔物らしい。親魔物領出身の僕には見慣れたものだが、それをミュリエルが着たらと考えると……。
「うわぁ、ふくもいっぱいある」
僕の気持ちを他所に、ミュリエルは感嘆の声を上げた。中に踏み入り、手前に陳列されていた大人っぽいランジェリーを興味深げに眺める。だが欲しい物はそれではないようで、すぐに別の服に目を移した。彼女が料理を勉強していたポローヴェにもアラクネの服屋は沢山あるだろうが、デザインのセンスはそれぞれ異なる。ルージュ・シティは様々な場所から人が集まるため服のデザインも様々で、中にはジパング様式が取り入れられた物も置いてあった。
ふと、僕はミュリエルがしきりに体をもぞもぞさせていることに気づいた。何かむず痒いのか手足を擦り合わせたり、着ている服をつまんだりしている。その表情もどこか思い詰めたようで落ち着きがない。
「お姉ちゃん、どうかしたの?」
「……テオ君」
声をかけた瞬間、彼女は意を決したような表情で僕の名を呼んだ。
「テオ君! おねえちゃんのハダカ、みて!」
「え!?」
唐突。それはもう唐突な宣言だった。
しかも彼女は次の瞬間、その言葉を即座に実行に移した。ワンピースのファスナーを降ろし、裾をつまんで一気にまくり上げる。朝の着替えでも見た、ふっくらとしたかぼちゃパンツが露になり、その上には可愛らしいおへそ。見入っているうちに、今度はピンク色の乳首が現れた。平らだが極僅かなふくらみを感じる胸にちょんと飛び出た二つの突起。ぷにぷにした幼い肌は今朝よりも柔らかそうで、美しく滑らかに見える。
あまりのことに目が離せなくなっていた僕だが、ハッと心当たりに気づいた。慌てて買い物袋をまさぐってシロップ漬けを取り出し、中身を見つめる。案の定、オレンジなどのありふれた果物の中に、赤いグミのような丸いものがあった。
「まといの野菜の芯か……!」
レタスのように結球する魔界野菜で、その芯は果物のように甘く美肌効果がある。ただ魔界の農作物だけに魔力を秘めており、芯を食べた魔物は肌がむず痒くなって、挙げ句には男に裸体を見せたくなってしまうのだ。子供時代は悪ガキ仲間たちと一緒に悪戯に使った。そのとき僕らをたしなめていた『お姉ちゃん』が今、その力に当てられている。
やがてワンピースを完全に脱ぎ捨て、靴とニーソックスまで脱ぎにかかる。今朝も見とれた幼い脚だが、野菜の魔力のせいかその柔らかさに磨きがかかっているように見える。小さな足の指の一本一本までが無性に可愛い。手を伸ばして触れそうになるが、僕は辛うじて踏みとどまり……店の奥に向かって叫んだ。
「すみません、部屋をお借りできますか!?」
……僕らの故郷でもそうだった。魔物が経営する店、特に服屋のような場所ではお客が発情したときのため、それを隔離して発散させる部屋が用意されていたりする。故郷にいた頃はその部屋で大人たちが何をしているのか子供なりに察し、自分も大人になったら『お姉ちゃん』と一緒にそこへ入ってみたいと思っていた。……この町で実現することになろうとは。
「緊縛プレイがお望みでしたら糸をあげますけど?」
「い、いえ。結構です」
「ふふっ。それじゃ、ごゆっくり〜」
アラクネの店長はグラマーな肢体を揺らしながら退出していく。ベッドだけがある狭苦しい部屋に僕とミュリエルの二人だけとなった。服を買った後ならここでその服を「試す」ことができるらしいが、まといの野菜を食べてしまっては無理だ。彼女は今かぼちゃパンツだけの格好で、僕に向けて微笑んでいる。
「ありがと、テオ君。これでいっぱい、ハダカになれるね!」
羞恥心すら脱ぎ捨てて笑う『お姉ちゃん』の姿に、僕もまた理性を脱ぎ捨ててしまう。そもそもすでに恋人となった仲、何を気にすることがあろうか。
彼女の前に屈み、同じ目線になる。互いの息がかかる距離で幼い裸体を愛でた。青く澄んだ目、金を糸にしたような髪、
「触ってもいいかな?」
「うん!」
朗らかに笑う彼女の肩にそっと触れると、吸い付くような肌の感触が伝わってくる。その柔らかさ、不思議な甘い香り、息づかい……全てに興奮させられる。
鎖骨にくぼみを指先でつついてみると、ミュリエルはくすぐったそうに身をよじらせた。その仕草が可愛らしくて、首筋までをそっと撫でる。
「ひゃ……♥」
ミュリエルがぴくんと体を震わせると、嬉しそうに僕の手を掴んだ。彼女の右手は自分の股へ伸び、かぼちゃパンツの上からそこを弄っている。その間も丸い目は僕のみを見つめており、アリスの特性からして無意識のうちに自慰をしているのかもしれない。ただ僕に裸体を見られている興奮が魔物の本能を揺さぶり、それに突き動かされているのだろう。
「テオ君……♥」
