ハーゲントラップ
七月下旬。
残業を終え、自宅の最寄駅に到着した修二は購入したコンビニ袋を片手に帰路についていた。
夕飯がコンビニ弁当とはなんとも味気ないとは思うが、一人暮らしだとどうしても料理はおろそかになってしまうのは仕方ない。しかし、手軽である代わりに財布から金がすごい勢いで消えていくのは少々困りものだ。昼も買っていると尚更である。
そんなわけで極力安い弁当を購入した修二だったが、ふと目に付いたハーゲンダッツのライチプリン味を衝動買いしてしまっていた。
「限定の文字はずるいよなぁ」
これは自分だけに限ったことではないと言い訳し、つい買ってしまったお高いアイスだが、コンビニを出た時に気づいた。
時期はもう夏。それに伴って、夜といえど日々気温は高くなっている。そして自宅までの距離は十分以上。
ここから導き出される結論は家までハーゲンダッツ様がもたないという事実だ。百円おにぎり三個分に相当するのに、それはよろしくない。
仕方なく途中で食べることにした修二は帰路から少し外れた道を歩く。多少遠回りになってしまうが、近くの団地に住む子供向けの小さな公園があるのだ。
家とは真逆の方向に五分ほど歩くと、目的の公園に到着した。ブランコ、シーソー、砂場、ベンチにトイレと、いかにもデフォルトといった感じの公園は時間が時間なこともあって、修二以外に人の姿はない。
垣根を背にしたベンチに座ると、さっそくハーゲンダッツを開けてみる。
「おお、溶けてない。素晴らしい」
溶けてない高級アイスに感動しながらさっそく一匙すくって口に運ぶ。爽やかな味わいと甘さが広がり、三百円の価値はあったかなと悦に浸る。
よく味わおうと、口に入れては溶かしてその味を楽しむ。だが、ちまちま食べていたのがいけなかった。半分ほど食べ終わる頃には溶けてきてしまい、すくった際に手にぽたりとアイスが垂れる。
「うわー……べたべただ……」
手についた汁は舐めたものの、べたつきまでは取れない。夏ということもあって、不快なべたつきを放置する気になれなかった修二は迷った末にアイスをベンチに置いてトイレに向かった。ついでだからと用を足し、手を洗う。
この時、修二はまさか食べかけのアイスを誰かに食べられるなんてことは少しも思っていなかった。せいぜい、少し溶けてしまうくらいにしか考えていなかった。
「あれ、人が……」
トイレに行っている間に来たらしく、修二が座っていたベンチには学生らしき女の子の姿があった。手に持ったカップから中身をすくっては味わうように食べている。
まさかそんなと思いながらベンチに近づいていく修二。いや、あり得ない。普通に考えて、ベンチに放置されている他人の食べかけのアイスを食べるわけがない。例え、それが限定のハーゲンダッツだとしてもだ。
「マジか……」
食べられていた。女子学生の手にしているアイスカップのデザインは間違いなく修二が購入したハーゲンダッツだった。
「お兄さんどうしたの？ 会社をクビにでもなった？」
変な位置でどうしたものかと棒立ちになっていたからか、修二に気づいた女子学生が声をかけてきた。
「あー、いや、そうじゃないんだけど……」
こういう場合、どう言えばいいのだろう。泥棒か？ それとも弁償といえばいいのだろうか？ しかし、あれは食べかけだ。それに対してあれこれ言うのもみみっちい気がする。
「あ、ひょっとしてこれ、お兄さんのだった？ ごめんごめん、美味しそうな匂いがしたからついね」
察してくれたらしく、首を傾げながら女子学生はそう言ってくれた。その顔が思った以上に整っていて、つい毒気が抜かれる。冗談抜きに、アイドル並みの容姿だった。
「あー、うん。一応、僕のものになるかな」
「まあ、座りなよ。話はちゃんと聞くからさ」
アイスを食べる手を止める気はないらしい。アイスを取られたことよりも、こちらに対して少し注意した方がいいかもしれない。
これも年上の役目とばかりに咳払いし、口を開きかけたところで修二はあることに気づいた。
女子学生は行儀悪くベンチに三角座りをしていた。そのせいで、修二の目には彼女の下着がはっきりと見えてしまっていた。ピンクだった。
「ほら座りなって。それとも、そこで私のパンツ見てたいの？ はっきり見えてるしね？」
どこを見ていたのかばれていた。
「いや、見てない」
それだけ言うと、言及されるのを避けるために大人しくベンチに座る。
「それで、君はここで何してるんだい？」
「今日は塾でね。帰るとこだったんだ」
「そうしたら、公園で放置されているアイスを見つけたと」
「いい匂いがしたからね。これは食べるしかないでしょ？」
同意を求められても困る。
「よく人の食べかけを食べる気になったね」
「私にとって、誰のかが重要で、それ以外はどうでもよかったからね」
そう言うと彼女はアイスを一匙すくう。
「ほら見て見てお兄さん。間接キスだよ」
内輪ノリなのか、そんなことを言ってすくったアイスを舌でゆっくりと舐めていく。
そうしている彼女の表情は心なしとろんとしているように見えたが、実際は単に味わっているだけなのだろう。だが、相手が美少女なせいもあって修二には酷く艶めかしい光景だった。そのまま見ていると変な気分になりそうだったので、修二は慌てて彼女とは逆の方向を向く。
「美味しいかい？」
「うん、美味しいよ」
茶化した言葉を流されても気にしていないのか、彼女はそれから黙々とアイスをすくっては舐めた。
「ふう、美味しかった」
