安息の地
旅をしていた剣客・コハクは、自身の目の前で繰り広げられる事態に呆然としていた。
「……酷え」
コハクが見たものとは、教団の人間が魔物を迫害している姿である。彼の出身ジパングでは、人間と魔物(彼の国では妖怪)は基本的に共存しており、互いに争う事は滅多にない。
しかし、彼がジパングを出ると状況は一変し、反魔物主義の地方では特に魔物に対する風当たりが強かった。
そして、彼の目の前で、聖騎士の格好をした者どもが、一匹のラミアを追い回していた。
ラミアは基本的に強気な者が多いと聞いていたが、多勢に無勢。武器も持たない彼女は、ただ逃げ回るしか出来なかった。その彼女はコハクの姿を見ると、一目散に這いより、救いを求めた。
「お願い、助けて。教団に追われてるの」
コハクをジパング人と見た彼女は、ジパング人の魔物にも友好的だという噂を頼りに、コハクに取りすがる。
「俺が止めておく。早く行け」
ジパングの諺に『窮鳥懐に入れば猟師これを殺さず』というものがある。その言葉通りにコハクはラミアを逃がすと、自身は道のど真ん中に立ち、迫ってくる聖騎士と対峙した。
「そこの若者、早くそこをどけ!」
追いついてきた聖騎士の一人が、コハクに言う。その口調はやや傲慢で、コハクが嫌いなタイプのものだった。
「だが断る!」
「何っ! 貴様、我らに歯向かう気か!」
聖騎士はコハクの答えに驚く。彼らにとっては人間が魔物を庇い立てするなど、想像の外なのだ。だから彼らは一瞬、コハクが何を言っているのか理解出来なかった。コハクが自分達に味方する気は無いと分かると、聖騎士たちは剣の柄に手をかけ、脅しにかかる。しかし、その言動こそコハクが最も嫌いなタイプのものだった。
「はあ? お前ら何様? どんだけ偉そうなんだよ」
「もうよい! 貴様の言動、我らの神を冒涜するものとして我らが成敗してくれよう」
コハクの言葉に業を煮やした聖騎士たちは、剣を抜いてコハクに斬りかかった。魔物でもない人間を本気で斬る気だった。彼らにとって、魔物は悪。ならば、悪に味方する者も悪である。たとえそれが人間であっても、容赦はしない。
「はあ、鬱陶しいな……」
コハクは一つため息をつくと、腰に差していたジパング刀を抜いた。その刀を見た聖騎士たちは、コハクをあざ笑う。
「ははっ、そんな細い剣で打ち合う気か。そんなもの、へし折ってくれよう!」
意気揚々と剣を振りかぶり、コハクに迫る聖騎士たち。しかし、彼らは知らなかった。ジパングには、ジパング独特の戦闘法が存在した事に。そして、その戦闘法は、自分達では計り知れない程の妙技を誇る事に。
普段からジパング人を、悪である魔物と積極的に関わる蛮人と見なしている聖騎士たちは、ロクにジパングの事を知らずに馬鹿にしている。当然、ジパングの戦闘法など知る由も無い。その為、彼らは訳が分からぬうちにコハクに倒され、地面に這いつくばっていた。
「い、一体、何が……」
聖騎士たちは、驚愕した目でコハクを見上げる。自信を持って振るった一撃が空振りし、しかもそれが避けたとも見えない動きだったので、彼らにはコハクが魔法か何かを使ったようにしか思えなかった。
「安心しろ、峰討ちだ。この刀、お前らの血で汚すには惜しいからな」
コハクは抜いていた刀を、スッと鞘に収める。その時、複数の足音がして、新たに聖騎士たちが姿を現した。
「居たぞ、あいつだ!」
「何、あいつが我々の邪魔をしていた奴か!」
「たった一人でいい度胸じゃねえか! 仲間の敵、ここで晴らさせてもらう」
今度は、さっき相手した人数よりも多い。正直、こんなに早く教団の連中が集まるのは予想外だった。おそらく、さっき相手した聖騎士の一人が、戦う前に密かにその場を離れ、仲間を呼んだのだろう。そう言えば、一人足りない気がしていた。
いくらコハクといえども、さすがに多勢に無勢。こんな所で命を散らす気は無い。となれば、とるべき行動はただ一つ。
