女王とあなたとオレと王 後編
「ゆうた、これ持ってよ。」
「ゆうた、これ作ってよ。」
「ゆうた、マッサージして。」
「だああああああああ!!何だよ何なんだよ!!何様のつもりなんだよ!」
オレは双子の姉に向かって叫んでいた。
「何さ何だよ!お前は何様!?王様かおい!!」
「…何さ急に喚きだして。」
それに対する双子の姉の対応。
思いっきり冷ややかというか…動じないというか…。
とにかく自由でオレよりも偉いという態度をとっていた。
「毎回オレに命令すんのやめろよ!オレはお前の従者か!?しもべか!?」
「…何を言い出すかと思えば…そんなことわかってんでしょ。」
そう言って凛としていった言葉はオレの記憶の中に残っている。
たぶん、一生オレの記憶に刻まれ続ける。
「下僕。」
その言葉を聞いてオレは思った。
コイツはとんでもない暴君だと…。
オレにしか振るわないその命令。
オレにしか下さないその規制。
徹底しているその行動が。
全てが暴君。
コイツダメだ…。
コイツが実際に王なんかになったらとんでもない暴政するぞ。
きっと国終わるぞ…。
オレが王になるならこんなダメな暴君にはなりたくはないな…。
そんなことを思いながらもオレは双子の姉の腕を取り、マッサージをしていた、とある日常の一コマ。
今日も早く帰って飯の用意しなきゃ…。
今日親は帰ってきたっけな?
帰ってこなかったっけ?あれ?姉ちゃんは大学行ったままだっけか?
それよか今日は…確か卵の特売日だから早く帰ってスーパー行って…。
いつものように今日することを考えながら目を覚ます。
そして気づく。
…あ、ここ家じゃないんだった。
背に感じるは玉座の感触。
水を玉座の形にして座っているかのような感覚。
そうか…オレは別世界に来たんだっけ。
…あいつ、大丈夫かな…?
そんな心配が違和感によってかき消される。
違和感。
体の自由が利かないと気づいた。
「…ん?」
腕を動かそうとしても腕が持ち上がらない。
足を動かそうとしても足が動かない。
玉座から立ち上がろうと腰を上げても上がらない。
まるで玉座に手足が絡めとられているかのように。
腰が粘着テープでくっついているかのように。
動くことができない。
見れば腕が、足が、埋まっていた。
青い玉座に埋まっていた。
よく見てはいなかったがこの玉座もスライムのようにゼリー質でできている。
だからこそこの上質な座り心地をだせているんだ。
だけど…そのゼリーの中になんでオレの手足が埋まってる?
寝ている間に沈んだように、オレの自由を奪うように埋められている。
…何で?
「起きられましたか?」
その声はオレの正面から聞こえた。
オレの目の前。
玉座に座るオレの正面に立っているヴェロニカ女王様。
あれ?ポーラさんが部屋まで運んでくれたんじゃなかったっけ?
あれ?なんでオレは玉座に座ったままなんだっけ?
確か…急に眠くなって…。
「えっと…ヴェロニカ女王様…体が玉座から離れないんですけども。」
そう言うと彼女は微笑みながらオレの隣へ座った。
さっきのように悠然と、それでいて優雅に腰掛けた。
そのままオレの肩に手を置く。
人間とは違うひんやりとした体温が学生服越しにも感じられた。
それは服越しだというのに熱くなっているオレの体温を奪っていく。
異常なほど心地よく。異質なほど気持ちよく。
「?ヴェロニカ…女王様?」
「ユウタ様…知っておられますか?」
彼女はオレの顔のすぐ隣い顔を持っていき、呟くように言う。
ねだるかのように。
甘えるかのように。
「洞窟内で…ポーラと話しましたでしょう?私達には…王となるべき者がいないと…。」
「っ。」
話した。
とても真剣な声で。
真面目にオレを王へ勧誘してきたあの話。
「先導者なき国に未来はない。王なき王国に栄光はない。王のいない私達の先などすでに見えているようなものです。ですから…。」
ヴェロニカ女王様はオレの耳に息を吹きかけるように近づき、甘えるように言葉を発した。
「私達の王となんて下さいまし。」
「っ!」
ぞくりと背筋が震える。
耳元で呟かれた言葉が体へ染み渡っていくかのように感じられた。
まずいと、オレの中の何かが告げる。
このままいけばオレはこのヴェロニカ女王様の望むままに王へされる…。
それはまずい。
こんなオレのような一般人が王になっても国の行く先が必ず繁栄とは限らない。
むしろ衰退するほうが大きいと思う。
無論、オレの人生においてもだ。
だからこそここで断らないといけない。
女王様のためにも、オレのためにも。
この女王様が統べる王国のためにも。
「オレは…王となるべき器じゃない。」
「それはあなたが判断するものではありません。外の者が判断していくこと。王とは優しく、国の行く末を考えられるようなお方がふさわしいのです。」
顔をオレの前へ移動させてきた。
青い綺麗なスライムの顔が目と鼻の先にある。
目を見れば吸い込まれそうで、口を見れば魅入られそうで。
異質な美しさがオレの中の理性を崩しにかかる。
「ユウタ様のようなお優しいお方がふさわしいのです。」
「…オレは優しくなんか―」
「ポーラと出会ったとき。」
彼女はオレの頬に両手を添えた。
ひんやりとした冷たすぎない温度が心地いい。
まるでゼリーに包まれるかのような感覚。
「ユウタ様はポーラの荷物を持ってくださいましたね。」
「っ!」
ヴェロニカ女王様はにこりと笑う。
慈愛に満ち溢れた表情をオレに向ける。
「初対面にもかかわらずポーラに優しく接してくれた。初めて出会う者にそんなふうに接することができる殿方はそうそういませんよ。」
「い、いや…。」
褒められているのだが素直に喜べない。
認めてはいけない。絶対に。
できる限りの否定を述べないと。肯定したら…。
「でもたかだか荷物持っただけですし…。」
「そのたかだかができる者がこの世界には少ないのですよ。」
そのままヴェロニカ女王様はオレにしなだれかかってきた。
柔らかいゼリー質の感触がさっきよりも多く、強く感じられる。
スライムのはずなのにどことなく女性特有の甘い香りがした。
やばい。
本当にやばい。
体は勿論、意志のほうも逃げられそうにない。
このまま玉座に貼り付けられるだろう体。
埋め込まれたままの手足。
玉座の一部となって一体化していきそうな学生服。
逃げられない。
それでもオレは精一杯の逃亡を図る。
「オレまだ18歳ですよ。」
「もう十分王へなれる歳ではありませんか。」
歳はダメか…。
「オレ、政治方面とかよくわからないんですけど。」
「ご心配なさらずに。私達がサポートしますよ。」
サポートしてくれるんですか…。
「王ってなにやればいいんですかね?」
「あなたの自由気ままに、思うままにしていただいて結構です。」
…わかった。
もうだめだぁ!
拒否のしようがないぞこれ!
逃げ場なさすぎだぞ!
さすが一国の女王様というべきかヴェロニカ女王様は口達者だし!
逃げても逃げ場をつぶされるし!袋小路じゃねぇか!
「そんなにオレを王にしたいんですか…?」
「ええ。とても。あなたほど王にふさわしい方はそういませんからね。」
だからオレはそんな王にふさわしくないっていうのに…。
オレは空を仰ぐように顔を上へ向けた。
その先には王室にふさわしい豪勢なデザインが描かれた天井。
その豪勢さを毎日眺めることになってしまうのだろうか…。
「そんなに言うのならオレを脅すなりして王にすりゃいいじゃないですか!」
「いいえ、それはいけません。」
ヴェロニカ女王様は言った。
さっきの甘えるような声じゃない、はっきりとした女王の威厳ある声で。
「王となる者を自ら王と名乗らせないでは、それは王とは呼べません。王となる自覚をもっていない者などそこらにいる者達と同じ。」
へぇ…しっかりしている。
さすが女王。一国を統べるからかそこはきちんとしてるな。
それで、そのしっかりさでもう一度オレをよく見てほしい。
オレはそんなできた人間じゃないから。
「自ら名乗らせてこそ王は成るのです。ですから―」
胸元で何かが動かされる感覚。
見ればヴェロニカ女王様はいつの間にかオレの学生服のボタンを外し終えていた。
それどころかYシャツのボタンも同じように。
上半身が露にされる。
その露にされた肌に青い手を添えた。
「―私達の王だと、名乗ってくださいまし。」
そのままオレの胸板を撫で回す。
湿って冷たいぷにぷにした手が這いずり回る。
それは不快感など微塵も感じさせない。
少しばかりの心地よさを感じさせた。
冷たい手が、火照った体を冷やしてくれる。
だが、それと同時に変な感覚を残す。
触れられたところが熱く疼くような。
もっと触って欲しいと願いたくなるような。
「…っ!」
気づいた。
体がいつもと違う様子に。
体温が異常なほど上がっていることに。
熱い…それも、風邪を引いたときのように体が火照っている。
体の内側からはよくわからないものが静かに、確実に大きく燃え上がる。
何でっ?風邪でも引いたのか?
