連載小説
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再生が始まる刻
 しばらくして泣き止んだシグレは、無愛想な表情で黙り込んだ。今までにないくらい大泣きした事が、物凄く恥ずかしかったのだ。それも、ルカの目の前で泣くなど、どうかしている。

 他人に弱みを見せる。これはシグレが一番やりたくない行為である。何故なら、今までは弱みを見せればそこに付け込まれる事が多く、気が抜けない状況ばかりであったから。

 だが、ルカはそんなシグレを優しく包み込み、柔らかな女体を押し付けてくる。

「……えへへ。シグレさん、落ち着きました?」

 シグレが初めて弱みを見せてくれた事が嬉しいのか、ルカは笑みを浮かべてしがみ付く。その柔らかな女体の感触に、シグレは自身の興奮が徐々に高まっていくのを感じた。

「凄い……シグレさんの、また固くなってますぅ……」

 自身の身体に押し付けられる逸物の感触に、ルカは甘い声をあげる。シグレが興奮していると分かると、ルカは一刻も早くシグレと一つになりたくて仕方が無かった。

「シグレさん。私もう、シちゃいますね?」

 ルカは甘い声でそう言うと騎乗位の体勢になり、腰を浮かせて掴んだ逸物を自身の秘所にあてがう。そして、ゆっくりと腰を下ろしていった。

 シグレには、ルカを跳ね除ける力は無かった。それどころか、拒絶する気も無かった。心の奥底では、ルカと触れ合って癒されている自分が居る事に気付いていた。先ほどルカの前でみっともなく泣いたのも、自分をさらけ出せる相手だからなのかもしれない。

 みっちりと閉じた膣を掻き分け、逸物が奥へと侵入していく。だが、途中で『何か』が逸物に抵抗感を感じさせる。その瞬間、ルカはギュッと辛そうに眉根を寄せる。だが、彼女は行為を止めようとはしない。

「あ、つぅっ……ぅぅ〜っ」

 不意に、ルカが自ら腰を勢いよく落とした。途中で侵入を阻んでいた『何か』がブチ破られ、逸物が奥深くまで呑み込まれてしまった。

「んんっ! んあっ、ああぁぁぁーーーっ!」

 ルカは背を反らし、目を見開いて絶叫する。そして涙をぼろぼろ零しながら、痛みに耐えるかのようにシグレに覆いかぶさってしがみ付く。

「お前、まさか――」
「はぁっ、はぁっ……やっと、やっとシグレと一つになれたよぉ!」

 息も絶え絶えといった様子で、ルカがその言葉を口にする。涙で濡れた表情は、どことなく幸せそうであった。

 そのルカの表情を見たシグレは、初めて狂おしい程の愛おしさを感じた。今まで、ここまでしてくれるような人は居なかった。自分の為に痛い思いをしてまで初めてを捧げてくれたルカが、無性に愛おしかった。

 自分でも、単純だと思う。あれほど誰も信じないとか言ってたくせに、いざこのような事になると、あっさり心が傾いているのだから。正直、フィーナを怒る資格など無い。それでも、シグレはルカに報いたいと思った。今や完全に、シグレはルカの虜になっていた。今この瞬間、シグレは確信していた。ルカは信じられる。いや、ルカだけが信じられる、と。

 シグレは、今までルカを信じきれずに邪険にした事を反省した。ルカがここまでしてくれたのだ。自分も、その愛情に報いたい。フィーナとは上手くいかなかったが、せめてルカは幸せにしたい。心からシグレはそう思った。

 一方のルカは、もう頭の中が真っ白であった。最初はシグレを犯す事への罪悪感があったのだが、今はシグレと一つになれた事が幸せであった。シグレを助けたい、インキュバスに変える事で失った手足を取り戻させる。そんな言い訳をしようとも、自分の心は誤魔化せない。

「ああっ、ああーっ! シグレさぁんっ! 好きっ……好きぃぃっ!」

 ルカはシグレにしがみ付いたまま、腰をカクカクと動かす。その動きは非常に拙い動きであったが、だんだんルカの気持ちに比例するかのごとく大きくなる。

 いくら拙いとはいっても、シグレにはその快感は強すぎた。彼は幾許もしない内に絶頂に追いやられ、盛大にルカの中に射精してしまった。

「はぁぁぁんっ! 出てるぅ! 私のナカで、いっぱい出てるぅぅぅーーーっ!」

 ルカはナカで水っぽいモノが叩きつけられる感触に甘い声をあげると、ぎゅっとしがみ付く力を強め、ガクガクと身体を震わせる。そして、そのままシグレに覆いかぶさって抱きついた状態のまま、口付けていく。

