『努力という名の才能・・・』 |
「・・・ふぅ、やっと・・・この日が来たっ ! 」 そういって小高い丘から腕を組み仁王立ちして太陽を見つめる娘・・・リザードマンの『ナジャ』は1人小さく叫んだ。 「・・・とりあえず家にもどるか・・・」 くるっ、と体を反転させて直ぐ後ろの眼下にある一軒家に足を運んでいった・・・ ・・・・ 家につき玄関を開けt・・・・ 「ただいま〜いま戻っt」 「このっ・・・・・・馬鹿者がっ!! 」 ゴチンッ! 良く響く打撃音が家の中に響いた・・・ 「ッ・・・いった〜〜い!!」(泣 殴られたナジャは、あまりの痛さに涙を流してその場にしゃがんでしまった。 「大きな声で・・・何が『やっと、この日が来たっ!』よっ!・・・・まだ私からも、父さんからも一本も取ってないじゃないっ ! 」 先ほどナジャを殴ったナジャと瓜二つな顔姿のフリフリエプロン装着した女性・・・『ナリア』は不満タラタラで説教をし始めた。 「だって、母さん強いじゃないっ!」 「だってじゃないのっ! ・・・・まったく・・・このままじゃ街の不良どもですら・・・クドクド・・・」 〜〜30分後〜〜 「・・・ってこと。ちゃんとしてよ・・・はぁ・・・なんでこんなに弱く育っちゃったのかしら・・・」 「・・・っ・・・っぁ・・・」(ビリビリ 最後にそういうとナリアはピンクの特製スリッパをパタつかせて奥へ引っ込んでいってしまった・・・・肩を大いに落として・・・ ナジャは・・・どうやら正座させられたせいで足がしびれたようで・・・ ちなみにナジャは玄関でダイレクトに正座させられていました・・・はい・・・ 〜〜さらに10分後〜〜 「・・・っあ・・・・まだ麻痺ってる・・・けど・・・歩ける・・・」 ナジャは痺れが取れてきたので歩き出して朝食をとる為にリビングに向った・・・ リビングにはトーストやベーコンエッグ、新鮮なサラダと暖かいコンソメスープが並んでおりいかにもおいしそうな匂いをだしていた。 ・・・・10分前までは・・・・ 「あああぁぁぁっっ! なんで私の朝食ないのよっ!」 そう・・・今テーブルの上には冷えてカチカチに硬くなったトースト、誰かの食べかけの『ベーコンのない』ベーコンエッグ、ナジャの嫌いなトマトが多く乗ったサラダ、ぬるくなって濁ったコンソメスープが置かれていた・・・ 「何言っているの ? ちゃんとあるじゃない・・・」 といって「スッー」とそれらを指差すナリア。 「ちょ、ちょっとっ! 母さん! あったかいのh」 「遅いアナタが悪いんじゃない。速く食べて頂戴。かたずかないでしょ・・・」 溜息一つ吐いて呆れながら言うナリアに・・・・ 「うっ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」(大泣 ・・・大粒の涙を流し・・・・つつそれらを食べるナジャ。 (はぁ、なんで弱い上に・・・こんなにも涙もろいのかしら・・・) 目の前の器用な光景を見ながらそんなことを心中で思うナリアであった・・・ 〜〜〜〜〜〜〜 涙の朝食が終わり庭にて稽古の素振りを・・・ 「てぇい! やぁっ!」 素振りを・・・ 「てぇい! y・・・・あっ!?」 スポン・・ 汗で滑って抜けた木刀は・・・・ ヒューーーン・・・・・グサッ 「うぉぉぅぃあっ!?」 ・・・庭で木々の手入れをしていた父親・・・『ジャン』の・・・尻に・・・ブスッと・・・ 「はわわわっ! ご、ごめんなさぁぁい!」(泣 「ま、また・・・ナジャ・・かい・・・ははっ・・・(ガクリ」 「しっかりしてぇぇぇ! 父さぁぁんっ!」 と、涙を流しながら近づくナジャに爽やかなダンディスマイルをかまして・・・ジャンは気絶した・・・ 〜〜〜ジャン治療ch「アッーーー!!」・・中〜〜〜 「・・・・・・・なにか・・・ジャンに言うことは・・・#」 「ご・・・ヒック・・ごめん・・・ヒグッ・・・なしゃい・・・エグッ」 ソコには・・・リビングに正座し泣き止みかけたナジャを仁王立ちし腕を組み、思いっきり睨み見下すナリアがいた。・・・・ジャンはソファで横になっています。 「まぁまぁ・・・ナリア。そんな怒らないであげなよ・・・わざとじゃn」 「ジャン、今アナタに発言権はないわ・・・#」 青筋をコメカミに出したナリアはジャンの発言を制止し・・・ 「・・・ナジャ #」 「(ビクッ)・・・は、はい・・・エグッ」 涙の後がくっきり顔に残ったナジャの顔を上げさせ、ナリアはこういった。 「アナタに武才は皆無よ。好きなように生きなさい。何を言っているか・・・わかるわね? #」 ・・・その言葉はナジャに重く響いた・・・・ 「なっ!? ナリアっ!」 「うっ・・・・うぐっ・・・・・・・ぅぁぁぁっ」 「あっ! ナジャぁぁっ!!」 ダッ!! ・・・ナジャは走ってリビングを出てこの日・・・『16の誕生日』の為に・・・1人立ちするように纏めた荷物を半ば引っ手繰る様にしてもち、そして・・・ バタンッ!!・・・・・ギィーー・・・・ガチャッ 玄関を出た・・そして扉が独りでに・・・・閉じた。 玄関を出るときのナジャのその顔は・・・・ 「・・・ナリア、ゴメンね」 「・・・うぅん。あの娘を甘やかし過ぎたのは・・・アタシだもの・・・」 肩が震えてるナリア・・・ジャンはゆっくりとソファから起き上がり・・・ ギュッ 「!!」 