そしてこうなった
「ひどいや、ラナ」
彼女の言い分は正しい。サキュバスとはそういう魔物なのだ。
けど理屈では分かっても感情では納得できない事もある。
ラナの部屋を飛び出したティムは遺跡の中を当てもなく彷徨っていた。
幸いなことに魔物と化したティムの目は明かりが無くても闇を見通すことができた。
「はは…ボク、本当に魔物になったんだ…」
自嘲気味に呟いた独り言は闇へと吸い込まれて消えた。
こうして、少女は1人ぼっちになった。きっとラナも今頃呆れているだろう。
全ては自業自得だ。ボクは差し出された手を振り払ったんだから。
そんな事を考えていると切なさがこみ上げてくる。
さっき流しきった涙が再び溢れそうになる。
でもティムはぐっと堪えて、耐える。
「はあ…お腹空いたな…」
彼女はその場にぺたんと座ると大きく息を吐き出した。
空腹。それは昨日と人間だった頃と何も変わらない感覚。
だが、その意味は今日に、魔物になって大きく変わってしまった。
「これからどうしよう…」
飢えを満たす為には人間を襲い、男と交わらなければならない。
そう考えを向ければ、生々しく浮かぶのは昨夜のラナの姿。
悦びに打ち震え、快楽に溺れ、快楽に蕩ける女の姿。
それをティムは恐ろしいと感じていた。
そう、それは己の全てを曝け出した姿。
男と交われば、自分も快楽に呑まれ、全てを曝け出すだろう。
そう思うと恐ろしくて堪らなかった。
人は誰も本心を隠して生きている。
誰かと仲良くしたくて、本当の気持ちを押し殺して生きてる。
全てを曝け出せば、きっと皆離れていく。
1人膝を抱えていると思考がぐるぐると回る。
空腹で目も回る。ぐるぐーる。
その時、カツンと小さな音が暗闇に響いた。
(あれ、何の音だろ? 聞き覚えのあるような…)
ぼんやりとしていたティムはのっそりと頭を起こした。
それは前方から響いてくる足音。
(誰だろ? ラナかな?)淡い期待が胸をよぎる。
次の瞬間、闇の中に小さな明かりが浮かぶのが見えた。
それを認識した時、彼女は全身の毛が逆立つのを感じ、反射的に立ち上がった。
足音の持ち主は遺跡で移動するのに明かりのいる相手。すなわち人間、おそらくは遺跡荒らし。
そして、今の自分は魔物。遺跡の中で人間と魔物が出会ったら。
ここ2年で嫌というほど味わってきた現実。
魔物に遭遇した遺跡荒らしは容赦なく魔物を殺しにかかる。
でも、自分は相手を、人間を殺せるのか…。
躊躇えば、下手に手加減をすれば、殺されるのは自分だ。
思考は奔流となり、最適な答えを導き出す。
逃げよう。きっと、まだ気づかれてない筈だ。
ティムはきびすを返すとそろりと一歩を踏み出した。
しかし、運命はそっぽを向いていたようだ。
苔でも踏んだのか、足の裏に妙に柔らかい感触がはしり、少女は滑って転んだ。
「きゃあっ!」
オマケに我ながら妙に可愛い悲鳴つき。
「誰だっ!」
鋭い声が飛び、明かりが見る見る近づいてくる。
「来るなっ!」
慌てて起き上がろうとするものの、転んだ際の打ち所が悪かったのか身体が痺れてうまくいかない。
「何やってんだ、ティム?」
慣れ親しんだ声が石畳の上で一人もがく少女に降り注ぐ。
「え?」
明かりの中に立っていたのは彼女の幼馴染、キールだった。
「ほら、掴まれ」
差し出された手は大きく暖かかった。
「あ、ありがと…」
引きずり起こされるように立ち上がったティムは俯いたまま、モゴモゴとお礼を言う。
キールの顔を見ることができない。
魔物になってしまったという事実が、ティムの臆病さを刺激し、
キールと向き合う事をできなくさせていた。
「…ったく、捜したんだぜ?」
彼女のそんな思いなど露知らず、普段どおりの態度でキールが口を開いた。
「宿に帰って二度寝してたら、部屋に薬屋のオヤジが飛び込んでくるし。
話を聞けば、お前が1人で遺跡に行ったまま帰らないっていうじゃねえか」
彼なりに心配したのだろう。キールが半ば愚痴のように説明してくる。
「まあ、無事で良かったぜ。魔物にやられてんじゃねえかとヒヤヒヤしてたんだ」
魔物。キールの口から出た単語にティムは思わず半歩下がる。
「ん? どした…? そういや、お前何で裸に変な仮装してんだ?」
相棒の様子がおかしい事に、やっと気づいたキールが訝しげな視線でティムを見る。
どうやらキールは角や翼を仮装だと思っているらしい。
親友の鈍さが嬉しくもあり、腹立たしくもある。喜びや怒りは時に人の原動力となる。
「…っ」
ティムは感情に突き動かされて、キールの顔を見上げた。それがいけなかった。
ドクンと心臓が高鳴った。見慣れた幼馴染の顔。心配そうにボクを見つめる顔。
