刑罰:海神流し
海のど真ん中
見渡す限りの水平線
海、波、空、雲、太陽以外に見えるものはない
そんな景色の中、一艇の一人で乗るには少し大きい船が浮かんでいる
マストは無く、ボロボロになっている一対の手漕ぎ用の木のオールが仕事を果たさずに半分ほど海に浸かっている
船の持ち主と思われる少し肌がやけているガタイのいい男が胡坐をかいて海に釣り糸を垂らしている
「………何日経ったか忘れたが、流石に退屈だなぁ」
男が傍らにある小さ目の樽の蓋を開け、足元にあるコップのような物を拾い上げ、中に突っ込んで、水と思われる液体を汲み、口に運ぶ
樽に繋がっている青く光るパイプと漏斗のような物は知る人が見れば、雨水を飲み水に変えるマジックアイテムだということはわかるだろう
「しかし、飲み水が無くなってくれば船が沈まない程度に雨が降り…」
男が口を閉じる前に釣竿の先がクイクイと沈む
慣れた手つきでそれを釣り上げると握りこぶしほどの太さの魚が釣り針にかかっていた
「腹が減ってくると魚が釣れる」
魚から釣り針を外し、暴れないように〆てからテーブルともいえないような台の上に置く
「海神様のご加護があるとしか思えねぇ状況だな」
そう呟いた後に彼の信仰する神に感謝の祈りを捧げる
その後、前に船の近くに流れていた海藻を水樽とは別の樽から取り出す
釣り上げた魚と海藻は生食でも食べれるものなので男は黙々とその二つを口の中へ運んでいく
全て食べ切り、再び感謝の祈りを捧げた後、水を飲んで一息ついた男が再び呟いた
「やはりあの時あいつらを助けてやったのは間違いなんて思えねぇな」
男はしばらくの間長くなってきた無精ひげを撫でながら考えるが、満腹で眠くなってきたのかごろんと横になりそのまますやすやと寝息を立て始めた
男がこうなった原因というのは2ヶ月ほど前に遡る
彼はとある街のしがない漁師であった
住んでいた街は魔物に関しては不干渉の姿勢で、主神よりも暮らしに身近である海神への信仰の厚く、平和な街である
最近、王様の代が変わり城下町やその周辺では主神への信仰の方が強まっているらしいが、首都から遠いこの街ではほとんど無関係であった
海を愛し、海神への信仰も厚く、私生活はともかく仕事に関しては真面目な彼であったが、宴の席で酒に酔った親友があることを漏らしたのが事の発端である
「俺さ、実は最近恋人ができたんだ」
同じ漁師で共に遠洋に出かけることもある親友であるが、お互い浮いた話もなかったために男は驚いたが、豪快に笑い酒をもう一杯勧めながら彼の肩を叩いてまるで自分のことであるかのように喜んだ
男には家族が居なかったが、酒を酌み交わす友人、酒場の飲み仲間、自分の仕事を支えてくれる街の人達を家族のように大切に思っており、まるで自分のことのように嬉しかったのだ
「おうおうそいつは良い話じゃねーか、お前と酒を飲める理由が増えるってもんよ」
いつもなら二人して馬鹿笑いするところなのだが、友人は逆に気まずそうに苦笑いをするだけだった
不審に思った男が理由を聞くと、友人は少し考えた後、口を開いた
「………実はその恋人……人魚なんだ」
男にだけ聞こえるような小声で伝えられた事実に彼はぎょっとする
このあたりはまだ魔物が魔物娘に変化したことを知らない者が多いという理由もあるが、それ以上に最近この街では「人魚」という言葉を口にしたがらない理由があるからだ
それはこの地域に住む貴族が「人魚の血」を求めて血眼になっているからだ
その貴族の妻と子供が不治の病にかかってしまい、もはや打つ手立てもなかった
しかし、万病の薬どころか人間を超える寿命をも得ることのできる人魚の血であればなんとかなるだろう、医者にそういわれた貴族は何世代も前に人魚と交流があったと言われているこの街を拠点に手段を選ばず人魚を探していたからだ
人魚に関する情報を持っている者に関して快く提供してくれる人には報奨金を渡すが、少しでも拒むと徹底的に罰を与えようとするからだ
だが男は驚いたのは一瞬で、直ぐに満面の笑みに変わり、親友の杯に酒を注いだ
「今のご時世それは厄介なことかもしれんが、お前に恋人ができたことには変わりねぇ」
「俺は何があろうとお前の味方だ、今日は俺の奢りだ」
友人は男の反応に安堵したのか顔に笑みを取戻し、杯の中身をグイっと飲んだ
それから2週間ほど経った後、どこでばれたのか男の友人は貴族の私兵に追われる身となっていた
男はもしかしたら自分との会話でばれたのかもしれないという引け目もあるが、大切な友人が危機に陥っているということで友人とその恋人を自宅に匿い、逃亡の手助けをした
準備が整い、人も寝静まった時間に三人は港の端に居た
