Comfortably Numb
人間の女が魔物になるのは、ここのような親魔物国では時々聞かれる話だ。
だがしかし、男が魔物娘になるというのはちょっと俄には信じ難い。
「……で、久しぶりにその寿司屋に行ってみたんだけど、いつの間にか閉店しちゃってたんだよ。
悪い噂でも立ったのかな?」
まあ信じ難いと言っても、すぐ近くにこうして実例が歩いているのだから信じる以外無いのだが。
「……? どうしたの? ファラウィ、そんな見つめないでよ。照れるじゃないか……」
「ああ、すいません、先輩」
恥ずかしげに顔を背けたこの人が、ベスティアリ先輩。
ついこの間までは確かに男性だった筈なのに、一体どういうわけかサキュバスになってしまったお人だ。
魔界や魔物娘の世界ってのは割りと何でもありな雰囲気だが、流石に昨日まで男だった人がある日突然女になったなんてのは、人間の男には刺激が強すぎた。
ベスティアリ先輩の周りの人もどう接していいか分からず、遠巻きにしている感じらしい。このまま先輩を放っておけば、単に変化に戸惑っているだけの周囲の反応をいじめか何かと勘違いして、見た目だけヤンキーなぼっち転校生の舎弟になってしまいかねない。
少し年が離れている俺のような人間くらいは、せめて今までと変わらず接してあげるべきだと思っているのだ。
「そういえば、もうそろそろ夏本番だねえ」
「はい。今日も暑かったですねー」
「ねえ。 ……うーん。ファラウィ、ちょっと君、色白過ぎじゃない? 海とか山とか行くのに、そんなじゃだめだよ」
「え、そうですか? もっと焼くべきですかね」
「そうだよ! 今日はいい天気だし、僕の家へおいでよ! 屋上で、焼いて行くと良い。うん。名案だ」
これは妙なことになった。
先輩が女性化する前は何度も家にお邪魔したこともあったんだが、女になってしまってからは一度も無い。
男としてのベスティアリ先輩を知っている身としては、こういうことを言うと非常に複雑な気分にさせられるのだが、今の先輩は相当可愛い。
元々線が細くて女顔だったということもあるんだろうが、肌の白さとか髪の艶、肩幅の小ささや鎖骨の細さなど、細かい部分が少しづつ華奢に、たおやかになっただけで、これほどまでに女性として魅力的になってしまうとは。
顔は確かに俺が前から知っている男としての先輩なのだが、同時にそれが可憐な女性としても映る。長い睫毛を伏せた物憂げな表情など、そこらの女性を遙かに上回るほど艶めかしい。
近頃急速に花開いてきたベスティアリ先輩の女らしさを目の当たりにする度、心の奥がざわつき、男として扱えば良いのか女として扱えば良いのか、酷く戸惑ってしまうのだ。
いや、ここで俺が躊躇ってしまったら、先輩は完全に一人ぼっちになってしまうじゃないか。せめて周りの人が先輩に慣れて、普通に接してくれるようになるまで、誰かが支えになってあげなければ。
葛藤を隠して、できるだけ気負いなく、俺は答えた。
「ああー、いいですね。お願いします」
俺の返答に気を良くしたらしい先輩は、見るからに嬉しげに自分の家まで俺を案内して、既にお互い見知った筈の宅を指さし
「ここ、ここ」
などと言ってみせるのだった。
屋上に上がらせてもらって、素肌を晒して甲羅干しをする。仮にも女性の前で服を脱ぐのは少し気が引けたが、ひどく楽しげな先輩に急かされてしまっては仕方ない。
ベスティアリ先輩まで水着姿になったときは流石に狼狽したが、俺一人が先輩の見ている前で半裸になるというのも、それはそれで辛いものがある。選ぶ余地も無く、俺は先輩と二人、屋上に寝ころんでいたのだが。
「サンオイルを塗ってあげよう」
「い、いやそんなの悪いですよ」
「気にしないで! 気にしないでよ! さあさ、背中を出して」
否応なくうつ伏せにされ、ベスティアリ先輩直々にオイルを塗ってもらえることになってしまった。
