読切小説
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悪の幹部もつらいお仕事です
今日もジャスティスキングに敗北してしまった

あともう少しで倒せる、と言うところまではいったものの、やつの援護に駆けつけたライトベースの隊員が持ってきたユニットでジャスティスキングが新しいフォームに変身しおった

その隊員がわしの好みじゃったのも加えてなおさら悔しかったのじゃ

ぐぬぬ

やつも新しいフォームになったことじゃしわしらの怪人も新しい種類を増やすべきなのじゃろうか……

しかしそうなると、研究費を増やすために戦闘員の人件費削減もせねばならぬのだが、わしの部下である魔女達をクビにしたり給料を減らしたりするのもちとつらいしのう………

だが今まで通りの怪人達で行っても返り討ちにあうだけじゃし

逆の発想で怪人に頼らずとも戦闘員だけで奴と戦ってみるか!

………

よく考えてみたら戦闘員達も夜の方は強いが、戦闘力は怪人より低いし人件費が高いの

怪人と同じ戦闘力になるように戦闘員を増やして戦えばそれだけで今月の予算オーバーになってしまう

数で攻めても奴を討ち取れるとも限らんし、むしろ全滅させられて金だけが無駄になった、ということもありえるしのう……

うーむ………


 「デスロリちゃん、今日は晩御飯のおかずを買いに行かなくちゃならないから先に上がるわね、魔女ちゃん達もお疲れ様」


 「「「おつかれさまぁ〜」」」


 「ブラッククイーン様も帰っちゃったし、私達も帰ろうよ」


 「そうしようか、今日の戦闘も頑張ったし早く帰っておにいちゃんに可愛がってもらおっと」


 「いいな〜、私も早くおにいちゃんがほしいよぅ」


 「「「デスロリータ様おつかれさま〜」」」


わしだけでは発想の限界もあるし、やはりここは他の幹部と戦闘員達の意見も聞くべきかのう

そうと分かれば早速

………あれ

つい先ほどまで一緒の部屋に居たブラッククイーン殿と魔女達が居なくなっておる

先に帰ったのかのぅ………

…………わしも帰るか











今日の晩ご飯は……レトルトカレーでいいかの……

昔は自炊していて料理の腕もそれなりだと自負しておるが、独り身なのでどうにも料理を作るのも面倒に感じる

未来の兄上の為に、と昔は張り切って作っておったが、仕事が忙しい上に職場には魔物しか居ない

時間が経つにつれてその意気込みも虚しくなった

最近はブラッククイーン殿に教えるとき以外は料理をまったくしなくなった

うぅ……色々と寒いのじゃ………

家に帰る前に自販機であったかいコーヒーでも飲むかの……

そう思い、基地のすぐ近くにある公園へと足を向ける

わしの気持ちと似ている暗さの公園に入り、自販機にお金を入れてあったかいブラックコーヒーを買う

そしていつも昼ごはんを食べているお気に入りのベンチに座り、一息つく

………コーヒーの苦さが心に染みる

甘いやつを買えばよかったかのぉ………

そう思いながら缶コーヒーをチビチビ飲んでいると、前の方から人が歩いてくるのが見えた

このベンチは明かりから離れているのでどんな人かはよく見えない


 「すいません、隣良いですか?」


 「うむ、かまわんよ」


どこかで聞いた事のあるような声だが、声質からは若い男だと判断できる

あちらさんも仕事帰りかの

歩いてくる音が大きくなり、段々と輪郭がはっきりしてくる

………ん?

