連載小説
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雨と貴方とオレとキス 後編
落ち着く香り。
温かな体温。
安心する柔らかさ。
オレを包み込む感覚はそんなものだった。
それらは全てマリ姉からのもの。
マリ姉がオレを抱きしめたから感じるもの。
「マリ…ねえ…?」
「ごめんね、ユウタ。」
それは謝罪。
先ほど聞いたのと同じ言葉。
だが。
マリ姉はオレに言い聞かせるように。
まるでオレを落ち着けるように優しく言葉を発した。
背中まで腕をまわして。
ベッドに横たわるオレの体をしっかりと抱き寄せて。
呟くように言った。
「その…思わなかったから…。」
「…え?」
何を…思わなかったんだろうか。
やはりオレがマリ姉にキスをされたことだろうか?
あの時意識があったなんて気づいていなかったことだろうか。
「その…ね。」
マリ姉ははっきり言おうとはしない。
迷っているように。
恥ずかしがっているように。
言葉を慎重に選んでいるようだった。
それでも体は迷うことなくオレの体を抱きしめていて。
押さえつけるように、逃がさないようにしていた。
自分自身が、逃げ出さないように。
オレを抱きしめることで逃げないようにしているかのようだった。
そしてマリ姉は口を開く。
頬を赤く染めたその表情で。
迷いに迷って選んだ言葉をオレに伝えた。

「ユウタも…私を好きだなんて…思っていなくて…。」

………も、か。
やはりあの男もマリ姉のことを好いていたのか。
そんなこと言われなくてもわかっていたさ。
だから、オレの恋は叶わないんだ。
言われなくてもわかっていたことだ。
「…マリ姉。」
「…その…。」
そう呟くオレにマリ姉は言葉を繋ぐ。
まだ言いたいことの途中だったようだ。
オレは静かにその言葉を聞く。
のだが…。
それはオレの予想外な言葉だった。

「りょ…両想いだなんて…思ってなくて…。」

「…うん?」
何て言った?
今、マリ姉は何て言った?
両想い?
両想いって…え?
それっていわゆる…相思相愛ってこと?
いやいや、そんなまさか。
マリ姉はあの男が好きなんだ。
オレなんてガキを好きになるはずがない。
だから今の発言はきっと…。
…オレに対する慰めの言葉。
「いいって…マリ姉。そんな無理しないで。」
ファーストキスの相手に、初恋の相手にこんなことをしてもらいたくはない。
でも…。
夢でも、嬉しい。
そんな上っ面な言葉だけでも、嬉しかった。
「無理してなんかないっ!」
それは怒鳴り声に近かった。
普段優しくお淑やかなマリ姉からは考えられない悲痛な声だった。
顔を向けて見てみればそこにいるマリ姉は。
今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「マリ…姉…?」
「…まったく。」
泣き出しそうな顔をしたと思ったら今度は呆れたような表情になった。
それでも微笑を浮かべて。
オレを見ている。
どうしたというのだろう。
「ユウタは…鈍感ね。」
「…鈍感…?」
オレが不思議そうに繰り返すとマリ姉はふふっと笑った。
いつものように。優しげな笑み。
「そうよ。こんなにしてるのに…全然意識してくれないんだもの…。」
「こんなにって…?」
「…まったく、本当に鈍感ね。」
マリ姉はオレの背にまわしていた腕をより強く引き寄せる。
そんなことをすれば自然とオレの体はマリ姉と密着する。
その柔らかく温かな体が接触する。
今のオレはとても軽装だ。
寝巻きなんて買ってもいないので寝るときはディランさんからの借り物のシャツとオレのトランクス。
それらのみ。
なのでマリ姉の体の感触はもろにオレの体に伝わる。
「っ!?マリ姉!?」
「こんなこと…好きな人以外にするわけないじゃないの…。」
信じられなかった。
それでも心のどこかで信じたいと思っているオレがいた。
そりゃ…好きな女性からの好意を寄せられているなんてことを言われれば嬉しい。
胸は躍るし心弾む。
でも…それじゃあ。
何でマリ姉は…オレを好きになった?
それよりも…なんであの時オレにキスをした?
そんな疑問が浮かんでしまう。
はずなのに。
今はどうでもいいって思った。
マリ姉に抱きしめられて、好きだと言われて。
この瞬間がずっと続いて欲しいなんて願ってしまう。
不謹慎、かも知れない。
それでも、男だから。
ずっとこうしていたかった。
「マリ…姉…。」
この落ち着く感覚に瞼を閉じそうになる。
そのまま意識を沈めて、このまま寝てしまいそうに。
しかし。
マリ姉の行為により胸が、心臓が強く脈打つことにより寝るに寝られない。
女性に抱きしめられている状況で寝られるほどオレも経験があるなんてわけでもない。
体が、心が昂ぶってしまう。
しかしそれは。
マリ姉の方も同様らしかった。
よくあるファンタジーな物語に登場するような貝殻のビキニに包まれたマリ姉の胸から伝わる鼓動。
硬い貝殻越しとはいえそれは確実にオレの胸に届いている。
オレと同じように昂ぶり、激しく脈打っていた。
「聞こえる…でしょ…?私の…胸の、音…。」
「う、うん…。」
「こんなにドキドキしてるのよ…?」
そのまま続けられる言葉。
マリ姉との距離は相変わらず近いまま、熱い吐息がかかるところで言葉を発する。