強い太陽の光で肌がじりじり焼ける。熱く火照った背中を、ぬるぬるした先輩の手が優しく撫で、オイルを摺り込んでいく。
やはり女性らしく、細くて白い指で肌を弄られていると、なんだか妖しい気持ちになってしまう。自分の中で先輩との正しい距離を未だ把握しきれていないこの状況で、欲望だけを喚起されるのは酷く不安な心持ちだった。
「ファラウィって、色は白いけど……体は結構がっちりしているよね」
「いえ、そんな。まだまだですよ」
「いやいや、これはなかなかだよ。背筋が硬くって、セクシィだ」
「!!」
「でも肩の筋肉なんかは、ちょっと硬すぎかな。疲れが溜まっているよ、ねえ」
急に自分の体を褒められ、一瞬思考が停止してしまった。先輩は今、セクシーと言ったが……俺のことを、男として見ているのだろうか。いや確かに俺は男なんだが、女と化した先輩にそう見られている、ということは……つまり、どういうことなのだ。
驚き戸惑う俺を放って、ベスティアリ先輩はさっさと俺の肌へオイルを塗り終えた。膝立ちの体勢からうつ伏せになり、満面の笑みでこちらにサンオイルの瓶を手渡す。
「今度は僕にお願いね、ファラウィ♪」
試練の時は、まだまだ始まったばかりだということを、俺はこの時始めて悟った。
事あるごとに
「ああんっ……!」
とか、
「あハっ、きもちい……」
とか喘ぐ先輩に散々気を散らされながら、どうにかご奉仕を終えた俺。炎天下に出続けていたことで、かなりの汗をかいてしまっていた。
脱水状態に陥りつつある俺を見て気を利かせてくれたのか、先輩は家の中から飲み物を持ってきてくれた。
細かい氷をたくさん浮かべた、透き通った飲み物がグラスの中にある。砂糖だろうか、白っぽい粉をその中にサッーと加え、先輩は俺に水分補給を促した。
「おまたせ! アイスティーしかなかったけどいいかな?」
「ありがとうございます。頂きます」
受け取った薄茶色の飲料を、渇きに任せて一気に呷る。さっき砂糖のようなものを足していた割に、甘さは控えめでお茶としての味が前面に出てきている。水分の不足した身体には、これくらいのほうが飲みやすく、ありがたかった。
グラスの中の紅茶を飲み干し、ふっと一息吐いた瞬間。
急に視界が揺れ、足元が覚束なくなった。
「……? あ、れ? 俺……」
「おっ、大丈夫? 大丈夫?」
心配して差しのべられたベスティアリ先輩の手を取ることもできず、俺は倒れ伏す。
身体全体に強い衝撃を感じると同時に、俺は意識を手放した。
じゅぶっ、じゅぷっ、ちゅるるるる。
朦朧とした意識に淫らな水音が響く。音に合わせて、何か柔らかいものが体の表面を這うような感覚が起こり、次いで下半身からの強い快楽が襲う。
ちゅるっ、と一際強く吸引されるような激しい触感で、一気に覚醒した。
「な! せ、先輩!」
「はぁむっ……んじゅ、あ、ファラウィ、起きちゃった……? んむむっ……」
暗く、窓のない小さな部屋。ベッドに寝かされた俺の脚の間に跪き、ベスティアリ先輩が俺のものを美味しそうに頬張っていた。
小さなお口でなぜか勃起しきっている俺の陰茎を至極楽しげに咥え、唾を垂らしてちゅるちゅる言わせる。響いていた音の原因はこれだったのか、などと納得している場合ではない。
「ちょっと先輩! 何してるんですか!! やめてくださいよ本当に!」
幸い、手足は拘束されていない。たまらず逃れようとすると、先輩は俺の男性器をギュッと掴んで言った。
「暴れないで! 暴れないでよ!」
先輩は明らかに暴走している。目がマジだ。
といっても、所詮は女性。腕力で競り負けるはずは無い、と踏ん張ると、突然先輩は手に持った布にトントントンと小瓶から液体を垂らした。と思うと、不意に薬液の染みた布を俺の顔に押し付けてきた。
