Sword summit
その昔、魔王がまだ猛々しくあった頃の話である。とある国に仕える一人の女騎士がいた。彼女は聡明で見目麗しく、また強く気高くもあった。その性根と実力から成された数々の偉業は、騎士団やその国の民だけではなく、周辺の国家からも羨望を受けるほどであった。
曰く、平民の地を荒らす邪龍を屈服させて守り神として人々と共にある幸せを教えた。
曰く、魔物の大軍に国境を荒らされれば一人で殲滅した。
曰く、当時の専門家が誰も解読できなかった古文書を解読し、解説書まで作り上げた。
曰く、生き様の美しさは聖霊ですら彼女を愛した。
彼女は生きる伝説となり、その死後に後世まで語り継がれる世界が認める英雄となった。
しかしそんな彼女でも、叶えたかったただ一つの願いだけは手にできなかったという。それは彼女の生き方が、周囲の期待が、そして時代が許してはくれなかった。あまりに大きすぎる様々な偉業のためか、国のために生きることを強いられ、彼女自身もまた、それを誇りとしていたからであり、そのために彼女自身、死ぬ間際までその想いを忘れていたからである。
時は過ぎ、彼女の死後数百年。魔王の代が変わり、世界の魔物が美しくまた愛らしい人間の女性に近くなるといった異変が起こった。そんな魔物達は魔物娘と呼ばれ、人間の男性と結ばれて愛し合うようになる。これはそんな狂乱の世界改変からまた数十年経った頃の話になる。
一人の女性が、いや、魔物が彼女の眠る墓に現れた。世界で最も偉大な英雄として名高い彼女の墓は、現在の世界に大きな影響を与える主神教団によって厳重に管理されている。見知らぬ人間が許可なく入ろうものなら、そこを守護する騎士団によって即座に処刑されても文句が言えないほどだ。しかしこの魔物は悠々と墓に近付き、あろうことかその骨と遺品が埋まっているであろう土の上に立ち、墓に対して教団が配布する経典通りの礼をした。
「……あなたの伝説、調べさせてもらったわ。眉唾物もあるだろうと思っていたけど、まさかほとんどが事実だったとはね。やはり神代と呼ばれる時代に生きた人間は恐ろしいものね」
その言葉は未だ眠る彼女に対するものだろうか。それとも魔物自身が吐きたくなった何かだったのだろうか。
「確かに凄いけど、でも一つだけ許せないものがあったわ。あなたが知らないまま亡くなったことが許せないものが」
誰に聞かせるわけでもないであろうに、勿体つけた話し方をする彼女。
「それはあなた自身が後世に血脈を残さなかったこと。生き物として、人間としての幸せを知らないまま亡くなったこと。私は……いや、私達はそれすら許さなかった当時の政治家達を許せないし、そしてそれをよしとしていたあなた自身も許せない」
語る毎に感情がこもり、魔物の周囲に魔力によって立ち上る靄のようなものが見え隠れし始めた。
「でもあなたは、この世界では幸せになれない。あまりにも神格化されすぎて、あなたを受け入れてくれるであろう男の子はいない。だから私はあなたを、違う世界へと送ってあげる。これは私の我が儘だけど、諦めて受け入れて頂戴な」
そして立ち上る魔力を右の掌に込めると、球体状になったそれは魔物自身が自慢にしている胸部の膨らみよりも大きくなった。
「さぁ……目眩く幸悦と愛欲の世界へ、いざ!」
そしてそれを放った時、あるべきものがあるべき場所からなくなった。騒ぎになったのは、彼女の生誕祭の準備に入ったときだったが、誰しもが魔物の仕業であると思いつつ、誰一人として一体誰がやったのかわからずじまいであった。
