連載小説
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後編
カランコロンカラン♪

「はーい、いらっしゃい…あら、いつもどうも♥」

魔界バー「月明かり」 仕事の縁もあって、俺がよく足を運ぶ店だ。
店の扉を開けるとこの店の店長一人、ワームのサーナがワイングラスを磨いているところだった。
開店したてともあって、まだ人はいないようだ。

「この時間に来るのは珍しいですね。今日はどのようなご用件で?」
「あぁ、今日はちょっと食事を…ね。」
「なるほど、それではこちらのカウンターにおかけくださいな♪」

サーナに促され、正面のカウンター席に座る。
奥からスルリと、サーナの妹で同じく店長のルーナが出てきた。

「あら、いらっしゃいませ♪」
「今日はまだ客入ってないみたいだな。」
「開店したばかしですし、この時間帯はいつもこんな感じですよ。」
「夜も更けてからが、本番です…♪」
「……そうか。…寧ろ、そっちの方が都合がよさそうだな…」
「……?」

顔を見合わせ、首をかしげるサーナとルーナ。
そう仕草されるのも無理はない。俺は今きっと、凄く複雑な顔をしているのだろうから。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


キアラに衝撃の事を言われてから、俺はどうすべきか悩んでいた。

腐敗のブレス。ドラゴンゾンビの吐くブレスのことであり、男は理性崩壊、女はアンデット化すると言われる危険なブレス。
それを吐かせるということはどういうことかというくらい、俺にだってわかる。
腐敗のブレスが吐かれる条件。
それは、ドラゴンゾンビの前に初対面の者が対峙した時。
そして、その者が敵意を持っている時。
もしくは、ドラゴンゾンビがその者に対し興味を持った時。

これを今俺が置かれている条件に当てはめるとどうなるか。

俺が、レクヴォア公に腐敗のブレスを吐かせるということ。
別に、俺は敵意を持っているわけではない。…だが、俺は男だ。
間違いなく、レクヴォア公は俺に興味を持つだろう。そして、手に入れようとするためにブレスを吐く、これも想像できる。
万が一、ブレスを浴びずにうまくに逃げれたとしよう。ブレスの効果によって、魔界銀は変異し、大きなドラゴニウムの個体が生成されるかもしれない。
だが、一度きりでは意味がない。ドラゴニウムを安定して供給し続けるためには、回収し入れ替えた魔界銀にも腐敗のブレスの効果を与える必要がある。
…つまり、ブレスを吐かせ続ける必要があるのだ。
一方で、一度でもブレスを浴びてしまえば。
俺は理性が崩壊し、レクヴォア公の『モノ』となるに違いない。
問題は、レクヴォア公が俺のやっていることを理解し、俺に自由の時間を与えてくれるかどうかだ。
100%そうしてくれるという証拠は、ない。
幸いプロジェクトメンバーには育成場所も知らせているし、育成方法も記録しているから、俺が戻れなくなったとしても何かしらの対策をしてくれるとは思っている。
ただ、俺が女王様を説得した時に言ったリスク。これをまさに、自分から冒そうとしているのだ。
これでは、女王様にあわせる顔がない。

つまりは、だ。
腐敗のブレスを吐かせずに、これまで通り供給量が少ないままにするか。
俺自身を犠牲にして、後世にドラゴニウムの安定供給の技術を伝えるか。
どちらかしかないのだ。

その究極の二択に、安々と答えを出すことなんてできるわけがない。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


「「なるほど…ねぇ…」」

サーナは腕を組み、ルーナは顎に手を当て神妙な顔をして俺の話を聞いていた。
どうやら、ついつい喋ってしまったようだ。
客に話をさせるテクニックを持っているとは聞いていたが、ここまでのものとは…

「確かに、この二択はその後に大きく影響を与えることには間違いなさそうですね。」
「で・も♪ 貴方は第三の選択肢を見落としているわ。」

サーナは俺の視線の先に三本の指を立てて見せた。

「…第三の選択肢…?」
「そう。吐かせずに今までの生活を続けるか、犠牲になってこれまでの生活を壊すか。そして…
 夫婦となって新しい生活を築くか、の3つよ♪」
「ふ、夫婦…!? いや、しかしそれは2番目の選択肢とほとんど変わらない気が…」
「『モノ』となってしまうか、夫婦となるか、それはそれで意味合いが変わってくると思うわよ♪」

