デイ・オブ・ザ・クノイチ
その朝も俺は、隣に住む2つ下の幼馴染み、綾香によって起こされた。
女友達が朝、わざわざ屋根を伝って部屋まで来てくれるというラブコメめいたシチュエーションにあっても俺の心は晴れない。
「うしししし。今日もにぃにぃはお寝坊か! しかたないなぁホント!」
目の前で平坦な胸を誇らしげに反らせて立つ彼女を見れば、その理由は明らかだ。
といっても、別に彼女が物凄い不細工だというわけではない。むしろ、ぱっちりした眼や艶やかな黒髪、儚さすら感じさせる白い肌など、全体的に未発達ながらもなかなかの美少女といってよい。
そんな綾香の印象を一変させるのが、今彼女の着ている服だ。
濃い紫色の浴衣から袖を切り取り、裾を短く詰めたような衣装。腰に巻いた帯には印籠のようなよくわからない小道具がぶら下げてあり、両手には黒い手袋、両足には黒いストッキング。前腕の外側とすねには赤黒い防具のようなものを着けて、コスプレ感を増している。
まさしく、アニメやゲームに登場するクノイチそのもの。綾香の趣味は、ニンジャのコスプレなのだ。
「これぞ忍法、布団返し!」
「……お前なあ。もうそろそろ落ち着いたらどうなんだよ。なんだよ忍法って。ニンジャなんて、実在しないのに」
「……にぃにぃ。歴史は、カイザンされ、インペイされてきたんだよ。シンジツは忘れ去られたんだ。ニンジャ真実が……」
「わかったわかった。着替えるから、出て行ってくれよ」
「はい喜んでー」
ニンジャコスプレ少女を部屋から追い出し、やっと俺は一息つくことが出来た。
朝食を手早く摂り終え、家を出るといつも通り綾香が待っている。いつのまにかニンジャコスプレからセーラー服に着替えてはいるが、言動はまったく変わらない。彼女は俺の後輩でもあるため、毎日一緒に通学することになっている。
「にぃにぃー! 早く行こうよー! もたもたしてたら忍術でオシオキだよ!」
少し舌足らずで、「術」の発音が「ジツ」となってしまっているため、実際以上に幼いアトモスフィアの綾香ともに通学路を歩いていく。血のつながらない相手に兄呼ばわりされる恥ずかしさも、もう慣れっこだ。
「あ、にぃにぃの頭、後ろの毛がハネてるよ。寝ぐせ、直してないじゃない」
「……忘れてた。まあいいや。学校についてから何とかすりゃいいだろ」
「本当、だらしないなあ。そんなじゃダメだよ、もう!」
幼いとはいえ公私の使い分けはできているらしく、制服を着ている時の綾香は少しだけ真面目で、ニンジャプレイもしない。表の、取り繕った顔しか知らない綾香の同級生に、「ニンポを使うぞ! ニンポを使うぞ!」などといってふざけている姿を見せてやりたいものだ。
俺達二人が学校に着くまでの時間は、いつもこんな風に慌ただしく過ぎていくのだ。
その日の夕方。
やはりいつも通り、綾香と一緒に帰ろうかと思っていた時。放課後の教室で突然、同級生の女子から声を掛けられた。
「あ、あの……ちょっと、お時間、いいですか?」
「へ? いや、別に忙しくはないけど」
奥ゆかしい雰囲気の彼女は、クラスの中でも目立たないグループに属している。普段から交流も無い、声を聞くのも稀なその娘が緊張気味に言葉を継ぐ。
「そうですかっ。じゃあ、あの、ちょっと、一緒に来て、もらえませんか……?」
「ん、ま、いいけど」
教室に残っていた他のクラスメイトたちが意味ありげに目配せをしあう。彼女の用事が何なのか、俺にも薄々分かりかけてきていた。
連れて来られたのは体育館裏。人目につかないところまで俺を連れてきた彼女の要件は、やはり交際のお申し込みだった。
今まで余り話したこともない相手だったので、即答はためらわれる。
が、あえて拒むほどの欠点は彼女には見当たらない……どころか、顔立ちもなかなか愛嬌があるし胸は豊満だし、何より今、俯いて下唇を噛んで、真っ赤になって男の返事を待っている様子がいじらしすぎて、冷たく切り捨てることなど到底出来そうにない。
お互いよく知らない間柄で、いきなり恋人同士と言うのもなんだし、まずは友だちから……と言いかけた時。緊張に耐え切れなくなったか、女が不意に顔を上げた。
「す、すいません、突然こんなの、困りますよねっ!?」
「い、いやその……」
「い、いいんですっ! 返事は、その、今すぐじゃなくても……明日、聞かせて下さいっ!」
言うなり、そのまま走り去ってしまった。
即答してやれなかったという罪悪感が重い。ともかく明日だ、明日までじっくり、お互い落ち着こうと思って体育館裏から出ると、目の前に綾香がいた。
「うお、びっくりした。お前ずっとここにいたのか?」
呼びかけにも答えず、凄まじく不機嫌そうな顔の綾香は俺をキッとにらみ、そのまま踵を返す。呼び止める間もなく走り去ってしまったのだ。
「やけに機嫌悪かったな。口も聞かないで、なんだってんだ。
……聞いてたのかな? さっきの。それで嫉妬した、とか……?