「――三十六計、逃げるにしかず」
「待てこの野郎!」
コハクは聖騎士の前からすたこらと逃げ出した。もはや当初の目的を忘れた聖騎士たちは、執拗にコハクを追い回した。
「あちゃー。これじゃあ、あの街に戻れねえや」
コハクは、離れた所から街の入り口を見て、苦笑する。先ほどの騒ぎにより、聖騎士たちが血なまこになってコハクを探し回っている。砂漠の中でやっと見つけた街だというのに、これでは街の中に入れない。
「こんな砂漠で野宿って、キツイよなあ……」
コハクはため息をつく。自業自得である。余計な事に首を突っ込んで騒ぎを大きくしたのだがら無理も無い。しかし、考え無しの行動であったものの、コハクは後悔する気はない。もともと楽観的なコハクは、反省という事をしない。
コハクの故郷ジパングでは、魔物を迫害することはまずありえない。コハクにとっても、魔物は隣人ともいえる存在であり、(一部の魔物を除いて)悪という概念は無かった。だから救いを求めてきた魔物を助けるのは当然の行動だったのだ。だが、後先を考えていない行動であったのは確か。
夜になると砂漠は想像以上に気温が下がる。こんなところで野宿なんかしたら、最悪の場合凍死である。
「しょうがねえ。今夜は休まずに歩くか」
止まっていたら死ぬ。とりあえず体を温める意味でも動き続け、次の街で休めばいい。そう考えて街に背を向けて一歩踏み出した時、コハクは誰かに呼び止められた。
「――待ってください」
*****
「いやあ、助かりました。正直、今晩どうするか困ってたんですよ」
自身が助けたラミア――メルの家に案内され、コハクは安堵したように笑う。最悪の展開を予想していただけに、メルから家に来ませんかという提案を受けた時は、渡りに舟だと思った。彼はその後、彼女に誘われるままにオアシスにあるラミアの集落に着くと、まず家のすぐ傍の広大な水辺で身体を洗い、その後作ってもらった夕食をご馳走になってしまった。
ラミアが自身の集落に男を誘う場合、それは男に夫になれという合図である。つまり、コハクはメルのアプローチを知らないうちに受けてしまったことになる。そんな事とは露知らず、コハクはのんきにくつろいでいる。
(情けは人の為ならずって言うけど、本当そうだなあ……)
コハクは、まさか自分がメルにロックオンされているなんて、夢にも思っていない。メルの行動を、ただの純粋な好意だと捉えてしまっている。
しかしメルは、もうコハクと夫婦になった気でいる。街で教団に追われている所を助けられ、そしてまた砂漠で再会した。これはもう運命だと確信したのである。メルは熱っぽい目でコハクを見つめ続ける。
その時、ふぁぁっとコハクは大あくびをする。旅の疲れが溜まっているのか、夕食後に無性に眠くなってしまったのである。
「もうおやすみになりますか? お布団用意しますね」
メルはコハクに言う。
「いや、床で充分ですよ。今までは屋外だったので、布団じゃ無くても苦になりませんから」
「そう遠慮なさらず……」
メルは有無を言わさずコハクを寝室に案内する。コハクは、ここまで至れり尽くせりなのに恐縮するばかりである。
「いやあ、かたじけない」
コハクは申し訳なさそうにしながらも、心からの礼をメルに言う。どこまでもメルを疑う事をしないコハクは、好意に甘えて言われるままに布団に身を横たえる。
「それじゃあ、おやすみなさいませ」
「ああ、おやすみ」
コハクは、メルにそう言葉を返す。大丈夫と言ったものの、やはり旅の疲れは相当だったようだ。また久々の布団ということもあり、間もなくコハクは寝息を立てて眠りについた。
「ふふっ、寝顔可愛いっ!」
メルはしばしコハクの寝顔を眺めると、やがておそるおそる手を出し、コハクの着物の帯を解き、前を開いた。均整の取れたコハクの身体にメルはうっとりとなり、その胸板に手を這わせる。そして、コハクの身体を撫で回しながら、手をだんだん下に持っていき、彼の下着に手をかけて脱がせた。