所変わって現代日本のとある市街。こちらにはいつの間にか魔物世界とのゲートが繋がった影響で、魔物娘達が少しずつ暮らしやすいように様々な法整備や施設ができつつある。元々それほど大した名物もないこの地では、街起こしの一環として彼女達も市民として認めるように国に働きかけたところ、人工増加策がなかった政府が願ったりかなったりとばかりに承認したことで帰化する魔物娘達も後を立たない。過疎化を辿るかと思われたこの街は急激な人工増加により発展を遂げ、魔物娘バブルとまで呼ばれるようになる。巨大なアミューズメント施設である「Dreams」建設が認められたのもこのためだ。今や日本における大都市として、世界各国からも観光客が集まるようになってきた。
そして今、そんな街に生きる一人の青年が、疲れた顔をして深夜自転車に乗って自宅へと家路を辿っていた。
「はぁ……どいつもこいつもみんな美人さんと結婚して子供もいて毎日楽しそうだってのに、なんで俺はまだ一人でこんなに疲れる想いをしなきゃならんのだ」
誰一人として聞いていないつぶやきを夜空に吐き出しながら、ひたすら自転車を漕ぎ続ける青年。特筆すべき見た目の特徴が特になく、ごくごく一般的な青年と言っていいだろう。
「幸せって、なんなんだろうなぁ。でも男だから独り身で寂しいなんてネタでしか言えないよなぁ」
そして彼は勤務先のスーパーマーケットで買ってきた夕食を提げて自宅にしているマンションの自室へと入る。勤務先の関係上実家から引っ越して来たため現在独り暮らしの彼の家には誰もいない……はずだった。
「はぁ……ん?誰かいるのか?」
鍵を開けて扉を開き、中に入って明かりをつけると、客間にしているリビングで寝転がっている人の姿が見えた。それは見目麗しい全裸の女性であり、何故かその側には銀色に光る西洋風の甲冑のようなものと赤く染まった西洋剣のようなものが置かれている。
「なんじゃこれ?」
彼は即座に写真を撮り、似たようなものがないかスマートフォンで検索する。しかし、それらのものは特に業物というわけでもないからか、全く情報が出てこない。
「とりあえず、なんでうちにこんな美人が……なんだこの紙」
彼は仰向けで寝ている彼女のお腹に置かれた紙を手に取る。すると彼女の体がピクリと反応した。
「うおっ!?」
そしてその紙に書かれた文字を読む暇もなく、彼女の瞳がうっすらと開く。
「ここは……?私は、一体……?」
さらに驚くことに、見ただけでわかるほど艶やかな質と艶やかに光る銀髪、見ているだけで吸い込まれそうなほど透き通った蒼い瞳、黄金比と表せそうなほど整えられた顔立ちと肉体のスタイルからはどうみても出てこ無さそうな日本語で彼女は呟いたのだ。
「な、な……」
青年が狼狽えるのも無理はない。すると彼は慌てて手に取った紙を読む。するとそこには、驚くべき事が書かれていた。
息子よ、あなたの同級生や後輩たちがどんどんと結婚し子育てと夫婦生活に勤しむ中、未だに恋人の話すら持ってこないあなたのために、とある人からのご親切で女性を紹介してくださるそうです。どうか二人でお幸せに。孫ができたら抱かせてください。 母と父
「ファアアアアア!?」
「旦那様、どうされたのですか?」
「キャアアアアアシャベッタアアアアアア!?」
現実についていけず、彼の精神がパンクするのも無理はないだろう。その隣できょとんとする彼女の姿がまた非常に愛らしいためかなりシュールではあったが。
「と、とりあえず俺のお嫁さん、ってことでいいの?」
「そうですよ、修也♪」
しばらくして再起動した彼の精神は、互いの自己紹介をするというスタート地点にようやく入れたようだ。だがそれも、彼女が裸のまま彼に抱きつき、まるで懐いた犬のように体を擦り付けて甘えながらという非常に甘ったるい空気の中ではあるが。
「いやあの、アニーさん?俺は結構自分の事色々喋ったつもりなんだけどね?君の事が何にもわからないよ?」
「私にもわからないんですよぉ……死んだはずの自分が何故か魔物娘になって甦ったと思ったらいきなり飛ばされた先がここだったんです」
