デルエラさんについての一考察
魔王夫妻の第四女、デルエラ。
レスカティエなど、数多くの都市を魔界へと誘い、多くの人々を魔物に堕としていった。
魔王の意志に従い、魔物化を推し進める彼女の姿は、正統なるリリムのそれである。
しかし、魔王の娘達は今現在、数え切れぬほど産れているはずだが、数とは裏腹に魔界の拡大は遅々としている。一体なぜだろうか？
理由は簡単だ。多くのリリムが、伴侶を手に入れると同時に愛の巣にこもりきってしまうからだ。
これらの事実から、二つの可能性が浮かび上がる。
一つは、「デルエラは未だ独身である」。
もう一つは、「デルエラは既婚である」。
独身だと主張する者は、彼女の活発な活動が未だ伴侶を見つけていないためである、と陳述した。
既婚だと主張する者は、信頼できる文献の『彼女は伴侶を得ると引きこもるリリムには珍しく、精力的に活動している』という一節を証拠に掲げている。
独身だと主張する者は、「その一節は『リリムには珍しく、伴侶を得ることなく魔界化活動に勤しんでいる』と言う表現だ」と反論した。
既婚だと主張する者は、彼女の独特な外見は夫の要望によるものである、と声を上げた。
二つの派閥は、正に殴り合いをはじめんばかりであった。
そこで、このたび読者諸君に対し、それぞれの派閥の主張に耳を傾け、どちらが正しいか判じてもらいたいのである。
魔物化を推し進め、次から次に魔物に伴侶を作り出すデルエラ。
彼女の魅力に取りつかれた者たちの言葉に、耳を傾けてほしい。
１．デルエラさんは既婚だよ派
（１）デルエラさんは既婚で、元勇者の旦那様がいるよ派 の主張
デルエラさんには元勇者の旦那がいる、と言うのが我々の主張である。
理由は簡単だ。彼女のように精力的な活動をしていれば、自然と討伐を目的とした勇者が現れるだろう。
そんな勇者の一人と恋におち、生涯の伴侶とする。非常に簡潔で起こりうる未来ではないか。
そして、彼女の現在の活動から、さらに二つの事実が推測できる。
一つは、デルエラさんの旦那は妻の活動に理解がある、というものである。一度魔物に囲われた男性ならばわかると思うが、魔物の巣に囚われただ情交を続けるというのはなかなか辛いものがある。無論体力的な意味も含んでいるが、精神的にも辛い。
これは、自身が社会から隔絶されてしまったことに対する疎外感を由来とする、孤独が原因である。事実、魔物娘に囲い込まれ情交ばかりさせられる男性には、精神後退や反応減少などの症状が報告されている。
精を目的とする魔物娘には問題ないだろうが、伴侶との精神交流に幸福感を得る魔物娘にとっては意に沿わない結果となる。そのため、多くの魔物は伴侶に対しある程度の自由を与えている場合が多い。
これと同様の事例は魔物娘側でも報告されており、フェアリーなど一部の魔物と軟禁同然に生活していたら感情表現が乏しくなった、という事例もある。
つまり、男女共々相手を拘束しすぎるのはやめましょうね、と言うことだ。
そしてデルエラさんの旦那も、デルエラさんからあまり拘束されない代わりに、妻が自由お見合い業に勤しむことを認めているのだ。
相手の自由を認めているのは、相手に対する信頼の証。実に羨ましい夫婦である！
また、彼女の外見からも、旦那様の存在を証明することが出来る。ご存じのとおりデルエラさんの外見は、悪の女幹部然としたスタイルである。
これはおそらく、旦那様の趣味に合わせているものと考えられる。きっと、元勇者の旦那様と、
「うおー悪魔めー！倒すー！負けたー！犯されるー！」プレイ、あるいは、
「うおー勇者めー！倒すー！負けたー！お仕置きされるー！」プレイをしているものと考えられる。
そのため、プレイ時の興奮を煽るためにあのような悪役スタイルを取っているのだ。
我々の言いたいことをまとめると、ただ二つ。
旦那様とイチャイチャするデルエラさんを見たいということと、デルエラさんはかわいいなあ！
（２）デルエラさんは既婚だけど未亡人だよ派
我々の主張はただ一つ。デルエラさんには旦那さんがいたよ。ただこれだけだ。
デルエラさんの旦那の存在可能性については、先ほど主張してくれた派閥と同じである。
だが、我々と彼らの違いは、旦那さんの存在が過去形であったという一点だ。