夫婦となることで、自由を利かすことができるようになるのでは、という魂胆だろうか。

「し、しかし…ドラゴンゾンビ相手に…」
「少し思い違いをしているようだけど…魔物娘にだって夫を持ちたいという気持ちはあるの。…いえ、夫が欲しいと思っているの。
 その思いは、人間の女性が持つものよりも深いと豪語できるわ。
 そして、その思いはどの種族も持っている。
 貴方が畏怖として感じているドラゴンゾンビにだって、その気持ちはあるわ。
 だって、その気持ちがあるから復活したといわれているくらいですから♥」
「む…むぅ…」

確かに。
この街に来て二年。これまで様々な種族と交流をしてきたが、俺のような平々凡々な男でも好意を持って接してくれていた。
俺は今やっている仕事を理由にここまで一人で過ごしてきていたが、魔物側からすれば、勿体ないと思われていたのかもしれない…

「それに…貴方がドラゴンゾンビを嫌と感じる理由は何?」

理由…それは…

「会うと危険だから? でも、実際目にしたのでしょう? 彼女の姿を。」

確かに、この目で見た。
ドラゴンゾンビ…レクヴォア公は俺が想像していた姿よりもずっと綺麗で、ずっと魅力的なものだった。
あの時は暗闇の中で暗視の術が効いた状態で見ただけだったが、ここで暮らしている他の魔物娘達にも引けを取らぬ出で立ちをしていた。

「そこに、嫌悪が存在しないのなら…好意が存在するのなら…きっと彼女は応えてくれるはずよ?」
「しかし、それをレクヴォア公が理解してくれるかどうか…」
「確かに、ドラゴンゾンビは理性が失われていると聞いているわ。でも反面、愛す愛さないは寧ろ顕著になって現れると思うわ。」
「むぅ……」
「自分から好意を伝えていく姿勢、これが大事よ。 …そうね、貴方には今これが一番お似合いね。」


そう言うと、サーナはボトルを手に取ってワイングラスにカクテルを注ぎ、俺の前に差し出した。

「…これは…」
「そう、いつも仕事でお使いになさっているカクテルよ。」

リトル・ワイバーン
ドラゴンを酔わせるほどの強い魔力度数を持つカクテル。
俺はこの魔力度数の高さと手に入れやすさから、ドラゴニウムを生成するための触媒として使用している。

「このカクテルにはね、『ドラゴンキラー』という別称があるの。
 そう、ドラゴンゾンビを妻にして街に戻ってくる男性の敬称と同じ。
 貴方は、『ドラゴンキラー』になれる可能性がある。
 貴方も、レクヴォアさんも幸せになる可能性がある。
 だから、もっと自分に自信を持って、頑張って…♥」
「お嫁さん作り、頑張ってください♥」

サーナとルーナの励ましの言葉、俺の心に深く突き刺さる。
レクヴォア公の幸せ…か。そんなこと、全く考えてなかったな…。

「ありがとう、サーナ殿、ルーナ殿。おかげで決心がついたよ。」
「あら… 成就することを、祈っておりますわ…♥」
「それでは、精のつく料理でも、作って差し上げますね…♪」

…明日、女王様に報告しよう。
ドラゴニウム育成のために…いや、蘇ったレクヴォア公のために…
俺は、リスクを冒してまでやらなければならないということを…


――――――――――――――――――――――――――――――――――


目の前に広がるはいつもの作業場の洞窟。
その入り口の前に、俺は立っている。
いつもはこの入り口の前でドラゴニウムを出し入れする作業をしていた。
だが、今日は違う。
今日、俺は…ドラゴンゾンビを、レクヴォア公を起こしに来たのだ。


女王様には、許可を頂いた。
おそらくこれが最後になるであろう俺のワガママ。
ドラゴンゾンビが危険だと言っておきながら、結局はそのドラゴンゾンビの手にかかろうとする愚かなワガママ。
キアラの助言もあった。ドラゴニウム育成には腐敗のブレスが必要だということを報告してくれた。
女王様は全てを聞いたうえで、俺に許可をくれた。
…物凄く残念そうな顔をしていたが…(キアラがそっと励ましていた、ということはやはり俺を……?)


