リリム&クロクロルート 浴衣と私とオレと花火…それから、想い
私はフィオナ・ネイサン・ローランド。 魔王の娘で、リリム。 男性を惑わせ、狂わせ、魅了してしまう存在。 そんなものでは理想の男性を探すのは困難。 私の思い描く男性を見つけるのはとても難しいこと。 今までいろんな街を訪れたけど自身の魅了のせいで理想の男性なんて見つかるわけがなかった。 …それなら、別世界ならどうだろう? それはわずかに抱いた疑問。 こことは違う世界に住んでいる者なら…どうなるのだろう。 その好奇心が、その想いが。 ―私にとってあるはずのなかった出会いを生んだ。 オレは黒崎ゆうた。 黒崎家の長男で、双子の弟。 特にこれといった特徴はなく、また飛びぬけたものもない。 いたって平凡、いたって普通な男の子。 …だと思っている。 そんなオレがある夏の日、祭りの前日というところで変わった出会いをする。 本来なら交わることもなく、死んでもありえなかった出会い。 世界を超えた、種族を超えた出会い。 だが、その出会いが。 オレはなぜだか偶然とは思えなかった。 まるでそうなるべきというように出会ったように、思えた。 ―まるで、どこかで出会っていたような、特別な関係だったような…そんな気がして。 ―あたしはそれが、嫌いだった。 闇の中の火に寄ってくる虫のようで。 光を厭い、闇の中へと集まるようで。 弟に惹きつけられてくるそれらが、嫌い。 それは、あたしの弟を傷つけるから。 弟を傷つけるのに、それをわかって甘える馬鹿ばかりだったから。 中にはそうじゃなく、好めるようなのもいたけど。 でもあたしはそういうものが嫌い。大嫌い。 でもその理由はあたしが弟に幸せになって欲しいから。 怪我することがないのなら。 弟が本当に幸せなら…そういうものと幸せになってもいいと思ってる。 ―だってそれは…。 |
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