連載小説
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恋とお前とオレとスキ 後編
「幼馴染は外せないな!!」
それは友人の一言。
オレのいた世界での、オレが通っていた高校での一時。
ある日の昼休みのことだった。
「やっぱりさ〜こう、幼馴染のお姉さんていうのはいいと思うんだよ!」
女子のいない、人気のない階段で男友達と集まって楽しく猥談。
高校生ならではの願望や憧れを曝け出して話し合っていた。
「幼馴染だって…!?だったらボクは年下だぁ!!」
「うわっ!すげー!勇ましい発言だなおい!」
「はっ!姉が一番だろ!」
「ええー…。」
「…何その反応。」
今思えば、というか常に思っていたけどオレ達はいったい何の話をしてたんだろう…。
どうしようもなく下らなくて、どうしようもない内容だけど。
それでも確かに楽しかったあの日常。
「それじゃあさ、シチュエーションなんてどうよ!」
「シチュエーション?」
「する前だったらどんな感じがいいかってことだぜ!」
「…病気で介護されてて…そのまま…なんてのは!」
「おお!いいねぇ!」
「病院でナースとか…憧れるよね!?」
「たいしていいとこじゃねーぞ、あそこは…。」
「クロは?」
「ん?」
友人の一人に声を掛けられてオレはそいつのほうを向いた。
「クロはなんかあこがれてるシチュエーションとかないのかよ?」
「オレは…そーだな…部屋で二人っきりとか?」
「何だよそれ、普通!」
「普通が良いんだよ!」
「で、そっからどう発展していくんだよ?」
「あー…そうだなー…。」
「そこで隣の部屋から喘ぎ声とか聞こえたらいんじゃね?」
「よくねーよ!ただ気まずいだけじゃねーか!」
そんなことを言いながら皆して笑っていた。
あの時はただ笑っていられてたけど。
それでも、もし今のオレにその質問をされたらオレは迷いなくこう答える。

―気まずいなんてもんじゃねーよ!!

何だよこの状況は!?
何でオレは興奮したエレーヌに押し倒されてるんだよ!?
まるでこれから一線越えるような雰囲気で!
やばいとしか言えねぇよ!
相変わらず響いてくるマーメイドの喘ぎ声。
そして目の前にはエレーヌ。
頬を赤く染め、息を荒くした女性がいる。
かけてやった学ランはオレを押し倒したときに脱げたのだろうか、エレーヌの姿はシジミみたいな貝殻ビキニ。
形がよくて意外と大きな胸が揺れる。
「…っ。」
オレの理性も揺れる。
男としての本能が燃える。
「ねぇ、ユウタ…。」
エレーヌの声。
ねだるような甘い声で呼ばれる。
「この声って…マスターの奥さんの声よね?」
「…あ、ああ。」
「ふふ、とっても…気持ちよさそうに喘いでいるわね…。」
「そう、だな…。」
「ねぇ…ユウタ…。」
エレーヌは身を寄せてきた。
下はベッド。
オレに逃げ場はなくエレーヌの体を体で受け止める形になる。
柔らかな胸がオレの胸板で形を変え、甘い香りがオレの鼻孔をくすぐった。
「どうしたんだよ、エレーヌ…。」
「ふふふ、ねぇ、ユウタ。

―あたし達も、しましょ…♪」

「っ!!」
その一言はとてつもなく甘い誘惑。
男にとって抗いがたい誘い。
気を抜けばすぐさま陥落させられる魅惑の言葉。
大抵の男なら堕ちるようなこのシチュエーション。
それでも、オレは。
抗わないといけなかった。
オレ自身のためにも―そしてエレーヌのためにも。
「エレーヌ…やめとけ。」
オレは言った。
エレーヌの肩を掴んで、言い聞かせるように。
「何でよ?」
「何でじゃねーよ。お前はこんな雰囲気のせいでどうでもいい男に抱かれるのか?」
「…。」
「オレみたいな男とするのは、嫌だろ?」
「…。」
これはオレからの優しさ。
エレーヌのような気さくでいい奴がオレみたいなどこの馬の骨ともわからない男とは釣り合わない。
普段から仲良く話している仲とはいえ、そこらへんはちゃんとわきまえてるつもりだ。
オレとエレーヌはただ仲良く話しているだけ。
そんな関係。
それ以上でなく、それ以下でもないと、わかっている。
それにエレーヌにはもっといい男が合う。
別世界の住人であるオレよりも、この世界の住人の男が。
「だから、やめろよ。オレみたいな好きでもない男としようとするのはさ。」
「馬鹿ね。」
エレーヌは言った。
静かに、だけどハッキリと。
オレの耳に口を寄せて。
「…何が?」
「あなたは本当に馬鹿よ。」
いつの間にか腕を後頭部へとまわされて。
より密着する形で。
彼女は言った。
「あたしがどうでもいい男にこんな姿を見せると思う?」
「…。」
「あたしが嫌いな男にここまで寄ったりすると思う?」
「…。」
「あたしの本心を知らないから、ユウタはそう言えるのよ。」
何も言えなかった。
確かにオレはエレーヌの本心を聞いたことはない。
それは怖かったから。
エレーヌがオレ以外の男を好きだったりするのが怖かったから。
だから今まで聞けずにいた。
エレーヌの本心を。
その気持ちを。
それが必ずしもオレが喜べるようなものじゃないと思ってたから。
だってオレは―