飢餓が熱い波となって彼女の全身を満たしていく。
知らない内にティムはキールの胸に飛び込んでいた。
「おい、大丈夫か!?」
キールから見れば、ティムが、足をふらつかせて倒れこんだように見えたのだろう。慌てて抱きとめてくれる。
「ねえ、キール。ボク今とてもお腹が空いているんだ」
彼の腕に抱かれながら、彼女は潤んだ眼差しで親友を見上げる。
「何!? 腹!? 待ってろ、確か保存食を持ってた筈…」
「ううん、そんなのいらない…」
ティムの本能に従い、黒い尻尾がキールの片足を掬う。
「うぐっ!?」
バランスを崩したキールにティムが馬乗りになった。
「…ってぇ!?」
キールは怒りの声を上げるが、ティムの異様な雰囲気に気づき息を飲む。
一方、ティムは馬乗りになった時点で本来の冷静さを取り戻していた。
(な、何やってんだ、ボクは!? キールを押し倒したりして!)
それは魔物の本能とティムの親友に対する好意、その奥にある臆病さとの葛藤でもあった。
魔物の…いや自分自身の醜い本性を曝け出せば、きっとキールに嫌われる。
そんな思いがティムを踏みとどまらせていた。
「どうしたんだ? どっか具合でも悪いのか?」
沈黙した彼女にキールが優しい言葉を投げかける。
でも今はそれが辛かった。彼の優しさが彼女の心をかき乱す。
「ボクはただ、キールの傍にいたいだけなんだ…」
乱れた心から想いが溢れ、言葉となって零れ出す。
「ティム、何言ってん…」
困惑するキールの唇を彼女は自分の唇で塞ぐ。
零れ出した感情は抑え様のない衝動に変わり、少女を突き動かす。
「ばっ! 何すんだよ!?」
最早、キールの怒声すら耳に入らない。
「ボクはキールの事が好きだ」
最終的に嫌われても構わない。全てを曝け出した自分を見て欲しい。
優しい彼に惹かれた心が一線を超えた。
「好きって、お前男だろっ!?」
「今は女だよ」
キールの焦った声にティムは冷静な言葉を重ねる。
彼女は両手を胸に当てると自らの薄い乳房を誇示した。
「お前…その身体!?」
全く親友の鈍さが恨めしい。でもそれも赦せる。彼の全てが好きだから。
「ボクは魔物になったんだ。この身体だって女の人と同じだよ。
だから欲しくなっちゃう。キールの精が」
ティムの双眸がギラリと輝くとキールの身体が硬直した。
「ごめんね。でもボク、もう我慢できないんだ」
彼女は男へとそっと顔を寄せるとその唇を貪り始めた。
少女に支配された彼も自然に舌を絡め、互いの口を求め合う。
愛しい人への初めての深い口づけにティムの胸が熱くなる。
「ぷはっ」
さすがに苦しくなって離した唇の間を名残惜しそうに唾液がアーチを引いた。
「えへへ…」
荒い息をつくキールを見下ろして、ティムは満足気に笑った。
「初めてだけど、ボク頑張るね」
次なる標的をキールの股間に定めた彼女は男の太ももの上に座りなおすと
ズボンの中から彼の逸物を引っ張り出す。
直前のキスの所為か、それは天を突くようにそそり立っていた。
「ん…」
ティムは逸物の先端に唾液を垂らし、右手で優しく握る。
「しょ…」
そして、そのまま上下にしごき始める。
「熱いよ…」
やり方なんて知らない。けれど魔物の本能の命ずるまま、肉棒を刺激する。
「ねえ…ビクビクしてるよ…? 気持ちいいの…?」
支配されているキールは答えない。でも彼の身体が快楽に震えているのは分かる。
「分かった続けるね」
左手で陰嚢にも刺激を与えつつ、リズミカルに右手でしごく。
逸物の先端から溢れ出てきた先走りの液を手のひらに塗り、肉棒へ磨りこむように塗りたくる。
「ううっ…」
キールが呻き、腰をがくがくと震わせた。
「我慢しないで、いつでもボクの手に出してもいいから」
ティムの言葉に反応した訳でもないだろうが、次の瞬間、彼の身体が一際大きく震える。
「あっ…」
跳ねるように肉棒が暴れ、先端から白く濁った体液が飛び出す。
それらはティムの腕を、胸を、腹を汚していった。
彼女はしばらくそれを陶然と眺めていたが、ふと思い立ち、手のひらの残滓を舌先で掬い取る。
魔物と化した彼女の味覚にはそれが甘い蜜のように感じられた。
「ふふ…美味しいよ…キール…」
妖艶に笑うティムの姿は最早一匹の魔物に過ぎなかった。
ティムの双眸がギラリと輝くと自分の身体が硬直した。
「ごめんね。でもボク、もう我慢できないんだ」
(おい! よせ!)心の中で叫ぶ声は現実には届かない。
それどころか、ティムを拒んでいた心が、彼女の瞳を見た瞬間から溶けていく。
身体が、いや心の底から、親友を…彼女を欲しくなる。
ティムに操られたとして、支配されたとして、この気持ちは全部が嘘なんだろうか?
