連載小説
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(18)コカトリス
山と山の合間の林を、一体の魔物が歩いていた。
白い羽毛で全身を覆った、鳥と人の間のような姿の魔物―コカトリスだ。
彼女の近辺に漂う微かな甘い香りは、彼女が独り身であることを示していた。
コカトリスは身に纏うフェロモンで男性を誘いつつ逃走し、足の速い者のみと番うのだ。しかし、未だ彼女が独り身であるという事実は、彼女が俊足であることを示していた。
「…?」
木々の間から、ふと彼女の鼻孔を何かがくすぐる。
人の匂い。それも、男性の匂いだった。
匂いが漂ってきたということは、彼女がいるのは風下だ。
木々の間から透かして見れば、微かに樹木や植物の色とは異なる何かが、森の向こうに見えた。
こっそりと風上に回れば、この匂いの主に自分のフェロモンを嗅がせるだろう。だが、フェロモンを嗅がせて興奮させたところで、相手は興奮するだろうか?
コカトリスは逡巡した。
正直なところ、人と出会うのは少し怖い。特に、フェロモンで興奮した相手など、彼女にとっては恐怖の対象でしかなかった。
やはり、ここはこっそりと離れることにしよう。
コカトリスはしばし黙考したところで、腹を決めた。
だが次の瞬間、彼女の背後から風が吹いた。ちょうど、風向きが真逆になったのだ。
すると、木々の間から見えていた人影が、びくりと動きを止めた。
そして直後、木々の間から覗く色が、匂いを辿るように草を掻き分けはじめた。
「!?」
突然動き出した男の気配に、コカトリスは驚愕した。
そして彼女の身体は、意志が命じるより先に動き出していた。
「っ!」
木々の間を、草木を掻き分けながら彼女は逃げていく。
コカトリスの種族としての本能に刻み込まれた、逃げるという行為。彼女の肉体は、両親譲りの俊足をいかんなく発揮し、見通しの悪い森の中だというのに平原と変わらぬ速度での逃走を可能とした。
しかしその一方で、彼女の背後から響く、枝葉を掻き分ける音と足音はなかなか遠ざからなかった。
いや、むしろ近づいているように、コカトリスには感じられた。
ちらり、と肩越しに背後を振り替えるが、木々の間に人間と思しき影は見えない。
だが、枝葉を揺らす音だけは、彼女の後ろから響いていた。
一体なぜ、と彼女の胸中に疑問が生じると同時に、不意に頭上から降り注ぐ日の光が遮られた。
顔を上げると、張り出した枝葉を背に、木々の間をコカトリスに向けて何かが躍り掛かってくるところだった。
枝葉を揺らす音は、彼女の背後ではなく彼女の斜め上方から響いていたのだ。
疑問が解決されると同時に、見上げる彼女に影がぶつかった。
影がコカトリスにしがみつき、一つの塊となりながら木々の間を転がった。
そして、影が彼女の上になったところで、二者の動きが止まった。
「ひ…!」
いつの間にか閉じていた目を開くと同時に、コカトリスの口から声が漏れる。
彼女の目に映ったのは、葉を透かして差し込む日の光を背にする、目をフェロモンによって血走らせた男の顔だったからだ。
酷く興奮しているらしく、彼は荒く呼吸を重ねている。
そして、彼はコカトリスの胸元に手を伸ばした。首から下げたスカーフがずらされ、その下の控えめな乳房が露になる。
「い、いや…!」
コカトリスの口から拒絶の言葉が溢れ出すが、それとは裏腹に彼女の心臓はとくんと高鳴った。まるで、淡い想いを抱いていた異性から好意をほのめかされたかのようにだ。
それもそのはず、コカトリスの肉体が、自身の足に追いついた男の精を求めているからだ。
しかし、彼女の臆病と言う精神は、フェロモンに中てられた男に対して恐怖を抱いていた。
脳髄の芯が冷えるような思いと、体の芯が熱くなるような感覚が、彼女の中に同居していた。
男の指が控えめな乳房を掴み、微かな痛みと胸の奥からむずがゆい快感が生じる。
「ひ…!」
コカトリスは恐怖に強張る体に生じた快感に、ひきつった声を漏らしながら、身体を震わせた。
恐怖の震えではない。快感と、これからに期待した肉体のわななきだった。
「はぁ、はぁ…!」
コカトリスのフェロモンによる興奮のせいか、樹木の上を枝から枝へと飛び移るでたらめな移動のせいか、彼の呼吸は乱れており、彼女の恐怖を煽る。
だが、男はコカトリスの抱く感情など気にも留めず、欲するまま乳房を揉みたてた。
指が食い込む鈍い痛みが、コカトリスの内側で快感に変わり、恐怖に固まる彼女の精神に染み入った。
だが、快感は彼女の硬直した意識を溶かすには及ばなかった。
「はぁ、はぁ…!」
男は乳房を揉む指を止め、コカトリスの下腹部に指を伸ばした。
きゅっと閉じられた両足を無理やり押し開き、白い羽毛を探る。すると、彼女の両脚の間が微かな湿り気を帯びていた。
男は、湿り気の導くまま羽毛を掻き分け、僅かに濡れた亀裂に指を押し込んだ。コカトリスの女陰は、男の指を咥え、隙間からとろりと粘り気を帯びた愛液を垂れ流した。
乳房の快感にまぎれていた、腹奥の疼きが男の指によって露になる。
「うぅ…」
固く食いしばっていたコカトリスの歯の間から、低いうめき声が漏れた。
男が強引にまさぐる股間の亀裂から滲む快感と、腹の奥まで指を入れて欲しいという想いが、彼女の身体を蝕んでいるからだ。
怖い怖い怖い。
目の前の男が怖い。荒々しく自分を苛む彼の手が怖い。こんなに怖いのに、じわじわと熱を帯びていく自分の身体が怖い。
コカトリスの意識は、目の前の恐怖に対して、ただひたすら硬直し、肉体の変化を拒絶しようとしていた。
だが、彼女の身体は触れる男の手に素直に悦び、素直に快感を生じさせた。
そして、たっぷりとコカトリスの女陰を掻き回したところで、男は指を引き抜いた。
コカトリスの脳裏に、一瞬何かがよぎり、その直後安堵感が芽生えた。
「…?」
彼女は自身の心の内によぎった感情を探ろうとしたが、その正体に思い至る前に、男が動いた。
自身のズボンに手を伸ばし、その内側から屹立を取り出したのだ。
「ひ…!」
膨れ上がり、ひくひくと脈打つ肉棒に、コカトリスの口から押し殺した悲鳴が漏れた。
同時に彼女の胸が高鳴り、股間から甘い疼きが全身へと広がっていく。
もはや彼女の肉体が、この赤黒く膨れ上がった亀頭を備え、全体に欠陥を浮かび上がらせた肉の棒を欲しているのは明らかだった。
しかし、彼女の精神は目の前のひくつく剛直に対して、怖気づいていた。こんな、硬く大きなものを胎内に入れるなんて。
そこまで考えたところで、はたとコカトリスは気が付いた。自分は今、何を恐れていた?