ここも触ってと言うかのように、彼女は僕の手を胸へと導く。極僅かにふくらみが確認できるその胸に触れた瞬間、切ない柔らかさが指を押し返してきた。こんなに小さいのに、平らにさえ見えるのに、柔らかい。平たいマシュマロ、とでも形容できる感触だ。
子供の頃は水遊びのたび、すぐ側で着替える彼女の胸を特に気にせず見ていた。だが今触れている『お姉ちゃん』のおっぱいは昔とほとんど変わらないのに、僕の心を激しくゆさぶる。
彼女の股からはくちゅくちゅと卑猥な水音が聞こえており、小さな乳首はツンと勃っていた。そこを指でつまみ、くりっとした感触を確かめる。
「んぅ♥ ねぇ、テオ君……」
潤んだ瞳が僕を見つめ、しっとりした吐息が顔にかかった。
「おっぱい、おっきいほうがすき?」
「ううん。大きさじゃなくて、僕はお姉ちゃんの胸が好きだよ」
「……ありがと♥」
嬉しそうに微笑み顔を近づけてくるミュリエル。僕はそれを受け入れ、唇が触れ合った。
「ん……♥」
これが僕らのファーストキス。十年以上待ち望んでいた、『お姉ちゃん』との最初のキスだ。彼女の小さな唇はぷるぷるで、触れ合っているだけでとろけそうな感触である。
さらにその隙間から、小さな舌が僕の口腔へ入ってくる。
「んぅ……みゅ……ふぅぅ……♥」
幼い体でも『お姉ちゃん』らしく僕をリードしようと、夢中で舌を絡ませてきた。ぎこちない舌の動きと一生懸命な様子がますます僕を高める。思わず彼女を抱きしめて肌の暖かみを満喫した。
そればかりか、僕の手は勝手に彼女の臀部へと伸びていった。かぼちゃパンツの生地の上から触るお尻もまた心地よくて、布の下でぷりぷりと形を変える感触がたまらない。それを撫でて、揉んで、愛でる。ミュリエルも興奮しているようで、舌の動きがはげしくなり、唇から唾液が垂れてきた。
「ぷはっ♥」
しばらくの濃厚なキスの後、ようやく唇が離れた。僕らは呼吸を整え……互いを見つめて笑う。
「えへへ……ちゅーしちゃったね♥」
「うん、嬉しいよ」
言葉を交わしつつ、僕はズボンを降ろしにかかった。もう我慢のしようがない。
「わっ……♥」
勃起した男根を突き出すと、ミュリエルは目を丸くした。今朝の記憶は失われているため、彼女は勃起した大人の男根を『初めて』見たのだ。恐る恐る、しかしわくわくした表情でじっとそれを観察し、時折感嘆の声を出す。その視線で感じてしまい、触れられていない男根はぴくぴくと震えた。
「おちんちん、すごい……♥」
「姉ちゃん、触ってみる……?」
彼女は頷くと、両手を男根に優しく被せてくる。無意識のうちに自慰をくりかえしていた右手はその愛液でぬるついており、握られているだけで刺激となってしまう。
「わ♥ いま、ぴくってなった!」
楽しそうに、無邪気に男根を見つめる『お姉ちゃん』。翼をパタパタと動かし、尻尾を真っ直ぐに立てて喜んでいる。このまま彼女の小さな手で爆ぜるのか……そう期待した瞬間、ミュリエルは自分の体を男根に押し付けた。
「うっ!」
声が出てしまったのは当然だと思う。僕の男根の先端は彼女の胸に、あの平たいマシュマロに押し当てられていたのだ。ぷにっと悪戯っぽい柔らかさ、鈴口にキスしてくるような乳首の感触。敏感な亀頭には十分な刺激となった。
「テオ君、いたかった?」
ミュリエルは心配そうに尋ねてくる。
「違うよ、気持ちよくてさ」
「そうなんだ……♥」
ミュリエルは自分の胸を男根でつつくようにして遊ぶ。ぷにぷにした感触が亀頭を押し返すたび、僕はどんどん高まっていった。
円を描くようにぐりぐりと擦り付けられると快感が倍増し、ミュリエルもうっとりした表情になっていく。
「ん……おっぱい、気持ちいい……♥」
小さな胸でも性的な快楽は敏感に感じるようだ。潤んだ瞳で微笑む彼女の姿に、僕は限界に近づいてくる。
擦り付けられる感触も最初はスベスベとしていたが、僕の先走り液のせいでぬめりを帯びてくる。小さなマシュマロの弾力、小さな指先のくすぐったさがたまらない。ミュリエルも鈴口から出る汁に気づいたようで、面白そうに笑った。
「あははっ! おちんちんって、かーわいいっ♥」
ふいにミュリエルは男根に笑いかけ、そこに頬ずりしてきた。滑らかなほっぺたと温かな肩に男根が挟み込まれ、すりすりと擦られる。
その快感は僕にトドメを刺すのに十分だった。
「お姉ちゃん、で、出る!」
「ふえっ、何が?」
ミュリエルがきょとんとした表情を浮かべた瞬間。僕の男根は激しく脈打った。
「きゃっ♥」
驚きの叫びを上げる『お姉ちゃん』の顔に、容赦なく白濁をぶちまける。幼い頬が、可愛い鼻が、奇麗な髪に精液はべっとりとこびりついていく。その背徳感がさらに僕の快感を強め、射精の余韻に浸らせた。