「好きよ。あたしはユウタが好き。」

それは想いを込めた囁き。
オレの耳へ届くように言われた言葉。
エレーヌの本心を表した言葉。
「何ならどこが好きだか言ってあげましょうか?あたしは、ユウタの優しいところが好き。誰も付き合ってくれなかった話に楽しそうに頷くユウタが好き。見返りなんて求めないユウタが好き。細かなところまで気を配ってくれるユウタが好き。鈍感なユウタも少し好き。」
「…エレーヌ。」
普段とは違うその姿。
言うもと違うその言葉。
「ユウタとこんな風にしたいって思ってた。ユウタのことを想って耽った日が何度もあるくらいにね。」
「…耽るって何に?」
「いやん♪えっちね〜♪」
いい雰囲気が一気に台無しになった。
聞いたオレもオレなんだろうけどさ…。
「とにかく、あたしはユウタっていう一人の人間が大好きよ。だからこうして誘惑までしてるんじゃない。」
明確な好意。
確かな告白。
今までされたこともないその行為。
オレの胸の奥が熱くなっていくような感じがした。
「ユウタは、どうなの?」
「オレ?」
「そう。あたしの本心は言ったわ。今度はユウタの本心を言って頂戴。」
…本心、か。
その言葉にオレは力を抜いた。
今まで頑張って張ってきた余計な壁を崩した。
本心に、正直になることにした。
「好きだ。」
エレーヌの耳に口を寄せて。
呟くように、それでもハッキリ伝わるように。
びくりとエレーヌの肩が震えたが構わず続ける。
「その気さくで優しいところも、楽しげに笑ってくれるその顔も、その曝け出しまくりな性格も、エロい話が大好きなところも、全部好きだ。」
抑えを崩し、遠慮をなくし、オレは正直にエレーヌに囁く。
オレの抱いたこの気持ちを。
この世界でマリ姉達以外にオレに話しかけてくれた初めての女性。
不安だったこの日常を変えてくれた相手。
だからこそ抱いたこの気持ちを、正直に伝えた。
「…よかった。」
エレーヌは静かに言った。
「何が?」
「迷惑がられてるんじゃないかって、思ってて…。」
「迷惑には思ってないさ。むしろ逆。」
「逆?」
「そう。本当は嬉しかったんだよ。こんなオレと―」
未知の世界に踏み込んでしまったオレと―
初めて孤独を実感したオレと―
マリ姉達でも埋められない空虚な日々を送っていたオレと―

