恋する女子高生は切なくて幼なじみのことを思うとつい魔物化しちゃうの
「今日こそ!」
恋人の来訪を待ちながら、中ノ島 朱美は自室で一人、宣言した。
「今日こそあいつと、一線を越える!」
先日幼馴染から恋人に昇格した男、聖 恭司と、最後まで行ってしまう為、身も心も結ばれんがため、朱美は今日この日の舞台を整えたのだ。
「父さんも、母さんも、今日は遅くまで帰ってこない……そのことはちゃんと、伝えてある! 鈍い恭司でも、この事の意味はきっと分かってくれているはず……!」
朱美と恭司は、いわゆる幼馴染。
家が近く、親同士の年代も近かったことから、小学校に上がる前から家族ぐるみの付き合いをしてきた間柄である。
気が強くて喧嘩っ早い朱美と、どこか飄々としてマイペースな恭司。一見正反対な二人だったが幼い頃から不思議と気が合い、高校に上がるまではずっと、良い友人同士であった。
そんな二人が年を重ね、思春期に差し掛かるにつれ関係を「友達」から「恋人」にランクアップさせたのは、ある意味では自然な成り行きだった。
愛情を、気持ちを確認しあい、互いを伴侶として受け入れるまでには少なからぬ紆余曲折もあったが、晴れてカップルとなった現在、朱美たちは誰に遠慮するでもなく、清く正しい男女交際を続けてきていた。
「健全な男子高校生なんだもん。恭司だってきっと、そろそろ求めてくれるはず……」
そう、「清く正しい」交際である。傍目から見て辟易させられるほどラブラブな二人の間には、意外なことに、未だ体の関係が無かった。
幼馴染の悲しさか、二人でいて楽しいことは楽しいのだが、なかなか「そういう」雰囲気にならないのだ。普通の高校生カップルならば一つの節目ともなりえる「女の子が男の子を家に呼ぶ」というシチュエーションなど、10年以上前に済ませてしまっているわけで。
お互いを異性として認めてはいるはずなのに、どうにもなかなか行動に移せない。なまじ、相手のことを理解しているが故に、思い切ったアプローチを掛けにくい。
この、ある種の膠着状態に、先に痺れを切らしたのは朱美だった。
「大体、若い男の癖して、あんなに淡白な恭司がおかしいのよ。もっとこう、アグレッシヴに来なさいよ」
揶揄するようなことを呟きながらも、朱美の表情に嫌悪は無い。どころか、その瞳には何か禍々しい欲望の渦すら垣間見える。
「今日、あいつのほうから言い寄ってこなかったら、私が襲ってやる……! 手の遅い恭司が悪いんだから、文句なんて言わないわよね……!」
身体を火照らせ、誰にでもなくそういった瞬間。
「その意気や良し、よ」
「!?」
突然の声に、朱美は体を強張らせる。声のほうへ振り向くと、そこには奇妙な女がいた。
宙に浮く、黒い球体に腰掛け脚を組んだ、凄絶なまでの美女である。
布面積の極端に少ない衣をまとい、白磁の如き玉肌を惜しげもなく露出させたその女は、唇を軽く曲げて部屋の主をじっと見る。見知らぬ侵入者に身の危険を感じながらも、持ち前の強気さで朱美は問いかけた。
「あなた、誰!? 一体どこから……」
「私の名前はルリコ。魔界の姫、魔王位継承候補の一……と名乗ってみても、貴女には意味が分からないだろうし、またそんなことが知りたいわけでも、ないのでしょうね」
「はあ!? 何を言って……出て行ってください! 早くしないと、警察を……!」
「まあ、まあ、落ち着いて。悪いようにはしませんから。貴女、今日来る例の……恭司さん、でしたか。その人と、セックスしたいのでしょう?」
「!!」
いきなり現れた見知らぬ人物に極めてプライベートなことを指摘され、朱美の体が固まる。言葉に詰まった彼女に、更に畳み掛けるように、ルリコが告げる。
「男を欲するその感情に呼ばれて参上したのが、この私よ。そのための能力を授けに来たのが、この私なのよ」
恐怖と驚愕に硬直したままの朱美に、ルリコがそっと手を伸ばす。真っ赤な唇を三日月形に歪め、魔性は囁く。
「男を魅了して、堕として、貴女だけの物にして独占できる肉体。欲しくはないかしら?」
ちょっとハスキーで、耳を通じて魂そのものを撫でさするような、妖艶極まる声。同性愛の趣味は無いはずの朱美ですら、その響きの余りの心地よさに、思わず陶然とさせられる。
「肉体……?」
「そう。とびっきりに強くて、綺麗で、なによりエッチな悪魔の体。一度味わった男は二度とほかの人間のことなんか考えられなくなる、麻薬みたいな体。要らないかしら?」
妖しい美女の誘惑に、朱美の理性は確かに抵抗した。「悪魔の体なんて、そんなものは要らない」と、「分けの分からないものは必要ない」と。しかし、「男を独占できる」というその一言に、彼女の本能は疑いようも無く屈してしまっていた。
魔界の王女が誘惑すれば、男だろうと女だろうと、ただの人間がそれに抗えることなど、ありえないのだ。
声も出さず、ジェスチャーも見せずにいたのに、ルリコは朱美の心を察した。もとより、理性によって制御され発せられる言語になど、彼女の関心は無い。恋心に燃える瞳の揺らぎさえ見れば、それで万事足りる。
「そう。そうよね。素直が一番よ。ふふっ……いい子いい子」
呼吸も忘れ美姫に見入る朱美に、ルリコがそっと手を伸ばす。雪のように白く、さらに美しい五指で、顎先をそっとつかんで自分のほうを向かせる。真っ赤な瞳の粘つくような眼光を真正面から浴び、か弱い人間の精神は瞬く間に「美」に侵食される。
「安心して、身を任せなさい……全て、上手くいきますから」
そう語りかける間にも、朱美の両目はどんどん情欲に濁っていくのだった。
一方その頃。
聖 恭司は落ち着かない気持ちでいた。
元幼馴染・現恋人の、中ノ島 朱美の部屋に呼ばれたことなど、両手の指、どころか足の指まで使ってもまだ数え切れないほどある。
しかし、二人とも幼かったかつてと、お互いを男女として好き合うようになった今では、その意味合いが全く変わってしまっていることも、また自覚していた。
幼馴染ゆえの独特の距離感というか、どうも二人でいても恋人同士というよりは友達同士っぽい雰囲気になってしまいがちな現状を、朱美と同様、恭司も問題だとは思っていた。
とはいえ、問題だとは思っていてもなかなか変えられないのが習慣というやつである。
朱美のことを女性として愛しているし、若者らしく、性欲をぶつけたいと思うことも当然ある。しかしながら、いざ二人きりになってみると、どうにもこうにも「そういう」シチュエーションに持ち込めない。
ここへ来て停滞し始めた二人の関係を朱美が歯がゆく感じているのは知っていたし、ある種の決意を込めて、彼女が恭司を「今日は親がいない」とわざわざ前置いた上で呼んだことの意味も、朴念仁とか鈍感とか言われがちな彼なりにちゃんと悟っていた。
