『二重の愛』





ミーーンミンミンミンミンミ〜〜〜〜ン・・・・・


・・・外では煩くミンミンゼミが大合唱している。

ここはジパングの未来、現代に近い世界。
そこでは魔物娘が堂々と往来を歩けるほどに人間側に受け入れられていた・・・

よって魔物のカップルなんてザラである。

そんな外の様子を二階建ての建物の玄関から出たての男が・・・

「・・・・あついな・・・今日も・・・」
まだ時間は朝方だと言うのに男・・・『ユウ』は黒い帽子に黒のスーツに身を固めていた。

右手には・・・菊やユリの花束もち・・・
左手には・・・供え物が入った袋を提げて・・・

「・・・もう3年・・か・・・『キリア』・・・」
そう呟くと・・・下を俯き・・・とても重々しい表情になって・・・でも直ぐに顔をあげて何処かに向かって歩き出した・・・

・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

幾ばくかバスを乗り継ぎ・・・ついたところ・・・

ココは墓地・・・
・・・一つの墓石の前で一人の男が花と供え物をして帽子を脱ぎ、胸元へやる・・・

「キリア・・・お前がいなくなって3年がたってしまったよ。・・・今でも思う。もしあの時僕が登山に誘わなければって・・・そんな後悔を抱えたまま僕は君のいない3年を過ごしたよ。もし・・・もし適うならもう一度君と話をしたい・・・叶わぬ望みと分かっていたとしても・・・もう一度会って共に笑い、共に泣き、共に感動し・・・・・もう一度・・・」
・・・ユウは手が震え始めて・・・顔が・・崩れた・・・

「きみの・・・・温もりを・・・感じ・・・たかった・・・・っっ・・・・」
・・・ユウは声を殺して泣いた。
・・・大切だった彼女を・・・婚約者だった彼女を思って・・・

その時・・・


スゥーーー・・・・


「・・・?」
・・・なにかが通り過ぎたような感覚になったが・・・供えた花は揺れていない・・・
・・・気のせいか・・・




・・・・暫く後・・・・




「・・・キリア、もう僕は帰るよ・・・また半年後・・・くるね・・・」
ユウはクルリと体を反転させ・・・墓地を後にしてあるきだした・・・

涙の後を顔に残したまま・・・

そして暫くしてユウがいなくなり・・・墓場には誰もいなくなった・・・
・・・そしてヒグラシが鳴き始めた頃・・・


・・・ガタガタ・・・ガタガタガタ・・・・



と、墓石が揺れる音が・・・そして・・・

ガタガタ・・・・ゴトッ・・・・・・・・カシャッ・・・カシャッ・・・

・・・墓石がずれて墓穴ができ・・・その穴からは・・・・

『白い骨』が出てきた・・・・


・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

重い足取りで家に着いたユウはキッチンへ進み冷蔵庫から缶ピールを取り出しプルタブを起こした・・・

プシュッ

・・・小気味よいガス抜けの音が出てビールを口に運び・・・・一気に飲む。

「・・・っぷぁ・・・・・・何もする気が起きない・・・・」
・・・3年間、キリアの墓参りの日は決まって何もする気力が起きず・・・通年だともう寝始めるのだが・・・

「・・・汗が気持ち悪い・・・シャワーでもあびて・・・寝るか・・・」
今日に限っては記録的な猛暑でいつもの墓参りより汗がたっぷり出た。勿論スーツなども汗を吸っているのでビシャビシャだ。
そしてユウはそのままシャワーを浴びに浴室へ行った・・・


