連載小説
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すれ違い
「おい、過波!今やってる仕事終わったら、この資料を作っておいてくれ!」

「了解です。すぐに終わらせます。」

終わらない。マジで仕事が次から次に出てくる。

この時期は会社の繁忙期。皆が休む暇もなく働いている。仕事が終わらなければ残業は当然するが、残業しても終わらなかった奴は会社に泊まり込みまでする奴も居る。まあ俺もその中の一人だが・・・

「先輩!これどうやって直すんですか!?」

当然5年も働いていれば後輩もできる。俺の部署は入れ替わりが激しい為、後輩の面倒を見れる奴はほぼ俺しか居ないので基本は俺が見ることになっている。

「・・・あー、これはもう最初からやり直すしかないな」

「そんな!?何とかならないんですか!?」

「えー・・・じゃあ、頼まれた仕事が終わったら俺も手伝うから今は出来るとこまでやっといてくれ」

「先輩・・・ありがとうございます!!」

そういって後輩は自分の持ち場に戻る。

あー・・・今日も帰れんかもしれんな。それにしても今年の繁忙期ちょっと忙しすぎないか?去年の軽く倍以上はあると思うんだが・・・あぁ、そういえば同僚が、どっかの大企業から大きい仕事の依頼が来たとか言ってたな。それが丁度繁忙期と重なったって事か?いや、繁忙期だからこそか?
でもいくら忙しいからって帰れないのはなぁ・・・今日で4日帰れてないとか笑えてくる。風呂はどうしてるかって?んなもん蛇口があればどこでも洗えるだろ・・・頭だけだが。いかんな、帰れないのが確定してるから変なテンションになってる。

あぁ、敷井さんに癒されたい。
因みに後日、数回だが敷井さんと会話する機会があった。その時に知ったのだが敷井さんに彼氏は居ないらしい。最初、俺にもチャンスが来たのかと少し舞い上がってたがよくよく考えてみると外見が中の下ぐらいの俺があの敷井さんと釣り合うのかと思うと泣けてくる。それに俺はそんな性格良くないしな。まあ、高嶺の花ってことで諦めているが。でも時々持ってくるお裾分けは、童貞特有の勘違いをするから勘弁してほしい。

・・・・どどどど童貞ちゃうわ!

・・・・・はあ、仕事して明日には帰れるようにしよ。










私は、魔界からこの世界に派遣された敷井小白です。種族は白蛇です。足は、サバトの薬(害はない)によって隠しています。
何故派遣されたかと言いますと、今私たちの元の世界、魔界は大変な危機に襲われています。どんな危機かというと飢餓です。
私たち魔物は、出産したとしても生まれてくる子供は魔物、必然的に女性になります。さらに魔物は人間が大好きなので、積極的にアピールします。

・・・つまりそういうことです。

人間の男性が足りなくなるとどうなるのかと言うと、私たちの食糧である『精』が供給できなくなって飢えます。なので飢餓なのです。

流石にこのままではまずいと思った私たちは、考えて出した解決策は異世界の扉を開く事。そんな事出来るわけないと誰もが思いました。勿論、かく言う私も思いました。しかし、解決策はそれしかなく魔物達は一丸となって、何とか異世界への扉を完成させました。
でもそれだけでは簡単に異世界の扉は作れません。がしかし、未婚の魔物娘がここぞとばかりに扉の製作に協力を惜しみました。その数は把握できないほど。
この世界にはコミケという大勢の人が集まるお祭りみたいな行事がありますけど、それに匹敵するぐらいの人数がいましたね。その目つきは今から戦場にでも行くかのような目つきをした者ばかりでした。皆、一人一人並々ならぬ思いを持っていました。因みに私もその中の一人に入ってました。

・・・・今思えば、まるでコミケみたいですね。

その甲斐があって、何とか異世界の扉を完成させることが出来ました!

・・・まさか年内に完成できるとは思いませんでしたが。

ただ、いきなり全員が一斉に行くと向こうの人が混乱を招く恐れがあるので何段階かに分かれて、私たち調査員が送られることになりました。
調査内容はその世界の歴史、環境、文化、行動、心理など調査し、その上でどう動くかは上の人が決めるらしいですね。
因みに調査員は、魔界で優秀な成績を残した上位の者から何人かって言う内容でした。私はそれなりに成績を残せたらしいので、一番目ではなかったですが十番目と、早い段階で送られることが出来ました。
また、調査の際は番、つまり夫を作っても良いとのこと。

全力で頑張って私好みの旦那様を探そうと思います!!

因みに資金面は、私より前に送られた調査員のコネで換金できたので、一応貯金の半分を換金しておきました。
とこんな感じで調査員として派遣された私は、この世界の調査として一番やり易いと言われるコンビニでアルバイトすることになりました。住んでる所も少し古い宿に住んでます。理由は扉が近くにあるのと、お家賃が安いので決めました。

そんな無暗にお金は使えないですからね、節約です!

宿、、、アパートでしたね。アパートに引っ越しをして挨拶をしようと思いました。私が調べたところ、引っ越しの挨拶には挨拶品となる品をお隣の人などに持って行くと好感が持てるらしいので挨拶しに行ってきました。まずは大家さんに持って行き、次はお隣さんに渡そうと思いましたが、どうやらこのアパートに住んでいる人は少ないらしく私のお隣さんは一人しかいない事が分かりましので、その一人に挨拶をしようとインターホンを鳴らしました。

・・・・・出ません。

もう一度押しましたが、やっぱり出ないので再び大家さんに聞いてみると確かにそこに住んでいるらしいので、時間を置いてからもう一度行くことにしました。
数時間後にまた行こうと思っていたらアルバイトのシフトが入ってた事に気づき、急いで支度します。また後で行こうと思います!






