連載小説
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Can't Stop Lovi'n You
 ネットで調べ尽くしてようやく見つけた夢の国、「Dreams」。男ならば誰もが夢見る桃源郷が広がっているという。それがあながち間違いでもないということは、受付やサービスカウンター、あちこちを歩く従業員を見て十分理解できた。
「本当に美人が多いな。タイプは色々あるけど、完全に男狙いかよここはと言いたくなる」
 接客の基本である明るく元気な従業員が多いのはもちろんだが、受付やサービスカウンターにいるのは、どこかほんわかしていて優しそうな美人だった。今日は行く予定がないが、キャバクラや風俗のエリアもあるという。大丈夫かこの施設、と思ったが、全年齢エリアと成人向けエリアとできっちり区分けされており、そのゲートには凛々しくビシッとした美人が立っていた。出るときは一声かけられるくらいだが、入るときには身分証明とボディチェックを受けなければならなかった。なぜ知ってるのかと言われると、俺の最初の目当てである雀荘コーナーは成人向けエリアにあるからだ。まぁ金が絡む絡まないどちらにせよ、子供にあまり見せられるような遊びではない。その場で健全さをアピールしても、他の雀荘は素行が悪い客や店もある。
「さてと、どんな客が来てるのかちょっと打っていこうかな」

 などと楽観的に構えていたら、あれよあれよという間に俺は見知らぬ美人三人組と卓を囲っていた。そして、その状況は決して楽観視できるものではない。むしろどう見ても絶望。
「ツモ。対々西白中ドラ3で倍満ね」
「……」
 無言で点棒を上家に座る長い銀髪の美人に払う。どう考えても最下位の現状を切り崩す手はない。親が来ることはもうこの対局ではない。次に持ち越そうにも今の負け分を払えば交通費くらいしか残らない。
「どうしたのかしら?ここに座ったときはもう少し元気だったような気がするのだけど」
「さぁ、何が起こってるのかしらねぇ……あら、そういう私もそろそろ焦らなきゃいけない点棒じゃない」
 いくら美人と同じ時間を過ごしているとは言え、こんな状況でクスクス笑われて平常心でいることはできない。しかし今更盛り返すことはできない。ラスト一局では時間が足りなすぎる。ボタンを押してできた穴の中へと手牌と河を流し込む。
「そう言えば、誰がトップだったかしら?」
「えーと……あ、私だわ」
「まぁ、ここまで私達は接戦だったからねぇ。さっきの上がりで確定したのかしら?」
 背筋が震える。早く終わってくれ。このまま終わればとりあえず払えるだけの金額はある。上がれなくても逃げ回ることはできるはずだ。上がりには運が絡むが、逃げるのは技が大きいと俺の知り合いは語っていた。
「さ、オーラスね。面白い手が来ないかしら」
 そう言って対面の黒髪の美人がサイコロのボタンを押し、配牌を見る。逃げるには十分そうな、バラバラの手だ。
「やれやれ、男の癖に逃げ腰だなんて情けないわねぇ」
 いわれ放題だが仕方ない。現に俺は最下位、残された点棒は残りわずかだ。半荘一回でここまで叩きのめされるとは思ってなかった。高レート恐るべし。
「さて、オーラス。初めましょうか」
 下家にいる金髪の美人が、舌なめずりをしながら言った。エロい仕草だがそれどころではない。俺の視線は卓の上を走らせるだけで精一杯だ。

「つ、ツモ。リーチ一発ツモドラドラで満貫……」
「あらおめでとう。最後の最後で粘ったわね」
「ありがとうございます……」
 逃げ回るつもりだったし逃げ道を探るように打っていた。だがそうしているうちにそれなりの形に整ってしまい、なら最後に一矢報いれれば上等とリーチをかけたのが功を奏したのだろう。それでも最下位には変わりはないが、裸一貫で帰らなければならないほどの損害ではなくなったのは、まぁ悪運だけは強かったのかも知れない。
「では、私はこれで……」
「あら、もう帰るの?」
「はい。如何に私が世間知らずか思い知らされましてね。懐も寂しいのでお暇しようかと。細かいのがないんで、負け分は後で砕くなりして計算しておいて下さい。それじゃ」
 正直、これ以上ここで肝を潰すような時間は過ごしたくない。諭吉三枚を取り出して彼女たちに一枚ずつ手渡し、早々に雀荘エリアから離れた。