「それはよかった。じゃ、僕はこれで」
なんだか変なことになってしまったが、修二が彼女に付き合う必要はない。まして、年下の少女相手に食べかけのアイスを取られたぐらいであれこれ言うのも馬鹿らしかった。
大人な判断を下し、不審者扱いされる前に撤退しようと腰を浮かす。
「あ、待ってお兄さん。忘れ物」
「ん？ 忘れ物なんてしてない―」
振り向くと、目の前に綺麗な顔があった。
「な―」
驚きの声を上げるより先に唇が塞がれた。香水のような甘い香りがしたと思ったら、舌が口内に侵入してきて修二のものに絡んでくる。まるで修二の舌を舐めるかのように動く。
貪るような舌の動きになすがままになっていると、ほどなくして満足したのか、彼女の顔が離れた。
「あはぁ……♪ やっぱり美味しい……♪」
舌をぺろりとさせつつ淫靡に笑う彼女は学生とは思えないほど色香に溢れていた。
それに見惚れて生唾を飲み込むと、蹂躙された口内に残る仄かな甘さが喉を滑っていく。
「な、急になにを―」
「ねえお兄さん、こっち来て」
言いかけた言葉はシャツを引っ張られたことによって封じられた。
修二のシャツを掴んだ彼女はベンチ裏の垣根に入っていく。そしてすぐにこう言った。
「セックスしよ」
「え」
目を丸くして身体を硬直させる修二に、彼女がそっと身を寄せ、背伸びをして耳元で囁く。
「セッ・ク・ス」
たった四文字の言葉が背筋を震わせる。
「いや。いやいやいや、お金持ってないから。そういうの求めてないから！」
慌てて顔を離すと、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「あれ？ もしかして、援交だと思ってる？ だとしたら違うよ。お金なんていらないし。むしろ、私が払う側だし」
「意味わからないから！ ほら、とりあえず離れて！」
なんとか肩を掴んで押そうとする修二だったが、俊敏な動作で手首を掴まれてしまう。
「言うこと聞いてくれないと、大きい声だしちゃうよ？」
「なっ……」
状況が状況だけにその脅し文句に修二は固まる。
「ふふっ、大丈夫。大人しくセックスしてくれればいいだけだから」
「いや、けど……」
「さっきも言ったけど、援交じゃないよ。払うのは私。食べちゃったハーゲンダッツの代金を払うよ、身体で♪」
そう言って、ぐっと彼女が身体を押し付けてくる。薄いブラウス越しに体温と身体の柔らかさが伝わってくる。
そんなことをされれば、どうしたって男の生理反応が起きてしまう。
「うおっ！？」
むくむくと膨れ上がっていたアレを急に触られ、変な声が出てしまう。いつの間にか彼女の右手がズボンのテントに伸びていた。
「うわっ、こんなに大きくなるんだ……。ズボンの上からでも固さがわかるし……」
膨れ上がった修二の股間を見て触って彼女は目を見開く。そしてすぐに修二を見上げるように顔を上げた。
「ちょっと胸を押しつけただけでこんなになるってことは、お兄さんもしたいんだね。そうでなくちゃ」
修二のアレを触っていた彼女の手がベルトをカチャカチャと外そうとする。
「ま、待てっ！ 大人をからかうのもいい加減に……」
「もうっ。じゃあ、どうしたら信じてくれるの？」
ここまでされても乗ってこない修二に、彼女は不満であるとばかりにむくれた。学生とは思えないくらいの色気を放つ彼女だが、こういう顔をすると歳相応に見える。不覚にも、修二にはそれが可愛らしく思えた。
「どうって、いいかい。そういうことは、恋人と親しくなった上ですることで、初めて会った男といきなりすることじゃない」
「話が逸れてるから続行」
修二の一般論は軽く流され、彼女の手がベルトを外したと同時にズボンが降ろされてしまった。
「うわっ！？ ちょ、待てって！？」
下半身をパンツ姿にされてしまった修二は慌ててズボンを引き上げようとするが、当然のように抱き付いてきた彼女に邪魔される。
「待ってもお兄さんから押し倒したりはしてくれないんでしょ？ じゃあ、私から誘うしかないじゃん」
すべすべとした生足が股の間にするりと入ってくる。素肌同士の接触に足から背中までぞわぞわと刺激が走り、反射的に下を見ると熱を帯びた目と合う。
目が合った彼女は口元に笑みを浮かべ、修二に身体を押し付けたままままブラウスのボタンを上から外し始めた。一つ二つと外していくと同時に、白い肌の谷間がお披露目されていく。嫌でも視線が彼女の顔からそちらへ向かってしまう。
「結構大きいでしょ？ セックスしてる時は好きにしてくれていいんだよ。その代わり、私もお兄さんのこれを好きにさせてもらうから」
パンツの上から膨れ上がったアレを優しく撫でられる。それだけで更に勃起していくのがわかり、抵抗しようという気力が萎えていく。
「ね？ セックスしちゃお？」
確認するように、誘うように彼女が囁いてくる。それに屈するように、僅かに頷いてしまったかもしれない。
「そうでなくちゃ♪」
嬉しそうに笑う彼女に引っ張るように押し倒される。地面に寝るという行為に不快感を隠せないが、すぐに修二へとのしかかってくる彼女のおかげでそんな感覚は一瞬で吹っ飛んだ。
「さーて、それじゃあ見せてあげるね」
ボタンを外して前面を解放したブラウスの内側へと手を入れ、ピンクのブラをずらす。重力に従い、ぽろりとまろびでる二つの乳房はしっかりと膨らみ、立派な大人の身体であると証明しているようだ。
初めて見る本物の胸に、修二は無意識に生唾を飲み込む。エロサイトなんかで見る女の胸とは違い、彼女の胸は乳輪も綺麗で、むしゃぶりつきたくなる。