「あれもこれもしてもらった上に恩も返せるような時間が無くて本当に申し訳ないな」
「なぁに俺とお前の仲じゃねぇか気にすんな、この街を出たらどうするつもりだ?何かあてはあるのか?」
「この海陸沿いに沿って隣の国に行けば親魔物領の街がありますのでとりあえずはそちらに向かうつもりですわ」
そうかぁ、と男は感慨深げにうんうんうなると二人に向き直る
「まったくお前にはもったいないぐらいいい娘じゃねぇか、ちゃんと幸せにしてやるんだぞ、お前らの結婚式に出れねぇのが残念で仕方がねえっての」
「人魚の嬢ちゃん、こいつはすぐにブルっちまう奴だが芯こそはしっかりしている、こいつがしっかりしてられるように側でささえてやってくれよな」
「こうなっちまったら今度はいつ会えるか全くわからんが海神様の気分が良ければきっと会えるはずだ、それまでは元気にしてろよ」
男がそういった矢先、どこからか貴族の私兵たちがぞろぞろとやってきた
ぎょっとするものの男は私兵たちと対峙しながら叫んだ
「俺には構うな!何とかなる!さっさと行けっ!!」
二人は一瞬迷ったが、顔を見合わせてうなずき、男へ感謝の言葉を叫びながら友人は海に飛び込み、人魚は水中へ潜った
おそらく恋人の人魚が友人を連れて泳ぎ去ったのだろう、飛び込んだときの泡が無くなっても友人は浮かび上がって来なかった
この後に男は私兵たちに捕らわれ、貴族によって友人殺しというあらぬ罪を被せられ罪人し仕立て上げられた
男はこのことに対して特に反論せず
「どうせ重罪で刑罰を受けるのであれば海神様への元へと還るのが一番だ」
と言ってこの街での最高位の刑罰を受刑することを望んだ
その刑罰は帆の無い船に罪人を乗せ、魔法によって遠洋まで飛ばしてしまうというものである
荷物は船に乗るだけは認められるが、船そのものはそれほど大きくないので大した量にはならない
持ち込んだとしてもそれ以上に飲食物は補給できる見込みは薄いのですぐに尽きてしまう
やがては飢える、船が沈む、自ら海に飛び込む等で海神様の元へ帰る、という死刑である
男は受刑日までは監視付ではあるが自由に過ごすことができたが、船に乗せる物の準備を早々に終えると友人達の無事を海神へ祈りながら今まで通りに過ごした
そして受刑日まであっという間に時間が過ぎ、3週間、それが男が小さな船の上で過ごした時間である
昼だろうが夜だろうが男にはすることが無くただ釣り糸を垂らすのみである
「あー、こんな月が綺麗な夜だってのに綺麗な女もいねぇし酒もねぇ」
綺麗な女性はともかく男が船に持ち込んだ酒は3日で飲み干してしまっている
当然どちらもこの場で調達するのは不可能である
野太い声で唸りながらごろんと横になり、月を見上げた
すると突然大きな音と水しぶきが上がり、彼の視界の端に異様なものが映った
先端あたりが青みがかった全体的に白い柱のような物
一部に吸盤のようなものが見えるところとその形から巨大なイカの足にも見える
男は驚きつつも船から転落しないようにバランスを取っていたが、ゆらりとそのイカの足が船に向かって倒れこんでくる
漁師時代にも経験したことないような体験にわーわーと叫びながら急いでオールを手に取り全力で漕ぎだす
しかし、長い間水に浸かっていたのと、男が慌てるあまり力加減ができなかったのとで倒れこんできた足を避けた程度の距離を走ったところでオールがバキリと折れてしまった
男はもうだめだと悟り、自らの信仰する神に祈りを奉げる姿勢を取ると不思議とその足はするすると海に沈んでいった
いつまで経っても自分の船が傾く様子もないのを不審に思った男が顔を上げると巨大なイカの足の姿は見えず、海から女性の半身がにょっきり生えているのが見えた
「もぅ、そんなに驚かなくたっていいじゃない」
あまりに状況がコロコロ変わったせいでしばらく男はポカンとした様子になってしまっていたが、その女性の言葉で我に返った
その女性は頭に発光している帽子のような物を着け、人間にしてはありえないほど白い肌と豊満な肉体を半裸に近いような黒い服装をしている
岸から遠く離れているこんな場所まで海水浴なんて来れるはずもない、彼女は魔物だ、と我に返った男は判断した
以前に人魚に出会い、魔物の現状を聞いていたので男には目の前の魔物に対してあまり恐怖感等は薄いようだ
「あー……魔物のお姉さん、そりゃあああいうおとぎ話の化け物みたいな登場のされ方したら誰でもびびっちまうぜ……」
男の言葉に魔物は優雅そうな見た目とは裏腹に頬を膨らませて反論した
「化け物って失礼な言い方ねぇ、それに私は魔物でもクラーケンという種族なのですからああいう登場の仕方の方が似合っているじゃないの」