「これが、男の人の……かわいい」
メルはコハクの逸物をまじまじと見つめ、手で軽く握る。そして、ゆっくりと扱き始める。メルにやんわりと愛撫された逸物は徐々に大きくなっていき、硬くそそり立った。
「すごい、こんなに大きく……んっ、ちゅっ!」
メルは逸物に顔を近付けると、ちゅっと先端にキスをした。そして、長い舌を出してレロっと舐める。その舌の動きはだんだん大胆になっていき、ついにはあむっと逸物を咥え、しゃぶり始めてしまった。丹念にフェラをしながらメルは自身の服を脱ぐ。
「んんんっ、んふぅ……んむっ、ぢゅっ、ぢゅるっ、ぢゅずずっっ……」
卑猥な音を立てて逸物をしゃぶるメル。舌まで動員しての濃厚な愛撫に、コハクは寝ていられる筈もなく、目を覚ましてしまった。
「ち、ちょっ! 何やって――」
コハクは慌てて起き上がろうとする。しかし、寝起きで頭が働いていない。コハクは混乱して右往左往するばかりであった。
「んちゅっ、んはぁっ! 好きっ、好きぃ!」
メルはコハクに抱きつき、チュッとその唇を奪う。そしてコハクの逸物を自身の秘所にあてがい、一気に迎え入れた。それは途中で『何か』を突き破り、一気に最奥をズンッと押し上げる。
「あっ、あああアァァァァァァーーーっ!」
「うああああああっ!」
逸物が最奥まで突き刺さると同時に、二人とも声をあげてしまう。メルは痛みよりも嬉しさの方が大きいのか、幸せそうな顔でコハクの首筋に両腕を回してしがみ付き、頬ずりする。一方、コハクは抱きついてきたメルの柔肌の感触に衝撃を受け、息も絶え絶えだ。
「ぅぅっ、もう出そう」
コハクはあまりの気持ち良さに、もうイきそうになる。胸板に押し付けられてるおっぱいとか、強く密着してくる腰とか、そして強烈かつ柔らかにぎゅむぎゅむと逸物を締め上げてくる膣壁とか、コハクの理性をあっさり狂わせる要素が大量にある。まだ全然激しく動いていないというのに、もう限界だった。
「出して! いっぱい出してぇ!」
コハクの声を聞くと、メルは器用にコハクの身体の下に蛇の尾を潜り込ませ、自分ごとコハクの身体に胴体を巻きつける。そして、より一層強くコハクに抱きついた。ただでさえイきそうだったのに、そこまで強く密着されては堪ったものではない。コハクは自分でも信じられない程あっけなくメルの中に出してしまった。
「んはあっ! いっぱい来てるぅ……」
至福の瞬間を向かえ、メルは甘い声をあげる。中を満たしていく感覚に酔いしれ、さらに強くぎゅうっとコハクに抱きつく。
「ぅぁっ……」
強く抱きつかれる感覚に、コハクはもはや声を出す事すら出来ない。メルの甘い声、弾力のある柔肌、それらの感覚的な要素に加えて視覚的な要素もあいまって、コハクは再び自身が高ぶっていくのを感じた。
それほどに、目の前のメルは可愛かった。ただでさえ可愛い顔をしているのに、それが頬を紅く染めて潤んだ目で至近距離で見つめてくるのである。こんなの、耐えられる訳がない。
コハクは自ら顔を寄せていき、メルの唇を奪う。コハクが急に積極的になったのでメルは一瞬驚いた表情を見せるも、すぐに嬉しそうに目元を緩ませ、口付けを受け入れた。
「んふぅ……んむっ、んちゅっ、ちゅぱっ……」
二人とも、お互いに口付けに夢中になる。相手の舌を吸ったり、絡めたり、唾液をすすり、または流し込む。そうやってお互いの唇を貪る。
その状態で、コハクは小刻みに腰を動かし始め、メルを責め始めた。唇をふさがれたまま奥を刺激され、メルはくぐもった声をあげる。しかしコハクは容赦なく責め続ける。今度は自分の番だと言わんばかりに腰を回してメルの最奥をぐりぐりと抉り続ける。身体をメルの胴体が巻きついている為、それほど大きい動きではないものの、メルを気持ち良くさせるには充分だった。
