恋文を届けに
晴れた空でのんびりと雲が動く。 どこまでも続きそうなのどかな道で、少し前に出会った旅人の男性から聞いた話を彼女は繰り返した。 「領主かぁ。あの子、そういうタイプじゃなかった気がするんだけどなぁ……」 鍔の広い黒い帽子を人差し指で軽く押し上げ、何かを思い出すように空を仰ぐ。 少しの間考えるように首を傾げていた彼女だったが、すぐに前方の道を見やった。 「ま、会えばわかるかな。今までもそうだったし」 屈託なく笑うと、彼女は歩き出す。 軽い足取りに、うなじの辺りで結ったさらさらの金髪が尻尾のように揺れた。 |
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