少し泣きそうになっている彼女、アニー。それはまさしく、かの世界で大英雄となった彼女のことであり、その傍らにあった鎧と剣は彼女がまだ生きていた頃に使われていたものである。しかも鎧にも剣にも意思があるとか。
「そんで、その彼女達が俺と繋がりたいけど媒体となる女性が魔物娘がいない、と」
「そうなんですよねぇ」
「アニーさん自身はなんの魔物娘になったの?」
「ふっふっふー、聞いて驚いて下さいよ!屍の王者のワイトなんです!」
青年、田所修也から離れたアニーは座ったまま胸を張りながら自慢げな表情で堂々と言い放った。しかし修也の反応が今一芳しくない。
「ワイトってあれ?打点300ガード200なのに王様になったら打点が無限に上がっていくアンデッド?」
「それ何のワイトなんですか!?」
真顔のままあまりにもメタ過ぎるネタを放った修也に驚きと呆れの視線を飛ばすアニー。懲りずに話そうとするが、抱きついてキスで黙らせた。
「もう、そんなことより……」
そしてそのまま物語のお姫様を抱えるが如く修也を抱えたアニーは寝室に入ると、修也を寝かせて上に乗った。
「夫婦が床についたら、することは一つ。ですよね?」
修也も誤魔化しきれない熱と獣欲に負け、着ていた制服を脱いで彼女と向き合った。そんな修也をアニーは悦に入ったような蕩けた笑顔で迎える。
「ふふふ、やはり男性から感じられる温もりは格別ですねぇ」
「これは……抗えない……」
抱き合うだけで満面の笑顔になり、瞳を潤ませて蜜が溢れるアニー。始めて抱く女性の体の柔らかさに溺れそうな修也。これには思わず修也の相棒が反応する。
「……ん?これは……」
「あひっ!?」
固くなっていく修也の相棒に気付いたアニーの体がさらに熱を持つ。
「ふふふ……私に反応してくれたんですよね、これ?」
「あぁ、そうだよっ……」
「あぁっ!?」
その言葉を囁いた途端、アニーの体が震えて悦楽の声が響く。
「はぁ、はぁ……その一言だけで、体が昇ってしまいました……」
「すごいな、女の人って……」
「もう我慢できません♪」
そういったアニーは寝転がって修也の上に乗ると、立ち上がる相棒の真上に腰をおろした。
「もっといちゃいちゃべたべたしたかったんですけど、もうお腹が欲しい欲しいって……ですから、いただきまぁす♪」
「ちょ、まだ心の準備やらなんやら……ひいいいいいいい!?」
修也が驚くのも無理はない。いつの間にか彼女の中に、自分の相棒が飲み込まれたのだから。
「あああああああああああっ!?」
「ちょ、そんな一気にいったら痛いんじゃ!?」
「痛くなんてないです♪いい、いい、気持ちいい♪お腹に響くのすんごくいい♪」
アニーは修也の上に倒れ込むと、乳首を擦りあわせながら上下運動を始めた。その蕩けた笑顔に思わず修也も口づける。すぐさま互いの舌を吸い、口腔内部を貪り合う深いもの。修也も相当興奮している最中、アニーの背中にまた一つ柔らかい影が。
「修也さぁん、なんで私がいながら女の子連れ込んでるのぉ?」
それは彼の隣の部屋に住むOLである坂本瑞樹。本来顔見知り程度でしかないはずの彼女がなぜ彼の家にいきなり押し掛けたのか、それは彼女の右手に宿る赤い籠手が全てを物語っていた。
「ちょ、坂本さん!?」
「もぉう、そんな他人行儀な呼び方しないれよおっ!」
「いや、そんなことより大事なことがんむっ!?」
何かを察して顔を放したアニーの後すぐさま修也に絡み付く瑞樹。彼女の右手に宿るのは、アニーが持ってきた剣である。この剣もまた、あの魔物によって流し込まれた魔力によって意思を持ち、鎧と共に隣の部屋に押し入ると、テレビを見てゲラゲラ笑っていた彼女に剣自身を握らせた結果、瑞樹に魔力と剣の意識が流れ込んでこうなった。