そんな戸惑いが自分の中で渦巻いている。
彼女の手で絶頂に導かれるこの感覚。それすらも幻。偽りなんだろうか?
気がつけば、キールはティムの手によって果てていた。
腰を中心に心地の良い疲労が広がっている。
見上げれば、ティムが半ば放心したように自分に跨っている。
少女の上気した肌を己の射出物が扇情的に汚していた。その光景に股間がムクリと反応する。
「…?」
その時になってキールは自分が身体と心の自由を取り戻している事に気づいた。
「満足したのか?」
最初に浮かんだのはそんな疑問だった。
「ううん、全然足りないよぉ…」
熱っぽい瞳で切なげに呟くティムにキールの劣情が昂ぶる。
「じゃあ、なんで…」
このまま続けないのか。台詞の後半をキールは飲み込む。
これじゃあ、まるで自分が続けて欲しいみたいじゃないか。
「ええと…あのね…」
先程まで見せていた妖艶な姿など欠片もなく、恥ずかしそうにもじもじとするティム。
「ここから先は…キールにして欲しいかな…って」
「はぁ?」
ティムの思いがけない提案に彼は間の抜けた声をあげる。
「うう…恥ずかしい…恥ずかし過ぎて死にたい…」
そして、提案した本人は羞恥のあまり、キールの上で悶えている。いい加減降りて欲しい。
だが、そんなティムの姿にキールは安堵を覚えていた。
姿は変わっても、大胆に迫ってきても、根っこの部分は、心は自分の知っている親友のままなのだと。
困った時は彼を頼ってくるティム。意地っ張りで、努力家で、いつも傍にいてくれる俺の相棒。
(お前は気づいていないかもしれないが…。俺もお前にずいぶん助けられてんだぜ?)
村を飛び出す時に黙ってついてきてくれた事。2年間、様々な苦労を一緒に味わった事。
本当は心細かった時に、この優しい幼馴染は傍にいてくれた。
「ったく…」
キールは自分の気持ちと不器用な幼馴染の両方に苦笑しながら身を起こした。
「お前…本当に女になったんだよな?」
違う。言いたい事はそんな事じゃない。
「うん…」期待に満ちた眼差しでティムはキールを見上げた。
「ここまでされたんだ…もう俺も止まれねえぞ?」
自分の不器用さが恥ずかしい。死にたい。
「容赦しねえぞ?」
精一杯の笑顔。
「は、初めてだから…や、優しく…」
期待と不安に華奢な身体を震わす愛しい人の言葉を口づけで遮る。
…反撃開始だ。
上気した白い肌に指を食い込まれる。
「…ぃや…つ…つよぃ…よぉ…」
薄い胸を優しく(やらしく?)愛撫する。
「…ごめん…ね…おっぱい…なく…て…」
腕の中の少女がそんな事を謝ってくる。
「………お、大きくても小さくても気にしないよ、俺は」
「…ん…いま…おみせの…おんなのひとと…くらべた…でしょ…?」
どもりながら答えたキールを鋭い目つきでティムが睨む。
「い、いや、そんな事ないぞっ!」
「…うそ…ぜったい…ひゃぁっ…!」
何とか誤魔化そうとキールは桜色の蕾を刺激する。
「…だ…だめだよぉ…ちくび…だめ…ぇ…」
刺激が強すぎたらしくティムの身体が跳ね回る。
その動きはむしろ乳首を指先に押し付けるように動いていた。
「ん…分かった。もうちょっと、優しくするから」
気を取り直して乳首への攻めを再開する。
「…えへへ…キール…やさしいから…だいすき…」
「お、おう」
無邪気に笑うティムにキールはドギマギしっぱなしだ。
それからしばらく無言で少女の胸を愛撫する。
ティムは何度も喘ぎながら、為すがままを受け入れていた。
「…ねぇ…そろそろ…」