確かに彼らの言うとおり、デルエラさんは旦那がいるにしては行動が自由すぎるきらいがある。
しかしこれも、旦那さんと既に死別しているとすれば、すべてが解決する。
旦那さんとの死別により、デルエラさんは自由を再び手にした。
しかし旦那さんへの愛情が深すぎたがゆえに、彼女は新たな旦那を見つけたりするのではなく、独身の魔物と男性を引き合わせるお見合い業に勤しむのだ。一度伴侶を手に入れ、共に時間を過ごす素晴らしさを知っているからこそ、他の姉妹とは異なり積極的に魔物に対するパートナーの紹介、つまりお見合いを行っていると考えられる。
ここで、人によっては旦那さんとの別離が単純に死別じゃなくてもいいじゃないか、という意見が出てくるだろう。もちろん、我々もその可能性は考慮した。
しかし、魔物娘と人間男性の別離の可能性は限りなく低く、仮にさまざまな要因によって別離したとしても、次の伴侶を探すだろう。だが彼女は伴侶を探していない。これは、彼女が伴侶を探す必要がない、もしくは探せないということを示している。愛し合った伴侶と死別してしまい、相手が不在にも拘らず愛情を抱え込んだままであるため、次なる伴侶を探すことができないのだ。
おそらく彼女の悪の女幹部然としたスタイルも、死別した旦那さんの趣味を残しているのだろう。あるいは、旦那さんとの別離の一因が自分にあるという事実を忘れないようにするための、自身への十字架なのかもしれない。
たとえば、旦那さんが首絞めプレイが大好きで、旦那さんが求めるがままに首を絞めていたら死んでしまったとか、そういう理由で死別してしまったのかもしれない。魔物娘は人間を傷つけられない、という制約があるという話もあるから、首絞めプレイを求められても応じられないデルエラさんに、旦那さんが自分で自分の首を絞めて死んでしまったのかもしれない。いずれにせよ、旦那さんの死に自分が関わってしまったから、自身の悪性を忘れぬようにするためあのようなスタイルを取っていると考えられる。
いずれにせよ、彼女は旦那さんを無くしてしまい、旦那さんのことが忘れきれないものの、伴侶と過ごす時間の素晴らしさを伝えるため、お見合い業に勤しんでいるということである。
我々の言いたいことは、二つ。
旦那さんの分まで、デルエラさんを幸せにしてやりたい。そして、デルエラさんはかわいいなあ！
（３）デルエラさんの旦那はショタだよ派
最初に言っておくが、我々の主張の証拠というものは存在しない。だが、その一方で一切否定しきるだけの材料も存在しない。
そのことを胸に、我々の主張を広い心で聞いてもらいたい。
我々もデルエラさんに伴侶が存在することについては、先の二人に同意する。
だが、我々と彼らの相違点は、デルエラさんの旦那が男と言うには未熟すぎる少年である、という点である。
伴侶が存在するにしては自由すぎる一方で、男に手を出して回るという訳ではないデルエラさんの行動について、先の二人は「旦那の自由を尊重している」、「旦那と死別している」などと主張してきた。
だが実際のところ、「旦那がまだ十分に成長しきっておらず、婚姻できるまで待っている」方がありうるのではないのだろうか。
デルエラさんが相思相愛となった相手は、正直人間同士ならば確実に犯罪レベルの少年で、身体的にも精神的にも十分に成熟するのを待つため、信頼できる所に置いているのだろう。
そして、お見合い業を通して、「ダーリンと結婚したら、あんなふうにかわいがってもらうんだから」とやる気を高めているのだ。
あの外見については、ダーリンが育つまでの間に別の男に言い寄られたりしないための防衛だろうと考えられる。また、お見合い業によって、言い寄ってくる男に対して、現在フリーの魔物娘を紹介することで、身を守っているとも考えられる。
いずれにせよ、デルエラさんがこのように自由にふるまっているのは、ダーリンを待つためと、我慢できずダーリンに手を出してしまうのを防ぐためである。
我々の言いたいことは、二つ。
ショタダーリンと手をつなぐデルエラさんを見たい＆デルエラさんはかわいいなあ！
２．デルエラさんは独身だよ派