クラーケンと聞いて男は昔話に出てきた恐ろしいイカの怪物を思い出し、先ほどの光景にはたしかに似合っているとは思ったが、そこから目の前にいる女性を連想するといまいちしっくりこなかった
男がうーんと腕を組んで首を傾げているのを見たクラーケンはますます機嫌を悪くしたのか「むぅぅ」と唸って船上に飛び乗った
しかし、一人で乗るには大きいが二人乗るには少々狭い船、それにある程度の荷物も乗っていることもあり、そこに人間のそれよりも大きな足を10本も持つ魔物が無理矢理よじ登ったせいで船はグルンと横転してしまった
二人は当然海に投げ出されるが、クラーケンは海の魔物なので当然「やっちゃった☆」という感じで特に問題もなく海面に再びにゅっと顔を出し、10本の足を器用に使って男も引き上げた
「ゲホッゲホッ……危ねぇな姉ちゃん、あんたが魔物じゃなければ下手すれば死んでたぞ俺……」
文句を言われた当の本人は全然反省した様子もなく、むしろ自分の足で捕らえた男を側に寄せ、愛しい人にするかのように抱きついた
「いいじゃない無事なんだし、そ・れ・にぃ元々は貴方が綺麗な女を所望したのでしょう♪」
10本の触手を器用に操り、ずぶ濡れになった男の服を丁寧に脱がし、周りに放っていく
「お、おい何しやがる……」
「だってぇ、こんな綺麗な月の下でヤっちゃうなんて素敵でしょう」
全身をがんじがらめにされている男に抵抗するすべなど無く、みるみると剥がされていく
元々薄着だった男の服を脱がすのに時間はさして変わらずあっと言う間に生まれたままの姿になった
裸になった男の姿を見たクラーケンは頬に手を当てウットリとした表情を浮かべ、半身が海に浸かっている男の股間に手を這わせ、男の唇を奪う
舌を滑り込ませ、彼の口内を蹂躙する
長い船上生活になってしまったがゆえにあまり清潔とは言えない男の歯を一本一本丁寧に掃除するかの如く舌を這わせる
自らの唾液を流し込み、ぐちゅぐちゅと男の唾液とかき回し、二人の唾液のカクテルを作って半分の自らの口内に戻し、もう半分を男の口内に残して飲ませた
そしてクラーケンと男の舌を絡ませ軟体動物のように男の口内をにゅるにゅると動き回り蠢いた
「じゅる♥んちゅ♥……んっ♥んっ♥」
そんなやり取りを数回繰り返して、多少は満足したのかクラーケンは男の口から離れた
間には月夜に照らされた銀の橋が架かり消えるように下がっていった
「あぁ……こんなキスしちゃったら我慢できなくなってきたわ♥だ・け・どお月様にも貴方の素敵な姿は見せたくないわぁ♥」
クラーケンがふぅっと艶かしい息を吐き出すと同時に彼女の口から真っ黒なモヤのような物が溢れだした
それは夜よりも暗く優しげな月明かりすら通さないほどの黒さで、ほわほわとガスを可視化したかのように広がりクラーケンと男の周囲を飲み込んだ
二人が闇の中に入ると周辺の景色は一切見えなくなったが、不思議とお互いの身体は見える
それどころかお互いの身体だけが艶かしく輝いて見え、とても魅力的な姿に少し見惚れた後、どちらともなく口付けを交わした
男の体は既に自由が利く程度に解放されていたが、逆に彼女の身体を強く抱きしめ、その手は彼女の股間に這わせた
先ほどよりも深く、お互いの口内の味に溺れるように、唾液がボタボタと垂れるのにも気にせずに貪りあう
口だけでなくお互いの股間に這わせた手で性器に激しく愛撫をも交わしていた
男の性器からは絶え間なく先走り汁が溢れ出て彼女の手を汚し、クラーケンの性器は男の激しい愛撫によってぐちゅぐちゅと非常に嫌らしい音を響かせている
やがて二人同時に身体を震わせると小さな呻き声を上げてお互いの足をそれぞれの体液で汚した
クラーケンは男から口を離すと自分の足の根元辺りに付着した精液を指で掬い、自らの口に運ぶと恍惚とした表情を浮かべる
「ん♥あなたの『コレ』とってもおいしいわぁ♥」
そして彼女は一度出したにもかかわらずまだまだ猛っている男の肉棒を掴むと自らの股座に導く
ひくひくと蠢く彼女の秘所は今か今かと待ち望んでいるようにも見える
彼女によって導かれた男のモノは吸い込まれるかのようににゅるりと彼女の膣内に挿入される
「ぐ……これは……想像以上に………」
「とっても『イイ』でしょう♥」
彼女の膣内はまるでイカそのもののようににゅるにゅると男のモノに絡み付いている
何日も船の上で生活していた男にとってその快楽は強すぎたのか彼女の膣内にあっけなく精液を吐き出してしまう
しかしその硬さはまだまだ失われることなく、緩やかながらも男の方も腰を突き入れる
「ん♥あぁ♥んぅ♥」