いやいや。ニンジャになりきるような子供が、まさかそんな、な……」
短時間にいろいろありすぎて、思考力が働かない。逃げた綾香を追いかけるのはやめて、俺は珍しく一人で帰宅した。
夕食を済ませて、自分の部屋でくつろぐ。
よく考えてみても、今日告白してきた彼女にまつわる良くない記憶や悪い噂などは思い当たらない。ひとまず昼の弁当を一緒に食べるくらいのところから始めて、あわよくばもっと仲良くなろう。
見るからにおとなしそうな女の子が勇気を振り絞って自分を求めたという、それだけでもう俺は最高の気分だった。
しかし、お互いあまり良く知らない相手から告白されるとは。やはりあの娘は、俺を外見で選んだのだろうか。
取り立てて優れたところの無い平凡な顔だと自認していたが、髪型や服装などは毎朝、綾香にチェックしてもらっているおかげでそこそこきちんとできている。
今日彼女に告白されたのも、元をたどれば綾香のおかげかもしれない。このまま首尾よく行って付き合えることになったら、あいつにもお礼を言ったほうがいいだろうか。
にへらぁと気持ち悪い笑みを浮かべながらそんなことを考えていると、部屋の窓を叩くものがある。
これから押し入る家、それも明かりが点いて中に人がいる部屋の窓をわざわざ叩く泥棒などいるはずもない。鍵を開けてやると、果たして綾香が侵入してきた。
夕方会った時の不機嫌そうな様子は、既に無い。
プライベートタイムの彼女は、朝着ていたのとはまた別のニンジャ服に身を包んでいる。蛍光ピンクで縁取られた濃紫色の布は忍ぶ意志を微塵も感じさせない。しかし大胆に露出された太股と脇、そして大きく開かれた胸元から微かに覗く平坦な胸などは綾香の幼さに反して、クノイチと呼ぶにふさわしい色気を放つ。
朝見た服と比べて数段良い布を使っているらしく、派手でありながら安っぽさがない。コスプレというよりニンジャそのものに見えて、すぐにその考えを打ち消した。
「……また、新しい服買ったのか? ちょっと肌を出し過ぎじゃないかそれ」
「にぃにぃ、私さア」
「なに?」
「ニンジャだわ完全に」
言うなり、綾香は俺に飛びかかってきた。
背後、畳の上に仰向けで押し倒される。華奢で幼い女の子が、両肩を掴んで、俺を組み伏せている。
何が起きているのか分からなかった。いつもの様にニンジャごっこでふざけているのだと思いたかったが、細い腕に押さえつけられて身動きが取れない。
年上の男を完全に制しているというのか。同年代の女の子と比べても明らかに小柄で弱々しいこの綾香が、今俺を力で上回っているというのか。
混乱から抜け出せないまま、叫んだ。
「な、なんだこれ……! おい綾香、お前一体……!」
「私ね、ニンジャになったんだよ。実際クノイチになったんだよ。この力、スゴイでしょ?」
「ニンジャ……? なんで、ニンジャ……?」
当惑し続ける俺にぐっと顔を近づける綾香。その瞳が装束と似た暗い紫色に光る。幻覚めいて輝く彼女の目線を拒めない。
「ほら、見て。私の目、光ってるでしょ? 人間の目は、光る? おかしいと思わない? ね、にぃにぃ」
惑わすような彼女の言葉を聞いていると、頭のなかに靄がかかったような感覚に襲われる。
考える力が衰えてきたのを見透かしてか、綾香がにやりと笑う。
抵抗する気力を失った俺から手を離し、ゆっくり語りかけてくる。
「ごめんね。こんな、ムリヤリ。でも、にぃにぃがヨソの女に取られるの、黙って見てるなんて死んでもイヤだし。
だから私のジツで、にぃにぃを私のものにしちゃうね」
非人間的な眼光を放つ綾香は顔をゆっくり近づけてくる。その唇が俺の唇に合わせられるまで顔を背けることはできなかった。