あとは恭司自身が腹をくくるだけだが……果たして、ちゃんとできるだろうか。無様なことにならないだろうか、朱美を傷つけてしまわないか。朱美に幻滅されないだろうか……
青い悩みで頭が一杯になってしまった恭司は、遂に中ノ島家に着いてしまう。訪問を恐れる気持ちと、「ええいままよ、なるようになれ」なんて、捨て鉢とも剛胆とも言えない衝動の板ばさみになりながらも、インターホンを押す。音が鳴るとすぐに、朱美がドアホン越しに答えた。
「……恭司? 入って、私の部屋まで、来て」
熱に浮かされたような、普段の彼女とは違った印象の声だったが、追い詰められ、興奮した恭司がそれを不審に思うことは無かった。
勝手知ったる他人の家。階段を上り、すぐに朱美の部屋まで辿り着いてしまう。恋人同士になってからも彼女の部屋を訪ねたことは何度かあったが、今日ほど暑い体でこの扉の前に立ったことは今まで無かったと、ふと思う。
意を決し、扉を叩いてみた。扉が開き、朱美の姿が見える、と思った次の瞬間。
部屋の内から伸び出てきた手につかまれ、ものすごい力で恭司の体は引きずり込まれてしまった。
背後で、大きな音を立ててドアが閉まる音を聞く。勢い任せにベッドへ放り出された恭司は、突然のことにひどく動転した。朱美を見て、その混乱は更に深まる。
「朱美……? お前、それ、一体……!?」
「これ? えへへ、この身体、すごいでしょ……。リリムさまに、貰ったんだよ……?」
ベッドに、仰向けに横たえられた恭司に、四つん這いになった朱美がにじり寄る。その姿は、彼が知っていたものとはかけ離れていた。
頭の両サイドから生えた、短い一対の角。腰の背面でゆらゆらと揺れる、薄桃色をした半透明の、膜状の翼。尾骨付近から伸びる、先端がハート型に膨らんだショッキングピンクの尻尾。胸や四肢を覆う、桃色の体毛。
人間ではあり得ない、まるでゲームや漫画に出てくる悪魔そのものだった。
まさか、俺の幼馴染は、愛する朱美は、化け物だったのか。驚愕と恐怖に発狂しそうな恭司の気持ちを知ってか知らずか、とろんと目尻を下げ、どこか焦点の合わない瞳の朱美は、人外と化したその身を更に寄せる。ベッドに押し倒され、完全に逃げ場を失った恭司の、慄き震える唇を、飢えたるレッサーサキュバスは強引に奪った。
「っ!!」
「ん……ちゅっ……じゅる、じゅるる…」
今までにしてきたキスとは全く異なる、貪欲で、淫猥で、むさぼり尽くすようなキス。唇と唇をぴったり合わせ、よだれに塗れた赤い舌を恭司の口腔へ強引に差し込む。
驚愕に次ぐ驚愕で目を白黒させる彼氏のことなど素知らぬ風に、舌と舌を絡ませ、唾液を交換する。抵抗し押しとどめようとする舌をぬるりとかわし、上あごから下あご、歯茎や唇の裏など、敏感な口内粘膜をねっとりと舐めしゃぶる。じゅるりじゅるりといやらしい水音を立てながらたっぷりと愛する男の唾を味わい、ようやく満足した朱美が口を離すと、組み伏せられた恭司は酸欠になりかけて、はあはあと荒い息をついた。
「恭司の唾、美味しい……♪ こっちのほうはもっと、美味しいのかなあ……♪」
「え、い、いつの間に!?」
なり立てといっても流石はサキュバス。激しすぎるキスで恭司が動転している間に、朱美はズボンと下着を悠々と脱がし終わってしまっていた。
もともとセックスするつもりで来ていたこともあり、また先ほどのキスのいやらしさもあり、恭司の陰茎はすでに激しく勃起してしまっていた。恋人に始めて男性器を見られ、強い羞恥心を感じる恭司だったが、白い手でぎゅっとつかまれると、早くも達しそうになってしまい、思わず歯を食いしばるのだった。
膝立ちの体勢になり、朱美が寝転んだ男の体を跨ぐ。腰をゆっくりと落とし、薄いピンク色の毛が生えた股間を亀頭へ近づけていくと、恭司にも彼女の意図が見えてきた。
「朱美……」
「ねえ……私、もう、我慢できないの。恭司のことが欲しくて欲しくて、死んじゃいそうなの。
……いいよね? えっち、してもいいよね?」
自分を見下ろす化け物の表情の奥、飢えと渇望の向こうに、恭司は確かに朱美を見た。
同年代の男子と比較しても大人しい方だった恭司は、小学校にも上がらない内から、彼女に引っ張られて随分色んな目に遭わされてきた。
怪我をしそうになったり、二人揃って怒られるような事も少なくなかったが、最後の最後で彼女が自分を見捨てたり、意見を無視するようなことは、絶対に無かった。
「好きだ」という言葉を交わす遥か前からあった、朱美の自分への思い。
姿はこんなにも変わってしまったが、紛れもなく頭上のこの女は朱美だ。今までずっと一緒にいて、これからも一緒にいる、あの朱美だ。そう言い切れるだけの年月を、二人は共にしてきた。
「いいよ。朱美……なんだろ。俺の、恋人なんだろ。
だったら、いいよ。しよう。好き同士、だもんな」
「恭司っ…!!」
がばりと、朱美は恭司に覆いかぶさった。二人の胸板の間で、同年代の女子と比較してもなかなかに立派なサイズを誇る美乳がむにぃと潰れる。童貞高校生には刺激の強すぎるその柔らかい感触に恭司が酔い痴れる間もなく、先ほど生まれたばかりのレッサーサキュバスは、ずっと夢見て欲してきた肉茎をくわえ込んだ。
初めて男を受け入れるはずの女陰が、歴戦の娼婦の如き貪欲さで男を貪らんとする。腰を半分ほど落とし、カリ首の少し下辺りまでを膣内に迎え入れた朱美は、処女にありがちな破瓜の痛みなど全く感じていないように見えた。
「ふっ……ふぅ……」
「朱美、お前……大丈夫なのか?」
セックスの知識がまだまだ足りない恭司は、男性器の半ばまで挿入してふと動きを止め、俄かに息を荒げだした朱美を見上げ、思わず心配するような言葉を吐いた。
女が始めてセックスするときには痛みが伴うこともあるということぐらいは知っていたため出た言葉だったが、目を蕩けさせ、微かに涎すら垂らしたその表情は痛みの存在など欠片も伺わせないものだ。
「うん、大丈夫……すごいね、サキュバスの身体って……初めてなのに、バージンなのに、こんなに、気持ちいいっ!!」
「!?」
やにわに、朱美は腰を一気に一番下まで下ろし、恭司のもの全てを自身の内に受け入れてしまった。
止めどなく溢れ出す愛液が、粘膜と粘膜の間でぴちゃっぴちゃっと淫猥な音を立てる。サキュバスとして、産まれて初めての食事に、肉壷が歓喜し、うねり、貪る。ざらざらした細かい襞を無数に備えた柔らかくしなやかな肉の筒、まさしくサキュバスの、男をイかせるための器官が、全力で恭司の鈴口から根元、初セックスの興奮で固まりきった肉棒を余すとこなく愛撫する。
人間の、ましてや童貞の男子高校生が、一秒たりとも射精を耐え切れるわけはなかった。
「朱美ごめん……っ!」
「!?」