「ユウタのことが…好きだから…。」

「…っでも。」
オレは言ってしまう。
この事実を認めたいはずなのに、それでも認められない自分が言ってしまう。
あの日。
雨の降ったあの日の疑問を。
認めなければいけない、あの事実を。
「マリ姉…男の人と歩いてたじゃん…。」
二人して並んで道行くあの姿。
マリ姉は水路を使っていたからもしかしたらただ偶然そう見えただけなのかもしれないと思いたかったあの光景。
男はちゃんとマリ姉の隣につくように歩いていた。
見間違えようがない。
それでもマリ姉はオレを好きといってくれたのなら…あれはいったい?
「その…あれはね…。」
マリ姉は気まずそうに視線をそらした。
頬を赤く染めているが…やはり言いにくいことだろうか。
それでもマリ姉は口を開く。
あの事実をオレに教えるために。
「あれは…そのね………誕生日プレゼントの相談にのってもらっていたのよ…。」
「…へ?」
「だから、誕生日プレゼントっ!」
マリ姉は恥ずかしいのか声を荒げてオレに言った。
え?ちょっと待って?
誕生日プレゼントって…誰に対する?
「ユウタの、誕生日に決まってるでしょっ!」
「…あ…うん。」
そうだよね…。
マリ姉の近くにいる者で誕生日を控えているのは…オレぐらいだよね?
そう思ってもいいんだよね…?
「それに、あの男の人はセイレーンの奥さん持っているから安全よ。」
「…え…それじゃあ…。」
もしかして。
いや、もしかしなくてもこれは…。
…オレ…とんでもなく恥ずかしい勘違いをしてたってことか…?
それなのに…オレはマリ姉にひどく当たっちゃったって…ことか?
え…?マジで…?
…うわぁ。
うわぁああああああ…。
何してんだよオレ…。
何恥ずかしいことしてんだよ、オレ…。
…うわぁ。
オレはあまりの恥ずかしさに顔を両手で覆った。
マリ姉から顔を隠すように。
今のオレの顔、きっと真っ赤になっている。
風邪だからとかじゃない。
あまりにもおろかな自分の行いに恥じて。
顔がやたらと熱く感じる。
おそらく耳まで真っ赤になっているんだろう。
うわぁ……恥ずかしいなんてもんじゃない…。
穴があったら入りたいくらいだ…。
でも。
そんなオレを前にしてもマリ姉は微笑みを浮かべてオレを見ていた。
そのままそっとオレの手をどかす。
自然、向き合う顔。
見つめあう黒い瞳と蒼い瞳。
オレの顔は真っ赤だろうが、マリ姉の顔も赤かった。
頬に赤みがさして恥らう乙女のような可愛らしい表情。
そして、口を開いた。
「ねぇ、ユウタ…。私たちって…相思相愛、だったのね…♪」
「あ…う、うん…。」
「ふふふっ♪嬉しいわ♪」
改めてそういわれるとなんというか…恥ずかしいものがある。
嬉しいは嬉しいんだけど…面と向かって言われると照れる…。
思わず顔を背けようとしたがマリ姉の手によって阻まれた。
オレの頬を包むように優しく抑えて。
その気になればすぐさま振り払うことなんて出来るんだろうけどそんなことはしなかった。
見つめられている今の状況。
向かい合っているこの状態。
その相手が好きになったマリ姉。
そんなところで動く気になれない。
それよりももっと近づきたいと思ってしまう。
これ以上を、望んでしまう。
「ねぇ、ユウタ…。」
マリ姉は言った。
その艶やかな桜色の唇を動かして。
潤んだ瞳をオレに向けて。
熱の篭った吐息をかけて。
呟いた。