ティムは蕩けた視線をキールへと送る。彼女の指先は自らの秘部を指していた。
「準備はできているみたいだな」
キールが視線を落とせば、そこはすでに塗れそぼっている。
「どうしたら…いいの…?」
「そうだな」
床は堅い石畳。おまけに今のティムの背中には羽がある、となれば。
「じゃあ、立ってそこの壁に両手をつくんだ」
「う、うん」
言われたとおり、彼女はやや前屈みになって壁に手をつく。
「もうちょっと…尻をこっちに突き出すんだ」
「ええっ? このカッコ、恥ずかしいんだけど…」
「しょうがないだろ。これがきっと最適だぞ」
キールはそう言いながら彼女の背後に立った。
「…あっ…き…キールの…熱いの…当たってる…」
性器同士が触れ、にちゃりと卑猥な水音を立てる。
「ゆっくり挿れるから、痛かったら言えよ…?」
「が、我慢するから大丈夫…!」
悲壮な決意に満ちた表情でティムがそう返してくる。
「我慢しなくていいから…」
キールは愛しい幼馴染の髪を優しく撫でた後、その腰を掴んだ。
そして、ゆっくりと逸物を膣内へと沈めていく。
「くっ…きついな…」
「っ…!」
腕の中を見れば、案の定、幼馴染が震えながら、必死に痛みに耐えている。
「残りは一気に行くぞ…!」
力を込めて腰を押し出す。その甲斐あって、肉棒は根元まで沈み込んでいた。
「ぃた…!!?」
耐え切れずにティムが悲鳴を上げる。彼女は痛みを紛らわすように肩で大きく息をする。
「やっぱり痛いか?」
「うん、でも平気。すぐに治まるから…」
相棒の健気な台詞が泣かせる。痛みを紛らわせてやろうとキールは別の話題を振った。
「エロ小説だと、こういう場合、すぐに痛みが治まって、本番突入ってなるだろ?」
「うん?」
「まあ、痛みはどうか知らないが、女は初めての時は翌日になっても
股に何かが入っているような感覚が残るらしいな」
「それって、どこ情報?」
「いや、似たようなエロ小説に書いてた」
沈黙。お互いに苦笑。折角、繋がったのに何馬鹿な事を言っているんだと。
「…ね…キール…動いていいよ…?」
「いや…でもお前…」
ティムは首だけで振り返ると微笑んだ。
「痛みもほとんどなくなったし…ホラ、ボク魔物だから普通の女の人より頑丈にできてるみたい」
「便利だなー、魔物」
お互いに顔を見合わせて笑いあう。それでキールの胎は決まった。
何より幼馴染の覚悟を無駄にしたくは無い。
「じゃ、遠慮なく」
軽口を叩いて抽送を開始する。
「…ふ…っ…ぁ…あ…ん…」
ティムが苦痛とも喘ぎともつかない声を上げる。
「どした…?」
「…ぃた…い…いた…い…けど…び…びり…びり…する…ぅ…」
それこそ魔物の魔力なのか、彼女は早くも快楽を感じ始めているようだ。
「…すげえな魔物。てか、エロいぞ、ティム」
「…ち…ちが…っ…キールが…はげし…ぃ…から…」
いつの間にか、抽送に合わせてティムが腰を振っていた。
より深い繋がりを求めて、本能がそうさせているのだろう。
肉同士のぶつかり合う音。性器同士がこすれる水音。
「っ…お前のココすごい事になってんぞ…?」
「…は…はずかし…ぃ…こと…ぃっ…ちゃ…らめぇ…!」
上の口も下の口も涎を垂らしながら、ティムは子供がするようにいやいやと首を振る。
「褒めてんだよっ…すぐにでもイキそうだっ…」
「…イ…ってぇ…ボクの…なかで…いっぱ…ぃ…イってぇ…!」
彼女の膣内がより一層締め付けを増す。
「分かった、たっぷり出してやるぜっ!」
キールはしっかりと腰を掴みなおすと最後の一突きを挿入する!
