後編
―どれ程の時間そうしていたのだろうか。
呆然と黙りこけるエドルに痺れを切らしたのだろうか、沈黙を先に破ったのは彼女の方だった。
『ええと・・・、御身体の方はどうでしょうか?』
彼女の身体の一部分がひらひらと風に靡くように揺れながら、そう聞いてくる。
やはり美しい声をしているが、人のそれと響き方が違うのは身体の構造の違い故だろうか。
「あ―、ああ、だるさと寒気がすごいな・・・。大丈夫とは言えない・・・かも知れない」
ようやく舌が動いてくれたエドルは、必死に言葉を紡ぐ。人生で初の魔物との対話。
その胸中にあるのは驚愕と感動の混ざったものであり、意外なことに恐怖は弱かった。
トリトニアが凶暴な種では無いことを本の中の知識により知り得たから、と言うのが大きいのかもしれない。
「貴方が、助けてくれたのだろうか?だとしたら有り難う」
その言葉と同時に頭を下げる。
『ああ!そんな!・・・頭をお上げてください』
あわあわとしながらそう答えるトリトニア。
『ですが、本当に良かった・・・。貴方を見つけた時は本当に驚いたものですから・・・』
曰く、彼女はとある用事で海岸へと赴いていたらしい。その途中、気を失い海の底へと沈み行くエドルの姿を見つけたとの事。
そこから始まる悪戦苦闘。
なにせ彼女は背負えない。その背にある触手はあらゆる物に容赦なく絡みつく、トリトニアと言う種が生まれ持つ自動防衛装置。一説では魔物の中では比較的穏やかで動きが緩慢な彼女達が進化の過程で外敵から身を守るために発達させたらしいが、その目的が元は不随意での敵の撃退と言う物だけあって、その動きに関しては彼女の意志の外にあるのだ。
そんな自身の触手にエドルを曝すのは不味いと、彼女は一心不乱に身体をはためかせながら彼の元に向かうと、その身体を抱きかかえる形で必死に近くの洞窟まで運んでくれたらしい。
辺りを見回すと、どうやら自分が足を滑らせた洞窟とはまた違う場所らしい。洞窟の口は半ば海へと沈んでおり、そこ以外に外界と繋がっているのは岩の天井に走る割れ目くらいの物だ。その割れ目の間から、今も雨と水滴が滴り落ちている。
彼女の方へ視線を戻し、その姿をもう一度見てみると、その美しいガラス細工のような透明感のある身体のあちこちに細かな砂や、海泥の汚れが見て取れた。
本当なら人目のある場所へ運んだほうが良いとは思ったのですが、多くの人目に我が身を晒すのは怖かったのです、と最後にそう付け加える彼女の言葉にエドルの胸中に熱いものがこみ上げてくる。
「・・・そう言えば、まだ名前を言っていなかったな。俺の名前はエドル。その、良ければ、貴方の名前を教えてもらえないだろうか?」
目の前の彼女が貴婦人を思わせる姿をしているからだろうか。エドルはらしくないと自身で思いつつも、出来る限りの丁寧な言葉を紡ぐ。
『エドル様・・・とおっしゃるのですね・・・。私の名前はレーネリアと言います。気軽にレーネと呼んでください』
「あ、ああ。じゃあ、レーネ」
名前を呼んだだけだと言うのにエドルはたまらず目を逸らしてしまう。
実際、エドルの女性と接する経験が乏しい訳ではない。その粗暴そうな印象を与えかねないが、逞しい身体にその相貌も相まってポートリアに住む女性達からは人気があると言っていいだろう。しかし、ポートリアの女性は簡単に言うと野性味溢れるタイプであり、そのためエドルには目の前に佇むレーネリアのような可憐、上品と言った言葉が似合う女性に対しての免疫が無いのだ。
『あの・・・、エドル様?先程から身を擦っていらっしゃいますが、それほどまでに寒気が・・・』
「ああ、ひどくてな。その上、濡れた身体にこの気温は少々堪える」
どうやら既に陽は暮れてしまっているらしく、岩の天井の割れ目から覗く空模様は依然として暗いままだが、エドルが家を出た際のものよりも一層暗い色になっていた。
『身が冷えるのは大変でしょう・・・。そうだ、良い物がありますよ』
レーネリアのその黄玉色の触覚がピコピコと震える。こうして見ると犬猫の耳のように見えてとても可愛らしい。
洞窟内に転がる幾つかの大岩の一つへと向かうと、彼女はその岩の影から一つのガラスのボトルを取り出し、こちらへ持ってきた。
『あの・・・、これは魔界の葡萄で作った赤ワインでして・・・。その、実はこれを飲む為に陸の方へと来てたのです・・・』
悪い事をしてる訳ではないのに、恥ずかしさ故かレーネリアの声は次第にか細くなり、最後の方は波の音に消え入りそうなほど小さい。
赤ワインは多少ではあるが、身体を温めると聞いたことがある。だが、気になるのは何故わざわざワインを飲む為だけに本来海中にて暮らすレーネリアが陸へ上がろうとするのだろうか。
その疑問は瞬く間に氷解した。そもそもどうやって水中で酒を飲むというのか。
「せっかく陸に上がってきても、今は雨季で景色も悪い。おまけに俺のような漂流物を世話する羽目になるわで、その、大変だな」
『私達の肌にはこの雨季の空気のほうが心地よいのですよ。それに・・・、その大変さのお陰で晩酌相手を得られたわけですし・・・』
そういってボトルのコルクを摘んで引き抜こうとするレーネリア。だがしかし、そのか細く柔らかい指先で抜けるはずも無く。
『・・・えい。あれ?・・・えい。あれれ?・・・どうしましょう、抜けません』
「コルク抜きは持ってないのか?」
コルク抜き?、とレーネリアは小さく呟くと、
『・・・その、お恥ずかしながら、初めて手に入れた物でして・・・・』
しおしおと彼女の触覚がうな垂れてしまう。
その落ち込みように慌ててフォローに入る。
「ま、まあ、それが無くても開ける方法はあるんだが、味が落ちるんだよな・・・・。あ、そうだ」