「んはぁん! ああっ! あっ……あんっ、ああん!」
メルはもはや口付けを続ける事が出来ず、口を離して大きく喘ぐ。その声がもっと聞きたくて、コハクは一層激しく責めることにした。コハクは身体をくるっと入れ替え、自身が上になる。そして正常位の状態でガンガンと最奥を突く。
「やんっ! あんっ! いいよぉ、気持ちいいのぉ!」
メルはコハクの責めを受け続け、声をあげ続けることしか出来ない。そして、コハクも自分から責めたものの、もう限界だった。コハクは子宮にまで届けとばかりに深々と突き込み、二度目の絶頂に達する。
「んああっ、イクぅ! イクイクイクぅぅぅーーーっ!」
そしてメルも、自身の中で迸る激流を感じて一層大きな叫び声をあげた。
*****
そして次の日の昼ごろ、コハクは目を覚ました。隣には、メルが抱きついて来たまま幸せそうに寝ている。
あれからも結局、攻守交替を繰り返しながら夜明けまでヤッてしまった。布団も色々な液でびしょびしょになっており、よくこんな状態で寝られたなあと思う。
その時、メルの身体がもぞもぞと動き出す。どうやらメルも目が覚めたらしい。
「おはよう、メル」
「……おはよう」
コハクと目が合うと、メルは恥ずかしそうに頬を染め、コハクの胸に顔を埋めてしまう。昨日あれだけ乱れまくったのが恥ずかしいらしい。そんな仕草も可愛いなと思いながら、コハクはメルを抱き寄せる。
どうやら一晩ですっかりメルの事が好きになってしまったらしい。こりゃあもう、メルから離れられないなとコハクは思う。
今まで旅をしてあちこちを流れていたが、どうやらここが自分の居場所になりそうだ。ジパングと違って教団の存在などの問題があるが、もはやこんな可愛い女を手放すのは不可能だ。
「メル。俺が、一生をかけてお前を守るからな」
コハクがこう言うと、メルは嬉しそうに頷いて抱きつく腕に力を込めた。
「……酷え」
コハクが見たものとは、教団の人間が魔物を迫害している姿である。彼の出身ジパングでは、人間と魔物(彼の国では妖怪)は基本的に共存しており、互いに争う事は滅多にない。
しかし、彼がジパングを出ると状況は一変し、反魔物主義の地方では特に魔物に対する風当たりが強かった。
そして、彼の目の前で、聖騎士の格好をした者どもが、一匹のラミアを追い回していた。
ラミアは基本的に強気な者が多いと聞いていたが、多勢に無勢。武器も持たない彼女は、ただ逃げ回るしか出来なかった。その彼女はコハクの姿を見ると、一目散に這いより、救いを求めた。
「お願い、助けて。教団に追われてるの」
コハクをジパング人と見た彼女は、ジパング人の魔物にも友好的だという噂を頼りに、コハクに取りすがる。
「俺が止めておく。早く行け」
ジパングの諺に『窮鳥懐に入れば猟師これを殺さず』というものがある。その言葉通りにコハクはラミアを逃がすと、自身は道のど真ん中に立ち、迫ってくる聖騎士と対峙した。
「そこの若者、早くそこをどけ!」
追いついてきた聖騎士の一人が、コハクに言う。その口調はやや傲慢で、コハクが嫌いなタイプのものだった。
「だが断る!」
「何っ! 貴様、我らに歯向かう気か!」
聖騎士はコハクの答えに驚く。彼らにとっては人間が魔物を庇い立てするなど、想像の外なのだ。だから彼らは一瞬、コハクが何を言っているのか理解出来なかった。コハクが自分達に味方する気は無いと分かると、聖騎士たちは剣の柄に手をかけ、脅しにかかる。しかし、その言動こそコハクが最も嫌いなタイプのものだった。
「はあ? お前ら何様? どんだけ偉そうなんだよ」
「もうよい! 貴様の言動、我らの神を冒涜するものとして我らが成敗してくれよう」
コハクの言葉に業を煮やした聖騎士たちは、剣を抜いてコハクに斬りかかった。魔物でもない人間を本気で斬る気だった。彼らにとって、魔物は悪。ならば、悪に味方する者も悪である。たとえそれが人間であっても、容赦はしない。