迂闊にも吸い込んでしまったその薬剤は軽い睡眠薬のようなものだったのだろうか、一息吸っただけで手足の力が抜け、抗う力も失せてしまった。背後の布団に倒れこむ俺を見下ろして、先輩は切実な表情で叫んだ。
「君のことが好きだったんだよ!」
「うもうっ……」
ああ、やっぱり。何となく腑に落ちたような感じの俺を跨いで、先輩は腰を下ろしてきた。
「君のために、僕頑張ったんだよ……女に、なったんだよ……? だから僕の処女、貰ってよ、ね?」
ずぶずぶと、先輩の女性器は唾でべとべとな俺の肉棒を呑み込んでいった。
処女という言葉に偽りはないらしく、異様なほどのきつさを保った膣が侵入者を迎える。俺のをしゃぶって発情していたのか、濡れきったまんこは生まれて初めての相手の躊躇い無く貪る。奥まで飲み込み、股間と股間をぴったり合わせる体勢になると、先輩は膝を突いて猛然と腰を使いだした。
「んアっ、あッ、す、すごい、ファラウィのちんぽ……僕のナカでゴリゴリいって、あつぅい……」
「せ、せんぱ……」
「ね、ファラウィも気持ちいい? 気持ち良くなってよ……ぼくのおまんこで、イきすぎちゃってよぉ……」
ベスティアリ先輩に騎乗位で犯され、俺は混乱の極みに達していた。
全体的に肉付きの少ない、たおやかな美少女が娼婦もかくやと言った淫気を放ちながら俺の上でガンガン腰を振り、男性器を貪っている。しかもその美少女はかつて俺がよく見知っていた男の先輩なのだ。頭上の強姦者と俺の記憶が一致せず、ここがだれの家で、今俺をレイプしているのは一体誰か、ということすら曖昧な感覚に陥る。
今、その狭い女性器で俺を気持ち良くしてくれている女性が先輩だと認識してしまうと、俺の中の重要な何かが失われてしまうような気がしたのだ。
元男の魔物娘にイかされ、それを当然のものとして受け入れてしまえば、俺はもう元いた世界に帰れなくなるような、そんな恐怖があった。
組み伏せた俺の逡巡を悟ったか、先輩が腰使いを速めた。
高速で摩擦する膣壁は、薬よりも強力に俺の心を麻痺させる。既に大量の我慢汁を漏らしている俺を陥落寸前と見たか、一気にスパートをかけピストンをぶち込む。もう駄目だ、と忍耐力が折れかけた瞬間、ベスティアリ先輩は俺の目を見据えて叫んだ。
「ちょうだい、膣内にっ!! 僕の、アルプのおまんこに、ザーメン出してよぉっ!!」
「んあぁっ!」
ずぶっ、と子宮口が鈴口に触れるくらい深く肉茎が女陰に突きこまれた瞬間、俺は屈した。
どくんどくんと肉棒が暖かい膣の中で脈動し、白濁を撒き散らす。胎内で暴れるそれを感じながら、焦点の合わない眼をした先輩は、恍惚として何か意味のわからないことをつぶやいていた。
「あ……はは……すごいや、サキュバス……淫魔って、こんななんだ……これ、これ……」
満足げな先輩とは裏腹に、俺は何か取り返しのつかないことをしてしまったような気分でいた。
こうしてセックスをして、さらには膣内射精まで決めてしまった相手は、あの先輩なのだ。俺が何年も前から知っている先輩なのだ。
今はれっきとした女なのだし、男性器が付いているわけでもないのだから同性愛には当たらない、のだが……理屈とは無関係に揺れ動くのが感情だ。
何より、あの騎乗位搾性で俺が確かに快感を感じていたというのは、疑いようのない事実だ。
元男に犯されてたっぷり中出ししてしまう俺は、異常な人間なのではないのだろうか。そんな得体の知れない恐怖に震えていると、いつの間にか俺のものを股から抜いていた先輩が、仰向けに寝転んで誘ってきた。
「ねえ、ファラウィもさっき、気持ち良かったでしょ? ……まだまだ、物足りないんじゃない? 僕はいつでも準備おっけーだよ。ファラウィならこの体、いつでも好きなだけ、使ってくれていいんだよ……?」
胸もお尻も小さい、小柄な美少女のそのあまりに淫らすぎる誘惑に、俺の中の何かが吹っ切れた。がばりとのしかかり、正常位の体勢で先輩の両足を抱える。
「……いいんですね、ベスティアリ先輩」