そういってエドルは家を出る際に腰に巻きつけた革のポーチの中を探る。
中にはナイフや少し短めのロープなどが入っていた。もう一枚の革を縫い付ける形で作られたポケットの中からエドルは三叉に分かれた物を取り出した。小型の銛の穂先である。万が一の代えにと、ずっとそのポケットの中に入れていたのを思い出したのだ。
レーネリアからボトルを受け取ると、その口を塞ぐコルクに返しの付いた穂先の先端を突き刺す。
ある程度の深さにまで刺さった所で掬い上げる形で力を入れる。ミリミリと力に耐えかねた穂先が曲がってしまうが、気にせずそのまま力を込め続けると、きゅぽんっと言う小気味の良い音と共にコルクが抜けた。
コルクが抜けるや否や、そのボトルの口からなんとも濃厚な芳香が漂い始める。なにより特徴的なのはその甘そうな香りだろうか。今まで幾つかの種類の赤ワインを飲んで来たエドルをしても嗅いだ事の無い程強い。
「ほら、抜けたぞ」
そう言ってレーネリアの方えと視線をやると、その手には二つに割った手の平に収まるサイズの貝殻があり、その内の一枚をこちらに差し出してきた。
『コップを用意できなかったもので・・・』
「ははっ。これはこれで風情があって良いな」
白色の小さな皿のように広いそれを受け取ると、自身と彼女の物へワインを注いでゆく。
鮮やかな赤、いやここまで来ると紅色だろうか。先程よりも濃く、嗅いだだけで陶酔感を得られそうな香りが二人の空間に立ち込める。
『本当に良い香り・・・。なんだかこの香りだけで満足出来そうです・・・』
「あぁ、本当にな。・・・よし、注いだぞ。それでは―」
エドルが並々ワインの注がれた貝殻を彼女の方へ伸ばすと、レーネリアも遠慮がちに伸ばしてくる。
初めてワインを飲むと言う彼女も、なんとなくその意図を汲み取ってくれたらしい。
コツン、と二人の貝殻が小さく触れ合った。
「乾杯」
『か、乾杯』
貝殻に満たされたそれを遠慮なく口に流し込む。すると、アルコールと共にその濃厚な芳香が喉の奥をのぼり、鼻腔を満たしていく。
味わいもその芳香に負けず劣らず濃厚であり、口当たりは少しトロリとしていた。紛うことなき美酒。
エドルは幾度か舌で口に満ちたそれを転がし、味と香りを楽しみ、ごくりと飲み下した。
強い酒を飲んだ時のような、胃がカッとなるような強烈な物ではなく、心から温まるような心地の良い感覚が身体全体へと広がってゆく。
『・・・美味しい』
見れば、レーネリアも気に入ったのか、その小さな両手で貝殻を持ちコクコクと飲んでいる。
そのか細い喉を小さく鳴らしながら飲み下す姿がエドルの目にやけに艶かしく映る。
「ああ、本当に美味しい」
まだ一杯。それも、底の浅い皿のような貝殻に注がれた一杯だというのに何という充足感だろうか。
先程までエドルの身体に纏わり付いていた肌を刺すような寒気は綺麗さっぱり拭い去られ、彼の身体には心地よい陶酔感が満ち満ちていた。
レーネリアの方を見ると、彼女の肌色故に上気しているのかは判別が付かないが、気持ちよさそうに身体をふわふわと揺らめかせている。
(嗚呼、それにしても―)
―なんと美しい身体なのだろうか。
無意識の内にエドルはもたれるようにして触れた彼女の身体の柔らかさと温もりに思いを巡らせる。
どこまでも沈みこんでいくような、それでいて何もかもを包み込んでくれそうな柔らかさ。そしてそこに確かに感じた彼女の温もり。
―もし、もしも。彼女のその身体を抱く事が出来たならば。
―あの柔らかい身体に身を沈め、あの小さな口に己の赤い舌を捻じ込み、彼女の舌を味わえたとしたならば。
―それは今飲んでいるこの美酒にも劣らない程の甘露なのではないか。
そんな考えが脳裏をよぎる。
(阿呆か俺は。彼女は命の恩人だぞ。いくらなんでも・・・)
『エドル様・・・』
不意に近くで呼ばれた声に驚くと、うっとりとした様子のレーネリアがエドルのすぐ傍まで来ていた。
足音のない彼女の移動に全く気が付かなかった。しかし、問題はそこではない。
ここまで近寄られると、否が応にも彼の視界に彼女の豊満な双丘が飛び込んでくる。それだけではない。彼女の息遣いも意識がいってしまい、先程まで彼女で下種な妄想をしてしまったエドルにはたまらなかった。
「すまない、すこし離れ―」
『やはり、とても逞しい・・・♥』
―ヌチュリ
エドルの言葉を遮る様にレーネリアの右手が、その短い袖から剥き出しになっている左の二の腕に触れる。
『嗚呼、こんなに筋肉質で・・・、私達にはない硬さ、逞しさを感じます・・・♥』
酔っ払っているのだろうか。うっとりと愛おしそうに囁くレーネリアに、エドルは背筋がゾクリと為るほどの淫猥さを感じた。
酒が入り先程よりも温もりをもった彼女の手の平はゆっくりとエドルの腕を辿って行く。
彼女の肌の持つ独特なぬめりも相まって、まるでナメクジのようだ。
遂には、彼女の空いた左手も伸びて来て、エドルの左の手の平に纏わりつき、指を絡めてくる。
そうして、そのままエドルの左腕を自身の方へ引き寄せると―
―ヌプッ・・・♥・・・ヌプヌプッ♥ヌプププッッ♥
そのままその豊満な体へ、抱き込むように沈め込み始めたのだ。
レーネリアの身体へ沈んでいく左腕からは、自身の妄想で思い描いた以上の温もりと柔らかさが、ネットリと伝わってくる。
彼女の豊満な双丘もエドルの左腕に形を潰されながらも、その存在をアピールしてくる。
「レ、レーネ・・・っ!?これはっ」
『エドル様・・・♥こんな・・・はしたないっ♥はしたないと、分かっているのですが・・・♥貴方を運んだ際に、抱きかかえた時のっ、感触がずっと・・・っ♥頭の中でっ・・・♥』
熱い息を溢しながら答えるレーネリアに、エドルの視線はワインの入ったボトルへと向かう。
(―まさか!?)