早さは緩やかでも確実にクラーケンのイイところを突いているらしく、彼女も嬌声を上げながら男に合わせるように腰を揺すっている
一突きするごとに男が次々と吐き出している精液がびゅくびゅくと溢れ出し、二人のふとももを汚していく
二人はお互いの身体に夢中になっているのとクラーケンの魔力によって周囲が見えていないから気が付いていないが、二人の体は徐々に海中に沈んでいってしまっている
傍から見たら黒いもやもやしたものが海中へとゆっくり沈んでいるように見えるので少々不気味だが、海中に住む魔物達からすれば、クラーケンが夫と交わっているという証なので微笑ましく映るのであろう
激しかった二人の交わりはそれほど時間は経っていないが、まるでお互いの身体を知り尽くした恋人のようなものに変化してきている
男は相手の身体を貪るようなものではなく、相手を気遣うようなものに変化し、クラーケンは相手を気持ちよくするように動いている
男の肉棒は常人では考えられないほどの精を吐き出したにもかかわらず、その固さは失われておらず、クラーケンもずっと男の身体を支えているのにもかかわらず疲労の色は見えない
二人分の暗闇はまだまだ沈んでいく…………
二人の足が海底までつくまでに沈んだとき、二人分の暗闇は晴れた
しかし、元より暗い海底ではちょっと視界が良くなる程度のものであるのだが
「んーっ……ゴチソウサマ♥」
「あなたの……♥……とってもステキだったわ♥」
クラーケンから解放された男はまだぼんやりと彼女に見惚れていたが、その声でハッとした
きょろきょろと周囲を見回して自分たちが海の中に居ることに気が付くと少し慌てたが、前に親友の恋人に教えられた事の一つを思い出して落ち着きを取り戻した
「あー……姉ちゃんも魅力的過ぎてこんな海底まで来ちまったじゃねぇか」
ハハッと男は自嘲的に笑った後、真面目な顔をして彼女に向き直った
クラーケンは男の顔に思わずドキっとした様子で彼の顔を見た後、何を思ったのか急に体をクネクネし始めた
「姉ちゃんよぉ、俺はあんたに惚れちまってこのままここで暮らしてもいいかなぁとは思っている」
「だがよ、命からがら国から逃げだせたはずの俺の親友とその恋人がある街で結婚式をすると思うんだ」
「それだけ出れたら俺は満足だ、だからお願いだからその街まで連れてってくれねぇか?」
その街がどこにあるか知らないんだがな、と付け加えてハハッと笑ったあと彼女に向き直る
この言葉を受けた彼女は両手を頬に添えて白い肌を朱に染めながらうんうんと頷いた
「……それを見送った後、私達の結婚式を挙げればいいんでしょう分かっているわぁ♥」
「そうと決まればさっそく行きましょう、思い立ったが吉日って言葉もあるみたいだし」
彼女の言葉にポカンと口を開けた男の頬にチュッと口付けをした後、クラーケンは男の身体を10本の足で器用に固定すると中々の素早さで移動を開始した
結論から言うと男は再び親友と再会することができた
道中ピンク色な人魚にからかわれたり、クラーケンの気まぐれで奴隷を運搬していた商船を海に沈めたりしていたものの、それほど迷うことなく目的地まではたどり着くことができた
それに彼の乗っていた小舟が運良く件の街の方に向かって流されていたようで数日と経たなかったのも大きいだろう
街で有志の者を集い男のことを救いに行く計画を立てていた親友はクラーケンにぐるぐる巻きにされながら街にたどり着いた男を見ると、かつての男のように大きく笑って彼を迎えた
それからほどなくして親友とその恋人の結婚式は挙げられ、シービショップによる儀式も済まされた
男はというと親友の式の後、海底ではなくその街で暮らすことを決め、妻となったクラーケンに振り回されながらも、かつてのように漁師としての生活をしている
今回の件……海上で死ぬことも飢えることもなく自らの伴侶となる魔物に出会えたこと……によって益々海神への信仰が深くなり、時々街に来るシービショップの説法を熱心に聞いている
男が風の噂で聞いたことだが、そもそもの原因となった貴族もふらっと訪れたリリムが彼女の気まぐれによって彼の妻子の魔物化どころか街ごと魔界化させてしまい淫らな生活をしているという
「…………」
「あら?また私のことを考えてくれてるの♪嬉しいわぁ♥」
「……海神様への祈りを奉げていたところだ」
彼の信仰深さのおかげか、彼が漁に出たときは毎回大量とまでは行かないがそれなり以上の水揚げ量があり、不漁になることはほとんどなかったという
そんな彼の影響もあってかその街ではポセイドン信仰が盛んになり、貿易の拠点としても大きくなっていったそうな
