子供の約束
それは春先の出来事だった。
今年で六才になる祐助は、一人森の中で遊んでいた。
森があるくらいだから、彼の住む村は田舎もいいとこで、当然子供が楽しむような娯楽など何もない。
だから、野山を駆け巡る腕白坊主になったのは当然だったのかもしれない。
その日も祐助は森の中を慣れた様子でさまよっていた。
同じ年頃の子と一緒に遊べばいいと思われそうだが、子供には子供なりの事情があるのだ。
現在、村での流行りの遊びは、森や山に行って珍しいものを見つけて持ち帰ってくることだった。
だから祐助も何かすごいものを見つけて友達を驚かせようと、一人で森の中を堂々と進んでいたのだ。
だが、子供が一人で広大な森の中から珍しいものなどそうそう見つけられるはずもなく、その日も祐助はなにも発見できずにいた。
そうなると、意地でも見つけようとするのが子供というものだが、祐助も行ったことのない森の奥まで探そうとはせず、来た道を引き返す。
静かな森に響くのは祐助が落ち葉や枯れた枝を踏み分ける音だけ。
大人によっては不気味に感じることもありそうだが、無邪気な子供には静けさなど恐怖に感じず、当たり前のように進んでいく。
あと少しで森を抜けるといった所まで戻ってきた時だった。
ふと、女の子の声が聞こえた気がしたのだ。
「?」
不思議に思った祐助は辺りを見回すが、誰も見当たらない。
首をかしげて歩き出した祐助だったが、今度ははっきりと女の子の、それも泣いているような声が聞こえ、足を止める。
村の女の子かと思い、祐助は声のした方角へと走り出した。
祐助の向かった方角は間違ってはいなかったようで、女の子のすすり泣く声がはっきりと聞こえてくる。
そして一際大きい藪を突き抜けた時、祐助はついに女の子を発見した。
歳は祐助と同じくらいだろう。いきなり目の前に音を立てて祐助が現れたからか、女の子は怯えたように体を竦める。
そんな女の子は、下半身が白い蛇の体だった。
「あれー?蛇の妖怪さんだー」
目の前にいるのは明らかに人ではないというのに、祐助は首をかしげただけで怯えるようなことはせず、間延びした声を出す。
それどころか、女の子に微笑んでいた。
「なんで妖怪さんは泣いてるの?どこか痛いの?」
祐助が現れて一旦は泣くのを止めていた少女だが、その言葉に再び泣きだした。
「ふ、えぐっ…。お花を摘んでたら、み、道に、迷っちゃって、おうちが分からないの…」
そう言う少女の手には、摘んでいたのだろう白い花がいくつか握られていた。
「迷子なの?おうちはどこにあるの?」
「お、おっぎな、滝の、あ、あるとごろ…」
右手で目元をごしごしと擦り、鼻声でなんとかそう言った少女は再びぐずり出す。
「滝…?あ、ぼく知ってるよ。連れてってあげる」
少し前に同じ理由で森に入った時、たまたま発見したのを覚えていた祐助は少女の手をとって歩き出す。
一度行ったことがあるからか、祐助は似たような景色の森を足を止めることなく進み、やがて目的の場所へと到達した。
水が小高い崖から降り注ぎ、その落下地点では飛沫が煙の如く立ち込めている。
うるさいくらいの水音が絶えないその場所は、少女が望んだ光景だったのだろう。
その顔に、ホッとしたような笑みが戻った。
「ここでしょ?」
笑顔で問いかける祐助に、少女はこくこくと頷く。
「おうちに帰れてよかったね!」
ニコニコと笑顔の祐助に、少女はおずおずとお礼を述べた。
「あの、ありがとう…。あなたのお名前は?」
「ぼく?ぼくは祐助だよ」
「祐助…」
祐助の名前を聞き出した少女は、何度もその名を繰り返し呟く。
そしてその頬を僅かに赤くしながら、少女は祐助にこう言った。
「祐助。私、大人になったら祐助にお礼がしたいの。だから、そのときはお嫁さんにしてくれる?」
「ぼくのお嫁さんになりたいの?いいよー」
「ほんと?ほんとに?」
「うん」
無邪気に笑いながら、こくりと頷く祐助。
それに対して少女はこれ以上ないくらい嬉しそうに微笑み、その蛇の尻尾が揺れる。
幼い二人による微笑ましい口約束。
だが、この約束を少女が本気にしていたことを、その時の祐助には知る由もなかった。
そして十六年後。
「ふう、こんなとこかな」
畑の雑草を根元から引き抜いていた祐助はもう一度畑を見回し、余計な雑草が生えていないことを確認すると、首にかけていた手拭いで額の汗をふいた。
どこから来たのか分からない名も無き雑草は抜いても抜いても、数日後には何食わぬ顔でひょっこりと生えてくるのだから性質が悪い。
そんな雑草を畑から取り除いて空を仰ぐと、お日様が昼に近いことを知らせていた。
その証拠に、祐助の家からほど近い所に居を構える大吾が声をかけてくれた。
「おい祐助、そろそろ昼時だぞ。精を出すのはいいことだが、お前も昼にしたらどうだ?」
「そうそう。雑草なんざいくらでも生えてくんだから、適当に抜いておけばいいのさ」
大吾の隣りにいたアカオニ、大吾の妻であるすみ江もにかりと笑って夫の言葉に同意する。
「ああ、ちょうど休憩にしようと思っていたところだ。二人は一旦家に戻るのか?」
「ああ。なにしろ、妻が握り飯を作ってくれないものでね」
「ああん?家に帰ったら飯を作るのはあたしだろうが」
苦笑を浮かべた大吾に、すみ江が聞き捨てならんと目を細める。
もう見慣れた夫婦間のやりとりだ。
「はは、飯を作ってくれる妻がいるだけいいじゃないか。独り者は面倒だぞ?」
「そう思うなら、お前も早く良い相手を見つけろよ。この村じゃもう独身なんて数えるほどだしな」
そう言って、すみ江とともに大吾は去って行った。
妻と並んで歩くその後ろ姿は仲睦まじい夫婦そのもの。
それを見て、祐助はため息が出てしまう。
「俺もしたくないわけじゃないんだがな…」
そうぼやいてしまうのも無理はなかった。
昔から住んでいるこの村は、ここ数年でけっこうな様変わりをしている。
それというのも、何年か前に村長がこのままでは村が廃れてしまうと危惧し、移住してくれる人を募集したのが始まりだ。
この呼びかけに各地から有志が集まり、小さな農村は町とまではいかなくとも、けっこうな規模を持つまでには発展した。
人の住む場所が発展すると、必然的に訪れる人も多くなり、勢いのある村ということで更に人を呼び込む形となったのだ。
そしてその勢いは、人ではない者をも呼び寄せる形となった。
そう、俗に妖怪と呼ばれる者達である。
男ばかりの村があると聞いてきた、夫を探しにきた。
彼女達の第一声は大半がそれで、来る者拒まずな村はあっさりと彼女達も受け入れたのだが、程なくしてちょっとした問題が発生した。
人の女性が村から姿を消してしまったのだ。
その理由が、男に相手にされないから。
そう言って、村を出て行ってしまうのだ。
それを知った男達は、最初はなに馬鹿なこと言ってんだと笑い飛ばしていた。
だが、訪れる妖怪達と男が次々に結婚していき、その生活を見るにつれて、ああ仕方ねぇ…、と考え方を改めるようになった。
妖怪が総じて美人なのに対して、人の女性はそうもいかないからだ。
もちろん美人だっているが、そういう女は自分の美貌を理解しているから、自分好みの男でもなければ相手にしない。
それに対して妖怪は基本的に男を美醜で選んだりはしない。それだけでも男にとっては喜ばしいことなのに、妖怪は床上手なのだ。
美人な上に一途に愛してくれて、その上あっちのほうも上手となれば、村の男どもが人より妖怪を選ぶのも無理はないことだった。
男が飛ぶように妖怪と結婚するのを目の当たりにし、自分もいつかはあやかれるだろうと祐助は思っていたのだが、ここ最近になって妖怪の訪問者がぱたりとなくなってしまったのだ。
それを不思議に思い、たまたま訪れていた妖怪の旅人に尋ねてみると、この村はほとんどが所帯持ちになって結婚相手がいないから、とのことだった。
言い分は納得できるが、売れ残っている祐助としては苦笑ものである。
おかげで、村では数少ない一人身なのだ。
笑えない現状にため息をつくと、祐助は自分で用意した握り飯を頬張るのだった。
昼からの仕事を黙々とこなしていると、すっかり日が沈む時間となった。
ぼちぼちいい時間だと思い、祐助は仕事を切り上げて家に戻ることにする。
道中は同じように仕事を切り上げてきた男が何人も歩いていて、「帰ったら風呂だ」だの、「俺はまず飯だな」などと言っている。
そんな会話を聞いていると、本当に彼らが羨ましく思える。
なにしろ、家に帰れば夕飯の準備も風呂の準備もできているのだから。
「今日の飯はどうするかな…」
当然、一人身の祐助は家に帰ってから、全て自分でやらなければならない。
我が家に到着すると、今夜の夕飯は適当にすませようと思いながら扉を開ける。
そして、あり得ないものを見た。
「おかえりなさいませ」
三つ指をつき、深く頭を下げる白い女がいたのだ。
それはあまりにも非現実的な光景で、祐助は何度か瞬きしたあと、静かに扉を閉めて数歩後ろに下がる。
なんだ、今のは?家を間違えたのか?
それに、女の背後には白い蛇の体まで見えた気がする。
混乱する頭が覚えていた光景はそんなもの。
そして今見ている家はまぎれもなく自分の家である。
では、あれは誰だ?
結婚願望が見せた幻とでもいうのだろうか?