あまりの熱さにヴェロニカ女王様の体温がとても気持ちよく感じられるくらいだ。
気持ち…よく…?
「っ!オレの体に何かしましたね!」
嫌な予感。
明らかに異常な体。いつもよりずっと高いだろう体温。
体の中から大きく燃え上がってくるもの。
それはオレの理性を崩そうとする情欲の炎。
「ようやく…効いてきましたか…。」
ヴェロニカ女王様は笑った。
あの優しそうな微笑じゃない。
妖艶そうな微笑でオレを見た。
「効く…?何をっ…!?」
「この果物。」
いつの間にか持っていたあの赤い果物。
ヴェロニカ女王様がオレに食べさせてくれたあの果物だ。
見せ付けるようにオレの前へ持ってくる。
「この地方にしかない上質なものです。この地方周辺にしかいない『アルラウネの花園』で取れる特別なものなのですよ。媚薬効果ばっちりの…ね♪」
「っ!!」
媚薬効果!?
この女!嵌めやがったな!
それもオレがこの王室へ、この玉座に腰掛けた時から計画的に!
「ぐっ…うぅっ…!」
徐々に大きくなってくる情欲の炎。
理性を焦がし、目の前の人ではない女性の体を強く求めさせる。
その冷たい体温をもっと感じたいと思わせる。
この女…よりによって色仕掛けで仕掛けてきたのか…!
最悪だ!
痛いのは師匠との空手の稽古で慣れてるにしても、これは。
痛みなき誘いのこれには。
甘い快楽の拷問には。
快楽に対しての耐性は…オレにはない!
動けない体。
貼り付けられた手足。
今のオレの体はヴェロニカ女王の思うまま、手の平の上だ!
「い、いいんですかね、そんなことして。」
オレはできる限り冷静さを保って言う。
この程度のことどうってことないと虚勢を張る。
「一国の女王様が色仕掛けなんかで王様作って…。そんなことで王になったオレはきっとダメ王になるでしょうねぇ…!」
「それはありえませんよ。」
ヴェロニカ女王様は言った。
そんな根拠もないようなことを。
平然と言い切りやがった。
「貴方はお優しい。その優しさはときに責任にもなる。貴方のような方が…いえ、貴方が王になられればきっと私達を見捨てないでくれる。」
「…そんな根拠もないことをよくも言えますね。」
「ならその根拠を今確かめればよろしいのでしょう?」
にっこりと笑うその表情。
浮かべたその表情には慈しみは欠片もない。
あるのは策略、裏の顔。
時に王国を救うための策を練り、時に敵を討つための策を練る顔。
それと同時にあらわれる、黒い陰謀。
やばい、とんでもなくやばい。
背中から嫌な汗が流れた。
こんなことならまだ師匠の『治療』を手伝っていたほうがましだ。
アレはアレで大怪我しかねないけど…こんな状況と比べればあんな怪我気にも留めないのに…!
「僭越ながらお手伝いさせていただきます。」
そう言ったのはポーラさん。
いつの間にかオレの隣にいて、オレの胸を撫で回し始めた。
ヴェロニカ女王様と同じ冷たい体温。
異常なほどに心地よく感じられる。
「それでは私はこちらを…。」
両手がオレの頬に添えられた。
玉座に埋め込まれているので動けない体がさらに逃げられないように拘束された。
そして近づく青い肌。美しい顔。
ぷっくりとした艶のある唇。
「んん♪」
「んっ!?」
ヴェロニカ女王様はオレにキスをしてきた。
ゼリー質の柔らかな唇が恐ろしいほどに気持ちいい。
「んっんぅ♪」
そのまま強引にオレの唇をこじ開けて侵入してくるヴェロニカ女王様の舌。
暴れるようなことはせずにゆっくりとオレの舌に絡めてくる。
全身くまなくスライムであるためかそれは人の舌よりもずっとぬるぬるで柔らかだった。
…他人の舌の感触なんて知らないが。
流し込まれる唾液。
逆に吸われていく涎。
その行為に判断は鈍っていく。
意識が、蕩けていく…。
味はしないはずなのにとても甘い味がした。
「ちゅるっ…ふふ、いい顔になりましたね。ユウタ様。」
長い口付けを終えてヴェロニカ女王様は笑った。
とても愛おしそうに。
しかしその笑みの裏にどす黒い欲望があることが見て取れた。
それでも綺麗に映るその顔は人外特有の妖艶さによるものか…。
「王になって下さいまし。そうすれば…もっとしてあげますから…。」
甘い囁き。
だがそれは悪魔の呟きと同じだった。
一瞬の判断が人生を棒に振る。
ここで首を縦に振りたいという自分がいるのにその自分を押さえつける理性がまだオレには残っていた。
「ふふふ、強情なお方…。すぐに陥落しないところがまた王にふさわしい…。」
ヴェロニカ女王様はそのまま顔を下へ移動させる。
途中途中、胸板や腹に冷たいキスを落としながら。
そして、たどり着いた。
「これは…どうですか?」
ポーラがズボンのベルトを外し、パンツまで下げられた。
玉座に埋まっているのは大体腰半分。
それなので全部脱げるわけではないがオレの大事な部分は全てがさらけ出せるくらいではあった。
「っ!」
「まぁ…これが…ユウタ様の…♪」
ヴェロニカ女王様は嬉しそうに声を弾ませる。
隣にいるポーラさんもどことなく嬉しそうな表情を見せた。
二人の目の前に晒されたオレのもの。
それはあの媚薬効果入りの果物のせいなのかいつもよりずっと大きくなっていた。
どくんどくんと強く脈打つ。
ただそれだけでも二人は嬉しそうな顔を見せる。
「とても…逞しい…!」
「ふふふ…ここまで王に相応しいとは思いませんでしたよ…♪」
二人はそう言って同時に唇でオレのものに触れた。
キスするように優しく。
「っ!!」
途端に体中を突き抜けるとてつもない快楽。
初めてのオレにとってその行為から生み出される快楽は予想できるものではない上に、
二人同時ということでその快楽は尋常じゃないものへとなっていた。
「くっぁ!」
歯を食いしばって何とか堪える。
自分の気持ちが揺れないように。自分の意志が傾かないように。
その様子を見てか二人はさらに口付ける。
二人分の唇がオレのものを弄ぶ。
ヴェロニカ女王様が先っぽにキスすればポーラさんが竿の部分に口付けて、
ポーラさんが先端へ唇を付ければヴェロニカ女王様が啄ばむように口を付けた。
さらにその動きに舌が加わった。
「んぅっ!」
撫でるかのような動きで舐めたと思ったら、先端を集中的に舐め尽くす。
円を描くような動きをすれば唾液を塗りつけるように動き出す。
異様な快楽。異質な心地よさ。
二つの舌に、二人の女性によってオレの中の本能は強く呼応してくる。
もっとしたいと。
もっと欲しいと…!
「んっ…ここまでしてもまだ首を縦に振りませんか?」
ヴェロニカ女王様が顔を上げて尋ねてきた。
上目遣いで。甘えるように。
くそっ!その行為さえオレを堕とさせようとする魂胆が見えるぞ…!
オレは鼻で笑う。
こんなのには屈しないと、そんな意志をこめて。
「全然ですよ…っ!」
全然大丈夫ではなかった。
今にも陥落しそうな意志。
手が使えればスライムとはいえ女性二人楽に押しのけられるのに…!
そう思っているはずなのに…この先を望む自分がいた。
あの媚薬効果入りの赤い果物のせいか、オレが女性経験がないということよりか、更なる快楽を望んでいるオレがいた。
「そうですか…ポーラ。」
「御意。」
声をかけられた途端に動きを止めるポーラさん。
何かと思い視線を移そうとしたが邪魔をされる。
感じたことのない快楽に。
「んん…じゅるっ…♪」
「ぐっぁ!」
ポーラさんはオレのものを口に含んでいた。
とろとろに蕩けた口の中は青い肌同様にひんやりとしていたがそれが逆に感覚を鋭くさせる。
より強い快感を送りつけてくる。
扱くように上下する頭。
叩き込まれる未知の感覚。
その行為に、その快楽にオレは限界を迎え―
「ポーラ。」
「はっ。」
動きが止まった。
途端に送られてくる快楽も止まる。
弾けそうになっていた欲望までもが途中で止められた。
「な…何で…っ。」
「出したいですか?」
「っ!」
ああ、そうだったな…これが狙いだったな!