「結果?惨敗だよ惨敗。完膚なきまでにボコボコにされたわ」
 施設を出て携帯を確認すると、古くからの友人から連絡が入っていたことに気付いた。メールを見ると、時間ができたから飲みに行こうとのことだったので、金がないからそいつの家にお邪魔している。お互い付き合いも長く、フリーの一人暮らしでかつ家が近いとなれば、こういうところが気兼ねなくできるのはなんともはや。
「おいおい。でもまぁ美人相手に囲めたんだし、いいんじゃないの?」
「ま、そういうことにしとくさ」
 正直負けていて、悔しさよりも焦りの方が大きかった。早く終わってくれ、終わらせたい、そう思っていたところが多分にあったからだ。俺にとってはなけなしの金を掛けるほどの高レートをふっかけられた時点で疑うべきだったのだが、最初の3局は無難に乗り切れていたから油断していたのがあるのかも知れない。ほどほどの勝ちや負けならば焦ることはないと。それから彼女たちの牙が剥けるまで気付かなかった俺が間抜けだったのだ。そんな空気から開放されたおかげで、今気持ちよく飲めている。決して強くもなければ量もないが、そんなことなどどうでもよかった。烏龍茶であろうが、今の俺を醒ますことはできないだろう。
「しかし、お前ほかの施設とか見なかったのか?」
「そこそこ稼げたら覗くつもりだったが、それができるほど残してはくれなくてな」
「あーそうか……しかし、あそこでギャンブルはやめたほうがいいかも知れんな」
「アミューズメントエリアとかレストランなら楽しめるかもな。まだ行けてないから検証してないが、何でも従業員が全員美人だって言うからな」
「らしいんだよなぁ。今度休み合わせて行こうぜ」
「金ができたらな」
「そりゃそうだ」
 そう言ってバカみたいに声を上げて笑う俺達だった。

 しかし、事はそれだけでは終わらなかった。俺が奴の家を出てすぐのコンビニの前で、件の三人がたむろっていたのだ。
「……え?」
「あ、やっと来たぁ。レイ!キャミー!」
 何が起こっているのかわからなかった。てっきり他の客からむしっているのかと思いきや、こんなところで何をしているというのか。
「全く、待ちくたびれたわよ。まぁ連絡もせず勝手に待っていただけだけどね」
「え?え?」
「さて、これからお時間は大丈夫かしら?」
「いや、まぁ、明日は休みですけど……」
「なら、たっぷりあるわね。とりあえず朝まで私達に付き合ってもらうから」
「は?」
 全くの急展開である。左腕をリリーと名乗った銀髪の女性が絡みとり、右腕はキャミーと呼ばれていた金髪の女性が大事そうに胸元へ抱え込む。そして背中からはレイと呼ばれていた黒髪の女性が抱きつき、首筋に顔をうずめていた。皆が皆ご立派な胸をお持ちなので、つまりそれが何を意味するかというと俺の体にそれが押し付けられて股間が危険である。察して欲しい。

 そしてやってきたのは、うちから歩いて15分ほどのところにあるラブホテルだった。ちょっと待てと俺は言ったが聞き耳を持たれず、まるで出荷される家畜のように俺は部屋へと連れ込まれた。
「いや、あの、何がどうなってるのか全くわからないんですけども……」
「いいからいいから。何も心配しなくていいよ」
 もしかして彼女たちは酒の勢いか何かだろうか。しかし酒の席で粗相をするのは男が大半であり、女性の方からこういう粗相をするなどジェンダーの差が考えられてきた現代ですらあまりないし、今の彼女たちから酒の匂いはしていない。まぁ情報統制か何かで流れてこないだけかもしれないが、それにしたって肉感的なスタイルを持つ美人三人に同時に言い寄られるなどという美味しい思いをする機会など可能性としてはオーナインシステムもいいところだろう。
「さて、まずはシャワー浴びましょうか。汗とタバコの臭いは落としたいからね」
「確かに。雀荘にタバコは付き物だけど、男といる時までそんな臭いさせたくないわ」
「え?え?」
 未だに状況が理解できない。しかも彼女たちは自分の服だけでなく俺の服まで巧みに脱がせると、そのまま風呂場に入った。
「びっくりしてる?」
「ええ、そりゃぁ……」
「ま、わからなくもないけどね。私達も正直、ちょっと驚いてるし」
 なんで仕掛けた張本人たちが驚いているのか。
「でも止められないのよ。もう貴方とじゃないとダメって。ほかの二人もそうみたいだし、なら共有しちゃおうって」
「は?共有?いやとりあえず何がどうなってこうなったのかを聞きたいんですけどもぶ」
「はいはい。説明は後でしっかりしてあげるから、今は私達の体を楽しんでてね」
 キャミーさんのおっぱいに顔を挟まれると、腕を後頭部に回されて強制的に黙らされる。柔らかいのに弾力があって顔を押し返してくるが、呼吸ができないほどではない。しかし戸惑いが過ぎて思考停止状態だ。思わず腰に手を回してしまう。
「あん、もう……でもいいよ。貴方なら許しちゃう。何でもしてあげるし、何でもして欲しい」
「ちょっとキャミー、独り占めとかずるいよぉ」
 すると、リリーさんが背中から抱きついてくる。やわからな体の感触にが背中から腰から伝わり、背筋を何かが走る。すると今体を洗っているのはレイだけだ。見えないし顔も動かせないけど。
「そのままでいいから聞いててね」
 とりあえず黙っておく。
「あのね、私達人間じゃないの。魔物娘って呼ばれている存在」
「……ファ?」
 胸で顔を塞がれているからまともな返事を返せないが、さらにわけがわからなくなっている。頭を冷やそうにもこの感触がそれを許してくれない。いい加減蕩けそうだ。
「私が、ヴァンパイアと人間のハーフ。ダンピールって言われてるわね」
 キャミーさんがそう言うと、リリーさんが続く。
「……私は、淫魔のサキュバス。精を糧に生きる魔物娘よ」
「そんで今体洗ってるレイがクノイチね」
「くノ一?忍者?アイエエエ?」
「それは違うわね。まぁ違う意味で慈悲はないと思うけど」
「ハイクを詠みなさい、介錯してあげるから」
「アイエエエエエエエエエエッ!?」
 ノリのいいレイさんについ乗せられてしまった。