―この世界の住人ではないオレと―

「―話してくれて。」
それに対してエレーヌはふふっと笑った。
嬉しそうにオレを抱き寄せて。
「そっか。」
「おう。」
オレもエレーヌの背に腕をまわして抱きしめる。
優しく、それでも強く。
エレーヌの想いに応えるように。
そうやってずっと抱きしめあっているのもよかった…のだが。
いまだに聞こえるマーメイドの淫声。
こんな雰囲気でロマンチックな展開なんて望めない。
さらに言うとさっきはあんなドラマチックな発言をしたわけだが…。
少しばかり体を離してオレの上にいるメロウ。
エレーヌはすでに興奮状態。
顔はもう真っ赤で目がギラついてる。
息も荒く…おい、口から涎垂れてるぞ!
「ユウタぁ♪」
甘えるような声でエレーヌはオレを呼んだかと思えばその綺麗で赤く染まった顔を近づけてくる。
下はベッドのこの状況に逃げ場なんてものは存在しない。
それ以前に、逃げる気もない。
「エレーヌ…。」
オレからも彼女の名前を呼び、ゆっくりと顔を近づけた。
エレーヌの甘い吐息がオレの顔を撫で、オレの本能を刺激する。
本能を抑えている理性はもうない。
欲望を抑える楔もすでにない。
だからオレは本能のまま、欲望のまま。
本心のままにエレーヌの唇に自分の唇を重ねた。
「ん♪」
「ちゅっ。」
軽く触れ合わせるだけの軽いキス。
だけど、それはすぐに情熱的なものへと変わる。
それは当然の結果としか言いようがない。
互いに性知識は豊富。
さらに異性に興味のある年頃。
エレーヌはマーメイド種の中で最も好色なメロウ。
オレは人生の中で最も盛んなお年頃の学生。
だからオレはエレーヌを貪るように求め、エレーヌはオレに喰らいつくように求めた。
「んんっ♪ちゅ、ん、んんん♪」
「ふぅっ、ん。んんっ。」
互いの唇の間から出た舌が絡み合う。
唾液を塗りこむように動いたかと思えばエレーヌの舌はオレの唇の間から口内へと侵入してきた。
流し込まれる唾液。
オレは抗わずに受け入れ、飲み込み、そして舌を絡める。
口内を這いずり回り、歯を、歯茎を磨くよう丁寧に舐めるエレーヌの舌。
それはとても甘く感じられ、そして気持ちよかった。
互いに苦しくなっても唇を離さない。
少しでも離れているのが惜しいというように、もっと密着するように。
そんな気持ちの表れかエレーヌはオレの頭を掻き抱くように腕を後頭部へとまわす。
痛みを感じない、だけど強い力でオレの頭を寄せて、強く唇を押し付けた。
目の前にはエレーヌの顔。
綺麗でうっとりとした表情で目を瞑る女性の顔。
オレもエレーヌに合わせて瞼を閉じた。
視界が途絶えたことにより感覚がより鋭くなる。
舌の感触が、唾液の味が、甘い体臭が、荒い息遣いが、オレを包む。
そうしている間にオレの本能は体を動かす。
エレーヌの背に回した腕を動かし彼女が着ていたビキニの紐の結び目を探す。
「んん、んんっ♪」
彼女の背を這いずり回るオレの手の平。
動かすたびにエレーヌがくぐもった声を上げた。
手の平から伝わる柔らかな感触。
女性らしい感触を味わいながらやっと見つけた。
ビキニの紐の結び目。
ご丁寧に解きやすい蝶結び。
両端を左右から引っ張り、解いた。
外される貝殻ビキニ。
ベッドの端に置いてすぐにオレの両手は次の行動に出た。
エレーヌの肩へ手を置き、そこからすべるように彼女の鎖骨を撫で、くすぐるように這いながらそこへと到達する。
意外と大きく形のいい胸。
ちらと見ればきれいなピンク色の綺麗な突起が目に映る。
かわいらしく自己主張するそれを指で撫でた。
「ふむっ!?」
唇を重ねているからくぐもった声しか出せないエレーヌ。
それがまたいやらしく感じられ、オレの情欲を滾らせる。
その声をもっと聞きたいと本能が体を動かす。
右手は徐々に硬くなりつつある乳首を人差し指と親指で摘むように刺激し、左手はもう片方の胸の感触を確かめるように揉む。
「ふんんっ♪ん、んん♪んー♪」
エレーヌはその感覚に耐えるように身を捩じらせた。
その動きが、その仕草がもっと見たい。
どうやらオレはオレ自身が思っている以上に貪欲な性格らしい。
欲望の赴くままに手を動かしてエレーヌの胸を揉み続けた。
くぐもったその喘ぎ声を聞きたくて、触ったことのない温かな柔らかさをもっと確かめたくて、感じたことのない快楽をさらに求めたくて。
オレはエレーヌの胸を揉む手にさらに力を加えて―
「んむっ!?」
くぐもった声が出た。
ただし、今度はエレーヌではなくオレからだった。
原因は感じたことのない感覚が伝わってきたから。
それもオレの股間から。
ちらと見てみればそこにあるのは細く綺麗な女性の腕。
エレーヌの手がオレの股間を摩っていた。
「ん、ちゅっ♪一方的過ぎるわよ、ユウタ。」
長すぎるキスを終え、嬉しそうに言う彼女。
「だからっていきなり過ぎるお前もどうかと思うぞ、エレーヌ。」
そう言っていても彼女はオレの股間を撫でるのをやめない。
「あたしからもしてあげたいの♪ほら、こここ〜んなに硬くしちゃってるじゃない♪」
「仕方ないだろ。エレーヌみたいな美人にここまでされてんだから。」
「あら?あたしみたいな美人なら誰でもいいの〜?」
「意地悪な質問だなそれ。」
そういって互いに笑いあう。
まるでいつものように。
オレとエレーヌらしく。
「ふっふ〜♪本を見せたときからもう硬くなってたわよね〜ユウタのここ。」
「…何で知ってんだよ?」
「見てたからよ。」
見るなよそんなとこ…。
心の中で苦笑するような発言だった。
「ねぇ、ユウタも裸になってよ。あたしだけ裸じゃ恥ずかしいわ。」
「はいはい。」
ベッドに体を寝かせたまま器用にYシャツを脱ぎ捨て、ベルトも外してズボンを脱いだ。
ズボンを脱ごうと手をかけたがその手をエレーヌに掴まれる。
「ユウタの見せて〜♪」
「おい、ちょっと…。」
何でこんなに楽しそうに言ってくれるかな…。
見せるこっちはとんでもなく恥ずかしいのに。
あ、エレーヌも裸だからおあいこか。
彼女はオレのズボンを下着ごと一気に脱がし、後ろへ放った。
顔はこちらに向けたまま、ドア付近へ着陸するオレのズボン。
今まで股間を覆っていた布がなくなったことによりエレーヌの視線をモロに受けるオレのもの。
すなわち、男のシンボル。
「これが…ユウタの、オチンチン…!!」
…普通に言ったよ、コイツ。
もう少し恥らうもんだと思ってたけど。
エレーヌはオレのものを両手で包み込む。
伝わってくるのは感じたことのない温もり。
自分以外の誰かに触れられるなんて初めての経験なのでそれだけでも気持ちがいい。
「すごい…硬ぁい♪ビクビクしてて、とっても熱くて♪それで先なんかピンクで可愛いわ♪」
…複雑だな。
男のシンボルを可愛いなんて言われて。
しかも表情がなんかうっとりしてて。
「うふふ〜♪これを舐めたり胸で挟んだりするんでしょ?」
「そりゃ、定番だけどさ。」
「それじゃあ、まずはお口でご奉仕させていただきま〜す♪」
「待てぃ。」
オレはエレーヌの肩を掴んでその動きを止めた。
エレーヌは不服そうな表情でオレを見上げる。
「何よ?」
「オレからもしたいんだよ。」
そう言ってオレはそれをエレーヌの目の前で揺らす。
手に持ったピンク色の本。
ベッドの端に置いた彼女が持ってきたエロ本。
それを見てエレーヌは表情を変える。
にやりと言うか、にんまりというか。
とにかく、いやらしい笑みを浮かべる。
「検証♪」
「してみよーぜ。」
オレとエレーヌはやっぱり互いに笑いあった。