最初はためらいがちに、恐る恐るといった感じだったが一度口と口を触れさせ、舌を差し込んで唾液を味わうと、我慢ならなくなったかのように激しく貪り出した。
もっと欲しいのにそれが叶えられない、いくらキスしても満たされずもっと欲しくなる、そんな勢いで綾香は俺の口内を蹂躙する。
唇の裏や上顎や歯茎を舌で好き放題に舐め回しつつ、綾香はじっと俺の眼を見つめてくる。
今までの、ただ無邪気だった彼女とは全く異なる、何か執念のようなものが感じられる。その目に見られているだけで、俺はキス中であっても目を閉じることができない。
じゅる、ちゅるると唾の音まで鳴らして、じっくりたっぷりディープキスして、やっと綾香は口を離した。
さんざん貪って、しかし彼女は全く満足していない様子。腰の帯を緩めて胸元を少しはだけて、俺の腰に手を伸ばす。
「ちゅーの後は……やっぱりこれだよ、ね。いいよね、しちゃっても。私にぃにぃのこと、大好きだから……にぃにぃにも私のこと、大好きになって欲しいから」
ズボンに手を掛け、躊躇もなく降ろす。驚愕のあまり縮んでいる男性器にそっと手を添え、優しく掴んだ。
「これが、おっきくなるんだよね……ふふっ。どんな風になっちゃうんだろ。ちょっと楽しみ」
「おい、綾香……」
「心配しなくていいよ。ちゃんとできるから。私のメンターが……私をこうしてくれた魔物さんが、教えてくれたんだから」
扇情的なクノイチ衣装からかすかに膨らんだおっぱいをチラ見せして、綾香は俺を刺激する。
単なる子供だと思っていた幼馴染が突然、俺を押し倒している。普段のコスプレと違って、やけに妖艶な服装で俺を勃起させようとしている。妄想めいた光景が欲望を煽り、すぐに男性器は興奮させられてしまった。
「わ、ほんとだ。こんなに膨れるんだ。スゴイねぇ……これを、私の中に入れるんだよね」
「ま、待て、お前そんな……」
「待たないよ。にぃにぃは私のもので、私はにぃにぃのものでしょ。だから、いいんだよ」
ニンジャ装束の裾を持ち上げると、疎らに毛の生えた女性器が見える。薄く面積の少ない衣装の下に下着を着けていない、普段の綾香とはかけ離れた犯罪的な淫らさが衝撃的。
筋状の陰唇から粘液を漏らし、俺の腰を跨いで言った。
「じゃ、いくよ。私の初めて、もらってね」
一方的にそう言って綾香は腰を下ろした。
柔らかい毛が亀頭に触れて少しくすぐったい。膣口から漏れた愛液が熱い。ぬぷり、と先端が飲み込まれ、今まで味わったことのない感覚に襲われる。
「くふっ……入った、ね……」
「あ、綾香……痛く、ないのか?」
「心配してくれるんだ。にぃにぃ優しい……
大丈夫だよ。今の私はニンジャだから。もう子供じゃ、ないんだから」
そう言ってゆっくりと男性器を飲み込んでいく綾香の雰囲気は、女の体を使って男を操るクノイチにも似て妖しい。
子供じゃない、という彼女の言葉に反してその手足は細く、肉付きは良くない。背も低く、尻や胸の発達も明らかに不完全で、小学生と間違われてもおかしくないくらいである。
しかし今の彼女は根本まで咥え込まれてもまだ、自分の上にいるのがあの小さな綾香であることを信じられないくらいだった。
「あ、ふ、これで、全部……じゃあ、動く、よっ……」
止める間もなく綾香は床に膝をついて騎乗位で腰を振りはじめた。
粘ついた膣ヒダが俺の竿に絡みついて締め付ける。持ち主の体格に比例して小さく狭い膣道が男のものに押し広げられて、反発して強く収縮する。自分の手でする時よりもずっと強く抱きしめられて、俺はもう声を出せない。
物も言えないでいるのは犯している綾香の方も同じらしく、動き始めてからずっと静かだ。下唇を強く噛んで頬を染めて、時折荒い息をしている。
