『うちの愛しきおバカちゃん』 |
「おなかへった」 「うん、それは聞いた」 「じゃあ、ごはん!!」 いやはや、この状況下でまだいうか。 今の状況をば例えるなら…そう簀巻き。 僕は彼女の要求によりガッチリと体をラミア種の方々と同じようにホールドされて、彼女が余分に余らせた上体と少しの下半身をくねらせてちょうど僕の一物をにぎにぎと痛いくらいの握力で握っているんだけど…どうしようもない、全く持って。 別に僕だって嫌じゃないし、寧ろ大歓迎である。 ただ… 「ねぇ? 僕は休憩させて、っ言ったよね??」 「うん!! やすんだ!!」 「いやいや、事が終わって2分…ましてや三日間不眠不休でシた後だよ?!」 そう、彼女のハラヘリには困ったものである。 隙あらば繋がろうとする彼女をいなした結果が招いた事態というのは勿論わかっている。 ただ彼女を養うためにも如何せんお給金が必要なわけで… あ、申し遅れました。 僕の名前は『ジャン』と言います。 …あと家内の名前は『ジェン』というそうです。 何故疑問系かと言いますと彼女と遭った…失敬、会った時に名を聞いたのですが『なまえ? なにそれ? それより…もっとごはん〜♪』でした、はい。 ま、まぁ結構頻繁に親魔物領の中で行商していたおかげでもっていた知識で彼女ら『ワーム』の知性は低い…失敬、本能に正直であることは知っていたのです。 行商、といいましても扱っているのは主に鉱石でして妻に連れ去られ…失敬、住処へと招かれたときも仕事をしていました。 あ、ではその日のことをお話させてください。 …主に下半身が回復するまで。 ・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・ 「ふぅ、暑い」 砂漠でお世話になっているオアシス街へ、先日仕入れたたくさんの鉱石を背負い歩いて横断していた僕。 辺り一面の景色が砂漠だけの味気ない風景から徐々に小石や比較的暑さと感想に強い雑草が生えてくるステップと呼ばれる砂漠帯へ入ってあと少し、そんな気を少し引き締め直して肩に食い込む自分よりでかいリュックを担ぎなおしていた時でした。 「…ん? んん?? じ、地震!?」 最初は些細な物でした。 足元に転がる石がカチカチと音を鳴らして徐々に移動し、耳に心なしか地響きの音をとらえて気を引き締めているとやはり地震だったらしく小石から礫、礫から抱えられるくらいの岩、果ては大きく見た目からして重量がありそうな大岩と振動の生で揺れ動くものが大きくなのに比例して地響きの音もまた大きくなったのです。 流石にそこまで大きいと身の危険を感じてすぐさま来た道へと振り返り、岩山が出始めた砂漠の入口より安全な砂漠のほうへと走り出しました。 辛うじてまだ歩けるレベルだった揺れは僕の足より速く大きくなって…そして現れたのです。 「っぱぁぁぁ!! …あぁ♪」 「っぇ、ぁ…ぁぁ…」 あまりの揺れにとうとう耐え切れずに僕は背負っていた荷物に押しつぶされる形で砂の絨毯に伏せてしまいました。 それとほぼ同時に揺れが収まって何か後ろからザバァッ、と砂をかき分ける大きな音がしたんですが…ぶっちゃけますとその時はそんなこと気にしていられない状況下で…ざりざりした感触が口の中を占めて、背中からこれでもかと押される重圧に肺呼吸がままならずそれに耐えきれずに危うく気絶…下手したら絶命しかけた僕を彼女がひょいっと背中のリュックごと持ち上げたんです。 信じられないかもしれませんが、僕の扱っているのは鉱石なのでお世辞を抜きにかなりの重量を誇りましす。 なので並みの人では持ち上げることさえかなわないでしょう…僕はこの商品を扱ううちに自然とついた体力でもてるだけの量を持っていますので。 確かその日の商品は…金鉱石、鉄鉱石、ボーキサイト、黄銅石。 いづれも名の知れた重量物でしたが…それら含めて僕ごと持ち上げた彼女はやはりすごい筋力を持っています。 しかも片手で持ち上げていたんですよ。 「オスぅ♪ つかまえたぁ〜♪」 それでそのまま持ち上げられた僕は彼女の方へくるりと反転させられ…言葉が出ませんでした。 物理的に気絶しかけたというのもありますが、何よりも彼女の美しさに心が釘付けになってしまったので。 砂漠を住処にしている為か以前街で見た最新の図鑑の『ワーム』と違いその体の模様はオアシスの警備隊が着る様な薄黄色を基調とした、まさに砂に隠れるためのカモフラージュでした。 更には僕を掴んでいる腕と僕の頬をつんつんして遊んでいる腕も同じで、胸元の宝石らしいものはトパーズのような輝きをしています。 僕の身長ほどに生やした髪もまた砂漠迷彩柄でかき分けて出ている角もまた然り。 ドラゴンやリザードマンの方々と同じ皮膜の耳に胸元の宝石と同じ色のトロンと艶めいた視線を送る瞳、その瞳はしっかりと僕を捕えていたのは言うまでもなく。 