「うん。来て、ファラウィ」
男とか女とか、もう、どうでもよくなっていた。
眼前の美味をただ味わい尽くせばそれでよいと囁く声に、俺は身を任せたのだ。
淫液と本気汁と精液でぐっちゃぐちゃになった先輩のあそこは、さっきよりも容易く俺の肉棒を受け入れる。腰を少し進めるごとに、逆流してきたザーメンが溢れ二人の股間を白く汚す。じっくり入れ進め、根元まで挿入するころにはもう、二人ともたまらなくなっていた。
ベッドのスプリングによる反発を使い、抱えた先輩を押し倒すようにしながら俺をピストン運動を打ち込む。男のものを乱暴に出し入れされ、美少女先輩は甲高い嬌声を挙げた。
「ひゃ、い、やぁァ、す、すごいよファラウィ、こんないきなり……」
「すいません先輩! でも、先輩が可愛過ぎて、俺もう駄目です……もっと、先輩とヤりたい……!!」
「いいよ、いっぱい犯して! ファラウィになら、何されたって……う、んんっ!」
推定Bカップの可愛い可愛い女の子にこうまで言われては、もう止まりようがない。先程までの躊躇や葛藤を綺麗さっぱり忘れ去り、俺はただ先輩の求めるまま、本能の叫ぶままに美乳サキュバスを犯した。
がしがしと腰を前後させ、小さい肉筒を俺の陰茎の形に合わせて変形させるがごとく犯しながら、俺は眼下の小振りなおっぱいに目を奪われた。標準よりもだいぶ小さめなそれはしかし、確かな柔らかさでもって俺がちんこを一回付きこむ度にいやらしくプルプル震え、揺れる。右手を伸ばし、赤い乳首を掌に捕えるようにしてギュッと揉むと、先輩の喘ぎには泣き声すら混じるようになった。
「あああいいっ!! おっぱい、おっぱいがすごい、いいっ!! もっと揉んで、ぐちゃぐちゃにしてぇっ!!」
「や、やらけー……先輩のムネ、ふわっふわだ……」
「あ、ああああ、ああ……あああっ!! すご、また僕、イって……!!」
片手に十分収まる微乳を揉みしだかれ、先輩は女の快楽に溺れる。俺もまた、そんな淫らすぎる彼女の有様に、今まで持っていたしがらみも何もかも砕かれていったのだった。
男とか女とか、適切な距離とか、ばかばかしい。こんな可愛い女の子が俺を求めて狂ってくれるのだから……何も抗う必要はない。何も躊躇う必要はない。彼女の誘うまま、二人楽しく交わればいい。そうに違いない。
胸とまんこを同時に攻められ、先輩はほとんど行きっぱなしの状態にあるらしかった。
突き挿す膣からは白く濁った本気汁が溢れ、粘膜同士の摩擦を限りなく下げている。透明で量の多い、これは尿ではなく潮だろうか、独特の匂いを放つ淫らな汁も、蛇口の壊れた水道のごとくぴしゃぴしゃと果てしなく溢れてくる。
可愛く勃起した先輩の乳首を指で挟んで責めると、またまんこの締まりが増し、だらしなくエッチな液体が漏れだした。何十回目かのピストンでいよいよ、俺も飢えた女性器に耐え切れなくなってきた。終わりを意識しながら、うつろな目で快楽に翻弄される先輩に問うた。
「先輩、俺も、もうそろそろ駄目です! 中か、外か、何処に出して欲しいですか!?」
「む、胸……胸にかけて、胸にっ! 僕のおっぱい、ファラウィの濃くておいしーザーメンで、汚してっ!」
「はいっ……!」
仰せのとおりに、もう耐え切れない、となる直前、俺は肉棒を抜いた。名残惜しげにひくつくおまんこを跨ぎ、欲望を解放すると、一回目に劣らぬ量の精子が先輩の薄い胸の上に降り注いだ。
熱い子種汁が、女性の証に降り注ぐ。女の象徴をザーメンでドロドロにされて、先輩はひどく満足げだった。
一通り射精し終わり、下半身に続き上半身まで俺の精液塗れになってしまったベスティアリ先輩は、目を閉じて口をとんがらせた。
女性経験の少ない俺でも、これくらいは理解できる。先輩に覆いかぶさるようにして、唇と唇を合わせお互いの唾液を啜り合う。
きっかけは、まあ、いろいろとあれだったが、今確かに俺たちは、幸せだった。