「大丈夫。君と僕との娘だろ? ・・・・最後まで憎まれ役・・・させちゃったね・・・」 「っ!・・・うっ・・・うぁぁぁっ」 後ろから優しく抱きとめられ、ジャンからの言葉を聞き・・・堪えていたものがあわれてきたナリア・・・ その顔は・・・ 『涙でグシャグシャに歪んでいた・・・・』 〜〜〜〜〜〜〜 「・・・ゥグッ・・・ッグッ・・・」 家を飛び出したナジャは直ぐ近くの森の奥の切り株に体を丸めて泣いていた・・・ そして何時間かそうしたあと・・・ スッ・・・と影がナジャの視界に入ってきて・・・ 「・・・あの・・・大丈夫ですか?」 「・・? ・・・エグッ・・・だ、誰っ・・・ヒグッ・・・」 ナジャに声をかける青年がいた・・・ 「あ〜・・・えっと・・・僕は『臥頭 藍(ふしず らん)』ていいます・・・ジパング出身の侍です。」 「・・エグッ・・・あたしは・・・ナジャ・・・・・・ここ『キスフモー』出身・・・だよ・・・エグッ・・・・」 泣きながらもきちんと藍に対して自己紹介しているナジャ。 「まぁ・・・その・・・とりあえず・・・どうしたんです? 泣いていらっしゃるようですが・・・」 「・・・・実は」 ナジャは不思議と慰めようとする彼といると落ち着いてきたので・・・自分の過去を・・・愚痴を聞いてもらうために話を始めた・・・ 自分には小さな頃から武芸が出来なかったこと・・・ 涙もろいこと・・・ 何をやってもうまくいかなかったこと・・・ 「・・・・・・」 終始、藍は相槌も肯定も否定もしないで聞いていた。 「スン・・・すこし楽になったよ。・・・ありがt」 「素晴らしいじゃないですか!!」 藍は愚痴を聞いたことに感謝を述べようとしたナジャを遮り、いきなり声を上げてナジャを褒めた。 「えっ・・・なっなにが ?」 「たくさん努力されているじゃないですか。普通ならそこまで努力なんてしないであきらめてしまいますよ。それでもナジャさんは努力することを止めなかった。・・・人間は一時を続けるのは容易く出来ますが、継続するとなると・・・・そうもいかないんです。」 藍はナジャに言い聞かせるように優しく・・・そよ風のように説きはじめた。 「ナジャさんは泣き虫と言いましたが・・・それは感受性が豊かということです。剣術が苦手と言いましたが・・・武術の達人にもエモノの得手不得手があるんです。これから徐々に自分にあった武道を見つければいいんです。」 「っ!・・・・・・・」 今まで『ダメなリザードマン』『最弱剣士』など酷いことを言われてきた。大人や魔物、果ては子供にまで。それが悔しくて人一倍、寝る間も惜しんで努力してきたナジャの悩みを藍は・・・いとも簡単に溶かした。 そのことに感動したナジャは・・・・泣き止んだばかりなのに・・・ 「だからこれかr・・・・っ!! どっどうしたんですか!?」 藍の前で蹲り泣き始めたナジャ・・・そして微かに聞こえる位の声で・・・ 『あり・・・がとう・・・私を・・・理解・・してくれてっ・・・』 「・・・どういたしまして。」 ニコリと微笑み背中をさすって彼女を気遣う藍は・・・はっきりと、しかし囁くように優しく返礼の言葉をかけた・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・ 「・・・ほんとにゴメンね・・・こんな遅くまで付き合わせてしまって・・・」 「いえいいんですよ。・・・こまってる人は助けたくなってしまうので・・・」 ・・・心の病から解放されたナジャは口調が少し明るく軽いものになった。 アレから泣き止んだナジャと話し合い一度森をでることになった。 「・・・藍はこれからどうするの?」 「私はひとまず大陸を回って・・・そのあと・・・どうしましょうか・・・」 ん〜、という擬音語が似合うような仕草で悩んでいる藍。そんな藍に・・・・ 「・・・ねぇ、お願いがあるんだけど・・・」 「ん〜・・・ん? はい、何でしょう? ナジャさん?」 優しい笑みとともに声をかけるナジャ。その次の言葉に藍は驚いた・・・何故なら・・・ 『私も一緒に連れて行って。そして私を鍛えてくれないかしら?』 「へっ? ・・・・・・・・・ふふっ。いいですよ。」 「ありがとう! 」 驚きはしたが、直ぐににこやかな顔になり二つ返事で了承した。 「でも・・・僕、そこまで強くないですよ? 」 「うぅん・・・アナタじゃなきゃ・・・嫌よ!」 藍が何故自分なのか疑問に思っていると・・・ 『私を倒していいのは・・・・藍だけだもの!!』 ・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・ ここは『キスフモー』の郊外にある二階建ての建物。 そこには数日前にココヘ数年ぶりに戻ってきた『リザードマンの夫婦』とその親夫婦が住んでいた。 彼女は夫と共に大陸中を回り、ニホントウの剣術指南にまで腕を上げ今や大陸屈指の使い手になっていた。 ソコの家では『母の大剣術』と『娘の太刀術』の2流派を学べるということで領外からも剣術を学びに来る者が絶えないという。 アナタも剣術に興味があるなら行ってみるといい。 仲の良い親娘の師範がアナタを快く迎えてくれるだろう・・・ Fin |
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