ともかく、これでもう後ろめたいことは何もない。
父も母もいない、故郷もここから遠く離れている。
俺がドラゴンゾンビを妻にしようとする、これに反対する者はいない。
後邪魔をするのは、俺の覚悟と勇気…そして理性だけだ。

女王から護身のために借りているペンダントを外し、小物入れの中に仕舞う。
そして、小物入れから液体の入った小瓶を取り出し、ポケットに仕舞う。
この小瓶は、サーナから頂いたものだ。今日の行動のキーマン。
これがあるかないかで大きく変わる、だろう…
小物入れを入り口脇の小岩の影に隠し、俺は意を決して洞窟の中に足を踏み入れた。


目の前に広がる光景は一年半前とは大きく変わっていた。
天井からぶら下がる数々のドラゴニウムと魔界銀のタグ。
ドラゴニウムが発する淡い光によって、洞窟は対面で視認するに十分な明るさがあった。
…あれ以来洞窟に入ってなかったが、中はこんなに明るかったのか…
…と、上を向いている場合じゃなかったな。

視線を先に向けると、あの時と変わらぬ姿でレクヴォア公が眠っていた。
朽ちた結果、色褪せたと思われる短く整えられた白髪。
光があるおかげではっきりとわかる緑色に変色した体。
骨を思わせる外殻と、外殻からはみ出る人体部。
一年半前と同じ、何も変わっていない魅力的なその姿。
しかし、一年半前は異なるところがある。
一歩近づくごとに鮮明になる匂い。これは、魔界銀についたリトル・ワイバーンの残り香だ。
そして、レクヴォア公の寝姿。以前はもっと地面に這いつくばって寝ていたはずだが…今は尻を上げたような姿で寝ている。
…もしや、目覚めていたというのか…?
…それとも…いや、まさかな…?


俺は生唾を飲んだ。
これから、俺の身に何が起こるのか。それは、わかっている。
ドラゴニア帝国では日常茶飯事である夫婦の情事、セックス。
仕事を理由に避けてきた俺も、とうとう経験することになる。
それがわかっていて避けようとしないのはやはり、男の性というものだろうか。
結局は、俺も一人のオスでしか過ぎないのだな…
ただ、終わるのはここではない。
これから先を作るために、俺はここに立っているのだ。

小瓶を取り出し、液体を少し口に含む。
そして、中で唾液と交わらせる。
さぁ、これでもう後戻りはできない。

一歩、一歩と足を進める。
褪せた絨毯を踏みしめると、ピクリとレクヴォア公が動いた。
そのままゆっくり、レクヴォア公が体を起こす。
女性を象徴する胸。外殻に食い込むさまはその大きさが半端ないことを意味している。
軽く弛んだ腹部。そして、臀部。内股には何かで濡れ、垂れた跡が残っている。
俺より背の高い彼女は、その虚ろな目を俺に向けた。
目と目が、あう。
焦点の定まらない彼女の目は、まっすぐこちらを見ていた。
半開きになっていた口は一度閉じ、舌なめずりをした後、だらしない形となって開かれた。

「…ア…ァ…ニオ…イ…♥ オトコ…オトコォ…♥」

彼女は喜びに顔を歪ませた。
口から漏れる吐息。一瞬鼻につく匂いの後、甘さが漂ってくる。
…これが、腐敗のブレスというものなのか…?
いやしかし、これを今直接浴びるわけにはいかない…!