それは人間で言えば丁度股間辺り。
女性の局部にそれはあった。
普段マーメイド種は布やら水着やら鱗とかで隠しているらしいそれ。
物欲しそうにひくひく蠢き、とろとろの粘液が滴りながら妖艶に光っていた。
「いやん♪ユウタのエッチ♪」
「今更それ言うかよ?」
しかも嬉しそうに声を弾ませて。
オレとエレーヌは二人してベッドに横になっていた。
向かい合わせで寝転んでいるがエレーヌの目の前にはオレのそれが、オレの目の前にはエレーヌのそれがある状態で。
簡単に言うと、オレとエレーヌは互いの性器を舐めあう姿。
あのエロ本に載っていたシックスナインをしてた。
…何やってるんだろう、オレは。
初めてなのにいきなりレベルが高くないか?
初心者はやっぱり簡単なものから手順を踏んでいって…。
「っわ!?」
いきなり刺激。
股間に、オレのものに走る快楽。
感じたことのない甘い感覚に目線を向ければそこにはエレーヌが舌を出してオレのものを舐めていた。
ちろちろと赤い舌が先端を丹念に舐める。
「ん〜♪ふふ、まるで鋼鉄みたいに硬いのに先っぽはぷにぷにしてるわね、ユウタのオチンチン♪」
上機嫌な声とともに動く手。
喋れば手で扱き、口を使えば舌で撫でる。
その行為がとてつもない快楽を生む。
思わず声が漏れてしまうくらいに。
「んんっ…ぁっ…っ!」
「ふふふ、ユウタの声、可愛い♪」
その一言にピンときた。
男としての大切な何かが反応した。
「もっと聞きたい―ひゃんっ!?」
驚きの声を上げるエレーヌ。
それもそうだろう。
オレが今エレーヌのものに舌を這わせたのだから。
丹念に、表面を撫でるように舌を動かす。
時には唇で撫で、息を吹きかけたりして刺激する。
「あ、やんっ♪ユ、ユウタ待って、あっ♪あんっ♪」
エレーヌの甘く快楽に蕩けた声。
普段とは違うその声に情欲を掻き立てられる。
もっと聞きたい、もっとしたい。
オレは貪欲にエレーヌを求めた。
腕をエレーヌの腰にまわして逃がさないように。
唇を押し付け、舌で舐り、唾液を塗りこんでいく。
「あ、ああっ♪そん…な、激しっい♪んんん♪」
そうやって舐め回しているうちに舌先に少しばかり硬いものを感じた。
「…?…あぁ。」
なるほど納得。
実際経験のないオレだが性知識には豊富なのでそれが何なのかすぐに答えが出た。
その答えを認識する前に本能は体を動かしそこを執拗に攻めまくる。
「っ!?ユ、ユウタ!?そこはちょっと、あ♪んんんっ♪」
さっきよりも高くなった声。
一段と増した艶のある淫声がどれほどの快楽を得ているのかオレに教える。
その声を聞いて、さらに丹念に舐め上げる。
「あああっ♪まって、んん♪そんなにクリばかりぃ♪、」
エレーヌの口から漏れるのは甘い声ばかり。
オレのものを扱く手の動きも止めてその快楽を一方的に享受していた。
触れている舌から、抱きしめるようにまわした腕からエレーヌの体の震えが伝わる。
時折強くビクつき、小刻みに震える彼女。
もうそろそろ、近いのかな〜…?
とどめといわんばかりにオレはエレーヌのそれに、硬さを確かめるように強く舌を押し付けた。
「やあ、あああぁあぁああああああ♪」
今までで一番高く艶のかかった声が部屋に響く。
体も快楽の大きさを表すかのように悶えて痙攣しながらのけぞり、粘液を噴出した。
もしかしたら今の声クレメンスさんたちに聞こえたかもしれない。
しかし、そんなことはどうでもいい。
今はそんな余計なことを考えられるほどの理性はないのだから。
エレーヌを求める本能しかないのだから。
「はぁ…はぁ…ユ、ユウタ…ぁ…♪」
「どうだったよ?」
「ふぅ、はぁ…すごく、よかったわよ…♪」
「そっか。」
その言葉に嬉しくなる。
男として女に尽くしたいと思うから。
それが好きな相手には特にそう思うし。
しかし、それはどうやらエレーヌのほうも同様らしく。
少しばかり体を起こして見たオレの瞳に映るエレーヌの表情が見えた。
とてもいやらしく、そして嬉しそうな笑みが。
「今度はあたしの番ね♪」
そういってエレーヌはすぐにオレのものをくわえ込んだ。
「っ!?」
初めて感じるそれ。
女性の口の中で舌に弄られているその感覚。
温かく柔らかく気持ちが良い…。
その快楽から逃げようと腰が引けてしまうほどに。
だがエレーヌはそんなオレを逃がしてくれるわけがない。
彼女もオレと同じようにオレの腰に腕をまわして吸い付く。
「んふ〜♪ちゅ、ん♪じゅぶ♪」
「うっ、ぁ、ちょっエレーヌ…!」
エレーヌはオレにかまうことなく舌を動かしてオレのものを刺激し、快楽を送りつける。
やがて頭の動きも加わり唇で扱くように前後に動く。
「〜っ!!」
「んっん〜♪」
くぐもっているが嬉しそうな声を上げるエレーヌ。
っていうか本当にやばい。
初心者にこんな強烈な快楽はキツイだろ!
「エレーヌ、もう、やばいから…っ!口、離せ…っ!!」
しかしエレーヌはやめない。
むしろ腕に力を込めてオレの腰をさらに引き寄せる。
逃げられない、離れられない。
彼女によって昂ぶったオレのものはすでに限界を迎えようとよりいっそう硬く、大きくなっていた。