愛する男の童貞を奪い、同時に処女を捧げられたことで、女としてサキュバスとして歓喜の絶頂にあった朱美にとって、膣内射精の追撃は人間としての理性を粉砕するに余りあった。
この日のためにオナニーも控えていたのだろうか、濃くて粘度の高い大量のザーメンが、朱美の胎内に満ち溢れ、子宮まで届こうとする。
産まれて初めての中出し、その激しく、また甘美な心地にサキュバスの肉体は抗いようもなく絶頂へ押し上げられる。断続的に精を放ち、不規則に暴れる童貞ペニスで、朱美はエクスタシーへ至り続けた。
「くふっ……気持ち、イイ……えっちって、イくのって、こんなに楽しいものだったんだぁ……」
「おい、朱美、ちょっと……!」
アクメに達した淫魔の膣は、更なる絶頂を求めてきゅっと締まる。人生で初めて、膣内射精を終えたばかりの恭司にとって、その締まりは苦痛と紙一重。
「こんなに気持ちいいなら、もっと早くしちゃえばよかったねぇ、恭司……これからいっぱい、えっちしようねぇ……」
「おい待ってくれ、少し休ませ」
「やぁだ、もう我慢できなぁい♪ それに、きょうじだって、もうやる気マンマンなんじゃなぁい♪」
一度達したはずの恭司のものは、絶頂淫魔の凄まじ過ぎる肉愛撫で、強制的に勃起状態に保たれていた。敏感なまま、萎えることも許されない肉槍に、朱美は再び跨り直すと、接合部から逆流してきた精液が漏れ出るのにも構わずに、猛然と腰を使い出した。
「あはっ、あはは……もっといっぱい、恭司の精液、頂戴? 恭司は私だけのものなんだから、いいよね……?」
精液がローションのごとく膣襞に絡み、ペニスとの摩擦を極限まで低減させる。今まで以上に滑らかに、自在に蠢くようになった淫壷が、更なる好色さでもって恭司を責める。先ほど童貞を捨てたばかりの男は、その快感の激しさに声も出ない。にゅるりにゅるりと上下に動く陰唇に、ただ啜られるだけである。
「もっと、もっと、二人で気持ちよくなろうねぇ、恭司……」
心蕩かす様な甘やかな淫魔の喘ぎ声が、部屋に満ち、恭司の心を犯していった。
数時間後。
あの後十発以上搾り取り、ようやく一息ついた朱美は、連続射精に疲弊しきって息も絶え絶えな
恭司を背後から優しく抱きしめていた。耳元に唇を寄せ、そっと囁く。
「あの、ごめんね? ちょっと、我を忘れちゃって」
「ああ、別に、いいよ……」
答える恭司の顔は青ざめてはいるが、淫魔の加護ゆえか、意識を失ったり倒れたりするには至らないらしい。
飢えの余り恋人を追い詰めすぎたことでちょっと後ろめたい朱美は、申し訳無さげに恭司を抱擁する。柔らかいベッドの上で、恋人に優しく抱きしめられて、恭司は自分の体力が見る見る回復していくような気がしていた。
「しかし、驚いたよ……サキュバス、だったか? 人間辞めちゃうなんてな」
「うん。人外の恋人は、嫌?」
「そんな顔するなよ……朱美は朱美だろ、嫌いになんかならんさ……それに、今の朱美も可愛いし。尻尾とか翼とか、すごく似合ってる。綺麗だ」
「恭司……!」
感極まった朱美が恭司をぎゅっと抱き寄せる。男の肉体に触れて、淫魔の身体が再び疼き出す、が。
「恭司、愛してる……。一生、離さないんだから……」
「……俺だって」
今は、セックスよりも、こうして二人抱き合っていたいと、サキュバスと化しても変わらず残った朱美の心は訴えていた。
数日後。
昼休み、既に校内公認カップルとなっていた朱美と恭司は、今日も二人手をとって教室を出る。やっかみ半分なクラスメイトの冷やかしを背に、人目を忍んで入ったのは校庭の外れ、人気の無い体育倉庫。
昼休みは食事の時間。朱美は朱美なりの食事を取りに、恭司を連れてきたのだった。
「それじゃあご開帳〜♪」
「変な節をつけるなよ……」
人前に出るときは隠している角や翼や尻尾を露にし、魔物の身体に戻った朱美は嬉々として恭司のズボンを下ろす。初エッチを済ませて以来何度も交わり愛を交わしたおかげで、ピンク色だった翼や尻尾は成熟し、濃紫色に染まりつつあった。
サキュバスになったからといってその激しい性欲が収まるわけもなく、朱美は長い休みの度にこうして恭司を連れ出しては、精を搾り取っているのだった。
淫気に中てられてがちがちに勃起した肉棒を見て、朱美はにんまりと微笑んだ。
制服の上着をたくし上げ、恭司の下半身に胸を寄せる。サキュバスと化して以来、じわじわと大きくなりつつある媚乳の谷間に恭司自身を迎え入れる。
両手でおっぱいを抱えなおし、胸全体で男根を包み込むようにしてやると、パイズリ奉仕の様子は制服に覆われてほとんど見えなくなってしまう。唯一、早くも我慢汁を零し始めた亀頭がセーラー服の胸元から垣間見えるのみである。
むちむちおっぱいがペニスを撫で責める様を敢えて隠すことで、恭司の興奮が増すことを淫魔は本能的に悟っていた。普通に、どちらかの部屋で愛し合う時はそうでもないが、こうして学校で人目を忍んでセックスするときには、殊更に露出を恐れるようなスタイルのほうが精液の出が良いのだ。
フロントホックのブラジャーを外し、しかし肩紐は掛けたままにして、朱美は両の腕を互い違いに使い始めた。ふかふかの乳房に収まりきらない怒張が、セーラー服の布地やブラジャーの裏地に触れるたび、恭司がうっと息を呑む。
肌に触れる物とは言っても、ブラジャーもセーラー服も、それなりに硬い布で作られている。
陰茎にわざわざぶつけたりして、せっかくのパイズリの快感が減りこそすれ増えることなど無いようにも見えるが、これもサキュバスの技かそれとも恭司の趣味か……朱美が先程まで身に着けていた衣服に責められて、淫魔の恋人は至極嬉しそうな声を漏らすのだった。
「どう、気持ちいい? 精液、いっぱい出そう?」
「あ、ああ、イイよ……すぐにも、出しちゃいそうだ」
「ふーん……。ね、私のおっぱいと、私の服と、どっちでおちんちん擦られるのが気持ちいいの?」
「え? そ、そりゃあ、胸だよ……当たり前だろ……」
「本当かな〜。どうも、あやしいな〜」
訝るような事を言いながらも楽しげな朱美は、制服パイズリの快感に震える恭司を更に責め立てる。
両手による圧迫を強くし、胸の谷間から覗いて来た男根の先端付近、敏感な裏筋を柔らかい乳肉と硬い制服で交互に摩擦してやると、更に我慢汁が溢れてきた。
カウパー氏腺液が分泌されるのにも構わず、朱美は乳肉奉仕を止めはしない。むしろ、より一層の熱意と愛情を込めて、セーラー服にくるまれた双球をグラインドさせる。
当然、鈴口から溢れた透明な液は胸のみならず、制服の胸元をも汚し、シミをつける。淫液に染まっていく学生服を見て、朱美は口角を釣りあげた。
「いつもいつも、制服汚しちゃって……恭司って、もしかして変態?」
「はあ!? いつも、お前の方から……」
「私の方が変態だって、言うの?