そう。彼女は"魔界の葡萄で作った赤ワイン"と言ったが、"魔界の葡萄"とは即ち魔界の森林に成るとされる"陶酔の果実"の事である。
魔界の葡萄と呼称されるだけに、葡萄のように、一房に幾つもの実をつける。魔界の大地より吸い上げた魔力を濃縮したそれは、滋養もよく味わいも上品。葡萄と異なる点は、房の下に行くほど魔力の濃縮度が高く、房の先端には決まってハート型の実が付くのだと言う。
これより作られるワインは交わりの前に飲む"交前酒"として流通していた。
エドルと違い、レーネリアは魔物。恐らくワインに濃縮された魔力に感受性がエドルよりも遥かに高いのだろう。
彼でさえ、たった一杯のワインで下種な妄想が止まらなかったのだ。彼女の脳内では、いや、今の彼女の目には、一体エドルがどのように映っているのかは想像に難くなかった。
「くぅっ・・・!」
レーネリアの身体の、ひらひらとした揺れるような動きが、こんどは打って変わって吸い付くようなものに変わり、エドルの腕を優しく丁寧に飲み込んでいく。
気が付けば、彼女の顔はエドルの左頬のすぐ傍まで迫っている。彼女の口からこぼれる、はぁっ・・・♥はぁっ・・・♥と言う熱い吐息がその耳をくすぐる。
『エドル様・・・♥エドル様ぁっ・・・♥どうかっ、どうかっ・・・♥』
レーネリアはさらに、ずい、と唇が耳に触れるほどのにまで近く顔を持ってくると、あの美しい鈴を転がした声からは想像できないような、淫靡で妖しい声色でゆっくりと囁く。
『私に・・・♥エドル様の精液を・・・♥啜らせてください・・・♥』
恥ずかしそうに無言で首を縦に振るエドルに、レーネリアは嬉しそうに口角を上げると、名残惜しそうに彼の左腕を放した。
レーネリアは彼の正面に居直ると、その膝に手を置き、ゆっくりと股を開けてゆく。そうして、その身を足と足の間に滑り込ませ、そっとズボンに手をかけた。
『脱がしてゆきますね・・・♥』
レーネリアはエドルの股間に顔を近づかせながら、ゆっくりと、下着ごと下ろして行く。
彼の猛々しくいきり立ったそれが、途中何度か引っかかりをみせながらもそれが止まることはない。
やがて、そのすっかりと勃起しきった男性器がレーネリアの顔の前に晒されると、そこからむわりと蒸れた熱気が立ち昇った。
『・・・あっ♥ああっ♥』
うっとりとした表情でレーネリアはその鼻を、その顔を、ゆっくりとエドルの勃起した男根へと近づけてゆく。
まだ近づく。
まだまだ、近づいていく。
まだ、まだ。まだまだ。まだまだまだまだ―
―ピトリ・・・♥
その顔にエドルの男根の根元が触れるまで近づいた所で、ようやく止まった。
『スンッ・・・♥スンッスンッ・・・♥スンスンッスンッ・・・♥』
その形の良い鼻を鳴らしながら、レーネリアは無心でエドルの男性器から迸る雄の臭いを肺へと吸い込む。
彼女の頭の触覚もしきりに、ピクッ・・・♥ピクピクピクッ・・・♥と細かく動いている。
男の精を感じ取ると言うその頭の触覚が、目の前の男性器から感じ取る濃厚な精の気配に敏感に反応し、レーネリアの脳の奥にある雌の部分をしきりに刺激しているのだろう。
近すぎる為に、頬ずりするような形で彼女の顔がゆっくりと裏筋を辿りながら亀頭へと向かう。
『嗚呼、エドル様のこれがっ・・・♥ドクンドクンと脈打っているのが伝わってきます・・・♥』
レーネリアの顔がエドルの亀頭に辿り着くと、ようやく彼女の顔に押し付ける形になっていた男根が離れる。
彼の亀頭の先からはすでに透明な先走りの汁が、その鈴口に溜まっていた。
そこに向かって、もう一度彼女の顔が、やはりゆっくりと近づく。その唇がそこに汁のたまった鈴口に密着すると、レーネリアは口をすぼめた。
―チュッ・・・♥チュルッ、チュルルルルルルルッ♥
「くっ・・・・ふっ・・・!」
その陰茎をまるでストローに見立てるように、その尿道に詰まった先走り汁まで啜り取ろうとする様はまるで、その根元にドロリと溜まった性欲まで根こそぎ啜り取ってしまわんとする魔物の精に対する貪欲さが見て取れた。
ようやく吸い取るのを止め、亀頭から顔を離したレーネリアが次に目をつけたのは、エドルの男根の少し下から熱を持ってだらりと垂れ下がる二つの睾丸だった。
彼女の両手は、エドルの左右それぞれのそれに伸びてゆく。
『ふふっ・・・♥エドル様のここ・・・♥こんなに重く、ズッシリっと実が詰まっています・・・♥それに、こんなに熱をもって・・・♥』
エドルの睾丸を、レーネリアは包み込むようにして握る。そして優しく、愛おしく、まるで労う様に甘く、二つの睾丸を揉み込み始めた。
『お疲れなのでしょうか・・・?ふふっ・・・♥こんなにコリコリと凝ってしまって・・・♥お可哀想です・・・♥待ってて下さいね・・・♥私が、レーネがっ・・・♥丁寧に・・・♥うんっと丁寧に・・・♥愛情を込めて、揉みほぐして差し上げますから・・・♥』
「レ、レーネっ・・・。くっ、くぅうう・・・・」
エドルの睾丸が、レーネリアの手で揉み込まれる。その中にみっちりと詰まった精子がより一層成熟するように。絶えず精子を作る睾丸を甘く優しく労わる様に。
力を入れて揉み込まれているというのに、人とは違う彼女の手の柔らかさと温もりが相まって、まるで二つの口にむしゃぶりつかれているような感覚だ。
雄を雄たらしめる、最も大事な部分を雌に愛情たっぷりに揉みほぐされ、エドルは自身の下半身が蕩けてなくなってしまいそうな程の快楽が、その背筋を昇り伝わってくる。次第にその男根の根元より上の下腹部に、ドロリとしたマグマの様な粘度のある熱が込み上げる。
「レ、レーネっ・・・、これ以上はっ・・・」
息を絶やしながらそう告げるエドルに、レーネは優しくその口角を上げて微笑みを作る。
『もう・・・出してしまいそうなのですね・・・♥分かりました・・・♥それでは―』
―いただきます・・・♥
そう言うや否や、睾丸の揉み込みを少し弱めると、レーネリアはその小さな口を広げ、エドルの男根をゆっくりと咥え込み始めた。