「はあ、鬱陶しいな……」
コハクは一つため息をつくと、腰に差していたジパング刀を抜いた。その刀を見た聖騎士たちは、コハクをあざ笑う。
「ははっ、そんな細い剣で打ち合う気か。そんなもの、へし折ってくれよう!」
意気揚々と剣を振りかぶり、コハクに迫る聖騎士たち。しかし、彼らは知らなかった。ジパングには、ジパング独特の戦闘法が存在した事に。そして、その戦闘法は、自分達では計り知れない程の妙技を誇る事に。
普段からジパング人を、悪である魔物と積極的に関わる蛮人と見なしている聖騎士たちは、ロクにジパングの事を知らずに馬鹿にしている。当然、ジパングの戦闘法など知る由も無い。その為、彼らは訳が分からぬうちにコハクに倒され、地面に這いつくばっていた。
「い、一体、何が……」
聖騎士たちは、驚愕した目でコハクを見上げる。自信を持って振るった一撃が空振りし、しかもそれが避けたとも見えない動きだったので、彼らにはコハクが魔法か何かを使ったようにしか思えなかった。
「安心しろ、峰討ちだ。この刀、お前らの血で汚すには惜しいからな」
コハクは抜いていた刀を、スッと鞘に収める。その時、複数の足音がして、新たに聖騎士たちが姿を現した。
「居たぞ、あいつだ!」
「何、あいつが我々の邪魔をしていた奴か!」
「たった一人でいい度胸じゃねえか! 仲間の敵、ここで晴らさせてもらう」
今度は、さっき相手した人数よりも多い。正直、こんなに早く教団の連中が集まるのは予想外だった。おそらく、さっき相手した聖騎士の一人が、戦う前に密かにその場を離れ、仲間を呼んだのだろう。そう言えば、一人足りない気がしていた。
いくらコハクといえども、さすがに多勢に無勢。こんな所で命を散らす気は無い。となれば、とるべき行動はただ一つ。
「――三十六計、逃げるにしかず」
「待てこの野郎!」
コハクは聖騎士の前からすたこらと逃げ出した。もはや当初の目的を忘れた聖騎士たちは、執拗にコハクを追い回した。
「あちゃー。これじゃあ、あの街に戻れねえや」
コハクは、離れた所から街の入り口を見て、苦笑する。先ほどの騒ぎにより、聖騎士たちが血なまこになってコハクを探し回っている。砂漠の中でやっと見つけた街だというのに、これでは街の中に入れない。
「こんな砂漠で野宿って、キツイよなあ……」
コハクはため息をつく。自業自得である。余計な事に首を突っ込んで騒ぎを大きくしたのだがら無理も無い。しかし、考え無しの行動であったものの、コハクは後悔する気はない。もともと楽観的なコハクは、反省という事をしない。
コハクの故郷ジパングでは、魔物を迫害することはまずありえない。コハクにとっても、魔物は隣人ともいえる存在であり、(一部の魔物を除いて)悪という概念は無かった。だから救いを求めてきた魔物を助けるのは当然の行動だったのだ。だが、後先を考えていない行動であったのは確か。
夜になると砂漠は想像以上に気温が下がる。こんなところで野宿なんかしたら、最悪の場合凍死である。
「しょうがねえ。今夜は休まずに歩くか」
止まっていたら死ぬ。とりあえず体を温める意味でも動き続け、次の街で休めばいい。そう考えて街に背を向けて一歩踏み出した時、コハクは誰かに呼び止められた。
「――待ってください」
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「いやあ、助かりました。正直、今晩どうするか困ってたんですよ」
自身が助けたラミア――メルの家に案内され、コハクは安堵したように笑う。最悪の展開を予想していただけに、メルから家に来ませんかという提案を受けた時は、渡りに舟だと思った。彼はその後、彼女に誘われるままにオアシスにあるラミアの集落に着くと、まず家のすぐ傍の広大な水辺で身体を洗い、その後作ってもらった夕食をご馳走になってしまった。