「あはぁ♪ おもちかえりしてぇ〜いっぱいごはんもらってぇ〜いっぱいうむのぉ〜♪」 「ぇあ!?」 観察していた僕は僕の身長の倍以上ある尻尾に急に巻きつかれてしまい変な声を上げてしまいましたがそんな僕を彼女は離さないと言わんばかりに己の体に密着させて僕を…訂正、僕の顔を心拍に合わせてぷるるんと揺れる彼女のたゆやかな胸へと押し付けられたんです。 …はい、正直に言うと天国でした。 ただちょっと密着しすぎていて違う意味で天国にイきかけました、とも言っておきます。 どうやら先ほどの地震は彼女が地面の中を進んでいるせいで起きたようでした。 なぜいいきれるかと言いますと、彼女に絶賛拘束中だった僕がその瞬間を見たからです。 リュックをはぎ取られて正面を向かされ、彼女が上機嫌に僕の背を服越しに愛液で濡らしながら上体を強く反ったんです。 そして地面に対して思い切り頭突きをするように打ち付けると…なんと先ほどの揺れと同じような振動があたりにしたんですよ。 そのまま僕は地面に潜っていく彼女共々連れられて、ものすごい地響きを聞きながら彼女の巣へとお持ち帰りされたんです。 ・・・・・・・・・ ・・・・・ … 「ぁぅ…わたし…みりょくないの?」 「いやいや、そんなことない。君は十分魅力的だよ? でももう少し待ってね?」 というのが彼女とのなれ初めだったんです。 勿論、魔物娘が自分の住処に持って帰った男とすることは決まっています。 僕もその例にもれず初夜にして三日三晩交わりっぱなしという大変嬉しい…失敬、人間男性にとってはかなりキツい所業を強いられましたがある程度彼女が満足したようでその後はある程度話をしたり聞いたりして彼女のことを知ろうと心がけました。 それでその時に何とか頭の弱い…失敬、素直で直球で従順な彼女を騙してしまうような手口になってしまいましたが僕が行くはずだった街への荷物を取りに行ったのです。 そう、彼女にはぎ取られたリュックです。 家内にもう一度その場所へ移動してもらったらちょうどそこに行商相手のアヌビスさんが警備隊を連れて僕のリュックのところで輪になっていました。 『何? ワームに食われた? …それは、まぁ…お気の毒。あ、ならちょうどいい』 『なんですか?』 『ワームの夫である君にちょっとした頼みがある。…なぁに、そんなに難しいことではないよ』 今ではもう板についていますがこの当時、まさかこんな仕事に転職させられるとは思いもよりませんでした。 不思議がる家内と僕に「あぁ…」「お気の毒に…」と警備隊の方々からなぜか憐みの視線を向けられてしまいましたが、アヌビスさんの話を聞いて僕は納得しましたよ。 それは… 「おい、いるか?」 「あ、はい!!」 「…むぅ〜…もっとつながっていたいのにぃ〜!!!!」 あ、噂をすれば何とやら。 アヌビスさんが分厚い紙束を小脇に抱えて僕たちの為に特別に立ててもらった小屋へとやってきました。 街から然程遠くないので何か食べたいときは最初の家内の住処より近くて非常に便利なんですが…家内には不評の様です。 アヌビスさんが来るときは仕事の事、というのをちゃんとわかっている家内はすぐに拘束を解いて恨めしそうにアヌビスさんを睨み付けますがアヌビスさんの表情はまったく変わりませんし尻尾もいたって緩やかに揺れています。 …いつも通りに。 「今日の『砂漠横断者名簿』だ。…スンスン…あー、昨晩はおたのしみでしたね?」 「分かってて言ってますか? …今日も少ないですね?」 「大体こんなものだろう? あと『行方不明者名簿』、『オアシス発掘予定地点地図』…」 いやぁ、三日分もあるとさすがに凄い量だなぁ… 僕は一通り目を通してアヌビスさんに確認をいくつかとると家内に向き直って… 「…さぁ、『砂漠の巡回』いこうか?」 「ぶぅぅ…おわったら! い〜〜〜〜っぱいシてもらうもん!!!」 「はいはい、それでいいから。ではよろしく頼む」 アヌビスさんが尻尾をゆらりとさせて小屋から出ていって…僕らも続くようにして小屋を出ました。 ふくれっ面の嫁を宥めるのに毎度のことながら骨が折れますが、基本素直なので僕が困る前に機嫌を直してくれます。 さて、今日も頑張って仕事しますか。 ーーーとある町にはワーム夫婦による砂漠広域の安全管理をする職業があるらしい。 ーーーもしこの砂漠近辺に所用があるなら彼女らへと『護衛依頼』を出すといいでしょう。 ーーーただし、受理されるのは早くても一週間後でしょうけど…。 【完】 |
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所用が終わって帰ってきてみれば…っっっ!?
これは書かずにはいられない、ということで筆を執らせていただきました。 如何でしょうか?(´・ω・) 感想お待ちしております…!! 12/11/06 00:07 じゃっくりー |