「ふふふ、もうすぐ鎧も女の子を捕まえてきてくれるんじゃないかしら……♪」
中にある相棒を感じながら震えるアニーにどういうことだと聞きたい修也だが、唇から離れないままビクビクと体を震えさせる瑞樹のせいで喋れない。そして瑞樹がおもむろに修也の体を起こすと、背中にいきなり温もりが。
「修也くぅん……♪私、もっとあなたと仲良くしたいなぁ……♪」
熱の籠った吐息を耳から被せながら抱きつく彼女は河村和美。修也の向かいの部屋に住む美しい未亡人である。修也とは時折差し入れをしあう仲ではあるが、年の差もあって互いに恋愛感情が芽生えることはなかった。 しかしこれもまた、いかなる手段を使ってか鎧が彼女の部屋に侵入しいきなり彼女を中に放り込み魔力浸けにすることで、修也への愛欲を昂らせた結果である。その鎧はどこにいったかと思えばパッと見ではわからないが、それは彼女が愛する男と抱き合っているから姿を消しているためであろう。よく見れば和美の身につけたアクセサリーに、付けられた箇所を防御する防具を象ったものが加えられていることに気付けるが、今の修也にそこまで見ろというのは酷であろう。
「ちょ、みんなどうなってんの!?」
「みぃんなあなたと仲良くしたかったんですよぉ、私にはわかりましたよぉすぐに♪」
ぐちゃぐちゃと水音をさせながら、本気で搾りにきたアニーととにかくべったりくっつく二人に屈服しそうな修也。
「とにかく、今を楽しみましょう……?」
「ほら、次がつかえてるのよ……」
「んっ、んっ……」
そして、とうとう我慢が出来ずにアニーの中に叩き込んでしまう。
「んああああああああ来たああああああああ♪」
「いいなぁ……ね、私も限界なのぉ……」
そしてアニーが気を失い、背中から布団に倒れ込むと、アニーから抜けた相棒はまだまだ聳え立つ肉塔となっていた。そこに股がるのは口づけをやめない瑞樹。
「う、うああああああああ♪」
「ちょ、瑞樹さあああっ!」
そして迎え入れた瑞樹が突然唇を放して背中を反ると、待ってましたとばかりに和美が唇を奪う。瑞樹は思わずそのまま腰を上下運動しながら叫び、和美は修也の右手を自らの泉へと誘う。
「ほら、んっ、もっと弄って、はぁんっ♪」
「あぁぁぁぁぁぁぁもうだめこれ癖になりゅうぅぅぅぅぅ♪」
「み、瑞樹さんも和美さんもイったばかりでそんなにしたら、あぁもう無理無理無理ぃっ!」
和美の口づけは瑞樹とは違い、必死に食らいついたりはしないものの何度も何度も繰り返す。その言葉を、声を欲しているが故だろうか。瑞樹はもはや自分がどうなっているのかもわからないほど意識が下腹部に持っていかれている。
「ひゃあああきたああああ♪熱い、気持ちいい……あぁ……」
これほど激しい責めには修也もたまらず二発目を発砲。その勢いで瑞樹もまた気を失い、倒れ込む。そしていよいよ和美がその相棒を泉へと迎え入れた。
「はぁぁぁぁぁぁ♪旦那には悪いけど、あの人より断然気持ちいいのぉ……♪」
「そ、そんなですかっ!?」
「うん、うん♪いいのぉこれぇ♪」
和美の責めも激しさよりは優しさに溢れたものだった。しかしそれは締め付けが緩いわけではない。優しく子宮が相棒を擦り、搾る。それはまさに優しく抱き締める母親のようなものであった。すると、瑞樹の右手に嵌められた籠手が激しく震えると、瑞樹の意識が起こされる。
「んんっ♪まさかエッチであんなにイっちゃうなんて……修也さん凄ぉい……」
その目覚めた姿には先程までの激しさは完全に鳴りを潜め、甘く蕩かすような声でゆっくりと背中に寄り添って胸を背中に押し付ける。
「お礼にぃ……背もたれになってあげりゅう……」
「瑞樹さん、和美さん……」
前後を柔らかな膨らみに挟まれ、甘やかな雰囲気の中でゆっくりと漏らすように三発目が放たれた。
「んんっ♪いいわぁこの感覚……癖になりそう……」