「オトコ…オトコ……♥ イツモ…ノ…♥」

レクヴォア公は体をよろめかせながらも一歩ずつこちらに歩き始めた。
外殻が残る両手を前に出し、俺を掴もうとする姿は、まさに人間で言うゾンビそのものだ。
…どうやら、興味を持たれたことには違いない。
ならば、やることは一つ。
俺から、迎えに行くことだけだ。

―――――――――――――――――――

『最近ではね、男性がリトル・ワイバーンを口に含んで、女性にキスしながら飲ませるというのが流行っているのよ。
 これが効果覿面でね〜
 リトル・ワイバーンの魔力に男性の唾液混じったものを、男性から飲ませてもらうなんてことされたら、女性はイチコロよ♪
 あぁ、私もされてみたいものだわ…♥』
『姉さん、その時は私も一緒に♥』

―――――――――――――――――――

サーナから教わった『プレゼント』。
これが果たして通用するかはわからないが、試してみる価値はある。

俺が手を伸ばせば彼女の手が届く距離まで近づいてきたところで、行動に出る。
一歩前に踏み出し、彼女の手をすり抜ける。そして、彼女の両頬に手を伸ばす。
突拍子もない行動に、彼女は大きく目を見開き、驚いた顔をしてみせた。
そして、頬に伸ばした片手をそのまま後頭部へ持って行き、背の高い彼女の顔を此方に引き寄せる。
彼女の顔が眼前に迫る。
呆けて半開きになった彼女の口に、そのまま口づけをする。

ファーストキス。

そしてそのまま口の中にあった液体、リトル・ワイバーンを彼女の口の中に流し込む。
顔、体伝いに垂れ落ちるリトル・ワイバーンを感じる。
いくらか零れてしまったようだが…口移しはできたようだ。
そして、零れないように口で蓋をし、彼女がそれを飲んでくれるのを待つ。

ゴクリ、と喉が鳴る音。
それを聞いて、俺は彼女の顔から離れる。

リトル・ワイバーンを飲んだ彼女。最初は何をされたのかわからないような顔をしていた。
が、やがてその顔は歓喜の顔に染まる。
先程の歪んだ顔とは違う、喜びの顔だ。

「…プレゼント、お気に召しましたか?」
「……コノ、アジ…オイシイ… プレゼント? …ウレシイ…♥♥」

彼女は捕まえ損ねて空いた状態となっていた両手を俺の肩に置いた。
肩に置かれた彼女の手、鋭く恐ろしく見えるその手は、俺の肩を傷つかないように優しく掴み、俺の体を引き寄せた。

「…ワタシ…カラモ。 プレゼント♥」

再び顔が近くなる。
唇が触れる感触。二回目のキス。
舌が、俺の歯を叩く。俺はそれを受け入れ閉じた歯を開くと、スルリと彼女の舌が入り込んできた。

ディープキス。

舌が絡みあう濃厚なキス。
そして、彼女の口から流れ込んでくる何か。
液体ではない。息、そう、息だ。
鼻で感じる刺激。間違いない、腐敗のブレスだ。
彼女は俺の体の中に直接腐敗のブレスを流し込んできていたのだ。

甘い匂いに体が浮き立つ。
メラメラと滾るように体が熱くなる。
ギュッと寄せられ、密着した彼女の体から欲情を感じる。
もっと味わいたい…もっと…もっと…
夢中にさせるその息。 もう、何も考えられなくなった。
――彼女と交わりたい――
――彼女に犯されたい――
――彼女と愛し合いたい――
――彼女を貪りたい――
――彼女を、俺一人の物にしたい――

彼女の体に手を回し、思いっきり抱きしめる。
服の上から感じる彼女の大きな胸。
あぁ、柔らかい……
このまま、顔を埋めてみたい……
直接、肌で感じてみたい……

唇が離れる。
彼女は一度離れると、胸や臀部に身につけていた外殻を脱ぎはじめた。
俺に見せつけるように、ゆっくりと。
その行動が、俺の欲情にさらに火をつける。
脱ぐなら、今しかない。
彼女のペースにあわせ、自ら服を脱いでいく。
重量感を感じさせる胸…人間のそれとは違う、緑の乳首が露わになる。
肉厚に感じる臀部、二つ股の付け根に設けられた秘裂。
無毛の谷からは一筋の川が下流に向けて流れ始めていた。
そして、俺の愚息は…はち切れんばかりに彼女を指していた。
彼女に顔を向ける、と、彼女は既に動いていた。