近づいてくるまでは分からなかったが、昼間の戦闘でジャスティスキングに強化ユニットを持ってきたライトベースの隊員だった

若々しい私服姿で、わしと同じく缶コーヒーを片手に持っている

あちらもわしに気がついたようで、驚いたような表情をしている


 「デスロリータが何故ここに居るんだ!?」


 「……わしもおぬしと同じく仕事帰りだからじゃよ」


本気を出せばこんな若造追い払うぐらい造作もないが、今はそんな気分でもない

だが、あちらはそうではなく、わしに敵意を向けてきている

………若いのぉ


 「はぁ……そんなに睨まなくても疲れているし、仕事のとき以外は戦う気は無いから安心せい」


 「そんなことを言っても俺は騙されないぞ」


わしがそう言ってもやつは安心するどころか更に警戒心を増している

……面倒なのに絡まれたのぉ

なんだか虚しくなって来た

それどころか……視界が…ゆがんで……


 「……ひっく…ひっく…」


ポタポタと勝手に涙がこぼれていき、次から次へと嫌な事が浮かんでくる

それのせいで涙が止まることなく溢れてくる


 「え?ちょ、泣くなって、てか何で泣いてるの、俺か?俺が悪かったのか?」


わしはあたふたとうろたえる男を無視して泣き続ける


 「もう嫌なのじゃぁぁ、なんでわしばっかりこんな目にあうのじゃぁぁぁ」


 「え?何?どういうことなの?」


思えば昔から良いことなんて何一つ無かった

同属には魔力の低さから馬鹿にされていたし、それを補うように鍛えた鎌術もジャスティスキングにあっさりと敗れる

組織のNO,2とか言っているものの、面倒な事ばかりを押し付けられる

良い男にはめぐり合えない上に、こんなやつにも絡まれる

どんなに努力をしても報われた事なんてなかった


 「……泣き止んでくれと言っても無理そうだし、とりあえず俺の胸で泣いたらどうだ?俺にはそれぐらいしかできなさそうだし」


そう言ってやつはわしをそっと抱き寄せる

……泣いているせいかよく分からなかったが、久々に人の温もりを感じた気がした









どれほど経ったのだろうか

5分かもしれないし、30分かもしれない、もしかしたら1時間以上経っているのかもしれない

その間、奴はわしが泣き止むまでずっと無言で抱きしめていてくれた


 「ようやく落ち着いたみたいだな」


 「ぐず……うむ……すまなかったの、みっともない姿を見せてしまって」


やつの体から離れ、頭を下げる

……しっかり見ても思うがこやつ、やはりわし好みじゃのう


 「まぁ、そっちの事情は知らないけれど、幹部にもなると色々溜まったりすることもあるだろう」

 「まだまだ新人の俺が言えたことでもないけどな」


性格もそれなりに良いやつじゃの

……こやつならわしの兄上となっても悪くない

そうなったら善は急げ、じゃ


 「おぬしよ、名はなんと言う?」


 「俺か?俺の名前は赤城 雄(あかぎ ゆう)ライトベースの下っ端隊員だ」


 「ふむ、じゃあわしも改めて名乗るかの、わしの本名はオルテ=リータ、ダーククラウンズで幹部をやっておる」

 「では雄よ、おぬし夕飯は食べたかの?」


 「いや食ってないな、帰りに牛丼でも買って帰ろうかと思ってたとこだからな」


ふふふ、ちょうどいいの

一応料理に必要な食材は保存の魔術をかけてあったはずだ

久々に腕がなるのぅ


 「ではこのことの礼をかねてわしが手料理を披露してやろう、なに、遠慮はいらんぞ」


 「お、今月もそろそろ厳しくなってきたからそれは凄く助かる」


………なんだったらわしが毎日作ってやろうか?

なんて言えないがの

雄もすっかりわしへの警戒心が無くなった様じゃし、頑張ってわしの兄上にしてやるのじゃ!!