「疲れてるのか…?」
しかし、そんな考えはすぐに打ち消された。
「あの、どうかなさいましたか?」
扉が開き、困惑した表情で女が顔を見せた。
先程は頭を下げていたので分からなかったが、その顔は大人びた娘といった感じで、文句なしの美人だった。
だが、その下半身は白い蛇のもの。
間違いなく妖怪である。
「あ、いや…」
女が幻ではなかった上に妖怪だったことで二重に驚く祐助は、なぜ人の家にいるのかも尋ねられず、しどろもどろな返事しかできない。
「特に用事がないのでしたら、中にお入り下さい。もうすぐ夕飯ができますので」
「あ、ああ…」
つい祐助が頷いてしまうと、女は家の中に引っこんでしまう。
そして取り残される祐助。
しかし、ここはまぎれもなく自分の家だ。
あまりにも唐突で尋ねられなかったが、他人の家で勝手になにをしているのか問い詰めないといけない。
頭を整理し、まるで戦地にでも赴くような気持ちで家に入れば、台所から味噌汁の良い香りが漂ってきた。
その食欲を掻き立てる香りに、昼からなにも食べていなかった腹が情けない音を出す。
それが聞こえたのか、それとも偶然なのか、女が膳を持って現れた。
「お待たせしました。ちょうど焼きあがりましたので、冷めないうちにお召し上がりください」
手にしていた膳を置くと、祐助の返事を待たずに再び台所へと入っていき、同じように膳を持って戻ってくる。
その間、まるで口を挟む隙など与えてもらえず、祐助はとりあえずはと履物を脱いで居間に上がり、膳の前に腰を下ろす。
「おかわりも用意してありますので、必要でしたら言って下さい」
「あ、はい…」
まるでどちらが家主か分からないやりとりである。
おかわりもなにも、全て自分のものだろうと思いつつ、膳の上の夕飯に目を向けた祐助だが、そこにあるものを見て不満の感情は一瞬にして消えた。
膳の上にあったのは、白い炊きたてご飯に、大根と胡瓜の漬物、ねぎと豆腐の味噌汁、そして焼き鮭というものだった。
米と漬物は間違いなくうちにあったものだと断言できるが、それ以外のものは我が家にはなかったはずだ。
豆腐はここ最近買った覚えがないし、ねぎもきらしているはず。極めつけは鮭で、こんなものを一体どこで手に入れてきたんだと聞きたいくらいだ。
そんなことを考え、祐助がほとんど睨みつけるように夕飯を凝視していると、ふと視線を感じた。
他に誰がいるわけでもないので、そちらへ目を向ければ、どこか不安そうな表情で女がこちらを見ていた。
「…なんだ?」
言葉もなく、ただ見つめてくるだけの女に堪え切れなくなった祐助が尋ねると、女はしょげたように顔をうつむけた。
「あ、いえ、手をつけて下さらないので、お腹が空いてないのかと…」
どこか残念そうな口調でそう言われて、祐助の中にたちまち罪悪感がこみ上げてくる。
なぜだ、なぜ自分の家でこんな居心地の悪い思いをしなければならないのだ。
頭がそう思うも、自分が夕飯に手をつけないことで目の前の美人にあんな顔をさせてしまっている現状を考えると、悪いのは一方的に祐助な気がしてならない。
仕方ないので、どこか釈然としないままに味噌汁を啜ると、濃すぎず、薄すぎずの程よい味付けで、思わず「うまい」と漏らしていた。
そんな祐助の呟きが聞こえたのか、女はハッとしたように顔を上げる。
「本当ですか…?」
「あ、ああ。うまい。本当だ」
女の迫るような言い方に少したじろぎつつも、正直に答える。
すると、女の表情がみるみるうちに喜びのものへと変化した。
「よかった…、口に合わなかったらどうしようかと思いました」
まるで新婚の妻みたいな口ぶりに、祐助はどきりとしてしまう。
しかし、相手は美人とはいえ、他人の家に勝手に上がり込んでいるような者なのだ。
そんな相手に心の動揺を見せてつけ込まれてはならないと、軽く咳払いし、誤魔化す。
「その、文句なしにうまい味付けだ。だから、あなたも食べてくれるか。そうじろじろと見られては食べづらい」
「はい」
どこか満足そうな顔で女はうなずき、ようやく自分の夕飯を食べ始める。
それからのことは、あまり覚えていない。
なにしろ、美人と向かい合ってともに食事をするなど祐助には初めての経験なのだ。
緊張のあまり喉を通らないと言うが、祐助の場合は緊張のあまり頭に残らないといった感じだった。
だから、気がつけば出された夕飯を綺麗に平らげ、「ごちそうさまでした」と言う自分がいた。
「お粗末さまでした。お風呂の方も準備はできています。片付けは私がしておきますので、祐助様は先にお風呂へどうぞ」
「ちょっと待ってくれ。あなたは一体誰なんだ?」
慣れた手つきで膳を片付けようとする女へと、祐助は今更すぎる質問を投げかける。
「え…、あ…」
一瞬、呆けたような顔をする女。
だがすぐに気づいたのか、その頬が僅かに朱に染まる。
「私ったら、嬉しくてつい…。思えば、今も、そしてあの時も名乗ってはいませんでしたね」
女はそう言いつつ祐助の正面に正座し、床に手をついて頭を下げた。
「白那、と申します。今後、よろしくお願いします」
「あ、はい…」
丁寧な挨拶に返事を返しつつも、祐助はふと疑問に思う。
今後とはどういう意味なのか、そしてあの時とは?
だが、首をかしげる祐助をよそに、白那は器用に二人分の膳を持って台所に行ってしまう。
おかげで、なぜうちにいるのかという大事な質問を言いそびれてしまった。
だからこそ後を追ったのだが、覗いた台所で白い蛇体の尾を揺らし、どう見ても上機嫌で洗い物をする白那は質問できる雰囲気ではなかった。
「とりあえず、風呂に入るか…」
どうにも調子を狂わされている気がする。
結局、肝心の質問はできないまま脱衣所に向かい、農作業で土にまみれた衣服を脱ぐ。
少し意識すれば汗の臭いがはっきりとわかる衣服を脱ぎ去り、ちょっとした解放感を感じながら風呂場に行こうとして、脱衣所の棚にきちんと寝巻が用意されていることに気付く。
「なんだか、結婚した気分だな…」
もし、自分が誰かと結婚したら、こんな風になにからなにまで妻がやってくれるのだろうか?
至れり尽くせりな現状がそんな考えをよぎらせるが、それは独り者の馬鹿な妄想だと気付く。
自分に呆れる笑いを浮かべながら、手拭いを片手に風呂場へと行き、湯舟の蓋を開ける。
するとそこには、見慣れない葉がいくつも浮かんでいて、森を思わせるような清々しい匂いが立ち上ってきた。
「これも、やってくれたのか…?」
ここまでされると申し訳ない気になってくる。
このお湯は大事に使おうと思いながらそっと手を入れると、白那が用意してくれた湯舟はいい湯加減だった。
そこから手桶で一すくいして体にかけ、手で雑把に洗うと、再び手桶で湯舟から湯をすくって体にかける。
体の汗を簡単に流すと、湯舟に体を沈めた。
首から下が余すところなく良い香りの湯に浸かり、疲れが体から溶け出していくような心地を味わう。
一日の最後に訪れる、ちょっとした至福の時。
だが、そんな一時は隣りの脱衣所から発せられた白那の声で儚くも消えてしまった。
「祐助様、湯加減はどうですか?」
「…ああ、問題ない」
風呂くらいゆっくり入らせてもらないかと、軽くため息が出てしまう。
だが、「それはよかった」という声とともに扉が開き、白那が風呂場に入ってきたことで、ため息どころか呼吸まで止まりそうになった。
なにしろ白那は来ていた着物を脱ぎ去り、その白い素肌を存分に晒しているのだ。
手拭いによって大事なところは隠されてこそいるものの、その気になればすぐにその裸体を見せられるという状態である。
薄布一枚を持っただけの美女を前にして、祐助は酸欠にでもなったかのように口をぱくぱくさせる。
「あ、あの、白那さん、一体なにしに…」
「お背中、流しに参りました。そういうわけですから、こちらにどうぞ」
そう言いつつ、手拭い一枚を胸に当てたまま椅子へと手招きする様子は、男を誘惑する魅力に満ち溢れていた。
そんな様子を間近で見せつけられ、祐助の股間が瞬時に反応していく。
「あ、いや、俺はもう流し終えて上がるだけなので、白那さんはごゆっくり…!」
「そんな…、祐助様は早風呂なのですね…。急いで洗い物を済ませてきたのですが…」
食事の時と同様に白那の表情が曇るが、今回ばかりは罪悪感よりも一秒でも早くこの場から逃げ出したいという思いが勝り、祐助は手拭いで股間を隠しつつ、急いで風呂場を後にした。
脱衣所に逃げ込むと、ものすごい早さで体を拭きあげ、寝巻を着こんで台所に向かう。
白那によって火照らされた心と体を静めるために桶から両手で水をすくい、一息に飲み干すと幾分かの余裕を取り戻すことができた。
「はあ…。今日はもう寝よう…」
風呂に入って疲れを取るつもりが、逆に疲れてしまった。
白那がなぜうちにいるのかは、明日訊こう。
そもそも明日までいるかも分からないが、いなくなってくれるなら、それはそれで構わない。
どうせ大金を置いてあるわけでもないし、盗られたところで大して困るものなどないのだから、この際、彼女に関しては明日考えよう。
思考を放棄して祐助は寝室へと向かい、襖を開く。
そこには既に布団が敷かれていた。
だが、不思議なことに枕が二つ置かれている。
布団は一人用なのにもかかわらずだ。
そして布団の横では、来るのを待っていたとでも言うように正座した白那がいた。
「…あの、白那さん?風呂はどうしたんですか?」
「急いで上がってきました。こればかりは、遅れるわけにはいきませんから」
どうやらあの後、白那は急いで風呂を上がったらしい。
しかし、一体なぜ?