 そしてあれよあれよと言う間に気付けばベッドの上でくっついていた。左側にリリーさん、右側にキャミーさん、上にレイさんがいる。腕はそれぞれの胸に抱えられ、手のひらは股間に当てられていた。三人とも既に隠すことをやめたのか、翼と尻尾を出している。もはや俺はどうしていいのかわからないので、彼女たちのなすがまま。
「んで、さっきの続きなんだけど……魔物娘って、愛に生きる生き物なの」
「……ファッ?」
「人間を愛し、愛されるために生まれてきた存在なのよ。そして一度愛した人間を離すことは絶対にないの。あの施設は、人間たちに至福の時間を過ごして欲しいという魔物娘の本能と、伴侶が欲しいっていう私達魔物娘の願望を叶えてもらうための施設といってもいいのよ。売上はほとんど度外視ね」
「なんでそんなに詳しいんですか……まさか?」
「そ。私達はあそこのメンバーとしてバイトで働いていたの。伴侶が見つかるまでの間という契約でね」
「契約期間が雑じゃないですかそれ」
 割と真面目な話っぽいので、なんとか相槌を返す。その間にも両方の肩や首筋にリリーさんとキャミーさんの唇が吸い付いているため、常に息子は張っている状態だ。
「魔物娘の社会なんてそんなものなのよ?でもそろそろ、真面目な話よりもっと繋がりたいなぁ……」
「もう、待たせないでよぉ」
「ごめんごめん。でも私達魔物娘は、相手の男性を絶対に一人になんてさせない。これだけは約束できるわ」
「……」
 なかなかとんでもない話になっている。よくわからないがこの状況を省みるに、どうやら俺はこの三人と同時に付き合うハーレム展開のようだ。男に嫉妬されること間違いなしのリア充ロード。誰かを抱きしめたいのに腕が動かない。
「さ、まずは私達のご奉仕、たっぷり受けてもらうわよ?」
「お返しは、下の子の白い物でお願いね?」
「早くてもゆっくりでもいいの。それなりの楽しみがあるし……」
 そう迫ってきた美女たちに俺が返せたことなどただ一つしかなかった。
「……お手柔らかにお願いします」