ふぅ……久々に料理したけれども、中々おいしくできたのじゃ

それに雄の口にも合ったようじゃしの

やはり料理は手間はかかるものの作ってて楽しいのう

……最近は忙しくてそんなことも忘れてしまっていたが、それを思い出すことが出来た点も雄に感謝せねばな


 「いやぁ、腹いっぱいだ、こんなに上手いもん食わせてもらってなんか悪いな」


 「いや、わしはおぬしに救われたようなものじゃから、この程度のことなら気にせんでもよい」


雄はたらふくわしの料理を食べて幸せそうな表情をしていたが、わしの言葉を聞いてニッと笑った


 「まぁ俺みたいな奴が、たとえ敵であろうと他人の役に立てるなら、それで満足さ」

 「俺は正義先輩……いや、ジャスティスキングみたいに強くはないし、アンタみたいに賢くも無いけど、みんなの力になれるような人間になりたいからな」


………やはりまだまだ若いの、わしのように道を踏み外さなければよいが

いや、これからわしが道を踏み外さないように支えてやろう


 「おぬしはやさしいのぉ……ところで、今日はもう遅いし泊まっていったほうが良いぞ」


 「いや、アンタもまだ独身なんだし、こんなどこの馬の骨とも分からん男と一緒に同じ屋根の下で寝るのはよく無いぜ」


遠慮がちにそう言って立ち上がったが、わしはそれを制止し、雄に向かってわしの魔力を流しながら見つめた


 「のぅ……わしはおぬしに泊まっていって欲しい、と思っているのじゃが……それでも駄目かの」


これから彼と交われることを想像し、下腹部が熱くなってきているのが感じる

胸がドキドキして、彼の精が欲しい、さっきのようにぎゅっと抱きしめられたい、そんな感情と共に湧き上がる欲情を、彼に伝えるべく稲荷のように魔力を流し込む

その感情が伝わったのか、それとも魔力に当てられたのか、少し考え込んでから


 「ま、まぁそこまで言うのだったら泊まって行こうかな、どうせ自分の家に帰っても寝るだけだし」


そういうことにあまり耐性がないのか、少し頬を染めそっぽを向いてそう答えた

ふふふ、初々しいのぉ









わしはベッドに寝転がっている雄の体に抱きつく

最初はあやつはわしと同じベッドで寝ることを断っていたが、わしの説得と誘惑により、一緒に寝ることになった

……それの代わりに雄の背中を流しに風呂場へ乱入することができなかったがの

顔を真っ赤にして「それだけは勘弁してくれ!」と連呼するという可愛い姿が見れたのでよしとする

彼の股間に手を這わせると、これからのことに期待しているのか既に硬くなってきている

わしの欲情した眼差しを雄へ向けながら、パンツを降ろすと、皮かむりの男性器がポロリと零れ落ちた

大きさは標準程度なのだろうが、皮を被っているせいなのか、上を向いている姿もなんだか可愛らしく見える


 「おぬし、未経験なのか、通りで初々しい反応をするわけじゃな」


 「……あまり縁が無い上に、基本的に良い人止まりで彼女とかいなかったからな」


 「じゃあ、その初物を頂くとするかの」


わしの秘部も雄との行為を妄想して既に濡れてしまっているので、このままでも問題なく挿入できるだろう

挿入できるようにわしの秘部へ雄の男性器をあてがい、ゆっくりと腰を下ろしていく


 「ホレ、おぬしの皮被りがわしの中へ入っていくのが見えるじゃろ………」


ゆっくり、時間をかけて挿入していくとやがて何かにさえぎられたように停止する


 「実はの……余裕そうにここまでリードしていたものの……実はわしもこのとおり処女なのじゃ……だから……ここまでしたわしのように、おぬしにわしの初めてを奪って欲しいのじゃ……」


そう言って軽く腰を前後させると雄は、うぅ、と辛そうに声を漏らす

しかしその瞳には欲情の色が見える

雄は息を少し荒げながらわしの腰を掴むとそのまま一息にわしの処女を奪った

はぁぁ……んぅ……く……

それと同時に快楽とも痛みともどちらともいえないようなビリビリした感覚がわしの全身を駆け巡り、思わず雄の体を力いっぱい抱きしめる


 「うっ……くぅ……」


びゅぐっびゅるるるる

一息おいて、わしが力を入れたせいなのかただでさえキツイ膣内にある雄の男性器が更に締め付けられ、童貞であった雄もその快楽に耐え切れず精をはなってしまう

はふぅ……あったかいのじゃぁ……

ドロドロとした欲望そのものともいえる精はとても熱く、魔物としての幸福感が満たされるも、それと同時に湧き上がる彼への愛情から、もっと欲しい、もっとこの精を受けたいという欲望が燃え上がってくる


 「ふふ、挿れただけでもうイってしもうたか……じゃが、まだまだいけるじゃろう?」


わしがペロリと唇を舐めつつ雄の背中を優しくさすると、やつは申し訳無さそうに呟いた


 「……すまん、中に出しちまったな」


 「気にするでない、もしもの時があったのであれば責任は取ってもらうが、おぬしとの子を授かれるのであればそれは本望じゃ」

 「おぬしは自分の抱いた女への責任すら持てぬ甲斐性無しではないであろう」


雄との子を孕めるのであれば心の底から嬉しいと思う

わしも一匹の魔物じゃから、愛しきオスに孕まされるのであればそれは最大の幸福とも言える

そういう意味を含めて雄に挑発的な視線を送ってやると、どうやらスイッチが入ってしまったらしい


 「……そこまで言うなら覚悟しろよ、本当に孕むくらい出してやるよ」


そう言って雄はわしの体を押さえつけ、乱暴に肉棒を突き入れる

わしは愛しき者に己の心身をゆだねることにした









翌朝、わしはすがすがしい気分で基地に来ていた


 「おはようデスロリちゃん……今日は早いのね……」


書類を適当に片付けているとブラッククイーン殿がまだ眠そうに基地に入ってきた

今日はライトベースへの嫌がらせも、ジャスティスキングとの決闘もないのでいつもならゆっくり来ているような日なのであるが、昨日雄に励ましてもらった事もあり朝から元気なのじゃ


 「「「デスロリータ様、ブラッククイーン様、おはようございま〜す」」」


 「デスロリータ様、今日はなんだかやる気マンマンですね」


 「最近出していたゲンナリした雰囲気も無いしね」


 「ゆうべはおたのしみでしたね」


魔女達ものんびりやってきた

とりあえず雄との関係は組織にバラすワケには行かないが、こっそりと続けていく事になった

わしらの組織も、ライトベースも、プライベートの事に関してはあまり首を突っ込まない方なのでばれることは多分無いだろう

そう考えると、益々気力が満ちてきた

よし!今日も世界征服と、雄の良き妻になれることを目指してがんばるのじゃ!!!
11/11/23 22:55更新 / 錆鐚鎌足

■作者メッセージ
今回はデスロリータのお話でした、結構予想よりも長くなってしまいましたが
彼女はダーククラウンズの中の苦労人、というポジションをイメージして書きました

バフォ「わしは戦闘時はカリスマたっぷりな感じと聞いておったのじゃが………」

サキュ「『戦闘時は』ですよ、なんだかんだでいってもボスが居ない現状では一番苦労しそうな立場ですしね」

雄はそれと対比させるようなイメージで、若い情熱が溢れている青年、といった感じでした

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