「あの、それはどうして?そもそも、なぜこの部屋に?」
「それは…、今日、最後の恩返しをするためです…」
「恩返しって一体なにを…、うおっ!?」
僅かに頬を染めた白那の言葉が何を意味するのか問おうとしたら、いきなり蛇体に巻きつかれた。
「はぁ…この時をどれほど待ちわびたことか…!」
どこか酔ったような表情で白那は祐助を引き寄せ、巻きつく蛇体の位置を器用にずらして寝巻に手をかける。
腰布が外され、寝巻をはだけさせられそうになって、祐助はようやく白那がなにをしようとしているか理解した。
「まさか、恩返しって…!」
「はい。一緒に寝ていただこうと」
頬を染めつつ言われた一緒に寝るという言葉が、文字通りなはずがない。
「待ってくれ!いきなりそんなことをするのは駄目だ…!」
「なぜ拒むのですか?まさか…」
一瞬だけ悲しそうな表情を見せた白那だったが、すぐにそれはなんとも形容しがたい表情へと塗りつぶされた。
それに合わせて巻きついていた蛇体がより強く締め上げ、苦しみこそ感じないものの、完全に拘束されてしまう。
「まさか、他に想い人が?」
目を細め、別人かと思うほどの底冷えするような声が問いかけてくる。
そこからは明白な嫉妬が感じられた。
「違う、そんな人はいない!俺が言いたいのは、初めて会ったばかりなのに、こんなことをするのはおかしいということだ…!」
「初めて…?祐助様は、私のことを覚えておいでではないのですか?では、あの日の約束も…?」
さっきまでの嫉妬を浮かべた表情は溶け落ち、呆然とした声で白那が呟く。
「覚えてる?俺達は初めて会ったわけじゃないのか?」
急に変化した白那の様子に戸惑いながらも問いかけると、白那は小さく頷いた。
「私達が初めて会ったのは、十六年前です。この村のすぐ近くの森で、祐助様は迷子になっていた私を助けてくれたのです。そしてその時、祐助様は約束してくれました。大人になったら、私を妻に迎えてくれると」
ぽつりと語られた真実。
それを聞いた祐助は、十六年も前では覚えているはずもないと匙を投げようとする。
だが、目尻に涙を浮かべ、悲しそうにこちらを見る白那を目の当たりにし、祐助の頭に唐突にある光景が浮かんだ。
それは、森の中で泣きじゃくる少女だった。
その少女と白那が重なり、背中に鳥肌が立つのを感じた。
「まさか…あの時の?俺が滝の近くに連れて行った…」
口から出た呟きは白那の耳にも届いたようだった。
その目が見開かれ、涙が零れ落ちた。
「思い出してくれたのですか…?」
「ああ…。だが、思い出せたのは出会った時のことだけだ。その約束までは…」
自分の物覚えの悪さに心底うんざりする。
これ以上ないくらいの罪悪感からまともに白那を見ていられず、祐助は視線を逸らしてしまう。
しかし、顔へと伸びてきた白那の両手によって、無理矢理向きあうようにされてしまった。
「いいのです。祐助様が私のことを思い出してくれた。私はそれだけで満足です。ですから、あの時のお礼をきちんとさせて下さい…」
巻きついていた蛇体が解かれて祐助の体を解放すると、白那は手を伸ばし、寝巻を脱がせてしまう。
「なっ、白那さん、それは…!」
抵抗する暇もなく裸にされた祐助の足に蛇体が巻きつき、そのまま布団の上に倒されてしまった。
尻もちをつく形で倒された祐助が白那へ視線をやると、彼女は着物の腰帯びを解き、するすると脱いでいくところだった。
そして露わになった白那の裸姿に、抵抗しようとする考えは瞬時に消し飛んだ。
まず目を奪われたのは、豊かに実った二つの胸。
双乳の中心には桜色の突起があり、むしゃぶりつきたくなる衝動に駆られる。
視線を胸に奪われつつも下へと下げていけば、細い腰があり、そして人の上半身と蛇の下半身の境目にある秘部へと辿り着いた。
そこは既に濡れに濡れていて、まるで涎を垂らしているようにも見える。
だが、それを汚いなどとは思えず、むしろそれくらい自分を求めてくれているのだと誇らしくさえ思えた。
当然、祐助の方も肉棒を膨張させ、これでもかとその存在を誇示している。
「ふふ、祐助様も私を求めてくれているのですね。嬉しい…。でも、今恩返しするのは私ですから、動けないようにしてしまいますね」
上半身を祐助へと倒れこませながら、蛇の下半身が祐助の体に巻きついていく。だが、おかしなことに蛇体は胸から下に巻きついただけに終わった。
それが不思議で、変に冷めてしまった頭が尋ねていた。
「あの、白那さん。腕は自由なままなんだが…」
「えっと、その、…触って…欲しくて…」
白那の頬が僅かに赤く染まり、視線だけが逃げる。
だが、すぐにちらりと期待を込めた眼差しでこちらを見てきた。
その庇護欲をそそるような物言いに、肉棒がびくりと反応する。
だが、触ってほしい?
そんなことを言われてもどこを触ればいいのか分からず、とりあえず自分の体へと巻きついている蛇体をそっと撫でる。
鱗があるのにその手触りはつやつやとしていて、少し押してみれば、形を変えるくらいに柔らかい。
しかし、そんな祐助に対して白那は不満そうな目を向けてくる。
要求通りに触っているのに、なぜ?
首をかしげそうになるが、やがて自分の間違い、そして、白那が本当に触ってほしかった場所に気づいた。
なんて間違いをしたんだと赤面していると、白那も祐助が気付いたのを察してくれたらしく、ぐっと体を寄せて胸を突き出してきた。
すぐ傍に差し出された乳房へおずおずと手を伸ばし、そっと揉んでみる。
柔らかさと弾力さを併せ持ったそれは病みつきになる手触りで、つい何度も揉んでしまう。
「んっ…。祐助様、左だけでなく、右も…」
悩ましい声で頼まれ、言われるがままに右の乳房を左手で掴み、同じように揉んでいく。
「は、ん、あぁ、祐助様は揉むのが上手ですね…」
左右の胸を揉みしだかれ、白那の口から更に悩ましげな声が漏れた。
それが祐助を興奮させ、ほとんど無心で手を動かし続ける。
しかし、ふとした拍子に白那が体を起こし、両手から柔肌の感触が消えてしまった。
「私の胸は気持ちよかったですか?でも、そろそろ別のところも気持ちよくしてあげますね…」
言葉とともに、亀頭が熱いものに触れた。
それが秘部にあてがわれたのだと分かり、歓喜するように肉棒がぴくぴくと動く。
「ふふ、待ってて下さいね。今、挿入れてあげますから…」
そう言いつつ祐助を見つめ、そしてゆっくりと腰を下ろした。
ずぶずぶと肉棒が白那の中へと呑み込まれていく。
「う…」
白那が小さく漏らして顔を歪めたのは、挿入の過程でほんの僅かな引っかかりを感じた時だった。
「白那さん、血が…!」
結合部より漏れ出た愛液に赤が混じっていることに気付き、興奮が一気に冷める。
だが、白那は不安そうに見つめる祐助に微笑んだ。
「初めてだったのですから、血が出るのは当然ですよ。それに、痛みは一瞬だったし、初めてを好きな人へと捧げることができて私は嬉しいです。だから、そんな顔をしないで下さい」
「いや、だが…うぁっ!?」
なおも食い下がろうとしたところで、いきなり肉棒が締め上げられた。
「それより、私のここはどうですか?気持ちいいですか?」
初めてだというのに、白那は早くも膣の使い方を学んだのか、うねるような動きで刺激を与えてくる。
その度に肉壁と擦れあい、絶え間ない快感が祐助を襲った。
それは性行為が初めての祐助には抗いがたいもので、膣内に納まっている肉棒が降参を示すようにびくびくと痙攣し始める。
「んっ、祐助様、私の中で暴れてますね…」
「白那さん、で、出る…!」
「どうぞ出して下さい…。私のお腹に祐助様の精を…」
完全に欲情した表情の白那から切なげな声が漏れ、同時に蜜壷の柔壁が肉棒をぎゅうぎゅうと締め上げる。
その動作によって、体中に雷にでも打たれたかのような快感が走り、堪えていた射精感が限界を迎えた。
「っ!!」
溜めすぎたのか、肉棒が一際大きく震え、爆発するような勢いで白那の膣へと精が解き放たれていく。
「うぁ、あ、熱いものが…!祐助様の精が、お腹に…!」
精が注ぎ込まれる度に白那の体がびくりと震え、呼応するように膣内が収縮して更に精を吐き出させようとする。
促されるままにどくどくと射精は続き、白那は蕩けた顔でそれを受け入れる。
永遠に続くのではないかと錯覚しそうになる射精だったが、肉棒がぴくぴくするだけで、その先からなにも出なくなったことで呆気なく終わりを迎えた。
「お腹の中、祐助様の精で満たされてます…。満足していただけたのですね…」
嬉しそうに白那が微笑んでくれるが、射精による倦怠感と一日の疲れが一気に押し寄せてきて、強烈な睡魔が視界をぼやけさせる。
「お休みになるのですか?」
かすかにそんな声が聞こえた気がするが、答える気力もなく、白那へと体を預ける。
鱗があるのにつややかで、温もりを感じられるのにどこかひんやりとした彼女の蛇体が火照った体に心地良く、このまま眠ってしまいたくなる。
肉棒が彼女の中に納まったままだが、蛇体に巻きつかれ、白那が上にいてはどうしようもなく、また、彼女も離れる気はなさそうだ。
だったらこのまま眠ってしまっていいか…、体も肉棒も、全てを白那に抱かれたままで…。
「おやすみなさい、祐助様…」
沈みゆく意識の中で、白那の優しい声を聞いた気がした。
小鳥のさえずりが聞こえ、祐助は目が覚めた。
体感的な時間は間違いなく寝坊だ。
起ききっていない頭がそう認識し、朝からため息をこぼす。
「しかし、なんで寝坊なんか…」
そう呟いた時、寝坊の原因が思い浮かんだ。
それに合わせて昨夜の恩返しで味わった快感まで思い出してしまい、祐助は再びため息をつく。
今更だが、初めての相手が自分でよかったのかと思う。
いくら恩返しとはいえ、たかが家に連れて行っただけでやりすぎではないだろうか。