「ふあああああぁぁぁぁぁっ!!?」
逸物が大暴れし、膣内に精液を爆発的に撒き散らす。
同時にティムも絶頂を迎えたらしくガクガクと震え、そのまま崩れ落ちそうになった。
「おっと」
キールは彼女を後ろから抱き留める。
とはいえ、彼も腰にきていた。二人はそのまま尻餅をつくようにその場に座り込んだ。
彼女の言い分は正しい。サキュバスとはそういう魔物なのだ。
けど理屈では分かっても感情では納得できない事もある。
ラナの部屋を飛び出したティムは遺跡の中を当てもなく彷徨っていた。
幸いなことに魔物と化したティムの目は明かりが無くても闇を見通すことができた。
「はは…ボク、本当に魔物になったんだ…」
自嘲気味に呟いた独り言は闇へと吸い込まれて消えた。
こうして、少女は1人ぼっちになった。きっとラナも今頃呆れているだろう。
全ては自業自得だ。ボクは差し出された手を振り払ったんだから。
そんな事を考えていると切なさがこみ上げてくる。
さっき流しきった涙が再び溢れそうになる。
でもティムはぐっと堪えて、耐える。
「はあ…お腹空いたな…」
彼女はその場にぺたんと座ると大きく息を吐き出した。
空腹。それは昨日と人間だった頃と何も変わらない感覚。
だが、その意味は今日に、魔物になって大きく変わってしまった。
「これからどうしよう…」
飢えを満たす為には人間を襲い、男と交わらなければならない。
そう考えを向ければ、生々しく浮かぶのは昨夜のラナの姿。
悦びに打ち震え、快楽に溺れ、快楽に蕩ける女の姿。
それをティムは恐ろしいと感じていた。
そう、それは己の全てを曝け出した姿。
男と交われば、自分も快楽に呑まれ、全てを曝け出すだろう。
そう思うと恐ろしくて堪らなかった。
人は誰も本心を隠して生きている。
誰かと仲良くしたくて、本当の気持ちを押し殺して生きてる。
全てを曝け出せば、きっと皆離れていく。
1人膝を抱えていると思考がぐるぐると回る。
空腹で目も回る。ぐるぐーる。
その時、カツンと小さな音が暗闇に響いた。
(あれ、何の音だろ? 聞き覚えのあるような…)
ぼんやりとしていたティムはのっそりと頭を起こした。
それは前方から響いてくる足音。
(誰だろ? ラナかな?)淡い期待が胸をよぎる。
次の瞬間、闇の中に小さな明かりが浮かぶのが見えた。
それを認識した時、彼女は全身の毛が逆立つのを感じ、反射的に立ち上がった。
足音の持ち主は遺跡で移動するのに明かりのいる相手。すなわち人間、おそらくは遺跡荒らし。
そして、今の自分は魔物。遺跡の中で人間と魔物が出会ったら。
ここ2年で嫌というほど味わってきた現実。
魔物に遭遇した遺跡荒らしは容赦なく魔物を殺しにかかる。
でも、自分は相手を、人間を殺せるのか…。
躊躇えば、下手に手加減をすれば、殺されるのは自分だ。
思考は奔流となり、最適な答えを導き出す。
逃げよう。きっと、まだ気づかれてない筈だ。
ティムはきびすを返すとそろりと一歩を踏み出した。
しかし、運命はそっぽを向いていたようだ。
苔でも踏んだのか、足の裏に妙に柔らかい感触がはしり、少女は滑って転んだ。
「きゃあっ!」
オマケに我ながら妙に可愛い悲鳴つき。
「誰だっ!」
鋭い声が飛び、明かりが見る見る近づいてくる。
「来るなっ!」
慌てて起き上がろうとするものの、転んだ際の打ち所が悪かったのか身体が痺れてうまくいかない。
「何やってんだ、ティム?」
慣れ親しんだ声が石畳の上で一人もがく少女に降り注ぐ。
「え?」
明かりの中に立っていたのは彼女の幼馴染、キールだった。
「ほら、掴まれ」
差し出された手は大きく暖かかった。
「あ、ありがと…」
引きずり起こされるように立ち上がったティムは俯いたまま、モゴモゴとお礼を言う。
キールの顔を見ることができない。
魔物になってしまったという事実が、ティムの臆病さを刺激し、
キールと向き合う事をできなくさせていた。
「…ったく、捜したんだぜ?」
彼女のそんな思いなど露知らず、普段どおりの態度でキールが口を開いた。
「宿に帰って二度寝してたら、部屋に薬屋のオヤジが飛び込んでくるし。
話を聞けば、お前が1人で遺跡に行ったまま帰らないっていうじゃねえか」
彼なりに心配したのだろう。キールが半ば愚痴のように説明してくる。
「まあ、無事で良かったぜ。魔物にやられてんじゃねえかとヒヤヒヤしてたんだ」
魔物。キールの口から出た単語にティムは思わず半歩下がる。
「ん? どした…? そういや、お前何で裸に変な仮装してんだ?」
相棒の様子がおかしい事に、やっと気づいたキールが訝しげな視線でティムを見る。
どうやらキールは角や翼を仮装だと思っているらしい。
親友の鈍さが嬉しくもあり、腹立たしくもある。喜びや怒りは時に人の原動力となる。
「…っ」