（１）デルエラさんは自分のことよりも幸せな男女の顔を見るのが大好きな、お見合いおばさんだよ派
デルエラさんが、魔物化を通して男女の仲を取り持つ、いわゆるお見合いおばさんであることは皆が認めるところであろう。
事実、レスカティエに住む魔物と人間の夫婦にインタビューしたところ、デルエラさんをお見合いおばさんだと認め、かつ結婚式には仲人として出て欲しい、という意見が数多く見受けられた。
お見合いのセッティングをしたことのある方ならわかると思うが、実際自分の知る男女が自分をきっかけに付き合いを始め、めでたくゴールインする様子を見るのは実に楽しいものだ。お見合いをやたらと勧めてくるおばさんと言うのは、この快感にドハマリしてしまっているのだ。
デルエラさんの場合、もはやお見合いおばさん度は中毒の域に達し、レスカティエを丸ごと使ってのお見合いパーティを開催したりしているほどである。
これほどまでにお見合いと仲人の魅力にドハマリしているリリムが、旦那さんを手に入れてお見合いおばさんを引退するだろうか？答えは否である。
いずれデルエラさんも、旦那さんを手に入れてお見合いおばさんを引退するかもしれないが、少なくとも今ではないはず。
その証拠に、今デルエラさんのところに行って「好きです！」と言っても、「ふふ、ありがとう。告白されて光栄だけど、あなたのことを好いてる女の子がいるのよ。ちょっと話だけでもしてみない？」と女の子を紹介されるはずである。このように自身に向けられる好意に対して、柳のように躱してカップル成立に力を注ぐ彼女が既婚であるだろうか？
つまり、我々の言いたいことは二つ。
お見合いおばさんお世話になりました、嫁をありがとう！そしてデルエラさんかわいい！
（２）デルエラさんは想い人を取られてしまったから、片思いの女の子を見るとじっとしていられない優しいお見合いおばさんだよ派
デルエラさんが非常に心優しく、カップル成立のために尽力するお見合いおばさんであることについては周知の事実である。
我々は、なぜ彼女がこのようにお見合い業務に固執するお見合いおばさんになったのか、と言うことについて着目した。
彼女が婿探しではなく、お見合い業に勤しんでいる理由については、「お見合い業の快感に憑りつかれている」「すでに夫がいるから婿探しの必要がない」など、さまざまな方向で論じられてきた。
だが、「夫がいるならなぜいちゃつかない？」「夫がいないならなぜ探さない？」という二つの疑問に対し、同時に解答を示すことは難しい。そこで我々は、「デルエラさんにはかつて想い人がいたが、別の誰かに取られてしまった」という主張を行いたい。心優しい彼女は、城のサキュバスメイドに取られてしまった想い人を取り返すわけでもなく、二人の門出を祝い、思いを胸に生き続けているのだ。そして、自分のような思いをするものが一人でも減るよう、彼女はお見合い業に勤しんでいるのだ。
ここで重要なのは、想い人を取られたといっても寝取られたわけではなく、プラトニックな片思いをしていたらいつの間にか別の人と一緒になっていた、という点である。寝取り寝取られは興奮するが、後からなんというか落ち込むので、できればやめてもらいたい。
とにかく、デルエラさんは想い人が別の人とゴールインしてしまったため、彼の幸せを祈りつつ、お見合い業務を通して想いを成就させた女の子の笑顔で、自分の傷を癒しているのだ。
そして彼女の傷は未だ癒えきっておらず、仮に「好きです！！」と告白しても、いくらかの寂しさを孕んだ笑顔で、「ありがとう…でも、ごめんなさいね」と謝ってくるはずだ。
我々の言いたいことはただ二つ。
そんな彼女を陰から支えてあげたい＆デルエラさんかわいい！
（３）デルエラさんは奥手だから、自分の度胸付けるためにお見合いおばさんやってるんだよ派
一応私はデルエラさんは未婚だよ派に所属しているが、この場にいる全員に対して一言物申したい。
諸君らのデルエラさんは積極的すぎる！
先ほどから「何故旦那探しをしないの？」「何故お見合い業に精を出してるの？」などという疑問に、屁理屈をこねてもっともらしい理由を付けてもらっているが、私から見ればチャンチャラおかしいちゃんちきおけさだ。「デルエラさんは奥手だから」の一言ですべては片付く。
