アポピスと出逢って……
「……な、なあ。あれ、ヤバイんじゃねえのか?」
都市と遺跡を結ぶ街道(とは名ばかりの砂地)の警備をしている同僚が、望遠鏡を片手に遠くを指差している。シュラは同僚から望遠鏡を受け取り、指差した方向を見る。遠くで、一匹の魔物が遺跡を目指して這って来ているところだった。
上半身は人間の女性だが、下半身は蛇。そして、毒々しい黒に近い紫の肌。まぎれもなく、アポピスの特徴を持つ魔物だった。
「どう見ても、アポピスだな」
言い伝えよれば、アポピスは非常に危険な魔物であり、その力はファラオをも凌駕し、瞬く間にファラオの王国を魔界へと変えてしまうという。
神官の予言によれば、ファラオの復活が近いということもあり、ただでさえファラオ側の魔物に人が攫われて都市の人数が減っているというのに、近くに魔界が出来れば教団としては堪ったものではない。人間を襲うという魔物が近くにウジャウジャ住まれたら、危険極まりない。
このような事情もあり、教団は大事にならないうちに徹底的に魔物を排除し、そしてこれ以上遺跡に人を近付けぬ為、街道の警備をシュラたちに命じたのである。
「マジ、どうするんだ?」
同僚がシュラに問う。普通に考えれば、このアポピスがどんな強さなのかは分からないので、援軍を呼んでから退治するのが常道だろう。しかし、放っておけばアポピスによって常闇の魔界が出来てしまう。一刻の猶予もならない事態だといえる。
「お前は都市にもどって援軍を呼べ。俺はあの魔物を止める」
「は? 一人で? お前正気?」
同僚は驚いて言うが、結局は誰かが止めなければ、問答無用でアポピスの蹂躙が始まるだろう。結局、シュラが何とかアポピスを足止めする間に、同僚が援軍を呼ぶこととなった。
*****
「へえ、私を止めようというの?」
シュラの目の前にいるアポピスは、感心したように言う。しかし、シュラは黙ったままだった。正直、圧倒されている。遠目で見たときはそこまで感じなかったが、実際に間近で見ると大きい。と言うよりは、長い。上半身は人間の女性と同じような大きさだが、下半身の蛇の部分が、物凄く長い。近づき過ぎれば、その長い尾に巻きつかれるかもしれない。シュラは剣に手をかけたまま近付けない。
「どうした? 来ないの?」
アポピスはシュラに声をかけるが、シュラは攻撃しない。蛇の攻撃方法として、一気に飛びついて噛み付くものがある。もしかしたら、とある毒蛇のように口から毒を飛ばすかもしれない。様々な攻撃方法が予測される中、うかつに近寄れば素早い攻撃に対処できない。それに、時間を稼ぐという目的もあった。同僚が都市に向かったのが十分前。援軍をつれて戻ってくるのに、早くてもあと五十分はかかる。少しでも戦いを引き延ばして有利な状況にしたい。
しかし、目の前のアポピスは待ってくれそうになかった。
「来ないのなら、こちらから行くわよ?」
アポピスは痺れをきらし、一気に勝負を仕掛ける。その素早い飛びつきに、シュラは何とかかわすのがやっとだった。シュラはズザザッと距離を取る。もう全身冷や汗がダラダラ流れている。ヤバイ、これはヤバ過ぎる。シュラは勝てる気がしなくなっているのを感じた。
「あら、今のをかわすなんてやるじゃない。貴方、人間の中では腕が立つ方ね?」
アポピスは嬉しそうにシュラを見る。しかし、シュラは全く嬉しくなかった。自分はマゾでもなければ戦闘狂でもない。相手が強ければ燃えるなんて、そんな馬鹿な考えは持たない主義だ。
しかし、アポピスは次々と攻撃を仕掛けてくる。シュラは危なっかしく右に左に転がってかわすものの、ついに捕らえられてしまう。必死でかわす内に、いつの間にか蛇の尾の射程圏内に入ってしまい、巻き付かれて身動きが取れなくなってしまう。
「ふふっ、捕まえたわ」
アポピスはペロッと舌なめずりをする。それを見たシュラは恐怖に震え、騒ぎ始める。
「ちょっ、マジ! うわっ!」
ジタバタと暴れるも、アポピスは拘束を解いてくれない。それでもシュラは何とか逃げようとするが、無駄な行動でしかなかった。