「きゃはっ♥ あはははっ、すごーい♥」
いきなり出してしまったことに罪悪感を感じる僕だったが、ミュリエルはそれがたまらなく愉快だったらしい。昔一緒に水遊びをしたときのようにはしゃぎながら、満面の笑みでベッドに寝転がる。
「えへへっ♥ これ、なんかとっても……おいしいっ♥」
心の底から嬉しそうに白濁を舐めとるミュリエルを見て、僕まで楽しい気分になってきた。無邪気に笑い合い、彼女について歩いていた頃の心に戻っていく。だが僕の体は当然今のままで、股間のたぎりは鎮まらない。一度出したにも関わらず、まだ反り返って硬さを保っているのだ。
そして眼前には愛液でびしょびしょのかぼちゃパンツを穿いた、『お姉ちゃん』の姿がある。
「姉ちゃん、いいかな?」
パンツに手をかけて尋ねると、ミュリエルは笑顔で頷いた。
柔らかな下着をそっと降ろし、白い生地が愛液の糸を引く。今朝も見た幼い割れ目だが愛液の量は多くなっており、女の子の匂いがむわっと立ちこめる。恥ずかしい場所を見られているにも関わらず、まといの果実の効果でミュリエルはとても嬉しそうだ。
顔を近づけて匂いを嗅ぎ、そこへ舌を這わせる。
「ひゃうぅぅん♥」
初々しい嬌声と共に、ミュリエルのふとももが僕の顔を挟み込んできた。膝枕してもらったときとは違う素肌の柔らかさが僕をかき立てる。幼い性器を舐めて汁を飲み干していくと、それはまるでアルコールのように僕を酔わせた。
「あんッ、らめ、クリちゃんらめぇ……♥ えっちぃ……やぁん……♥」
言葉とは裏腹に彼女の声はとても嬉しそうで、顔を挟むふとももは僕を話す気配がない。僕は夢中で性器を舐め続け、ミュリエルを喘がせた。小鳥のさえずりのような声を楽しんでいるうちに、いやらしい匂いが部屋に充満していくかのようだ。
たが、やがて自然と舌の動きが止まる。飽きたのではない、僕が我慢できなくなったのだ。男根が疼いて仕方なく、それを鎮めたくてミュリエルの脚を開かせる。
「姉ちゃん……セックス、って知ってる?」
覆い被さって尋ねてみると、彼女は精液まみれの顔でにこりと笑った。
「うん! コイビトだもんね」
自ら股を大きく開き、『お姉ちゃん』は誘ってくる。
「おねえちゃんのはじめて、もらって……♥」
「分かった、いくよ」
僕にとっては二回目、彼女にとっては初めての性交。朝とは違いゆっくりと腰を進め、男根を挿入していく。今朝味わったばかりなのにその温かさが懐かしく思えた。体がミュリルの味を覚えてしまったのだろう。最初の交わりのときから……もしかしたら故郷にいた頃から、『お姉ちゃん』という魔物の虜となることが決まっていたのかもしれない。
「あッ……ん……きてる、ぅ……♥」
「ううっ、締まる……!」
きゅうっときつく締め付けてくる膣を亀頭で押し広げ、ぐっと奥まで突入れる。その瞬間蜜壷がぐにっと動いた。いや、蠢いたと言うべきか。ただでさえ狭い蜜壷は今にも精を吸い出されそうな感触なのに、柔らかな肉がうねって絡みつき、男根を揉むように刺激してくる。
その温かさと気持ちよさはとろけるかのようで、ミュリエルの優しさをそのまま表したかのようだった。
「姉ちゃん! 動くよ!」
「はああんっ♥ ふあぁ、ひぃん♥」
腰を前後させた瞬間に聞こえてくる、初々しい嬌声。収縮する狭い蜜壷で抜き差しするのは力がいるし、摩擦による快感も大きい。愛液がじゅぶじゅぶと卑猥な音を立てて飛び散り、肌がぶつかり合う。
「ふぁ、ひうぅぅん♥ い、イイ……キモチイイよぉ、テオくん……♥」
ミュリエルの反応は今朝と少し違っていた。腰を動かせないほどしがみついてくることはなく、それどころか僕の動きに合わせて自分も下から腰を振ってきたのだ。その刺激は強い快楽となって僕を高め、早くも堤防が決壊しそうになってきた。
記憶は失われても体に刻まれた経験は無意識のうちに使われる……僕は『お姉ちゃん』が魔物であることを改めて思い知った。
僕に肉棒を突き入れられ、よがるミュリエルの姿が僕の目を悦ばせる。
その嬌声が耳を悦ばせる。
漂うメスの香りが嗅覚を犯し尽くす。
もはや僕はひたすらミュリエルと愛し合うことだけで頭が一杯になっていた。体の快楽だけではない。いつも僕の前を歩いていた彼女を……憧れの『お姉ちゃん』であり、超えたいと思っていた人と繋がる悦びに浸る。甘い快楽の中、心の奥底に残ったわだかまりまでもが氷解していった。
「う、くっ……出るよ、ミュリエル姉ちゃん……!」
「んふぁっ♥ いいよ、き、きてぇ……テオくぅぅぅん♥」
……幸せを最大限に味わいながら。
僕たちは果てた。
………
……
…