彼女の口腔に招き入れられた男根は、彼女のネットリとした舌と、グツグツと熱く、粘度が高くなってネバネバになった唾液に絡みつかれながらも、さらに奥へ、奥へと進んでいく。
『んぐっ・・・♥んぐぅ・・・♥』
彼女の口腔には、人のそれにあるような、骨の硬さがなく、あちこちの肉壁に擦り付きながら進むエドルの男根を、子をあやす母のように優しく、ぐにゅりと形を変えて受け入れる。
次第に彼の男根の、亀頭の先が、柔らかい肉壁の天井を抉りながら、レーネリアの細い喉の入り口にまでたどり着く。
やがて、形の良いレーネリアの顔が、無造作に伸びきり茂ったエドルの陰毛に密着する程までに深く咥え込んだ。
弱まっていた睾丸の揉み込みが、また、徐々に強くなっていく。それと同時に、口腔内の舌の絡みつきも激しさをまして行く。
「くっ・・・・ぅっ・・・おぉおっ・・・!!」
あまりの快楽に、思わず腰が引けてしまう。しかし、レーネリアの口に深く、あまりに深く咥え込まれてしまったエドルの男根はほとんど動かない。強く吸われている訳では無くとも、彼女の唇が、舌が、口腔が、喉が、あまりにねっちりと、みっちりとくわえ込んでいるからだ。
下腹部のドロリとした熱が、陰茎の根元をせり上がって行くのを感じる。その勢いは強く、最早止める術など無かった。
エドルの限界を察したレーネリアは、より一層強く彼の男根を咥え込み、吸い付くと、手の内にある睾丸を強く握り締めた
思わずレーネリアの頭を掴み、押さえ付けてしまうが、それまでも彼女の柔らかい身体は優しく受け入れてしまった。
―ギュッ♥ギュウゥゥゥゥウウウッ!!♥♥
「レ、レーネっ!!レーネっ!!!くっ・・・くぅぅぅぅぅぅぅぅううううううっ!!!!」
目の前がチカチカする程の強烈な快感。
彼女の狭い口腔の中で、絡め取られながらも怒張したそれが爆ぜ、荒れ狂い、細かく痙攣しながらも、彼女の中に勢い良く自身の精液が注ぎ込まれてゆくのを感じた。
長い、エドルの過ごしてきた人生の中で最も長い吐精。
『・・・っ♥・・・ぷはぁっ♥』
ようやくそれが終わった時には、快楽とその疲労感故にその場にへたり込んでしまった。
口から離れたエドルの男根の先端と、レーネリアの唇の間には細く白い糸が引いていた。
レーネリアはその糸を丁寧に舌で巻き取る。
『へほふはまぁ・・・♥あぁ〜〜・・・♥』
精液を口に溜めたままエドルの名を呼ぶと、レーネリアはその小さな口を広げ、そこに溜まった精液をまざまざと見せ付けてくる。
「っ!・・・レーネ・・・」
レーネリアの開いた小さな口から覗く舌の上には、ぷりぷりとした、最早ゼリー状になるまで濃く、濃縮された精液がたっぷりと、小さな口腔を満たすほどに盛られている。
あまりの卑猥な光景にエドルは思わず生唾を飲んでしまう。
その反応を見たレーネリアは、ずい、とエドルの目と鼻の先にまで顔を近づけると―
―ぐちゅ♥ぐちゅぐちゅっ♥ぐちゅちゅちゅちゅっ・・・♥
わざとエドルに聞こえるように音を立てながら、ゆっくりと咀嚼し始めたのだ。
流石に行儀が悪すぎるからと思ったのか、上品に口元を手で隠してはいるが、その手の向こうから容赦なくエドルの精液の咀嚼音が聞こえてくる。
"貴方の精液を、こんなにも愛おしく啜る雌がここに居ますよ・・・♥"と言う、雌による雄への強烈すぎるアピール。
その強烈な光景に、エドルは想像してしまう。自身の放った精液が彼女の中でどのように愛されるかを。
彼女が唇を閉じることにより逃げ場を失った彼の無数の精子達は、そのゆっくりとした愛情のこもった咀嚼により一つ一つ噛みほぐされ、彼女のあの粘ついた唾液によって纏わりつかれた後に、彼女の舌に絡みつかれ、その舌の上で一匹一匹その感触を楽しみ味わられた後、遂にはその喉へと―
―『ゴクリ・・・♥ご馳走様でした・・・♥』
嚥下されてしまった精子たちは彼女の血肉の一部となり、取り込まれてしまうのだ。
エドルの射精を終え、だらりとしてしまったそれをいやらしく撫で回しながらレーネリアは告げてくる。
『エドル様の精液・・・♥とても甘美で、濃厚で・・・・そして愛おしかったです・・・♥』
彼の精液の味わいを。どう舌先で味わったかを。口の中でどう愛してあげたかを。それらを事細かにエドルに伝えてくる。
それらの言葉を聞いてる内に、またもエドルのそれが硬く、剛直な物へとなっていく。
『エドル様・・・♥今度はこちらへ来てください・・・♥』
彼女の、ウミウシやナメクジで言う腹足にあたる部分の裏に、奥まった場所にある彼女の秘所をあらわにする。
エドルは誘われるままレーネリアに覆いかぶさる。
―愛し合いながら二人の夜は更けてゆく。
『あっ♥ああっ♥エドル様っ♥エドル様ぁっ♥・・・また出会う事があったならば、んっ♥愛して下さいますかっ?♥ああっ♥・・・抱いて下さりますかっ?♥』
レーネリアの切なそうな問いかけに、エドルも答える。
「ああ、勿論だっ・・・はっ!はあっ!レーネっ!レーネっ!何度でも、何度でもっ!」
―夜明けを迎えるまで、その洞窟には二人の雄と雌が激しく愛し合う音が木霊していた。
―
――
―――
―漁村ポートリアに再び雨季が訪れる。
雨の中にも関わらず、構えられた露店の前を一人の青年が走っていた。
その青年は一つの露店の前に止まると、息も整えぬ内に店主を呼ぶ。
「はぁ、はぁ、・・・・じいさん!アレは!?」
「挨拶も無しか、こいつは」
「頼んでたものが来たんだろう?」
「急かすな急かすな・・・ほれ」
そう言うと、なんとも老獪そうな老人は横の大きな皮袋から、一つの木箱を取り出した。
「見せてくれ!」
「その前に金じゃ」
すこし汗で濡れた代金を手渡すと、青年は半ば奪い取るような形でそれを手にし、箱を開ける。
「ワイングラスとはなぁ・・・一時は本の虫だったお前さんも、やはり漁師の倅か・・・カカカッ」
青年はそこから出てきた二つの上品なワイングラスを確認し、大事にしまうと走り去ろうとする。
「待て待て、ついでに酒も買っていかんのか?」