ティムは感情に突き動かされて、キールの顔を見上げた。それがいけなかった。
ドクンと心臓が高鳴った。見慣れた幼馴染の顔。心配そうにボクを見つめる顔。
飢餓が熱い波となって彼女の全身を満たしていく。
知らない内にティムはキールの胸に飛び込んでいた。
「おい、大丈夫か!?」
キールから見れば、ティムが、足をふらつかせて倒れこんだように見えたのだろう。慌てて抱きとめてくれる。
「ねえ、キール。ボク今とてもお腹が空いているんだ」
彼の腕に抱かれながら、彼女は潤んだ眼差しで親友を見上げる。
「何!? 腹!? 待ってろ、確か保存食を持ってた筈…」
「ううん、そんなのいらない…」
ティムの本能に従い、黒い尻尾がキールの片足を掬う。
「うぐっ!?」
バランスを崩したキールにティムが馬乗りになった。
「…ってぇ!?」
キールは怒りの声を上げるが、ティムの異様な雰囲気に気づき息を飲む。
一方、ティムは馬乗りになった時点で本来の冷静さを取り戻していた。
(な、何やってんだ、ボクは!? キールを押し倒したりして!)
それは魔物の本能とティムの親友に対する好意、その奥にある臆病さとの葛藤でもあった。
魔物の…いや自分自身の醜い本性を曝け出せば、きっとキールに嫌われる。
そんな思いがティムを踏みとどまらせていた。
「どうしたんだ? どっか具合でも悪いのか?」
沈黙した彼女にキールが優しい言葉を投げかける。
でも今はそれが辛かった。彼の優しさが彼女の心をかき乱す。
「ボクはただ、キールの傍にいたいだけなんだ…」
乱れた心から想いが溢れ、言葉となって零れ出す。
「ティム、何言ってん…」
困惑するキールの唇を彼女は自分の唇で塞ぐ。
零れ出した感情は抑え様のない衝動に変わり、少女を突き動かす。
「ばっ! 何すんだよ!?」
最早、キールの怒声すら耳に入らない。
「ボクはキールの事が好きだ」
最終的に嫌われても構わない。全てを曝け出した自分を見て欲しい。
優しい彼に惹かれた心が一線を超えた。
「好きって、お前男だろっ!?」
「今は女だよ」
キールの焦った声にティムは冷静な言葉を重ねる。
彼女は両手を胸に当てると自らの薄い乳房を誇示した。
「お前…その身体!?」
全く親友の鈍さが恨めしい。でもそれも赦せる。彼の全てが好きだから。
「ボクは魔物になったんだ。この身体だって女の人と同じだよ。
だから欲しくなっちゃう。キールの精が」
ティムの双眸がギラリと輝くとキールの身体が硬直した。
「ごめんね。でもボク、もう我慢できないんだ」
彼女は男へとそっと顔を寄せるとその唇を貪り始めた。
少女に支配された彼も自然に舌を絡め、互いの口を求め合う。
愛しい人への初めての深い口づけにティムの胸が熱くなる。
「ぷはっ」
さすがに苦しくなって離した唇の間を名残惜しそうに唾液がアーチを引いた。
「えへへ…」
荒い息をつくキールを見下ろして、ティムは満足気に笑った。
「初めてだけど、ボク頑張るね」
次なる標的をキールの股間に定めた彼女は男の太ももの上に座りなおすと
ズボンの中から彼の逸物を引っ張り出す。
直前のキスの所為か、それは天を突くようにそそり立っていた。
「ん…」
ティムは逸物の先端に唾液を垂らし、右手で優しく握る。
「しょ…」
そして、そのまま上下にしごき始める。
「熱いよ…」
やり方なんて知らない。けれど魔物の本能の命ずるまま、肉棒を刺激する。
「ねえ…ビクビクしてるよ…? 気持ちいいの…?」
支配されているキールは答えない。でも彼の身体が快楽に震えているのは分かる。
「分かった続けるね」
左手で陰嚢にも刺激を与えつつ、リズミカルに右手でしごく。
逸物の先端から溢れ出てきた先走りの液を手のひらに塗り、肉棒へ磨りこむように塗りたくる。
「ううっ…」
キールが呻き、腰をがくがくと震わせた。
「我慢しないで、いつでもボクの手に出してもいいから」
ティムの言葉に反応した訳でもないだろうが、次の瞬間、彼の身体が一際大きく震える。
「あっ…」
跳ねるように肉棒が暴れ、先端から白く濁った体液が飛び出す。
それらはティムの腕を、胸を、腹を汚していった。
彼女はしばらくそれを陶然と眺めていたが、ふと思い立ち、手のひらの残滓を舌先で掬い取る。
魔物と化した彼女の味覚にはそれが甘い蜜のように感じられた。
「ふふ…美味しいよ…キール…」
妖艶に笑うティムの姿は最早一匹の魔物に過ぎなかった。
ティムの双眸がギラリと輝くと自分の身体が硬直した。
「ごめんね。でもボク、もう我慢できないんだ」
(おい! よせ!)心の中で叫ぶ声は現実には届かない。
それどころか、ティムを拒んでいた心が、彼女の瞳を見た瞬間から溶けていく。
身体が、いや心の底から、親友を…彼女を欲しくなる。
ティムに操られたとして、支配されたとして、この気持ちは全部が嘘なんだろうか?