……空には月が煌煌と輝き、石畳の中に街灯の火が灯る。魔力で点灯する魔法火は優しい光を放ち、星の光を色あせさせない程度に道を照らしていた。
バーのカウンターの中で、僕はバーテンダーのテオ・ベッカーに戻っていた。グラスを磨き、カクテルの材料を確認し、テーブルを掃除する。いよいよこの時間、故郷の仲間たちが集う。一緒に町を駆け回った大切な友人たちが、成長した姿で僕の店のドアをくぐるのだ。
思い返せば、いろいろなことがあった少年時代だった。時計師の老人、王魔界からやってきた貴族の少女、魔物のお姫様……いろいろな人たちに囲まれて僕は育ってきた。
そして最も大事な人が、今ここにいる。
「テオ君、準備できたよ」
昼間に買った服を着て、ミュリエルが歩み寄ってきた。それはきらびやかなドレスでも、男を誘う服でもない。僕とお揃いの黒いベストに白いシャツ、上品な蝶ネクタイ。その下には黒のミニスカートを穿き、バーに似合うシックな装いだ。子供がこのような格好をするのは奇妙かもしれないが、僕にとって『お姉ちゃん』である彼女にはとてもよく似合っていた。
これがこれから僕と一緒に働くための仕事着……これからはずっと一緒にいるという誓い。
「ありがとう。もうそろそろ誰か来ると思うよ」
「ふふっ、楽しみだね!」
声を弾ませる彼女の傍らで、僕はドアをじっと見つめていた。
やがてそれが小さな音と共に開かれ、僕らは姿勢を正す。ああ、思った通りだ。やっぱりこの二人が最初に来た。
僕らの領主と、その執事にして悪ガキのリーダーだった男。
「いらっしゃいませ……リライア、ベン」
僕とミュリエルはカクテル用の果物を買うため、果樹園を訪れていた。毎朝テントが立ち並び、新鮮な収穫物が売られている。この町の木は大抵ドリアードが宿っており品質は素晴らしいが、うっかり果樹園へ踏み込むと亭主との営みを邪魔してしまうため注意が必要だ。
「わぁ、くだものがいっぱい!」
色とりどりの果実を見てミュリエルは目を輝かせた。カクテルだけでなくおつまみ用の果物も買うので、料理担当の彼女にも物を見てもらう。
この町は僕らの故郷にどこか似ている。人間と魔物、古い物と新しい物が混ざり合い、時を刻んでいる。そしてかつての僕らと同じような、子供達の笑い声が響く。そこをミュリエルと二人で歩いているうちに、心が子供の頃へ戻っていくように思えた。ガキ大将の呼び声に向かって、ミュリエルに手を引かれながら駆けていたあの頃へ。
だが隣を見てみると、そこにいるのは僕より背の低い『お姉ちゃん』、そして僕は彼女を『見下ろして』いる。すでに刻まれた時は後戻りできない。今は今のこの瞬間を、ミュリエルと共にいる時間を楽しむしかないのだ。
「このリンゴ買って、あとは……」
楽しそうに見ながらも良い物をしっかり選んでいる辺り、料理学校で真面目に学んできたことが分かる。バーではなく料理店で働けるくらいだ。これからできるだけミュリエルが腕を振るえるようにしてあげたい。
そんな彼女の傍らで僕も材料を吟味する。おつまみはミュリエルに任せるとして、カクテル用の果物を確保しなくてはならない。そして何よりも必要なのはライムだ。今夜作るカクテルには必須の材料なので、できるだけ良い物を選ばなくては。
「そこのおじょうさんって、ベッカーさんのいもうとさんですか〜?」
店番をしていたホブゴブリンの少女が、間延びした声で尋ねてくる。果樹園で働くゴブリンたちのリーダーだ。僕とミュリエルに血の繋がりがないことは見れば分かるだろうが、魔物たちの場合血縁関係でなくても「妹」と言ったりする。
「幼馴染みでね。彼女の方が年上なんだ」
「へぇ〜。すごいですね〜」
意味を本当に理解しているのだろうか。ホブゴブリンらしいのんきな態度に、僕も苦笑せざるを得ない。
するとミュリエルがトコトコと歩み寄ってきて、僕の腕に抱きついてきた。ワンピースの柔らかな肌触りとぬくもりを感じる。どうしても今朝の快楽を思い出してしまうが今は我慢だ。
「おねえちゃんってだけじゃなくて、いまはコイビトなんだよ!」
「わぁ〜、おめでとうございます〜!」
朗らかな笑顔で祝福され、嬉しいと同時に少し気恥ずかしい。するとホブゴブリンの少女は腰に着けたポーチを開け、中をまさぐった。
「え〜と、かっぷるで来ていただいたひとには〜、おみやげがありまして〜」
そう言って彼女が取り出したのは、細切れの果物が詰められた小さな瓶だった。中身はシロップ漬けになっているようで、黄金色に光り輝いている。瓶のフタには「試供品」と書かれており、果樹園の新作のようだ。
「とってもあまくておいしいので〜、食べてみてくださいね〜」
「わあ、ありがとう!」