「!!」

ギュッと抱きしめられ、俺の体に彼女の体重がかかる。
そのまま、ゆっくりと絨毯の上に倒れ込んだ。
俺の体の上に彼女の体が覆いかぶさり、彼女の柔らかい体を直接肌で感じる。
柔らかいながらも弾力のある体つき。彼女の胸が俺の胸に押し付けられ、俺の愚息が彼女の腹に押し付けられる。
咄嗟に横の隙間から手を入れ、彼女の胸を触わった。
指は彼女の胸の肉をかき分けながら奥へと進み、乳首に触れた。
そのまま手のひらを返し、手のひらで彼女の胸と乳首を感じる。

「…ン……アッ…♥」

ゆっくりと撫でると、彼女の口から声が漏れた。
負けじと彼女は、俺にキスをしながら、愚息を触り始めた。

「…ンッ…♥ フゥ……♥ フフ♥♥」

産まれて初めて、他人に触られる。
彼女の手で優しく上下に扱かれる感触。
外殻が外れていないため、敏感すぎる愚息にはちょっと痛いと感じてしまう。
それを感じ取ったのか、彼女は手でさするのをやめ、腹を押し付けてきた。
互いの腹に挟まれ、腹で愛撫される感触。彼女の体熱を感じる。
…あぁ、気持ちいい…
いつしか俺は愛撫をやめ、愚息に感じる快楽に身を委ねていた。
今は彼女が上に乗っている。ならば、ここは…

――彼女に犯されたい――

キスが終わる。
互いの口からは唾液の糸が伸び、名残惜しそうにプチンと切れた。
彼女は体を起こし、腰を浮かせた。
愚息を手で掴み、彼女の秘裂へと案内する。
その顔は、もう我慢できないと言わんばかりの顔だった。

「っ…!」

愚息が秘裂をまさぐる感覚。 今からこの秘裂に…彼女の体に入るのかと思うと、一層興奮してきた。
ピクリと愚息が動き、快感を感じていることを彼女に伝える。
それを感じ取った彼女は、こちらに顔を向けてニヤリと笑うと、そのまま腰を降ろした。

ヌプッ…グググ…

「ア…アァ…♥♥♥♥♥」
「くっ…はぁっ…!!」

初めて、異性の体に入り込む感覚。
既に愛液で濡れた秘裂はいきり立った愚息を安々と受け入れた。
その中は今まで感じたことない感覚だった。
愚息を彼女の肉が包み込み、そして全体で愛撫してくる。
愚息の中腹から先まで、大小様々な肉が愚息に触れ、こすり付けてくる。

膣内(なか)はこんなにも素晴らしいものだったのか…!
何で俺は今までこんな素晴らしいものを避けてきたのか…!

避けてきた自分が情けなくて仕方ない。
彼女の膣内は俺を甘美の渦の中に落とし込むほど素晴らしかった。
彼女はまだ腰を降ろしただけだというのに、あまりの気持ちよさに射精感が漂ってきた。

――ぶち撒けろ!――
――ぶち撒けろ!!――
――ぶち撒けろ!!!――

本能が、叫んでいる。

「マダ……ダ…メ…♥」

歯を食いしばる俺を見て、彼女はそう宣告し、まだ完全に入り切っていない根本を手でギュッと締め付けてきた。

「あっ、くあぁっ…!!」

手からもたらされる痛みに射精感が削がれる。

「…モット、ガマン…♥」

彼女は手を放すと俺の両手を胸に持ってきた。

「…イッショニ…キモチヨク…ネ?♥」

彼女の言葉が、全てだった。
レクヴォア公も、ただ犯そうとしているわけではない。
俺に気を遣ってくれた。それだけで、十分である。
そこに、優劣も、上下もない。
あるのは、対等に愛し合う。ただそれだけだ。
彼女も気持ちよくなりたいと言っている、ならば…
俺一人だけが気持ちよくなっているわけにはいかない。

――ぶち撒けろ!――
――イかせろ!――
――ぶち撒けろ!!――
――イかせろ!!――
――一緒に、イこう!!――

「……わかった!」

彼女と、一緒に。
それまでイくわけにはいかない!