「好きあっているのなら…いいよね…♪」

「っ!…マリ姉…!?」
その言葉の意味がわからないほどオレも子供ではない。
でも、いいのだろうか?
こんなトントン拍子に事が進んで…いいのだろうか?
これ以上のことを期待してなかったわけではないが、それでも不安になってしまう。
なによりオレは未経験者。
そういったことに関して知らないわけでもないけど、上手いわけではないのだから。

「ね、ユウタ…♪していい…?ううん…するよ…♪」

オレの名を呟くマリ姉は止まる気配を見せない。
このままいけば一線を越えることは確実。
だが。
オレはそれに抗うすべを持ってない。
今のマリ姉を止める考えを持っていない。
なにより。

「オレも、マリ姉と…したい…っ!」

それがオレの答え。
オレの、想い。
それを聞いたマリ姉はとても嬉しそうに微笑んでくれた。
「よかった♪」
その一言。
呟いてすぐに。
マリ姉は動いた。

「ん♪」
「っ!」

人生で二度目。
あのときよりももっとずっとはっきりとした感触。
温かく柔らかく甘いそれ。
マリ姉との、キス。
夢でも、幻でもない。
マリ姉の気持ちを、オレの想いを伝える行為。
一度離して、そして再び重ねあう。
「ん…ちゅっ……っ…♪」
熱に浮かされつつもオレはマリ姉の背に腕を回して抱き寄せる。
これが現実だと確かめるように。
あのときのようなはっきりとしないもので終わらせないように。
それに応えてくれるかのようにマリ姉さんは唇を強く重ねた。
「ふっん…んんっ…♪」
啄ばむようなキスを何度もして、マリ姉は舌をオレの口内へと伸ばしてくる。
それに対してオレは抗わずに受け入れた。
受け入れ、その舌を求めるようにオレの舌を伸ばす。
「んん…ぷはぁ…あ、んん…ちゅるっ…ちゅ、んん…ユウタぁ♪」
「ん…ふ、あ、マリ姉…!」
時に互いに名を呼び合って。
互いの存在を確認して。
舌を絡め貪欲に互いを貪り、求め合った。
唇を離すことをやめられなくなるくらいに。
呼吸の暇さえ厭うくらいに。
「んん…あ、ん♪」
「ふぅ…。」
長いキスを終えてようやく唇を離した。
互いの唇の端から銀色の橋がかかり、ぷつんと切れた。
「あっ。」
マリ姉は唇の端についた唾液を舐め取る。
赤い舌がゆっくりと。
拭って味わっているかのように。
その姿。とても、色っぽい。
「ねぇ…ユウタ…♪」
抱きしめあったこの状態。
火照った体温は風邪をひいたオレよりも熱い。
そんなマリ姉はオレの右手を取り、誘導させていく。
導くように引かれた手に何かが触れた。
ねちゃりとした粘液の感触。
「っ!?マリ姉!?」
「ユウタとのキスで…こんなになっちゃったわ♪」
オレの右手に触れているのは間違いなくマリ姉のそれ。
女である部分。
少し顔を上げてみればオレの右手はマリ姉の股間の部分に導かれていた。
濡れてる…。
指先から伝わるその感覚。
間違えようのないそれ。
本当なら鱗で覆われているはずのそこ。
異常な熱を感じさせ、今まで触ったことのない柔らかさをオレに伝えてくれる。
マリ姉は…昂ぶっている。
そんなマリ姉の状態を知ったオレは当然反応せざるをえない。
上に乗られるような形で抱きしめあっているこの状態だ。
マリ姉にはオレも同じように体が反応していることを悟られているはずだ。
やばい…今すぐにでもしたい…。
だがオレの意志とは反するように体は動かなかった。
やはり風邪か。
熱に浮かされた今の体を十分に動かせるはずもない。
動くに動けないそのもどかしさ。
それにマリ姉は気づいてくれた。
「私がしてあげるね♪」
なんとも嬉しい言葉。
それを微笑みながら。少しばかり恥らっている様子で言ってくれた。
でも…その、オレは…
「マリ姉…その…。」
「うん?どうしたの?」
「えっと…。」
これは言うべきだろうか…?
オレ自身経験者だと思われてて後にばれたらなんとうか…気まずいだろう。
それなら今言っておいたほうはいい。
とにかくオレはマリ姉に正直に言うことにした。
「その…オレこういった経験…ないんだけど…。」
「そう♪」
そう嬉しそうに呟くマリ姉。
そのままシーツを取り去り、履いていたトランクスを脱がされる。
「っ!マリ姉!?」
「大丈夫よ♪」
トランクスを脱がされたことによりオレが身にまとっているのはディランさんから借りたシャツのみ。
下半身は裸になってしまった。
その上に跨るように。
オレの上に覆いかぶさるように体を倒すマリ姉。
離れていった顔がまた近づく。
オレの目と鼻と先。
文字通り目の前でマリ姉は言った。