だがしかし、男が魔物娘になるというのはちょっと俄には信じ難い。
「……で、久しぶりにその寿司屋に行ってみたんだけど、いつの間にか閉店しちゃってたんだよ。
悪い噂でも立ったのかな?」
まあ信じ難いと言っても、すぐ近くにこうして実例が歩いているのだから信じる以外無いのだが。
「……? どうしたの? ファラウィ、そんな見つめないでよ。照れるじゃないか……」
「ああ、すいません、先輩」
恥ずかしげに顔を背けたこの人が、ベスティアリ先輩。
ついこの間までは確かに男性だった筈なのに、一体どういうわけかサキュバスになってしまったお人だ。
魔界や魔物娘の世界ってのは割りと何でもありな雰囲気だが、流石に昨日まで男だった人がある日突然女になったなんてのは、人間の男には刺激が強すぎた。
ベスティアリ先輩の周りの人もどう接していいか分からず、遠巻きにしている感じらしい。このまま先輩を放っておけば、単に変化に戸惑っているだけの周囲の反応をいじめか何かと勘違いして、見た目だけヤンキーなぼっち転校生の舎弟になってしまいかねない。
少し年が離れている俺のような人間くらいは、せめて今までと変わらず接してあげるべきだと思っているのだ。
「そういえば、もうそろそろ夏本番だねえ」
「はい。今日も暑かったですねー」
「ねえ。 ……うーん。ファラウィ、ちょっと君、色白過ぎじゃない? 海とか山とか行くのに、そんなじゃだめだよ」
「え、そうですか? もっと焼くべきですかね」
「そうだよ! 今日はいい天気だし、僕の家へおいでよ! 屋上で、焼いて行くと良い。うん。名案だ」
これは妙なことになった。
先輩が女性化する前は何度も家にお邪魔したこともあったんだが、女になってしまってからは一度も無い。
男としてのベスティアリ先輩を知っている身としては、こういうことを言うと非常に複雑な気分にさせられるのだが、今の先輩は相当可愛い。
元々線が細くて女顔だったということもあるんだろうが、肌の白さとか髪の艶、肩幅の小ささや鎖骨の細さなど、細かい部分が少しづつ華奢に、たおやかになっただけで、これほどまでに女性として魅力的になってしまうとは。
顔は確かに俺が前から知っている男としての先輩なのだが、同時にそれが可憐な女性としても映る。長い睫毛を伏せた物憂げな表情など、そこらの女性を遙かに上回るほど艶めかしい。
近頃急速に花開いてきたベスティアリ先輩の女らしさを目の当たりにする度、心の奥がざわつき、男として扱えば良いのか女として扱えば良いのか、酷く戸惑ってしまうのだ。
いや、ここで俺が躊躇ってしまったら、先輩は完全に一人ぼっちになってしまうじゃないか。せめて周りの人が先輩に慣れて、普通に接してくれるようになるまで、誰かが支えになってあげなければ。
葛藤を隠して、できるだけ気負いなく、俺は答えた。
「ああー、いいですね。お願いします」
俺の返答に気を良くしたらしい先輩は、見るからに嬉しげに自分の家まで俺を案内して、既にお互い見知った筈の宅を指さし
「ここ、ここ」
などと言ってみせるのだった。
屋上に上がらせてもらって、素肌を晒して甲羅干しをする。仮にも女性の前で服を脱ぐのは少し気が引けたが、ひどく楽しげな先輩に急かされてしまっては仕方ない。
ベスティアリ先輩まで水着姿になったときは流石に狼狽したが、俺一人が先輩の見ている前で半裸になるというのも、それはそれで辛いものがある。選ぶ余地も無く、俺は先輩と二人、屋上に寝ころんでいたのだが。
「サンオイルを塗ってあげよう」
「い、いやそんなの悪いですよ」
「気にしないで! 気にしないでよ! さあさ、背中を出して」
否応なくうつ伏せにされ、ベスティアリ先輩直々にオイルを塗ってもらえることになってしまった。
強い太陽の光で肌がじりじり焼ける。熱く火照った背中を、ぬるぬるした先輩の手が優しく撫で、オイルを摺り込んでいく。