そんなことを思いながら隣りを見たのだが、そこに白那はいなかった。
それだけでなく、確かに白那に抱かれたまま眠ったはずなのに、なぜか布団で寝ていた。
これで自分が裸ではなかったら、昨日のことは夢だったと思ったかもしれない。
「とりあえず服は着るか…」
布団の脇に丁寧にたたんであった寝巻を着ると、台所へ向かう。
朝飯と、昼の握り飯を用意する必要があるからだ。
だが、向かった台所には先客がいた。
「あ、祐助様、おはようございます。待ってて下さいね、今、朝ご飯を用意してますから」
祐助が起きたからか、白那の尻尾が嬉しそうに揺れる。
「え、あ、ああ…」
台所に誰かがいて料理を作っているという光景に違和感を感じ、つい眺めてしまう。。
白く長い髪が背中に垂らされた後ろ姿は女らしさに溢れている。
女らしさといえば、昨日はあの着物の下の体と…。
昨夜の交わりを思い出し、股間が急速に膨らんでいく。
「っ」
朝から欲情して肉棒を大きくしているところを白那に見られるわけにはいかず、祐助は慌てて居間へ行き、すとんと正座する。
間が良いのか悪いのか、そんなところへ白那が朝ご飯を運んできた。
「正座などしてどうしたのですか、祐助様?」
「いや、作ってもらっているのに、胡坐をかいて待っているのもあれなので…」
とっさにしてはうまく言えたと思う。
その甲斐あってか、白那は穏やかに微笑んだ。
「そんなに気を遣っていただかなくても結構ですよ」
そう言われても、胡坐を崩すわけにはいかない。
なにしろ、未だに大きくなったままなのだから。
祐助が落ち着かずにいる間にも、白那は自分の分を持ってきて、食事が始まってしまう。
だが、祐助は萎えそうにない愚息がばれないかと気が気ではなく、ほとんど無意識のうちに食事を終えてしまった。
「お粗末さまでした」
食事が終わり、昨夜と同じように祐助の膳を下げようとする白那。
それを見計らって、祐助は口火を切った。
「あの、白那さん。ちょっといいですか。話があります」
「あ、はい」
気配から大事な話だと悟ったのか、白那が祐助の正面に正座する。
「俺はあなたと幼い時に結婚すると約束したんですよね?」
「はい…」
伏し目がちになり、こくりと頷く白那。
そんな彼女の様子を見て、祐助は心が痛む。
それと同時に、たまらない愛しさも感じる。
それが、彼女が婚約者だからか、それとも肌を重ねたからかは分からないが、たった一日で完全に惚れてしまったことだけは確かだ。
「昨夜も言ったように、俺はあなたとの約束を覚えていない。俺は、婚約の約束を忘れるような最低の男だ。それでも、その約束をなかったことにはしたくない。だから、白那さんが俺を許してくれるなら、結婚して妻になってほしい」
床に手をついて頭を下げつつも、我ながら虫のいいことを言っていると思う。
白那だって同じように思うはずだ。
だが、返ってきた返事は意外なものだった。
「はい」
短く、そして嬉しそうな声。
思わず顔を上げれば、見間違いでもなんでもなく、白那は嬉しそうに微笑んでいた。
「いいのか…?」
「あの日からずっと、祐助様の妻になることを夢見てきました。そして今、祐助様が約束通り私を妻にと望んでくれた。お受けするに決まっています」
「じゃあ…!」
色よい返事に、つい顔がにやけてしまう。
「喜ぶのはまだ早いですよ、祐助様。こちらへ来て下さい」
そう言われてついていった先は寝室だった。
「白那さん?ここがどうかしたんですか?」
「ええ。祐助様は妻にしてくれると言いましたが、やはりきちんと夫婦の契りを交わすべきだと思いますから」
「え…」
予想外の言葉を言われ、戸惑っているうちに白那の手が伸びてきて、服を脱がされてしまう。
「ふふっ、さすが祐助様です。体の方は準備ができているようですね…」
裸にされ、あらわになった肉棒は食事の時よりも大きくなっているようだった。
それを見て、白那は嬉しそうに笑うが、祐助は恥ずかしさでつい顔を背けてしまう。
「では失礼しますね、祐助様」
するすると白い蛇体が祐助の上半身に巻きついてくる。
このまま押し倒されるのだと思い、祐助はなすがままになっていたのだが、今回は白那が先に布団に体を横たえた。
考えるまでもなく次は祐助の番であり、白那の上に覆いかぶさるよう、蛇体によって引き倒された。
祐助を倒すと蛇体の巻きつきは解かれ、服の上からでも分かる白那の胸の感触と、どこか甘い花のような香りが本能を刺激し、理性をたやすく打ち崩していく。
今からする行為が待ちきれないのか、頬を赤く染めて潤んだ瞳で見つめてくる白那の表情が後押しとなって、頭の中が真っ白になった祐助はその着物に手をかけて脱がしにかかる。
美しい女性に覆いかぶさり、その衣服を剥いでいくという行為に変な興奮を覚えるが、着物を脱がせる経験などない祐助はどうもうまくいかない。
だが、そんな祐助のぎこちない手を助けるように白那がうまく体を動かしてくれたおかげで、大した時間をかけずに脱がすことに成功した。
「っ!!」
昨夜も見たはずの裸体だが、こうして改めて見せつけられると、その美しさに声が出ない。
大きな胸は仰向けになったことで潰れてしまっているが、桜色の乳首とともにその存在を主張しているし、なにより白い肌が朝日と同じくらい目に眩しい。
「さあ、どうぞ…。私を祐助様のものにして下さい…」
降参するように両手を肩の横に置き、懇願するような口ぶりで白那はそう言った。
言い方も、今の姿も、そのどれもが興奮を昂ぶらせ、祐助は鼻息を荒くしながら腰を動かして膨張した肉棒を秘部へとあてがう。
その先端が蜜壷の入り口を捉え、後は腰を進めるだけだ。
だが次の瞬間、腰を動かしていないのにもかかわらず、肉棒が温かい膣内へと呑み込まれていた。
「なっ!?」
待ちきれなくなったのか、祐助が挿入するより先に白那が腰を浮かせて肉棒を膣内へと納めたのだ。
白那はそれと同時に祐助の背へ手を回してしがみつくと、自分の体も巻き込んで二人の体を蛇体で巻きあげていく。
結構な力で締め付けているのか、上半身は隙間がないくらい密着し、祐助の胸板に押しつけられた双乳が形を変える。
そんな状態だというのに、絶妙な力加減をしているのか、苦しさは全くない。
「ふふっ、これで離れられませんね…」
白那は満足そうに笑うと、布団へと倒れ込む。
「その、白那さん。重くは…」
巻きついた蛇体を下敷きにしている今の状況は辛いはずだ。
だが、そんな考えは祐助だけだったらしい。
「重さなど感じませんよ。感じるのは、祐助様と繋がっているということだけ。さあ、祐助様、好きなように動いて下さい。腰の辺りは締め付けを緩くしてありますので…」
言われてみれば、確かに腰回りだけは若干の隙間があるようで、僅かながら後ろに動くことができた。
お言葉に甘えて腰を引き、蜜壷に呑み込まれていた肉棒もその分だけ解放される。だが、その半分は咥えこまれたままだ。
祐助としても抜くつもりはないので、腰を落とし、再び白那の温かな膣内へと肉棒を挿入していく。
「ん…、ふ、あぁっ、固くて熱いのが…!」
肉棒が膣内の柔肉を押し広げていく感覚に感じているらしく、白那から歓喜の声が漏れ、彼女が自分で感じていることに、祐助は男としての自尊心が満たされる。
下降気味だった興奮も再燃し、肉棒を膣の奥へと突き入れると、亀頭がなにかにぶつかった。
昨夜は全く触ることのなかったそれは、白那にとってかなり敏感な部分らしく、一際大きな嬌声が漏れる。
「ああっ…!子宮口に、ぶつかって…!」
子宮口?ということは、この奥は…。
動きを止めた祐助の考えがわかったのか、白那が頬を赤らめながら微笑む。
「この先が子袋…。祐助様の子を宿すところです…」
自分の子と聞いて、現金にも肉棒がびくりと反応する。
「ふふっ、遠慮はいりませんよ。私の子袋にたっぷりと子種を注いで下さい…」
その言葉で祐助のたがが外れ、本能が勝ちどきを上げた。
再び腰を引き、快楽の蜜壷へと夢中で肉棒を突き入れる。
「んうぅ!あ、はっ、あうう…!」
祐助のぎこちない動きでも白那はきちんと感じているらしく、肉棒を入れる度に喘ぎ声がこぼれる。
それが余計に男の本能を刺激し、結合部から卑猥な音がするくらい、何度も腰を振ってしまう。
お互いに荒い呼吸をしながら闇雲に腰を振り続けていると、ついに限界が近づいたらしく、急速に射精感がこみ上げてきた。
白那も絶頂が近いのか、膣内は熱さが上昇し、蠕動を繰り返している。
「白那さん…!もう…!」
「出して下さい…!妻の証を私に…!」
高まる射精感を堪えて膣へと突き入れると、蛇体が緩めてあった腰回りを締め上げ、結合部をこれ以上ないくらいに密着させる。
それによって最奥へと到達した亀頭を子宮口が咥え、そこで射精するようにと膣内が一気に収縮し、肉棒を強く締め付けた。
「ん、くうっ!」
頭の中が真っ白になり、限界を迎えた体が肉棒を脈打たせつつ精液を撃ち出していく。
「はぁっ、子袋に熱い精が、祐助様の子種がたくさん…!」
白那は目を瞑り、射精に感じ入っているようだが、膣内は精液を一滴残らず搾り取ろうと締め付けてくる。
それによってもたらされる快感に従い、肉棒はおびただしい量の精液を膣内へと注ぎ込んでいく。
やがて祐助の腰が痙攣し、精液が出なくなると、白那は脱力したのか、膣と蛇体、両方の締め付けが緩んだ。
祐助も胸を大きく上下させながら、強張った体の力を抜く。
そして満足そうな白那を見つめ、そっと囁いた。
「白那さん、愛しています」
「白那、とお呼び下さい。今日から夫婦なのですから…」
白い頬をうっすらと朱に染めつつも、白那は幸せそうだ。
そんな彼女を愛しく感じながら、祐助はふと思う。