「アッ♥…アッ♥…ハァッ♥♥♥」

彼女は俺の体に手を添え、腰を上下に振り始めた。
愚息が膣内から出ては入り、出ては入り。
うねり、まとわり、締め付ける。様々な快感が襲う。
それでも俺は頑張れた。
彼女が頑張るなら、俺もそれに答えないといけない。
必至に胸を愛撫し、腰が沈むタイミングに合わせて深く突き入れる。

「ハアァッ♥…ンッ…アァァァ♥♥♥♥♥」
「んっ、はっ、はっ!! くぅっ…!」

互いに見つめ合う。
俺をはっきりと見据える彼女の目。
そこに、言葉はもう必要なかった。
互いが互いを愛す、互いが互いを気持ちよくさせようと行動に表れている以上、言葉は冗長でしかない。
彼女が感じてくれている、声が漏れるだけで俺は幸せな気分になれる。

「アァッ!!♥♥♥♥♥」

一度、彼女の体がビクンと跳ねた。

ゴロゴロゴロゴロ…………

遠くで雷が鳴る音がする。
今日は晴れてた気がするが、まぁ、そんなことはどうだっていい。

不意に上半身に重みを感じる。
彼女が再び体を預けてきたようだ。
そして、繋がったままキスをする。
口内を互いに嘗め回すような深いキス。そして、甘美な息が再び流れ込んでくる。

――もう、我慢できない――

片手を彼女の後頭部に、もう片方を彼女の尻に回す。
彼女はそれに応えるように、キスを繰り返し、腰を淫らに振り始めた。

「〜〜〜ッ!! ンッ――!♥♥」

一段と激しく体が揺さぶられる。
愚息を絶え間なく濡らし続ける愛液の量が増えたのか、膣内は一層のぬめりと淫らな動きを繰り返した。
彼女も、そろそろ……のようだ。

――……出る!――
――…出る!!――
――出る!!!――

射精するときに感じる特有の高揚感。
それが俺の頭の中を満たした。

ドピュッ! ドクッ! ドクドク…

「ンンッ〜〜〜〜〜〜!♥♥♥♥♥♥♥♥♥」

彼女の膣内に、今まで溜めに溜め続けていた精欲の塊を吐き出す。
同時に、彼女の体がビクンッと二、三度ほど大きく跳ね上がった。

「アッ…!♥ アァ…♥♥ アツイ……♥♥♥」
「ぷはっ…! はぁ、はぁ、はぁ…」

射精はまだ収まる気配を見せない。
その間、彼女は体を強張らせ、俺の精液を膣内で受け止めていた。
射精が止みキスをやめると、彼女は全体重をかけてのしかかってきた。
俺の顔の横に、彼女の顔が迫る。
俺はそのまま、天井を見つめた。

天井には、吊るされたドラゴニウムと魔界銀。
淡い光を放っているドラゴニウムは、まるで星のように、暗闇から俺達を照らしていた。
チラチラと煌めく様は、まるで俺達を祝福してくれるかのように……

――彼女と愛し合いたい――
――彼女を貪りたい――
――もっともっと彼女と交わりたい――

俺の心の中で、再び欲望が湧きあがる。
そうだ、彼女が頑張ってくれたのだから、今度は俺が…

そう思うと、俺の体は勝手に動いていた。
彼女の中で暴れていた愚息。収まる気配は微塵もない。
ならば次は…

彼女と共に体を起こし、そのまま今度は彼女を寝かせる。もちろん、繋がったままで。
仰向けにされた彼女はこれから何をされるかがわかっているとばかりに、涎をたらしながらだらしない顔を俺に向けていた。