やはり女性らしく、細くて白い指で肌を弄られていると、なんだか妖しい気持ちになってしまう。自分の中で先輩との正しい距離を未だ把握しきれていないこの状況で、欲望だけを喚起されるのは酷く不安な心持ちだった。
「ファラウィって、色は白いけど……体は結構がっちりしているよね」
「いえ、そんな。まだまだですよ」
「いやいや、これはなかなかだよ。背筋が硬くって、セクシィだ」
「!!」
「でも肩の筋肉なんかは、ちょっと硬すぎかな。疲れが溜まっているよ、ねえ」
急に自分の体を褒められ、一瞬思考が停止してしまった。先輩は今、セクシーと言ったが……俺のことを、男として見ているのだろうか。いや確かに俺は男なんだが、女と化した先輩にそう見られている、ということは……つまり、どういうことなのだ。
驚き戸惑う俺を放って、ベスティアリ先輩はさっさと俺の肌へオイルを塗り終えた。膝立ちの体勢からうつ伏せになり、満面の笑みでこちらにサンオイルの瓶を手渡す。
「今度は僕にお願いね、ファラウィ♪」
試練の時は、まだまだ始まったばかりだということを、俺はこの時始めて悟った。
事あるごとに
「ああんっ……!」
とか、
「あハっ、きもちい……」
とか喘ぐ先輩に散々気を散らされながら、どうにかご奉仕を終えた俺。炎天下に出続けていたことで、かなりの汗をかいてしまっていた。
脱水状態に陥りつつある俺を見て気を利かせてくれたのか、先輩は家の中から飲み物を持ってきてくれた。
細かい氷をたくさん浮かべた、透き通った飲み物がグラスの中にある。砂糖だろうか、白っぽい粉をその中にサッーと加え、先輩は俺に水分補給を促した。
「おまたせ! アイスティーしかなかったけどいいかな?」
「ありがとうございます。頂きます」
受け取った薄茶色の飲料を、渇きに任せて一気に呷る。さっき砂糖のようなものを足していた割に、甘さは控えめでお茶としての味が前面に出てきている。水分の不足した身体には、これくらいのほうが飲みやすく、ありがたかった。
グラスの中の紅茶を飲み干し、ふっと一息吐いた瞬間。
急に視界が揺れ、足元が覚束なくなった。
「……? あ、れ? 俺……」
「おっ、大丈夫? 大丈夫?」
心配して差しのべられたベスティアリ先輩の手を取ることもできず、俺は倒れ伏す。
身体全体に強い衝撃を感じると同時に、俺は意識を手放した。
じゅぶっ、じゅぷっ、ちゅるるるる。
朦朧とした意識に淫らな水音が響く。音に合わせて、何か柔らかいものが体の表面を這うような感覚が起こり、次いで下半身からの強い快楽が襲う。
ちゅるっ、と一際強く吸引されるような激しい触感で、一気に覚醒した。
「な! せ、先輩!」
「はぁむっ……んじゅ、あ、ファラウィ、起きちゃった……? んむむっ……」
暗く、窓のない小さな部屋。ベッドに寝かされた俺の脚の間に跪き、ベスティアリ先輩が俺のものを美味しそうに頬張っていた。
小さなお口でなぜか勃起しきっている俺の陰茎を至極楽しげに咥え、唾を垂らしてちゅるちゅる言わせる。響いていた音の原因はこれだったのか、などと納得している場合ではない。
「ちょっと先輩! 何してるんですか!! やめてくださいよ本当に!」
幸い、手足は拘束されていない。たまらず逃れようとすると、先輩は俺の男性器をギュッと掴んで言った。
「暴れないで! 暴れないでよ!」
先輩は明らかに暴走している。目がマジだ。
といっても、所詮は女性。腕力で競り負けるはずは無い、と踏ん張ると、突然先輩は手に持った布にトントントンと小瓶から液体を垂らした。と思うと、不意に薬液の染みた布を俺の顔に押し付けてきた。
迂闊にも吸い込んでしまったその薬剤は軽い睡眠薬のようなものだったのだろうか、一息吸っただけで手足の力が抜け、抗う力も失せてしまった。背後の布団に倒れこむ俺を見下ろして、先輩は切実な表情で叫んだ。