じゃあ、いつもは魔法で綺麗にしてるけど、今日は汚れた制服のままで午後の授業、出てあげようか?」
「何言って……」
「昼休みが終わって帰ってきた私の服と身体から、くさーい臭いがするの。
みんな最初は気のせいかなって思うんだけど、イカの臭いがどんどん強くなってくの。
その内誰かが私の制服にこびりついた精液を見つけて、クラスのみんなに、私たちがお昼に何してたか知られちゃうの……ふふっ」
「……!?」
淫猥過ぎる妄想を語られて、恭司の興奮は否が応にも高められる。先走りは更にその量を増し、清楚さの象徴だった筈の白い服はますます汚れていく。
「……やっぱり変態じゃない。こんなに硬くして、私に精液の臭いつけたかったの?」
「いや、あの」
「慌てなくっていいよ。セーラー服フェチの変態でも、恭司のこと、愛してるから。……だから、そろそろ、今日の一発目濃いぃの、頂戴?」
ぎゅぎゅっと両手に力を込め、朱美がラストスパートに入る。強すぎる快楽に跳ね暴れるペニスを、セーラー服の内に捕らえて逃がさない。やわ乳で根元からカリ首までを不規則に締め付けながら、鈴口に制服の裏地を強めに擦りつけてやると、哀れな餌食はたちまち音をあげた。
「朱、美……!」
「いいよ、そのまま出して……!」
許しを得て、恭司の射精感が一気に限界を突破する。まだ朱美のぬくもりが残るブラジャーで亀頭粘膜を擦られた瞬間、彼は決壊した。
「!」
「んっ……!! ふふ、今日も、いっぱぁい……」
思春期真っ只中であることを考慮しても多すぎる白濁液が、朱美の胸と制服にぶち撒けられた。
濃いゲル状の子種汁がセーラー服の裏に張り付き、欲望に濡れた制服はまだらに透けて下のブラジャーや乳房を晒してしまっている。そのブラやおっぱいにも大量のザーメンがこびりつき、瑞々しいお肌に弾かれた汚液が腹の方まで流れ落ちる。セーラー服の裾から白濁がぽたりぽたりと垂れる光景は、この上無く扇情的だった。
「また、こんなにぶっかけて。ほんと、変態なんだから」
美味しい精を胸いっぱいに浴びてご満悦な朱美が呟く。と、校舎の方から授業開始五分前を告げる予鈴が聞こえてきた。
「あ、もう昼休み終わりだ。朱美、そろそろ行くぞ」
「えぇー。自分だけ満足して、それで終わり? ちょっと酷いんじゃない?」
「だって、お前」
「ねぇーエッチしようよー。今度はスカートにぶっかけてもいいからさぁー」
上半身精液塗れの恋人にそんな風に誘われて、授業へなど出られる筈も無い。
恭司がぴく、と反応したのを悟った朱美は、跳び箱の上に腰掛け、パンツを脱ぎ捨てスカートの裾をつまんで持ち上げる。じりじりと焦らすように両脚を開き、プリーツスカートの奥を見せ付ける。
「ね、お・ね・が・い。こっちにも、恭司の美味しいせーえき、頂戴♪」
淫ら過ぎる誘惑に、一物が一気に臨戦態勢を取る。最近、こんな風に授業をサボることが多いなあ、そろそろ担任に呼び出されたりしないかなあ、などと考えながらも、恭司は今日もまた可愛い恋人に屈してしまうのだった。
某所、高級ホテル最上階の一室。
黒球に跨ったルリコが、夜の街を見下ろしながら一人呟いていた。
「一発目だったけど、なかなか上手くいったわね。ふふふ、いい感じ。いい感じだわ」
まるで美術品のような、白く細く美しく完璧な五指で、椅子代わりにした黒球の表面を撫でる。球体に指が触れるごとに表面は漣を打ち、まるで歓喜と感謝に震えているようだった。
「ほんの気まぐれだったけれど、来て良かったわ。この世界は最高よ」
子を見る母親のような、実験対象を見る科学者のような、玩具を見る子供のような。何ともつかない妖しい眼差しで、夜の街に松明のごとく煌くビル群をただ眺める。
「物質文明と科学技術を極限まで発達させながら、魔術や精神への洞察が全くといって良いほど為されていないなんて。こんな世界が在り得るとは、実際に来て見なければ信じられなかったでしょうね」
鉄と鋼とコンクリートで全身を固く防御しながらも、その内部、心や魂と呼べるものは酷く脆弱で未発達。
ルリコの眼にこの世界は、美味なる肉を殻で守る、高級な貝や甲殻類のように映った。
「うふふふふ。善男善女の皆さん、待ってなさいね。私が、ここをもっと楽しく、住みよくしてあげますからね」
誰に憚ることも無く、存分に力を振るえる格好の遊び場を遂に手に入れた魔界の姫君は、人工的な光に照らされて、慈悲深く微笑み続けるのだった。
恋人の来訪を待ちながら、中ノ島 朱美は自室で一人、宣言した。
「今日こそあいつと、一線を越える!」
先日幼馴染から恋人に昇格した男、聖 恭司と、最後まで行ってしまう為、身も心も結ばれんがため、朱美は今日この日の舞台を整えたのだ。
「父さんも、母さんも、今日は遅くまで帰ってこない……そのことはちゃんと、伝えてある! 鈍い恭司でも、この事の意味はきっと分かってくれているはず……!」
朱美と恭司は、いわゆる幼馴染。
家が近く、親同士の年代も近かったことから、小学校に上がる前から家族ぐるみの付き合いをしてきた間柄である。
気が強くて喧嘩っ早い朱美と、どこか飄々としてマイペースな恭司。一見正反対な二人だったが幼い頃から不思議と気が合い、高校に上がるまではずっと、良い友人同士であった。
そんな二人が年を重ね、思春期に差し掛かるにつれ関係を「友達」から「恋人」にランクアップさせたのは、ある意味では自然な成り行きだった。
愛情を、気持ちを確認しあい、互いを伴侶として受け入れるまでには少なからぬ紆余曲折もあったが、晴れてカップルとなった現在、朱美たちは誰に遠慮するでもなく、清く正しい男女交際を続けてきていた。
「健全な男子高校生なんだもん。恭司だってきっと、そろそろ求めてくれるはず……」
そう、「清く正しい」交際である。傍目から見て辟易させられるほどラブラブな二人の間には、意外なことに、未だ体の関係が無かった。
幼馴染の悲しさか、二人でいて楽しいことは楽しいのだが、なかなか「そういう」雰囲気にならないのだ。普通の高校生カップルならば一つの節目ともなりえる「女の子が男の子を家に呼ぶ」というシチュエーションなど、10年以上前に済ませてしまっているわけで。