ラミアが自身の集落に男を誘う場合、それは男に夫になれという合図である。つまり、コハクはメルのアプローチを知らないうちに受けてしまったことになる。そんな事とは露知らず、コハクはのんきにくつろいでいる。
(情けは人の為ならずって言うけど、本当そうだなあ……)
コハクは、まさか自分がメルにロックオンされているなんて、夢にも思っていない。メルの行動を、ただの純粋な好意だと捉えてしまっている。
しかしメルは、もうコハクと夫婦になった気でいる。街で教団に追われている所を助けられ、そしてまた砂漠で再会した。これはもう運命だと確信したのである。メルは熱っぽい目でコハクを見つめ続ける。
その時、ふぁぁっとコハクは大あくびをする。旅の疲れが溜まっているのか、夕食後に無性に眠くなってしまったのである。
「もうおやすみになりますか? お布団用意しますね」
メルはコハクに言う。
「いや、床で充分ですよ。今までは屋外だったので、布団じゃ無くても苦になりませんから」
「そう遠慮なさらず……」
メルは有無を言わさずコハクを寝室に案内する。コハクは、ここまで至れり尽くせりなのに恐縮するばかりである。
「いやあ、かたじけない」
コハクは申し訳なさそうにしながらも、心からの礼をメルに言う。どこまでもメルを疑う事をしないコハクは、好意に甘えて言われるままに布団に身を横たえる。
「それじゃあ、おやすみなさいませ」
「ああ、おやすみ」
コハクは、メルにそう言葉を返す。大丈夫と言ったものの、やはり旅の疲れは相当だったようだ。また久々の布団ということもあり、間もなくコハクは寝息を立てて眠りについた。
「ふふっ、寝顔可愛いっ!」
メルはしばしコハクの寝顔を眺めると、やがておそるおそる手を出し、コハクの着物の帯を解き、前を開いた。均整の取れたコハクの身体にメルはうっとりとなり、その胸板に手を這わせる。そして、コハクの身体を撫で回しながら、手をだんだん下に持っていき、彼の下着に手をかけて脱がせた。
「これが、男の人の……かわいい」
メルはコハクの逸物をまじまじと見つめ、手で軽く握る。そして、ゆっくりと扱き始める。メルにやんわりと愛撫された逸物は徐々に大きくなっていき、硬くそそり立った。
「すごい、こんなに大きく……んっ、ちゅっ!」
メルは逸物に顔を近付けると、ちゅっと先端にキスをした。そして、長い舌を出してレロっと舐める。その舌の動きはだんだん大胆になっていき、ついにはあむっと逸物を咥え、しゃぶり始めてしまった。丹念にフェラをしながらメルは自身の服を脱ぐ。
「んんんっ、んふぅ……んむっ、ぢゅっ、ぢゅるっ、ぢゅずずっっ……」
卑猥な音を立てて逸物をしゃぶるメル。舌まで動員しての濃厚な愛撫に、コハクは寝ていられる筈もなく、目を覚ましてしまった。
「ち、ちょっ! 何やって――」
コハクは慌てて起き上がろうとする。しかし、寝起きで頭が働いていない。コハクは混乱して右往左往するばかりであった。
「んちゅっ、んはぁっ! 好きっ、好きぃ!」
メルはコハクに抱きつき、チュッとその唇を奪う。そしてコハクの逸物を自身の秘所にあてがい、一気に迎え入れた。それは途中で『何か』を突き破り、一気に最奥をズンッと押し上げる。
「あっ、あああアァァァァァァーーーっ!」
「うああああああっ!」
逸物が最奥まで突き刺さると同時に、二人とも声をあげてしまう。メルは痛みよりも嬉しさの方が大きいのか、幸せそうな顔でコハクの首筋に両腕を回してしがみ付き、頬ずりする。一方、コハクは抱きついてきたメルの柔肌の感触に衝撃を受け、息も絶え絶えだ。
「ぅぅっ、もう出そう」
コハクはあまりの気持ち良さに、もうイきそうになる。胸板に押し付けられてるおっぱいとか、強く密着してくる腰とか、そして強烈かつ柔らかにぎゅむぎゅむと逸物を締め上げてくる膣壁とか、コハクの理性をあっさり狂わせる要素が大量にある。まだ全然激しく動いていないというのに、もう限界だった。