ミュリエルが目を輝かせて受け取るのを見ると、やっぱりこういう所は子供のままなのだと思える。子供だったりしっかり者だったりする、大事な『お姉ちゃん』だ。
だが彼女の背中を追いかけていた頃から、僕にはいつも一つのわだかまりがあった。それは成長するに従って大きくなり、いつしか消えた。それでもあの気持ちが今の僕に繋がっているのは間違いない。いろいろなお客様を見て、失敗もして、悩んで……ようやく答えを出せた気がする。今夜はそれを見せるときだ。
「……お会計をお願いします」
「あ〜い、まいどあり〜」
硬貨を手渡しながら、僕は改めて背筋を伸ばした。
………
……
…
「この町って、ホントにいろいろなものがあるね」
一通り市場を回って帰路についたとき、ミュリエルの口から出た感想はそれだった。確かにルージュ・シティは交易も生産も盛んで、町中を探せば大抵の物は手に入る。さらに町を五つのブロックに分け、農業の盛んな南地区、港湾区である西地区ではこうした青空市場が開かれるのだ。荷物運搬の馬車などもあるため多量の買い物もしやすく、流通関係が細かな箇所まで整備されている。
だが領主に言わせれば、この町の原動力は市民にあるとのことだ。
「いろいろな人が住んでいるからね。領主が珍しいもの好きっていうのもあるけど」
「ふふっ、そうだね!」
ミュリエルは楽しそうに笑った。彼女は昨日来たばかりだが、領主についてはよく知っている。
東地区へ入ると農地の風景から一転し、工房が軒を連ねる職人街となった。ミュリエルは店を興味深そうに見つめながら果物のシロップ漬けをつまんでいる。
「……あ」
ガラス工房や宝石店などが目に入り、僕はふと考えた。彼女は昔からあまり着飾らず服もシンプルなものを好む。陽光の下を爽やかな白いワンピース姿で、麦わら帽子をかぶって歩く『お姉ちゃん』はとても眩しく、今も昔も輝いている。だが恋人にもなった今、そんな彼女に新しい服の一つも買ってやりたい。
「姉ちゃん、食材の他に欲しいものってない?」
お金はまだ持っている。このエリアでなら安い物から高い物まで取り扱っているはずだ。
「ほしいもの?」
「服とかアクセサリーとかでもさ」
「うーん……」
ミュリエルは青い目で辺りを見渡す。様々な工房が並ぶ職人通りの中、彼女が目を留めたのは看板に蜘蛛が描かれた店だった。蜘蛛は不気味に思われる虫であるが、親魔物領では『婦人服』を表すマークでもあり、実際その看板には『アラクネ・ワレリーの婦人服店』と書かれている。
「ほしいふくがあるの」
「分かった、じゃあそれをプレゼントさせてよ。恋人になった記念に」
「わぁ! ありがとう!」
花のような笑顔を浮かべる彼女の手を握り、僕は店のドアを開けた。食べかけのシロップ漬けは買い物袋に入れておく。
中からは生地の匂いが漂い、色とりどりの服が目に入る。魔物らしく男を誘うような露出の多い服や、敢えて落ち着いた雰囲気を出した服など様々だ。子供服までも男性の目を意識したデザインなのが全くもって魔物らしい。親魔物領出身の僕には見慣れたものだが、それをミュリエルが着たらと考えると……。
「うわぁ、ふくもいっぱいある」
僕の気持ちを他所に、ミュリエルは感嘆の声を上げた。中に踏み入り、手前に陳列されていた大人っぽいランジェリーを興味深げに眺める。だが欲しい物はそれではないようで、すぐに別の服に目を移した。彼女が料理を勉強していたポローヴェにもアラクネの服屋は沢山あるだろうが、デザインのセンスはそれぞれ異なる。ルージュ・シティは様々な場所から人が集まるため服のデザインも様々で、中にはジパング様式が取り入れられた物も置いてあった。
ふと、僕はミュリエルがしきりに体をもぞもぞさせていることに気づいた。何かむず痒いのか手足を擦り合わせたり、着ている服をつまんだりしている。その表情もどこか思い詰めたようで落ち着きがない。
「お姉ちゃん、どうかしたの?」
「……テオ君」
声をかけた瞬間、彼女は意を決したような表情で僕の名を呼んだ。
「テオ君! おねえちゃんのハダカ、みて!」
「え!?」
唐突。それはもう唐突な宣言だった。
しかも彼女は次の瞬間、その言葉を即座に実行に移した。ワンピースのファスナーを降ろし、裾をつまんで一気にまくり上げる。朝の着替えでも見た、ふっくらとしたかぼちゃパンツが露になり、その上には可愛らしいおへそ。見入っているうちに、今度はピンク色の乳首が現れた。平らだが極僅かなふくらみを感じる胸にちょんと飛び出た二つの突起。ぷにぷにした幼い肌は今朝よりも柔らかそうで、美しく滑らかに見える。
あまりのことに目が離せなくなっていた僕だが、ハッと心当たりに気づいた。慌てて買い物袋をまさぐってシロップ漬けを取り出し、中身を見つめる。案の定、オレンジなどのありふれた果物の中に、赤いグミのような丸いものがあった。