見渡す限りの水平線
海、波、空、雲、太陽以外に見えるものはない
そんな景色の中、一艇の一人で乗るには少し大きい船が浮かんでいる
マストは無く、ボロボロになっている一対の手漕ぎ用の木のオールが仕事を果たさずに半分ほど海に浸かっている
船の持ち主と思われる少し肌がやけているガタイのいい男が胡坐をかいて海に釣り糸を垂らしている
「………何日経ったか忘れたが、流石に退屈だなぁ」
男が傍らにある小さ目の樽の蓋を開け、足元にあるコップのような物を拾い上げ、中に突っ込んで、水と思われる液体を汲み、口に運ぶ
樽に繋がっている青く光るパイプと漏斗のような物は知る人が見れば、雨水を飲み水に変えるマジックアイテムだということはわかるだろう
「しかし、飲み水が無くなってくれば船が沈まない程度に雨が降り…」
男が口を閉じる前に釣竿の先がクイクイと沈む
慣れた手つきでそれを釣り上げると握りこぶしほどの太さの魚が釣り針にかかっていた
「腹が減ってくると魚が釣れる」
魚から釣り針を外し、暴れないように〆てからテーブルともいえないような台の上に置く
「海神様のご加護があるとしか思えねぇ状況だな」
そう呟いた後に彼の信仰する神に感謝の祈りを捧げる
その後、前に船の近くに流れていた海藻を水樽とは別の樽から取り出す
釣り上げた魚と海藻は生食でも食べれるものなので男は黙々とその二つを口の中へ運んでいく
全て食べ切り、再び感謝の祈りを捧げた後、水を飲んで一息ついた男が再び呟いた
「やはりあの時あいつらを助けてやったのは間違いなんて思えねぇな」
男はしばらくの間長くなってきた無精ひげを撫でながら考えるが、満腹で眠くなってきたのかごろんと横になりそのまますやすやと寝息を立て始めた
男がこうなった原因というのは2ヶ月ほど前に遡る
彼はとある街のしがない漁師であった
住んでいた街は魔物に関しては不干渉の姿勢で、主神よりも暮らしに身近である海神への信仰の厚く、平和な街である
最近、王様の代が変わり城下町やその周辺では主神への信仰の方が強まっているらしいが、首都から遠いこの街ではほとんど無関係であった
海を愛し、海神への信仰も厚く、私生活はともかく仕事に関しては真面目な彼であったが、宴の席で酒に酔った親友があることを漏らしたのが事の発端である
「俺さ、実は最近恋人ができたんだ」
同じ漁師で共に遠洋に出かけることもある親友であるが、お互い浮いた話もなかったために男は驚いたが、豪快に笑い酒をもう一杯勧めながら彼の肩を叩いてまるで自分のことであるかのように喜んだ
男には家族が居なかったが、酒を酌み交わす友人、酒場の飲み仲間、自分の仕事を支えてくれる街の人達を家族のように大切に思っており、まるで自分のことのように嬉しかったのだ
「おうおうそいつは良い話じゃねーか、お前と酒を飲める理由が増えるってもんよ」
いつもなら二人して馬鹿笑いするところなのだが、友人は逆に気まずそうに苦笑いをするだけだった
不審に思った男が理由を聞くと、友人は少し考えた後、口を開いた
「………実はその恋人……人魚なんだ」
男にだけ聞こえるような小声で伝えられた事実に彼はぎょっとする
このあたりはまだ魔物が魔物娘に変化したことを知らない者が多いという理由もあるが、それ以上に最近この街では「人魚」という言葉を口にしたがらない理由があるからだ
それはこの地域に住む貴族が「人魚の血」を求めて血眼になっているからだ
その貴族の妻と子供が不治の病にかかってしまい、もはや打つ手立てもなかった
しかし、万病の薬どころか人間を超える寿命をも得ることのできる人魚の血であればなんとかなるだろう、医者にそういわれた貴族は何世代も前に人魚と交流があったと言われているこの街を拠点に手段を選ばず人魚を探していたからだ
人魚に関する情報を持っている者に関して快く提供してくれる人には報奨金を渡すが、少しでも拒むと徹底的に罰を与えようとするからだ
だが男は驚いたのは一瞬で、直ぐに満面の笑みに変わり、親友の杯に酒を注いだ
「今のご時世それは厄介なことかもしれんが、お前に恋人ができたことには変わりねぇ」
「俺は何があろうとお前の味方だ、今日は俺の奢りだ」
友人は男の反応に安堵したのか顔に笑みを取戻し、杯の中身をグイっと飲んだ
それから2週間ほど経った後、どこでばれたのか男の友人は貴族の私兵に追われる身となっていた
男はもしかしたら自分との会話でばれたのかもしれないという引け目もあるが、大切な友人が危機に陥っているということで友人とその恋人を自宅に匿い、逃亡の手助けをした
準備が整い、人も寝静まった時間に三人は港の端に居た