デルエラさんは奥手だから、旦那さんとのゴールインはまだ早いと考えて、婿探しをしていないのだ。
デルエラさんは奥手だから、少しでも恋愛に対して耐性と度胸を付けるため、魔物化を推し進めてお見合いを通じたカップル成立を経験し、自分の番に備えているのだ。
そして、奥手でシャイなデルエラさんは、きっといざ「好きです！！！」と告白されたら表面上は冷静だが内心テンパリまくって、とっさに「ごめんなさいねでもおわびにというわけじゃないけどあなたを好きって娘がいるからその娘と会ってみて」と早口で応じてしまい、後で後悔しつつもお見合い手帳（彼氏募集中、もしくは特定の男性のリクエスト出してる魔物の名前を記録したもの）から、適切な娘さんを探すのである。
勿論あの外見も、奥手気味のヘタレ処女という本当の姿を隠すものではなく、「自分を変えなきゃいけない！でも内面をいきなり変えるのは無理だから、まずは外見から！」という思想に基づいて作り上げられた、ある種のコスプレである。
だからきっと、「デルエラさんかわいい！」を連呼すれば徐々に目が泳ぎはじめ、テンパリだし、やがて地が出てくるはずである。
そうなればもうこちらの物。奥手ヘタレ処女の地金を晒す悪の女幹部的外見のデルエラさんを取り囲み、しばらくの間「デルエラさんかわいい！」と「デルエラさんとデートしたい！」を連呼し、半泣きのデルエラさん本人を胴上げしながら連れ回したい。
私の言いたいことはただ二つ。
実は奥手でヘタレ処女でありながらも変わろうと努力するデルエラさんかわいい！そしてデルエラさんかわいい！
３．合意と妥協と融和
全員の主張を統合した結果、デルエラさんは未婚のヘタレ処女だけど旦那が悪の女幹部プレイ好きの元勇者ショタで既に死別しており、他の女性にそんな思いをさせないためにお見合い業に勤しんでいる、と言うことが分かった。
正直、何の事だかわからないということが実情だ。
これはちょうど、どこかの諺にもある「箱の中のサイコロ」状態だ。
箱の中にサイコロを入れて揺すれば、箱のふたを開けてみるまでサイコロが何の目を出しているかは誰にもわからず、箱の中にはサイコロの全ての目が存在しているということである。
つまり、諸君がデルエラさんと直接接触して調査するまで、デルエラさんは既婚であり未婚であり、旦那はショタであり青年であり既に死別しており、想い人を失った傷を抱える女性であり必死に変わろうとしてる奥手のお嬢さんでもあるのだ。
デルエラさんが本当はどのような人物か。箱を開けてみるまで、さいころの目は分からないのである。
そして最後に、全員で一言言っておきたい。
デルエラさんかわいい！
レスカティエなど、数多くの都市を魔界へと誘い、多くの人々を魔物に堕としていった。
魔王の意志に従い、魔物化を推し進める彼女の姿は、正統なるリリムのそれである。
しかし、魔王の娘達は今現在、数え切れぬほど産れているはずだが、数とは裏腹に魔界の拡大は遅々としている。一体なぜだろうか？
理由は簡単だ。多くのリリムが、伴侶を手に入れると同時に愛の巣にこもりきってしまうからだ。
これらの事実から、二つの可能性が浮かび上がる。
一つは、「デルエラは未だ独身である」。
もう一つは、「デルエラは既婚である」。
独身だと主張する者は、彼女の活発な活動が未だ伴侶を見つけていないためである、と陳述した。
既婚だと主張する者は、信頼できる文献の『彼女は伴侶を得ると引きこもるリリムには珍しく、精力的に活動している』という一節を証拠に掲げている。
独身だと主張する者は、「その一節は『リリムには珍しく、伴侶を得ることなく魔界化活動に勤しんでいる』と言う表現だ」と反論した。
既婚だと主張する者は、彼女の独特な外見は夫の要望によるものである、と声を上げた。
二つの派閥は、正に殴り合いをはじめんばかりであった。
そこで、このたび読者諸君に対し、それぞれの派閥の主張に耳を傾け、どちらが正しいか判じてもらいたいのである。
魔物化を推し進め、次から次に魔物に伴侶を作り出すデルエラ。
彼女の魅力に取りつかれた者たちの言葉に、耳を傾けてほしい。
１．デルエラさんは既婚だよ派
（１）デルエラさんは既婚で、元勇者の旦那様がいるよ派 の主張