「まといの野菜の芯か……!」
レタスのように結球する魔界野菜で、その芯は果物のように甘く美肌効果がある。ただ魔界の農作物だけに魔力を秘めており、芯を食べた魔物は肌がむず痒くなって、挙げ句には男に裸体を見せたくなってしまうのだ。子供時代は悪ガキ仲間たちと一緒に悪戯に使った。そのとき僕らをたしなめていた『お姉ちゃん』が今、その力に当てられている。
やがてワンピースを完全に脱ぎ捨て、靴とニーソックスまで脱ぎにかかる。今朝も見とれた幼い脚だが、野菜の魔力のせいかその柔らかさに磨きがかかっているように見える。小さな足の指の一本一本までが無性に可愛い。手を伸ばして触れそうになるが、僕は辛うじて踏みとどまり……店の奥に向かって叫んだ。
「すみません、部屋をお借りできますか!?」
……僕らの故郷でもそうだった。魔物が経営する店、特に服屋のような場所ではお客が発情したときのため、それを隔離して発散させる部屋が用意されていたりする。故郷にいた頃はその部屋で大人たちが何をしているのか子供なりに察し、自分も大人になったら『お姉ちゃん』と一緒にそこへ入ってみたいと思っていた。……この町で実現することになろうとは。
「緊縛プレイがお望みでしたら糸をあげますけど?」
「い、いえ。結構です」
「ふふっ。それじゃ、ごゆっくり〜」
アラクネの店長はグラマーな肢体を揺らしながら退出していく。ベッドだけがある狭苦しい部屋に僕とミュリエルの二人だけとなった。服を買った後ならここでその服を「試す」ことができるらしいが、まといの野菜を食べてしまっては無理だ。彼女は今かぼちゃパンツだけの格好で、僕に向けて微笑んでいる。
「ありがと、テオ君。これでいっぱい、ハダカになれるね!」
羞恥心すら脱ぎ捨てて笑う『お姉ちゃん』の姿に、僕もまた理性を脱ぎ捨ててしまう。そもそもすでに恋人となった仲、何を気にすることがあろうか。
彼女の前に屈み、同じ目線になる。互いの息がかかる距離で幼い裸体を愛でた。青く澄んだ目、金を糸にしたような髪、
「触ってもいいかな?」
「うん!」
朗らかに笑う彼女の肩にそっと触れると、吸い付くような肌の感触が伝わってくる。その柔らかさ、不思議な甘い香り、息づかい……全てに興奮させられる。
鎖骨にくぼみを指先でつついてみると、ミュリエルはくすぐったそうに身をよじらせた。その仕草が可愛らしくて、首筋までをそっと撫でる。
「ひゃ……♥」
ミュリエルがぴくんと体を震わせると、嬉しそうに僕の手を掴んだ。彼女の右手は自分の股へ伸び、かぼちゃパンツの上からそこを弄っている。その間も丸い目は僕のみを見つめており、アリスの特性からして無意識のうちに自慰をしているのかもしれない。ただ僕に裸体を見られている興奮が魔物の本能を揺さぶり、それに突き動かされているのだろう。
「テオ君……♥」
ここも触ってと言うかのように、彼女は僕の手を胸へと導く。極僅かにふくらみが確認できるその胸に触れた瞬間、切ない柔らかさが指を押し返してきた。こんなに小さいのに、平らにさえ見えるのに、柔らかい。平たいマシュマロ、とでも形容できる感触だ。
子供の頃は水遊びのたび、すぐ側で着替える彼女の胸を特に気にせず見ていた。だが今触れている『お姉ちゃん』のおっぱいは昔とほとんど変わらないのに、僕の心を激しくゆさぶる。
彼女の股からはくちゅくちゅと卑猥な水音が聞こえており、小さな乳首はツンと勃っていた。そこを指でつまみ、くりっとした感触を確かめる。
「んぅ♥ ねぇ、テオ君……」
潤んだ瞳が僕を見つめ、しっとりした吐息が顔にかかった。
「おっぱい、おっきいほうがすき?」
「ううん。大きさじゃなくて、僕はお姉ちゃんの胸が好きだよ」
「……ありがと♥」
嬉しそうに微笑み顔を近づけてくるミュリエル。僕はそれを受け入れ、唇が触れ合った。
「ん……♥」
これが僕らのファーストキス。十年以上待ち望んでいた、『お姉ちゃん』との最初のキスだ。彼女の小さな唇はぷるぷるで、触れ合っているだけでとろけそうな感触である。
さらにその隙間から、小さな舌が僕の口腔へ入ってくる。
「んぅ……みゅ……ふぅぅ……♥」
幼い体でも『お姉ちゃん』らしく僕をリードしようと、夢中で舌を絡ませてきた。ぎこちない舌の動きと一生懸命な様子がますます僕を高める。思わず彼女を抱きしめて肌の暖かみを満喫した。
そればかりか、僕の手は勝手に彼女の臀部へと伸びていった。かぼちゃパンツの生地の上から触るお尻もまた心地よくて、布の下でぷりぷりと形を変える感触がたまらない。それを撫でて、揉んで、愛でる。ミュリエルも興奮しているようで、舌の動きがはげしくなり、唇から唾液が垂れてきた。