体重をかけて女性器の壁を裏筋に押し付けて肉棒を出し入れさせるような前後運動は小柄な綾香に向いているのか、膝に加えて両手も床につき、俺に抱きつくような姿勢をとって騎乗位に没頭している。
そんな体勢をされると、ニンジャ服の下、ノーブラの微乳が見えてしまう。今朝まで全く平坦だったその胸が、よく見るとほんの少し膨らんでいるように思える。皿を伏せたような、慎ましく奥ゆかしいおっぱいの頂点では、これまた小さな乳首が赤く凝っている。
まだまだ未成熟で、繁殖には適しない肉体が不相応に興奮しているというギャップが神経をビリビリ刺激した。
「いっ……!? にぃにぃ、また、おっき……!?」
「あや、か、おれ、もう……!」
「いいよ、ら、らして、そのままなかに……!」
俺とともににわかに上り詰めてきたらしい綾香が舌足らずな口調で中出しをせがむ。
初潮が来ているかどうかも怪しい少女に膣内射精を求められて、俺は止まれない。
自分がロリコンだったなんて思いたくはなかったが、躊躇なく中出しをせがんだあたり、やはりまだこいつ妊娠できる身体じゃないのかな、なんて考えてしまうともう駄目だった。
「出る……!」
「いいよ、はやく、はやく、せいし……! わらひ、に……!」
綾香が細い身体を押し付けてきて服越しに薄い胸が潰れて、同時におまんこがきゅっと締まった時が限界だった。
やっぱり外に出したほうが、と思うより早く俺は射精していた。狭くて熱い少女の胎に白濁を注ぐ。生まれて初めての種付けに、二人共黙って感じ入っていた。
俺と同時に達してくれたのだろうか、綾香はぎゅっとしがみついたまま虚ろな瞳をしている。未発達な肉壷に収まり切らない精液が、繋がったままの会陰を白く染める。床と服まで汚しそうになってもまだ、彼女は離れようとしない。
「ふぅ、ふぅ……すごすぎ。にぃにぃ激し過ぎだよ……」
「……綾香も、気持ちよかったのか?」
「……うん。ナカダシ、こんなにされちゃうんだ。びっくりだよ」
興奮冷めやらぬ調子で、俺とのセックスがいかに良かったかを語られると嬉しいようなくすぐったいような微妙な心持ちだ。
「ね、またしようね。これ、毎日しようね。いいでしょ? にぃにぃも、気持ちよかったんだもんね」
「ああ、そうだな」
反射的に答えて、それから今日告白してきた同級生のことを思い出す。
流された結果とはいえ綾香とこんな関係になってしまった以上やはり告白は断るべきだよな、と思っていると、女ニンジャが意味ありげな微笑を浮かべた。
「大丈夫。心配しないでいいよ。全部、うまくいくから。
私が、にぃにぃも、周りの人も幸せにしてあげるから」
一体何を企んでいるのか知らないが、もうこいつには逆らえないだろう。
嬉しげに身体を擦りつけてくる綾香の矮躯をそっと抱いて、俺はそう思った。
女友達が朝、わざわざ屋根を伝って部屋まで来てくれるというラブコメめいたシチュエーションにあっても俺の心は晴れない。
「うしししし。今日もにぃにぃはお寝坊か! しかたないなぁホント!」
目の前で平坦な胸を誇らしげに反らせて立つ彼女を見れば、その理由は明らかだ。
といっても、別に彼女が物凄い不細工だというわけではない。むしろ、ぱっちりした眼や艶やかな黒髪、儚さすら感じさせる白い肌など、全体的に未発達ながらもなかなかの美少女といってよい。
そんな綾香の印象を一変させるのが、今彼女の着ている服だ。
濃い紫色の浴衣から袖を切り取り、裾を短く詰めたような衣装。腰に巻いた帯には印籠のようなよくわからない小道具がぶら下げてあり、両手には黒い手袋、両足には黒いストッキング。前腕の外側とすねには赤黒い防具のようなものを着けて、コスプレ感を増している。
まさしく、アニメやゲームに登場するクノイチそのもの。綾香の趣味は、ニンジャのコスプレなのだ。
「これぞ忍法、布団返し!」