お互いを異性として認めてはいるはずなのに、どうにもなかなか行動に移せない。なまじ、相手のことを理解しているが故に、思い切ったアプローチを掛けにくい。
この、ある種の膠着状態に、先に痺れを切らしたのは朱美だった。
「大体、若い男の癖して、あんなに淡白な恭司がおかしいのよ。もっとこう、アグレッシヴに来なさいよ」
揶揄するようなことを呟きながらも、朱美の表情に嫌悪は無い。どころか、その瞳には何か禍々しい欲望の渦すら垣間見える。
「今日、あいつのほうから言い寄ってこなかったら、私が襲ってやる……! 手の遅い恭司が悪いんだから、文句なんて言わないわよね……!」
身体を火照らせ、誰にでもなくそういった瞬間。
「その意気や良し、よ」
「!?」
突然の声に、朱美は体を強張らせる。声のほうへ振り向くと、そこには奇妙な女がいた。
宙に浮く、黒い球体に腰掛け脚を組んだ、凄絶なまでの美女である。
布面積の極端に少ない衣をまとい、白磁の如き玉肌を惜しげもなく露出させたその女は、唇を軽く曲げて部屋の主をじっと見る。見知らぬ侵入者に身の危険を感じながらも、持ち前の強気さで朱美は問いかけた。
「あなた、誰!? 一体どこから……」
「私の名前はルリコ。魔界の姫、魔王位継承候補の一……と名乗ってみても、貴女には意味が分からないだろうし、またそんなことが知りたいわけでも、ないのでしょうね」
「はあ!? 何を言って……出て行ってください! 早くしないと、警察を……!」
「まあ、まあ、落ち着いて。悪いようにはしませんから。貴女、今日来る例の……恭司さん、でしたか。その人と、セックスしたいのでしょう?」
「!!」
いきなり現れた見知らぬ人物に極めてプライベートなことを指摘され、朱美の体が固まる。言葉に詰まった彼女に、更に畳み掛けるように、ルリコが告げる。
「男を欲するその感情に呼ばれて参上したのが、この私よ。そのための能力を授けに来たのが、この私なのよ」
恐怖と驚愕に硬直したままの朱美に、ルリコがそっと手を伸ばす。真っ赤な唇を三日月形に歪め、魔性は囁く。
「男を魅了して、堕として、貴女だけの物にして独占できる肉体。欲しくはないかしら?」
ちょっとハスキーで、耳を通じて魂そのものを撫でさするような、妖艶極まる声。同性愛の趣味は無いはずの朱美ですら、その響きの余りの心地よさに、思わず陶然とさせられる。
「肉体……?」
「そう。とびっきりに強くて、綺麗で、なによりエッチな悪魔の体。一度味わった男は二度とほかの人間のことなんか考えられなくなる、麻薬みたいな体。要らないかしら?」
妖しい美女の誘惑に、朱美の理性は確かに抵抗した。「悪魔の体なんて、そんなものは要らない」と、「分けの分からないものは必要ない」と。しかし、「男を独占できる」というその一言に、彼女の本能は疑いようも無く屈してしまっていた。
魔界の王女が誘惑すれば、男だろうと女だろうと、ただの人間がそれに抗えることなど、ありえないのだ。
声も出さず、ジェスチャーも見せずにいたのに、ルリコは朱美の心を察した。もとより、理性によって制御され発せられる言語になど、彼女の関心は無い。恋心に燃える瞳の揺らぎさえ見れば、それで万事足りる。
「そう。そうよね。素直が一番よ。ふふっ……いい子いい子」
呼吸も忘れ美姫に見入る朱美に、ルリコがそっと手を伸ばす。雪のように白く、さらに美しい五指で、顎先をそっとつかんで自分のほうを向かせる。真っ赤な瞳の粘つくような眼光を真正面から浴び、か弱い人間の精神は瞬く間に「美」に侵食される。
「安心して、身を任せなさい……全て、上手くいきますから」
そう語りかける間にも、朱美の両目はどんどん情欲に濁っていくのだった。
一方その頃。
聖 恭司は落ち着かない気持ちでいた。
元幼馴染・現恋人の、中ノ島 朱美の部屋に呼ばれたことなど、両手の指、どころか足の指まで使ってもまだ数え切れないほどある。
しかし、二人とも幼かったかつてと、お互いを男女として好き合うようになった今では、その意味合いが全く変わってしまっていることも、また自覚していた。
幼馴染ゆえの独特の距離感というか、どうも二人でいても恋人同士というよりは友達同士っぽい雰囲気になってしまいがちな現状を、朱美と同様、恭司も問題だとは思っていた。
とはいえ、問題だとは思っていてもなかなか変えられないのが習慣というやつである。
朱美のことを女性として愛しているし、若者らしく、性欲をぶつけたいと思うことも当然ある。しかしながら、いざ二人きりになってみると、どうにもこうにも「そういう」シチュエーションに持ち込めない。
ここへ来て停滞し始めた二人の関係を朱美が歯がゆく感じているのは知っていたし、ある種の決意を込めて、彼女が恭司を「今日は親がいない」とわざわざ前置いた上で呼んだことの意味も、朴念仁とか鈍感とか言われがちな彼なりにちゃんと悟っていた。
あとは恭司自身が腹をくくるだけだが……果たして、ちゃんとできるだろうか。無様なことにならないだろうか、朱美を傷つけてしまわないか。朱美に幻滅されないだろうか……
青い悩みで頭が一杯になってしまった恭司は、遂に中ノ島家に着いてしまう。訪問を恐れる気持ちと、「ええいままよ、なるようになれ」なんて、捨て鉢とも剛胆とも言えない衝動の板ばさみになりながらも、インターホンを押す。音が鳴るとすぐに、朱美がドアホン越しに答えた。
「……恭司? 入って、私の部屋まで、来て」
熱に浮かされたような、普段の彼女とは違った印象の声だったが、追い詰められ、興奮した恭司がそれを不審に思うことは無かった。
勝手知ったる他人の家。階段を上り、すぐに朱美の部屋まで辿り着いてしまう。恋人同士になってからも彼女の部屋を訪ねたことは何度かあったが、今日ほど暑い体でこの扉の前に立ったことは今まで無かったと、ふと思う。
意を決し、扉を叩いてみた。扉が開き、朱美の姿が見える、と思った次の瞬間。
部屋の内から伸び出てきた手につかまれ、ものすごい力で恭司の体は引きずり込まれてしまった。