「ぷはっ♥」
しばらくの濃厚なキスの後、ようやく唇が離れた。僕らは呼吸を整え……互いを見つめて笑う。
「えへへ……ちゅーしちゃったね♥」
「うん、嬉しいよ」
言葉を交わしつつ、僕はズボンを降ろしにかかった。もう我慢のしようがない。
「わっ……♥」
勃起した男根を突き出すと、ミュリエルは目を丸くした。今朝の記憶は失われているため、彼女は勃起した大人の男根を『初めて』見たのだ。恐る恐る、しかしわくわくした表情でじっとそれを観察し、時折感嘆の声を出す。その視線で感じてしまい、触れられていない男根はぴくぴくと震えた。
「おちんちん、すごい……♥」
「姉ちゃん、触ってみる……?」
彼女は頷くと、両手を男根に優しく被せてくる。無意識のうちに自慰をくりかえしていた右手はその愛液でぬるついており、握られているだけで刺激となってしまう。
「わ♥ いま、ぴくってなった!」
楽しそうに、無邪気に男根を見つめる『お姉ちゃん』。翼をパタパタと動かし、尻尾を真っ直ぐに立てて喜んでいる。このまま彼女の小さな手で爆ぜるのか……そう期待した瞬間、ミュリエルは自分の体を男根に押し付けた。
「うっ!」
声が出てしまったのは当然だと思う。僕の男根の先端は彼女の胸に、あの平たいマシュマロに押し当てられていたのだ。ぷにっと悪戯っぽい柔らかさ、鈴口にキスしてくるような乳首の感触。敏感な亀頭には十分な刺激となった。
「テオ君、いたかった?」
ミュリエルは心配そうに尋ねてくる。
「違うよ、気持ちよくてさ」
「そうなんだ……♥」
ミュリエルは自分の胸を男根でつつくようにして遊ぶ。ぷにぷにした感触が亀頭を押し返すたび、僕はどんどん高まっていった。
円を描くようにぐりぐりと擦り付けられると快感が倍増し、ミュリエルもうっとりした表情になっていく。
「ん……おっぱい、気持ちいい……♥」
小さな胸でも性的な快楽は敏感に感じるようだ。潤んだ瞳で微笑む彼女の姿に、僕は限界に近づいてくる。
擦り付けられる感触も最初はスベスベとしていたが、僕の先走り液のせいでぬめりを帯びてくる。小さなマシュマロの弾力、小さな指先のくすぐったさがたまらない。ミュリエルも鈴口から出る汁に気づいたようで、面白そうに笑った。
「あははっ! おちんちんって、かーわいいっ♥」
ふいにミュリエルは男根に笑いかけ、そこに頬ずりしてきた。滑らかなほっぺたと温かな肩に男根が挟み込まれ、すりすりと擦られる。
その快感は僕にトドメを刺すのに十分だった。
「お姉ちゃん、で、出る!」
「ふえっ、何が?」
ミュリエルがきょとんとした表情を浮かべた瞬間。僕の男根は激しく脈打った。
「きゃっ♥」
驚きの叫びを上げる『お姉ちゃん』の顔に、容赦なく白濁をぶちまける。幼い頬が、可愛い鼻が、奇麗な髪に精液はべっとりとこびりついていく。その背徳感がさらに僕の快感を強め、射精の余韻に浸らせた。
「きゃはっ♥ あはははっ、すごーい♥」
いきなり出してしまったことに罪悪感を感じる僕だったが、ミュリエルはそれがたまらなく愉快だったらしい。昔一緒に水遊びをしたときのようにはしゃぎながら、満面の笑みでベッドに寝転がる。
「えへへっ♥ これ、なんかとっても……おいしいっ♥」
心の底から嬉しそうに白濁を舐めとるミュリエルを見て、僕まで楽しい気分になってきた。無邪気に笑い合い、彼女について歩いていた頃の心に戻っていく。だが僕の体は当然今のままで、股間のたぎりは鎮まらない。一度出したにも関わらず、まだ反り返って硬さを保っているのだ。
そして眼前には愛液でびしょびしょのかぼちゃパンツを穿いた、『お姉ちゃん』の姿がある。
「姉ちゃん、いいかな?」
パンツに手をかけて尋ねると、ミュリエルは笑顔で頷いた。
柔らかな下着をそっと降ろし、白い生地が愛液の糸を引く。今朝も見た幼い割れ目だが愛液の量は多くなっており、女の子の匂いがむわっと立ちこめる。恥ずかしい場所を見られているにも関わらず、まといの果実の効果でミュリエルはとても嬉しそうだ。
顔を近づけて匂いを嗅ぎ、そこへ舌を這わせる。
「ひゃうぅぅん♥」
初々しい嬌声と共に、ミュリエルのふとももが僕の顔を挟み込んできた。膝枕してもらったときとは違う素肌の柔らかさが僕をかき立てる。幼い性器を舐めて汁を飲み干していくと、それはまるでアルコールのように僕を酔わせた。
「あんッ、らめ、クリちゃんらめぇ……♥ えっちぃ……やぁん……♥」
言葉とは裏腹に彼女の声はとても嬉しそうで、顔を挟むふとももは僕を話す気配がない。僕は夢中で性器を舐め続け、ミュリエルを喘がせた。小鳥のさえずりのような声を楽しんでいるうちに、いやらしい匂いが部屋に充満していくかのようだ。