デルエラさんには元勇者の旦那がいる、と言うのが我々の主張である。
理由は簡単だ。彼女のように精力的な活動をしていれば、自然と討伐を目的とした勇者が現れるだろう。
そんな勇者の一人と恋におち、生涯の伴侶とする。非常に簡潔で起こりうる未来ではないか。
そして、彼女の現在の活動から、さらに二つの事実が推測できる。
一つは、デルエラさんの旦那は妻の活動に理解がある、というものである。一度魔物に囲われた男性ならばわかると思うが、魔物の巣に囚われただ情交を続けるというのはなかなか辛いものがある。無論体力的な意味も含んでいるが、精神的にも辛い。
これは、自身が社会から隔絶されてしまったことに対する疎外感を由来とする、孤独が原因である。事実、魔物娘に囲い込まれ情交ばかりさせられる男性には、精神後退や反応減少などの症状が報告されている。
精を目的とする魔物娘には問題ないだろうが、伴侶との精神交流に幸福感を得る魔物娘にとっては意に沿わない結果となる。そのため、多くの魔物は伴侶に対しある程度の自由を与えている場合が多い。
これと同様の事例は魔物娘側でも報告されており、フェアリーなど一部の魔物と軟禁同然に生活していたら感情表現が乏しくなった、という事例もある。
つまり、男女共々相手を拘束しすぎるのはやめましょうね、と言うことだ。
そしてデルエラさんの旦那も、デルエラさんからあまり拘束されない代わりに、妻が自由お見合い業に勤しむことを認めているのだ。
相手の自由を認めているのは、相手に対する信頼の証。実に羨ましい夫婦である！
また、彼女の外見からも、旦那様の存在を証明することが出来る。ご存じのとおりデルエラさんの外見は、悪の女幹部然としたスタイルである。
これはおそらく、旦那様の趣味に合わせているものと考えられる。きっと、元勇者の旦那様と、
「うおー悪魔めー！倒すー！負けたー！犯されるー！」プレイ、あるいは、
「うおー勇者めー！倒すー！負けたー！お仕置きされるー！」プレイをしているものと考えられる。
そのため、プレイ時の興奮を煽るためにあのような悪役スタイルを取っているのだ。
我々の言いたいことをまとめると、ただ二つ。
旦那様とイチャイチャするデルエラさんを見たいということと、デルエラさんはかわいいなあ！
（２）デルエラさんは既婚だけど未亡人だよ派
我々の主張はただ一つ。デルエラさんには旦那さんがいたよ。ただこれだけだ。
デルエラさんの旦那の存在可能性については、先ほど主張してくれた派閥と同じである。
だが、我々と彼らの違いは、旦那さんの存在が過去形であったという一点だ。
確かに彼らの言うとおり、デルエラさんは旦那がいるにしては行動が自由すぎるきらいがある。
しかしこれも、旦那さんと既に死別しているとすれば、すべてが解決する。
旦那さんとの死別により、デルエラさんは自由を再び手にした。
しかし旦那さんへの愛情が深すぎたがゆえに、彼女は新たな旦那を見つけたりするのではなく、独身の魔物と男性を引き合わせるお見合い業に勤しむのだ。一度伴侶を手に入れ、共に時間を過ごす素晴らしさを知っているからこそ、他の姉妹とは異なり積極的に魔物に対するパートナーの紹介、つまりお見合いを行っていると考えられる。
ここで、人によっては旦那さんとの別離が単純に死別じゃなくてもいいじゃないか、という意見が出てくるだろう。もちろん、我々もその可能性は考慮した。
しかし、魔物娘と人間男性の別離の可能性は限りなく低く、仮にさまざまな要因によって別離したとしても、次の伴侶を探すだろう。だが彼女は伴侶を探していない。これは、彼女が伴侶を探す必要がない、もしくは探せないということを示している。愛し合った伴侶と死別してしまい、相手が不在にも拘らず愛情を抱え込んだままであるため、次なる伴侶を探すことができないのだ。
おそらく彼女の悪の女幹部然としたスタイルも、死別した旦那さんの趣味を残しているのだろう。あるいは、旦那さんとの別離の一因が自分にあるという事実を忘れないようにするための、自身への十字架なのかもしれない。