「落ち着いて。別に取って食べたりはするけど、命までは取らないわ」
「食うのかよ! まだ死にたくねえよ……」
アポピスの『食う』はシュラの考える『食う』とは別の意味なのだが、シュラは死を予感し、まだ遣り残した事めっちゃ有るのにと嘆く。
「だから命は取らないって言ってるでしょ! 落ち着きなさい!」
そんなシュラを、アポピスはなだめる。アポピスにしてみれば、何で『食べる』をイートの方だと連想するのかが分からない。アポピスはシュラの口を塞ぐように口付けをする。シュラはビックリして目を白黒させるのみだ。
ひとしきりシュラの唇を貪った後、アポピスはチュパッと口を離す。
「ちょっ……何で?」
シュラはビックリして途切れ途切れに言葉を発する。なぜいきなりキスされたのかがよく分からない。魔物といえば、問答無用で人を襲うものだと聞いていたからだ。だから捕まった地点で命を取られると予想していただけに、アポピスの行動は不可解そのものだった。
「だって、貴方の事、気に入ったんだもん」
「え! 今何と……」
「ふふっ、お持ち帰り〜っ♪」
その言葉を聞き、シュラは青褪める。すぐに殺されることはなさそうだが、何だか別の意味で危険を感じたのだ。すぐにでも逃げたいところなのだが、がっちりとホールドされている為、逃げられない。
アポピスはシュラを抱きかかえると、そのままどこかに移動しようとする。
「うわぁぁっ! 離せっ、離してくれっ!」
「だ〜めっ、貴方は私のモノよ♪」
アポピスは歌うように言うと、シュラを抱き締めたまま長い尾を引きずって、そのまま去っていった。
シュラの同僚が援軍を呼んで戻ってきた時、遺跡の近くにシュラの剣が残されているだけであり、アポピスも含めてシュラの姿はどこにも存在しなかった。
砂漠のオアシスの水辺に連れて行かれたシュラは、あっという間に服を剥ぎ取られ、ドボンと水中に投げ込まれた。そして、すぐ後にアポピスが飛び込んでくる。
「ぶはぁっ! 何すんだ!」
「だって、身体洗わないと砂まみれじゃない」
アポピスはそう言うと、シュラを捕まえて手で身体を弄り始める。さわさわと撫でるような柔らかい手つきなのだが、目が怖い。
「ちょっ、止め! どこ触って――」
「だって、しっかり洗わないと……」
アポピスはシュラの身体を洗い続け、そしてある部分にも手を這わせる。
「うわっ! そこは」
「あら? これは何かしら?」
アポピスは大きくなり始めたシュラのアレを弄り、軽く握る。さっきから身体中を撫で回されていたのだ。必死で堪えていても我慢に限界がある。それに魔物とはいえ、上半身だけなら物凄い美女に密着されて反応しない方がおかしい。
「私で反応してくれたのね」
「いや、違う……」
アポピスの言葉をシュラは否定するものの、身体の一部がはっきりと反応している以上、ごまかせない。アポピスはにやぁっと笑うと、シュラのアレを強く扱きはじめ、刺激を加えた。
「ま、待ってくれ! そんな事されたら――」
「いいわよ。もっと気持ち良くなってちょうだい」
シュラの言葉を遮るように言葉を重ねると、アポピスはシュラの首筋に顔を近づけ、カプッと噛み付いた。途端に、シュラの身体がビクッとなる。
「お、お前! 一体何を?」
噛み付かれた所の感覚が熱くなるのを感じ、それがだんだん全身に広がっていく。そしてシュラは、目の前のアポピスに対する劣情が強くなっていくのを感じた。
「うっ、こ、これは?」
シュラはもう、目の前の極上の雌を犯すことで頭がいっぱいであった。どこかで止めようとは思うものの、削られた理性は行動を制御出来ず、シュラはアポピスの方に手を伸ばし、抱き寄せた。
「ああっ……」
シュラの胸の中に抱き寄せられ、アポピスは甘い声を出す。しかし、シュラはもう止める気は無かった。シュラはアポピスをしっかりと抱き寄せると、手をアポピスの秘所の部分に当てる。そしてゆっくりと動かし始めた。
「ああっ、それダメぇ!」
ダメと言いながらも、アポピスは嫌がる素振りも見せず、腰を突き出すようにしてシュラの手を受け入れた。シュラは指でみっちりと閉じた秘所の割れ目を撫でる。すると、アポピスはとても可愛い声で鳴きながら腰を揺り動かす。