「君のことが好きだったんだよ!」
「うもうっ……」
ああ、やっぱり。何となく腑に落ちたような感じの俺を跨いで、先輩は腰を下ろしてきた。
「君のために、僕頑張ったんだよ……女に、なったんだよ……? だから僕の処女、貰ってよ、ね?」
ずぶずぶと、先輩の女性器は唾でべとべとな俺の肉棒を呑み込んでいった。
処女という言葉に偽りはないらしく、異様なほどのきつさを保った膣が侵入者を迎える。俺のをしゃぶって発情していたのか、濡れきったまんこは生まれて初めての相手の躊躇い無く貪る。奥まで飲み込み、股間と股間をぴったり合わせる体勢になると、先輩は膝を突いて猛然と腰を使いだした。
「んアっ、あッ、す、すごい、ファラウィのちんぽ……僕のナカでゴリゴリいって、あつぅい……」
「せ、せんぱ……」
「ね、ファラウィも気持ちいい? 気持ち良くなってよ……ぼくのおまんこで、イきすぎちゃってよぉ……」
ベスティアリ先輩に騎乗位で犯され、俺は混乱の極みに達していた。
全体的に肉付きの少ない、たおやかな美少女が娼婦もかくやと言った淫気を放ちながら俺の上でガンガン腰を振り、男性器を貪っている。しかもその美少女はかつて俺がよく見知っていた男の先輩なのだ。頭上の強姦者と俺の記憶が一致せず、ここがだれの家で、今俺をレイプしているのは一体誰か、ということすら曖昧な感覚に陥る。
今、その狭い女性器で俺を気持ち良くしてくれている女性が先輩だと認識してしまうと、俺の中の重要な何かが失われてしまうような気がしたのだ。
元男の魔物娘にイかされ、それを当然のものとして受け入れてしまえば、俺はもう元いた世界に帰れなくなるような、そんな恐怖があった。
組み伏せた俺の逡巡を悟ったか、先輩が腰使いを速めた。
高速で摩擦する膣壁は、薬よりも強力に俺の心を麻痺させる。既に大量の我慢汁を漏らしている俺を陥落寸前と見たか、一気にスパートをかけピストンをぶち込む。もう駄目だ、と忍耐力が折れかけた瞬間、ベスティアリ先輩は俺の目を見据えて叫んだ。
「ちょうだい、膣内にっ!! 僕の、アルプのおまんこに、ザーメン出してよぉっ!!」
「んあぁっ!」
ずぶっ、と子宮口が鈴口に触れるくらい深く肉茎が女陰に突きこまれた瞬間、俺は屈した。
どくんどくんと肉棒が暖かい膣の中で脈動し、白濁を撒き散らす。胎内で暴れるそれを感じながら、焦点の合わない眼をした先輩は、恍惚として何か意味のわからないことをつぶやいていた。
「あ……はは……すごいや、サキュバス……淫魔って、こんななんだ……これ、これ……」
満足げな先輩とは裏腹に、俺は何か取り返しのつかないことをしてしまったような気分でいた。
こうしてセックスをして、さらには膣内射精まで決めてしまった相手は、あの先輩なのだ。俺が何年も前から知っている先輩なのだ。
今はれっきとした女なのだし、男性器が付いているわけでもないのだから同性愛には当たらない、のだが……理屈とは無関係に揺れ動くのが感情だ。
何より、あの騎乗位搾性で俺が確かに快感を感じていたというのは、疑いようのない事実だ。
元男に犯されてたっぷり中出ししてしまう俺は、異常な人間なのではないのだろうか。そんな得体の知れない恐怖に震えていると、いつの間にか俺のものを股から抜いていた先輩が、仰向けに寝転んで誘ってきた。
「ねえ、ファラウィもさっき、気持ち良かったでしょ? ……まだまだ、物足りないんじゃない? 僕はいつでも準備おっけーだよ。ファラウィならこの体、いつでも好きなだけ、使ってくれていいんだよ……?」
胸もお尻も小さい、小柄な美少女のそのあまりに淫らすぎる誘惑に、俺の中の何かが吹っ切れた。がばりとのしかかり、正常位の体勢で先輩の両足を抱える。
「……いいんですね、ベスティアリ先輩」
「うん。来て、ファラウィ」
男とか女とか、もう、どうでもよくなっていた。