その老人の言葉に、青年は顔だけをそちらにやり、答えた。
「酒は向こうが用意してくれてるんでね・・・」
そういうや否や、青年は走り去ってしまった。
夜。日の暮れても雨は未だに降り止まず、肌に纏わりつくような湿気が立ち込めている。
漁村ポートランドからしばらく離れたとある洞窟に木箱を持って入っていく。半身が海水に浸かってしまおうと気にしていないようだ。
「―こんばんは。レーネリア。また来たよ」
その言葉に、そこに居た一つの影が答える。
『エドル様・・・お久しぶりですね・・・。それではまた―』
―晩酌を始めましょう・・・♥
FIN
呆然と黙りこけるエドルに痺れを切らしたのだろうか、沈黙を先に破ったのは彼女の方だった。
『ええと・・・、御身体の方はどうでしょうか?』
彼女の身体の一部分がひらひらと風に靡くように揺れながら、そう聞いてくる。
やはり美しい声をしているが、人のそれと響き方が違うのは身体の構造の違い故だろうか。
「あ―、ああ、だるさと寒気がすごいな・・・。大丈夫とは言えない・・・かも知れない」
ようやく舌が動いてくれたエドルは、必死に言葉を紡ぐ。人生で初の魔物との対話。
その胸中にあるのは驚愕と感動の混ざったものであり、意外なことに恐怖は弱かった。
トリトニアが凶暴な種では無いことを本の中の知識により知り得たから、と言うのが大きいのかもしれない。
「貴方が、助けてくれたのだろうか?だとしたら有り難う」
その言葉と同時に頭を下げる。
『ああ!そんな!・・・頭をお上げてください』
あわあわとしながらそう答えるトリトニア。
『ですが、本当に良かった・・・。貴方を見つけた時は本当に驚いたものですから・・・』
曰く、彼女はとある用事で海岸へと赴いていたらしい。その途中、気を失い海の底へと沈み行くエドルの姿を見つけたとの事。
そこから始まる悪戦苦闘。
なにせ彼女は背負えない。その背にある触手はあらゆる物に容赦なく絡みつく、トリトニアと言う種が生まれ持つ自動防衛装置。一説では魔物の中では比較的穏やかで動きが緩慢な彼女達が進化の過程で外敵から身を守るために発達させたらしいが、その目的が元は不随意での敵の撃退と言う物だけあって、その動きに関しては彼女の意志の外にあるのだ。
そんな自身の触手にエドルを曝すのは不味いと、彼女は一心不乱に身体をはためかせながら彼の元に向かうと、その身体を抱きかかえる形で必死に近くの洞窟まで運んでくれたらしい。
辺りを見回すと、どうやら自分が足を滑らせた洞窟とはまた違う場所らしい。洞窟の口は半ば海へと沈んでおり、そこ以外に外界と繋がっているのは岩の天井に走る割れ目くらいの物だ。その割れ目の間から、今も雨と水滴が滴り落ちている。
彼女の方へ視線を戻し、その姿をもう一度見てみると、その美しいガラス細工のような透明感のある身体のあちこちに細かな砂や、海泥の汚れが見て取れた。
本当なら人目のある場所へ運んだほうが良いとは思ったのですが、多くの人目に我が身を晒すのは怖かったのです、と最後にそう付け加える彼女の言葉にエドルの胸中に熱いものがこみ上げてくる。
「・・・そう言えば、まだ名前を言っていなかったな。俺の名前はエドル。その、良ければ、貴方の名前を教えてもらえないだろうか?」
目の前の彼女が貴婦人を思わせる姿をしているからだろうか。エドルはらしくないと自身で思いつつも、出来る限りの丁寧な言葉を紡ぐ。
『エドル様・・・とおっしゃるのですね・・・。私の名前はレーネリアと言います。気軽にレーネと呼んでください』
「あ、ああ。じゃあ、レーネ」
名前を呼んだだけだと言うのにエドルはたまらず目を逸らしてしまう。
実際、エドルの女性と接する経験が乏しい訳ではない。その粗暴そうな印象を与えかねないが、逞しい身体にその相貌も相まってポートリアに住む女性達からは人気があると言っていいだろう。しかし、ポートリアの女性は簡単に言うと野性味溢れるタイプであり、そのためエドルには目の前に佇むレーネリアのような可憐、上品と言った言葉が似合う女性に対しての免疫が無いのだ。
『あの・・・、エドル様?先程から身を擦っていらっしゃいますが、それほどまでに寒気が・・・』
「ああ、ひどくてな。その上、濡れた身体にこの気温は少々堪える」
どうやら既に陽は暮れてしまっているらしく、岩の天井の割れ目から覗く空模様は依然として暗いままだが、エドルが家を出た際のものよりも一層暗い色になっていた。
『身が冷えるのは大変でしょう・・・。そうだ、良い物がありますよ』
レーネリアのその黄玉色の触覚がピコピコと震える。こうして見ると犬猫の耳のように見えてとても可愛らしい。
洞窟内に転がる幾つかの大岩の一つへと向かうと、彼女はその岩の影から一つのガラスのボトルを取り出し、こちらへ持ってきた。
『あの・・・、これは魔界の葡萄で作った赤ワインでして・・・。その、実はこれを飲む為に陸の方へと来てたのです・・・』
悪い事をしてる訳ではないのに、恥ずかしさ故かレーネリアの声は次第にか細くなり、最後の方は波の音に消え入りそうなほど小さい。
赤ワインは多少ではあるが、身体を温めると聞いたことがある。だが、気になるのは何故わざわざワインを飲む為だけに本来海中にて暮らすレーネリアが陸へ上がろうとするのだろうか。
その疑問は瞬く間に氷解した。そもそもどうやって水中で酒を飲むというのか。
「せっかく陸に上がってきても、今は雨季で景色も悪い。おまけに俺のような漂流物を世話する羽目になるわで、その、大変だな」
『私達の肌にはこの雨季の空気のほうが心地よいのですよ。それに・・・、その大変さのお陰で晩酌相手を得られたわけですし・・・』
そういってボトルのコルクを摘んで引き抜こうとするレーネリア。だがしかし、そのか細く柔らかい指先で抜けるはずも無く。
『・・・えい。あれ?・・・えい。あれれ?・・・どうしましょう、抜けません』
「コルク抜きは持ってないのか?」
コルク抜き?、とレーネリアは小さく呟くと、
『・・・その、お恥ずかしながら、初めて手に入れた物でして・・・・』