背後で、大きな音を立ててドアが閉まる音を聞く。勢い任せにベッドへ放り出された恭司は、突然のことにひどく動転した。朱美を見て、その混乱は更に深まる。
「朱美……? お前、それ、一体……!?」
「これ? えへへ、この身体、すごいでしょ……。リリムさまに、貰ったんだよ……?」
ベッドに、仰向けに横たえられた恭司に、四つん這いになった朱美がにじり寄る。その姿は、彼が知っていたものとはかけ離れていた。
頭の両サイドから生えた、短い一対の角。腰の背面でゆらゆらと揺れる、薄桃色をした半透明の、膜状の翼。尾骨付近から伸びる、先端がハート型に膨らんだショッキングピンクの尻尾。胸や四肢を覆う、桃色の体毛。
人間ではあり得ない、まるでゲームや漫画に出てくる悪魔そのものだった。
まさか、俺の幼馴染は、愛する朱美は、化け物だったのか。驚愕と恐怖に発狂しそうな恭司の気持ちを知ってか知らずか、とろんと目尻を下げ、どこか焦点の合わない瞳の朱美は、人外と化したその身を更に寄せる。ベッドに押し倒され、完全に逃げ場を失った恭司の、慄き震える唇を、飢えたるレッサーサキュバスは強引に奪った。
「っ!!」
「ん……ちゅっ……じゅる、じゅるる…」
今までにしてきたキスとは全く異なる、貪欲で、淫猥で、むさぼり尽くすようなキス。唇と唇をぴったり合わせ、よだれに塗れた赤い舌を恭司の口腔へ強引に差し込む。
驚愕に次ぐ驚愕で目を白黒させる彼氏のことなど素知らぬ風に、舌と舌を絡ませ、唾液を交換する。抵抗し押しとどめようとする舌をぬるりとかわし、上あごから下あご、歯茎や唇の裏など、敏感な口内粘膜をねっとりと舐めしゃぶる。じゅるりじゅるりといやらしい水音を立てながらたっぷりと愛する男の唾を味わい、ようやく満足した朱美が口を離すと、組み伏せられた恭司は酸欠になりかけて、はあはあと荒い息をついた。
「恭司の唾、美味しい……♪ こっちのほうはもっと、美味しいのかなあ……♪」
「え、い、いつの間に!?」
なり立てといっても流石はサキュバス。激しすぎるキスで恭司が動転している間に、朱美はズボンと下着を悠々と脱がし終わってしまっていた。
もともとセックスするつもりで来ていたこともあり、また先ほどのキスのいやらしさもあり、恭司の陰茎はすでに激しく勃起してしまっていた。恋人に始めて男性器を見られ、強い羞恥心を感じる恭司だったが、白い手でぎゅっとつかまれると、早くも達しそうになってしまい、思わず歯を食いしばるのだった。
膝立ちの体勢になり、朱美が寝転んだ男の体を跨ぐ。腰をゆっくりと落とし、薄いピンク色の毛が生えた股間を亀頭へ近づけていくと、恭司にも彼女の意図が見えてきた。
「朱美……」
「ねえ……私、もう、我慢できないの。恭司のことが欲しくて欲しくて、死んじゃいそうなの。
……いいよね? えっち、してもいいよね?」
自分を見下ろす化け物の表情の奥、飢えと渇望の向こうに、恭司は確かに朱美を見た。
同年代の男子と比較しても大人しい方だった恭司は、小学校にも上がらない内から、彼女に引っ張られて随分色んな目に遭わされてきた。
怪我をしそうになったり、二人揃って怒られるような事も少なくなかったが、最後の最後で彼女が自分を見捨てたり、意見を無視するようなことは、絶対に無かった。
「好きだ」という言葉を交わす遥か前からあった、朱美の自分への思い。
姿はこんなにも変わってしまったが、紛れもなく頭上のこの女は朱美だ。今までずっと一緒にいて、これからも一緒にいる、あの朱美だ。そう言い切れるだけの年月を、二人は共にしてきた。
「いいよ。朱美……なんだろ。俺の、恋人なんだろ。
だったら、いいよ。しよう。好き同士、だもんな」
「恭司っ…!!」
がばりと、朱美は恭司に覆いかぶさった。二人の胸板の間で、同年代の女子と比較してもなかなかに立派なサイズを誇る美乳がむにぃと潰れる。童貞高校生には刺激の強すぎるその柔らかい感触に恭司が酔い痴れる間もなく、先ほど生まれたばかりのレッサーサキュバスは、ずっと夢見て欲してきた肉茎をくわえ込んだ。
初めて男を受け入れるはずの女陰が、歴戦の娼婦の如き貪欲さで男を貪らんとする。腰を半分ほど落とし、カリ首の少し下辺りまでを膣内に迎え入れた朱美は、処女にありがちな破瓜の痛みなど全く感じていないように見えた。
「ふっ……ふぅ……」
「朱美、お前……大丈夫なのか?」
セックスの知識がまだまだ足りない恭司は、男性器の半ばまで挿入してふと動きを止め、俄かに息を荒げだした朱美を見上げ、思わず心配するような言葉を吐いた。
女が始めてセックスするときには痛みが伴うこともあるということぐらいは知っていたため出た言葉だったが、目を蕩けさせ、微かに涎すら垂らしたその表情は痛みの存在など欠片も伺わせないものだ。
「うん、大丈夫……すごいね、サキュバスの身体って……初めてなのに、バージンなのに、こんなに、気持ちいいっ!!」
「!?」
やにわに、朱美は腰を一気に一番下まで下ろし、恭司のもの全てを自身の内に受け入れてしまった。
止めどなく溢れ出す愛液が、粘膜と粘膜の間でぴちゃっぴちゃっと淫猥な音を立てる。サキュバスとして、産まれて初めての食事に、肉壷が歓喜し、うねり、貪る。ざらざらした細かい襞を無数に備えた柔らかくしなやかな肉の筒、まさしくサキュバスの、男をイかせるための器官が、全力で恭司の鈴口から根元、初セックスの興奮で固まりきった肉棒を余すとこなく愛撫する。
人間の、ましてや童貞の男子高校生が、一秒たりとも射精を耐え切れるわけはなかった。
「朱美ごめん……っ!」
「!?」
愛する男の童貞を奪い、同時に処女を捧げられたことで、女としてサキュバスとして歓喜の絶頂にあった朱美にとって、膣内射精の追撃は人間としての理性を粉砕するに余りあった。
この日のためにオナニーも控えていたのだろうか、濃くて粘度の高い大量のザーメンが、朱美の胎内に満ち溢れ、子宮まで届こうとする。
産まれて初めての中出し、その激しく、また甘美な心地にサキュバスの肉体は抗いようもなく絶頂へ押し上げられる。断続的に精を放ち、不規則に暴れる童貞ペニスで、朱美はエクスタシーへ至り続けた。
「くふっ……気持ち、イイ……えっちって、イくのって、こんなに楽しいものだったんだぁ……」