「この後どうするぅ……?まだするぅ……?」
「あ、あの、その……」
彼らの饗宴は、朝を迎えるまで続いた。
曰く、平民の地を荒らす邪龍を屈服させて守り神として人々と共にある幸せを教えた。
曰く、魔物の大軍に国境を荒らされれば一人で殲滅した。
曰く、当時の専門家が誰も解読できなかった古文書を解読し、解説書まで作り上げた。
曰く、生き様の美しさは聖霊ですら彼女を愛した。
彼女は生きる伝説となり、その死後に後世まで語り継がれる世界が認める英雄となった。
しかしそんな彼女でも、叶えたかったただ一つの願いだけは手にできなかったという。それは彼女の生き方が、周囲の期待が、そして時代が許してはくれなかった。あまりに大きすぎる様々な偉業のためか、国のために生きることを強いられ、彼女自身もまた、それを誇りとしていたからであり、そのために彼女自身、死ぬ間際までその想いを忘れていたからである。
時は過ぎ、彼女の死後数百年。魔王の代が変わり、世界の魔物が美しくまた愛らしい人間の女性に近くなるといった異変が起こった。そんな魔物達は魔物娘と呼ばれ、人間の男性と結ばれて愛し合うようになる。これはそんな狂乱の世界改変からまた数十年経った頃の話になる。
一人の女性が、いや、魔物が彼女の眠る墓に現れた。世界で最も偉大な英雄として名高い彼女の墓は、現在の世界に大きな影響を与える主神教団によって厳重に管理されている。見知らぬ人間が許可なく入ろうものなら、そこを守護する騎士団によって即座に処刑されても文句が言えないほどだ。しかしこの魔物は悠々と墓に近付き、あろうことかその骨と遺品が埋まっているであろう土の上に立ち、墓に対して教団が配布する経典通りの礼をした。
「……あなたの伝説、調べさせてもらったわ。眉唾物もあるだろうと思っていたけど、まさかほとんどが事実だったとはね。やはり神代と呼ばれる時代に生きた人間は恐ろしいものね」
その言葉は未だ眠る彼女に対するものだろうか。それとも魔物自身が吐きたくなった何かだったのだろうか。
「確かに凄いけど、でも一つだけ許せないものがあったわ。あなたが知らないまま亡くなったことが許せないものが」
誰に聞かせるわけでもないであろうに、勿体つけた話し方をする彼女。
「それはあなた自身が後世に血脈を残さなかったこと。生き物として、人間としての幸せを知らないまま亡くなったこと。私は……いや、私達はそれすら許さなかった当時の政治家達を許せないし、そしてそれをよしとしていたあなた自身も許せない」
語る毎に感情がこもり、魔物の周囲に魔力によって立ち上る靄のようなものが見え隠れし始めた。
「でもあなたは、この世界では幸せになれない。あまりにも神格化されすぎて、あなたを受け入れてくれるであろう男の子はいない。だから私はあなたを、違う世界へと送ってあげる。これは私の我が儘だけど、諦めて受け入れて頂戴な」
そして立ち上る魔力を右の掌に込めると、球体状になったそれは魔物自身が自慢にしている胸部の膨らみよりも大きくなった。
「さぁ……目眩く幸悦と愛欲の世界へ、いざ!」
そしてそれを放った時、あるべきものがあるべき場所からなくなった。騒ぎになったのは、彼女の生誕祭の準備に入ったときだったが、誰しもが魔物の仕業であると思いつつ、誰一人として一体誰がやったのかわからずじまいであった。
所変わって現代日本のとある市街。こちらにはいつの間にか魔物世界とのゲートが繋がった影響で、魔物娘達が少しずつ暮らしやすいように様々な法整備や施設ができつつある。元々それほど大した名物もないこの地では、街起こしの一環として彼女達も市民として認めるように国に働きかけたところ、人工増加策がなかった政府が願ったりかなったりとばかりに承認したことで帰化する魔物娘達も後を立たない。過疎化を辿るかと思われたこの街は急激な人工増加により発展を遂げ、魔物娘バブルとまで呼ばれるようになる。巨大なアミューズメント施設である「Dreams」建設が認められたのもこのためだ。今や日本における大都市として、世界各国からも観光客が集まるようになってきた。