「お姉さんに任せなさい…♪」

ぬるりとオレのものの先端に感じる湿り気。
同時に風邪でも引いているんじゃないかと思ってしまうほどの体温。
オレのものが触れているそれは、間違いなくマリ姉の女の部分。
互いに擦りあわされ甘い快楽が生じる。
「んぁ……っ。」
「いれるね…♪」
マリ姉は静かにそういうと一気に腰を落とした。
「んんんんぁっ!!」
「はあっ、おきぃっ!」
一気に奥まで呑み込まれたオレのものはマリ姉の胸とは違う柔らかな中に締め付けられた。
オレは今マリ姉と繋がっている。
文字通り、一つに。
とても気持ちがいい。
肉体的にも、精神的にも。
憧れで初恋の相手とできて。
とても、いい。
だが、感じる。
マリ姉の中で島つけられる感覚がとてもきつい。
痛みを感じそうなくらいに強い。
それだけではなく、マリ姉の中はオレのものを押し戻そうとするかのように抵抗していた。
全て埋まっている今、それは入ってきたオレのものを締め付けるという形になっているが。
それでも、なにかおかしい。
女性の中はこんなにきついものなのか?
未経験者のオレがそんなものわかるわけはない。
だが。
それでも、気になることがあった。
先ほど一気にマリ姉の中へと入れられたときに感じた抵抗。
なにか、突き破ったような感触を。
マリ姉を見れば―震えていた。
その肩を震わせて何かに耐えるかのようにしていた。
…もしかして……マリ姉も…。
「ねぇ、マリ姉。」
オレはマリ姉の背に手をまわした。
その震える体をそっと抱きしめるように。
びくりと震えたがマリ姉は抵抗せずに受け入れてくれる。
顔を見ればその青い瞳の端に涙が溜まっていた。
苦悶に耐える表情で。
だからオレは。
そんなマリ姉を抱きしめて、落ち着けるように言葉を発する。
「少し…もう少し、こうしていいかな…?」
動かないように、オレのものがマリ姉の中に馴染むまで。
マリ姉が少しでもつらくならないように。
オレはマリ姉を抱きしめる。
それにマリ姉は微笑んでくれた。
「ありがとう…やっぱりユウタは優しいのね…♪」
そのままキスをする。
オレの後頭部へ腕をまわして。
オレの頭をかき抱くようにして深い口付けを交わす。
「ん、ん、ふっ…ちゅ…んん♪」
「んぁ…んんっ。」
抱きしめて、抱き合って。
互いの存在を確認して。
マリ姉はオレを求めて。
オレはマリ姉に応えるように求め返す。
そのまま長い時間キスをしていた。
気づけば痛いほど締め付けていたマリ姉の中はさっきとは違って柔らかくオレを抱きしめるくらいになっていた。
溢れ出す粘液と共に絡みつく。
時折きゅうきゅうと締め付けるのがなんとも気持ちいい。
「そろそろ…動くね…♪」
そう言いマリ姉はオレの唇に触れるだけのキスをして、腰に力を込める。
そうして呑み込んでいたオレのものを引き抜いていく。
「ふっ、んん…ぁっ♪」
「うっ…ぁ…っ!」
さっきまでの押し出されるのとは違う感触。
マリ姉はオレを逃すまいと絡み付いてくる。
甘い快楽。
優しい快感。
その感覚に思わず下腹部で熱く滾っている欲望が弾けそうだ。
限界までオレのものを引き抜いたマリ姉はオレの顔を見たまま腰を下ろしてきた。
「あんっ♪」
「っ!!」
先ほどよりも深く呑み込まれるオレのもの。
マリ姉の中もオレのものにより吸い付き、締め上げる。
自由の利かない体に染み渡っていく。
電撃のような頭の中を真っ白に染め上げていくような快楽が。
たった一度、腰を動かしただけでこの気持ちよさ。
もっと、欲しい。
もっとしたい。
マリ姉と、もっと。
「マリ姉…。」
「ユウタ…♪」
そのままキスをしてマリ姉は腰を動かし始めた。
動かすたびに溢れ出す粘液はオレに滴り下のシーツに染みを作っていく。
やわやわと締め上げ吸い付き、撫で上げていくマリ姉の中。