「おい、朱美、ちょっと……!」
アクメに達した淫魔の膣は、更なる絶頂を求めてきゅっと締まる。人生で初めて、膣内射精を終えたばかりの恭司にとって、その締まりは苦痛と紙一重。
「こんなに気持ちいいなら、もっと早くしちゃえばよかったねぇ、恭司……これからいっぱい、えっちしようねぇ……」
「おい待ってくれ、少し休ませ」
「やぁだ、もう我慢できなぁい♪ それに、きょうじだって、もうやる気マンマンなんじゃなぁい♪」
一度達したはずの恭司のものは、絶頂淫魔の凄まじ過ぎる肉愛撫で、強制的に勃起状態に保たれていた。敏感なまま、萎えることも許されない肉槍に、朱美は再び跨り直すと、接合部から逆流してきた精液が漏れ出るのにも構わずに、猛然と腰を使い出した。
「あはっ、あはは……もっといっぱい、恭司の精液、頂戴? 恭司は私だけのものなんだから、いいよね……?」
精液がローションのごとく膣襞に絡み、ペニスとの摩擦を極限まで低減させる。今まで以上に滑らかに、自在に蠢くようになった淫壷が、更なる好色さでもって恭司を責める。先ほど童貞を捨てたばかりの男は、その快感の激しさに声も出ない。にゅるりにゅるりと上下に動く陰唇に、ただ啜られるだけである。
「もっと、もっと、二人で気持ちよくなろうねぇ、恭司……」
心蕩かす様な甘やかな淫魔の喘ぎ声が、部屋に満ち、恭司の心を犯していった。
数時間後。
あの後十発以上搾り取り、ようやく一息ついた朱美は、連続射精に疲弊しきって息も絶え絶えな
恭司を背後から優しく抱きしめていた。耳元に唇を寄せ、そっと囁く。
「あの、ごめんね? ちょっと、我を忘れちゃって」
「ああ、別に、いいよ……」
答える恭司の顔は青ざめてはいるが、淫魔の加護ゆえか、意識を失ったり倒れたりするには至らないらしい。
飢えの余り恋人を追い詰めすぎたことでちょっと後ろめたい朱美は、申し訳無さげに恭司を抱擁する。柔らかいベッドの上で、恋人に優しく抱きしめられて、恭司は自分の体力が見る見る回復していくような気がしていた。
「しかし、驚いたよ……サキュバス、だったか? 人間辞めちゃうなんてな」
「うん。人外の恋人は、嫌?」
「そんな顔するなよ……朱美は朱美だろ、嫌いになんかならんさ……それに、今の朱美も可愛いし。尻尾とか翼とか、すごく似合ってる。綺麗だ」
「恭司……!」
感極まった朱美が恭司をぎゅっと抱き寄せる。男の肉体に触れて、淫魔の身体が再び疼き出す、が。
「恭司、愛してる……。一生、離さないんだから……」
「……俺だって」
今は、セックスよりも、こうして二人抱き合っていたいと、サキュバスと化しても変わらず残った朱美の心は訴えていた。
数日後。
昼休み、既に校内公認カップルとなっていた朱美と恭司は、今日も二人手をとって教室を出る。やっかみ半分なクラスメイトの冷やかしを背に、人目を忍んで入ったのは校庭の外れ、人気の無い体育倉庫。
昼休みは食事の時間。朱美は朱美なりの食事を取りに、恭司を連れてきたのだった。
「それじゃあご開帳〜♪」
「変な節をつけるなよ……」
人前に出るときは隠している角や翼や尻尾を露にし、魔物の身体に戻った朱美は嬉々として恭司のズボンを下ろす。初エッチを済ませて以来何度も交わり愛を交わしたおかげで、ピンク色だった翼や尻尾は成熟し、濃紫色に染まりつつあった。
サキュバスになったからといってその激しい性欲が収まるわけもなく、朱美は長い休みの度にこうして恭司を連れ出しては、精を搾り取っているのだった。
淫気に中てられてがちがちに勃起した肉棒を見て、朱美はにんまりと微笑んだ。
制服の上着をたくし上げ、恭司の下半身に胸を寄せる。サキュバスと化して以来、じわじわと大きくなりつつある媚乳の谷間に恭司自身を迎え入れる。
両手でおっぱいを抱えなおし、胸全体で男根を包み込むようにしてやると、パイズリ奉仕の様子は制服に覆われてほとんど見えなくなってしまう。唯一、早くも我慢汁を零し始めた亀頭がセーラー服の胸元から垣間見えるのみである。
むちむちおっぱいがペニスを撫で責める様を敢えて隠すことで、恭司の興奮が増すことを淫魔は本能的に悟っていた。普通に、どちらかの部屋で愛し合う時はそうでもないが、こうして学校で人目を忍んでセックスするときには、殊更に露出を恐れるようなスタイルのほうが精液の出が良いのだ。
フロントホックのブラジャーを外し、しかし肩紐は掛けたままにして、朱美は両の腕を互い違いに使い始めた。ふかふかの乳房に収まりきらない怒張が、セーラー服の布地やブラジャーの裏地に触れるたび、恭司がうっと息を呑む。
肌に触れる物とは言っても、ブラジャーもセーラー服も、それなりに硬い布で作られている。
陰茎にわざわざぶつけたりして、せっかくのパイズリの快感が減りこそすれ増えることなど無いようにも見えるが、これもサキュバスの技かそれとも恭司の趣味か……朱美が先程まで身に着けていた衣服に責められて、淫魔の恋人は至極嬉しそうな声を漏らすのだった。
「どう、気持ちいい? 精液、いっぱい出そう?」
「あ、ああ、イイよ……すぐにも、出しちゃいそうだ」
「ふーん……。ね、私のおっぱいと、私の服と、どっちでおちんちん擦られるのが気持ちいいの?」
「え? そ、そりゃあ、胸だよ……当たり前だろ……」
「本当かな〜。どうも、あやしいな〜」
訝るような事を言いながらも楽しげな朱美は、制服パイズリの快感に震える恭司を更に責め立てる。
両手による圧迫を強くし、胸の谷間から覗いて来た男根の先端付近、敏感な裏筋を柔らかい乳肉と硬い制服で交互に摩擦してやると、更に我慢汁が溢れてきた。
カウパー氏腺液が分泌されるのにも構わず、朱美は乳肉奉仕を止めはしない。むしろ、より一層の熱意と愛情を込めて、セーラー服にくるまれた双球をグラインドさせる。
当然、鈴口から溢れた透明な液は胸のみならず、制服の胸元をも汚し、シミをつける。淫液に染まっていく学生服を見て、朱美は口角を釣りあげた。
「いつもいつも、制服汚しちゃって……恭司って、もしかして変態?」
「はあ!? いつも、お前の方から……」
「私の方が変態だって、言うの?