 まずはレイさんによるスマタだった。もともと上に乗っていたのが彼女だからというのもある。両腕をようやく解放されて彼女を抱きしめると、とろけた表情を見せてくれた。
「あん……優しいのね。あんなに無理矢理したのに……」
「そうまで言われたら俺だって男だよ。体をこんなに火照らせた美人さん相手に何もしないままなんて帰れない」
「嬉しいっ……イっちゃいそう……」
 レイさんが全力でしがみついてくれる。その間にも、背中や脇から二人の口づけは止まらない。今頃全身キスマークだらけじゃないだろうか。せめて見えるところは勘弁してもらいたい。
「ん……あむ……んんんんんんんんんんんっ!?」
 レイさんと繋がる唇。それで力が抜けたのか腰が落ちると、彼女の股間を俺の息子が擦り上げる。かなりの刺激でこらえるのがやっとだが、それ以上に彼女の反応が凄かった。全身を震えさせたまま全力でしがみつく。胸が潰れ、彼女の股間と腹で股間が挟まれる。その刺激だけで出してしまった。
「はぁッ……」
 倒れ込みそうになるのを、リリーさんとキャミーさんが支えてくれた。俺とレイさんの腹に大量にぶちまけた精液を、二人が舐め上げていく。
「んむ……んふっ……」
「はむ……んんっ……」
 こそばゆい刺激だけで背筋が震え、まだ股間が硬くなる。飲み下すたびに震える体が、精飲だけで彼女たちに快感を伝えていることが分かる。
「もっと、もっと欲しいの……」
 キャミーさんのその言葉に、反論する理由などなかった。びしょびしょを通り越して大洪水である彼女の股間にいきなり突き刺していく。
「あああああああああああああああああああっ!?」
「っ!?大丈夫ですか!?」
 彼女の絶叫でふと我に返る。いけない、いくらほぐれていようがいきなり突っ込むとそりゃ痛いだろう。そう思って抜こうとすると、彼女の脚が腰に絡んで離さない。
「離れちゃダメ!気持ちイイの、飛びそうなの、中に欲しいの!」
「ええっ!?」
 今度はそのまま脚を下ろしたキャミーさんがしがみついてくる。キス付きで。
「あむ、お願い、んちゅ、欲しいの、中に。んむっ」
 口の中から骨を伝う艶かしい音。レイさんに負けず劣らずの大きさと柔らかなおっぱい、全力で俺に奉仕する彼女の中に、俺はなすすべもなく放つ。
「キャミーさん、出るっ!?」
「きた、きたのおおおおおおおおおおっ!」
 キャミーさんが絶頂すると、搾り取るような動きを始めた。俺はとっくに出し切っているのに、残った分まで絞るかのように。
「あ、あぁ……いい……もう無理。離れられない、最高ォ……」
 その表情がどれほどの快感かを物語っている。力が抜けてキャミーさんから抜けると、間髪入れずにレイさんがまたがった。
「ホントは私からしてもらうつもりだったのに……まぁいいわ。まだいけるわよね?」
「ええ、まだまだ」
「ふふっ、二回も出してちょっと気持ちに余裕出てきた?」
「かも知れませんね」
「いいわ、その余裕。全力で崩してあげる」
 そう言うと彼女は、キャミーさんの愛液と俺の精液まみれの息子を口に含むと、緩急のある舌の動きと、時折吸い込むような動きであっという間に起こしてしまった。リリーさんはいつの間にか背中から抱きついて、熱い吐息を耳元に漏らしている。
「さぁ、いくわよ……んんっ!?」
「くあっ!?」
 彼女はキャミーさんとは違い、包み込んで舐め上げるような動きで愛撫する。そして俺を挟んでリリーさんとキスを始めた。妖しげな水音がまるで耳を犯すようだ。リリーさんもいつの間にか、俺とレイさんを抱きしめるように腕を動かしていた。腰を上下に動かせない俺とレイさんは、ゆっくりと腰を回すように動かしていく。
「あん、これでも、結構気持ちイイ……」
「私を無視しないでレイい……寂しいの、切ないのお……」
「ごめんなさいね、あむ……」
 少し離れただけでこれである。リリーさんは甘えんぼなのかも知れない。しかしそんなことを考えている俺に余裕がなくなってきている。彼女たちとキスをする度に痛いほど玉が動くのだが、その分ゴリゴリと我慢が効かなくなっている気がする。出したい、イキたいという欲望がせり上がる。
「レイさん、出る出る出る出るッ!」
「んむっ……んんんんんんんんんんんんんんんんんんんっ!」
 と思っていたら、レイさんの中へ一気にぶちまけた。全身が震えだし、力一杯しがみつく。彼女の中も思い切り抱きしめるかのように包み込んできた。そのくせ天井だけは開いており、あまりの勢いにレイさんが悶えているようにも見える。
「ふはぁ……凄かったぁ……」
「あんむっ!」
 レイさんが脱力して倒れると、すかさずリリーさんが正面から抱きついてキスをしてくる。やはりこのキスには、俺の精力を回復させる能力があるんだろう。
「……ん?ああ、ごめんねリリー。んっ……」
 未だに硬いから抜くのに一苦労しているようで、完全に抜ききったときは再び悶絶した。軽い絶頂を迎えたのかもしれないが、俺にそれを考察している暇などなかった。唇を離すと、リリーさんは少し拗ねたような表情を見せる。
「もう、こんなに待たせて。絶対に容赦なんかしてあげないんだからね!」
「ええ、よろしくお願いしますよ」
「きっちり絞ってあげるからね!」
 そして、一番待たせてしまった彼女は十分以上にほぐれているようで、そのまま遠慮なしに押し込むように入れた。しかし、彼女の歓迎もまた凄まじく、強く抱きしめたまま擦るかのような動きで俺を震えさせる。キスをしながらこれだけの動きができるとは、彼女たち魔物娘とはいかに恐ろしい存在か思い知らされた。そして、商売でセックスをする風俗嬢には、絶対にここまでの奉仕はできないだろうなとも思う。
「んうんう……」
 彼女は舌を絡め合いながらも何かを伝えようとしている。唇を離したくないが言葉を伝えたい彼女がとった行動は、背中に指で文字を描くことだった。その五つのひらがなは、長く使い続けられ、陳腐と化した言葉だが、それでもこの状況での彼女たちの正直な気持ちだろう。それに応えるべく、俺は腰を動かしていく。
「んひゃっ!?」
 それに驚いたのか唇を離してしまった彼女だが、その意味に気づいたのか蕩けるような表情を向けてくれた。美しい中に可愛いと言えるその表情だけで俺はまだ頑張れる。
「ああっ!?んひぃっ!イクイクイっひゃうぅううううう!?」
 そうは言うが俺も苦しい。いつ出てもおかしくない。そう思った矢先だった。
「出るよリリーさんっ!」
「きひゃああああああああああああああああああっ!?」
 そして彼女は俺と一緒に倒れ混んでしまった。そのまま疲れもあり、眠り込んでしまった。