「……お前なあ。もうそろそろ落ち着いたらどうなんだよ。なんだよ忍法って。ニンジャなんて、実在しないのに」
「……にぃにぃ。歴史は、カイザンされ、インペイされてきたんだよ。シンジツは忘れ去られたんだ。ニンジャ真実が……」
「わかったわかった。着替えるから、出て行ってくれよ」
「はい喜んでー」
ニンジャコスプレ少女を部屋から追い出し、やっと俺は一息つくことが出来た。
朝食を手早く摂り終え、家を出るといつも通り綾香が待っている。いつのまにかニンジャコスプレからセーラー服に着替えてはいるが、言動はまったく変わらない。彼女は俺の後輩でもあるため、毎日一緒に通学することになっている。
「にぃにぃー! 早く行こうよー! もたもたしてたら忍術でオシオキだよ!」
少し舌足らずで、「術」の発音が「ジツ」となってしまっているため、実際以上に幼いアトモスフィアの綾香ともに通学路を歩いていく。血のつながらない相手に兄呼ばわりされる恥ずかしさも、もう慣れっこだ。
「あ、にぃにぃの頭、後ろの毛がハネてるよ。寝ぐせ、直してないじゃない」
「……忘れてた。まあいいや。学校についてから何とかすりゃいいだろ」
「本当、だらしないなあ。そんなじゃダメだよ、もう!」
幼いとはいえ公私の使い分けはできているらしく、制服を着ている時の綾香は少しだけ真面目で、ニンジャプレイもしない。表の、取り繕った顔しか知らない綾香の同級生に、「ニンポを使うぞ! ニンポを使うぞ!」などといってふざけている姿を見せてやりたいものだ。
俺達二人が学校に着くまでの時間は、いつもこんな風に慌ただしく過ぎていくのだ。
その日の夕方。
やはりいつも通り、綾香と一緒に帰ろうかと思っていた時。放課後の教室で突然、同級生の女子から声を掛けられた。
「あ、あの……ちょっと、お時間、いいですか?」
「へ? いや、別に忙しくはないけど」
奥ゆかしい雰囲気の彼女は、クラスの中でも目立たないグループに属している。普段から交流も無い、声を聞くのも稀なその娘が緊張気味に言葉を継ぐ。
「そうですかっ。じゃあ、あの、ちょっと、一緒に来て、もらえませんか……?」
「ん、ま、いいけど」
教室に残っていた他のクラスメイトたちが意味ありげに目配せをしあう。彼女の用事が何なのか、俺にも薄々分かりかけてきていた。
連れて来られたのは体育館裏。人目につかないところまで俺を連れてきた彼女の要件は、やはり交際のお申し込みだった。
今まで余り話したこともない相手だったので、即答はためらわれる。
が、あえて拒むほどの欠点は彼女には見当たらない……どころか、顔立ちもなかなか愛嬌があるし胸は豊満だし、何より今、俯いて下唇を噛んで、真っ赤になって男の返事を待っている様子がいじらしすぎて、冷たく切り捨てることなど到底出来そうにない。
お互いよく知らない間柄で、いきなり恋人同士と言うのもなんだし、まずは友だちから……と言いかけた時。緊張に耐え切れなくなったか、女が不意に顔を上げた。
「す、すいません、突然こんなの、困りますよねっ!?」
「い、いやその……」
「い、いいんですっ! 返事は、その、今すぐじゃなくても……明日、聞かせて下さいっ!」
言うなり、そのまま走り去ってしまった。
即答してやれなかったという罪悪感が重い。ともかく明日だ、明日までじっくり、お互い落ち着こうと思って体育館裏から出ると、目の前に綾香がいた。
「うお、びっくりした。お前ずっとここにいたのか?」
呼びかけにも答えず、凄まじく不機嫌そうな顔の綾香は俺をキッとにらみ、そのまま踵を返す。呼び止める間もなく走り去ってしまったのだ。
「やけに機嫌悪かったな。口も聞かないで、なんだってんだ。
……聞いてたのかな? さっきの。それで嫉妬した、とか……?