「あれもこれもしてもらった上に恩も返せるような時間が無くて本当に申し訳ないな」
「なぁに俺とお前の仲じゃねぇか気にすんな、この街を出たらどうするつもりだ?何かあてはあるのか?」
「この海陸沿いに沿って隣の国に行けば親魔物領の街がありますのでとりあえずはそちらに向かうつもりですわ」
そうかぁ、と男は感慨深げにうんうんうなると二人に向き直る
「まったくお前にはもったいないぐらいいい娘じゃねぇか、ちゃんと幸せにしてやるんだぞ、お前らの結婚式に出れねぇのが残念で仕方がねえっての」
「人魚の嬢ちゃん、こいつはすぐにブルっちまう奴だが芯こそはしっかりしている、こいつがしっかりしてられるように側でささえてやってくれよな」
「こうなっちまったら今度はいつ会えるか全くわからんが海神様の気分が良ければきっと会えるはずだ、それまでは元気にしてろよ」
男がそういった矢先、どこからか貴族の私兵たちがぞろぞろとやってきた
ぎょっとするものの男は私兵たちと対峙しながら叫んだ
「俺には構うな!何とかなる!さっさと行けっ!!」
二人は一瞬迷ったが、顔を見合わせてうなずき、男へ感謝の言葉を叫びながら友人は海に飛び込み、人魚は水中へ潜った
おそらく恋人の人魚が友人を連れて泳ぎ去ったのだろう、飛び込んだときの泡が無くなっても友人は浮かび上がって来なかった
この後に男は私兵たちに捕らわれ、貴族によって友人殺しというあらぬ罪を被せられ罪人し仕立て上げられた
男はこのことに対して特に反論せず
「どうせ重罪で刑罰を受けるのであれば海神様への元へと還るのが一番だ」
と言ってこの街での最高位の刑罰を受刑することを望んだ
その刑罰は帆の無い船に罪人を乗せ、魔法によって遠洋まで飛ばしてしまうというものである
荷物は船に乗るだけは認められるが、船そのものはそれほど大きくないので大した量にはならない
持ち込んだとしてもそれ以上に飲食物は補給できる見込みは薄いのですぐに尽きてしまう
やがては飢える、船が沈む、自ら海に飛び込む等で海神様の元へ帰る、という死刑である
男は受刑日までは監視付ではあるが自由に過ごすことができたが、船に乗せる物の準備を早々に終えると友人達の無事を海神へ祈りながら今まで通りに過ごした
そして受刑日まであっという間に時間が過ぎ、3週間、それが男が小さな船の上で過ごした時間である
昼だろうが夜だろうが男にはすることが無くただ釣り糸を垂らすのみである
「あー、こんな月が綺麗な夜だってのに綺麗な女もいねぇし酒もねぇ」
綺麗な女性はともかく男が船に持ち込んだ酒は3日で飲み干してしまっている
当然どちらもこの場で調達するのは不可能である
野太い声で唸りながらごろんと横になり、月を見上げた
すると突然大きな音と水しぶきが上がり、彼の視界の端に異様なものが映った
先端あたりが青みがかった全体的に白い柱のような物
一部に吸盤のようなものが見えるところとその形から巨大なイカの足にも見える
男は驚きつつも船から転落しないようにバランスを取っていたが、ゆらりとそのイカの足が船に向かって倒れこんでくる
漁師時代にも経験したことないような体験にわーわーと叫びながら急いでオールを手に取り全力で漕ぎだす
しかし、長い間水に浸かっていたのと、男が慌てるあまり力加減ができなかったのとで倒れこんできた足を避けた程度の距離を走ったところでオールがバキリと折れてしまった
男はもうだめだと悟り、自らの信仰する神に祈りを奉げる姿勢を取ると不思議とその足はするすると海に沈んでいった
いつまで経っても自分の船が傾く様子もないのを不審に思った男が顔を上げると巨大なイカの足の姿は見えず、海から女性の半身がにょっきり生えているのが見えた
「もぅ、そんなに驚かなくたっていいじゃない」
あまりに状況がコロコロ変わったせいでしばらく男はポカンとした様子になってしまっていたが、その女性の言葉で我に返った
その女性は頭に発光している帽子のような物を着け、人間にしてはありえないほど白い肌と豊満な肉体を半裸に近いような黒い服装をしている
岸から遠く離れているこんな場所まで海水浴なんて来れるはずもない、彼女は魔物だ、と我に返った男は判断した
以前に人魚に出会い、魔物の現状を聞いていたので男には目の前の魔物に対してあまり恐怖感等は薄いようだ
「あー……魔物のお姉さん、そりゃあああいうおとぎ話の化け物みたいな登場のされ方したら誰でもびびっちまうぜ……」
男の言葉に魔物は優雅そうな見た目とは裏腹に頬を膨らませて反論した
「化け物って失礼な言い方ねぇ、それに私は魔物でもクラーケンという種族なのですからああいう登場の仕方の方が似合っているじゃないの」