「あはぁっ、ああん! もう、もうダメぇ!」
アポピスは遂に我慢の限界に達し、シュラの手を振りはらう。そして、シュラにしがみ付くといきり立つ逸物を秘所にあてがい、ズブズブと迎え入れた。
「あ、ああああアァァァッッッ!」
アポピスは自身の中にシュラのが入った瞬間、一際大きな声を出す。子宮を押し上げるような衝撃に、アポピスは頭の中が真っ白になっていくのを感じた。
そしてシュラも、あまりの気持ち良さに頭がぼうっとなる。シュラはアポピスのくびれを掴むと、滅茶苦茶に揺さぶってガンガン腰を突き出し始めた。
「ああっ! あんっ、あんっ! やっ……こんなの、知らないよぉ!」
アポピスは初めて経験する快感に慄き、喘ぐ。しかし、シュラは容赦しない。アポピスが快感に喘ぐほど、余計に劣情が増していく。自分達が浸かっている水がバチャバチャと鳴るくらい激しく突きまくる。
「ああん! 止めて、止めてぇ! ダメっ、おかしくなっちゃうよぉ!」
「お前から誘ったんだろ! 滅茶苦茶にヤりまくってやるから、覚悟しとけ」
「そんなぁ……あはぁっ! らめっ、らめぇ!」
こんなはずでは無かった。男を虜にするつもりが、反対に自分が男の虜になってしまっている。しかし一方で、これでも良いとアポピスは思っていた。自分はもはや、この男から離れられないだろう。ならば、もう離さない。どこまでもついて行き、逃がさない。
アポピスは自分ごとシュラの身体に胴体を巻きつけ、決して逃がすまいという決意通りにシュラと捕らえる。
そしてシュラも、そんなアポピスの行動に我を忘れてしまう。
「ヤバイ、もう出そう……出すぞ、出すぞっ!」
「あはぁっ、出してぇ! 孕んじゃうくらい、いっぱい出してぇ!」
アポピスはそう言うと、シュラの首筋に腕を回し、いっそう強く胴体の締め付けを強める。シュラもアポピスの腰をしっかりと抱き寄せて逸物を根元まで膣内に押し込み、ありったけの欲望を解放した。
「あひぃぃっ! お腹、熱いよぉぉぉっ! いいっ、イクっ、イっちゃうぅぅぅーーーっ!」
子宮いっぱいに溢れるほど中に出され、アポピスはビクンビクンっと歓喜に打ち震えた。
事を終えてシュラは、冷静になる。注ぎ込まれた毒でまだ身体に熱さを感じるものの、目の前の女に対する劣情は薄れている。
(やってしまった……)
魔物娘とヤってしまった。教団にこの事が知られれば、問答無用で異端審問にかけられ、火あぶりの刑である。しかし、シュラに後悔の念は無い。それほどにアポピスとのエッチは気持ち良く、何だかんだでシュラもアポピスの虜となっていた。
しばらくシュラが余韻に浸っていると、アポピスがもぞもぞと動き出す。脱力していた身体に再び力を込め、秘所に逸物を迎え入れたままゆるゆると動き始めた。
「おい、ちょっと待て! またヤるのかよ!」
「だって、あんなにグチョグチョにかき回されて、中に出されてイかされたら……」
もう離れられない、とアポピスは囁き、再び快感を貪り始める。
「待て! せめて少し休ませてくれ!」
「ヤダっ! 今度は私が貴方を好きにする番なのっ!」
そう言ってアポピスは、再びシュラの首筋にカプッと噛み付き、毒を注ぎ込んだ。やっと性欲が鎮まったと思ったのに、再びシュラは自身の欲望が大きくなっていくのを感じた。
そしてそのまま、二人はお互いを求め、ドロドロに溶け合った。
*****
結局シュラはそのまま教団を出奔し、親魔物領へと移住した。そして、そこであのアポピスと結婚する事になる。
結婚して移住することで、シュラは一つ気付いた事がある。それは、教団の教えが大嘘だという事である。今までは、魔物は人を容赦なく襲い、問答無用で命を奪うと聞かされた。確かに大昔はそうであったかもしれない。しかし今は魔物も変革しており、むしろ人間に友好的な者が多い。今までに魔物に攫われて命を落としたと思われていた人々も、この親魔物領で幸せに暮らしていたのである。
