読切小説
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魔法幼女 マジカル☆バフォ様
これからどうしようか……

僕も腕には自信があったし、他の勇者の人たちもそうだろう

3時間ほど前、500人もの勇者だけで集められた軍は魔界とあるに突撃した

しかし、その軍はものの十分ほどで全滅した

先頭で聖剣を掲げていた人はサキュバスに襲われ、軍団の編成と作戦をたった一人で練りあげた人はエキドナに攫われていき、突撃する前に仲良くなり、これが終わったら一緒に冒険をする約束をした人は自らホブゴブリンを犯していた

勇者の称号を与えられた500人はたったの十分で壊滅させられた

僕の周りに『人間』は既に一人も居なかった

僕は他の人が犯されているのを尻目に、ただひたすらもと来た道を走った

気が付いたときには既に魔界の外で立ち尽くしており、あの喘ぎ声も聞こえてこない

もはやあそこに戻る気はないし、これからどうすれば良いかも分からない

もう『勇者』失格だ

とりあえず教会本部に戻って全滅した事だけ伝えよう

僕の足はまた、無意識のうちに動き出した







あの日から一晩が明けた

戦いに勝利をしたらそのまま冒険に戻るつもりで持ってきたいつもの道具があったのは不幸中の幸いだろうか

でなければ、一人で凍え、怯えながら一晩を過ごさねばならなかったのだから

最初は寝れるのかどうかが不安だったけれども、ぐっすりと眠る事ができた

体は正直なようだ

昨日のことを思い出し、今すぐにでもあそこから離れたところに行きたい、と思ったので道具を片付けていると、いつの間にか目の前に一人の少女がいた

彼女をあの場所に行かせるわけにはいかない、と勇者『だった』時の癖が出てしまった


 「ここは魔界のすぐ近くだから危ないよ、僕も今から離れる所だから一緒に行こう?」


そう言って手を差し出したとき、しまった、と今更ながらに思った

こんなところにこんな少女が居るわけがない、この子もおそらく魔物だろう


 「大丈夫だよ、私強いもん、魔物なんてコテンパンにしちゃうんだから」


……どうやら杞憂だったようだ

少し考えすぎだったかもしれない

昨日の今日だからおそらくまだ疲れているのだろう

しかし、なぜこんなところにこの子はいるのだろうか?


 「だってね、私こんなことができるんだもん」


 「へんし〜ん」


そう言って間の抜けた声を出すと彼女の体が光輝いた

なんだなんだ?彼女も遅れてきた勇者とかそんな感じなのだろうか?

光が収まると、彼女は先ほどの彼女の服装とはまったく違う服装をしていた

白を基調として、黄色がちりばめられたふりふりの服、そして頭にはささくれたような角

角!?

よく見ると奇妙な棒のようなものを握っている手などはモフモフの毛に包まれている

やっぱり魔物だったようだ……


 「まほうようじょ、マジカル☆バフォ様参上じゃ♪」


 「勇者軍が攻め込むと聞いて家を飛び出して来て来たものの、気が付いたら終わってしまっていたが……どうやらまだ運を尽きてなかったみたいじゃ」


 「おぬしも勇者なら剣を抜くがよい、わしも強い兄上の方が誇れるというものじゃ」


一応バフォメットは一度だけなら撃退した事があるのでその時の経験を生かすしかない

バフォメットというのは種族上、魔術師系が多いので詠唱の隙を突けばなんとかなるだろう


 「剣をぬいたの?さあゆくぞ」


 「さぁ来い我が武器よ……」


よし、今だ

やつが詠唱しているうちに……

そう思ったのは一瞬だけ

剣を片手に突っ込もうと姿勢を変えたとたん、奴の手に持っていた奇妙な棒のような物が可愛らしい音とともに巨大な大砲のようなものに変化した

え……


 「あの……バフォメットさん…?……」


 「なんじゃ?」


 「魔法幼女じゃないのですか…?…」


 「わしは最初から『魔砲幼女、本気☆狩るバフォ様』といったはずじゃが?」


文字違いかよ……

ていうかあんな頑丈な城塞でも破壊できそうな大砲相手に安物の剣1本で勝てるわけが無い


 「ゆくぞ!わしのこのグスタフに勝てるとおもうなよ」


 「ひゃっはぁ!!!新鮮な兄上候補じゃぁぁぁぁぁぁぁ」


やつがこちらに砲身を向けた途端、僕は走り出した

あんなものなんか向けられているだけでも嫌だ


 「避けれると思うなよ」

 
 「でかい大砲は男のロマンじゃぁぁぁぁ」


奇妙な掛け声と共にその砲身にそぐわぬ巨大な、小さな家ほどある弾が発射された

爆発範囲も広いのだろうと思い、そのまま走り続ける


ドゴォォォォォン


着弾したとたんものすごい、雷が真横に落ちたんじゃないかと思うほど大きな爆音が発生した

その衝撃から発生した振動で僕は思わず転んでしまった


 「しまった、爆煙とかで見えんのじゃ」


確かに煙もすごい、周囲に黒い霧が発生したのかと思うほどだ

しかし、風属性の魔法を使ったのか、その煙もすぐに消えていった


 「なっ」


僕は周囲を見た途端、衝撃を受けた

すぐ隣に底が見えないほどの大きな穴が開いていたのだ

中心部から半径50m以上はあるだろうか?、とにかくすさまじい威力だ

こんなもの喰らった日には僕と言う存在が消し飛んでしまう


 「ちっ……はずしておったか……」


 「避けられたのはこの数百年間で初めてじゃ」


僕の存在を目視したバフォメットは悔しそうに舌打ちしていた


 「じゃからこそわしの兄上に相応しい存在じゃな」


こんなことってありえるのだろうか?

戦いになるわけがない……

そもそも今の一発を避けられただけでも奇跡だ……



 「バフォメットさん……」


 「なんじゃ?」


 「僕をあなたの兄上にしてください」


武器を構えて硬直していた状態から、剣を放り投げての土下座

自分でも情けないぐらいの態度だ

僕にだって少しぐらいはプライドはある

しかし、さっきの一撃によって木っ端微塵に吹き飛ばされた

あんなものに消し飛ばされるぐらいなら、一生魔物の奴隷になっていたほうがましだ


 「ほう、改心したのか」


 「まぁよい、兄上になってくれるならそれに越した事は無いの」


 「わしの名前はパンツァー=ハウストじゃ、これからよろしく頼む」


そう言ってモフモフの手を差し伸べてくる

先ほどの砲撃してきたときとは打って変わって優しい笑みを浮かべている

僕もぎこちなく笑みを返し、彼女の手を握った


 「さぁて祝砲にもう一発撃ってみようかの」


 「それはやめてください」


それから僕は一時間ほど彼女がグスタフを撃とうとするのを必死で説得した
11/04/09 22:34更新 / 錆鐚鎌足

■作者メッセージ
女の子が武器を持っている姿は良いと思います

バ「じゃからおぬしはわしにこんな軍服みたいなのを着せてスナイパーライフルを持たせているのかの?」

よく似合ってますよ

サ「なんで私は軍服+アサルトライフル+ガスマスクなんでしょうか……」

俺の趣味です、ガスマスクを着けている女性っていうのもそそられるじゃないですか

バ「わしもガスマスクつけてみようかの………」

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