たが、やがて自然と舌の動きが止まる。飽きたのではない、僕が我慢できなくなったのだ。男根が疼いて仕方なく、それを鎮めたくてミュリエルの脚を開かせる。
「姉ちゃん……セックス、って知ってる?」
覆い被さって尋ねてみると、彼女は精液まみれの顔でにこりと笑った。
「うん! コイビトだもんね」
自ら股を大きく開き、『お姉ちゃん』は誘ってくる。
「おねえちゃんのはじめて、もらって……♥」
「分かった、いくよ」
僕にとっては二回目、彼女にとっては初めての性交。朝とは違いゆっくりと腰を進め、男根を挿入していく。今朝味わったばかりなのにその温かさが懐かしく思えた。体がミュリルの味を覚えてしまったのだろう。最初の交わりのときから……もしかしたら故郷にいた頃から、『お姉ちゃん』という魔物の虜となることが決まっていたのかもしれない。
「あッ……ん……きてる、ぅ……♥」
「ううっ、締まる……!」
きゅうっときつく締め付けてくる膣を亀頭で押し広げ、ぐっと奥まで突入れる。その瞬間蜜壷がぐにっと動いた。いや、蠢いたと言うべきか。ただでさえ狭い蜜壷は今にも精を吸い出されそうな感触なのに、柔らかな肉がうねって絡みつき、男根を揉むように刺激してくる。
その温かさと気持ちよさはとろけるかのようで、ミュリエルの優しさをそのまま表したかのようだった。
「姉ちゃん! 動くよ!」
「はああんっ♥ ふあぁ、ひぃん♥」
腰を前後させた瞬間に聞こえてくる、初々しい嬌声。収縮する狭い蜜壷で抜き差しするのは力がいるし、摩擦による快感も大きい。愛液がじゅぶじゅぶと卑猥な音を立てて飛び散り、肌がぶつかり合う。
「ふぁ、ひうぅぅん♥ い、イイ……キモチイイよぉ、テオくん……♥」
ミュリエルの反応は今朝と少し違っていた。腰を動かせないほどしがみついてくることはなく、それどころか僕の動きに合わせて自分も下から腰を振ってきたのだ。その刺激は強い快楽となって僕を高め、早くも堤防が決壊しそうになってきた。
記憶は失われても体に刻まれた経験は無意識のうちに使われる……僕は『お姉ちゃん』が魔物であることを改めて思い知った。
僕に肉棒を突き入れられ、よがるミュリエルの姿が僕の目を悦ばせる。
その嬌声が耳を悦ばせる。
漂うメスの香りが嗅覚を犯し尽くす。
もはや僕はひたすらミュリエルと愛し合うことだけで頭が一杯になっていた。体の快楽だけではない。いつも僕の前を歩いていた彼女を……憧れの『お姉ちゃん』であり、超えたいと思っていた人と繋がる悦びに浸る。甘い快楽の中、心の奥底に残ったわだかまりまでもが氷解していった。
「う、くっ……出るよ、ミュリエル姉ちゃん……!」
「んふぁっ♥ いいよ、き、きてぇ……テオくぅぅぅん♥」
……幸せを最大限に味わいながら。
僕たちは果てた。
………
……
…
……空には月が煌煌と輝き、石畳の中に街灯の火が灯る。魔力で点灯する魔法火は優しい光を放ち、星の光を色あせさせない程度に道を照らしていた。
バーのカウンターの中で、僕はバーテンダーのテオ・ベッカーに戻っていた。グラスを磨き、カクテルの材料を確認し、テーブルを掃除する。いよいよこの時間、故郷の仲間たちが集う。一緒に町を駆け回った大切な友人たちが、成長した姿で僕の店のドアをくぐるのだ。
思い返せば、いろいろなことがあった少年時代だった。時計師の老人、王魔界からやってきた貴族の少女、魔物のお姫様……いろいろな人たちに囲まれて僕は育ってきた。
そして最も大事な人が、今ここにいる。
「テオ君、準備できたよ」
昼間に買った服を着て、ミュリエルが歩み寄ってきた。それはきらびやかなドレスでも、男を誘う服でもない。僕とお揃いの黒いベストに白いシャツ、上品な蝶ネクタイ。その下には黒のミニスカートを穿き、バーに似合うシックな装いだ。子供がこのような格好をするのは奇妙かもしれないが、僕にとって『お姉ちゃん』である彼女にはとてもよく似合っていた。
これがこれから僕と一緒に働くための仕事着……これからはずっと一緒にいるという誓い。
「ありがとう。もうそろそろ誰か来ると思うよ」
「ふふっ、楽しみだね!」
声を弾ませる彼女の傍らで、僕はドアをじっと見つめていた。
やがてそれが小さな音と共に開かれ、僕らは姿勢を正す。ああ、思った通りだ。やっぱりこの二人が最初に来た。
僕らの領主と、その執事にして悪ガキのリーダーだった男。
「いらっしゃいませ……リライア、ベン」
13/01/31 23:43更新 / 空き缶号
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