「さて、お兄さんのも見せてもらおうかな」
パンツに手をかけようとするので、修二は自分から降ろして抑えつけられていたモノを解放する。当然のように勃起したそれを見て、彼女の目が輝いた。
「実物はこんなすごいんだ……。それにいい匂い……」
ペニスに興味津々なのか、彼女は観察するように顔を近づけ、すんすん鼻を鳴らす。そして不意にぺろりとペニスを舐めた。
「っお……！ 馬鹿、敏感なんだからいきなりそんなこと……！」
「あはっ、でも気持ちいいんでしょ？ これが今から私の中に入ってくるんだね。それじゃ、始めよっかっ。私も待ち切れないし」
無邪気な笑みを妖艶なものに変えると、修二の上に彼女が跨ってくる。しかし、下着をずらして露わになった割れ目へとペニスの先端を当てがった所で彼女の動きが止まった。
「ど、どうした？」
いざ初体験というところでお預けを喰らう形になった修二は思わず彼女を見た。
「あのね、ビッチとか、ヤリマンだとか思わないでね。私、まだ、その……処女だから」
目が合った彼女は少しだけ恥ずかしそうだった。これだけ積極的に誘ってきてそれは嘘だろうと思う修二だったが、口にすることは叶わなかった。彼女がぐいっと腰を動かしてペニスを膣内へと咥え込んだのだ。
「あ……はぁ……♥ 入ってくるぅ……♥」
挿入しただけで彼女は早くも蕩けた声を上げる。破瓜の痛みはないのか、それとも感じていないのかは分からないが、痛がっている素振りはない。それほど気持ちいいのだろう。もちろん修二も同じだ。
彼女の中はまだ誰も入ったこともないだけあって締め付けが強く、文字通りペニスで押し広げているような状態だった。当然、全方位からねっとりとした柔壁に締め付けられ、亀頭はくすぐられ、気を抜けばすぐに射精してしまいそうだった。
生の膣の予想以上の心地良さに修二は声も出ない。歯を食いしばっていないと挿入半ばで暴発という無様極まりない事態になってしまうというのもあり、なんとかペニスが彼女の中に納まるまで耐える。
いつまでも続きそうに感じる挿入だったが、亀頭が不思議な感触にぶつかったことで終わったようだ。
「ん……すごい……。お腹の中、いっぱいにされてる感じ。入れられているだけで気持ちよすぎるかも……」
そこでお腹に手を当てていた彼女が修二へと目を向けた。
「お兄さんはどう？ 私の中、気持ちいい？」
「良すぎ、です……」
思わず敬語になってしまうくらい良い。挿入しただけなのにだ。
「そう？ じゃあ、動くからお互いにもっと気持ちよくなろうね」
彼女がじっくりと腰をくねらせ始めた。それに併せて、密着した膣内が優しく尿道や裏筋を刺激してくる。
「ちょっ……！」
緩やかな刺激はゆっくりと修二の忍耐力を削り、射精したい欲求が高まっていく。
「あはっ、中でぴくぴくしてるねっ。もう出そうなの？」
「ち、ちが……！」
早漏だと思われたくない見栄からそう言ってしまったが、実際には限界寸前だった。
「素直じゃないなぁ。私の中、気に入ってくれたんでしょ？ ほらほら、もっと感じてよぉ♥」
彼女の腰を動かすペースが上がった。咥え込まれたペニスがあらゆる方向から刺激され、修二の意思とは関係なく精を放つ準備に入る。
「おい、いきなり動きすぎ……！」
「だってぇ、お兄さんのこれで中を擦られるの、気持ちよすぎるんだもん……！」
蕩けた顔で腰を振る彼女は既にペニスに夢中らしく「やっ、ん……♥」と呻きながら動きがどんどん激しさを増していく。それに合わせて二つの双丘が弾む。
大きな胸が誘うように揺れているのを見て、修二は遠慮なく手を伸ばした。柔らかくも弾力のある胸は揉むとふにっと形を変える。
「やぁんっ、胸触ったらおちんちんぴくってした♥」
胸を弄られても彼女は腰を振ることを止めようとはしない。
負けじと修二も張りのある胸を両手で揉みしだいた。
「んんっ♥ やっ、胸もあそこも気持ちいいっ……♥ もっとぉ♥」
興奮のせいか、中で与えられる刺激も増加し、柔壁が擦れ、圧迫される度に先端に精が集中していく。
「ま、待て、これ以上やられると出る……！」
「じゃ、遠慮なく中にどうぞぉ……♥」
修二の要求など聞く気はないらしく、結合部から卑猥な音が聞こえるくらいに彼女が腰を打ち付けてくる。勃起したペニスに柔壁が絡みつき、射精を誘うようにくすぐる。
無意識に歯を噛み、射精までもう後がないという状態まで追いやられたところで彼女が一際大きく腰を動かしてきた。精を放とうとガチガチになったペニスが一気に快楽の蜜壺へと引き込まれ、亀頭が子宮口へぶつかる。
「あ―」
呻くような声を上げると同時に修二の身体は白濁を迸らせ、意思に関係なく彼女の中へ射精を開始した。
「ひぃっ、あ、な、中に出てるっ……♥」
彼女が酸欠のように口をパクパクさせて喘いでいる。それでも膣内はペニスを締め上げ、精を絞ろうと収縮する。
「んぁぁ、や、やだ、気持ちよすぎて術が解けちゃ……♥」
「お、おぉ、お、と、止まらな……！」
彼女の膣に絞られるまま、修二は長々と射精を続けた。初体験の女の膣の蠕動に意識を奪われ、射精が終わったと気づいたのは彼女の頭ががくんと垂れた後だった。
「お、おい、大丈夫か……？」
イったというやつだろうか。そう思った修二が彼女の肩に手を伸ばしかけた時、彼女の手が修二の手首を掴んだ。
その俊敏さはとても人とは思えないものだったが、修二がそれに驚く余裕はなかった。
「え……？」