では何故教団は魔物を悪と決め付けるのか。それは、自分達が神の名の元に権力を握り続けたいだけである。人間と魔物の間に子が出来れば、その子は魔物娘となる。そうなれば、人間の数が減る。人間の信者からの貢物によって甘い汁を啜っている教団にとって、人間が減るのは大問題なのである。
今ではシュラは、別に人間が減ってもいいとまで思っている。騙し騙されながら争い、寝取り寝取られて他人を裏切り続ける人よりかは、魔物娘の方が大分良い。それに、(数は少ないが)人間と魔物の間に男が生まれない訳ではない。そして教団も今は堕落し、口先だけの生臭な連中ばかりである。もはや大義名分も何もあったもんじゃない。
アポピスと出逢えた事に感謝しながら、シュラは今日も幸せに過ごしている。
「ねえ。さっき話していた女の人、誰?」
「待て、落ち着けメリア! 断じて浮気じゃねえぞ!」
妻であるアポピス――メリアにギチギチと巻き付かれながら、シュラは反論する。基本的に幸せなのだが、一つ難があるとすれば、この愛妻が非常に嫉妬深いことであろうか。顔見知りの女性と挨拶を交わしただけでコレである。全く、俺が好きなのはメリアだけだと言うのに、とシュラはため息をつく。
「じゃあ、今夜は百回イかせて。そしたら許してあげる」
「待て、俺が干からびる!」
とはいえ、結局本当に百回イかせる事になるんだろうなとシュラは思う。お互いに他愛の無い言い合いを楽しんでる所がある。もちろん、メリアも本気で怒っている訳ではない。もし本当に怒っていたら、シュラは今頃全身バキバキに折られて絞め殺されている。
「じゃあ今日は、お前がもうダメって言っても容赦しないからな」
「あら、いつも容赦してないじゃない。今日こそ、貴方をヒイヒイ言わせてあげるわ」
毎日がこんな調子である。しかし口先ではこう言うものの、結局はお互いに甘々な夜を迎える事は明白である。ふふっとお互いに笑い、そしてどちらからともなく唇を重ねる。人間と魔物では子どもは出来にくいとも言われるが、二人の間に子どもが出来るのも、そう遠い日ではなさそうだった。
都市と遺跡を結ぶ街道(とは名ばかりの砂地)の警備をしている同僚が、望遠鏡を片手に遠くを指差している。シュラは同僚から望遠鏡を受け取り、指差した方向を見る。遠くで、一匹の魔物が遺跡を目指して這って来ているところだった。
上半身は人間の女性だが、下半身は蛇。そして、毒々しい黒に近い紫の肌。まぎれもなく、アポピスの特徴を持つ魔物だった。
「どう見ても、アポピスだな」
言い伝えよれば、アポピスは非常に危険な魔物であり、その力はファラオをも凌駕し、瞬く間にファラオの王国を魔界へと変えてしまうという。
神官の予言によれば、ファラオの復活が近いということもあり、ただでさえファラオ側の魔物に人が攫われて都市の人数が減っているというのに、近くに魔界が出来れば教団としては堪ったものではない。人間を襲うという魔物が近くにウジャウジャ住まれたら、危険極まりない。
このような事情もあり、教団は大事にならないうちに徹底的に魔物を排除し、そしてこれ以上遺跡に人を近付けぬ為、街道の警備をシュラたちに命じたのである。
「マジ、どうするんだ?」
同僚がシュラに問う。普通に考えれば、このアポピスがどんな強さなのかは分からないので、援軍を呼んでから退治するのが常道だろう。しかし、放っておけばアポピスによって常闇の魔界が出来てしまう。一刻の猶予もならない事態だといえる。
「お前は都市にもどって援軍を呼べ。俺はあの魔物を止める」
「は? 一人で? お前正気?」
同僚は驚いて言うが、結局は誰かが止めなければ、問答無用でアポピスの蹂躙が始まるだろう。結局、シュラが何とかアポピスを足止めする間に、同僚が援軍を呼ぶこととなった。
*****
「へえ、私を止めようというの?」
シュラの目の前にいるアポピスは、感心したように言う。しかし、シュラは黙ったままだった。正直、圧倒されている。遠目で見たときはそこまで感じなかったが、実際に間近で見ると大きい。と言うよりは、長い。上半身は人間の女性と同じような大きさだが、下半身の蛇の部分が、物凄く長い。近づき過ぎれば、その長い尾に巻きつかれるかもしれない。シュラは剣に手をかけたまま近付けない。