そして今、そんな街に生きる一人の青年が、疲れた顔をして深夜自転車に乗って自宅へと家路を辿っていた。
「はぁ……どいつもこいつもみんな美人さんと結婚して子供もいて毎日楽しそうだってのに、なんで俺はまだ一人でこんなに疲れる想いをしなきゃならんのだ」
誰一人として聞いていないつぶやきを夜空に吐き出しながら、ひたすら自転車を漕ぎ続ける青年。特筆すべき見た目の特徴が特になく、ごくごく一般的な青年と言っていいだろう。
「幸せって、なんなんだろうなぁ。でも男だから独り身で寂しいなんてネタでしか言えないよなぁ」
そして彼は勤務先のスーパーマーケットで買ってきた夕食を提げて自宅にしているマンションの自室へと入る。勤務先の関係上実家から引っ越して来たため現在独り暮らしの彼の家には誰もいない……はずだった。
「はぁ……ん?誰かいるのか?」
鍵を開けて扉を開き、中に入って明かりをつけると、客間にしているリビングで寝転がっている人の姿が見えた。それは見目麗しい全裸の女性であり、何故かその側には銀色に光る西洋風の甲冑のようなものと赤く染まった西洋剣のようなものが置かれている。
「なんじゃこれ?」
彼は即座に写真を撮り、似たようなものがないかスマートフォンで検索する。しかし、それらのものは特に業物というわけでもないからか、全く情報が出てこない。
「とりあえず、なんでうちにこんな美人が……なんだこの紙」
彼は仰向けで寝ている彼女のお腹に置かれた紙を手に取る。すると彼女の体がピクリと反応した。
「うおっ!?」
そしてその紙に書かれた文字を読む暇もなく、彼女の瞳がうっすらと開く。
「ここは……?私は、一体……?」
さらに驚くことに、見ただけでわかるほど艶やかな質と艶やかに光る銀髪、見ているだけで吸い込まれそうなほど透き通った蒼い瞳、黄金比と表せそうなほど整えられた顔立ちと肉体のスタイルからはどうみても出てこ無さそうな日本語で彼女は呟いたのだ。
「な、な……」
青年が狼狽えるのも無理はない。すると彼は慌てて手に取った紙を読む。するとそこには、驚くべき事が書かれていた。
息子よ、あなたの同級生や後輩たちがどんどんと結婚し子育てと夫婦生活に勤しむ中、未だに恋人の話すら持ってこないあなたのために、とある人からのご親切で女性を紹介してくださるそうです。どうか二人でお幸せに。孫ができたら抱かせてください。 母と父
「ファアアアアア!?」
「旦那様、どうされたのですか?」
「キャアアアアアシャベッタアアアアアア!?」
現実についていけず、彼の精神がパンクするのも無理はないだろう。その隣できょとんとする彼女の姿がまた非常に愛らしいためかなりシュールではあったが。
「と、とりあえず俺のお嫁さん、ってことでいいの?」
「そうですよ、修也♪」
しばらくして再起動した彼の精神は、互いの自己紹介をするというスタート地点にようやく入れたようだ。だがそれも、彼女が裸のまま彼に抱きつき、まるで懐いた犬のように体を擦り付けて甘えながらという非常に甘ったるい空気の中ではあるが。
「いやあの、アニーさん?俺は結構自分の事色々喋ったつもりなんだけどね?君の事が何にもわからないよ?」
「私にもわからないんですよぉ……死んだはずの自分が何故か魔物娘になって甦ったと思ったらいきなり飛ばされた先がここだったんです」
少し泣きそうになっている彼女、アニー。それはまさしく、かの世界で大英雄となった彼女のことであり、その傍らにあった鎧と剣は彼女がまだ生きていた頃に使われていたものである。しかも鎧にも剣にも意思があるとか。