・・・すると・・・


・・・・・・・・ガチャッ・・・・カシャ・・・カシャ・・・・


玄関が静かに開いて・・・


・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

「・・・ふぅ・・・寝るか・・・おっと、鍵閉め忘れた・・・」
シャワー室から出たユウは玄関やリビングなどの鍵をチェックし始めた・・・

・・・ガチャッ・・・

そして最後の扉を閉め終わると・・・

「・・・寝よう・・・」
そう呟き2階へ移動し始め・・・突き当りの部屋の扉をあけて・・・部屋に入っていた・・・


・・・・・そしてココはシャワー室・・・

先ほど入ってきたモノ・・・『白い体の』女性が湯浴みをしていた。
・・・所々・・・・『骨に鳴っている体を』・・・・・

「・・・やっと・・・会えたよ。ゆうくん♪」
その声は弾んでいた。
饒舌な彼女は己についた汚れを流し・・・髪をすく・・・

・・・白い骨や髪がまた一段と白くなり、彼女は機嫌が更によくなった。

「まって・・てね・・・今会いに・・・行くよ・・・ふふ♪」
・・・そして体の水分をふきあげて、風呂場をあとにし・・・歩き出した。

・・・愛しの彼の元へ・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

「・・・ゆうくん久しぶりだね。」
「・・・これは夢、か?」
懐かしい街の景色の中・・・もういないはずのキリアが・・・子供の頃の格好で目の前に立っていた。

「何言っていてるの・・・それより・・遊びましょう?」
「えっ・・・あ・・・うん、キリア。」
昔からの幼馴染だけあっていつも一緒に遊んでいたユウは多少の違和感を感じながらも・・・夢を楽しむことにした。
・・・・数少ない、キリアを思い出せる時間だったから・・・

「じゃあキリアっ何して遊ぶ?」
「・・・ふふっ♪・・・じゃあ・・・」
・・・気のせいか・・・キリアの眼が紅く光った気が・・・そしてキリアはとんでもない事を言い始めた・・・


『リアルお医者さんごっこ・・・しましょう♪』


「・・・・へ?」
・・・耳を疑った。ミリアはこんなこと言う娘じゃなかったし、ましてや内気だったからこんなこと絶対に言わなかった・・・・

と思考の渦へ飲まれて下を向いていたユウが頭を上げると・・・
そこは死ぬ直前の頃のキリアの・・・成熟した女性特有の体をしたキリアが・・・

全裸で立っていた・・・

「なっ、ふ、服を着ろって・・・あれ?・・・・いつもの体にもどってる・・・なんで? 」
慌てて覆い隠す自分の手を見て・・・いつも見ている大きな手になっていることに気付いた。

「私ね・・・ゆうくんのコト・・・忘れられなくて・・・」
「・・・えっ・・・・」


・・・ふわっ・・・


・・・気付いたらキリアにだきつかれていた。

「だから・・・あいにきちゃった♪」
・・・いたずらっ子のような笑みをこちらに向けて片眼を閉じて舌をだして・・・
茶目っ気全開だった・・・

「・・・キリア・・会いたかった・・・会いたかったよっ・・・」
・・・ユウは思い切り抱き返した。

そして互いの視線が重なり合い・・・少しずつ顔が・・・唇が近づいて・・・






その瞬間・・・






「うひゃぁっ!?」
「えっ! ゆうくん? どうしたのっ!?」
急に素っ頓狂な声を上げて雰囲気を台無しにしてしまったユウだが・・・

「な、なんか股間が・・・す・・涼しい・・・はぁぅっ!?」
「えっ!? わ、私まだ何もしていないのに・・・」
・・・ユウは体に感じた違和感を残したまま・・・目が覚めた。

・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

・・・目が覚めたユウは目の前、正確には下半身を見ると

「ハムッ・・・ンクッ・・・ピチュッ・・・プァッ・・・・レロレロレロ・・・・」

・・・一心不乱に分身をしゃぶっている・・・『スケルトン』がいました。

(・・・あれ? キリアに似ている?)

「・・・えと・・・おおい、ナニしているんですか〜? スケルトンの人ぉ〜?」
「っぱぁ・・・・おはよう・・・ゆうくん♪」
フェラを中断して挨拶をしてくる・・・キリア『そっくりの』スケルトン・・・

(・・・あれ? 声まで一緒?・・・・・んん??・・・・・・)

「アタシ・・・だよ・・・『キリア』・・・だよ」
「・・・あれれ? さっき夢で会ったときとは違う・・・」
『あぁぁぁっ!? ちょ、ちょっとなにやっているのよ!!』

(・・・んんんん???!! 後ろからもキリアの声が・・・???)