「どうした? 来ないの?」
アポピスはシュラに声をかけるが、シュラは攻撃しない。蛇の攻撃方法として、一気に飛びついて噛み付くものがある。もしかしたら、とある毒蛇のように口から毒を飛ばすかもしれない。様々な攻撃方法が予測される中、うかつに近寄れば素早い攻撃に対処できない。それに、時間を稼ぐという目的もあった。同僚が都市に向かったのが十分前。援軍をつれて戻ってくるのに、早くてもあと五十分はかかる。少しでも戦いを引き延ばして有利な状況にしたい。
しかし、目の前のアポピスは待ってくれそうになかった。
「来ないのなら、こちらから行くわよ?」
アポピスは痺れをきらし、一気に勝負を仕掛ける。その素早い飛びつきに、シュラは何とかかわすのがやっとだった。シュラはズザザッと距離を取る。もう全身冷や汗がダラダラ流れている。ヤバイ、これはヤバ過ぎる。シュラは勝てる気がしなくなっているのを感じた。
「あら、今のをかわすなんてやるじゃない。貴方、人間の中では腕が立つ方ね?」
アポピスは嬉しそうにシュラを見る。しかし、シュラは全く嬉しくなかった。自分はマゾでもなければ戦闘狂でもない。相手が強ければ燃えるなんて、そんな馬鹿な考えは持たない主義だ。
しかし、アポピスは次々と攻撃を仕掛けてくる。シュラは危なっかしく右に左に転がってかわすものの、ついに捕らえられてしまう。必死でかわす内に、いつの間にか蛇の尾の射程圏内に入ってしまい、巻き付かれて身動きが取れなくなってしまう。
「ふふっ、捕まえたわ」
アポピスはペロッと舌なめずりをする。それを見たシュラは恐怖に震え、騒ぎ始める。
「ちょっ、マジ! うわっ!」
ジタバタと暴れるも、アポピスは拘束を解いてくれない。それでもシュラは何とか逃げようとするが、無駄な行動でしかなかった。
「落ち着いて。別に取って食べたりはするけど、命までは取らないわ」
「食うのかよ! まだ死にたくねえよ……」
アポピスの『食う』はシュラの考える『食う』とは別の意味なのだが、シュラは死を予感し、まだ遣り残した事めっちゃ有るのにと嘆く。
「だから命は取らないって言ってるでしょ! 落ち着きなさい!」
そんなシュラを、アポピスはなだめる。アポピスにしてみれば、何で『食べる』をイートの方だと連想するのかが分からない。アポピスはシュラの口を塞ぐように口付けをする。シュラはビックリして目を白黒させるのみだ。
ひとしきりシュラの唇を貪った後、アポピスはチュパッと口を離す。
「ちょっ……何で?」
シュラはビックリして途切れ途切れに言葉を発する。なぜいきなりキスされたのかがよく分からない。魔物といえば、問答無用で人を襲うものだと聞いていたからだ。だから捕まった地点で命を取られると予想していただけに、アポピスの行動は不可解そのものだった。
「だって、貴方の事、気に入ったんだもん」
「え! 今何と……」
「ふふっ、お持ち帰り〜っ♪」
その言葉を聞き、シュラは青褪める。すぐに殺されることはなさそうだが、何だか別の意味で危険を感じたのだ。すぐにでも逃げたいところなのだが、がっちりとホールドされている為、逃げられない。
アポピスはシュラを抱きかかえると、そのままどこかに移動しようとする。
「うわぁぁっ! 離せっ、離してくれっ!」
「だ〜めっ、貴方は私のモノよ♪」
アポピスは歌うように言うと、シュラを抱き締めたまま長い尾を引きずって、そのまま去っていった。
シュラの同僚が援軍を呼んで戻ってきた時、遺跡の近くにシュラの剣が残されているだけであり、アポピスも含めてシュラの姿はどこにも存在しなかった。
砂漠のオアシスの水辺に連れて行かれたシュラは、あっという間に服を剥ぎ取られ、ドボンと水中に投げ込まれた。そして、すぐ後にアポピスが飛び込んでくる。
「ぶはぁっ! 何すんだ!」
「だって、身体洗わないと砂まみれじゃない」
アポピスはそう言うと、シュラを捕まえて手で身体を弄り始める。さわさわと撫でるような柔らかい手つきなのだが、目が怖い。