しおしおと彼女の触覚がうな垂れてしまう。
その落ち込みように慌ててフォローに入る。
「ま、まあ、それが無くても開ける方法はあるんだが、味が落ちるんだよな・・・・。あ、そうだ」
そういってエドルは家を出る際に腰に巻きつけた革のポーチの中を探る。
中にはナイフや少し短めのロープなどが入っていた。もう一枚の革を縫い付ける形で作られたポケットの中からエドルは三叉に分かれた物を取り出した。小型の銛の穂先である。万が一の代えにと、ずっとそのポケットの中に入れていたのを思い出したのだ。
レーネリアからボトルを受け取ると、その口を塞ぐコルクに返しの付いた穂先の先端を突き刺す。
ある程度の深さにまで刺さった所で掬い上げる形で力を入れる。ミリミリと力に耐えかねた穂先が曲がってしまうが、気にせずそのまま力を込め続けると、きゅぽんっと言う小気味の良い音と共にコルクが抜けた。
コルクが抜けるや否や、そのボトルの口からなんとも濃厚な芳香が漂い始める。なにより特徴的なのはその甘そうな香りだろうか。今まで幾つかの種類の赤ワインを飲んで来たエドルをしても嗅いだ事の無い程強い。
「ほら、抜けたぞ」
そう言ってレーネリアの方えと視線をやると、その手には二つに割った手の平に収まるサイズの貝殻があり、その内の一枚をこちらに差し出してきた。
『コップを用意できなかったもので・・・』
「ははっ。これはこれで風情があって良いな」
白色の小さな皿のように広いそれを受け取ると、自身と彼女の物へワインを注いでゆく。
鮮やかな赤、いやここまで来ると紅色だろうか。先程よりも濃く、嗅いだだけで陶酔感を得られそうな香りが二人の空間に立ち込める。
『本当に良い香り・・・。なんだかこの香りだけで満足出来そうです・・・』
「あぁ、本当にな。・・・よし、注いだぞ。それでは―」
エドルが並々ワインの注がれた貝殻を彼女の方へ伸ばすと、レーネリアも遠慮がちに伸ばしてくる。
初めてワインを飲むと言う彼女も、なんとなくその意図を汲み取ってくれたらしい。
コツン、と二人の貝殻が小さく触れ合った。
「乾杯」
『か、乾杯』
貝殻に満たされたそれを遠慮なく口に流し込む。すると、アルコールと共にその濃厚な芳香が喉の奥をのぼり、鼻腔を満たしていく。
味わいもその芳香に負けず劣らず濃厚であり、口当たりは少しトロリとしていた。紛うことなき美酒。
エドルは幾度か舌で口に満ちたそれを転がし、味と香りを楽しみ、ごくりと飲み下した。
強い酒を飲んだ時のような、胃がカッとなるような強烈な物ではなく、心から温まるような心地の良い感覚が身体全体へと広がってゆく。
『・・・美味しい』
見れば、レーネリアも気に入ったのか、その小さな両手で貝殻を持ちコクコクと飲んでいる。
そのか細い喉を小さく鳴らしながら飲み下す姿がエドルの目にやけに艶かしく映る。
「ああ、本当に美味しい」
まだ一杯。それも、底の浅い皿のような貝殻に注がれた一杯だというのに何という充足感だろうか。
先程までエドルの身体に纏わり付いていた肌を刺すような寒気は綺麗さっぱり拭い去られ、彼の身体には心地よい陶酔感が満ち満ちていた。
レーネリアの方を見ると、彼女の肌色故に上気しているのかは判別が付かないが、気持ちよさそうに身体をふわふわと揺らめかせている。
(嗚呼、それにしても―)
―なんと美しい身体なのだろうか。
無意識の内にエドルはもたれるようにして触れた彼女の身体の柔らかさと温もりに思いを巡らせる。
どこまでも沈みこんでいくような、それでいて何もかもを包み込んでくれそうな柔らかさ。そしてそこに確かに感じた彼女の温もり。
―もし、もしも。彼女のその身体を抱く事が出来たならば。
―あの柔らかい身体に身を沈め、あの小さな口に己の赤い舌を捻じ込み、彼女の舌を味わえたとしたならば。
―それは今飲んでいるこの美酒にも劣らない程の甘露なのではないか。
そんな考えが脳裏をよぎる。
(阿呆か俺は。彼女は命の恩人だぞ。いくらなんでも・・・)
『エドル様・・・』
不意に近くで呼ばれた声に驚くと、うっとりとした様子のレーネリアがエドルのすぐ傍まで来ていた。
足音のない彼女の移動に全く気が付かなかった。しかし、問題はそこではない。
ここまで近寄られると、否が応にも彼の視界に彼女の豊満な双丘が飛び込んでくる。それだけではない。彼女の息遣いも意識がいってしまい、先程まで彼女で下種な妄想をしてしまったエドルにはたまらなかった。
「すまない、すこし離れ―」
『やはり、とても逞しい・・・♥』
―ヌチュリ
エドルの言葉を遮る様にレーネリアの右手が、その短い袖から剥き出しになっている左の二の腕に触れる。
『嗚呼、こんなに筋肉質で・・・、私達にはない硬さ、逞しさを感じます・・・♥』
酔っ払っているのだろうか。うっとりと愛おしそうに囁くレーネリアに、エドルは背筋がゾクリと為るほどの淫猥さを感じた。
酒が入り先程よりも温もりをもった彼女の手の平はゆっくりとエドルの腕を辿って行く。
彼女の肌の持つ独特なぬめりも相まって、まるでナメクジのようだ。
遂には、彼女の空いた左手も伸びて来て、エドルの左の手の平に纏わりつき、指を絡めてくる。
そうして、そのままエドルの左腕を自身の方へ引き寄せると―
―ヌプッ・・・♥・・・ヌプヌプッ♥ヌプププッッ♥
そのままその豊満な体へ、抱き込むように沈め込み始めたのだ。
レーネリアの身体へ沈んでいく左腕からは、自身の妄想で思い描いた以上の温もりと柔らかさが、ネットリと伝わってくる。
彼女の豊満な双丘もエドルの左腕に形を潰されながらも、その存在をアピールしてくる。
「レ、レーネ・・・っ!?これはっ」
『エドル様・・・♥こんな・・・はしたないっ♥はしたないと、分かっているのですが・・・♥貴方を運んだ際に、抱きかかえた時のっ、感触がずっと・・・っ♥頭の中でっ・・・♥』
熱い息を溢しながら答えるレーネリアに、エドルの視線はワインの入ったボトルへと向かう。
(―まさか!?)