修二の腕を掴む彼女の腕がいつの間にか獣毛に覆われていた。それだけでなく、修二の腹を挟むようにしていたすべすべの両足も同じように変化しており、およそ人の足からはかけ離れた状態になっている。姿が変わったことに戸惑う修二、そこで彼女がようやく顔を上げた。
「あはぁ♥ 中出しって想像以上に気持ちいいんだね、術が解けちゃった……♥」
失敗失敗と舌を出して笑う彼女。可愛さと妖艶さとが同居した笑顔に見惚れる修二だったが、その背後では尻尾がゆらゆらと揺れ、頭に獣の耳まであることに気づき、意識が現実に戻る。
「術が解けたって、一体なんなんだよ……。人じゃない、のか……？」
「元は人だよ。今は魔物だけどね♪」
にぃっと彼女が楽しそうに笑う。その拍子に尖った犬歯が覗く。
「魔物って、いや、そんな非現実的な。夢でも見てるのか……？」
「夢じゃないってば。あなたとセックスしたのは狼女だったってこと♥」
ぎゅっと膣を絞められ、萎えていたペニスが固さを取り戻していく。
「うおっ、ば、ま、待て……！」
「気持ち良かったでしょ？ 私とのセックス。すごい量出てたしね。お兄さんの精子、ここにたっぷり入ってるよ♥」
露出した白い腹を彼女は満足そうに撫でる。
「そ、そうじゃないっ。魔物なんているはずが……！」
「認めたくない気持ちは分かるけど、いるんだよねぇ」
言ってみたものの、修二も彼女が嘘を言っているわけでないことは分かっていた。人は急に手足に毛が生えたりはしないし、尻尾だってない。だからこそ、別の疑問が頭をよぎる。
「じゃあ、魔物の君は僕をどうするつもりなんだ……？」
「ん？ そうだね、まずは恋人になってもらおうかな♪」
「……恋人という名の奴隷ってこと？」
「なんでそうなるかな。普通の恋人だよ。デートに行って、キスをして、セックスをする。ほら、普通でしょ？」
確かに普通だ。しかし、相手が人の場合の話であって、魔物が相手だと普通の恋人にする行為ができるか修二には疑問だった。そんな修二の疑問を見透かしたかのように彼女が顔を近づけ、耳元で囁く。
「だからね？ もう一回戦しちゃお？」
耳を疑う発言がさらりとされた。
「もう一回って、そんなすぐには回復しないし、恋人になるとも言ってな―うぉっ！？」
修二の返事を待たずに彼女が再び腰を振り始めたせいで、先ほどよりもねちっこくなった膣内がペニスに絡みついてくる。
「さあ、私とわんわんしよ♥」
「いや、だから、そんなすぐに二回目は無理だって―」
修二が悲鳴を上げるも彼女の腰は止まらない。
「わおーん♥」
楽し気な声真似とともに強制参加の二回戦が始まった。
修二はどうするべきか悩んでいた。目の前にはテーマパークから飛び出してきたような城を模した建物。その中心には休憩2500円、宿泊6000円なる文字がでかでかとアピールされている。俗に言うラブで始まってホテルで終わる二人連れ限定のホテルである。
「どうしたの？ 早く入ろうよ」
そう言って修二の腕を引くのは公園で出会った彼女、彩香だ。
「いや、こういうとこに女子高生を連れ込むのはやっぱり罪悪感が」
そう、彩香はまだ高校生だった。来年で卒業して大学に進むらしいのだが、今は現役の女子高生。大人のホテルに連れ込んでいい歳ではないのだ。
「さんざん私の身体を堪能してるだから、今更そんなこと気にしなくてもいいじゃん。ほら入ろうよ。じゃないとここで襲っちゃうよ？」
「それはよろしくないな」
「でしょ？ だからさぁ、さっさと入って気持ちよくなろうよ。お互いストレス溜まってるんだしさ」
あの日から修二は彩香と付き合っている。ほとんど強引に恋人にされた上に相手は人ではないのだが、今では全く気にならなくなっていた。魔物とはいえ美少女。しかもエロいことに寛容どころか、向こうからぐいぐい攻めてくる完全な肉食系。それが狼だからか、彼女が元々そういう気質なのかは知らないが、修二にとってはどストライクだったせいもあった。
付き合い始めてからというもの、週末は彩香が修二の家に来てお互いに仕事と受験勉強のストレス発散という名目でしっぽりするのが休日の基本日程となっている。しかし今日は彩香がこのラブホのクーポンがあると言い出し、今に至る。
「そうなんだけどね。今更だけど、彩香、人じゃないわけだろ？ 仮にバレるとまずいんじゃないかなと」
「ああ、それなら大丈夫。なんだっけな、確か刑部狸？ とかいう人達が経営してるから問題ないらしいよ。美容室に連絡して教えてもらったから、問題なし」
「美容室って、彩香が魔物になったとこ？」
「イエース」
ビシッと親指を立ててみせる彩香。
なんでも、魔物が人に化けて経営している美容室があるらしかった。彩香はそこに行って魔物になったらしい。話を聞いた時は日本大丈夫なのかと不安に思ったものだが、仮に問題だったとしても修二にどうこうできることでないので、それ以上美容室について考えるのはやめた。どうするかは偉い人達に任せればいい。修二はエロいことを堪能するのみである。
「ま、そういうことならいいかな。じゃ、初ラブホと行きますか」
「いぇーい♪ なんか魔物だっていうと割引もきくらしいし、良かったらまた使ってもいいかもね」
「なぜもっと早く言わない。よし行くぞ」
庶民にとって嬉しい言葉、割引と聞いて修二は彩香の腕をとって大人のホテルに突入した。
「きゃー♥ 狼に襲われるー♥」
「狼はお前だろ」
ちなみにこの後襲われたのはもちろん修二であり、ベッドの上での連敗記録を更新したのだった。