オレのものを何度も呑み込んでいくそこは動くたびに淫らな水音を響かせる。
やがて部屋に響くのはマリ姉の喘ぎ声とオレの息遣いと。
激しく打ち付けられる肉のぶつかる音。
徐々に早まっていくペース。
熱に浮かされ風邪に侵されたオレの体もいつの間にか動き出していた。
マリ姉の腰を手で掴んで。
自ら腰を動かしてこの快楽をより貪ろうとしていた。
「っふ、ぁ♪…んっ♪や、ああぁ♪…はぁっ♪」
甘みを帯びてくるマリ姉の嬌声。
その声をもっと聞きたい。
もっとマリ姉を感じさせたい。
オレの中に募ったのは貪欲なまでの本能と。
好きな女性に尽くしたいという意志。
そんな想いを胸にオレは激しくマリ姉の腰に腰を打ちつけた。
「っふぅうあっ♪あっ♪激し、い♪ユウタぁ、あ♪」
「っく、マリ姉っ!!」
何度も腰を打ち付け合って。
何度もキスを交し合って。
肌に浮かんできた玉の汗なんて気にせずに。
荒くなった息を整えようともせずに。
オレとマリ姉は互いを求めあう。
強く深く貪りあう。
オレのものを優しく受け入れ、離れるのを厭うように抱きついてくるマリ姉の中。
それによって得られる快楽は半端なものじゃない。
マリ姉の表情を見れば頬を赤くし目尻をトロンと下げた妖艶な顔。
快楽に蕩けた、女の表情。
マリ姉も感じてくれている。
その事実がとても嬉しくてオレはさらに腰に力を入れた。
「ああっ♪そんなに、激しくしたらぁ…んぁあっ♪」
突けば突くほど締め付けが強くなる。
動けば動くほど欲しくなる。
そんなマリ姉との行為にオレは欲望に、本能は限界が近づいてきていた。
目の前が徐々に白くなり、理性は快楽に溶かされる。
「マリ姉っ!もう…っ!」
「ん、うんっ♪ユウタぁ♪」
オレはマリ姉の腰を思い切り引き寄せた。
そんなことをすれば当然オレのものはマリ姉の中へと深く埋まる。
抜けないように、より深く。
奥まで届くように。
マリ姉の一番奥、何か硬いような柔らかいようなよくわからないものに先端を思い切り押し付けて。
オレはマリ姉の中で果てた。
「うっぁあっ!!」
「っあぁあああああぁああああああっ♪」
どうんどくんと。
マリ姉の中へオレの精を注ぎ込む。
湧き上がったオレの欲望は留まるわけもなくマリ姉の中へと流れ込んだ。
目の前で火花が散るような、意識を持っていかれそうになるほどの快楽。
「はあっあぁあ♪いっぱい、出て…あぁああああああっあっ♪」
マリ姉は体を弓なりにそらして大きく震えた。
いまだ精を流し込むことをやめないオレのものをきゅうきゅうと締め上げてくる。
オレは長い間マリ姉の中に注ぎ込んでいた。
オレ自身ここまで長く出したことなんてないというくらいに。
長い射精を終えて、マリ姉は力なくオレの体に抱きついた。
「ふっ…あ、はぁ…はぁ…。」
「はぁ…はぁ…はぁ…。」
二人の荒い息遣いが部屋に響く。
オレは何も言わない。
マリ姉も何も言おうとしない。
それでも、良かった。
こんな話さずにいる時間さえ心地良い。
好きな女性とつながれたということが。
想いが通じていたということが。
オレの人生の中で最高の至福だった。
この快楽の余韻をもう少しだけ味わいたくて。
この幸せをもっとかみ締めたくて。
オレは静かにマリ姉の背に手をまわした。
「ふふっ♪」
マリ姉はそんなオレに答えるかのように後頭部へと腕をまわしてくる。
微笑を浮かべて。
とても嬉しそうに笑って。
「たくさん出したね♪中、ユウタのでいっぱいよ…♪」
「マリ姉…っ。」
「ねぇ、ユウタ…♪」
ぎゅっと、マリ姉のまわした腕に力が入った。
「…ん?」
「ユウタの…まだ硬いわね?」
「ああ、うん…。」
そう言うとマリ姉はふふっと笑った。
それも、妖艶に。
マリ姉はオレの耳元で呟く。
よりによって年頃の男の子がたまらなくなるような言葉を。