そんな戸惑いが自分の中で渦巻いている。
彼女の手で絶頂に導かれるこの感覚。それすらも幻。偽りなんだろうか?
気がつけば、キールはティムの手によって果てていた。
腰を中心に心地の良い疲労が広がっている。
見上げれば、ティムが半ば放心したように自分に跨っている。
少女の上気した肌を己の射出物が扇情的に汚していた。その光景に股間がムクリと反応する。
「…?」
その時になってキールは自分が身体と心の自由を取り戻している事に気づいた。
「満足したのか?」
最初に浮かんだのはそんな疑問だった。
「ううん、全然足りないよぉ…」
熱っぽい瞳で切なげに呟くティムにキールの劣情が昂ぶる。
「じゃあ、なんで…」
このまま続けないのか。台詞の後半をキールは飲み込む。
これじゃあ、まるで自分が続けて欲しいみたいじゃないか。
「ええと…あのね…」
先程まで見せていた妖艶な姿など欠片もなく、恥ずかしそうにもじもじとするティム。
「ここから先は…キールにして欲しいかな…って」
「はぁ?」
ティムの思いがけない提案に彼は間の抜けた声をあげる。
「うう…恥ずかしい…恥ずかし過ぎて死にたい…」
そして、提案した本人は羞恥のあまり、キールの上で悶えている。いい加減降りて欲しい。
だが、そんなティムの姿にキールは安堵を覚えていた。
姿は変わっても、大胆に迫ってきても、根っこの部分は、心は自分の知っている親友のままなのだと。
困った時は彼を頼ってくるティム。意地っ張りで、努力家で、いつも傍にいてくれる俺の相棒。
(お前は気づいていないかもしれないが…。俺もお前にずいぶん助けられてんだぜ?)
村を飛び出す時に黙ってついてきてくれた事。2年間、様々な苦労を一緒に味わった事。
本当は心細かった時に、この優しい幼馴染は傍にいてくれた。
「ったく…」
キールは自分の気持ちと不器用な幼馴染の両方に苦笑しながら身を起こした。
「お前…本当に女になったんだよな?」
違う。言いたい事はそんな事じゃない。
「うん…」期待に満ちた眼差しでティムはキールを見上げた。
「ここまでされたんだ…もう俺も止まれねえぞ?」
自分の不器用さが恥ずかしい。死にたい。
「容赦しねえぞ?」
精一杯の笑顔。
「は、初めてだから…や、優しく…」
期待と不安に華奢な身体を震わす愛しい人の言葉を口づけで遮る。
…反撃開始だ。
上気した白い肌に指を食い込まれる。
「…ぃや…つ…つよぃ…よぉ…」
薄い胸を優しく(やらしく?)愛撫する。
「…ごめん…ね…おっぱい…なく…て…」
腕の中の少女がそんな事を謝ってくる。
「………お、大きくても小さくても気にしないよ、俺は」
「…ん…いま…おみせの…おんなのひとと…くらべた…でしょ…?」
どもりながら答えたキールを鋭い目つきでティムが睨む。
「い、いや、そんな事ないぞっ!」
「…うそ…ぜったい…ひゃぁっ…!」
何とか誤魔化そうとキールは桜色の蕾を刺激する。
「…だ…だめだよぉ…ちくび…だめ…ぇ…」
刺激が強すぎたらしくティムの身体が跳ね回る。
その動きはむしろ乳首を指先に押し付けるように動いていた。
「ん…分かった。もうちょっと、優しくするから」
気を取り直して乳首への攻めを再開する。
「…えへへ…キール…やさしいから…だいすき…」
「お、おう」
無邪気に笑うティムにキールはドギマギしっぱなしだ。
それからしばらく無言で少女の胸を愛撫する。
ティムは何度も喘ぎながら、為すがままを受け入れていた。
「…ねぇ…そろそろ…」
ティムは蕩けた視線をキールへと送る。彼女の指先は自らの秘部を指していた。
「準備はできているみたいだな」
キールが視線を落とせば、そこはすでに塗れそぼっている。
「どうしたら…いいの…?」
「そうだな」
床は堅い石畳。おまけに今のティムの背中には羽がある、となれば。