たとえば、旦那さんが首絞めプレイが大好きで、旦那さんが求めるがままに首を絞めていたら死んでしまったとか、そういう理由で死別してしまったのかもしれない。魔物娘は人間を傷つけられない、という制約があるという話もあるから、首絞めプレイを求められても応じられないデルエラさんに、旦那さんが自分で自分の首を絞めて死んでしまったのかもしれない。いずれにせよ、旦那さんの死に自分が関わってしまったから、自身の悪性を忘れぬようにするためあのようなスタイルを取っていると考えられる。
いずれにせよ、彼女は旦那さんを無くしてしまい、旦那さんのことが忘れきれないものの、伴侶と過ごす時間の素晴らしさを伝えるため、お見合い業に勤しんでいるということである。
我々の言いたいことは、二つ。
旦那さんの分まで、デルエラさんを幸せにしてやりたい。そして、デルエラさんはかわいいなあ！
（３）デルエラさんの旦那はショタだよ派
最初に言っておくが、我々の主張の証拠というものは存在しない。だが、その一方で一切否定しきるだけの材料も存在しない。
そのことを胸に、我々の主張を広い心で聞いてもらいたい。
我々もデルエラさんに伴侶が存在することについては、先の二人に同意する。
だが、我々と彼らの相違点は、デルエラさんの旦那が男と言うには未熟すぎる少年である、という点である。
伴侶が存在するにしては自由すぎる一方で、男に手を出して回るという訳ではないデルエラさんの行動について、先の二人は「旦那の自由を尊重している」、「旦那と死別している」などと主張してきた。
だが実際のところ、「旦那がまだ十分に成長しきっておらず、婚姻できるまで待っている」方がありうるのではないのだろうか。
デルエラさんが相思相愛となった相手は、正直人間同士ならば確実に犯罪レベルの少年で、身体的にも精神的にも十分に成熟するのを待つため、信頼できる所に置いているのだろう。
そして、お見合い業を通して、「ダーリンと結婚したら、あんなふうにかわいがってもらうんだから」とやる気を高めているのだ。
あの外見については、ダーリンが育つまでの間に別の男に言い寄られたりしないための防衛だろうと考えられる。また、お見合い業によって、言い寄ってくる男に対して、現在フリーの魔物娘を紹介することで、身を守っているとも考えられる。
いずれにせよ、デルエラさんがこのように自由にふるまっているのは、ダーリンを待つためと、我慢できずダーリンに手を出してしまうのを防ぐためである。
我々の言いたいことは、二つ。
ショタダーリンと手をつなぐデルエラさんを見たい＆デルエラさんはかわいいなあ！
２．デルエラさんは独身だよ派
（１）デルエラさんは自分のことよりも幸せな男女の顔を見るのが大好きな、お見合いおばさんだよ派
デルエラさんが、魔物化を通して男女の仲を取り持つ、いわゆるお見合いおばさんであることは皆が認めるところであろう。
事実、レスカティエに住む魔物と人間の夫婦にインタビューしたところ、デルエラさんをお見合いおばさんだと認め、かつ結婚式には仲人として出て欲しい、という意見が数多く見受けられた。
お見合いのセッティングをしたことのある方ならわかると思うが、実際自分の知る男女が自分をきっかけに付き合いを始め、めでたくゴールインする様子を見るのは実に楽しいものだ。お見合いをやたらと勧めてくるおばさんと言うのは、この快感にドハマリしてしまっているのだ。
デルエラさんの場合、もはやお見合いおばさん度は中毒の域に達し、レスカティエを丸ごと使ってのお見合いパーティを開催したりしているほどである。
これほどまでにお見合いと仲人の魅力にドハマリしているリリムが、旦那さんを手に入れてお見合いおばさんを引退するだろうか？答えは否である。
いずれデルエラさんも、旦那さんを手に入れてお見合いおばさんを引退するかもしれないが、少なくとも今ではないはず。
その証拠に、今デルエラさんのところに行って「好きです！」と言っても、「ふふ、ありがとう。告白されて光栄だけど、あなたのことを好いてる女の子がいるのよ。ちょっと話だけでもしてみない？」と女の子を紹介されるはずである。このように自身に向けられる好意に対して、柳のように躱してカップル成立に力を注ぐ彼女が既婚であるだろうか？
つまり、我々の言いたいことは二つ。