「んちゅっ! んむっ……んはっ! ああんっ、凄い……シグレさんの、大きくなってますぅ!」

 口を貪られた為、微妙に萎えかけた逸物が再びルカのナカで大きくなっていく。その内部を押し広げる感覚に、ルカは再び虜になっていく。

「ルカ、お前……大丈夫なのか?」
「んっ、大丈夫。ありがと」

 ルカはにっこりとシグレに笑いかける。初めてシグレが気遣いを見せた事が嬉しくて、ルカはもっと気持ちよくさせてあげたいとさえ思った。彼女は上体を起こすと、シグレの胸に手をついて再び激しく腰をくねらせ始めた。結合部からはにちゃにちゃと水音が漏れ、精液やら愛液やら、少し赤く染まった体液等が溢れている。

「くっ……ルカっ、また出そう」
「ああぁぁぁーーーっ! シグレさんっ! 出してっ、出してぇっ!」

 激しい腰使いに、再び絶頂に追い込まれるシグレ。そんなシグレを受け入れるべく、ルカは腰をぐっと落とし、奥深くまで逸物を銜え込む。

 そして遂に、二度目の絶頂に追い込まれるシグレ。膣内を押し上げる程勢いよく出された精液に、ルカもまた喜悦の声をあげた。

「ああーんっ! 奥、ビュクビュクってぇぇぇっ! 出てるっ、いっぱい出てるのぉぉぉっ!」

 ルカは射精真っ最中の逸物を刺激するように、グリグリと腰を押し付ける。ぎゅうっと精液を搾り取るように膣が締まり、その感触にシグレは意識が飛んだようになる。

「うあぁぁっ、ルカ、ルカっ!」
「シグレさんっ……シグレさぁんっ!」

 ルカは腰を動かすのを止めない。もはや、止めようとしても腰が止まらないらしい。その快感に導かれるまま、ルカはシグレを犯し続け、そして精液を搾り取っていく。

 そのまま二人は身体を重ねて絶頂に達し続け、何度も何度も快感の渦に沈んでいくのであった。


*****


 そして、シグレはふと眠りから覚める。どうやらいつの間にか眠っていたらしく、気がつけば窓の外は真っ暗であった。横を見れば、ルカがシグレの腕の中ですやすやと眠っている。その顔は、物凄く幸せそうな笑みが浮かんでいる。

(そうか……俺、ルカとセックスしてしまったんだな……)

 シグレは、ぼんやりとそんな事を思う。だが、何故か嫌悪感は無かった。あれ程までに女を拒絶し続けていたのが、嘘のようである。やはり、ルカの心に触れたのが大きいのだろう。すっかりルカに心を許している自分に、シグレは気がついた。

 シグレは、あっさりとルカに心が傾いた自分に苦笑する。だが、悪い気はしなかった。やっと、自分の居場所を見つけた気がしたのだ。そんな心理状態だから、自分の異常な状態に気がつかなかった。だが、しばらくしてシグレは、その異常に気付いた。

(――俺の腕が、動く!?)

 バキバキに肘の骨を砕かれ、腕の腱を絶ち斬られ、一生使い物にならないと思われた腕が拷問前のように動き、ルカを抱きしめているのだ。さすがにしばらく使っていなかったので、感覚は鈍いのだが、それでも一生動かない事を覚悟した時の事を考えれば、奇跡である。

 その時、ルカが目覚めたらしい。彼女は目を開けるとシグレの顔を見つめ、口を開いた。

「シグレさん、ごめんなさい」

 問答無用で犯した事の謝罪だろう。彼女は泣きそうな顔で言葉を重ねる。シグレは、そんなルカを呆気に取られたように見つめていた。

 事情はよく呑み込めていないが、ルカが何かしたのだろう。一生動かないはずの両腕が問題なく動いている事に、シグレは呆然としている。きっとルカが何かしたのだろう。そういえば、セックスの真っ最中に徐々に腕が熱を帯びていくような感覚がした事を思い出したのだ。腕だけではない。身体全体が熱く、何かが滾っているような、そんな感覚。

「ごめんなさい、どうしても我慢出来なかったんですっ! シグレさんの苦しむのを、和らげたくて……」

 彼女が、涙目で説明を始める。それでやっと、シグレは事情が呑み込めた。どうやら、彼女のおかげで身体が動くようになったらしい。まだ鈍い感覚ではあるが、自分の思い通りに動いている。代償としては、自分が普通の人間ではなく、インキュバスとやらになってしまった事だろうか。

 何故か、ルカに対する怒りは無かった。人間でなくなったとはいえ、ここまでして尽くしてくれたルカに対して、怒りなど出てくる訳が無い。

 彼女に何かしたい。泣き顔ではなく、先ほどの笑顔を見せて欲しい。インキュバスになった影響なのか、シグレはルカに対する愛おしさが増していくのを感じていた。何て単純な、とは自分でも思うが、もうこの感情を止められそうに無かった。

 シグレはしばらく呆然と見つめていたが、不意にルカを抱き寄せる。

「……ふぇぇっ?」

 突然の事に、ルカは驚きの表情を見せる。そんなルカに、シグレは言葉をかけた。

「ルカ、ありがとうな」

 シグレは、強くルカを抱きしめる。彼の心が、やっと溶け始めた瞬間であった。
15/03/04 13:43更新 / 香炉 夢幻
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