あれだけ妖怪が村に夫を探しに来たというのに、自分が結婚できなかったのは、もしかしたら、白那との約束があったからではないかと。
都合良く考えすぎかもしれないが、なんとなくそう思えてしまうのだ。
「夫婦…。そうだな、これからよろしく、白那」
「はい、祐助様…」
幼い頃に交わした約束。
それは十六年の時を経て果たされた。
長い月日をずっと想い続けてくれた白那のためにも、彼女を幸せにしよう。
妻の温もりを全身で感じつつ、祐助はそう心に誓ったのだった。
今年で六才になる祐助は、一人森の中で遊んでいた。
森があるくらいだから、彼の住む村は田舎もいいとこで、当然子供が楽しむような娯楽など何もない。
だから、野山を駆け巡る腕白坊主になったのは当然だったのかもしれない。
その日も祐助は森の中を慣れた様子でさまよっていた。
同じ年頃の子と一緒に遊べばいいと思われそうだが、子供には子供なりの事情があるのだ。
現在、村での流行りの遊びは、森や山に行って珍しいものを見つけて持ち帰ってくることだった。
だから祐助も何かすごいものを見つけて友達を驚かせようと、一人で森の中を堂々と進んでいたのだ。
だが、子供が一人で広大な森の中から珍しいものなどそうそう見つけられるはずもなく、その日も祐助はなにも発見できずにいた。
そうなると、意地でも見つけようとするのが子供というものだが、祐助も行ったことのない森の奥まで探そうとはせず、来た道を引き返す。
静かな森に響くのは祐助が落ち葉や枯れた枝を踏み分ける音だけ。
大人によっては不気味に感じることもありそうだが、無邪気な子供には静けさなど恐怖に感じず、当たり前のように進んでいく。
あと少しで森を抜けるといった所まで戻ってきた時だった。
ふと、女の子の声が聞こえた気がしたのだ。
「?」
不思議に思った祐助は辺りを見回すが、誰も見当たらない。
首をかしげて歩き出した祐助だったが、今度ははっきりと女の子の、それも泣いているような声が聞こえ、足を止める。
村の女の子かと思い、祐助は声のした方角へと走り出した。
祐助の向かった方角は間違ってはいなかったようで、女の子のすすり泣く声がはっきりと聞こえてくる。
そして一際大きい藪を突き抜けた時、祐助はついに女の子を発見した。
歳は祐助と同じくらいだろう。いきなり目の前に音を立てて祐助が現れたからか、女の子は怯えたように体を竦める。
そんな女の子は、下半身が白い蛇の体だった。
「あれー?蛇の妖怪さんだー」
目の前にいるのは明らかに人ではないというのに、祐助は首をかしげただけで怯えるようなことはせず、間延びした声を出す。
それどころか、女の子に微笑んでいた。
「なんで妖怪さんは泣いてるの?どこか痛いの?」
祐助が現れて一旦は泣くのを止めていた少女だが、その言葉に再び泣きだした。
「ふ、えぐっ…。お花を摘んでたら、み、道に、迷っちゃって、おうちが分からないの…」
そう言う少女の手には、摘んでいたのだろう白い花がいくつか握られていた。
「迷子なの?おうちはどこにあるの?」
「お、おっぎな、滝の、あ、あるとごろ…」
右手で目元をごしごしと擦り、鼻声でなんとかそう言った少女は再びぐずり出す。
「滝…?あ、ぼく知ってるよ。連れてってあげる」
少し前に同じ理由で森に入った時、たまたま発見したのを覚えていた祐助は少女の手をとって歩き出す。
一度行ったことがあるからか、祐助は似たような景色の森を足を止めることなく進み、やがて目的の場所へと到達した。
水が小高い崖から降り注ぎ、その落下地点では飛沫が煙の如く立ち込めている。
うるさいくらいの水音が絶えないその場所は、少女が望んだ光景だったのだろう。
その顔に、ホッとしたような笑みが戻った。
「ここでしょ?」
笑顔で問いかける祐助に、少女はこくこくと頷く。
「おうちに帰れてよかったね!」
ニコニコと笑顔の祐助に、少女はおずおずとお礼を述べた。
「あの、ありがとう…。あなたのお名前は?」
「ぼく?ぼくは祐助だよ」
「祐助…」
祐助の名前を聞き出した少女は、何度もその名を繰り返し呟く。
そしてその頬を僅かに赤くしながら、少女は祐助にこう言った。
「祐助。私、大人になったら祐助にお礼がしたいの。だから、そのときはお嫁さんにしてくれる?」
「ぼくのお嫁さんになりたいの?いいよー」
「ほんと?ほんとに?」
「うん」
無邪気に笑いながら、こくりと頷く祐助。
それに対して少女はこれ以上ないくらい嬉しそうに微笑み、その蛇の尻尾が揺れる。
幼い二人による微笑ましい口約束。
だが、この約束を少女が本気にしていたことを、その時の祐助には知る由もなかった。
そして十六年後。
「ふう、こんなとこかな」
畑の雑草を根元から引き抜いていた祐助はもう一度畑を見回し、余計な雑草が生えていないことを確認すると、首にかけていた手拭いで額の汗をふいた。
どこから来たのか分からない名も無き雑草は抜いても抜いても、数日後には何食わぬ顔でひょっこりと生えてくるのだから性質が悪い。
そんな雑草を畑から取り除いて空を仰ぐと、お日様が昼に近いことを知らせていた。
その証拠に、祐助の家からほど近い所に居を構える大吾が声をかけてくれた。
「おい祐助、そろそろ昼時だぞ。精を出すのはいいことだが、お前も昼にしたらどうだ?」
「そうそう。雑草なんざいくらでも生えてくんだから、適当に抜いておけばいいのさ」
大吾の隣りにいたアカオニ、大吾の妻であるすみ江もにかりと笑って夫の言葉に同意する。
「ああ、ちょうど休憩にしようと思っていたところだ。二人は一旦家に戻るのか?」
「ああ。なにしろ、妻が握り飯を作ってくれないものでね」
「ああん?家に帰ったら飯を作るのはあたしだろうが」
苦笑を浮かべた大吾に、すみ江が聞き捨てならんと目を細める。
もう見慣れた夫婦間のやりとりだ。
「はは、飯を作ってくれる妻がいるだけいいじゃないか。独り者は面倒だぞ?」
「そう思うなら、お前も早く良い相手を見つけろよ。この村じゃもう独身なんて数えるほどだしな」
そう言って、すみ江とともに大吾は去って行った。
妻と並んで歩くその後ろ姿は仲睦まじい夫婦そのもの。
それを見て、祐助はため息が出てしまう。
「俺もしたくないわけじゃないんだがな…」
そうぼやいてしまうのも無理はなかった。
昔から住んでいるこの村は、ここ数年でけっこうな様変わりをしている。
それというのも、何年か前に村長がこのままでは村が廃れてしまうと危惧し、移住してくれる人を募集したのが始まりだ。
この呼びかけに各地から有志が集まり、小さな農村は町とまではいかなくとも、けっこうな規模を持つまでには発展した。
人の住む場所が発展すると、必然的に訪れる人も多くなり、勢いのある村ということで更に人を呼び込む形となったのだ。
そしてその勢いは、人ではない者をも呼び寄せる形となった。
そう、俗に妖怪と呼ばれる者達である。
男ばかりの村があると聞いてきた、夫を探しにきた。
彼女達の第一声は大半がそれで、来る者拒まずな村はあっさりと彼女達も受け入れたのだが、程なくしてちょっとした問題が発生した。
人の女性が村から姿を消してしまったのだ。
その理由が、男に相手にされないから。
そう言って、村を出て行ってしまうのだ。
それを知った男達は、最初はなに馬鹿なこと言ってんだと笑い飛ばしていた。
だが、訪れる妖怪達と男が次々に結婚していき、その生活を見るにつれて、ああ仕方ねぇ…、と考え方を改めるようになった。
妖怪が総じて美人なのに対して、人の女性はそうもいかないからだ。
もちろん美人だっているが、そういう女は自分の美貌を理解しているから、自分好みの男でもなければ相手にしない。
それに対して妖怪は基本的に男を美醜で選んだりはしない。それだけでも男にとっては喜ばしいことなのに、妖怪は床上手なのだ。
美人な上に一途に愛してくれて、その上あっちのほうも上手となれば、村の男どもが人より妖怪を選ぶのも無理はないことだった。
男が飛ぶように妖怪と結婚するのを目の当たりにし、自分もいつかはあやかれるだろうと祐助は思っていたのだが、ここ最近になって妖怪の訪問者がぱたりとなくなってしまったのだ。
それを不思議に思い、たまたま訪れていた妖怪の旅人に尋ねてみると、この村はほとんどが所帯持ちになって結婚相手がいないから、とのことだった。
言い分は納得できるが、売れ残っている祐助としては苦笑ものである。
おかげで、村では数少ない一人身なのだ。
笑えない現状にため息をつくと、祐助は自分で用意した握り飯を頬張るのだった。
昼からの仕事を黙々とこなしていると、すっかり日が沈む時間となった。
ぼちぼちいい時間だと思い、祐助は仕事を切り上げて家に戻ることにする。
道中は同じように仕事を切り上げてきた男が何人も歩いていて、「帰ったら風呂だ」だの、「俺はまず飯だな」などと言っている。
そんな会話を聞いていると、本当に彼らが羨ましく思える。
なにしろ、家に帰れば夕飯の準備も風呂の準備もできているのだから。
「今日の飯はどうするかな…」
当然、一人身の祐助は家に帰ってから、全て自分でやらなければならない。
我が家に到着すると、今夜の夕飯は適当にすませようと思いながら扉を開ける。
そして、あり得ないものを見た。
「おかえりなさいませ」
三つ指をつき、深く頭を下げる白い女がいたのだ。
それはあまりにも非現実的な光景で、祐助は何度か瞬きしたあと、静かに扉を閉めて数歩後ろに下がる。
なんだ、今のは?家を間違えたのか?
それに、女の背後には白い蛇の体まで見えた気がする。
混乱する頭が覚えていた光景はそんなもの。
そして今見ている家はまぎれもなく自分の家である。
では、あれは誰だ?
結婚願望が見せた幻とでもいうのだろうか?