押しとめられたこの快感の先が欲しいなら王になれと。
留められた欲望を解き放ちたいなら王になれと…!
ヴェロニカ女王様の目が言っていた。
徐々に下がっていく止められた限界。
それとは反対にせりあがってくる欲望。
体の中に広がるのはどうしようもないもどかしさ。
今のオレにはどうすることもできない悔しさにも似た感覚。
それと…理性というメッキを剥がされかけた本能。
「どうされたいですか…?」
ヴェロニカ女王様は膝立ちでオレに跨るように動く。
見れば彼女は女性にとって一番敏感なところから液体を垂れ流していた。
涎をたらすようにだらだらと粘液を滴らせてオレに見せ付ける。
見たことのない光景。
毛なんてものは生えていない一筋の線が走るそれ。
そこから疼くような冷たい粘液がオレのものへと伝う。
伝って異常な温度を感じさせる。
「したいですか?」
甘えたくなるような声。
身を委ねたくなるような言葉。
興奮しているのか荒く吐かれる甘い息。
目の前で女王様が女王様らしからぬ姿でオレのものの真上に割れ目を擦り付ける。
感じたことのない感覚。
「何でもしてあげますよ。」
その言葉に欲望の炎がいっそう強く燃え上がった。
焦点さえあっていない、体が浮いているような感覚。
その体に目の前の女を犯せという本能が支配していく。
もう抗う理性は残っていない。
本能を抑圧する邪魔なものは何一つ残っていない…。
「…る。」
オレは小さく呟いた。
「え?何ですか?」
ヴェロニカ女王様は嬉しそうな微笑を浮かべた。
勝利を確信したかのようなその表情。
―だが、その勝利はすぐさま取り下げになることだろう。
「…ってやる。」
もう一度、呟いた。
「何ですか?もう一度仰ってくださいまし。」
「やってやるよ…。」
オレは言った。
オレの中の決意を崩す言葉を。
オレの中の意志を傾けさせる言葉を。
合っていなかった焦点を合わせて、ヴェロニカ女王様の顔を見て。
強い決意の篭った言葉を。
はっきりと言った。
「オレが…王になってやる…っ!」
「ふふふ、ありがとうございます。」
ヴェロニカ女王様は…いや、ヴェロニカは嬉しそうに微笑んだ。
そしてそのまま上体をオレのほうへ倒し、唇を重ねる。
誓いのキスのように。
そっと、優しく重ねた。
「ちゅ…ん…♪」
そのキスと同時に手足の拘束が解ける。
やはりというかこの玉座はヴェロニカの意思で操れるものらしい。
ということはこれは彼女自身か体の一部か。
解き放たれた今のオレにとってはどうでもいいことだ。
埋め込まれていた手が、足がようやく解き放たれたんだ。
ようやく体に戻ってきた自由の感覚。
しかしオレは動かない。
「ユウタ…様?」
不思議そうな顔でオレを見つめてくるヴェロニカ。
本当なら自由になった途端に目の前の女を押し倒してそのまま行為に及ぶはずだった。
だが、今のオレは普段のオレとは違った。
今まで散々昂ぶらせられるだけ昂ぶらされて、誘惑され、王となれと囁かれた。
その行為からきた欲求とは違う、その誘惑に陥落した意志とは違うものが体を支配する。
オレは玉座にゆったりと腰を掛け直し、肘掛に右ひじを付いて頬杖を付く。
「どうして欲しいんだ?ヴェロニカ。」
静かに言った。
見る人が見ればそれは一般人といわれるような姿ではない。
さっきまでの青年という肩書きを捨てた―
―王そのもの。
今まで暴君(双子の姉)の下で散々弄ばれてきたことによるものか、それともさっきの決意によるものか。
上のものに対する礼儀や、常識が一気に消えうせた。
女性経験のなさや女性に対する羞恥もともに消失する。
オレの中で本能以上に抑えておかなければならなかったもの。
すなわち、悪性。
普段から優しい人物が怒ったときは手が付けられない。まさにそれ。
今まで悪逆非道の暴君(双子の姉)に従ってきたことからか、優しき暴君であるこのスライムに誘惑されてきたことからだろう。
暴君の性格が反映された意識がオレの全てを支配する。
「ユウタ様?」
さすがにヴェロニカも目の前での性格の変化には対応できなかったらしく不思議そうに首をかしげた。
「不思議そうな顔するなよ、ヴェロニカ。それでも一国の女王か?」
「っ!」
「なぁ…女王よ。」
オレはヴェロニカの頬に手を添えた。
手の平から伝わってくるゼリー質の柔らかさ。
「お前の王が情欲に悩まされているんだぜ?王が困っているんだぜ?いったいどうするんだ、ヴェロニカ女王よ。」
その言葉に、その発言に彼女は微笑を浮かべた。
女らしく艶のある微笑を。
「ご奉仕致します、わが王よ。」
ヴェロニカは上体を離し、腰を落とした。
ほんの少しの抵抗。そのあとに感じたのは柔らかさ。
やはりスライムの体に体温らしいものはなくそこも冷えていた。
嫌な冷たさではなく、心地よい冷たさ。
ぬるぬると絡まってくる粘液が優しい刺激を送りつけてきた。
その冷たさを伴った柔肉がオレのものから精を搾り取ろうと刺激する。
優しさ溢れ、嘗め回すように律動する膣。
痺れるような快感とともにオレのものは全てヴェロニカの中に埋まった。
「あっ…ふぅっああぁ…………ああああっ♪」
全てが埋まりヴェロニカは体を震わせる。
流れ込んできた快楽によってか口からだらしなく涎をたらして。
「いい顔になったな。」
「はぁ…どう、ですか…?わが王よ…♪」
「ああ、いいぞ。」
オレは左手をヴェロニカの青い胸に這わす。
むにゅっとした独特の柔らかさ。
その感触がオレの情欲をより燃え上がらせる。
乳首とかはないがそれでも十分な魅力を兼ね備えていた。
「あんっ♪」
「動いてくれるか?さすがに今まで焦らされていたからな…。」
「ふぇ?ユウタ様も…動いては下さらないのですか?」
「オレは王だからな。」
頬杖を付いたまま言う。
王らしく、堂々とした声で。
「オレに奉仕してくれるんだろう?」
「!はいっ!」
そのまま腰をゆっくりと前後に動かし始める。
透き通った青い肌がオレのものを咥え込んでいる様子を見せ付ける。
締め付けるように動く膣内。
結合部から漏れ出す粘液。
いやらしい音を奏でる陰部。
腰から伝わってくる甘い快楽。
オレはそれを享受し続けるために頬杖を付いたまま動かずにいた。
そうしていると声がかかる。
「ユウタ様…。」
「ん?」
ポーラだ。
彼女はどことなく恥ずかしそうに上目遣いでオレに言う。
「その…私も…。」
そうか。コイツもして欲しいんだ。
クイーンスライムは従者は体の一部といっていたが意思は個人で存在するらしい。
それなら欲求を感じるのも当然。
ポーラは物欲しそうにオレを見つめる。
しかしオレは何もしない。
王らしく、それらしい発言をするまで。
「オレは何もしないぞ。」
「えっ…。」
残念そうな声をあげるポーラ。
オレはさらに言葉を繋げた。
「お前が奉仕してくれるんだろう?」
静かに言った。
ポーラの目を見て少し笑みを浮かべて。
その言葉にその表情にポーラも嬉しそうに表情を変えた。
微笑んだかと思えばオレに顔を近づける。
「ご奉仕します、わが王。」
そのまま口付けた。
オレの口内にポーラの舌がはいてくる。
唾液を念入りに塗りたくるように動けばオレの舌を撫でるように動いた。
オレは左手をポーラの体を這いながらあるところに到達する。
「んんっ♪」
女として一番魅力的なところ。
今本体がオレのものを咥え込んでいる所に。
指先から伝わってくる粘液の感覚。
どうやらオレとヴェロニカの痴態によりかポーラも同じような状態になっていたらしい。
筋を指で撫で回す。
「んんんっ♪んぁあ♪」
唇を離して身悶えるポーラ。
そんなものに構うことなく指を差し込んだ。
「んああぁ♪ユ、ユウタ様ぁ♪」
「どうだよポーラ。王直々に尽くしてやってる感覚は?」
指を折り曲げ引っかくように刺激する。
そのたびに締まってくる膣内はヴェロニカのよりもきつい。
同じスライムといえどここまで性質が分かれるなんて驚きだな。
「ああぁ♪すごくっいいです♪」
そのままポーラはオレを求めるようにキスをした。
さっきよりも荒々しく、情熱的にオレを求める。
奉仕するつもりはあっても自分の中の欲望を満たさんとするような動きで。
上ではポーラが、下ではヴェロニカが奉仕を続ける。
そしてとうとう限界を迎えた。
「あっ♪あん♪もうっ駄目ですぅ♪」
腰の動きが上がり、送られてくる快楽の量が増大する。
それに合わせて膣内の締まりもより強いものへとなった。
「いくぞっ!ヴェロニカ!」
「は、はいぃ♪きて、下さいまし♪ユウタ様ぁ♪」
ヴェロニカはオレの精を搾り取ろうと腰を目一杯深く沈めた。
それに応えるようにオレも今まで動かさなかった腰を自分から突き上げるようにして打ち込む。
それと同時に解き放たれるオレの欲望。