残業を終え、自宅の最寄駅に到着した修二は購入したコンビニ袋を片手に帰路についていた。
夕飯がコンビニ弁当とはなんとも味気ないとは思うが、一人暮らしだとどうしても料理はおろそかになってしまうのは仕方ない。しかし、手軽である代わりに財布から金がすごい勢いで消えていくのは少々困りものだ。昼も買っていると尚更である。
そんなわけで極力安い弁当を購入した修二だったが、ふと目に付いたハーゲンダッツのライチプリン味を衝動買いしてしまっていた。
「限定の文字はずるいよなぁ」
これは自分だけに限ったことではないと言い訳し、つい買ってしまったお高いアイスだが、コンビニを出た時に気づいた。
時期はもう夏。それに伴って、夜といえど日々気温は高くなっている。そして自宅までの距離は十分以上。
ここから導き出される結論は家までハーゲンダッツ様がもたないという事実だ。百円おにぎり三個分に相当するのに、それはよろしくない。
仕方なく途中で食べることにした修二は帰路から少し外れた道を歩く。多少遠回りになってしまうが、近くの団地に住む子供向けの小さな公園があるのだ。
家とは真逆の方向に五分ほど歩くと、目的の公園に到着した。ブランコ、シーソー、砂場、ベンチにトイレと、いかにもデフォルトといった感じの公園は時間が時間なこともあって、修二以外に人の姿はない。
垣根を背にしたベンチに座ると、さっそくハーゲンダッツを開けてみる。
「おお、溶けてない。素晴らしい」
溶けてない高級アイスに感動しながらさっそく一匙すくって口に運ぶ。爽やかな味わいと甘さが広がり、三百円の価値はあったかなと悦に浸る。
よく味わおうと、口に入れては溶かしてその味を楽しむ。だが、ちまちま食べていたのがいけなかった。半分ほど食べ終わる頃には溶けてきてしまい、すくった際に手にぽたりとアイスが垂れる。
「うわー……べたべただ……」
手についた汁は舐めたものの、べたつきまでは取れない。夏ということもあって、不快なべたつきを放置する気になれなかった修二は迷った末にアイスをベンチに置いてトイレに向かった。ついでだからと用を足し、手を洗う。
この時、修二はまさか食べかけのアイスを誰かに食べられるなんてことは少しも思っていなかった。せいぜい、少し溶けてしまうくらいにしか考えていなかった。
「あれ、人が……」
トイレに行っている間に来たらしく、修二が座っていたベンチには学生らしき女の子の姿があった。手に持ったカップから中身をすくっては味わうように食べている。
まさかそんなと思いながらベンチに近づいていく修二。いや、あり得ない。普通に考えて、ベンチに放置されている他人の食べかけのアイスを食べるわけがない。例え、それが限定のハーゲンダッツだとしてもだ。
「マジか……」
食べられていた。女子学生の手にしているアイスカップのデザインは間違いなく修二が購入したハーゲンダッツだった。
「お兄さんどうしたの？ 会社をクビにでもなった？」
変な位置でどうしたものかと棒立ちになっていたからか、修二に気づいた女子学生が声をかけてきた。
「あー、いや、そうじゃないんだけど……」
こういう場合、どう言えばいいのだろう。泥棒か？ それとも弁償といえばいいのだろうか？ しかし、あれは食べかけだ。それに対してあれこれ言うのもみみっちい気がする。
「あ、ひょっとしてこれ、お兄さんのだった？ ごめんごめん、美味しそうな匂いがしたからついね」
察してくれたらしく、首を傾げながら女子学生はそう言ってくれた。その顔が思った以上に整っていて、つい毒気が抜かれる。冗談抜きに、アイドル並みの容姿だった。
「あー、うん。一応、僕のものになるかな」
「まあ、座りなよ。話はちゃんと聞くからさ」
アイスを食べる手を止める気はないらしい。アイスを取られたことよりも、こちらに対して少し注意した方がいいかもしれない。
これも年上の役目とばかりに咳払いし、口を開きかけたところで修二はあることに気づいた。
女子学生は行儀悪くベンチに三角座りをしていた。そのせいで、修二の目には彼女の下着がはっきりと見えてしまっていた。ピンクだった。
「ほら座りなって。それとも、そこで私のパンツ見てたいの？ はっきり見えてるしね？」
どこを見ていたのかばれていた。
「いや、見てない」
それだけ言うと、言及されるのを避けるために大人しくベンチに座る。
「それで、君はここで何してるんだい？」
「今日は塾でね。帰るとこだったんだ」
「そうしたら、公園で放置されているアイスを見つけたと」
「いい匂いがしたからね。これは食べるしかないでしょ？」
同意を求められても困る。
「よく人の食べかけを食べる気になったね」
「私にとって、誰のかが重要で、それ以外はどうでもよかったからね」
そう言うと彼女はアイスを一匙すくう。
「ほら見て見てお兄さん。間接キスだよ」
内輪ノリなのか、そんなことを言ってすくったアイスを舌でゆっくりと舐めていく。
そうしている彼女の表情は心なしとろんとしているように見えたが、実際は単に味わっているだけなのだろう。だが、相手が美少女なせいもあって修二には酷く艶めかしい光景だった。そのまま見ていると変な気分になりそうだったので、修二は慌てて彼女とは逆の方向を向く。
「美味しいかい？」
「うん、美味しいよ」
茶化した言葉を流されても気にしていないのか、彼女はそれから黙々とアイスをすくっては舐めた。
「ふう、美味しかった」