いやいや。ニンジャになりきるような子供が、まさかそんな、な……」
短時間にいろいろありすぎて、思考力が働かない。逃げた綾香を追いかけるのはやめて、俺は珍しく一人で帰宅した。
夕食を済ませて、自分の部屋でくつろぐ。
よく考えてみても、今日告白してきた彼女にまつわる良くない記憶や悪い噂などは思い当たらない。ひとまず昼の弁当を一緒に食べるくらいのところから始めて、あわよくばもっと仲良くなろう。
見るからにおとなしそうな女の子が勇気を振り絞って自分を求めたという、それだけでもう俺は最高の気分だった。
しかし、お互いあまり良く知らない相手から告白されるとは。やはりあの娘は、俺を外見で選んだのだろうか。
取り立てて優れたところの無い平凡な顔だと自認していたが、髪型や服装などは毎朝、綾香にチェックしてもらっているおかげでそこそこきちんとできている。
今日彼女に告白されたのも、元をたどれば綾香のおかげかもしれない。このまま首尾よく行って付き合えることになったら、あいつにもお礼を言ったほうがいいだろうか。
にへらぁと気持ち悪い笑みを浮かべながらそんなことを考えていると、部屋の窓を叩くものがある。
これから押し入る家、それも明かりが点いて中に人がいる部屋の窓をわざわざ叩く泥棒などいるはずもない。鍵を開けてやると、果たして綾香が侵入してきた。
夕方会った時の不機嫌そうな様子は、既に無い。
プライベートタイムの彼女は、朝着ていたのとはまた別のニンジャ服に身を包んでいる。蛍光ピンクで縁取られた濃紫色の布は忍ぶ意志を微塵も感じさせない。しかし大胆に露出された太股と脇、そして大きく開かれた胸元から微かに覗く平坦な胸などは綾香の幼さに反して、クノイチと呼ぶにふさわしい色気を放つ。
朝見た服と比べて数段良い布を使っているらしく、派手でありながら安っぽさがない。コスプレというよりニンジャそのものに見えて、すぐにその考えを打ち消した。
「……また、新しい服買ったのか? ちょっと肌を出し過ぎじゃないかそれ」
「にぃにぃ、私さア」
「なに?」
「ニンジャだわ完全に」
言うなり、綾香は俺に飛びかかってきた。
背後、畳の上に仰向けで押し倒される。華奢で幼い女の子が、両肩を掴んで、俺を組み伏せている。
何が起きているのか分からなかった。いつもの様にニンジャごっこでふざけているのだと思いたかったが、細い腕に押さえつけられて身動きが取れない。
年上の男を完全に制しているというのか。同年代の女の子と比べても明らかに小柄で弱々しいこの綾香が、今俺を力で上回っているというのか。
混乱から抜け出せないまま、叫んだ。
「な、なんだこれ……! おい綾香、お前一体……!」
「私ね、ニンジャになったんだよ。実際クノイチになったんだよ。この力、スゴイでしょ?」
「ニンジャ……? なんで、ニンジャ……?」
当惑し続ける俺にぐっと顔を近づける綾香。その瞳が装束と似た暗い紫色に光る。幻覚めいて輝く彼女の目線を拒めない。
「ほら、見て。私の目、光ってるでしょ? 人間の目は、光る? おかしいと思わない? ね、にぃにぃ」
惑わすような彼女の言葉を聞いていると、頭のなかに靄がかかったような感覚に襲われる。
考える力が衰えてきたのを見透かしてか、綾香がにやりと笑う。
抵抗する気力を失った俺から手を離し、ゆっくり語りかけてくる。
「ごめんね。こんな、ムリヤリ。でも、にぃにぃがヨソの女に取られるの、黙って見てるなんて死んでもイヤだし。