 朝になると自然と目が覚めた。部屋に備え付けられた時計を見ると、表示された残り時間にはまだ余裕はある。どうやらここは、先にコースを選んで料金を支払うタイプらしい。結局あのまま全員眠り込んだのか、リリーさん以外は離れていてくれたのが幸いだった。
「さて、シャワー浴びてこよう……」
 突然来たのだから替えの下着などない。帰ったら着替えることにするが、果たして彼女たちはどうするつもりだろうか。放っておいて帰るというのはあまりにも失礼だろう。起こしてもいいのだが、あれだけ頑張った彼女たちに無理を強いるというのもアレだ。すると、キャミーさんが起きだした。
「ん……」
「おはようございます」
「ええ、おはよう……あら、もう出る準備しちゃったんだ?」
「ええ、まぁ。そろそろ時間が、ね」
「あら、もう一度一回りする時間は確かになさそうね。とりあえずここを出てから、今後のお話をしましょうか」
「そうですね……」
「……心配?」
 キャミーさんがいつの間にか近づいて俺の目を覗き込む。不安がないかと言われれば嘘になるが、かといって彼女たちと離れることなど俺にはもう考えられない。俺はそう彼女に伝えると、柔らかく微笑んでフレンチキスをくれた。
「なら、何の問題もないわ。さ、二人を起こしましょうか」
「そうですね」
「後、私達に敬語はいらないわよ。理由はおわかり?」
「……わかったよ」
 そう。離れるつもりがないということは彼女たちと家族になるということだ。書類をどうするのかなどが不安だが、ルームシェアとか同棲などがあるんだし、まぁそこの問題はないだろう。

 そして俺は今のワンルームを引き払い、広くて設備のいい3LDKのマンションを借りた。俺一人の稼ぎならこんな部屋に住むのは不可能もいいところなのだが、俺と同じ時間に働いている妻達の稼ぎが思ってたよりものすごく、正直かなり贅沢な暮らしをしている。遊ぶお金すら彼女たちが全部出してくれているから恐ろしい。俺の稼ぎは俺個人の年金とか保険料くらいしか支払われておらず、ほとんど全額が少額証券取引ソフトで管理されている。なんで妻達がこんなに稼いでいるのかというと、このソフトを開発した企業で勤務しているというのだから驚きだ。そりゃ儲かるわけである。他に変わったことといえば、俺が一人で出掛けることがほとんどなくなったことだろう。買い物一つにしても三人の内誰かがついてくるし、遊びに行くときは三人一緒なのだ。一人でフラフラする気軽さを失った一抹の寂しさはあれど、それを埋めてくれるほどに彼女たちは俺を愛してくれるし、一緒にいて甘えてくれる。そんな生活の中で思うのは、俺はあの施設で間違いなく夢と暖かな家庭を手にしたのだと、胸を張って言える自信だ。
14/05/27 00:33更新 / ☆カノン
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■作者メッセージ
 ギャンブルはほどほどに。エロシーン書いてたら滅茶苦茶長くなったけど、渾身の出来だと思っている。

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