「それはよかった。じゃ、僕はこれで」
なんだか変なことになってしまったが、修二が彼女に付き合う必要はない。まして、年下の少女相手に食べかけのアイスを取られたぐらいであれこれ言うのも馬鹿らしかった。
大人な判断を下し、不審者扱いされる前に撤退しようと腰を浮かす。
「あ、待ってお兄さん。忘れ物」
「ん？ 忘れ物なんてしてない―」
振り向くと、目の前に綺麗な顔があった。
「な―」
驚きの声を上げるより先に唇が塞がれた。香水のような甘い香りがしたと思ったら、舌が口内に侵入してきて修二のものに絡んでくる。まるで修二の舌を舐めるかのように動く。
貪るような舌の動きになすがままになっていると、ほどなくして満足したのか、彼女の顔が離れた。
「あはぁ……♪ やっぱり美味しい……♪」
舌をぺろりとさせつつ淫靡に笑う彼女は学生とは思えないほど色香に溢れていた。
それに見惚れて生唾を飲み込むと、蹂躙された口内に残る仄かな甘さが喉を滑っていく。
「な、急になにを―」
「ねえお兄さん、こっち来て」
言いかけた言葉はシャツを引っ張られたことによって封じられた。
修二のシャツを掴んだ彼女はベンチ裏の垣根に入っていく。そしてすぐにこう言った。
「セックスしよ」
「え」
目を丸くして身体を硬直させる修二に、彼女がそっと身を寄せ、背伸びをして耳元で囁く。
「セッ・ク・ス」
たった四文字の言葉が背筋を震わせる。
「いや。いやいやいや、お金持ってないから。そういうの求めてないから！」
慌てて顔を離すと、彼女は不思議そうに首を傾げた。
「あれ？ もしかして、援交だと思ってる？ だとしたら違うよ。お金なんていらないし。むしろ、私が払う側だし」
「意味わからないから！ ほら、とりあえず離れて！」
なんとか肩を掴んで押そうとする修二だったが、俊敏な動作で手首を掴まれてしまう。
「言うこと聞いてくれないと、大きい声だしちゃうよ？」
「なっ……」
状況が状況だけにその脅し文句に修二は固まる。
「ふふっ、大丈夫。大人しくセックスしてくれればいいだけだから」
「いや、けど……」
「さっきも言ったけど、援交じゃないよ。払うのは私。食べちゃったハーゲンダッツの代金を払うよ、身体で♪」
そう言って、ぐっと彼女が身体を押し付けてくる。薄いブラウス越しに体温と身体の柔らかさが伝わってくる。
そんなことをされれば、どうしたって男の生理反応が起きてしまう。
「うおっ！？」
むくむくと膨れ上がっていたアレを急に触られ、変な声が出てしまう。いつの間にか彼女の右手がズボンのテントに伸びていた。
「うわっ、こんなに大きくなるんだ……。ズボンの上からでも固さがわかるし……」
膨れ上がった修二の股間を見て触って彼女は目を見開く。そしてすぐに修二を見上げるように顔を上げた。
「ちょっと胸を押しつけただけでこんなになるってことは、お兄さんもしたいんだね。そうでなくちゃ」
修二のアレを触っていた彼女の手がベルトをカチャカチャと外そうとする。
「ま、待てっ！ 大人をからかうのもいい加減に……」
「もうっ。じゃあ、どうしたら信じてくれるの？」
ここまでされても乗ってこない修二に、彼女は不満であるとばかりにむくれた。学生とは思えないくらいの色気を放つ彼女だが、こういう顔をすると歳相応に見える。不覚にも、修二にはそれが可愛らしく思えた。
「どうって、いいかい。そういうことは、恋人と親しくなった上ですることで、初めて会った男といきなりすることじゃない」
「話が逸れてるから続行」
修二の一般論は軽く流され、彼女の手がベルトを外したと同時にズボンが降ろされてしまった。
「うわっ！？ ちょ、待てって！？」
下半身をパンツ姿にされてしまった修二は慌ててズボンを引き上げようとするが、当然のように抱き付いてきた彼女に邪魔される。
「待ってもお兄さんから押し倒したりはしてくれないんでしょ？ じゃあ、私から誘うしかないじゃん」
すべすべとした生足が股の間にするりと入ってくる。素肌同士の接触に足から背中までぞわぞわと刺激が走り、反射的に下を見ると熱を帯びた目と合う。
目が合った彼女は口元に笑みを浮かべ、修二に身体を押し付けたままままブラウスのボタンを上から外し始めた。一つ二つと外していくと同時に、白い肌の谷間がお披露目されていく。嫌でも視線が彼女の顔からそちらへ向かってしまう。
「結構大きいでしょ？ セックスしてる時は好きにしてくれていいんだよ。その代わり、私もお兄さんのこれを好きにさせてもらうから」
パンツの上から膨れ上がったアレを優しく撫でられる。それだけで更に勃起していくのがわかり、抵抗しようという気力が萎えていく。
「ね？ セックスしちゃお？」
確認するように、誘うように彼女が囁いてくる。それに屈するように、僅かに頷いてしまったかもしれない。
「そうでなくちゃ♪」
嬉しそうに笑う彼女に引っ張るように押し倒される。地面に寝るという行為に不快感を隠せないが、すぐに修二へとのしかかってくる彼女のおかげでそんな感覚は一瞬で吹っ飛んだ。
「さーて、それじゃあ見せてあげるね」
ボタンを外して前面を解放したブラウスの内側へと手を入れ、ピンクのブラをずらす。重力に従い、ぽろりとまろびでる二つの乳房はしっかりと膨らみ、立派な大人の身体であると証明しているようだ。
初めて見る本物の胸に、修二は無意識に生唾を飲み込む。エロサイトなんかで見る女の胸とは違い、彼女の胸は乳輪も綺麗で、むしゃぶりつきたくなる。
「さて、お兄さんのも見せてもらおうかな」