眼前の美味をただ味わい尽くせばそれでよいと囁く声に、俺は身を任せたのだ。
淫液と本気汁と精液でぐっちゃぐちゃになった先輩のあそこは、さっきよりも容易く俺の肉棒を受け入れる。腰を少し進めるごとに、逆流してきたザーメンが溢れ二人の股間を白く汚す。じっくり入れ進め、根元まで挿入するころにはもう、二人ともたまらなくなっていた。
ベッドのスプリングによる反発を使い、抱えた先輩を押し倒すようにしながら俺をピストン運動を打ち込む。男のものを乱暴に出し入れされ、美少女先輩は甲高い嬌声を挙げた。
「ひゃ、い、やぁァ、す、すごいよファラウィ、こんないきなり……」
「すいません先輩! でも、先輩が可愛過ぎて、俺もう駄目です……もっと、先輩とヤりたい……!!」
「いいよ、いっぱい犯して! ファラウィになら、何されたって……う、んんっ!」
推定Bカップの可愛い可愛い女の子にこうまで言われては、もう止まりようがない。先程までの躊躇や葛藤を綺麗さっぱり忘れ去り、俺はただ先輩の求めるまま、本能の叫ぶままに美乳サキュバスを犯した。
がしがしと腰を前後させ、小さい肉筒を俺の陰茎の形に合わせて変形させるがごとく犯しながら、俺は眼下の小振りなおっぱいに目を奪われた。標準よりもだいぶ小さめなそれはしかし、確かな柔らかさでもって俺がちんこを一回付きこむ度にいやらしくプルプル震え、揺れる。右手を伸ばし、赤い乳首を掌に捕えるようにしてギュッと揉むと、先輩の喘ぎには泣き声すら混じるようになった。
「あああいいっ!! おっぱい、おっぱいがすごい、いいっ!! もっと揉んで、ぐちゃぐちゃにしてぇっ!!」
「や、やらけー……先輩のムネ、ふわっふわだ……」
「あ、ああああ、ああ……あああっ!! すご、また僕、イって……!!」
片手に十分収まる微乳を揉みしだかれ、先輩は女の快楽に溺れる。俺もまた、そんな淫らすぎる彼女の有様に、今まで持っていたしがらみも何もかも砕かれていったのだった。
男とか女とか、適切な距離とか、ばかばかしい。こんな可愛い女の子が俺を求めて狂ってくれるのだから……何も抗う必要はない。何も躊躇う必要はない。彼女の誘うまま、二人楽しく交わればいい。そうに違いない。
胸とまんこを同時に攻められ、先輩はほとんど行きっぱなしの状態にあるらしかった。
突き挿す膣からは白く濁った本気汁が溢れ、粘膜同士の摩擦を限りなく下げている。透明で量の多い、これは尿ではなく潮だろうか、独特の匂いを放つ淫らな汁も、蛇口の壊れた水道のごとくぴしゃぴしゃと果てしなく溢れてくる。
可愛く勃起した先輩の乳首を指で挟んで責めると、またまんこの締まりが増し、だらしなくエッチな液体が漏れだした。何十回目かのピストンでいよいよ、俺も飢えた女性器に耐え切れなくなってきた。終わりを意識しながら、うつろな目で快楽に翻弄される先輩に問うた。
「先輩、俺も、もうそろそろ駄目です! 中か、外か、何処に出して欲しいですか!?」
「む、胸……胸にかけて、胸にっ! 僕のおっぱい、ファラウィの濃くておいしーザーメンで、汚してっ!」
「はいっ……!」
仰せのとおりに、もう耐え切れない、となる直前、俺は肉棒を抜いた。名残惜しげにひくつくおまんこを跨ぎ、欲望を解放すると、一回目に劣らぬ量の精子が先輩の薄い胸の上に降り注いだ。
熱い子種汁が、女性の証に降り注ぐ。女の象徴をザーメンでドロドロにされて、先輩はひどく満足げだった。
一通り射精し終わり、下半身に続き上半身まで俺の精液塗れになってしまったベスティアリ先輩は、目を閉じて口をとんがらせた。
女性経験の少ない俺でも、これくらいは理解できる。先輩に覆いかぶさるようにして、唇と唇を合わせお互いの唾液を啜り合う。
きっかけは、まあ、いろいろとあれだったが、今確かに俺たちは、幸せだった。
11/06/29 17:59更新 / ナシ・アジフ