だから私のジツで、にぃにぃを私のものにしちゃうね」
非人間的な眼光を放つ綾香は顔をゆっくり近づけてくる。その唇が俺の唇に合わせられるまで顔を背けることはできなかった。
最初はためらいがちに、恐る恐るといった感じだったが一度口と口を触れさせ、舌を差し込んで唾液を味わうと、我慢ならなくなったかのように激しく貪り出した。
もっと欲しいのにそれが叶えられない、いくらキスしても満たされずもっと欲しくなる、そんな勢いで綾香は俺の口内を蹂躙する。
唇の裏や上顎や歯茎を舌で好き放題に舐め回しつつ、綾香はじっと俺の眼を見つめてくる。
今までの、ただ無邪気だった彼女とは全く異なる、何か執念のようなものが感じられる。その目に見られているだけで、俺はキス中であっても目を閉じることができない。
じゅる、ちゅるると唾の音まで鳴らして、じっくりたっぷりディープキスして、やっと綾香は口を離した。
さんざん貪って、しかし彼女は全く満足していない様子。腰の帯を緩めて胸元を少しはだけて、俺の腰に手を伸ばす。
「ちゅーの後は……やっぱりこれだよ、ね。いいよね、しちゃっても。私にぃにぃのこと、大好きだから……にぃにぃにも私のこと、大好きになって欲しいから」
ズボンに手を掛け、躊躇もなく降ろす。驚愕のあまり縮んでいる男性器にそっと手を添え、優しく掴んだ。
「これが、おっきくなるんだよね……ふふっ。どんな風になっちゃうんだろ。ちょっと楽しみ」
「おい、綾香……」
「心配しなくていいよ。ちゃんとできるから。私のメンターが……私をこうしてくれた魔物さんが、教えてくれたんだから」
扇情的なクノイチ衣装からかすかに膨らんだおっぱいをチラ見せして、綾香は俺を刺激する。
単なる子供だと思っていた幼馴染が突然、俺を押し倒している。普段のコスプレと違って、やけに妖艶な服装で俺を勃起させようとしている。妄想めいた光景が欲望を煽り、すぐに男性器は興奮させられてしまった。
「わ、ほんとだ。こんなに膨れるんだ。スゴイねぇ……これを、私の中に入れるんだよね」
「ま、待て、お前そんな……」
「待たないよ。にぃにぃは私のもので、私はにぃにぃのものでしょ。だから、いいんだよ」
ニンジャ装束の裾を持ち上げると、疎らに毛の生えた女性器が見える。薄く面積の少ない衣装の下に下着を着けていない、普段の綾香とはかけ離れた犯罪的な淫らさが衝撃的。
筋状の陰唇から粘液を漏らし、俺の腰を跨いで言った。
「じゃ、いくよ。私の初めて、もらってね」
一方的にそう言って綾香は腰を下ろした。
柔らかい毛が亀頭に触れて少しくすぐったい。膣口から漏れた愛液が熱い。ぬぷり、と先端が飲み込まれ、今まで味わったことのない感覚に襲われる。
「くふっ……入った、ね……」
「あ、綾香……痛く、ないのか?」
「心配してくれるんだ。にぃにぃ優しい……
大丈夫だよ。今の私はニンジャだから。もう子供じゃ、ないんだから」
そう言ってゆっくりと男性器を飲み込んでいく綾香の雰囲気は、女の体を使って男を操るクノイチにも似て妖しい。
子供じゃない、という彼女の言葉に反してその手足は細く、肉付きは良くない。背も低く、尻や胸の発達も明らかに不完全で、小学生と間違われてもおかしくないくらいである。
しかし今の彼女は根本まで咥え込まれてもまだ、自分の上にいるのがあの小さな綾香であることを信じられないくらいだった。