パンツに手をかけようとするので、修二は自分から降ろして抑えつけられていたモノを解放する。当然のように勃起したそれを見て、彼女の目が輝いた。
「実物はこんなすごいんだ……。それにいい匂い……」
ペニスに興味津々なのか、彼女は観察するように顔を近づけ、すんすん鼻を鳴らす。そして不意にぺろりとペニスを舐めた。
「っお……！ 馬鹿、敏感なんだからいきなりそんなこと……！」
「あはっ、でも気持ちいいんでしょ？ これが今から私の中に入ってくるんだね。それじゃ、始めよっかっ。私も待ち切れないし」
無邪気な笑みを妖艶なものに変えると、修二の上に彼女が跨ってくる。しかし、下着をずらして露わになった割れ目へとペニスの先端を当てがった所で彼女の動きが止まった。
「ど、どうした？」
いざ初体験というところでお預けを喰らう形になった修二は思わず彼女を見た。
「あのね、ビッチとか、ヤリマンだとか思わないでね。私、まだ、その……処女だから」
目が合った彼女は少しだけ恥ずかしそうだった。これだけ積極的に誘ってきてそれは嘘だろうと思う修二だったが、口にすることは叶わなかった。彼女がぐいっと腰を動かしてペニスを膣内へと咥え込んだのだ。
「あ……はぁ……♥ 入ってくるぅ……♥」
挿入しただけで彼女は早くも蕩けた声を上げる。破瓜の痛みはないのか、それとも感じていないのかは分からないが、痛がっている素振りはない。それほど気持ちいいのだろう。もちろん修二も同じだ。
彼女の中はまだ誰も入ったこともないだけあって締め付けが強く、文字通りペニスで押し広げているような状態だった。当然、全方位からねっとりとした柔壁に締め付けられ、亀頭はくすぐられ、気を抜けばすぐに射精してしまいそうだった。
生の膣の予想以上の心地良さに修二は声も出ない。歯を食いしばっていないと挿入半ばで暴発という無様極まりない事態になってしまうというのもあり、なんとかペニスが彼女の中に納まるまで耐える。
いつまでも続きそうに感じる挿入だったが、亀頭が不思議な感触にぶつかったことで終わったようだ。
「ん……すごい……。お腹の中、いっぱいにされてる感じ。入れられているだけで気持ちよすぎるかも……」
そこでお腹に手を当てていた彼女が修二へと目を向けた。
「お兄さんはどう？ 私の中、気持ちいい？」
「良すぎ、です……」
思わず敬語になってしまうくらい良い。挿入しただけなのにだ。
「そう？ じゃあ、動くからお互いにもっと気持ちよくなろうね」
彼女がじっくりと腰をくねらせ始めた。それに併せて、密着した膣内が優しく尿道や裏筋を刺激してくる。
「ちょっ……！」
緩やかな刺激はゆっくりと修二の忍耐力を削り、射精したい欲求が高まっていく。
「あはっ、中でぴくぴくしてるねっ。もう出そうなの？」
「ち、ちが……！」
早漏だと思われたくない見栄からそう言ってしまったが、実際には限界寸前だった。
「素直じゃないなぁ。私の中、気に入ってくれたんでしょ？ ほらほら、もっと感じてよぉ♥」
彼女の腰を動かすペースが上がった。咥え込まれたペニスがあらゆる方向から刺激され、修二の意思とは関係なく精を放つ準備に入る。
「おい、いきなり動きすぎ……！」
「だってぇ、お兄さんのこれで中を擦られるの、気持ちよすぎるんだもん……！」
蕩けた顔で腰を振る彼女は既にペニスに夢中らしく「やっ、ん……♥」と呻きながら動きがどんどん激しさを増していく。それに合わせて二つの双丘が弾む。
大きな胸が誘うように揺れているのを見て、修二は遠慮なく手を伸ばした。柔らかくも弾力のある胸は揉むとふにっと形を変える。
「やぁんっ、胸触ったらおちんちんぴくってした♥」
胸を弄られても彼女は腰を振ることを止めようとはしない。
負けじと修二も張りのある胸を両手で揉みしだいた。
「んんっ♥ やっ、胸もあそこも気持ちいいっ……♥ もっとぉ♥」
興奮のせいか、中で与えられる刺激も増加し、柔壁が擦れ、圧迫される度に先端に精が集中していく。
「ま、待て、これ以上やられると出る……！」
「じゃ、遠慮なく中にどうぞぉ……♥」
修二の要求など聞く気はないらしく、結合部から卑猥な音が聞こえるくらいに彼女が腰を打ち付けてくる。勃起したペニスに柔壁が絡みつき、射精を誘うようにくすぐる。
無意識に歯を噛み、射精までもう後がないという状態まで追いやられたところで彼女が一際大きく腰を動かしてきた。精を放とうとガチガチになったペニスが一気に快楽の蜜壺へと引き込まれ、亀頭が子宮口へぶつかる。
「あ―」
呻くような声を上げると同時に修二の身体は白濁を迸らせ、意思に関係なく彼女の中へ射精を開始した。
「ひぃっ、あ、な、中に出てるっ……♥」
彼女が酸欠のように口をパクパクさせて喘いでいる。それでも膣内はペニスを締め上げ、精を絞ろうと収縮する。
「んぁぁ、や、やだ、気持ちよすぎて術が解けちゃ……♥」
「お、おぉ、お、と、止まらな……！」
彼女の膣に絞られるまま、修二は長々と射精を続けた。初体験の女の膣の蠕動に意識を奪われ、射精が終わったと気づいたのは彼女の頭ががくんと垂れた後だった。
「お、おい、大丈夫か……？」
イったというやつだろうか。そう思った修二が彼女の肩に手を伸ばしかけた時、彼女の手が修二の手首を掴んだ。
その俊敏さはとても人とは思えないものだったが、修二がそれに驚く余裕はなかった。
「え……？」