「そんで、その彼女達が俺と繋がりたいけど媒体となる女性が魔物娘がいない、と」
「そうなんですよねぇ」
「アニーさん自身はなんの魔物娘になったの?」
「ふっふっふー、聞いて驚いて下さいよ!屍の王者のワイトなんです!」
青年、田所修也から離れたアニーは座ったまま胸を張りながら自慢げな表情で堂々と言い放った。しかし修也の反応が今一芳しくない。
「ワイトってあれ?打点300ガード200なのに王様になったら打点が無限に上がっていくアンデッド?」
「それ何のワイトなんですか!?」
真顔のままあまりにもメタ過ぎるネタを放った修也に驚きと呆れの視線を飛ばすアニー。懲りずに話そうとするが、抱きついてキスで黙らせた。
「もう、そんなことより……」
そしてそのまま物語のお姫様を抱えるが如く修也を抱えたアニーは寝室に入ると、修也を寝かせて上に乗った。
「夫婦が床についたら、することは一つ。ですよね?」
修也も誤魔化しきれない熱と獣欲に負け、着ていた制服を脱いで彼女と向き合った。そんな修也をアニーは悦に入ったような蕩けた笑顔で迎える。
「ふふふ、やはり男性から感じられる温もりは格別ですねぇ」
「これは……抗えない……」
抱き合うだけで満面の笑顔になり、瞳を潤ませて蜜が溢れるアニー。始めて抱く女性の体の柔らかさに溺れそうな修也。これには思わず修也の相棒が反応する。
「……ん?これは……」
「あひっ!?」
固くなっていく修也の相棒に気付いたアニーの体がさらに熱を持つ。
「ふふふ……私に反応してくれたんですよね、これ?」
「あぁ、そうだよっ……」
「あぁっ!?」
その言葉を囁いた途端、アニーの体が震えて悦楽の声が響く。
「はぁ、はぁ……その一言だけで、体が昇ってしまいました……」
「すごいな、女の人って……」
「もう我慢できません♪」
そういったアニーは寝転がって修也の上に乗ると、立ち上がる相棒の真上に腰をおろした。
「もっといちゃいちゃべたべたしたかったんですけど、もうお腹が欲しい欲しいって……ですから、いただきまぁす♪」
「ちょ、まだ心の準備やらなんやら……ひいいいいいいい!?」
修也が驚くのも無理はない。いつの間にか彼女の中に、自分の相棒が飲み込まれたのだから。
「あああああああああああっ!?」
「ちょ、そんな一気にいったら痛いんじゃ!?」
「痛くなんてないです♪いい、いい、気持ちいい♪お腹に響くのすんごくいい♪」
アニーは修也の上に倒れ込むと、乳首を擦りあわせながら上下運動を始めた。その蕩けた笑顔に思わず修也も口づける。すぐさま互いの舌を吸い、口腔内部を貪り合う深いもの。修也も相当興奮している最中、アニーの背中にまた一つ柔らかい影が。
「修也さぁん、なんで私がいながら女の子連れ込んでるのぉ?」
それは彼の隣の部屋に住むOLである坂本瑞樹。本来顔見知り程度でしかないはずの彼女がなぜ彼の家にいきなり押し掛けたのか、それは彼女の右手に宿る赤い籠手が全てを物語っていた。
「ちょ、坂本さん!?」
「もぉう、そんな他人行儀な呼び方しないれよおっ!」
「いや、そんなことより大事なことがんむっ!?」
何かを察して顔を放したアニーの後すぐさま修也に絡み付く瑞樹。彼女の右手に宿るのは、アニーが持ってきた剣である。この剣もまた、あの魔物によって流し込まれた魔力によって意思を持ち、鎧と共に隣の部屋に押し入ると、テレビを見てゲラゲラ笑っていた彼女に剣自身を握らせた結果、瑞樹に魔力と剣の意識が流れ込んでこうなった。
「ふふふ、もうすぐ鎧も女の子を捕まえてきてくれるんじゃないかしら……♪」
中にある相棒を感じながら震えるアニーにどういうことだと聞きたい修也だが、唇から離れないままビクビクと体を震えさせる瑞樹のせいで喋れない。そして瑞樹がおもむろに修也の体を起こすと、背中にいきなり温もりが。