それをくわえ込むエレーヌが気がつかないわけがない。
エレーヌはとどめとでもいわんばかりに更なる快楽を叩きつけてくる。
唇をすぼめて搾り取るように、
強く吸い付いた。
「ぢゅるるーっ♪」
「っ!?あぁっ!!」
その快楽に、その行為にオレは果てた。
「ふむっ!?」
エレーヌの口の中に精を吐き出した。
今までで出したことのないくらい多い量を、今までにないほど長い時間で。
全てエレーヌの口の中へ出してしまう。
エレーヌはそれに対して驚きはしたが嫌がるそぶりは見せなかった。
むしろ吐き出されたオレの精を飲み込んでいく。
ごくりごくりと、細いのどを鳴らして。
オレの精をじっくりと味わうように。
そうやって長い間吸い付いてようやく口を離した。
「んん。ごちそうさま♪たくさん出たわね。」
「腰、砕けるかと思ったぞ…。」
「気持ちよかったってことでいいのかしら?」
「そう言ってるんだよ。」
「ふふ、ありがと♪」
体を起こしてそっと唇を重ねる。
軽くキスをして彼女の体から身を離した。
ベッドに腰掛け乱れた息を直しているとエレーヌはその体をベッドに沈める。
白いシーツの上で赤い鱗が部屋のライトの光で輝き、白く綺麗な肌に雫が浮かんでいた。
顔には笑み。
嬉しさによるのか、快楽によるのか、興奮によってかわからないが。
それでもオレを見つめるその表情はとても美しかった。
「ねぇ、ユウタぁ♪」
エレーヌはオレを見て、甘える声を出す。
両手をエレーヌ自身の女の部分に持っていって。
オレの唾液とエレーヌの愛液でいやらしく光るそれを細い指で開く。
くぱぁ、なんて音がしそうなほどにどろどろに蕩けたそこ。
さっきまでオレの舌が這っていたところ。
ぞくり、と背筋が震える。
本能が、情欲が強く燃え上がる。
「あたしのオマンコにユウタのオチンチン、挿れて欲しいのぉ♪」
「ぶっ!」
吹いた。
あまりにもエロい発言によって。
エロ漫画でありそうな台詞。
ただ、言われるとめちゃくちゃ興奮したけど。
「あれ?こういうの嫌いだっけ?」
「いや、好きだけどさ…。」
「エッチなあたしはお嫌い?」
「いや、大好きだけどさ…。」
「じゃあ、どうしたのよ?」
「あー…なんつーの…?」
少しだけ唸って、それでエレーヌを見て言う。
「そーゆーのは別に言わなくてもいいんじゃないのかよ?普通に、自分の言いたいことを言えば良いんじゃないの?」
「そうなの?」
「そうじゃないのか?」
「そう…なら。」
エレーヌは両手を広げた。
何かを受け止めるように、抱きしめようとするように。
オレを求めるように。
「来て、ユウタ…♪」
「…おう。」
オレはその求めに応じるようにエレーヌに身を寄せた。
覆いかぶさり、そして数回啄ばむようなキスをする。
「今更、止まらないからな?」
「あたしだってそのつもりよ♪」
「そっか。」
その言葉に互いに笑う。
笑って、またキスをして。
オレからもエレーヌを求めた。
オレのものの先端をエレーヌのものにあてがう。
先端に感じる柔らかな感触。
これだけでも気持ちがいい。
でも、これだけで止まるわけじゃない。
この先を、オレもエレーヌも求めている。
「いくぞ。」
「ええ…。」
狙いを定めて。
その位置を確認して。
オレは腰に力を入れて思い切り突き出した。
「んんっ!?」
「あ、ああぁあぁぁあああ♪」
感じたことのない感覚だった。
胸よりもずっとやわらかく。
口の中よりもずっと熱く。
どろどろだけどとてもきつくて。
ぐちゃぐちゃだけどしっかりと。
エレーヌの中はオレに吸い付き、抱きしめ、舐めあげていた。
「くっ、ぅ…っ!!」
「はぁあ、入ってる♪ユウタの、オチンチンが入ってるぅ♪」
溶ける、そう認識してしまうほど気持ちが良い。
動かしていないのに、果ててしまいそうだ。
とてつもないほどの快楽はオレの体を駆け巡り、情欲の炎をさらに燃やす。
もっと求めたいと、もっと欲しいと体が動き出しそうになる。
「ユウタぁ♪」
蕩けた声。
だらしなく開いたその口。
興奮によって染まった赤い頬。
潤んだ瞳はオレを映し、オレを求める視線を送る。
普段見られない快楽に蕩けた顔。
「エレーヌ、すごい顔してるぞ…かなり、エロい…。」
「興奮、する…?」
「すごく、する。」
「そう…よかった♪」
そう言ってエレーヌは微笑んだ。
その表情がとても可愛らしい。
思わず胸が締め付けられるように感じるほどに。
エレーヌを抱きしめたいと感じるくらいに。
エレーヌを独り占めしたいと、そう思えた。
「…動くぞ。」
オレはゆっくりと腰を動かし始める。
「んんっ♪あぁ、ふぁ♪」
エレーヌの喘ぎ声。
オレの荒い息。
粘膜同士が触れ合い、擦りあうたびに生まれる淫靡な水音。
それとともに感じる快感。
抜けば彼女の中は強く締め上げオレを離さず、逆に突けば柔らかく抵抗なく受け入れる。
腰を止めれば中へ誘うかのように蠢き、搾り出すかのようにうねりだす。
「あ、ああっ♪ユウタぁ♪」
「エレーヌ…っ!!」
徐々に動きが激しくなる。
体は更なる快楽を求め、本能は更なる快感を求め心は―