男?それともこの屹立?いや違う。このそそり立つ肉棒を、胎内に収めるという行為に対してだ。
彼女は、いつの間にか自分が、男に対する恐怖を失っていることを自覚した。
その瞬間、冷え切っていたはずの彼女の意識が、瞬間的に煮えた。
「っ!」
辺りに濃密に広がったコカトリスのフェロモンに、男の身体が揺らぐ。
だが、そのまま倒れ伏すわけでもなく、彼は数度頭を振ってから彼女の足の間に屹立を近づけた。
コカトリスの心臓が高鳴り、全身のこわばりが僅かに緩む。
そして、男の手の導くがままに彼女は両足を開き、屹立を亀裂の内側に受け入れた。
「…っ!」
腹の奥の圧迫感に、コカトリスは羽毛に覆われた全身を硬直させ、小さく声を漏らした。
女陰はしとどに濡れそぼっており、肉体も目にしていた肉棒を欲していたため、破瓜の痛みはほとんどなかった。
だがそれでも、未知の感覚は彼女の心の奥底に、微かなしこりを生じさせた。
男は、コカトリスの胎内に肉棒をゆっくりと鎮めると、その肉の感触を味わうように腰を揺すり始めた。
「あ、あ、あ…!」
コカトリスの口から、合間を挟みながら喘ぎ声が漏れる。
男に対する恐怖が薄れ、高位に対する恐怖感も消えた今、生じる快感を妨げるものは何もなかった。
男の一突きごとに、腹の奥の粘膜を屹立が擦り、抱え込んでいた疼きが薄れていく。
そして、代わりに彼女の奥底で興奮の炎が燃え上がっていった。
「あ、あ、あ…!」
「…!」
あえぐコカトリスに男が覆いかぶさり、唇を近づけてきた。
迫る男の顔に、一瞬コカトリスの喘ぎが止まる。だが、すぐに彼女は口を大きく開くと、自分から迫る男の唇に吸い付いた。
「ん、ん…!」
二人の唇の間から低いうめき声が漏れだし、コカトリスの柔らかな羽毛が男の身体を受け止める。
コカトリスの羽毛が男の全身を優しくくすぐり、男は生じる快感に体を震わせ、肉棒を脈打たせた。
そして、肉棒の脈動と膣肉の締め付けに、二人の快感と興奮は相互に高め合っていく。
やがて、二人の意識が高まり、ついにコカトリスの興奮が限界に達した。
「ん…!」
コカトリスが小さく声を漏らした瞬間、彼女の意識が白く弾けた。
絶頂感に膣壁が痙攣し、肉棒を細かく締め付ける。
急に増した圧迫感に、男が遅れて射精した。
「…!」
胎内に弾ける熱い粘液に、コカトリスは全身を震わせた。
そして、しばしの間をおいて、二人の絶頂が終わりを告げる。
「っはぁはぁはぁ…」
唇を離し、荒く息をつくコカトリス。彼女の瞳は虚空を見つめ、その全身は絶頂後の虚脱感にゆだねられていた。
だが、彼女のフェロモンに中てられた男は、いち早く射精の余韻から立ち直ると、再びゆっくりと腰を揺すり始めた。
「ん…」
膣壁を押し広げる肉棒の感触に、彼女は小さく声を漏らした。
目を男の顔に向けると、相変わらず彼は目を血走らせている。だが、コカトリスの内側に恐怖感は一片も残っていなかった。
何故ならこの男は、ようやく自分を捕まえた旦那様なのだから。
「ん…」
腹の奥から生じる甘い快感に声を漏らしながら、彼女はもう少しこの初夜を愉しむことを決めたのだった。
12/08/15 22:02更新 / 十二屋月蝕
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■作者メッセージ
コカトリスむーずーかーしーいー!!!
冒頭の逃走シーンで6KBぐらい書いたけど、「これは変化球ですか?」「はい変化球です」と言うやり取りにより断念。
残りを強姦からスタートした和姦に仕立て上げました。
難しかったよー。

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