そう。彼女は"魔界の葡萄で作った赤ワイン"と言ったが、"魔界の葡萄"とは即ち魔界の森林に成るとされる"陶酔の果実"の事である。
魔界の葡萄と呼称されるだけに、葡萄のように、一房に幾つもの実をつける。魔界の大地より吸い上げた魔力を濃縮したそれは、滋養もよく味わいも上品。葡萄と異なる点は、房の下に行くほど魔力の濃縮度が高く、房の先端には決まってハート型の実が付くのだと言う。
これより作られるワインは交わりの前に飲む"交前酒"として流通していた。
エドルと違い、レーネリアは魔物。恐らくワインに濃縮された魔力に感受性がエドルよりも遥かに高いのだろう。
彼でさえ、たった一杯のワインで下種な妄想が止まらなかったのだ。彼女の脳内では、いや、今の彼女の目には、一体エドルがどのように映っているのかは想像に難くなかった。
「くぅっ・・・!」
レーネリアの身体の、ひらひらとした揺れるような動きが、こんどは打って変わって吸い付くようなものに変わり、エドルの腕を優しく丁寧に飲み込んでいく。
気が付けば、彼女の顔はエドルの左頬のすぐ傍まで迫っている。彼女の口からこぼれる、はぁっ・・・♥はぁっ・・・♥と言う熱い吐息がその耳をくすぐる。
『エドル様・・・♥エドル様ぁっ・・・♥どうかっ、どうかっ・・・♥』
レーネリアはさらに、ずい、と唇が耳に触れるほどのにまで近く顔を持ってくると、あの美しい鈴を転がした声からは想像できないような、淫靡で妖しい声色でゆっくりと囁く。
『私に・・・♥エドル様の精液を・・・♥啜らせてください・・・♥』
恥ずかしそうに無言で首を縦に振るエドルに、レーネリアは嬉しそうに口角を上げると、名残惜しそうに彼の左腕を放した。
レーネリアは彼の正面に居直ると、その膝に手を置き、ゆっくりと股を開けてゆく。そうして、その身を足と足の間に滑り込ませ、そっとズボンに手をかけた。
『脱がしてゆきますね・・・♥』
レーネリアはエドルの股間に顔を近づかせながら、ゆっくりと、下着ごと下ろして行く。
彼の猛々しくいきり立ったそれが、途中何度か引っかかりをみせながらもそれが止まることはない。
やがて、そのすっかりと勃起しきった男性器がレーネリアの顔の前に晒されると、そこからむわりと蒸れた熱気が立ち昇った。
『・・・あっ♥ああっ♥』
うっとりとした表情でレーネリアはその鼻を、その顔を、ゆっくりとエドルの勃起した男根へと近づけてゆく。
まだ近づく。
まだまだ、近づいていく。
まだ、まだ。まだまだ。まだまだまだまだ―
―ピトリ・・・♥
その顔にエドルの男根の根元が触れるまで近づいた所で、ようやく止まった。
『スンッ・・・♥スンッスンッ・・・♥スンスンッスンッ・・・♥』
その形の良い鼻を鳴らしながら、レーネリアは無心でエドルの男性器から迸る雄の臭いを肺へと吸い込む。
彼女の頭の触覚もしきりに、ピクッ・・・♥ピクピクピクッ・・・♥と細かく動いている。
男の精を感じ取ると言うその頭の触覚が、目の前の男性器から感じ取る濃厚な精の気配に敏感に反応し、レーネリアの脳の奥にある雌の部分をしきりに刺激しているのだろう。
近すぎる為に、頬ずりするような形で彼女の顔がゆっくりと裏筋を辿りながら亀頭へと向かう。
『嗚呼、エドル様のこれがっ・・・♥ドクンドクンと脈打っているのが伝わってきます・・・♥』
レーネリアの顔がエドルの亀頭に辿り着くと、ようやく彼女の顔に押し付ける形になっていた男根が離れる。
彼の亀頭の先からはすでに透明な先走りの汁が、その鈴口に溜まっていた。
そこに向かって、もう一度彼女の顔が、やはりゆっくりと近づく。その唇がそこに汁のたまった鈴口に密着すると、レーネリアは口をすぼめた。
―チュッ・・・♥チュルッ、チュルルルルルルルッ♥
「くっ・・・・ふっ・・・!」
その陰茎をまるでストローに見立てるように、その尿道に詰まった先走り汁まで啜り取ろうとする様はまるで、その根元にドロリと溜まった性欲まで根こそぎ啜り取ってしまわんとする魔物の精に対する貪欲さが見て取れた。
ようやく吸い取るのを止め、亀頭から顔を離したレーネリアが次に目をつけたのは、エドルの男根の少し下から熱を持ってだらりと垂れ下がる二つの睾丸だった。
彼女の両手は、エドルの左右それぞれのそれに伸びてゆく。
『ふふっ・・・♥エドル様のここ・・・♥こんなに重く、ズッシリっと実が詰まっています・・・♥それに、こんなに熱をもって・・・♥』
エドルの睾丸を、レーネリアは包み込むようにして握る。そして優しく、愛おしく、まるで労う様に甘く、二つの睾丸を揉み込み始めた。
『お疲れなのでしょうか・・・?ふふっ・・・♥こんなにコリコリと凝ってしまって・・・♥お可哀想です・・・♥待ってて下さいね・・・♥私が、レーネがっ・・・♥丁寧に・・・♥うんっと丁寧に・・・♥愛情を込めて、揉みほぐして差し上げますから・・・♥』
「レ、レーネっ・・・。くっ、くぅうう・・・・」
エドルの睾丸が、レーネリアの手で揉み込まれる。その中にみっちりと詰まった精子がより一層成熟するように。絶えず精子を作る睾丸を甘く優しく労わる様に。
力を入れて揉み込まれているというのに、人とは違う彼女の手の柔らかさと温もりが相まって、まるで二つの口にむしゃぶりつかれているような感覚だ。
雄を雄たらしめる、最も大事な部分を雌に愛情たっぷりに揉みほぐされ、エドルは自身の下半身が蕩けてなくなってしまいそうな程の快楽が、その背筋を昇り伝わってくる。次第にその男根の根元より上の下腹部に、ドロリとしたマグマの様な粘度のある熱が込み上げる。
「レ、レーネっ・・・、これ以上はっ・・・」
息を絶やしながらそう告げるエドルに、レーネは優しくその口角を上げて微笑みを作る。
『もう・・・出してしまいそうなのですね・・・♥分かりました・・・♥それでは―』
―いただきます・・・♥
そう言うや否や、睾丸の揉み込みを少し弱めると、レーネリアはその小さな口を広げ、エドルの男根をゆっくりと咥え込み始めた。
彼女の口腔に招き入れられた男根は、彼女のネットリとした舌と、グツグツと熱く、粘度が高くなってネバネバになった唾液に絡みつかれながらも、さらに奥へ、奥へと進んでいく。
『んぐっ・・・♥んぐぅ・・・♥』
彼女の口腔には、人のそれにあるような、骨の硬さがなく、あちこちの肉壁に擦り付きながら進むエドルの男根を、子をあやす母のように優しく、ぐにゅりと形を変えて受け入れる。