透けて見えた青い膣内を容赦なく白に染めていった。
果物のせいなのか普段よりも出る量が異常に多い。
彼女の下腹部を中から白一色に染めるぐらいに。
「はっああああああぁぁぁぁぁぁぁ♪」
王室に響きわたる快楽に染まった嬌声。
体を弓なりに逸らし、この上ない幸せそうな表情を浮かべてヴェロニカも達した。
びくりびくりと震える体。
同じように彼女の膣内もきつく締まる。
オレの精をより多く搾り取ろうとして。
「あ、ああ♪こんな…コアを刺激されてもないのに…なんて…すごい…♪」
幸せそうな表情でヴェロニカは言った。
コア?ああ、ヴェロニカの胸でくるくる回ってる青い球体か。
女王の証であり。これが心臓なのだろう。
「さてと…今度はポーラの番だ。」
オレの上でいまだに身悶えていたヴェロニカからオレのものを抜いて、玉座に寝かせて立ち上がる。
ポーラのほうを見てみれば彼女の顔は切なげであり、また期待をこめた表情を浮かべていた。
「ユウタ様ぁ♪」
ヴェロニカとはまた違った甘い声。
聞いているだけでくらっとしそうな雄を誘う声。
「そんじゃ、ポーラはここに手をのせて、尻をこっちに向けてくれ。」
指で肘掛を叩いて示した。
しかしポーラは恥ずかしそうに手を合わせる。
そりゃそうか。スライムといえど女性。
尻を向けろなんて言われ躊躇わないわけない。
でもオレはそんな彼女の気持ちなんか知ったことない。
「王の命令だぜ?」
暴君。
悪性王の言葉。
その言葉にポーラは躊躇いながらも従った。
肘掛に両手を付いてオレへ尻を向ける。
青い艶がかったそれはいやらしく誘うように左右に揺れ動いた。
女の部分からはどろどろと蜜があふれ出し太ももを伝う。
「いくぞ?」
割れ目にオレのものをそっと押し当てた。
感触を確かめるようなことはしない。
一気に力を込めて一番奥までねじ込んだ。
「っ!!はぁっ♪」
走る快楽。痺れる体。
さっき指で感じたようにポーラの膣はきついものだった。
ヴェロニカと同じスライムだというのにその感覚はまったくの別物。
優しさ溢れる締め付けではなく、オレをもっと求めているような締め付け。
より深く誘いより多くの精を享受しようと律動する。
オレはそれに応えるように腰を動かし始めた。
強く激しくより深くまで届くように。
「あっあ♪すごい、です♪ユウタ様のがぁ♪とても、熱く感じられますっ♪」
「ふっ、そっかよっ!そいつはっ、よかった!」
動かすたびにあふれ出る粘液。
波打つ青い肌。
押し込むときは柔らかく迎え、抜くときには強く締まる膣内。
全てが全てオレの情欲を満たしていくが逆にもっと欲しいと増幅させる。
さらなる快楽を求めて体は動き出す。
ポーラの腰を引っつかみより深くまでオレのものを突き刺した。
「っはぁああああああ♪」
背筋が弓なりに逸れ、大きく体を震わせた。
膣内はオレのものを痛いくらいに締め上げる。
痙攣する体と同じように律動する膣。
どうやらポーラは…。
「イったのか?ポーラ。」
「は…はい…♪」
蕩けた声でオレに答えた。
達したのか…でもオレはまだだ。
「王より先に果てるなんてとんでもないやつだな…ポーラ。」
「は…はい…すいませ…はぁんっ♪」
ポーラの声が艶のある喘ぎ声に変わる。
オレが腰の動きを再開させたことによる快楽に染まった甘い声。
それを耳にしながら腰を動かす速度を上げる。
「はっああ♪そん、な♪ユウタさまぁぁ♪イったっばかりなの、にぃ♪」
「罰としてオレがイくまで付き合ってもらうぞ。」
容赦なく叩きつける腰。
さっきよりも激しさを増して強くなった快楽を打ち込む。
「はっあん♪くぁ♪も、らめれす♪もうっ♪」
オレのほうももう限界が近くなってきた。
背筋を快感が駆け抜け、欲望がせりあがる。
「そら、イくぞ!」
「はいぃ♪」
ポーラの体を後ろから抱きしめて腰を強く打ち込んだ。
そのままポーラの一番奥に欲望を吐き出す。
一度出したというのにとてつもない量が流れ込んだ。
青い透けた膣内が白く染められていく。
「はぁぁ…あぁ…♪ユウタ様のが…きて…ま、す…♪」
恍惚の表情を浮かべてポーラは言った。
そのまま力なく倒れこんだので抱きとめ、玉座の隣に寝かせる。
「ふぅ…。」
気の抜けたような息を吐いた。
二回も出したというのに体はいまだに欲望を抱えている。
あの媚薬効果入りの果物のせいかまだしばらくは萎えそうにないオレのもの。
自分自身この状態に半ば呆れていた。
今度はどうしようかと考えていると、
「ユウタ様ぁ♪」
甘くねだるような声をかけられた。
ヴェロニカの声だ。
「私達ももっとして欲しいです♪」
「もっと尽くさせてください♪」
…?私達?それに今声が二人分しなかったか?
玉座を見ればそこにいたのはヴェロニカ。
それと見たことない女性がいた。
長髪をひとつにまとめた女性。
胸のほうはヴェロニカやポーラより少々小さいがそれでも十分魅力的な、
スライムだった。
クイーンスライム。
どうやらスライムの女王様は分裂していくらしいな。
さすがスライム、そして女王様。
オレは新たに生まれた名もなき女王の分身とヴェロニカ、ポーラを見る。
「…4Pもありだな。」
オレの欲望はまだまだ底を見せてくれそうにはなかった。
それから半年後。
スライムの手によって築かれた国ができた。
女王はもちろんクイーンスライム。
その夫である国王は黒髪黒目のジパング人。
ジパング人である彼の行う政治はどこの国にもない異質なもので、斬新なものであり、新しいものであったという。
見たことのない政治。
聞いたことのない法律。
未知なる制度。
新たなる規定。
全てが全て次元を超えているようなものであり、そのどれもが住まう国民達のためのものであった。
やがてそれは他国を凌駕し、他の国々の模範となるようになるのだが…。
それはもう少し先のことである。
洞窟内…ではなく、大きな王城の政務室にて
「…ってわけで…うーん…消費税を取り入れるのはもう少し後になるか?バイト制度は労働力確保のためにも使えるもんだしな。雇用問題に保険も何とかしないと…。」
「少し働きすぎではありませんか?ユウタ様。」
「ん?そう?まだ足らないぐらいだと思うけど?」
「寝ておられないのでしょう?目の下に隈がありますよ。」
「昨晩散々させて寝かせなかったのはどこの王妃ですかー?」
「そっそれは…////」
「まったく…オレは王なんだぜ?人の上に立つものとしてももっと頑張らないと。」
「ふふふ、すっかり王様らしくなってきましたね。」
「おかげさまで。ヴェロニカやポーラ達のおかげだよ。」
「最初に出会ったときは随分渋っておられたのに…。」
「一度言ったことぐらい守るさ。覚悟はもう決まっているんだから。」
「あのときのユウタ様は…とても王らしい振る舞いを…♪」
「あれって結構キツイんだぞ?オレは偉ぶるよりも尽くすタイプなんだから。」
「昨晩もしっかりと暴君のお姿に…♪」
「その話はやめろって。」
「ふふふ、はい♪しかしやはりユウタ様は王に相応しいお方でしたね。」
「どうだか。いまだによくわかんなないよ。ただオレは……この王国に住んでくれる民達を幸せにしてあげたいだけなんだから。」
「それでこそ、私達の王です♪」
「そっか。なぁ、ヴェロニカ。」
「はい、ユウタ様。」
「今までありがとう。それから、これからもよろしく頼む。」
「はい♪」
玉座 第二席
満 席
HAPPY END
「ゆうた、これ作ってよ。」
「ゆうた、マッサージして。」
「だああああああああ!!何だよ何なんだよ!!何様のつもりなんだよ!」
オレは双子の姉に向かって叫んでいた。
「何さ何だよ!お前は何様!?王様かおい!!」
「…何さ急に喚きだして。」
それに対する双子の姉の対応。
思いっきり冷ややかというか…動じないというか…。
とにかく自由でオレよりも偉いという態度をとっていた。
「毎回オレに命令すんのやめろよ!オレはお前の従者か!?しもべか!?」
「…何を言い出すかと思えば…そんなことわかってんでしょ。」
そう言って凛としていった言葉はオレの記憶の中に残っている。
たぶん、一生オレの記憶に刻まれ続ける。
「下僕。」
その言葉を聞いてオレは思った。
コイツはとんでもない暴君だと…。
オレにしか振るわないその命令。
オレにしか下さないその規制。
徹底しているその行動が。
全てが暴君。
コイツダメだ…。
コイツが実際に王なんかになったらとんでもない暴政するぞ。
きっと国終わるぞ…。
オレが王になるならこんなダメな暴君にはなりたくはないな…。
そんなことを思いながらもオレは双子の姉の腕を取り、マッサージをしていた、とある日常の一コマ。
今日も早く帰って飯の用意しなきゃ…。
今日親は帰ってきたっけな?