「あ、ふ、これで、全部……じゃあ、動く、よっ……」
止める間もなく綾香は床に膝をついて騎乗位で腰を振りはじめた。
粘ついた膣ヒダが俺の竿に絡みついて締め付ける。持ち主の体格に比例して小さく狭い膣道が男のものに押し広げられて、反発して強く収縮する。自分の手でする時よりもずっと強く抱きしめられて、俺はもう声を出せない。
物も言えないでいるのは犯している綾香の方も同じらしく、動き始めてからずっと静かだ。下唇を強く噛んで頬を染めて、時折荒い息をしている。
体重をかけて女性器の壁を裏筋に押し付けて肉棒を出し入れさせるような前後運動は小柄な綾香に向いているのか、膝に加えて両手も床につき、俺に抱きつくような姿勢をとって騎乗位に没頭している。
そんな体勢をされると、ニンジャ服の下、ノーブラの微乳が見えてしまう。今朝まで全く平坦だったその胸が、よく見るとほんの少し膨らんでいるように思える。皿を伏せたような、慎ましく奥ゆかしいおっぱいの頂点では、これまた小さな乳首が赤く凝っている。
まだまだ未成熟で、繁殖には適しない肉体が不相応に興奮しているというギャップが神経をビリビリ刺激した。
「いっ……!? にぃにぃ、また、おっき……!?」
「あや、か、おれ、もう……!」
「いいよ、ら、らして、そのままなかに……!」
俺とともににわかに上り詰めてきたらしい綾香が舌足らずな口調で中出しをせがむ。
初潮が来ているかどうかも怪しい少女に膣内射精を求められて、俺は止まれない。
自分がロリコンだったなんて思いたくはなかったが、躊躇なく中出しをせがんだあたり、やはりまだこいつ妊娠できる身体じゃないのかな、なんて考えてしまうともう駄目だった。
「出る……!」
「いいよ、はやく、はやく、せいし……! わらひ、に……!」
綾香が細い身体を押し付けてきて服越しに薄い胸が潰れて、同時におまんこがきゅっと締まった時が限界だった。
やっぱり外に出したほうが、と思うより早く俺は射精していた。狭くて熱い少女の胎に白濁を注ぐ。生まれて初めての種付けに、二人共黙って感じ入っていた。
俺と同時に達してくれたのだろうか、綾香はぎゅっとしがみついたまま虚ろな瞳をしている。未発達な肉壷に収まり切らない精液が、繋がったままの会陰を白く染める。床と服まで汚しそうになってもまだ、彼女は離れようとしない。
「ふぅ、ふぅ……すごすぎ。にぃにぃ激し過ぎだよ……」
「……綾香も、気持ちよかったのか?」
「……うん。ナカダシ、こんなにされちゃうんだ。びっくりだよ」
興奮冷めやらぬ調子で、俺とのセックスがいかに良かったかを語られると嬉しいようなくすぐったいような微妙な心持ちだ。
「ね、またしようね。これ、毎日しようね。いいでしょ? にぃにぃも、気持ちよかったんだもんね」
「ああ、そうだな」
反射的に答えて、それから今日告白してきた同級生のことを思い出す。
流された結果とはいえ綾香とこんな関係になってしまった以上やはり告白は断るべきだよな、と思っていると、女ニンジャが意味ありげな微笑を浮かべた。
「大丈夫。心配しないでいいよ。全部、うまくいくから。
私が、にぃにぃも、周りの人も幸せにしてあげるから」
一体何を企んでいるのか知らないが、もうこいつには逆らえないだろう。
嬉しげに身体を擦りつけてくる綾香の矮躯をそっと抱いて、俺はそう思った。
13/03/12 01:41更新 / ナシ・アジフ