「……モット…♥ シヨ…?」

その言葉が、俺を獣にさせた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


それから、何度まぐわったか覚えていない。
ただひたすらに腰を振り、快楽に身を委ねた。
正常位、後背位、騎乗位、対面座位…様々体位を変え、ひたすら彼女と快楽を共有した。
そして、ひたすら彼女の膣内に吐き出した。
事あるごとに彼女はキスをねだり、腐敗のブレスを流し込んできた。
俺の体、よく持ったと思う。 それとも、もう人間でなくなってしまったか…それはわからない。
今わかるのは、時も忘れ交わり続けた挙句、気を失っていたということだけだ。

「……スゥ……zzZ」

俺の上で、彼女…レクヴォア公が眠っている。
満足したかのような、とても安らかな顔をした彼女がとても愛おしい。
そっと顔を撫でると、少し嬌声をあげ、俺にすり寄ってきた。

俺は再び、天井を見上げた。
心なしか、ドラゴニウムがさっきより輝いているように見えた。

さて、と…
どこまで彼女の許可を貰うことができるかな………


――――――――――――――――――――――――――――――――――


「……いいヨ。」

あっけなかった。

「こレ、育てルの貴方、知ってル。」
「え? どうして…?」
「ずっト前、貴方の匂イ、嗅いダ。 それかラずっト、貴方ノ匂い、してた。」
「…なるほど、気づかれていたわけか。 でも、それならどうしてすぐに…」
「…私、昔の記憶、少シ…アル。 この絨毯を最後ノ宝として眠ってタ。 起きる時ハ、この絨毯ヲ奪いに人が現れタ時と…」

…どうやら、宝を守る習性はドラゴン特有の物らしい。
去り際に旧王朝から掻っ攫った絨毯を最後の宝物にして、死ぬまで、そして死んでからも守り続けていたということか…
しかし、交わってからというものの、急に喋るようになったな…
まぁ、その方が意思疎通ができて有難いのだが…

「…でモ、懐かしイ匂いデ、目が覚めタ。」
「懐かしい…って、もしかして…デオノーラ女王のこと?」
「…そウ…彼女ハ…まだ生きてタのかと。そしテ、その中ニ貴方の匂イがあっタ。」
「……」
「あノ時、体が動かなかっタ… 次来たラと思っタけド、それカラずっト、近くにイるのに会えなカった…」

レクヴォア公は悲しい顔をした。
無理はない。最初入った時は炊いた聖水の香で彼女を眠らせていたし、その後は装置を作って洞窟の中に入らないようにしていたのだから。

「いつカ来る、そう思っテた。 私の頭ノ中、早く襲エとばかリ聞こえてキた… でも、私、我慢しタ…」
「……」
「我慢し続けタ。そしテ、貴方がやってキた。
 私、嬉しかっタ。ようヤく会えたト…♥
 貴方、プレゼント、クれタ。 私、嬉しかっタ。
 私ニ好意を向けてクれたト…♥」
「……その、なんだ…すまない… 今まで恐れていて…」
「…気にシない。こうシて今、貴方と共ニいれルのだカら…♥」

レクヴォア公はすっと体を寄せ、もたれかかってきた。

「貴方ト交わっテ、叶わなカったこトが叶っタ。
 そしテ、貴方ハ私を妻ニしてクれるト言っテクれた…♥
 これ以上、嬉しシことハ、なイ…♥♥
 それニ、これ以上、あの声ニ惑わサれるこトモ、ナい…」
「レクヴォア……」
「レクヴォア…その名前…いらナい…レヴィー…って呼んデ?」
「わかったよ、レヴィー。」
「…ありガとう。貴方のコと、何と呼ベば…いイ?」
「そういえば、言ってなかったな…ゴメン。 俺の名は―――」


――――――――――――――――――――――――――――――――――


こうして俺は、一つの賭けに勝った。
ドラゴニウムに腐敗のブレスをかける算段が整ったし、街に戻ってくることもできるようになった。
そして一番大きいのは…
今まで我慢をさせ続けていたレヴィーを妻に迎え入れることができたことだ。