帰ってこなかったっけ?あれ?姉ちゃんは大学行ったままだっけか?
それよか今日は…確か卵の特売日だから早く帰ってスーパー行って…。
いつものように今日することを考えながら目を覚ます。
そして気づく。
…あ、ここ家じゃないんだった。
背に感じるは玉座の感触。
水を玉座の形にして座っているかのような感覚。
そうか…オレは別世界に来たんだっけ。
…あいつ、大丈夫かな…?
そんな心配が違和感によってかき消される。
違和感。
体の自由が利かないと気づいた。
「…ん?」
腕を動かそうとしても腕が持ち上がらない。
足を動かそうとしても足が動かない。
玉座から立ち上がろうと腰を上げても上がらない。
まるで玉座に手足が絡めとられているかのように。
腰が粘着テープでくっついているかのように。
動くことができない。
見れば腕が、足が、埋まっていた。
青い玉座に埋まっていた。
よく見てはいなかったがこの玉座もスライムのようにゼリー質でできている。
だからこそこの上質な座り心地をだせているんだ。
だけど…そのゼリーの中になんでオレの手足が埋まってる?
寝ている間に沈んだように、オレの自由を奪うように埋められている。
…何で?
「起きられましたか?」
その声はオレの正面から聞こえた。
オレの目の前。
玉座に座るオレの正面に立っているヴェロニカ女王様。
あれ?ポーラさんが部屋まで運んでくれたんじゃなかったっけ?
あれ?なんでオレは玉座に座ったままなんだっけ?
確か…急に眠くなって…。
「えっと…ヴェロニカ女王様…体が玉座から離れないんですけども。」
そう言うと彼女は微笑みながらオレの隣へ座った。
さっきのように悠然と、それでいて優雅に腰掛けた。
そのままオレの肩に手を置く。
人間とは違うひんやりとした体温が学生服越しにも感じられた。
それは服越しだというのに熱くなっているオレの体温を奪っていく。
異常なほど心地よく。異質なほど気持ちよく。
「?ヴェロニカ…女王様?」
「ユウタ様…知っておられますか?」
彼女はオレの顔のすぐ隣い顔を持っていき、呟くように言う。
ねだるかのように。
甘えるかのように。
「洞窟内で…ポーラと話しましたでしょう?私達には…王となるべき者がいないと…。」
「っ。」
話した。
とても真剣な声で。
真面目にオレを王へ勧誘してきたあの話。
「先導者なき国に未来はない。王なき王国に栄光はない。王のいない私達の先などすでに見えているようなものです。ですから…。」
ヴェロニカ女王様はオレの耳に息を吹きかけるように近づき、甘えるように言葉を発した。
「私達の王となんて下さいまし。」
「っ!」
ぞくりと背筋が震える。
耳元で呟かれた言葉が体へ染み渡っていくかのように感じられた。
まずいと、オレの中の何かが告げる。
このままいけばオレはこのヴェロニカ女王様の望むままに王へされる…。
それはまずい。
こんなオレのような一般人が王になっても国の行く先が必ず繁栄とは限らない。
むしろ衰退するほうが大きいと思う。
無論、オレの人生においてもだ。
だからこそここで断らないといけない。
女王様のためにも、オレのためにも。
この女王様が統べる王国のためにも。
「オレは…王となるべき器じゃない。」
「それはあなたが判断するものではありません。外の者が判断していくこと。王とは優しく、国の行く末を考えられるようなお方がふさわしいのです。」
顔をオレの前へ移動させてきた。
青い綺麗なスライムの顔が目と鼻の先にある。
目を見れば吸い込まれそうで、口を見れば魅入られそうで。
異質な美しさがオレの中の理性を崩しにかかる。
「ユウタ様のようなお優しいお方がふさわしいのです。」
「…オレは優しくなんか―」
「ポーラと出会ったとき。」
彼女はオレの頬に両手を添えた。
ひんやりとした冷たすぎない温度が心地いい。
まるでゼリーに包まれるかのような感覚。
「ユウタ様はポーラの荷物を持ってくださいましたね。」
「っ!」
ヴェロニカ女王様はにこりと笑う。
慈愛に満ち溢れた表情をオレに向ける。
「初対面にもかかわらずポーラに優しく接してくれた。初めて出会う者にそんなふうに接することができる殿方はそうそういませんよ。」
「い、いや…。」
褒められているのだが素直に喜べない。
認めてはいけない。絶対に。
できる限りの否定を述べないと。肯定したら…。
「でもたかだか荷物持っただけですし…。」
「そのたかだかができる者がこの世界には少ないのですよ。」
そのままヴェロニカ女王様はオレにしなだれかかってきた。
柔らかいゼリー質の感触がさっきよりも多く、強く感じられる。
スライムのはずなのにどことなく女性特有の甘い香りがした。
やばい。
本当にやばい。
体は勿論、意志のほうも逃げられそうにない。
このまま玉座に貼り付けられるだろう体。
埋め込まれたままの手足。
玉座の一部となって一体化していきそうな学生服。
逃げられない。
それでもオレは精一杯の逃亡を図る。
「オレまだ18歳ですよ。」
「もう十分王へなれる歳ではありませんか。」
歳はダメか…。
「オレ、政治方面とかよくわからないんですけど。」
「ご心配なさらずに。私達がサポートしますよ。」
サポートしてくれるんですか…。
「王ってなにやればいいんですかね?」
「あなたの自由気ままに、思うままにしていただいて結構です。」
…わかった。
もうだめだぁ!
拒否のしようがないぞこれ!
逃げ場なさすぎだぞ!
さすが一国の女王様というべきかヴェロニカ女王様は口達者だし!
逃げても逃げ場をつぶされるし!袋小路じゃねぇか!
「そんなにオレを王にしたいんですか…?」
「ええ。とても。あなたほど王にふさわしい方はそういませんからね。」
だからオレはそんな王にふさわしくないっていうのに…。
オレは空を仰ぐように顔を上へ向けた。
その先には王室にふさわしい豪勢なデザインが描かれた天井。
その豪勢さを毎日眺めることになってしまうのだろうか…。
「そんなに言うのならオレを脅すなりして王にすりゃいいじゃないですか!」
「いいえ、それはいけません。」
ヴェロニカ女王様は言った。
さっきの甘えるような声じゃない、はっきりとした女王の威厳ある声で。
「王となる者を自ら王と名乗らせないでは、それは王とは呼べません。王となる自覚をもっていない者などそこらにいる者達と同じ。」
へぇ…しっかりしている。
さすが女王。一国を統べるからかそこはきちんとしてるな。
それで、そのしっかりさでもう一度オレをよく見てほしい。
オレはそんなできた人間じゃないから。
「自ら名乗らせてこそ王は成るのです。ですから―」
胸元で何かが動かされる感覚。
見ればヴェロニカ女王様はいつの間にかオレの学生服のボタンを外し終えていた。
それどころかYシャツのボタンも同じように。
上半身が露にされる。
その露にされた肌に青い手を添えた。
「―私達の王だと、名乗ってくださいまし。」
そのままオレの胸板を撫で回す。
湿って冷たいぷにぷにした手が這いずり回る。
それは不快感など微塵も感じさせない。
少しばかりの心地よさを感じさせた。
冷たい手が、火照った体を冷やしてくれる。
だが、それと同時に変な感覚を残す。
触れられたところが熱く疼くような。
もっと触って欲しいと願いたくなるような。
「…っ!」
気づいた。
体がいつもと違う様子に。
体温が異常なほど上がっていることに。
熱い…それも、風邪を引いたときのように体が火照っている。
体の内側からはよくわからないものが静かに、確実に大きく燃え上がる。
何でっ?風邪でも引いたのか?