「疲れてるのか…?」
しかし、そんな考えはすぐに打ち消された。
「あの、どうかなさいましたか?」
扉が開き、困惑した表情で女が顔を見せた。
先程は頭を下げていたので分からなかったが、その顔は大人びた娘といった感じで、文句なしの美人だった。
だが、その下半身は白い蛇のもの。
間違いなく妖怪である。
「あ、いや…」
女が幻ではなかった上に妖怪だったことで二重に驚く祐助は、なぜ人の家にいるのかも尋ねられず、しどろもどろな返事しかできない。
「特に用事がないのでしたら、中にお入り下さい。もうすぐ夕飯ができますので」
「あ、ああ…」
つい祐助が頷いてしまうと、女は家の中に引っこんでしまう。
そして取り残される祐助。
しかし、ここはまぎれもなく自分の家だ。
あまりにも唐突で尋ねられなかったが、他人の家で勝手になにをしているのか問い詰めないといけない。
頭を整理し、まるで戦地にでも赴くような気持ちで家に入れば、台所から味噌汁の良い香りが漂ってきた。
その食欲を掻き立てる香りに、昼からなにも食べていなかった腹が情けない音を出す。
それが聞こえたのか、それとも偶然なのか、女が膳を持って現れた。
「お待たせしました。ちょうど焼きあがりましたので、冷めないうちにお召し上がりください」
手にしていた膳を置くと、祐助の返事を待たずに再び台所へと入っていき、同じように膳を持って戻ってくる。
その間、まるで口を挟む隙など与えてもらえず、祐助はとりあえずはと履物を脱いで居間に上がり、膳の前に腰を下ろす。
「おかわりも用意してありますので、必要でしたら言って下さい」
「あ、はい…」
まるでどちらが家主か分からないやりとりである。
おかわりもなにも、全て自分のものだろうと思いつつ、膳の上の夕飯に目を向けた祐助だが、そこにあるものを見て不満の感情は一瞬にして消えた。
膳の上にあったのは、白い炊きたてご飯に、大根と胡瓜の漬物、ねぎと豆腐の味噌汁、そして焼き鮭というものだった。
米と漬物は間違いなくうちにあったものだと断言できるが、それ以外のものは我が家にはなかったはずだ。
豆腐はここ最近買った覚えがないし、ねぎもきらしているはず。極めつけは鮭で、こんなものを一体どこで手に入れてきたんだと聞きたいくらいだ。
そんなことを考え、祐助がほとんど睨みつけるように夕飯を凝視していると、ふと視線を感じた。
他に誰がいるわけでもないので、そちらへ目を向ければ、どこか不安そうな表情で女がこちらを見ていた。
「…なんだ?」
言葉もなく、ただ見つめてくるだけの女に堪え切れなくなった祐助が尋ねると、女はしょげたように顔をうつむけた。
「あ、いえ、手をつけて下さらないので、お腹が空いてないのかと…」
どこか残念そうな口調でそう言われて、祐助の中にたちまち罪悪感がこみ上げてくる。
なぜだ、なぜ自分の家でこんな居心地の悪い思いをしなければならないのだ。
頭がそう思うも、自分が夕飯に手をつけないことで目の前の美人にあんな顔をさせてしまっている現状を考えると、悪いのは一方的に祐助な気がしてならない。
仕方ないので、どこか釈然としないままに味噌汁を啜ると、濃すぎず、薄すぎずの程よい味付けで、思わず「うまい」と漏らしていた。
そんな祐助の呟きが聞こえたのか、女はハッとしたように顔を上げる。
「本当ですか…?」
「あ、ああ。うまい。本当だ」
女の迫るような言い方に少したじろぎつつも、正直に答える。
すると、女の表情がみるみるうちに喜びのものへと変化した。
「よかった…、口に合わなかったらどうしようかと思いました」
まるで新婚の妻みたいな口ぶりに、祐助はどきりとしてしまう。
しかし、相手は美人とはいえ、他人の家に勝手に上がり込んでいるような者なのだ。
そんな相手に心の動揺を見せてつけ込まれてはならないと、軽く咳払いし、誤魔化す。
「その、文句なしにうまい味付けだ。だから、あなたも食べてくれるか。そうじろじろと見られては食べづらい」
「はい」
どこか満足そうな顔で女はうなずき、ようやく自分の夕飯を食べ始める。
それからのことは、あまり覚えていない。
なにしろ、美人と向かい合ってともに食事をするなど祐助には初めての経験なのだ。
緊張のあまり喉を通らないと言うが、祐助の場合は緊張のあまり頭に残らないといった感じだった。
だから、気がつけば出された夕飯を綺麗に平らげ、「ごちそうさまでした」と言う自分がいた。
「お粗末さまでした。お風呂の方も準備はできています。片付けは私がしておきますので、祐助様は先にお風呂へどうぞ」
「ちょっと待ってくれ。あなたは一体誰なんだ?」
慣れた手つきで膳を片付けようとする女へと、祐助は今更すぎる質問を投げかける。
「え…、あ…」
一瞬、呆けたような顔をする女。
だがすぐに気づいたのか、その頬が僅かに朱に染まる。
「私ったら、嬉しくてつい…。思えば、今も、そしてあの時も名乗ってはいませんでしたね」
女はそう言いつつ祐助の正面に正座し、床に手をついて頭を下げた。
「白那、と申します。今後、よろしくお願いします」
「あ、はい…」
丁寧な挨拶に返事を返しつつも、祐助はふと疑問に思う。
今後とはどういう意味なのか、そしてあの時とは?
だが、首をかしげる祐助をよそに、白那は器用に二人分の膳を持って台所に行ってしまう。
おかげで、なぜうちにいるのかという大事な質問を言いそびれてしまった。
だからこそ後を追ったのだが、覗いた台所で白い蛇体の尾を揺らし、どう見ても上機嫌で洗い物をする白那は質問できる雰囲気ではなかった。
「とりあえず、風呂に入るか…」
どうにも調子を狂わされている気がする。
結局、肝心の質問はできないまま脱衣所に向かい、農作業で土にまみれた衣服を脱ぐ。
少し意識すれば汗の臭いがはっきりとわかる衣服を脱ぎ去り、ちょっとした解放感を感じながら風呂場に行こうとして、脱衣所の棚にきちんと寝巻が用意されていることに気付く。
「なんだか、結婚した気分だな…」
もし、自分が誰かと結婚したら、こんな風になにからなにまで妻がやってくれるのだろうか?
至れり尽くせりな現状がそんな考えをよぎらせるが、それは独り者の馬鹿な妄想だと気付く。
自分に呆れる笑いを浮かべながら、手拭いを片手に風呂場へと行き、湯舟の蓋を開ける。
するとそこには、見慣れない葉がいくつも浮かんでいて、森を思わせるような清々しい匂いが立ち上ってきた。
「これも、やってくれたのか…?」
ここまでされると申し訳ない気になってくる。
このお湯は大事に使おうと思いながらそっと手を入れると、白那が用意してくれた湯舟はいい湯加減だった。
そこから手桶で一すくいして体にかけ、手で雑把に洗うと、再び手桶で湯舟から湯をすくって体にかける。
体の汗を簡単に流すと、湯舟に体を沈めた。
首から下が余すところなく良い香りの湯に浸かり、疲れが体から溶け出していくような心地を味わう。
一日の最後に訪れる、ちょっとした至福の時。
だが、そんな一時は隣りの脱衣所から発せられた白那の声で儚くも消えてしまった。
「祐助様、湯加減はどうですか?」
「…ああ、問題ない」
風呂くらいゆっくり入らせてもらないかと、軽くため息が出てしまう。
だが、「それはよかった」という声とともに扉が開き、白那が風呂場に入ってきたことで、ため息どころか呼吸まで止まりそうになった。
なにしろ白那は来ていた着物を脱ぎ去り、その白い素肌を存分に晒しているのだ。
手拭いによって大事なところは隠されてこそいるものの、その気になればすぐにその裸体を見せられるという状態である。
薄布一枚を持っただけの美女を前にして、祐助は酸欠にでもなったかのように口をぱくぱくさせる。
「あ、あの、白那さん、一体なにしに…」
「お背中、流しに参りました。そういうわけですから、こちらにどうぞ」
そう言いつつ、手拭い一枚を胸に当てたまま椅子へと手招きする様子は、男を誘惑する魅力に満ち溢れていた。
そんな様子を間近で見せつけられ、祐助の股間が瞬時に反応していく。
「あ、いや、俺はもう流し終えて上がるだけなので、白那さんはごゆっくり…!」
「そんな…、祐助様は早風呂なのですね…。急いで洗い物を済ませてきたのですが…」
食事の時と同様に白那の表情が曇るが、今回ばかりは罪悪感よりも一秒でも早くこの場から逃げ出したいという思いが勝り、祐助は手拭いで股間を隠しつつ、急いで風呂場を後にした。
脱衣所に逃げ込むと、ものすごい早さで体を拭きあげ、寝巻を着こんで台所に向かう。
白那によって火照らされた心と体を静めるために桶から両手で水をすくい、一息に飲み干すと幾分かの余裕を取り戻すことができた。
「はあ…。今日はもう寝よう…」
風呂に入って疲れを取るつもりが、逆に疲れてしまった。
白那がなぜうちにいるのかは、明日訊こう。
そもそも明日までいるかも分からないが、いなくなってくれるなら、それはそれで構わない。
どうせ大金を置いてあるわけでもないし、盗られたところで大して困るものなどないのだから、この際、彼女に関しては明日考えよう。
思考を放棄して祐助は寝室へと向かい、襖を開く。
そこには既に布団が敷かれていた。
だが、不思議なことに枕が二つ置かれている。
布団は一人用なのにもかかわらずだ。
そして布団の横では、来るのを待っていたとでも言うように正座した白那がいた。
「…あの、白那さん?風呂はどうしたんですか?」
「急いで上がってきました。こればかりは、遅れるわけにはいきませんから」
どうやらあの後、白那は急いで風呂を上がったらしい。
しかし、一体なぜ?