「出して! いっぱい出してぇ!」
コハクの声を聞くと、メルは器用にコハクの身体の下に蛇の尾を潜り込ませ、自分ごとコハクの身体に胴体を巻きつける。そして、より一層強くコハクに抱きついた。ただでさえイきそうだったのに、そこまで強く密着されては堪ったものではない。コハクは自分でも信じられない程あっけなくメルの中に出してしまった。
「んはあっ! いっぱい来てるぅ……」
至福の瞬間を向かえ、メルは甘い声をあげる。中を満たしていく感覚に酔いしれ、さらに強くぎゅうっとコハクに抱きつく。
「ぅぁっ……」
強く抱きつかれる感覚に、コハクはもはや声を出す事すら出来ない。メルの甘い声、弾力のある柔肌、それらの感覚的な要素に加えて視覚的な要素もあいまって、コハクは再び自身が高ぶっていくのを感じた。
それほどに、目の前のメルは可愛かった。ただでさえ可愛い顔をしているのに、それが頬を紅く染めて潤んだ目で至近距離で見つめてくるのである。こんなの、耐えられる訳がない。
コハクは自ら顔を寄せていき、メルの唇を奪う。コハクが急に積極的になったのでメルは一瞬驚いた表情を見せるも、すぐに嬉しそうに目元を緩ませ、口付けを受け入れた。
「んふぅ……んむっ、んちゅっ、ちゅぱっ……」
二人とも、お互いに口付けに夢中になる。相手の舌を吸ったり、絡めたり、唾液をすすり、または流し込む。そうやってお互いの唇を貪る。
その状態で、コハクは小刻みに腰を動かし始め、メルを責め始めた。唇をふさがれたまま奥を刺激され、メルはくぐもった声をあげる。しかしコハクは容赦なく責め続ける。今度は自分の番だと言わんばかりに腰を回してメルの最奥をぐりぐりと抉り続ける。身体をメルの胴体が巻きついている為、それほど大きい動きではないものの、メルを気持ち良くさせるには充分だった。
「んはぁん! ああっ! あっ……あんっ、ああん!」
メルはもはや口付けを続ける事が出来ず、口を離して大きく喘ぐ。その声がもっと聞きたくて、コハクは一層激しく責めることにした。コハクは身体をくるっと入れ替え、自身が上になる。そして正常位の状態でガンガンと最奥を突く。
「やんっ! あんっ! いいよぉ、気持ちいいのぉ!」
メルはコハクの責めを受け続け、声をあげ続けることしか出来ない。そして、コハクも自分から責めたものの、もう限界だった。コハクは子宮にまで届けとばかりに深々と突き込み、二度目の絶頂に達する。
「んああっ、イクぅ! イクイクイクぅぅぅーーーっ!」
そしてメルも、自身の中で迸る激流を感じて一層大きな叫び声をあげた。
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そして次の日の昼ごろ、コハクは目を覚ました。隣には、メルが抱きついて来たまま幸せそうに寝ている。
あれからも結局、攻守交替を繰り返しながら夜明けまでヤッてしまった。布団も色々な液でびしょびしょになっており、よくこんな状態で寝られたなあと思う。
その時、メルの身体がもぞもぞと動き出す。どうやらメルも目が覚めたらしい。
「おはよう、メル」
「……おはよう」
コハクと目が合うと、メルは恥ずかしそうに頬を染め、コハクの胸に顔を埋めてしまう。昨日あれだけ乱れまくったのが恥ずかしいらしい。そんな仕草も可愛いなと思いながら、コハクはメルを抱き寄せる。
どうやら一晩ですっかりメルの事が好きになってしまったらしい。こりゃあもう、メルから離れられないなとコハクは思う。
今まで旅をしてあちこちを流れていたが、どうやらここが自分の居場所になりそうだ。ジパングと違って教団の存在などの問題があるが、もはやこんな可愛い女を手放すのは不可能だ。
「メル。俺が、一生をかけてお前を守るからな」
コハクがこう言うと、メルは嬉しそうに頷いて抱きつく腕に力を込めた。
14/03/27 12:17更新 / 香炉 夢幻