―エレーヌという一人のメロウを求めた。

激しく、強く、そして深く。
彼女の中へと突きこんだ。
先端にあたるコリコリとしたものを執拗に攻めればその分だけエレーヌの体は震え、跳ねた。
「あぁあっ♪そんなにぃっ♪激しくしちゃ、だめぇ♪」
駄目といわれれば普段のオレなら止めただろう。
だが、今は違う。
駄目なんて言葉も嫌なんて発言も情欲をより強く燃やすものにしかならない。
止められないし、止まる気もない。
腰を動かしているとエレーヌの腰もそれに合わせて動いてきた。
「ユウタぁあ♪もっと、してぇ♪気持ちよく、してぇ♪」
「っ!」
まったく、嬉しくなるようなことを言ってくれるじゃないか。
そんなこと言われたら、こっちだってたまったもんじゃない。
オレだって男。
止まれなくなるじゃないかよ!
オレはエレーヌの腰に強く腰を打ちつけた。
「ああっ♪あんっ♪い、いいよぉ♪ユウタの、オチンチン、すごくいいっ♪」
「エレーヌのもっ!すごく、いいぞ…!」
「ふ、ぁあっ♪ユウタ、ユウタぁ♪」
エレーヌはオレの後頭部へと腕をまわし、掻き抱くようにオレの頭を抱きしめた。
そのまま優しさなんてない本能に任せた強引なキスをする。
激しく、オレの唇にエレーヌの唇が何度も重なる。
「んん♪んーんん♪ちゅっ、ちゅる、ん♪」
「ん、ふっん!」
舌を絡めて、唾液を塗りこんで。
理性のない、欲望に身を任せて。
暴力的で積極的で。
互いを限りなく求めて貪りあうキスがどうしようもないくらいに気持ちがいい。
キスが初めてだから…いや、きっと相手がエレーヌだから。
オレはエレーヌがスキだから。
「ん、ぷはぁっ、はぁ、エレーヌ。」
オレはエレーヌの唇から唇を離してその言葉を言う。
荒々しいけどそれでもできる限り優しさをこめて。

「スキだっ。」

「っ!!あんっ♪」
エレーヌの体がより強く跳ねた。
それと同時に中も強く締まる。
それでもオレは止まらない。
さっきエレーヌがオレを好きだと言ってくれたように、オレからもエレーヌの好きなところを言っていく。
「その優しい性格が好き。」
びくりとエレーヌの体が跳ねる。
「この綺麗な肌も好き。」
そっと手で彼女の頬を撫でる。
「ピンク色のくせ毛だって、その宝石みたいな瞳だって。」
黄緑色の瞳が黒い瞳を映す。
「お前の、エレーヌの全部がす―んむっ!!」
言えなかった。
エレーヌがオレの口を唇で無理やり押さえつけたから。
そのまま激しい口付けを交わす。
「ん、ちゅ♪…一方的、過ぎるわよ…ユウタ♪」
「尽くしたいんだよ、好きだから。」
「そんなの、あたしだって同じよ♪ん。」
エレーヌはオレの頬に、鼻に、額に口付けた。
頬を赤く染めて、少し恥じらいを感じさせるように。
そして、言った。