「あの、それはどうして?そもそも、なぜこの部屋に?」
「それは…、今日、最後の恩返しをするためです…」
「恩返しって一体なにを…、うおっ!?」
僅かに頬を染めた白那の言葉が何を意味するのか問おうとしたら、いきなり蛇体に巻きつかれた。
「はぁ…この時をどれほど待ちわびたことか…!」
どこか酔ったような表情で白那は祐助を引き寄せ、巻きつく蛇体の位置を器用にずらして寝巻に手をかける。
腰布が外され、寝巻をはだけさせられそうになって、祐助はようやく白那がなにをしようとしているか理解した。
「まさか、恩返しって…!」
「はい。一緒に寝ていただこうと」
頬を染めつつ言われた一緒に寝るという言葉が、文字通りなはずがない。
「待ってくれ!いきなりそんなことをするのは駄目だ…!」
「なぜ拒むのですか?まさか…」
一瞬だけ悲しそうな表情を見せた白那だったが、すぐにそれはなんとも形容しがたい表情へと塗りつぶされた。
それに合わせて巻きついていた蛇体がより強く締め上げ、苦しみこそ感じないものの、完全に拘束されてしまう。
「まさか、他に想い人が?」
目を細め、別人かと思うほどの底冷えするような声が問いかけてくる。
そこからは明白な嫉妬が感じられた。
「違う、そんな人はいない!俺が言いたいのは、初めて会ったばかりなのに、こんなことをするのはおかしいということだ…!」
「初めて…?祐助様は、私のことを覚えておいでではないのですか?では、あの日の約束も…?」
さっきまでの嫉妬を浮かべた表情は溶け落ち、呆然とした声で白那が呟く。
「覚えてる?俺達は初めて会ったわけじゃないのか?」
急に変化した白那の様子に戸惑いながらも問いかけると、白那は小さく頷いた。
「私達が初めて会ったのは、十六年前です。この村のすぐ近くの森で、祐助様は迷子になっていた私を助けてくれたのです。そしてその時、祐助様は約束してくれました。大人になったら、私を妻に迎えてくれると」
ぽつりと語られた真実。
それを聞いた祐助は、十六年も前では覚えているはずもないと匙を投げようとする。
だが、目尻に涙を浮かべ、悲しそうにこちらを見る白那を目の当たりにし、祐助の頭に唐突にある光景が浮かんだ。
それは、森の中で泣きじゃくる少女だった。
その少女と白那が重なり、背中に鳥肌が立つのを感じた。
「まさか…あの時の?俺が滝の近くに連れて行った…」
口から出た呟きは白那の耳にも届いたようだった。
その目が見開かれ、涙が零れ落ちた。
「思い出してくれたのですか…?」
「ああ…。だが、思い出せたのは出会った時のことだけだ。その約束までは…」
自分の物覚えの悪さに心底うんざりする。
これ以上ないくらいの罪悪感からまともに白那を見ていられず、祐助は視線を逸らしてしまう。
しかし、顔へと伸びてきた白那の両手によって、無理矢理向きあうようにされてしまった。
「いいのです。祐助様が私のことを思い出してくれた。私はそれだけで満足です。ですから、あの時のお礼をきちんとさせて下さい…」
巻きついていた蛇体が解かれて祐助の体を解放すると、白那は手を伸ばし、寝巻を脱がせてしまう。
「なっ、白那さん、それは…!」
抵抗する暇もなく裸にされた祐助の足に蛇体が巻きつき、そのまま布団の上に倒されてしまった。
尻もちをつく形で倒された祐助が白那へ視線をやると、彼女は着物の腰帯びを解き、するすると脱いでいくところだった。
そして露わになった白那の裸姿に、抵抗しようとする考えは瞬時に消し飛んだ。
まず目を奪われたのは、豊かに実った二つの胸。
双乳の中心には桜色の突起があり、むしゃぶりつきたくなる衝動に駆られる。
視線を胸に奪われつつも下へと下げていけば、細い腰があり、そして人の上半身と蛇の下半身の境目にある秘部へと辿り着いた。
そこは既に濡れに濡れていて、まるで涎を垂らしているようにも見える。
だが、それを汚いなどとは思えず、むしろそれくらい自分を求めてくれているのだと誇らしくさえ思えた。
当然、祐助の方も肉棒を膨張させ、これでもかとその存在を誇示している。
「ふふ、祐助様も私を求めてくれているのですね。嬉しい…。でも、今恩返しするのは私ですから、動けないようにしてしまいますね」
上半身を祐助へと倒れこませながら、蛇の下半身が祐助の体に巻きついていく。だが、おかしなことに蛇体は胸から下に巻きついただけに終わった。
それが不思議で、変に冷めてしまった頭が尋ねていた。
「あの、白那さん。腕は自由なままなんだが…」
「えっと、その、…触って…欲しくて…」
白那の頬が僅かに赤く染まり、視線だけが逃げる。
だが、すぐにちらりと期待を込めた眼差しでこちらを見てきた。
その庇護欲をそそるような物言いに、肉棒がびくりと反応する。
だが、触ってほしい?
そんなことを言われてもどこを触ればいいのか分からず、とりあえず自分の体へと巻きついている蛇体をそっと撫でる。
鱗があるのにその手触りはつやつやとしていて、少し押してみれば、形を変えるくらいに柔らかい。
しかし、そんな祐助に対して白那は不満そうな目を向けてくる。
要求通りに触っているのに、なぜ?
首をかしげそうになるが、やがて自分の間違い、そして、白那が本当に触ってほしかった場所に気づいた。
なんて間違いをしたんだと赤面していると、白那も祐助が気付いたのを察してくれたらしく、ぐっと体を寄せて胸を突き出してきた。
すぐ傍に差し出された乳房へおずおずと手を伸ばし、そっと揉んでみる。
柔らかさと弾力さを併せ持ったそれは病みつきになる手触りで、つい何度も揉んでしまう。
「んっ…。祐助様、左だけでなく、右も…」
悩ましい声で頼まれ、言われるがままに右の乳房を左手で掴み、同じように揉んでいく。
「は、ん、あぁ、祐助様は揉むのが上手ですね…」
左右の胸を揉みしだかれ、白那の口から更に悩ましげな声が漏れた。
それが祐助を興奮させ、ほとんど無心で手を動かし続ける。
しかし、ふとした拍子に白那が体を起こし、両手から柔肌の感触が消えてしまった。
「私の胸は気持ちよかったですか?でも、そろそろ別のところも気持ちよくしてあげますね…」
言葉とともに、亀頭が熱いものに触れた。
それが秘部にあてがわれたのだと分かり、歓喜するように肉棒がぴくぴくと動く。
「ふふ、待ってて下さいね。今、挿入れてあげますから…」
そう言いつつ祐助を見つめ、そしてゆっくりと腰を下ろした。
ずぶずぶと肉棒が白那の中へと呑み込まれていく。
「う…」
白那が小さく漏らして顔を歪めたのは、挿入の過程でほんの僅かな引っかかりを感じた時だった。
「白那さん、血が…!」
結合部より漏れ出た愛液に赤が混じっていることに気付き、興奮が一気に冷める。
だが、白那は不安そうに見つめる祐助に微笑んだ。
「初めてだったのですから、血が出るのは当然ですよ。それに、痛みは一瞬だったし、初めてを好きな人へと捧げることができて私は嬉しいです。だから、そんな顔をしないで下さい」
「いや、だが…うぁっ!?」
なおも食い下がろうとしたところで、いきなり肉棒が締め上げられた。
「それより、私のここはどうですか?気持ちいいですか?」
初めてだというのに、白那は早くも膣の使い方を学んだのか、うねるような動きで刺激を与えてくる。
その度に肉壁と擦れあい、絶え間ない快感が祐助を襲った。
それは性行為が初めての祐助には抗いがたいもので、膣内に納まっている肉棒が降参を示すようにびくびくと痙攣し始める。
「んっ、祐助様、私の中で暴れてますね…」
「白那さん、で、出る…!」
「どうぞ出して下さい…。私のお腹に祐助様の精を…」
完全に欲情した表情の白那から切なげな声が漏れ、同時に蜜壷の柔壁が肉棒をぎゅうぎゅうと締め上げる。
その動作によって、体中に雷にでも打たれたかのような快感が走り、堪えていた射精感が限界を迎えた。
「っ!!」
溜めすぎたのか、肉棒が一際大きく震え、爆発するような勢いで白那の膣へと精が解き放たれていく。
「うぁ、あ、熱いものが…!祐助様の精が、お腹に…!」
精が注ぎ込まれる度に白那の体がびくりと震え、呼応するように膣内が収縮して更に精を吐き出させようとする。
促されるままにどくどくと射精は続き、白那は蕩けた顔でそれを受け入れる。
永遠に続くのではないかと錯覚しそうになる射精だったが、肉棒がぴくぴくするだけで、その先からなにも出なくなったことで呆気なく終わりを迎えた。
「お腹の中、祐助様の精で満たされてます…。満足していただけたのですね…」
嬉しそうに白那が微笑んでくれるが、射精による倦怠感と一日の疲れが一気に押し寄せてきて、強烈な睡魔が視界をぼやけさせる。
「お休みになるのですか?」
かすかにそんな声が聞こえた気がするが、答える気力もなく、白那へと体を預ける。
鱗があるのにつややかで、温もりを感じられるのにどこかひんやりとした彼女の蛇体が火照った体に心地良く、このまま眠ってしまいたくなる。
肉棒が彼女の中に納まったままだが、蛇体に巻きつかれ、白那が上にいてはどうしようもなく、また、彼女も離れる気はなさそうだ。
だったらこのまま眠ってしまっていいか…、体も肉棒も、全てを白那に抱かれたままで…。
「おやすみなさい、祐助様…」
沈みゆく意識の中で、白那の優しい声を聞いた気がした。
小鳥のさえずりが聞こえ、祐助は目が覚めた。
体感的な時間は間違いなく寝坊だ。
起ききっていない頭がそう認識し、朝からため息をこぼす。
「しかし、なんで寝坊なんか…」
そう呟いた時、寝坊の原因が思い浮かんだ。
それに合わせて昨夜の恩返しで味わった快感まで思い出してしまい、祐助は再びため息をつく。
今更だが、初めての相手が自分でよかったのかと思う。
いくら恩返しとはいえ、たかが家に連れて行っただけでやりすぎではないだろうか。
そんなことを思いながら隣りを見たのだが、そこに白那はいなかった。
それだけでなく、確かに白那に抱かれたまま眠ったはずなのに、なぜか布団で寝ていた。
これで自分が裸ではなかったら、昨日のことは夢だったと思ったかもしれない。