次第に彼の男根の、亀頭の先が、柔らかい肉壁の天井を抉りながら、レーネリアの細い喉の入り口にまでたどり着く。
やがて、形の良いレーネリアの顔が、無造作に伸びきり茂ったエドルの陰毛に密着する程までに深く咥え込んだ。
弱まっていた睾丸の揉み込みが、また、徐々に強くなっていく。それと同時に、口腔内の舌の絡みつきも激しさをまして行く。
「くっ・・・・ぅっ・・・おぉおっ・・・!!」
あまりの快楽に、思わず腰が引けてしまう。しかし、レーネリアの口に深く、あまりに深く咥え込まれてしまったエドルの男根はほとんど動かない。強く吸われている訳では無くとも、彼女の唇が、舌が、口腔が、喉が、あまりにねっちりと、みっちりとくわえ込んでいるからだ。
下腹部のドロリとした熱が、陰茎の根元をせり上がって行くのを感じる。その勢いは強く、最早止める術など無かった。
エドルの限界を察したレーネリアは、より一層強く彼の男根を咥え込み、吸い付くと、手の内にある睾丸を強く握り締めた
思わずレーネリアの頭を掴み、押さえ付けてしまうが、それまでも彼女の柔らかい身体は優しく受け入れてしまった。
―ギュッ♥ギュウゥゥゥゥウウウッ!!♥♥
「レ、レーネっ!!レーネっ!!!くっ・・・くぅぅぅぅぅぅぅぅううううううっ!!!!」
目の前がチカチカする程の強烈な快感。
彼女の狭い口腔の中で、絡め取られながらも怒張したそれが爆ぜ、荒れ狂い、細かく痙攣しながらも、彼女の中に勢い良く自身の精液が注ぎ込まれてゆくのを感じた。
長い、エドルの過ごしてきた人生の中で最も長い吐精。
『・・・っ♥・・・ぷはぁっ♥』
ようやくそれが終わった時には、快楽とその疲労感故にその場にへたり込んでしまった。
口から離れたエドルの男根の先端と、レーネリアの唇の間には細く白い糸が引いていた。
レーネリアはその糸を丁寧に舌で巻き取る。
『へほふはまぁ・・・♥あぁ〜〜・・・♥』
精液を口に溜めたままエドルの名を呼ぶと、レーネリアはその小さな口を広げ、そこに溜まった精液をまざまざと見せ付けてくる。
「っ!・・・レーネ・・・」
レーネリアの開いた小さな口から覗く舌の上には、ぷりぷりとした、最早ゼリー状になるまで濃く、濃縮された精液がたっぷりと、小さな口腔を満たすほどに盛られている。
あまりの卑猥な光景にエドルは思わず生唾を飲んでしまう。
その反応を見たレーネリアは、ずい、とエドルの目と鼻の先にまで顔を近づけると―
―ぐちゅ♥ぐちゅぐちゅっ♥ぐちゅちゅちゅちゅっ・・・♥
わざとエドルに聞こえるように音を立てながら、ゆっくりと咀嚼し始めたのだ。
流石に行儀が悪すぎるからと思ったのか、上品に口元を手で隠してはいるが、その手の向こうから容赦なくエドルの精液の咀嚼音が聞こえてくる。
"貴方の精液を、こんなにも愛おしく啜る雌がここに居ますよ・・・♥"と言う、雌による雄への強烈すぎるアピール。
その強烈な光景に、エドルは想像してしまう。自身の放った精液が彼女の中でどのように愛されるかを。
彼女が唇を閉じることにより逃げ場を失った彼の無数の精子達は、そのゆっくりとした愛情のこもった咀嚼により一つ一つ噛みほぐされ、彼女のあの粘ついた唾液によって纏わりつかれた後に、彼女の舌に絡みつかれ、その舌の上で一匹一匹その感触を楽しみ味わられた後、遂にはその喉へと―
―『ゴクリ・・・♥ご馳走様でした・・・♥』
嚥下されてしまった精子たちは彼女の血肉の一部となり、取り込まれてしまうのだ。
エドルの射精を終え、だらりとしてしまったそれをいやらしく撫で回しながらレーネリアは告げてくる。
『エドル様の精液・・・♥とても甘美で、濃厚で・・・・そして愛おしかったです・・・♥』
彼の精液の味わいを。どう舌先で味わったかを。口の中でどう愛してあげたかを。それらを事細かにエドルに伝えてくる。
それらの言葉を聞いてる内に、またもエドルのそれが硬く、剛直な物へとなっていく。
『エドル様・・・♥今度はこちらへ来てください・・・♥』
彼女の、ウミウシやナメクジで言う腹足にあたる部分の裏に、奥まった場所にある彼女の秘所をあらわにする。
エドルは誘われるままレーネリアに覆いかぶさる。
―愛し合いながら二人の夜は更けてゆく。
『あっ♥ああっ♥エドル様っ♥エドル様ぁっ♥・・・また出会う事があったならば、んっ♥愛して下さいますかっ?♥ああっ♥・・・抱いて下さりますかっ?♥』
レーネリアの切なそうな問いかけに、エドルも答える。
「ああ、勿論だっ・・・はっ!はあっ!レーネっ!レーネっ!何度でも、何度でもっ!」
―夜明けを迎えるまで、その洞窟には二人の雄と雌が激しく愛し合う音が木霊していた。
―
――
―――
―漁村ポートリアに再び雨季が訪れる。
雨の中にも関わらず、構えられた露店の前を一人の青年が走っていた。
その青年は一つの露店の前に止まると、息も整えぬ内に店主を呼ぶ。
「はぁ、はぁ、・・・・じいさん!アレは!?」
「挨拶も無しか、こいつは」
「頼んでたものが来たんだろう?」
「急かすな急かすな・・・ほれ」
そう言うと、なんとも老獪そうな老人は横の大きな皮袋から、一つの木箱を取り出した。
「見せてくれ!」
「その前に金じゃ」
すこし汗で濡れた代金を手渡すと、青年は半ば奪い取るような形でそれを手にし、箱を開ける。
「ワイングラスとはなぁ・・・一時は本の虫だったお前さんも、やはり漁師の倅か・・・カカカッ」
青年はそこから出てきた二つの上品なワイングラスを確認し、大事にしまうと走り去ろうとする。
「待て待て、ついでに酒も買っていかんのか?」
その老人の言葉に、青年は顔だけをそちらにやり、答えた。
「酒は向こうが用意してくれてるんでね・・・」
そういうや否や、青年は走り去ってしまった。
夜。日の暮れても雨は未だに降り止まず、肌に纏わりつくような湿気が立ち込めている。
漁村ポートランドからしばらく離れたとある洞窟に木箱を持って入っていく。半身が海水に浸かってしまおうと気にしていないようだ。
「―こんばんは。レーネリア。また来たよ」
その言葉に、そこに居た一つの影が答える。
『エドル様・・・お久しぶりですね・・・。それではまた―』
―晩酌を始めましょう・・・♥
FIN
18/05/04 23:00更新 / 稚拙作生産マシーン
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