時間は午後9時過ぎ、アルバイトから帰ってきた私はお隣さんの電気が付いている事に気が付いきました。

今からだと時間が遅いから迷惑かな?でも、今日が日曜日だから明日になれば平日・・・住んでいる人が働いていれば、逆に迷惑かな?・・・なら今行った方が良い!!

そう決めた私は、早速準備をしてからお隣さんに突撃しました。






結果は好印象与えることが出来ました!お隣さんは成人男性の独身っぽいですね、ちょっとだけ会話した程度なので詳しくは分からなかったですが多分そうでしょう。
そして、お隣さんが先程、私のアルバイト先にて買い物していったお客さんだったのはびっくりしました。
おかげ様で夜なのに話が少しだけ弾んでしまいました。とても面白かったです。

・・・ちょっぴり運命を感じたのは内緒です。






お隣さんに挨拶をしに行って数日後、私は彼が独身だということが分かったので定期的に私が作った料理を持って行ってあげました。彼は空になった容器をわざわざ私の所まで持ってきて「美味しかった」と褒めてくれるのでとても嬉しいです。「また作って持って行ってもいいですか?」と聞くと彼は顔を赤らめながら構わないと言ってくれました。その様子が何とも可愛らしくてつい、部屋に連れ込みそうになりました。
因みに一番好評っぽかった料理は肉じゃがでした!また作ってあげようと思います!
でもここ最近、まだ仕事から帰ってきてないのかインターホンを鳴らしても出てくれません。いつも訪ねる時の時間帯は7〜8時に訪ねています。それでも不在の場合でも9時には家に帰っていますが、最近になって家に帰っている様子がありません。今までも、たまに不在の時はちょくちょくとあったのですが、連続して数日間家を空ける事は今までなかったので少し心配になります。

大丈夫なのでしょうか・・・










ガチャ

「・・・・・」

いつもはただいまと言うのだがそんな気力はない。時間も午前1時を回っている。
ここ最近はまともに家に帰れず、帰ったとしても何時間か仮眠を摂ってから出勤するパターンが多い。
当然、何もする気力もないので布団に直行してそのまま寝る。最近家に帰るんじゃなくて会社に帰るために家に帰ってるんじゃないかと思っているのは俺の気のせいだと信じたい。

家に帰ったところで碌に寝れる気が知れない。一応アラームはセットしておこう。

そう思いながら俺は目を閉じて寝ることにした。




朝、俺は目覚ましで起きて、仕事をしようと思ったが、ここが家だということに気が付く。

そういや、一旦家に帰ったんだった。・・・・今日も仕事か、ここ最近はほぼ毎日働いている。後輩にこんな目をさせ無いよう後輩の分まで仕事をやり、それから山のように溜まっている自分の仕事を何とかぎりぎりでこなしたら今度は上司のパワハラ・・・・俺は何の為に働いているのだろうか。
今現在、自分の体調も良くないのは十分わかってる。頭は常に頭痛があり、体も重い、食欲もない、睡眠も一応取ってはいるがほぼ目を瞑ってるだけの状態なので睡眠という睡眠をとっていない。熱もある気がする。

体調が悪いからと言って、今自分が休んだら大変な事になるので休めれない。後輩の面倒もあるから尚さらに。
仕事の準備を終え、家に出ると偶然お隣の敷井さんと会った。

「あ!おはようございます!ここ数日家に居なかったと思うのですが大丈夫でした?」

と彼女は心配そうな目でこちらに問いかける。その質問に答えようとするがうまく言葉が出ない。

「・・・・・あぁ、大丈夫ですよ。仕事してただけなので。それじゃあ・・・」

と何事もなかったかのように足を進める。

「ちょっと!待ってくださいよ!そんなふらふらになりながら答えられても・・・ってよく見たら隈もすごいじゃないですか!仕事してる場合じゃないですよ!ほら!一回私の部屋に行きますよ!」

「でも、会社が」

「いいから!」

彼女は無理やり俺の腕を掴んで強引に俺の隣の部屋へと入った。

「あの、ここ敷井さんの部屋じゃ・・・」

「いいですよ!こうでもしないと過波さんこの状態でも会社に行こうとしてたじゃないですか」

「・・・」

図星なので何も言えない。しばらく沈黙が続いた後、敷井さんは悲しげに口を開いた。

「そんなに身を削ってまで今の会社が大切なんですか?」

「・・・・はっきり言うと大切じゃないです。」

「じゃあ何でこんなになるまで・・・」

「えっと、やっぱり俺が辞めると後輩や同期に迷惑掛かるので・・・」

「そんな理由で・・・でも絶対そんなの間違ってますよ!だって過波さんこんなぼろぼろじゃないですか!」

「・・・大丈夫ですよ、今が忙しいだけなんで。後数か月経ったら元に戻りますよ」

「数か月も・・・・でもだったら今日は休んだ方が」

何でこの人は俺に構うのだろうか。

「何でそんなに俺を構うんですか?敷井さんには何も関係ないじゃないですか」

頭が回らないので思ったことがつい口に出てしまった。

「それは・・・」

ふと時計を見ると遅刻ギリギリの時間になっていた。
今からなら間に合うが、このままでは電車が間に合わなくなる。

「これ以上敷井さんと喋ってる時間はないので失礼します。お邪魔しました」

そういって俺は、腐心しながらも敷井さんの部屋を後にする。

俺が気弱いせいで心配させてるのかもしれない。これ以上は迷惑掛けれないな。
19/07/21 22:22更新 / kamina
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■作者メッセージ
叙〇苑俺も行きたいんだが…。
続きます。

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