あまりの熱さにヴェロニカ女王様の体温がとても気持ちよく感じられるくらいだ。
気持ち…よく…?
「っ!オレの体に何かしましたね!」
嫌な予感。
明らかに異常な体。いつもよりずっと高いだろう体温。
体の中から大きく燃え上がってくるもの。
それはオレの理性を崩そうとする情欲の炎。
「ようやく…効いてきましたか…。」
ヴェロニカ女王様は笑った。
あの優しそうな微笑じゃない。
妖艶そうな微笑でオレを見た。
「効く…?何をっ…!?」
「この果物。」
いつの間にか持っていたあの赤い果物。
ヴェロニカ女王様がオレに食べさせてくれたあの果物だ。
見せ付けるようにオレの前へ持ってくる。
「この地方にしかない上質なものです。この地方周辺にしかいない『アルラウネの花園』で取れる特別なものなのですよ。媚薬効果ばっちりの…ね♪」
「っ!!」
媚薬効果!?
この女!嵌めやがったな!
それもオレがこの王室へ、この玉座に腰掛けた時から計画的に!
「ぐっ…うぅっ…!」
徐々に大きくなってくる情欲の炎。
理性を焦がし、目の前の人ではない女性の体を強く求めさせる。
その冷たい体温をもっと感じたいと思わせる。
この女…よりによって色仕掛けで仕掛けてきたのか…!
最悪だ!
痛いのは師匠との空手の稽古で慣れてるにしても、これは。
痛みなき誘いのこれには。
甘い快楽の拷問には。
快楽に対しての耐性は…オレにはない!
動けない体。
貼り付けられた手足。
今のオレの体はヴェロニカ女王の思うまま、手の平の上だ!
「い、いいんですかね、そんなことして。」
オレはできる限り冷静さを保って言う。
この程度のことどうってことないと虚勢を張る。
「一国の女王様が色仕掛けなんかで王様作って…。そんなことで王になったオレはきっとダメ王になるでしょうねぇ…!」
「それはありえませんよ。」
ヴェロニカ女王様は言った。
そんな根拠もないようなことを。
平然と言い切りやがった。
「貴方はお優しい。その優しさはときに責任にもなる。貴方のような方が…いえ、貴方が王になられればきっと私達を見捨てないでくれる。」
「…そんな根拠もないことをよくも言えますね。」
「ならその根拠を今確かめればよろしいのでしょう?」
にっこりと笑うその表情。
浮かべたその表情には慈しみは欠片もない。
あるのは策略、裏の顔。
時に王国を救うための策を練り、時に敵を討つための策を練る顔。
それと同時にあらわれる、黒い陰謀。
やばい、とんでもなくやばい。
背中から嫌な汗が流れた。
こんなことならまだ師匠の『治療』を手伝っていたほうがましだ。
アレはアレで大怪我しかねないけど…こんな状況と比べればあんな怪我気にも留めないのに…!
「僭越ながらお手伝いさせていただきます。」
そう言ったのはポーラさん。
いつの間にかオレの隣にいて、オレの胸を撫で回し始めた。
ヴェロニカ女王様と同じ冷たい体温。
異常なほどに心地よく感じられる。
「それでは私はこちらを…。」
両手がオレの頬に添えられた。
玉座に埋め込まれているので動けない体がさらに逃げられないように拘束された。
そして近づく青い肌。美しい顔。
ぷっくりとした艶のある唇。
「んん♪」
「んっ!?」
ヴェロニカ女王様はオレにキスをしてきた。
ゼリー質の柔らかな唇が恐ろしいほどに気持ちいい。
「んっんぅ♪」
そのまま強引にオレの唇をこじ開けて侵入してくるヴェロニカ女王様の舌。
暴れるようなことはせずにゆっくりとオレの舌に絡めてくる。
全身くまなくスライムであるためかそれは人の舌よりもずっとぬるぬるで柔らかだった。
…他人の舌の感触なんて知らないが。
流し込まれる唾液。
逆に吸われていく涎。
その行為に判断は鈍っていく。
意識が、蕩けていく…。
味はしないはずなのにとても甘い味がした。
「ちゅるっ…ふふ、いい顔になりましたね。ユウタ様。」
長い口付けを終えてヴェロニカ女王様は笑った。
とても愛おしそうに。
しかしその笑みの裏にどす黒い欲望があることが見て取れた。
それでも綺麗に映るその顔は人外特有の妖艶さによるものか…。
「王になって下さいまし。そうすれば…もっとしてあげますから…。」
甘い囁き。
だがそれは悪魔の呟きと同じだった。
一瞬の判断が人生を棒に振る。
ここで首を縦に振りたいという自分がいるのにその自分を押さえつける理性がまだオレには残っていた。
「ふふふ、強情なお方…。すぐに陥落しないところがまた王にふさわしい…。」
ヴェロニカ女王様はそのまま顔を下へ移動させる。
途中途中、胸板や腹に冷たいキスを落としながら。
そして、たどり着いた。
「これは…どうですか?」
ポーラがズボンのベルトを外し、パンツまで下げられた。
玉座に埋まっているのは大体腰半分。
それなので全部脱げるわけではないがオレの大事な部分は全てがさらけ出せるくらいではあった。
「っ!」
「まぁ…これが…ユウタ様の…♪」
ヴェロニカ女王様は嬉しそうに声を弾ませる。
隣にいるポーラさんもどことなく嬉しそうな表情を見せた。
二人の目の前に晒されたオレのもの。
それはあの媚薬効果入りの果物のせいなのかいつもよりずっと大きくなっていた。
どくんどくんと強く脈打つ。
ただそれだけでも二人は嬉しそうな顔を見せる。
「とても…逞しい…!」
「ふふふ…ここまで王に相応しいとは思いませんでしたよ…♪」
二人はそう言って同時に唇でオレのものに触れた。
キスするように優しく。
「っ!!」
途端に体中を突き抜けるとてつもない快楽。
初めてのオレにとってその行為から生み出される快楽は予想できるものではない上に、
二人同時ということでその快楽は尋常じゃないものへとなっていた。
「くっぁ!」
歯を食いしばって何とか堪える。
自分の気持ちが揺れないように。自分の意志が傾かないように。
その様子を見てか二人はさらに口付ける。
二人分の唇がオレのものを弄ぶ。
ヴェロニカ女王様が先っぽにキスすればポーラさんが竿の部分に口付けて、
ポーラさんが先端へ唇を付ければヴェロニカ女王様が啄ばむように口を付けた。
さらにその動きに舌が加わった。
「んぅっ!」
撫でるかのような動きで舐めたと思ったら、先端を集中的に舐め尽くす。
円を描くような動きをすれば唾液を塗りつけるように動き出す。
異様な快楽。異質な心地よさ。
二つの舌に、二人の女性によってオレの中の本能は強く呼応してくる。
もっとしたいと。
もっと欲しいと…!
「んっ…ここまでしてもまだ首を縦に振りませんか?」
ヴェロニカ女王様が顔を上げて尋ねてきた。
上目遣いで。甘えるように。
くそっ!その行為さえオレを堕とさせようとする魂胆が見えるぞ…!
オレは鼻で笑う。
こんなのには屈しないと、そんな意志をこめて。
「全然ですよ…っ!」
全然大丈夫ではなかった。
今にも陥落しそうな意志。
手が使えればスライムとはいえ女性二人楽に押しのけられるのに…!
そう思っているはずなのに…この先を望む自分がいた。
あの媚薬効果入りの赤い果物のせいか、オレが女性経験がないということよりか、更なる快楽を望んでいるオレがいた。
「そうですか…ポーラ。」
「御意。」
声をかけられた途端に動きを止めるポーラさん。
何かと思い視線を移そうとしたが邪魔をされる。
感じたことのない快楽に。
「んん…じゅるっ…♪」
「ぐっぁ!」
ポーラさんはオレのものを口に含んでいた。
とろとろに蕩けた口の中は青い肌同様にひんやりとしていたがそれが逆に感覚を鋭くさせる。
より強い快感を送りつけてくる。
扱くように上下する頭。
叩き込まれる未知の感覚。
その行為に、その快楽にオレは限界を迎え―
「ポーラ。」
「はっ。」
動きが止まった。
途端に送られてくる快楽も止まる。
弾けそうになっていた欲望までもが途中で止められた。
「な…何で…っ。」
「出したいですか?」
「っ!」
ああ、そうだったな…これが狙いだったな!