振り返ると・・・いました。確かにキリアがいました。





体全体が薄くて、向こう側が透けて見える・・・
浮いているし、足が無い・・・
紫のドレスみたいな衣裳をきて・・・

つまり・・・・・・・・・『ゴースト』になって・・・・

「いいじゃない。・・・別にアタシが・・・ゆうくんと・・・ヤっても。【私】ぃ?」
『よくなーーい! 何の為に私がやっとの思いでとり憑いたのに・・・横取りしないでよっ! 【私】っ!』
「・・・・あ、頭痛い・・・・・・・」

・・・ユウは倒れた。・・・・・・・知恵熱で・・・・


・・・・・・・・・

・・・・・

・・・


「・・・つまり要約すると・・・」
・・・場所を変えて話し合うことにしたキリア達は倒れたユウを静かに起こして3人でリビングへと移動した。
骨キリアにコーヒーを出し、自身もコーヒーを飲むユウ。

『・・・ねぇ・・・あたしのはぁ〜?』
「・・・【もてるのかい】? 霊キリアは・・・」
『・・・ゴメンナサイ・・・』
自分にコーヒーが無いことに不満で膨れっ面で抗議するも、たった一言で一蹴された霊キリアだった・・・

「・・・まったく・・・話を戻すぞ。・・・3年前崖下に落ちて死亡したキリアだが、その崖下には【魔力の溜まり場】だった・・・というわけだな?」
「うん。」
『そうだよ〜』
同じタイミングで同じように頷くキリア達・・・

「ふむ・・・んでそこで魔力を浴びてしまい・・・もうその時点で霊キリアはいた・・・と?」
「はい。」
『いえ〜す♪』
また同じ・・・ほんとに本人同士っということか・・・

「そしてまだ魔力が不安定だった為に一時的に墓場に集まって来る魔力を溜め込もうとしたら・・・・」
「墓場の・・・【魔力溜り】が・・・思いのほか・・・強くて・・・」
『いつのまにか隣の骨ができたわけ〜』
・・・昔からここら一体は火葬が主流だから・・・うん土葬じゃなくてある意味良かった、と思うユウだった。

「で、3年たった今日・・・ちょうど魔力が溜まって、尚且つオレが来たことで・・・」
『私がとり憑いた。』
「それで・・・私が・・・目覚めた。」
・・・すっごい複雑な顔をしたユウ・・・

「・・・ゆうくんは・・・迷惑かな・・」
「えっ・・・」
『・・・【私達】がやってきたこと・・・』
悲しげに眉尻を下げて問いてきたキリア達・・・・

「・・・ある意味迷惑・・・かな・・・」
「っ!!」
『っ!!』
・・・重い空気になる・・・が。

「だって・・・・【どうやって二人を愛せばいいんだい?】」
「っ!? ゆうくん・・・」
『・・・♪ ゆうくん・・・』
苦笑いでその発言をしたユウに・・・・少し涙が流れたキリア達・・・

「・・・・えっと・・・じゃあ・・・そのう・・・・」
「?」
『?』
と、急に歯切れが悪くなったユウはあちこちに視線を移して落ちか無いようだが・・・

一度深呼吸して・・・・












・・・・おかえり・・・・キリア・・・・






優しい微笑を携えて晴れやかに・・・お帰りとユウが・・・・






っ・・・・ただ・・いま・・・ゆうくんっ!







それに涙で答える骨キリア・・・







っ♪・・・だだいまっ・・・ゆうくんっ!






それに嬉しそうに涙で湿った声で答える霊キリア・・・









・・・・・・・・・

・・・・・

・・・

こうして止まった時は動き出して・・・・

数年後・・・

そこには純白のドレスに身を包んだ『二人』の花嫁が『一人の男性』と結ばれていた。


その『三人』の顔は・・・・幸せに満ち溢れていた・・・

FIN

骨と霊・・・もしかしたらこんな展開もあったかも?
・・・と思ったjackryが筆をとったらこうなった・・・

いかがでしたでしょうか?(´・ω・)



p.s.ドッペルタンが草葉の影から狙っていたみたいですが・・・遅れをとってしまったようです。・・・あとナイトメアも・・・

11/05/24 16:00 じゃっくりー

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