「ダイスキ…♪」

その言葉を聞いた途端に胸が締め付けられるように感じた。
嫌な苦しさじゃない、温かい苦しさを。
感じたことのなかった明確な好意を。
「好きだ。」
「好きよ♪」
互いに向かってそういって行為を再開する。
といっても長くエレーヌの中にいたからだろう、オレのものはすでに限界が近づいていた。
腰が熱くなり、欲望がよりいっそう燃え上がる。
呼吸もさらに荒くなり、オレのものもびくりと震えた。
「エレーヌ、オレもうっ、出る…っ!」
その言葉にエレーヌはオレの腰を抱きしめた。
離れないように強く、密着するようにしっかりと。
「っ!?おい、エレーヌ!?」
「出そう、なんでしょ?いいわよ、ん♪出してぇ♪」
そのまま唇に吸い付き、オレに微笑みかける。
唇を離してエレーヌは言った。
「ユウタのせーえき♪あたしの、中にぃ全部出してぇ♪」
「っ!」
「あたしの、しきゅーに、ユウタのっ全部♪ちょうだぁい♪」
「ああもうっ!!」
そんなことを言われたら応えたくなるだろーが!
オレは腰をできる限り引いて、そして今までで一番強くエレーヌの腰に打ち付けた。
手はエレーヌの腰を掴んで離さないように。
エレーヌもオレを離すまいと腕に力をこめて。
そして、エレーヌの中にオレのすべてを注ぎ込んだ。
「ひゃっ!!あぁあぁああああぁぁああああ♪」
「ふっ…うぁ…っ!」
どくんどくんとオレのものがエレーヌの中へ流れ込んでいるその感覚に頭の中が真っ白に染まった。
びくびくと痙攣するエレーヌの体。
今まで以上にきつく締まり、オレのものからさらに精を搾り出そうと律動をやめないエレーヌの中。
それに応えるかのようにオレのものから一度出したときよりもずっと多い量をエレーヌの中へと注ぎ、染めあげ、吐き出した。
とてつもない気持ち良さをこの身に感じて。
「はぁ…ぁ♪すごい、量…まだ…びゅくびゅくってぇ♪出てりゅ…。」
あまりの快楽に呂律が回っていないエレーヌ。
いまだに小さく痙攣しているのが伝わってきた。
トロンとした瞳はオレを映しだして微笑を浮かべるその表情。
それがなんとも可愛らしく、愛おしい。
オレはいまだに快楽に震える体をエレーヌの横へと倒し、ベッドへと身を沈めた。
どちらとも何も言わず聞こえるのは男と女の荒い息遣い。
体を動かしてエレーヌと向き合えば彼女もオレを見つめている。
「意外と…疲れるな…。」
「ふふっ。そうね…。」
「でも、すごくよかった。」
「あたしもよ…ユウタ♪」
自然と指を絡めて手を繋ぎ。
寄せた体をさらに寄せて。
胸に広がるのはなんとも形容しがたい気持ち。
今まで感じたことなんてなかった感情。
ただ、ひとつハッキリしていることはあった。
おそらくそれはエレーヌのほうも同じだと思う。
だからオレは、エレーヌはそれを言葉にして囁いた。

「「ダイスキ…。」」

そう言ってまた唇を重ねる。
激しいものではなくそっとした優しいキス。
唇を離して気恥ずかしくなって、くすりと笑う。
「こんなに気持ちがいいなんて驚きね。」
「痛くはなかったのかよ?」
あまりのも暴走しすぎて気遣えなかったこと。
エレーヌもオレも互いがこんな経験をしたことがないと知っていた。
だからこそ気にかけようとしてたんだけど…。
「全然よ。むしろ気持ち良すぎるくらいなんだから。」
笑ってくれる表情を見る限り本当に痛くはなかったようだ。
よかった。
「ねぇ、ユウタ♪」
そういってエレーヌはオレの体の上へと乗りあがる。
顔にはやらしい笑みを浮かべて。
興奮によって息を荒くして。
…ちょっと怖い。
「何だよ?」
「ユウタのオチンチン、まだ硬いままね。」
「そりゃ…性欲盛んなお年頃だからな。」
「それじゃあ…まだできるわよね?」
そんなこと言わなくてもわかるだろうに。
今までこんな経験ない奴が一度や二度で満足しないって話したはずだぞ?
オレはエレーヌの体を抱きしめた。
逃がさないように、離さないように。
そして言った。
「男の性欲、舐めんなよ?」
それに対してエレーヌは笑って嬉しそうに言った。
「メロウの情欲、思い知らせてア・ゲ・ル♪」
それで何度も口付けて、何度も互いを求め合う。
オレもエレーヌも熱く激しく貪り始めた。