押しとめられたこの快感の先が欲しいなら王になれと。
留められた欲望を解き放ちたいなら王になれと…!
ヴェロニカ女王様の目が言っていた。
徐々に下がっていく止められた限界。
それとは反対にせりあがってくる欲望。
体の中に広がるのはどうしようもないもどかしさ。
今のオレにはどうすることもできない悔しさにも似た感覚。
それと…理性というメッキを剥がされかけた本能。
「どうされたいですか…?」
ヴェロニカ女王様は膝立ちでオレに跨るように動く。
見れば彼女は女性にとって一番敏感なところから液体を垂れ流していた。
涎をたらすようにだらだらと粘液を滴らせてオレに見せ付ける。
見たことのない光景。
毛なんてものは生えていない一筋の線が走るそれ。
そこから疼くような冷たい粘液がオレのものへと伝う。
伝って異常な温度を感じさせる。
「したいですか?」
甘えたくなるような声。
身を委ねたくなるような言葉。
興奮しているのか荒く吐かれる甘い息。
目の前で女王様が女王様らしからぬ姿でオレのものの真上に割れ目を擦り付ける。
感じたことのない感覚。
「何でもしてあげますよ。」
その言葉に欲望の炎がいっそう強く燃え上がった。
焦点さえあっていない、体が浮いているような感覚。
その体に目の前の女を犯せという本能が支配していく。
もう抗う理性は残っていない。
本能を抑圧する邪魔なものは何一つ残っていない…。
「…る。」
オレは小さく呟いた。
「え?何ですか?」
ヴェロニカ女王様は嬉しそうな微笑を浮かべた。
勝利を確信したかのようなその表情。
―だが、その勝利はすぐさま取り下げになることだろう。
「…ってやる。」
もう一度、呟いた。
「何ですか?もう一度仰ってくださいまし。」
「やってやるよ…。」
オレは言った。
オレの中の決意を崩す言葉を。
オレの中の意志を傾けさせる言葉を。
合っていなかった焦点を合わせて、ヴェロニカ女王様の顔を見て。
強い決意の篭った言葉を。
はっきりと言った。
「オレが…王になってやる…っ!」
「ふふふ、ありがとうございます。」
ヴェロニカ女王様は…いや、ヴェロニカは嬉しそうに微笑んだ。
そしてそのまま上体をオレのほうへ倒し、唇を重ねる。
誓いのキスのように。
そっと、優しく重ねた。
「ちゅ…ん…♪」
そのキスと同時に手足の拘束が解ける。
やはりというかこの玉座はヴェロニカの意思で操れるものらしい。
ということはこれは彼女自身か体の一部か。
解き放たれた今のオレにとってはどうでもいいことだ。
埋め込まれていた手が、足がようやく解き放たれたんだ。
ようやく体に戻ってきた自由の感覚。
しかしオレは動かない。
「ユウタ…様?」
不思議そうな顔でオレを見つめてくるヴェロニカ。
本当なら自由になった途端に目の前の女を押し倒してそのまま行為に及ぶはずだった。
だが、今のオレは普段のオレとは違った。
今まで散々昂ぶらせられるだけ昂ぶらされて、誘惑され、王となれと囁かれた。
その行為からきた欲求とは違う、その誘惑に陥落した意志とは違うものが体を支配する。
オレは玉座にゆったりと腰を掛け直し、肘掛に右ひじを付いて頬杖を付く。
「どうして欲しいんだ?ヴェロニカ。」
静かに言った。
見る人が見ればそれは一般人といわれるような姿ではない。
さっきまでの青年という肩書きを捨てた―
―王そのもの。
今まで暴君(双子の姉)の下で散々弄ばれてきたことによるものか、それともさっきの決意によるものか。
上のものに対する礼儀や、常識が一気に消えうせた。
女性経験のなさや女性に対する羞恥もともに消失する。
オレの中で本能以上に抑えておかなければならなかったもの。
すなわち、悪性。
普段から優しい人物が怒ったときは手が付けられない。まさにそれ。
今まで悪逆非道の暴君(双子の姉)に従ってきたことからか、優しき暴君であるこのスライムに誘惑されてきたことからだろう。
暴君の性格が反映された意識がオレの全てを支配する。
「ユウタ様?」
さすがにヴェロニカも目の前での性格の変化には対応できなかったらしく不思議そうに首をかしげた。
「不思議そうな顔するなよ、ヴェロニカ。それでも一国の女王か?」
「っ!」
「なぁ…女王よ。」
オレはヴェロニカの頬に手を添えた。
手の平から伝わってくるゼリー質の柔らかさ。
「お前の王が情欲に悩まされているんだぜ?王が困っているんだぜ?いったいどうするんだ、ヴェロニカ女王よ。」
その言葉に、その発言に彼女は微笑を浮かべた。
女らしく艶のある微笑を。
「ご奉仕致します、わが王よ。」
ヴェロニカは上体を離し、腰を落とした。
ほんの少しの抵抗。そのあとに感じたのは柔らかさ。
やはりスライムの体に体温らしいものはなくそこも冷えていた。
嫌な冷たさではなく、心地よい冷たさ。
ぬるぬると絡まってくる粘液が優しい刺激を送りつけてきた。
その冷たさを伴った柔肉がオレのものから精を搾り取ろうと刺激する。
優しさ溢れ、嘗め回すように律動する膣。
痺れるような快感とともにオレのものは全てヴェロニカの中に埋まった。
「あっ…ふぅっああぁ…………ああああっ♪」
全てが埋まりヴェロニカは体を震わせる。
流れ込んできた快楽によってか口からだらしなく涎をたらして。
「いい顔になったな。」
「はぁ…どう、ですか…?わが王よ…♪」
「ああ、いいぞ。」
オレは左手をヴェロニカの青い胸に這わす。
むにゅっとした独特の柔らかさ。
その感触がオレの情欲をより燃え上がらせる。
乳首とかはないがそれでも十分な魅力を兼ね備えていた。
「あんっ♪」
「動いてくれるか?さすがに今まで焦らされていたからな…。」
「ふぇ?ユウタ様も…動いては下さらないのですか?」
「オレは王だからな。」
頬杖を付いたまま言う。
王らしく、堂々とした声で。
「オレに奉仕してくれるんだろう?」
「!はいっ!」
そのまま腰をゆっくりと前後に動かし始める。
透き通った青い肌がオレのものを咥え込んでいる様子を見せ付ける。
締め付けるように動く膣内。
結合部から漏れ出す粘液。
いやらしい音を奏でる陰部。
腰から伝わってくる甘い快楽。
オレはそれを享受し続けるために頬杖を付いたまま動かずにいた。
そうしていると声がかかる。
「ユウタ様…。」
「ん?」
ポーラだ。
彼女はどことなく恥ずかしそうに上目遣いでオレに言う。
「その…私も…。」
そうか。コイツもして欲しいんだ。
クイーンスライムは従者は体の一部といっていたが意思は個人で存在するらしい。
それなら欲求を感じるのも当然。
ポーラは物欲しそうにオレを見つめる。
しかしオレは何もしない。
王らしく、それらしい発言をするまで。
「オレは何もしないぞ。」
「えっ…。」
残念そうな声をあげるポーラ。
オレはさらに言葉を繋げた。
「お前が奉仕してくれるんだろう?」
静かに言った。
ポーラの目を見て少し笑みを浮かべて。
その言葉にその表情にポーラも嬉しそうに表情を変えた。
微笑んだかと思えばオレに顔を近づける。
「ご奉仕します、わが王。」
そのまま口付けた。
オレの口内にポーラの舌がはいてくる。
唾液を念入りに塗りたくるように動けばオレの舌を撫でるように動いた。
オレは左手をポーラの体を這いながらあるところに到達する。
「んんっ♪」
女として一番魅力的なところ。
今本体がオレのものを咥え込んでいる所に。
指先から伝わってくる粘液の感覚。
どうやらオレとヴェロニカの痴態によりかポーラも同じような状態になっていたらしい。
筋を指で撫で回す。
「んんんっ♪んぁあ♪」
唇を離して身悶えるポーラ。
そんなものに構うことなく指を差し込んだ。
「んああぁ♪ユ、ユウタ様ぁ♪」
「どうだよポーラ。王直々に尽くしてやってる感覚は?」
指を折り曲げ引っかくように刺激する。
そのたびに締まってくる膣内はヴェロニカのよりもきつい。
同じスライムといえどここまで性質が分かれるなんて驚きだな。
「ああぁ♪すごくっいいです♪」
そのままポーラはオレを求めるようにキスをした。
さっきよりも荒々しく、情熱的にオレを求める。
奉仕するつもりはあっても自分の中の欲望を満たさんとするような動きで。
上ではポーラが、下ではヴェロニカが奉仕を続ける。