「修也くぅん……♪私、もっとあなたと仲良くしたいなぁ……♪」
熱の籠った吐息を耳から被せながら抱きつく彼女は河村和美。修也の向かいの部屋に住む美しい未亡人である。修也とは時折差し入れをしあう仲ではあるが、年の差もあって互いに恋愛感情が芽生えることはなかった。 しかしこれもまた、いかなる手段を使ってか鎧が彼女の部屋に侵入しいきなり彼女を中に放り込み魔力浸けにすることで、修也への愛欲を昂らせた結果である。その鎧はどこにいったかと思えばパッと見ではわからないが、それは彼女が愛する男と抱き合っているから姿を消しているためであろう。よく見れば和美の身につけたアクセサリーに、付けられた箇所を防御する防具を象ったものが加えられていることに気付けるが、今の修也にそこまで見ろというのは酷であろう。
「ちょ、みんなどうなってんの!?」
「みぃんなあなたと仲良くしたかったんですよぉ、私にはわかりましたよぉすぐに♪」
ぐちゃぐちゃと水音をさせながら、本気で搾りにきたアニーととにかくべったりくっつく二人に屈服しそうな修也。
「とにかく、今を楽しみましょう……?」
「ほら、次がつかえてるのよ……」
「んっ、んっ……」
そして、とうとう我慢が出来ずにアニーの中に叩き込んでしまう。
「んああああああああ来たああああああああ♪」
「いいなぁ……ね、私も限界なのぉ……」
そしてアニーが気を失い、背中から布団に倒れ込むと、アニーから抜けた相棒はまだまだ聳え立つ肉塔となっていた。そこに股がるのは口づけをやめない瑞樹。
「う、うああああああああ♪」
「ちょ、瑞樹さあああっ!」
そして迎え入れた瑞樹が突然唇を放して背中を反ると、待ってましたとばかりに和美が唇を奪う。瑞樹は思わずそのまま腰を上下運動しながら叫び、和美は修也の右手を自らの泉へと誘う。
「ほら、んっ、もっと弄って、はぁんっ♪」
「あぁぁぁぁぁぁぁもうだめこれ癖になりゅうぅぅぅぅぅ♪」
「み、瑞樹さんも和美さんもイったばかりでそんなにしたら、あぁもう無理無理無理ぃっ!」
和美の口づけは瑞樹とは違い、必死に食らいついたりはしないものの何度も何度も繰り返す。その言葉を、声を欲しているが故だろうか。瑞樹はもはや自分がどうなっているのかもわからないほど意識が下腹部に持っていかれている。
「ひゃあああきたああああ♪熱い、気持ちいい……あぁ……」
これほど激しい責めには修也もたまらず二発目を発砲。その勢いで瑞樹もまた気を失い、倒れ込む。そしていよいよ和美がその相棒を泉へと迎え入れた。
「はぁぁぁぁぁぁ♪旦那には悪いけど、あの人より断然気持ちいいのぉ……♪」
「そ、そんなですかっ!?」
「うん、うん♪いいのぉこれぇ♪」
和美の責めも激しさよりは優しさに溢れたものだった。しかしそれは締め付けが緩いわけではない。優しく子宮が相棒を擦り、搾る。それはまさに優しく抱き締める母親のようなものであった。すると、瑞樹の右手に嵌められた籠手が激しく震えると、瑞樹の意識が起こされる。
「んんっ♪まさかエッチであんなにイっちゃうなんて……修也さん凄ぉい……」
その目覚めた姿には先程までの激しさは完全に鳴りを潜め、甘く蕩かすような声でゆっくりと背中に寄り添って胸を背中に押し付ける。
「お礼にぃ……背もたれになってあげりゅう……」
「瑞樹さん、和美さん……」
前後を柔らかな膨らみに挟まれ、甘やかな雰囲気の中でゆっくりと漏らすように三発目が放たれた。
「んんっ♪いいわぁこの感覚……癖になりそう……」
「この後どうするぅ……?まだするぅ……?」
「あ、あの、その……」
彼らの饗宴は、朝を迎えるまで続いた。
16/04/19 07:29更新 / ☆カノン