「じゃあ、立ってそこの壁に両手をつくんだ」
「う、うん」
言われたとおり、彼女はやや前屈みになって壁に手をつく。
「もうちょっと…尻をこっちに突き出すんだ」
「ええっ? このカッコ、恥ずかしいんだけど…」
「しょうがないだろ。これがきっと最適だぞ」
キールはそう言いながら彼女の背後に立った。
「…あっ…き…キールの…熱いの…当たってる…」
性器同士が触れ、にちゃりと卑猥な水音を立てる。
「ゆっくり挿れるから、痛かったら言えよ…?」
「が、我慢するから大丈夫…!」
悲壮な決意に満ちた表情でティムがそう返してくる。
「我慢しなくていいから…」
キールは愛しい幼馴染の髪を優しく撫でた後、その腰を掴んだ。
そして、ゆっくりと逸物を膣内へと沈めていく。
「くっ…きついな…」
「っ…!」
腕の中を見れば、案の定、幼馴染が震えながら、必死に痛みに耐えている。
「残りは一気に行くぞ…!」
力を込めて腰を押し出す。その甲斐あって、肉棒は根元まで沈み込んでいた。
「ぃた…!!?」
耐え切れずにティムが悲鳴を上げる。彼女は痛みを紛らわすように肩で大きく息をする。
「やっぱり痛いか?」
「うん、でも平気。すぐに治まるから…」
相棒の健気な台詞が泣かせる。痛みを紛らわせてやろうとキールは別の話題を振った。
「エロ小説だと、こういう場合、すぐに痛みが治まって、本番突入ってなるだろ?」
「うん?」
「まあ、痛みはどうか知らないが、女は初めての時は翌日になっても
股に何かが入っているような感覚が残るらしいな」
「それって、どこ情報?」
「いや、似たようなエロ小説に書いてた」
沈黙。お互いに苦笑。折角、繋がったのに何馬鹿な事を言っているんだと。
「…ね…キール…動いていいよ…?」
「いや…でもお前…」
ティムは首だけで振り返ると微笑んだ。
「痛みもほとんどなくなったし…ホラ、ボク魔物だから普通の女の人より頑丈にできてるみたい」
「便利だなー、魔物」
お互いに顔を見合わせて笑いあう。それでキールの胎は決まった。
何より幼馴染の覚悟を無駄にしたくは無い。
「じゃ、遠慮なく」
軽口を叩いて抽送を開始する。
「…ふ…っ…ぁ…あ…ん…」
ティムが苦痛とも喘ぎともつかない声を上げる。
「どした…?」
「…ぃた…い…いた…い…けど…び…びり…びり…する…ぅ…」
それこそ魔物の魔力なのか、彼女は早くも快楽を感じ始めているようだ。
「…すげえな魔物。てか、エロいぞ、ティム」
「…ち…ちが…っ…キールが…はげし…ぃ…から…」
いつの間にか、抽送に合わせてティムが腰を振っていた。
より深い繋がりを求めて、本能がそうさせているのだろう。
肉同士のぶつかり合う音。性器同士がこすれる水音。
「っ…お前のココすごい事になってんぞ…?」
「…は…はずかし…ぃ…こと…ぃっ…ちゃ…らめぇ…!」
上の口も下の口も涎を垂らしながら、ティムは子供がするようにいやいやと首を振る。
「褒めてんだよっ…すぐにでもイキそうだっ…」
「…イ…ってぇ…ボクの…なかで…いっぱ…ぃ…イってぇ…!」
彼女の膣内がより一層締め付けを増す。
「分かった、たっぷり出してやるぜっ!」
キールはしっかりと腰を掴みなおすと最後の一突きを挿入する!
「ふあああああぁぁぁぁぁっ!!?」
逸物が大暴れし、膣内に精液を爆発的に撒き散らす。
同時にティムも絶頂を迎えたらしくガクガクと震え、そのまま崩れ落ちそうになった。
「おっと」
キールは彼女を後ろから抱き留める。
とはいえ、彼も腰にきていた。二人はそのまま尻餅をつくようにその場に座り込んだ。
11/03/25 23:44更新 / 蔭ル。
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