「まだ、私の中で出したい?」

「っ!」
そんなこと聞かれなくても答えは決まっている。
好きな人と体を重ねて、それをやめたいなんて思う奴はいない。
好きな人を自分のもので染め上げたいと思わない奴はいない。
だから当然。
オレはマリ姉の耳元で答えた。
「もっと、したい…っ!」
「そっか♪」
マリ姉はオレの顔を見据えてにっこりと微笑んだ。
その桜色の唇を動かして。
蒼い瞳でオレを映して。
言った。
「それじゃもっとしましょ♪」
「んっ。」
オレはその言葉を聞いてマリ姉にキスをした。
マリ姉も同じようにオレを求めて舌を絡めて激しいキスへと移行する。
再開される行為。
再び始まる営み。
オレとマリ姉はさらに激しく互いを求め合った。

この夜が永遠に忘れられないようになるように、願って。



それはとある港町。
町の片隅でひっそりと営まれるカフェバーにて。
そこではマーメイドの妻と共に暮らす青年がいた。
黒髪黒目。
この港町では大して珍しいものではない彼だが、町の人とは何かが違う。
そんな青年。
彼と妻のマーメイドはどこにでもあるような幸せを掴み、
どこにでもあるようなハッピーエンドを迎えて、
どこにでもあるような幸せな家庭を築いた。
大して有名になったことでもない。
誰も気にするようなことでもない。
だが、それでも。
彼と妻は誰がどう見ても幸せそうに暮らしていた。



「そういえばさ、マリ姉に聞きたいことがあったんだけど?」
「うん?どうしたの?」
「いや、マリ姉は何でオレを助けたときにその…キスをしたのかなって…。」
「あ、あれ…ね。」
「そ。あのときには人工呼吸の必要だってなかったでしょ?そこがちょっと気になる。」
「えっと…あの…キスはね…。」
「うん。」
「その…おまじないだったの…。」
「…おまじない…?」
「そう。とっても素敵な旦那様が出来ますようにって…♪
「旦那って…それって…!?」
「私の『ファーストキス』を使ってかけられるおまじないよ♪」
「ファーストっ!!?え!?ちょっと!?マリねえ―んっ!?」
「ちゅっ♪ちょっと時間はかかったけど…ちゃんときいてくれたみたいね♪」




黒崎ゆうたの誕生日 これにて終了

HAPPY END
11/05/13 20:15更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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■作者メッセージ
ということでマーメイド編、これにて完結です!
告白されたり襲われたりと受身になっていた主人公ですが今回は自分から恋をしてみました!
ちょっぴり切ないところから甘酸っぱい恋愛
これぞ、高校生!…なのかもしれません

さて!次回はとうとう出ます!
師匠の回想の話です!
主人公が思い出すあのころの話
そこにいる師匠は…!?

それでは次回もよろしくお願いします!

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