オレ達の夜はまだまだ終わらない…。



数日後
暖かな日差し、海から吹く潮風が気持ちのいいそんなある日。
相変わらずに客のいない店内でオレはバーカウンターの椅子に腰掛けていた。
珍しいことに手には文字の書かれた本を持って。
「えーっと…これはなんて読むの?」
「『そして男は女のオマ―』」
「ああ、いい!わかった!そこまで言ってくれればいい!」
「『ンコに指を突きこんでそのまま上下に―」
「続けんなよ!」
隣にはエレーヌが座っていた。
今エレーヌが読んだようにオレが今読んでいるのはエロい物語の書かれた本。
本というのは少し誤認があるかもしれない。
これはエレーヌが書いてきたものなのだから。
エレーヌ曰く、「あえて本にして皆に広めるのはどう?」と先日言っていたあのことを本気で考えていたらしい。
その始発段階というか、試作品というか。
とにかくエレーヌは自分で書いた物語をオレに読ませていた。
「ユウタって字が読めないのね。意外。」
「仕方ないさ。今まで別の地域に住んでたんだから。」
これでも日々勉強したりして文字を読めるようにはしている。
時折エレーヌが手伝ってくれることもあったりするのだが…
「これは?」
「『そうして女は自ら男を求めて腰を振り出し、しまいには「ああ!もっとしてぇ♪私のオマンコをめちゃくちゃにしてぇ♪」という淫らな言葉を…』」
「…。」
テキストがテキストだからな。
こんなエロい話を元に勉強できるかよ…。
しかも、やたらエロい表現があるし、生生しいし、リアル過ぎる。
つか、エレーヌって文才あるんだな。
オレのいた世界でも十分小説家としていけるんじゃないか?
…官能小説家としてだろうけど。
あらかた読んでその本を閉じた。
「どう?どう?中々なできだと思うんだけど!?」
閉じたとたんにエレーヌはオレに体を寄せて聞いてくる。
やっぱり近い。かなり近い。
5,6センチで唇が重なりそうなくらいだ。
「いいと思うぞ。内容的にも面白いし。」
「本当!?」
「ああ。このあと離れることになるっていうのもいい展開だと思う。」
「よかったぁ〜。」
エレーヌの奴、相当がんばって考えたみたいだな。
顔にはとても嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「お疲れ様。なにか奢ろうか?」
「いいの?」
「ああ、勉強付き合ってもらってるお礼もしたいし。」
オレはいつものようにバーカウンター越しに立つ。
「それじゃあ…ミルクセーキお願いね。」
「はいよ。」
「ユ・ウ・タのミルクセーキも…お願いしちゃおうかしら♪」
「……夜にな。」
「えっ?いいのっ!?」
オレとエレーヌは恋人関係…になれたのかはわからない。
ただ、以前よりもずっと近い存在になったのは確かだと思う。
親友以上、恋人…未満とでもいうところだろうか…?
とにかくオレもエレーヌもあの夜から付き合い方は変わっていない。
昼は…だけど。
あの夜からたびたび、というかほとんど毎日互いを求め合っている。
若いね、オレ達。
お盛んだね、オレとエレーヌ…。
「あ、でももう少ししたらユウタにあたしからミルクあげられるわよ?」
「…は?」
その言葉を聞いてオレはミルクセーキを入れる手を止めた。
うん?今コイツ何を言った?
私から…?は?
「それはどーゆーことだよ?」
「どうもこうも〜♪」
エレーヌは嬉しそうに微笑み自分のお腹を擦った。
とても愛おしそうに。
まるでお腹に子供がいるかのように。
…子供?
「できちゃった♪」
「…何が?」
「子供♪」
ああ、やっぱり子供ができたのか。
うん…え?子供っ!?
「誰のっ!?」
「そんなの決まってるでしょ♪」
そう言うエレーヌはバーカウンターに身を乗り出してオレを掴み寄せた。
途端、埋まるオレとエレーヌの距離。
いつものように近づく顔と顔。
頬を撫でる彼女の吐息。

「あ・た・しと、ユ・ウ・タの♪」

「…マジで?」
まぁ、そんな気もしてたんだけどさ。
今までだってエレーヌに求められてそれに応えるように全部中で出したわけだしさ。
覚悟も決めてたんだしさ、一応。
固まるオレをよそにエレーヌは可愛らしくウインクをした。
「そういうわけで、これから大変よ、ダーリン♪」
「はは…。」
どうやらオレとエレーヌの関係はとっくに友達なんかじゃなくなっていたらしい。
親友でも、恋人なんかでもないようだった。
笑えない…笑えないけど…。
「そんじゃ、よろしく頼むぜ、ハニー。」
それでも心から望んでいたことなんだから。
好きになった相手と添い遂げられるなんて最高だ。
エレーヌに掴み寄せられるままでオレはそう言った。
「ふふっ♪」
「はは。」
オレとエレーヌはやはり互いに笑いあって。
客のいないこの店内でそっとキスをした。




数年後ある一人のメロウが書いた本が出る。
『桃色恋愛物語―コイバナ―』
さまざまな恋愛話の載った一冊。
恋をしたことのない人、恋をしている魔物娘、また愛し合っているカップル必見のこの本。
著者がメロウなためかもちろん年齢制限はついている。
だが。その分を差引いたとしても内容は多くのものが共感、感動できるものだったという。
その内容の大半が赤い帽子を被って彼女と仲良くしている夫との若いころの猥談からきているということは、
あまり知られていない…。




「いやっ!やめて!こんなの、ひどいっ!」
「…。」
「あら?こういうプレイは嫌い?」
「…そりゃな。無理やり系はちょっと勘弁。」
「ん〜…やっぱりアイデアに詰まるといいものが出てこないわね。」
「だからってそのシチュエーションやらプレイを要求されんのも…。執筆作業一旦止めろよ。」
「でも好きでしょ?」
「…まぁな。」
「ふふ♪じゃあこんなのはどう?」
「こんなの?」
「『ふっふっふ〜♪今日はなんでもしてあげるよ〜♪貴方の望むものなら何だってしちゃうんだからね〜♪』」
「………。」
「…どうしたのよ?固まっちゃったりして…。」
「いや、今のどことなく…師匠に似てたから…。」
「師匠?」
「あ、いや。こっちの話。それよりもさ、やっぱ普通どおりでいいんじゃね?」
「普通?」
「そ。飾らないままでってことで今夜も…♪」
「あぁんっ♪積極的ぃ…♪」
「こういうのは嫌いかよ?」
「まさか。とってもスキよ♪」
「そりゃよかった。ん。」
「んんっ♪」





         コイバナ   最終章 

           これにて完結
   
        HAPPY   END
11/04/10 20:37更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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■作者メッセージ
というわけでメロウ編これにて完結!
別世界から来たということで自分の気持ちを抑えこんでいた主人公とそんな主人公に想いを寄せた猥談好きだけど乙女なメロウ…
そんな二人の話でした
いやぁ、この二人楽しい
自分で書いていて終わってしまうのがもったいなく感じるほどです!


次回、シー・ビショップ編!
海神に仕える神官と主人公はどんな出会いをしてくれるか…!
それでは次回もよろしくお願いします!

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