修二の腕を掴む彼女の腕がいつの間にか獣毛に覆われていた。それだけでなく、修二の腹を挟むようにしていたすべすべの両足も同じように変化しており、およそ人の足からはかけ離れた状態になっている。姿が変わったことに戸惑う修二、そこで彼女がようやく顔を上げた。
「あはぁ♥ 中出しって想像以上に気持ちいいんだね、術が解けちゃった……♥」
失敗失敗と舌を出して笑う彼女。可愛さと妖艶さとが同居した笑顔に見惚れる修二だったが、その背後では尻尾がゆらゆらと揺れ、頭に獣の耳まであることに気づき、意識が現実に戻る。
「術が解けたって、一体なんなんだよ……。人じゃない、のか……？」
「元は人だよ。今は魔物だけどね♪」
にぃっと彼女が楽しそうに笑う。その拍子に尖った犬歯が覗く。
「魔物って、いや、そんな非現実的な。夢でも見てるのか……？」
「夢じゃないってば。あなたとセックスしたのは狼女だったってこと♥」
ぎゅっと膣を絞められ、萎えていたペニスが固さを取り戻していく。
「うおっ、ば、ま、待て……！」
「気持ち良かったでしょ？ 私とのセックス。すごい量出てたしね。お兄さんの精子、ここにたっぷり入ってるよ♥」
露出した白い腹を彼女は満足そうに撫でる。
「そ、そうじゃないっ。魔物なんているはずが……！」
「認めたくない気持ちは分かるけど、いるんだよねぇ」
言ってみたものの、修二も彼女が嘘を言っているわけでないことは分かっていた。人は急に手足に毛が生えたりはしないし、尻尾だってない。だからこそ、別の疑問が頭をよぎる。
「じゃあ、魔物の君は僕をどうするつもりなんだ……？」
「ん？ そうだね、まずは恋人になってもらおうかな♪」
「……恋人という名の奴隷ってこと？」
「なんでそうなるかな。普通の恋人だよ。デートに行って、キスをして、セックスをする。ほら、普通でしょ？」
確かに普通だ。しかし、相手が人の場合の話であって、魔物が相手だと普通の恋人にする行為ができるか修二には疑問だった。そんな修二の疑問を見透かしたかのように彼女が顔を近づけ、耳元で囁く。
「だからね？ もう一回戦しちゃお？」
耳を疑う発言がさらりとされた。
「もう一回って、そんなすぐには回復しないし、恋人になるとも言ってな―うぉっ！？」
修二の返事を待たずに彼女が再び腰を振り始めたせいで、先ほどよりもねちっこくなった膣内がペニスに絡みついてくる。
「さあ、私とわんわんしよ♥」
「いや、だから、そんなすぐに二回目は無理だって―」
修二が悲鳴を上げるも彼女の腰は止まらない。
「わおーん♥」
楽し気な声真似とともに強制参加の二回戦が始まった。
修二はどうするべきか悩んでいた。目の前にはテーマパークから飛び出してきたような城を模した建物。その中心には休憩2500円、宿泊6000円なる文字がでかでかとアピールされている。俗に言うラブで始まってホテルで終わる二人連れ限定のホテルである。
「どうしたの？ 早く入ろうよ」
そう言って修二の腕を引くのは公園で出会った彼女、彩香だ。
「いや、こういうとこに女子高生を連れ込むのはやっぱり罪悪感が」
そう、彩香はまだ高校生だった。来年で卒業して大学に進むらしいのだが、今は現役の女子高生。大人のホテルに連れ込んでいい歳ではないのだ。
「さんざん私の身体を堪能してるだから、今更そんなこと気にしなくてもいいじゃん。ほら入ろうよ。じゃないとここで襲っちゃうよ？」
「それはよろしくないな」
「でしょ？ だからさぁ、さっさと入って気持ちよくなろうよ。お互いストレス溜まってるんだしさ」
あの日から修二は彩香と付き合っている。ほとんど強引に恋人にされた上に相手は人ではないのだが、今では全く気にならなくなっていた。魔物とはいえ美少女。しかもエロいことに寛容どころか、向こうからぐいぐい攻めてくる完全な肉食系。それが狼だからか、彼女が元々そういう気質なのかは知らないが、修二にとってはどストライクだったせいもあった。
付き合い始めてからというもの、週末は彩香が修二の家に来てお互いに仕事と受験勉強のストレス発散という名目でしっぽりするのが休日の基本日程となっている。しかし今日は彩香がこのラブホのクーポンがあると言い出し、今に至る。
「そうなんだけどね。今更だけど、彩香、人じゃないわけだろ？ 仮にバレるとまずいんじゃないかなと」
「ああ、それなら大丈夫。なんだっけな、確か刑部狸？ とかいう人達が経営してるから問題ないらしいよ。美容室に連絡して教えてもらったから、問題なし」
「美容室って、彩香が魔物になったとこ？」
「イエース」
ビシッと親指を立ててみせる彩香。
なんでも、魔物が人に化けて経営している美容室があるらしかった。彩香はそこに行って魔物になったらしい。話を聞いた時は日本大丈夫なのかと不安に思ったものだが、仮に問題だったとしても修二にどうこうできることでないので、それ以上美容室について考えるのはやめた。どうするかは偉い人達に任せればいい。修二はエロいことを堪能するのみである。
「ま、そういうことならいいかな。じゃ、初ラブホと行きますか」
「いぇーい♪ なんか魔物だっていうと割引もきくらしいし、良かったらまた使ってもいいかもね」
「なぜもっと早く言わない。よし行くぞ」
庶民にとって嬉しい言葉、割引と聞いて修二は彩香の腕をとって大人のホテルに突入した。
「きゃー♥ 狼に襲われるー♥」
「狼はお前だろ」
ちなみにこの後襲われたのはもちろん修二であり、ベッドの上での連敗記録を更新したのだった。
16/07/10 23:01更新 / エンプティ