「ちょっ、止め! どこ触って――」
「だって、しっかり洗わないと……」
アポピスはシュラの身体を洗い続け、そしてある部分にも手を這わせる。
「うわっ! そこは」
「あら? これは何かしら?」
アポピスは大きくなり始めたシュラのアレを弄り、軽く握る。さっきから身体中を撫で回されていたのだ。必死で堪えていても我慢に限界がある。それに魔物とはいえ、上半身だけなら物凄い美女に密着されて反応しない方がおかしい。
「私で反応してくれたのね」
「いや、違う……」
アポピスの言葉をシュラは否定するものの、身体の一部がはっきりと反応している以上、ごまかせない。アポピスはにやぁっと笑うと、シュラのアレを強く扱きはじめ、刺激を加えた。
「ま、待ってくれ! そんな事されたら――」
「いいわよ。もっと気持ち良くなってちょうだい」
シュラの言葉を遮るように言葉を重ねると、アポピスはシュラの首筋に顔を近づけ、カプッと噛み付いた。途端に、シュラの身体がビクッとなる。
「お、お前! 一体何を?」
噛み付かれた所の感覚が熱くなるのを感じ、それがだんだん全身に広がっていく。そしてシュラは、目の前のアポピスに対する劣情が強くなっていくのを感じた。
「うっ、こ、これは?」
シュラはもう、目の前の極上の雌を犯すことで頭がいっぱいであった。どこかで止めようとは思うものの、削られた理性は行動を制御出来ず、シュラはアポピスの方に手を伸ばし、抱き寄せた。
「ああっ……」
シュラの胸の中に抱き寄せられ、アポピスは甘い声を出す。しかし、シュラはもう止める気は無かった。シュラはアポピスをしっかりと抱き寄せると、手をアポピスの秘所の部分に当てる。そしてゆっくりと動かし始めた。
「ああっ、それダメぇ!」
ダメと言いながらも、アポピスは嫌がる素振りも見せず、腰を突き出すようにしてシュラの手を受け入れた。シュラは指でみっちりと閉じた秘所の割れ目を撫でる。すると、アポピスはとても可愛い声で鳴きながら腰を揺り動かす。
「あはぁっ、ああん! もう、もうダメぇ!」
アポピスは遂に我慢の限界に達し、シュラの手を振りはらう。そして、シュラにしがみ付くといきり立つ逸物を秘所にあてがい、ズブズブと迎え入れた。
「あ、ああああアァァァッッッ!」
アポピスは自身の中にシュラのが入った瞬間、一際大きな声を出す。子宮を押し上げるような衝撃に、アポピスは頭の中が真っ白になっていくのを感じた。
そしてシュラも、あまりの気持ち良さに頭がぼうっとなる。シュラはアポピスのくびれを掴むと、滅茶苦茶に揺さぶってガンガン腰を突き出し始めた。
「ああっ! あんっ、あんっ! やっ……こんなの、知らないよぉ!」
アポピスは初めて経験する快感に慄き、喘ぐ。しかし、シュラは容赦しない。アポピスが快感に喘ぐほど、余計に劣情が増していく。自分達が浸かっている水がバチャバチャと鳴るくらい激しく突きまくる。
「ああん! 止めて、止めてぇ! ダメっ、おかしくなっちゃうよぉ!」
「お前から誘ったんだろ! 滅茶苦茶にヤりまくってやるから、覚悟しとけ」
「そんなぁ……あはぁっ! らめっ、らめぇ!」
こんなはずでは無かった。男を虜にするつもりが、反対に自分が男の虜になってしまっている。しかし一方で、これでも良いとアポピスは思っていた。自分はもはや、この男から離れられないだろう。ならば、もう離さない。どこまでもついて行き、逃がさない。
アポピスは自分ごとシュラの身体に胴体を巻きつけ、決して逃がすまいという決意通りにシュラと捕らえる。
そしてシュラも、そんなアポピスの行動に我を忘れてしまう。
「ヤバイ、もう出そう……出すぞ、出すぞっ!」
「あはぁっ、出してぇ! 孕んじゃうくらい、いっぱい出してぇ!」
アポピスはそう言うと、シュラの首筋に腕を回し、いっそう強く胴体の締め付けを強める。シュラもアポピスの腰をしっかりと抱き寄せて逸物を根元まで膣内に押し込み、ありったけの欲望を解放した。
「あひぃぃっ! お腹、熱いよぉぉぉっ! いいっ、イクっ、イっちゃうぅぅぅーーーっ!」