クラーケンと聞いて男は昔話に出てきた恐ろしいイカの怪物を思い出し、先ほどの光景にはたしかに似合っているとは思ったが、そこから目の前にいる女性を連想するといまいちしっくりこなかった
男がうーんと腕を組んで首を傾げているのを見たクラーケンはますます機嫌を悪くしたのか「むぅぅ」と唸って船上に飛び乗った
しかし、一人で乗るには大きいが二人乗るには少々狭い船、それにある程度の荷物も乗っていることもあり、そこに人間のそれよりも大きな足を10本も持つ魔物が無理矢理よじ登ったせいで船はグルンと横転してしまった
二人は当然海に投げ出されるが、クラーケンは海の魔物なので当然「やっちゃった☆」という感じで特に問題もなく海面に再びにゅっと顔を出し、10本の足を器用に使って男も引き上げた
「ゲホッゲホッ……危ねぇな姉ちゃん、あんたが魔物じゃなければ下手すれば死んでたぞ俺……」
文句を言われた当の本人は全然反省した様子もなく、むしろ自分の足で捕らえた男を側に寄せ、愛しい人にするかのように抱きついた
「いいじゃない無事なんだし、そ・れ・にぃ元々は貴方が綺麗な女を所望したのでしょう♪」
10本の触手を器用に操り、ずぶ濡れになった男の服を丁寧に脱がし、周りに放っていく
「お、おい何しやがる……」
「だってぇ、こんな綺麗な月の下でヤっちゃうなんて素敵でしょう」
全身をがんじがらめにされている男に抵抗するすべなど無く、みるみると剥がされていく
元々薄着だった男の服を脱がすのに時間はさして変わらずあっと言う間に生まれたままの姿になった
裸になった男の姿を見たクラーケンは頬に手を当てウットリとした表情を浮かべ、半身が海に浸かっている男の股間に手を這わせ、男の唇を奪う
舌を滑り込ませ、彼の口内を蹂躙する
長い船上生活になってしまったがゆえにあまり清潔とは言えない男の歯を一本一本丁寧に掃除するかの如く舌を這わせる
自らの唾液を流し込み、ぐちゅぐちゅと男の唾液とかき回し、二人の唾液のカクテルを作って半分の自らの口内に戻し、もう半分を男の口内に残して飲ませた
そしてクラーケンと男の舌を絡ませ軟体動物のように男の口内をにゅるにゅると動き回り蠢いた
「じゅる♥んちゅ♥……んっ♥んっ♥」
そんなやり取りを数回繰り返して、多少は満足したのかクラーケンは男の口から離れた
間には月夜に照らされた銀の橋が架かり消えるように下がっていった
「あぁ……こんなキスしちゃったら我慢できなくなってきたわ♥だ・け・どお月様にも貴方の素敵な姿は見せたくないわぁ♥」
クラーケンがふぅっと艶かしい息を吐き出すと同時に彼女の口から真っ黒なモヤのような物が溢れだした
それは夜よりも暗く優しげな月明かりすら通さないほどの黒さで、ほわほわとガスを可視化したかのように広がりクラーケンと男の周囲を飲み込んだ
二人が闇の中に入ると周辺の景色は一切見えなくなったが、不思議とお互いの身体は見える
それどころかお互いの身体だけが艶かしく輝いて見え、とても魅力的な姿に少し見惚れた後、どちらともなく口付けを交わした
男の体は既に自由が利く程度に解放されていたが、逆に彼女の身体を強く抱きしめ、その手は彼女の股間に這わせた
先ほどよりも深く、お互いの口内の味に溺れるように、唾液がボタボタと垂れるのにも気にせずに貪りあう
口だけでなくお互いの股間に這わせた手で性器に激しく愛撫をも交わしていた
男の性器からは絶え間なく先走り汁が溢れ出て彼女の手を汚し、クラーケンの性器は男の激しい愛撫によってぐちゅぐちゅと非常に嫌らしい音を響かせている
やがて二人同時に身体を震わせると小さな呻き声を上げてお互いの足をそれぞれの体液で汚した
クラーケンは男から口を離すと自分の足の根元辺りに付着した精液を指で掬い、自らの口に運ぶと恍惚とした表情を浮かべる
「ん♥あなたの『コレ』とってもおいしいわぁ♥」
そして彼女は一度出したにもかかわらずまだまだ猛っている男の肉棒を掴むと自らの股座に導く
ひくひくと蠢く彼女の秘所は今か今かと待ち望んでいるようにも見える
彼女によって導かれた男のモノは吸い込まれるかのようににゅるりと彼女の膣内に挿入される
「ぐ……これは……想像以上に………」
「とっても『イイ』でしょう♥」
彼女の膣内はまるでイカそのもののようににゅるにゅると男のモノに絡み付いている
何日も船の上で生活していた男にとってその快楽は強すぎたのか彼女の膣内にあっけなく精液を吐き出してしまう
しかしその硬さはまだまだ失われることなく、緩やかながらも男の方も腰を突き入れる
「ん♥あぁ♥んぅ♥」
