読切小説
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金曜日は特売日
僕はおじさんと狸のおねーさんに助けられた後、よく分からない建物に連れられた
難しいことは僕にはわからないけれど、新しいご主人様を探してくれているらしい
大体の時間を過ごしている部屋の奥の壁はガラス張りになっていて、よく魔物のおねーさん達が前を通り過ぎたり、こっちを見て何かを言ってたりする(壁が厚いからか何を言っているのかは全く聞こえない)
あとはトイレが置いてあって、おもちゃがあったり、飲み水もいつでも飲めるように置いてくれている
お腹が空いた頃にはおじさんか狸のおねーさんがごはんを持ってきてくれる

朝、起きたらその部屋に連れていかれて、夜になったら自分の部屋に戻してもらえる
ちょっと退屈な毎日だけれども、狸のおねーさんは優しいし、おじさんも顔は怖いけれど話すと結構面白い人だったりする
それにガラスの向こうを通る魔物のおねーさん達が手を振ったりしてくれるので見ていて楽しい
…………前のご主人様の為に働いたりご機嫌取りをするのに比べたらずっとか良い

ん?なんかこのサキュバスのおねーさんずっとこっちを見ているような





狸さんの言葉に誘われて入ってしまった
私はこういう手段で旦那様を得るのは好みじゃないので、こういう店は入る気はなかったのだけれども、毎週の旦那様の居ない寂しい休日を思い出すとつい入ってしまった
やっぱりこう、旦那様というのは素敵な出会いから始まり、出会い頭の即ハメ、じっくりと愛を深めつつ、中出しプロポーズで結婚、というのが理想の流れなのよ
こういう店でお金でポンと払って購入できるものではないのである
風俗店で働いて将来の旦那様が来店するのを待ちわびていた方がマシではないかと私は思うのだ

脳内でぶつくさ文句を垂れながらふらふらと店内を歩き回る
狸さんの言うとおり元気そうなショタっ子から、生気の失せた顔のおじ様まで色々な子が揃っているようだ
他にも購入窓口近くに首輪や精力剤等が置いてある辺り流石は商売狸と言った所かしら

この子は遊んで欲しそうにこっちを見ているわね、かわいい
こっちのお兄さんは欲情した目でこっちを見ているわ、けど私の好みのタイプではないわね

なんてことを思いながらなんだかんだで一人一人確認していると、一人のショタっ子が目にとまる
特筆すべきようなことは無いような子なのだが、なんだか気になる
何をするわけでもなくボーっとこっち側を眺めているだけの子
そのくりくりとした目はかわいいし、短く切りそろえられている髪もかわいい
なんだろうなぁ、なんでだろうな、でもなんだか気になるなぁ
そんな感じに考えながらじーっとこの子を見ていると、私の視線に気が付いたのか私の方に目線を向けた
かわいい彼の目と私の目があった時何故気になったのか理解できた

あぁ、私、彼に一目惚れしちゃったんだ






「ありがとうございましたー!」

俺は少し前に仕入れた少年を購入していったお客様を見送る
あの子は反魔物領の貴族から騙し取ったパターンだったはず
知り合いの未婚の魔物娘を奴隷のように見せかけ、適当なおもちゃと合わせて交換してやったのだ
まぁ『お互いに損はしていない』ので騙し取ったと言うのは少し違うかな

妻と一緒に働くようになってから気づかせてもらったが、やはり商売されるときは感謝される方がずっとか良い
あいつと出会う前は金の事しか考えずに商売をしていたが、楽しいことなんざなかったからな
飢餓が起きてる村の子供とかをはした金で買い取ったり、没落貴族を騙して『商品』にする
その『商品』を貴族や街の有力者に高値で売りつける
恨まれこそすれ、感謝されることなんざなかった日々
彼女に踊らされて、破綻しなければ同じようにクソみたいな商売を続けていたのだろう