子宮いっぱいに溢れるほど中に出され、アポピスはビクンビクンっと歓喜に打ち震えた。
事を終えてシュラは、冷静になる。注ぎ込まれた毒でまだ身体に熱さを感じるものの、目の前の女に対する劣情は薄れている。
(やってしまった……)
魔物娘とヤってしまった。教団にこの事が知られれば、問答無用で異端審問にかけられ、火あぶりの刑である。しかし、シュラに後悔の念は無い。それほどにアポピスとのエッチは気持ち良く、何だかんだでシュラもアポピスの虜となっていた。
しばらくシュラが余韻に浸っていると、アポピスがもぞもぞと動き出す。脱力していた身体に再び力を込め、秘所に逸物を迎え入れたままゆるゆると動き始めた。
「おい、ちょっと待て! またヤるのかよ!」
「だって、あんなにグチョグチョにかき回されて、中に出されてイかされたら……」
もう離れられない、とアポピスは囁き、再び快感を貪り始める。
「待て! せめて少し休ませてくれ!」
「ヤダっ! 今度は私が貴方を好きにする番なのっ!」
そう言ってアポピスは、再びシュラの首筋にカプッと噛み付き、毒を注ぎ込んだ。やっと性欲が鎮まったと思ったのに、再びシュラは自身の欲望が大きくなっていくのを感じた。
そしてそのまま、二人はお互いを求め、ドロドロに溶け合った。
*****
結局シュラはそのまま教団を出奔し、親魔物領へと移住した。そして、そこであのアポピスと結婚する事になる。
結婚して移住することで、シュラは一つ気付いた事がある。それは、教団の教えが大嘘だという事である。今までは、魔物は人を容赦なく襲い、問答無用で命を奪うと聞かされた。確かに大昔はそうであったかもしれない。しかし今は魔物も変革しており、むしろ人間に友好的な者が多い。今までに魔物に攫われて命を落としたと思われていた人々も、この親魔物領で幸せに暮らしていたのである。
では何故教団は魔物を悪と決め付けるのか。それは、自分達が神の名の元に権力を握り続けたいだけである。人間と魔物の間に子が出来れば、その子は魔物娘となる。そうなれば、人間の数が減る。人間の信者からの貢物によって甘い汁を啜っている教団にとって、人間が減るのは大問題なのである。
今ではシュラは、別に人間が減ってもいいとまで思っている。騙し騙されながら争い、寝取り寝取られて他人を裏切り続ける人よりかは、魔物娘の方が大分良い。それに、(数は少ないが)人間と魔物の間に男が生まれない訳ではない。そして教団も今は堕落し、口先だけの生臭な連中ばかりである。もはや大義名分も何もあったもんじゃない。
アポピスと出逢えた事に感謝しながら、シュラは今日も幸せに過ごしている。
「ねえ。さっき話していた女の人、誰?」
「待て、落ち着けメリア! 断じて浮気じゃねえぞ!」
妻であるアポピス――メリアにギチギチと巻き付かれながら、シュラは反論する。基本的に幸せなのだが、一つ難があるとすれば、この愛妻が非常に嫉妬深いことであろうか。顔見知りの女性と挨拶を交わしただけでコレである。全く、俺が好きなのはメリアだけだと言うのに、とシュラはため息をつく。
「じゃあ、今夜は百回イかせて。そしたら許してあげる」
「待て、俺が干からびる!」
とはいえ、結局本当に百回イかせる事になるんだろうなとシュラは思う。お互いに他愛の無い言い合いを楽しんでる所がある。もちろん、メリアも本気で怒っている訳ではない。もし本当に怒っていたら、シュラは今頃全身バキバキに折られて絞め殺されている。
「じゃあ今日は、お前がもうダメって言っても容赦しないからな」
「あら、いつも容赦してないじゃない。今日こそ、貴方をヒイヒイ言わせてあげるわ」
毎日がこんな調子である。しかし口先ではこう言うものの、結局はお互いに甘々な夜を迎える事は明白である。ふふっとお互いに笑い、そしてどちらからともなく唇を重ねる。人間と魔物では子どもは出来にくいとも言われるが、二人の間に子どもが出来るのも、そう遠い日ではなさそうだった。
14/03/31 12:01更新 / 香炉 夢幻