そしてとうとう限界を迎えた。
「あっ♪あん♪もうっ駄目ですぅ♪」
腰の動きが上がり、送られてくる快楽の量が増大する。
それに合わせて膣内の締まりもより強いものへとなった。
「いくぞっ!ヴェロニカ!」
「は、はいぃ♪きて、下さいまし♪ユウタ様ぁ♪」
ヴェロニカはオレの精を搾り取ろうと腰を目一杯深く沈めた。
それに応えるようにオレも今まで動かさなかった腰を自分から突き上げるようにして打ち込む。
それと同時に解き放たれるオレの欲望。
透けて見えた青い膣内を容赦なく白に染めていった。
果物のせいなのか普段よりも出る量が異常に多い。
彼女の下腹部を中から白一色に染めるぐらいに。
「はっああああああぁぁぁぁぁぁぁ♪」
王室に響きわたる快楽に染まった嬌声。
体を弓なりに逸らし、この上ない幸せそうな表情を浮かべてヴェロニカも達した。
びくりびくりと震える体。
同じように彼女の膣内もきつく締まる。
オレの精をより多く搾り取ろうとして。
「あ、ああ♪こんな…コアを刺激されてもないのに…なんて…すごい…♪」
幸せそうな表情でヴェロニカは言った。
コア?ああ、ヴェロニカの胸でくるくる回ってる青い球体か。
女王の証であり。これが心臓なのだろう。
「さてと…今度はポーラの番だ。」
オレの上でいまだに身悶えていたヴェロニカからオレのものを抜いて、玉座に寝かせて立ち上がる。
ポーラのほうを見てみれば彼女の顔は切なげであり、また期待をこめた表情を浮かべていた。
「ユウタ様ぁ♪」
ヴェロニカとはまた違った甘い声。
聞いているだけでくらっとしそうな雄を誘う声。
「そんじゃ、ポーラはここに手をのせて、尻をこっちに向けてくれ。」
指で肘掛を叩いて示した。
しかしポーラは恥ずかしそうに手を合わせる。
そりゃそうか。スライムといえど女性。
尻を向けろなんて言われ躊躇わないわけない。
でもオレはそんな彼女の気持ちなんか知ったことない。
「王の命令だぜ?」
暴君。
悪性王の言葉。
その言葉にポーラは躊躇いながらも従った。
肘掛に両手を付いてオレへ尻を向ける。
青い艶がかったそれはいやらしく誘うように左右に揺れ動いた。
女の部分からはどろどろと蜜があふれ出し太ももを伝う。
「いくぞ?」
割れ目にオレのものをそっと押し当てた。
感触を確かめるようなことはしない。
一気に力を込めて一番奥までねじ込んだ。
「っ!!はぁっ♪」
走る快楽。痺れる体。
さっき指で感じたようにポーラの膣はきついものだった。
ヴェロニカと同じスライムだというのにその感覚はまったくの別物。
優しさ溢れる締め付けではなく、オレをもっと求めているような締め付け。
より深く誘いより多くの精を享受しようと律動する。
オレはそれに応えるように腰を動かし始めた。
強く激しくより深くまで届くように。
「あっあ♪すごい、です♪ユウタ様のがぁ♪とても、熱く感じられますっ♪」
「ふっ、そっかよっ!そいつはっ、よかった!」
動かすたびにあふれ出る粘液。
波打つ青い肌。
押し込むときは柔らかく迎え、抜くときには強く締まる膣内。
全てが全てオレの情欲を満たしていくが逆にもっと欲しいと増幅させる。
さらなる快楽を求めて体は動き出す。
ポーラの腰を引っつかみより深くまでオレのものを突き刺した。
「っはぁああああああ♪」
背筋が弓なりに逸れ、大きく体を震わせた。
膣内はオレのものを痛いくらいに締め上げる。
痙攣する体と同じように律動する膣。
どうやらポーラは…。
「イったのか?ポーラ。」
「は…はい…♪」
蕩けた声でオレに答えた。
達したのか…でもオレはまだだ。
「王より先に果てるなんてとんでもないやつだな…ポーラ。」
「は…はい…すいませ…はぁんっ♪」
ポーラの声が艶のある喘ぎ声に変わる。
オレが腰の動きを再開させたことによる快楽に染まった甘い声。
それを耳にしながら腰を動かす速度を上げる。
「はっああ♪そん、な♪ユウタさまぁぁ♪イったっばかりなの、にぃ♪」
「罰としてオレがイくまで付き合ってもらうぞ。」
容赦なく叩きつける腰。
さっきよりも激しさを増して強くなった快楽を打ち込む。
「はっあん♪くぁ♪も、らめれす♪もうっ♪」
オレのほうももう限界が近くなってきた。
背筋を快感が駆け抜け、欲望がせりあがる。
「そら、イくぞ!」
「はいぃ♪」
ポーラの体を後ろから抱きしめて腰を強く打ち込んだ。
そのままポーラの一番奥に欲望を吐き出す。
一度出したというのにとてつもない量が流れ込んだ。
青い透けた膣内が白く染められていく。
「はぁぁ…あぁ…♪ユウタ様のが…きて…ま、す…♪」
恍惚の表情を浮かべてポーラは言った。
そのまま力なく倒れこんだので抱きとめ、玉座の隣に寝かせる。
「ふぅ…。」
気の抜けたような息を吐いた。
二回も出したというのに体はいまだに欲望を抱えている。
あの媚薬効果入りの果物のせいかまだしばらくは萎えそうにないオレのもの。
自分自身この状態に半ば呆れていた。
今度はどうしようかと考えていると、
「ユウタ様ぁ♪」
甘くねだるような声をかけられた。
ヴェロニカの声だ。
「私達ももっとして欲しいです♪」
「もっと尽くさせてください♪」
…?私達?それに今声が二人分しなかったか?
玉座を見ればそこにいたのはヴェロニカ。
それと見たことない女性がいた。
長髪をひとつにまとめた女性。
胸のほうはヴェロニカやポーラより少々小さいがそれでも十分魅力的な、
スライムだった。
クイーンスライム。
どうやらスライムの女王様は分裂していくらしいな。
さすがスライム、そして女王様。
オレは新たに生まれた名もなき女王の分身とヴェロニカ、ポーラを見る。
「…4Pもありだな。」
オレの欲望はまだまだ底を見せてくれそうにはなかった。
それから半年後。
スライムの手によって築かれた国ができた。
女王はもちろんクイーンスライム。
その夫である国王は黒髪黒目のジパング人。
ジパング人である彼の行う政治はどこの国にもない異質なもので、斬新なものであり、新しいものであったという。
見たことのない政治。
聞いたことのない法律。
未知なる制度。
新たなる規定。
全てが全て次元を超えているようなものであり、そのどれもが住まう国民達のためのものであった。
やがてそれは他国を凌駕し、他の国々の模範となるようになるのだが…。
それはもう少し先のことである。
洞窟内…ではなく、大きな王城の政務室にて
「…ってわけで…うーん…消費税を取り入れるのはもう少し後になるか?バイト制度は労働力確保のためにも使えるもんだしな。雇用問題に保険も何とかしないと…。」
「少し働きすぎではありませんか?ユウタ様。」
「ん?そう?まだ足らないぐらいだと思うけど?」
「寝ておられないのでしょう?目の下に隈がありますよ。」
「昨晩散々させて寝かせなかったのはどこの王妃ですかー?」
「そっそれは…////」
「まったく…オレは王なんだぜ?人の上に立つものとしてももっと頑張らないと。」
「ふふふ、すっかり王様らしくなってきましたね。」
「おかげさまで。ヴェロニカやポーラ達のおかげだよ。」
「最初に出会ったときは随分渋っておられたのに…。」
「一度言ったことぐらい守るさ。覚悟はもう決まっているんだから。」
「あのときのユウタ様は…とても王らしい振る舞いを…♪」
「あれって結構キツイんだぞ?オレは偉ぶるよりも尽くすタイプなんだから。」
「昨晩もしっかりと暴君のお姿に…♪」
「その話はやめろって。」
「ふふふ、はい♪しかしやはりユウタ様は王に相応しいお方でしたね。」
「どうだか。いまだによくわかんなないよ。ただオレは……この王国に住んでくれる民達を幸せにしてあげたいだけなんだから。」
「それでこそ、私達の王です♪」
「そっか。なぁ、ヴェロニカ。」
「はい、ユウタ様。」
「今までありがとう。それから、これからもよろしく頼む。」
「はい♪」
玉座 第二席
満 席
HAPPY END
11/03/09 20:53更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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