今は彼女の意見により、これまでの経験とコネを生かして似たような仕事ながらも多少はマシな仕事をしているつもりである
虐待を受けている子供の親をあれこれ説得して買い取る、大安売りしている奴隷を購入、商売に失敗して人生が詰んだ商人を連れてくる等々の方法で入k……救出して自分の店に保護しておく
十分な食事と休息を与えながら、会話をして性格の把握と精神状態を確かめる
回復次第、販売用の部屋に入ってもらって『商品』とする
今の店は魔界に立てているので、お客様のほとんどは夫を求める魔物か、養子をもらいに来た魔物の夫婦なのだ、悪い客に買われていくことは無いだろう

初めの頃は、この販売方法は効率悪い上に儲からないなぁなんて思ったが、次第に考えも変わっていった
うちで買い物をしていったお客様が、元商品の子を連れて感謝を言いに来ることが少なくなかったからだ
前の商売方法で買い物をしていった客が再び店に来たときはでかい態度で文句しか言ってこなかったので、衝撃的だった
店先や店内で「ありがとうございます」「がんばってください」なんて言われて気恥ずかしいとか思ったこともあったが今は純粋に嬉しいのだ

っと、黄昏ている場合ではない今日はクソ忙しい特売日なのだ
沢山の出会いが自分の店で起こす日である、頑張らねば





お客さんも全員帰ったし、商品の子達も全員自分の部屋に戻してあげたので今日の仕事は売り上げ勘定するだけやね
今日は特売日やったからぎょうさん売れたわ、うしし

 「おい、また悪い顔してるぞ」

ウチの愛しの旦那様がなんやら言うとるが、仕事やからしゃーないもんなぁ
それに普段から悪人面な人に言われたないわ〜♪

 「聞こえてるぞ」
 
そんな風にいつものやり取りをしながらパチパチとそろばんを弾いていく
うんうん、思っとった以上に儲けが出とるわ
……お金以上にかわいそうな目に遭っとった子が優しそうなお客さんに買われていくのが一番嬉しいなんて言えへんけどな

 「ニヤニヤしているが、そんなに儲けが出てたか」
 
人を金の亡者みたいに言わんといてほしいわ
もう一回橋の下でがたがた震える思いはアンタもしたないやろ
……っと、計算終わり、これで今日のお仕事はしまいや
後はお楽しみやで旦那様♪

 「はいはい愛しの我が妻よ」
 
ノリがええ人は好きやで
まずは一緒に夕飯の準備して〜、あーんとかしながら仲良く食べて〜
漫才みたいな会話をしながら皿とか片付けて〜
ぬるぬると体洗って〜、ぎゅっとしながら風呂入るんや
どや、理想の流れやろ!

 「確かに理想的な流れだとは思うが、毎日途中でお前が我慢できなくなって交わりになってるな」
 
それを言わんといてぇな、いけず
あんたが魅力的難がアカンのやで、この色男

 「……なんで俺はこんな奴に人生無茶苦茶にされたんだろうなぁ」
 
ん、なんか言った?
ウチの大好きな旦那様が悪いことなんて言うはずないしな〜聞こえへんな〜





いらっしゃい!いらっしゃい!
貴方の理想の旦那様を見つけてみやへんか!
特売は昨日で終わってもーたけど、今日も元気に商い中やで!
一人での買い物は寂しかったやろー、一緒に買い物してくれる男を売ってるで!
いらっしゃい!いらっしゃい!
15/01/17 21:22更新 / 錆鐚鎌足

■作者メッセージ
たぬたぬもふもふしたいよたぬたぬ
というわけでずいぶんご無沙汰しております
書いていたssが全然進まなくてゲームしたり、書いていたssを書き直したりゲームしたりしていたらこんなに時間が経ってしまいました

サキュ「それで結局今まで書いていたssは没にしてこの作品をサクッと書き上げましたね」

バフォ「納得するまでやるのは大事かもしれんが、適度に仕上げるのも大事じゃぞ、こだわりすぎて完成しなければ他人から見たら意味はないのじゃから」

善処しなければいけませんね

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