早さは緩やかでも確実にクラーケンのイイところを突いているらしく、彼女も嬌声を上げながら男に合わせるように腰を揺すっている
一突きするごとに男が次々と吐き出している精液がびゅくびゅくと溢れ出し、二人のふとももを汚していく
二人はお互いの身体に夢中になっているのとクラーケンの魔力によって周囲が見えていないから気が付いていないが、二人の体は徐々に海中に沈んでいってしまっている
傍から見たら黒いもやもやしたものが海中へとゆっくり沈んでいるように見えるので少々不気味だが、海中に住む魔物達からすれば、クラーケンが夫と交わっているという証なので微笑ましく映るのであろう
激しかった二人の交わりはそれほど時間は経っていないが、まるでお互いの身体を知り尽くした恋人のようなものに変化してきている
男は相手の身体を貪るようなものではなく、相手を気遣うようなものに変化し、クラーケンは相手を気持ちよくするように動いている
男の肉棒は常人では考えられないほどの精を吐き出したにもかかわらず、その固さは失われておらず、クラーケンもずっと男の身体を支えているのにもかかわらず疲労の色は見えない
二人分の暗闇はまだまだ沈んでいく…………
二人の足が海底までつくまでに沈んだとき、二人分の暗闇は晴れた
しかし、元より暗い海底ではちょっと視界が良くなる程度のものであるのだが
「んーっ……ゴチソウサマ♥」
「あなたの……♥……とってもステキだったわ♥」
クラーケンから解放された男はまだぼんやりと彼女に見惚れていたが、その声でハッとした
きょろきょろと周囲を見回して自分たちが海の中に居ることに気が付くと少し慌てたが、前に親友の恋人に教えられた事の一つを思い出して落ち着きを取り戻した
「あー……姉ちゃんも魅力的過ぎてこんな海底まで来ちまったじゃねぇか」
ハハッと男は自嘲的に笑った後、真面目な顔をして彼女に向き直った
クラーケンは男の顔に思わずドキっとした様子で彼の顔を見た後、何を思ったのか急に体をクネクネし始めた
「姉ちゃんよぉ、俺はあんたに惚れちまってこのままここで暮らしてもいいかなぁとは思っている」
「だがよ、命からがら国から逃げだせたはずの俺の親友とその恋人がある街で結婚式をすると思うんだ」
「それだけ出れたら俺は満足だ、だからお願いだからその街まで連れてってくれねぇか?」
その街がどこにあるか知らないんだがな、と付け加えてハハッと笑ったあと彼女に向き直る
この言葉を受けた彼女は両手を頬に添えて白い肌を朱に染めながらうんうんと頷いた
「……それを見送った後、私達の結婚式を挙げればいいんでしょう分かっているわぁ♥」
「そうと決まればさっそく行きましょう、思い立ったが吉日って言葉もあるみたいだし」
彼女の言葉にポカンと口を開けた男の頬にチュッと口付けをした後、クラーケンは男の身体を10本の足で器用に固定すると中々の素早さで移動を開始した
結論から言うと男は再び親友と再会することができた
道中ピンク色な人魚にからかわれたり、クラーケンの気まぐれで奴隷を運搬していた商船を海に沈めたりしていたものの、それほど迷うことなく目的地まではたどり着くことができた
それに彼の乗っていた小舟が運良く件の街の方に向かって流されていたようで数日と経たなかったのも大きいだろう
街で有志の者を集い男のことを救いに行く計画を立てていた親友はクラーケンにぐるぐる巻きにされながら街にたどり着いた男を見ると、かつての男のように大きく笑って彼を迎えた
それからほどなくして親友とその恋人の結婚式は挙げられ、シービショップによる儀式も済まされた
男はというと親友の式の後、海底ではなくその街で暮らすことを決め、妻となったクラーケンに振り回されながらも、かつてのように漁師としての生活をしている
今回の件……海上で死ぬことも飢えることもなく自らの伴侶となる魔物に出会えたこと……によって益々海神への信仰が深くなり、時々街に来るシービショップの説法を熱心に聞いている
男が風の噂で聞いたことだが、そもそもの原因となった貴族もふらっと訪れたリリムが彼女の気まぐれによって彼の妻子の魔物化どころか街ごと魔界化させてしまい淫らな生活をしているという
「…………」
「あら?また私のことを考えてくれてるの♪嬉しいわぁ♥」
「……海神様への祈りを奉げていたところだ」
彼の信仰深さのおかげか、彼が漁に出たときは毎回大量とまでは行かないがそれなり以上の水揚げ量があり、不漁になることはほとんどなかったという
そんな彼の影響もあってかその街ではポセイドン信仰が盛んになり、貿易の拠点としても大きくなっていったそうな
14/06/16 20:41更新 / 錆鐚鎌足