「とりあえず服は着るか…」
布団の脇に丁寧にたたんであった寝巻を着ると、台所へ向かう。
朝飯と、昼の握り飯を用意する必要があるからだ。
だが、向かった台所には先客がいた。
「あ、祐助様、おはようございます。待ってて下さいね、今、朝ご飯を用意してますから」
祐助が起きたからか、白那の尻尾が嬉しそうに揺れる。
「え、あ、ああ…」
台所に誰かがいて料理を作っているという光景に違和感を感じ、つい眺めてしまう。。
白く長い髪が背中に垂らされた後ろ姿は女らしさに溢れている。
女らしさといえば、昨日はあの着物の下の体と…。
昨夜の交わりを思い出し、股間が急速に膨らんでいく。
「っ」
朝から欲情して肉棒を大きくしているところを白那に見られるわけにはいかず、祐助は慌てて居間へ行き、すとんと正座する。
間が良いのか悪いのか、そんなところへ白那が朝ご飯を運んできた。
「正座などしてどうしたのですか、祐助様?」
「いや、作ってもらっているのに、胡坐をかいて待っているのもあれなので…」
とっさにしてはうまく言えたと思う。
その甲斐あってか、白那は穏やかに微笑んだ。
「そんなに気を遣っていただかなくても結構ですよ」
そう言われても、胡坐を崩すわけにはいかない。
なにしろ、未だに大きくなったままなのだから。
祐助が落ち着かずにいる間にも、白那は自分の分を持ってきて、食事が始まってしまう。
だが、祐助は萎えそうにない愚息がばれないかと気が気ではなく、ほとんど無意識のうちに食事を終えてしまった。
「お粗末さまでした」
食事が終わり、昨夜と同じように祐助の膳を下げようとする白那。
それを見計らって、祐助は口火を切った。
「あの、白那さん。ちょっといいですか。話があります」
「あ、はい」
気配から大事な話だと悟ったのか、白那が祐助の正面に正座する。
「俺はあなたと幼い時に結婚すると約束したんですよね?」
「はい…」
伏し目がちになり、こくりと頷く白那。
そんな彼女の様子を見て、祐助は心が痛む。
それと同時に、たまらない愛しさも感じる。
それが、彼女が婚約者だからか、それとも肌を重ねたからかは分からないが、たった一日で完全に惚れてしまったことだけは確かだ。
「昨夜も言ったように、俺はあなたとの約束を覚えていない。俺は、婚約の約束を忘れるような最低の男だ。それでも、その約束をなかったことにはしたくない。だから、白那さんが俺を許してくれるなら、結婚して妻になってほしい」
床に手をついて頭を下げつつも、我ながら虫のいいことを言っていると思う。
白那だって同じように思うはずだ。
だが、返ってきた返事は意外なものだった。
「はい」
短く、そして嬉しそうな声。
思わず顔を上げれば、見間違いでもなんでもなく、白那は嬉しそうに微笑んでいた。
「いいのか…?」
「あの日からずっと、祐助様の妻になることを夢見てきました。そして今、祐助様が約束通り私を妻にと望んでくれた。お受けするに決まっています」
「じゃあ…!」
色よい返事に、つい顔がにやけてしまう。
「喜ぶのはまだ早いですよ、祐助様。こちらへ来て下さい」
そう言われてついていった先は寝室だった。
「白那さん?ここがどうかしたんですか?」
「ええ。祐助様は妻にしてくれると言いましたが、やはりきちんと夫婦の契りを交わすべきだと思いますから」
「え…」
予想外の言葉を言われ、戸惑っているうちに白那の手が伸びてきて、服を脱がされてしまう。
「ふふっ、さすが祐助様です。体の方は準備ができているようですね…」
裸にされ、あらわになった肉棒は食事の時よりも大きくなっているようだった。
それを見て、白那は嬉しそうに笑うが、祐助は恥ずかしさでつい顔を背けてしまう。
「では失礼しますね、祐助様」
するすると白い蛇体が祐助の上半身に巻きついてくる。
このまま押し倒されるのだと思い、祐助はなすがままになっていたのだが、今回は白那が先に布団に体を横たえた。
考えるまでもなく次は祐助の番であり、白那の上に覆いかぶさるよう、蛇体によって引き倒された。
祐助を倒すと蛇体の巻きつきは解かれ、服の上からでも分かる白那の胸の感触と、どこか甘い花のような香りが本能を刺激し、理性をたやすく打ち崩していく。
今からする行為が待ちきれないのか、頬を赤く染めて潤んだ瞳で見つめてくる白那の表情が後押しとなって、頭の中が真っ白になった祐助はその着物に手をかけて脱がしにかかる。
美しい女性に覆いかぶさり、その衣服を剥いでいくという行為に変な興奮を覚えるが、着物を脱がせる経験などない祐助はどうもうまくいかない。
だが、そんな祐助のぎこちない手を助けるように白那がうまく体を動かしてくれたおかげで、大した時間をかけずに脱がすことに成功した。
「っ!!」
昨夜も見たはずの裸体だが、こうして改めて見せつけられると、その美しさに声が出ない。
大きな胸は仰向けになったことで潰れてしまっているが、桜色の乳首とともにその存在を主張しているし、なにより白い肌が朝日と同じくらい目に眩しい。
「さあ、どうぞ…。私を祐助様のものにして下さい…」
降参するように両手を肩の横に置き、懇願するような口ぶりで白那はそう言った。
言い方も、今の姿も、そのどれもが興奮を昂ぶらせ、祐助は鼻息を荒くしながら腰を動かして膨張した肉棒を秘部へとあてがう。
その先端が蜜壷の入り口を捉え、後は腰を進めるだけだ。
だが次の瞬間、腰を動かしていないのにもかかわらず、肉棒が温かい膣内へと呑み込まれていた。
「なっ!?」
待ちきれなくなったのか、祐助が挿入するより先に白那が腰を浮かせて肉棒を膣内へと納めたのだ。
白那はそれと同時に祐助の背へ手を回してしがみつくと、自分の体も巻き込んで二人の体を蛇体で巻きあげていく。
結構な力で締め付けているのか、上半身は隙間がないくらい密着し、祐助の胸板に押しつけられた双乳が形を変える。
そんな状態だというのに、絶妙な力加減をしているのか、苦しさは全くない。
「ふふっ、これで離れられませんね…」
白那は満足そうに笑うと、布団へと倒れ込む。
「その、白那さん。重くは…」
巻きついた蛇体を下敷きにしている今の状況は辛いはずだ。
だが、そんな考えは祐助だけだったらしい。
「重さなど感じませんよ。感じるのは、祐助様と繋がっているということだけ。さあ、祐助様、好きなように動いて下さい。腰の辺りは締め付けを緩くしてありますので…」
言われてみれば、確かに腰回りだけは若干の隙間があるようで、僅かながら後ろに動くことができた。
お言葉に甘えて腰を引き、蜜壷に呑み込まれていた肉棒もその分だけ解放される。だが、その半分は咥えこまれたままだ。
祐助としても抜くつもりはないので、腰を落とし、再び白那の温かな膣内へと肉棒を挿入していく。
「ん…、ふ、あぁっ、固くて熱いのが…!」
肉棒が膣内の柔肉を押し広げていく感覚に感じているらしく、白那から歓喜の声が漏れ、彼女が自分で感じていることに、祐助は男としての自尊心が満たされる。
下降気味だった興奮も再燃し、肉棒を膣の奥へと突き入れると、亀頭がなにかにぶつかった。
昨夜は全く触ることのなかったそれは、白那にとってかなり敏感な部分らしく、一際大きな嬌声が漏れる。
「ああっ…!子宮口に、ぶつかって…!」
子宮口?ということは、この奥は…。
動きを止めた祐助の考えがわかったのか、白那が頬を赤らめながら微笑む。
「この先が子袋…。祐助様の子を宿すところです…」
自分の子と聞いて、現金にも肉棒がびくりと反応する。
「ふふっ、遠慮はいりませんよ。私の子袋にたっぷりと子種を注いで下さい…」
その言葉で祐助のたがが外れ、本能が勝ちどきを上げた。
再び腰を引き、快楽の蜜壷へと夢中で肉棒を突き入れる。
「んうぅ!あ、はっ、あうう…!」
祐助のぎこちない動きでも白那はきちんと感じているらしく、肉棒を入れる度に喘ぎ声がこぼれる。
それが余計に男の本能を刺激し、結合部から卑猥な音がするくらい、何度も腰を振ってしまう。
お互いに荒い呼吸をしながら闇雲に腰を振り続けていると、ついに限界が近づいたらしく、急速に射精感がこみ上げてきた。
白那も絶頂が近いのか、膣内は熱さが上昇し、蠕動を繰り返している。
「白那さん…!もう…!」
「出して下さい…!妻の証を私に…!」
高まる射精感を堪えて膣へと突き入れると、蛇体が緩めてあった腰回りを締め上げ、結合部をこれ以上ないくらいに密着させる。
それによって最奥へと到達した亀頭を子宮口が咥え、そこで射精するようにと膣内が一気に収縮し、肉棒を強く締め付けた。
「ん、くうっ!」
頭の中が真っ白になり、限界を迎えた体が肉棒を脈打たせつつ精液を撃ち出していく。
「はぁっ、子袋に熱い精が、祐助様の子種がたくさん…!」
白那は目を瞑り、射精に感じ入っているようだが、膣内は精液を一滴残らず搾り取ろうと締め付けてくる。
それによってもたらされる快感に従い、肉棒はおびただしい量の精液を膣内へと注ぎ込んでいく。
やがて祐助の腰が痙攣し、精液が出なくなると、白那は脱力したのか、膣と蛇体、両方の締め付けが緩んだ。
祐助も胸を大きく上下させながら、強張った体の力を抜く。
そして満足そうな白那を見つめ、そっと囁いた。
「白那さん、愛しています」
「白那、とお呼び下さい。今日から夫婦なのですから…」
白い頬をうっすらと朱に染めつつも、白那は幸せそうだ。
そんな彼女を愛しく感じながら、祐助はふと思う。
あれだけ妖怪が村に夫を探しに来たというのに、自分が結婚できなかったのは、もしかしたら、白那との約束があったからではないかと。
都合良く考えすぎかもしれないが、なんとなくそう思えてしまうのだ。
「夫婦…。そうだな、これからよろしく、白那」
「はい、祐助様…」
幼い頃に交わした約束。
それは十六年の時を経て果たされた。
長い月日をずっと想い続けてくれた白那のためにも、彼女を幸せにしよう。
妻の温もりを全身で感じつつ、祐助はそう心に誓ったのだった。
12/05/25 18:45更新 / エンプティ