じゃあ、いつもは魔法で綺麗にしてるけど、今日は汚れた制服のままで午後の授業、出てあげようか?」
「何言って……」
「昼休みが終わって帰ってきた私の服と身体から、くさーい臭いがするの。
みんな最初は気のせいかなって思うんだけど、イカの臭いがどんどん強くなってくの。
その内誰かが私の制服にこびりついた精液を見つけて、クラスのみんなに、私たちがお昼に何してたか知られちゃうの……ふふっ」
「……!?」
淫猥過ぎる妄想を語られて、恭司の興奮は否が応にも高められる。先走りは更にその量を増し、清楚さの象徴だった筈の白い服はますます汚れていく。
「……やっぱり変態じゃない。こんなに硬くして、私に精液の臭いつけたかったの?」
「いや、あの」
「慌てなくっていいよ。セーラー服フェチの変態でも、恭司のこと、愛してるから。……だから、そろそろ、今日の一発目濃いぃの、頂戴?」
ぎゅぎゅっと両手に力を込め、朱美がラストスパートに入る。強すぎる快楽に跳ね暴れるペニスを、セーラー服の内に捕らえて逃がさない。やわ乳で根元からカリ首までを不規則に締め付けながら、鈴口に制服の裏地を強めに擦りつけてやると、哀れな餌食はたちまち音をあげた。
「朱、美……!」
「いいよ、そのまま出して……!」
許しを得て、恭司の射精感が一気に限界を突破する。まだ朱美のぬくもりが残るブラジャーで亀頭粘膜を擦られた瞬間、彼は決壊した。
「!」
「んっ……!! ふふ、今日も、いっぱぁい……」
思春期真っ只中であることを考慮しても多すぎる白濁液が、朱美の胸と制服にぶち撒けられた。
濃いゲル状の子種汁がセーラー服の裏に張り付き、欲望に濡れた制服はまだらに透けて下のブラジャーや乳房を晒してしまっている。そのブラやおっぱいにも大量のザーメンがこびりつき、瑞々しいお肌に弾かれた汚液が腹の方まで流れ落ちる。セーラー服の裾から白濁がぽたりぽたりと垂れる光景は、この上無く扇情的だった。
「また、こんなにぶっかけて。ほんと、変態なんだから」
美味しい精を胸いっぱいに浴びてご満悦な朱美が呟く。と、校舎の方から授業開始五分前を告げる予鈴が聞こえてきた。
「あ、もう昼休み終わりだ。朱美、そろそろ行くぞ」
「えぇー。自分だけ満足して、それで終わり? ちょっと酷いんじゃない?」
「だって、お前」
「ねぇーエッチしようよー。今度はスカートにぶっかけてもいいからさぁー」
上半身精液塗れの恋人にそんな風に誘われて、授業へなど出られる筈も無い。
恭司がぴく、と反応したのを悟った朱美は、跳び箱の上に腰掛け、パンツを脱ぎ捨てスカートの裾をつまんで持ち上げる。じりじりと焦らすように両脚を開き、プリーツスカートの奥を見せ付ける。
「ね、お・ね・が・い。こっちにも、恭司の美味しいせーえき、頂戴♪」
淫ら過ぎる誘惑に、一物が一気に臨戦態勢を取る。最近、こんな風に授業をサボることが多いなあ、そろそろ担任に呼び出されたりしないかなあ、などと考えながらも、恭司は今日もまた可愛い恋人に屈してしまうのだった。
某所、高級ホテル最上階の一室。
黒球に跨ったルリコが、夜の街を見下ろしながら一人呟いていた。
「一発目だったけど、なかなか上手くいったわね。ふふふ、いい感じ。いい感じだわ」
まるで美術品のような、白く細く美しく完璧な五指で、椅子代わりにした黒球の表面を撫でる。球体に指が触れるごとに表面は漣を打ち、まるで歓喜と感謝に震えているようだった。
「ほんの気まぐれだったけれど、来て良かったわ。この世界は最高よ」
子を見る母親のような、実験対象を見る科学者のような、玩具を見る子供のような。何ともつかない妖しい眼差しで、夜の街に松明のごとく煌くビル群をただ眺める。
「物質文明と科学技術を極限まで発達させながら、魔術や精神への洞察が全くといって良いほど為されていないなんて。こんな世界が在り得るとは、実際に来て見なければ信じられなかったでしょうね」
鉄と鋼とコンクリートで全身を固く防御しながらも、その内部、心や魂と呼べるものは酷く脆弱で未発達。
ルリコの眼にこの世界は、美味なる肉を殻で守る、高級な貝や甲殻類のように映った。
「うふふふふ。善男善女の皆さん、待ってなさいね。私が、ここをもっと楽しく、住みよくしてあげますからね」
誰に憚ることも無く、存分に力を振るえる格好の遊び場を遂に手に入れた魔界の姫君は、人工的な光に照らされて、慈悲深く微笑み続けるのだった。
11/08/23 12:17更新 / ナシ・アジフ