女王には、レヴィーと一緒に城へ出向いて報告を済ませた。
デオノーラ女王やキアラ、ミシェル夫妻や鍛冶屋の夫婦、サーナとルーナ、全員が俺達を祝ってくれた。
もちろん、ドラゴニウムが安定して供給できるようになるということを抜きにして…

ただ、街に住居を構えることはできなくなってしまった。
レヴィーがこの洞窟と、俺を放したくないと願ってきたからだ。
故に、ドラゴンゾンビを街へ連れ帰るというドラゴンキラーにはなれなかったが、正直そんなことはどうでもいい。
街に出向く時は二人で一緒に行けばいいのだから。
だからしばらくの間、俺とレヴィーは洞窟内で生活を共にした。
まず真っ先にダブルベッドを購入し、洞窟の中に搬入した。
彼女の宝物だった絨毯は痛みも激しかったため何重にも重ねて縫い、洞窟内部を隠すための仕切り布にした。
ベッドを購入した理由? もちろん、愛する妻と毎晩のまぐわうために、だ。
あぁ、ドラゴニウム育成のためでもあるけどね。

ドラゴニウムの育成も、順調に進んだ。
魔界銀のタグに腐敗のブレスをかけてからリトル・ワイバーンを表面に塗ることで、生成のされ方は劇的に変わった。
当初目標としていた一週間に2ライン分の生産量を超え、ドラゴニウムをさらに育成させる熟成ラインを1本取っておくことが可能となった。
全てはレヴィーのおかげだ。

…そして半年後。これまでの功績が認められた。
これまで培った技術を全て提供して共有することを約束し、見返りとして洞窟のすぐ近くに新居を建ててもらった。
と言っても、寝室はこれまでと変わらず洞窟なのだが。

「レヴィー、愛してるよ…!」
「あなた、もっと言って……!♥♥♥」
「何度でも言うさ! レヴィー、愛してる…!」

始めは片言でだったレヴィーも、今では遜色なく話すことができるようになった。
昔の記憶が思い出せないとは言っているが、俺にとって昔のことは気にならない。
寧ろ、今が一番大切なのだから。

「レヴィー、落ち着いたら今度、竜泉秘境にでも行こうな?」
「ええ、是非に…あんっ!♥♥♥♥」

今日も今日とて、レヴィーと一心に交わる。
俺にとって、レヴィーは宝物だ。
故に離したくない、離すもんか…!

――――――――――――――――――――――――――――――――――


「いつもご苦労様! さて、今日はどんな仕上がりかい?」
「いらっしゃい。いつも高品質なものを提供してくれるのには本当に頭が上がらないわ。」
「ういっす! さぁて、今週の出来栄えはどうかな!?」


訪れる先々で歓迎される数々の言葉。


「いつも助かってるわぁ。購入した分すぐに捌けちゃうから。」
引く手数多だと言ってくれる魔法店の女店主。

「このドラゴニウムいいわねぇ…タグの半分を切り離して、タグごといただけるかしら?」
インテリア用にする目的で注文する宝石商の妖女。

「うん、今週もいい出来だ!アンタに協力して本当に正解だったよ!」
何枚かタグの所有権を買い取り、毎週決まった分を収めるスタイルを取る鍛冶屋の旦那。


「来週もまたよろしくね!」
「新製品ができたら、教えてね?」
「ほい、新しいタグだ。これからもご贔屓に!」


去り際に述べられる数々の言葉。


彼等に提供しているものは全て同じ品。ドラゴニウムだ。
それを売ってまわる俺達は…冒険者でも鉱山で働く者でも商人でもない。

「あ、そうそう。こんなものが出来ましてね。
 雷鳴の力が宿ったドラゴニウムです。
 まだまだ少量ではありますが、提供することができるようになりましたのでよろしくお願いしますね。」
「よろしく〜♪」

俺達は…【竜鉱を育む者】だ。
16/10/02 00:14更新 / 樹空渡
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■作者メッセージ
デオノーラ「また男を逃してしまった・・・orz」
キアラ「女王様にはもっと逞しい勇者のような方がお似合いじゃよ!」

女王様の婚活は、まだ続く・・・

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33