お見合いおばさんお世話になりました、嫁をありがとう！そしてデルエラさんかわいい！
（２）デルエラさんは想い人を取られてしまったから、片思いの女の子を見るとじっとしていられない優しいお見合いおばさんだよ派
デルエラさんが非常に心優しく、カップル成立のために尽力するお見合いおばさんであることについては周知の事実である。
我々は、なぜ彼女がこのようにお見合い業務に固執するお見合いおばさんになったのか、と言うことについて着目した。
彼女が婿探しではなく、お見合い業に勤しんでいる理由については、「お見合い業の快感に憑りつかれている」「すでに夫がいるから婿探しの必要がない」など、さまざまな方向で論じられてきた。
だが、「夫がいるならなぜいちゃつかない？」「夫がいないならなぜ探さない？」という二つの疑問に対し、同時に解答を示すことは難しい。そこで我々は、「デルエラさんにはかつて想い人がいたが、別の誰かに取られてしまった」という主張を行いたい。心優しい彼女は、城のサキュバスメイドに取られてしまった想い人を取り返すわけでもなく、二人の門出を祝い、思いを胸に生き続けているのだ。そして、自分のような思いをするものが一人でも減るよう、彼女はお見合い業に勤しんでいるのだ。
ここで重要なのは、想い人を取られたといっても寝取られたわけではなく、プラトニックな片思いをしていたらいつの間にか別の人と一緒になっていた、という点である。寝取り寝取られは興奮するが、後からなんというか落ち込むので、できればやめてもらいたい。
とにかく、デルエラさんは想い人が別の人とゴールインしてしまったため、彼の幸せを祈りつつ、お見合い業務を通して想いを成就させた女の子の笑顔で、自分の傷を癒しているのだ。
そして彼女の傷は未だ癒えきっておらず、仮に「好きです！！」と告白しても、いくらかの寂しさを孕んだ笑顔で、「ありがとう…でも、ごめんなさいね」と謝ってくるはずだ。
我々の言いたいことはただ二つ。
そんな彼女を陰から支えてあげたい＆デルエラさんかわいい！
（３）デルエラさんは奥手だから、自分の度胸付けるためにお見合いおばさんやってるんだよ派
一応私はデルエラさんは未婚だよ派に所属しているが、この場にいる全員に対して一言物申したい。
諸君らのデルエラさんは積極的すぎる！
先ほどから「何故旦那探しをしないの？」「何故お見合い業に精を出してるの？」などという疑問に、屁理屈をこねてもっともらしい理由を付けてもらっているが、私から見ればチャンチャラおかしいちゃんちきおけさだ。「デルエラさんは奥手だから」の一言ですべては片付く。
デルエラさんは奥手だから、旦那さんとのゴールインはまだ早いと考えて、婿探しをしていないのだ。
デルエラさんは奥手だから、少しでも恋愛に対して耐性と度胸を付けるため、魔物化を推し進めてお見合いを通じたカップル成立を経験し、自分の番に備えているのだ。
そして、奥手でシャイなデルエラさんは、きっといざ「好きです！！！」と告白されたら表面上は冷静だが内心テンパリまくって、とっさに「ごめんなさいねでもおわびにというわけじゃないけどあなたを好きって娘がいるからその娘と会ってみて」と早口で応じてしまい、後で後悔しつつもお見合い手帳（彼氏募集中、もしくは特定の男性のリクエスト出してる魔物の名前を記録したもの）から、適切な娘さんを探すのである。
勿論あの外見も、奥手気味のヘタレ処女という本当の姿を隠すものではなく、「自分を変えなきゃいけない！でも内面をいきなり変えるのは無理だから、まずは外見から！」という思想に基づいて作り上げられた、ある種のコスプレである。
だからきっと、「デルエラさんかわいい！」を連呼すれば徐々に目が泳ぎはじめ、テンパリだし、やがて地が出てくるはずである。
そうなればもうこちらの物。奥手ヘタレ処女の地金を晒す悪の女幹部的外見のデルエラさんを取り囲み、しばらくの間「デルエラさんかわいい！」と「デルエラさんとデートしたい！」を連呼し、半泣きのデルエラさん本人を胴上げしながら連れ回したい。
私の言いたいことはただ二つ。
実は奥手でヘタレ処女でありながらも変わろうと努力するデルエラさんかわいい！そしてデルエラさんかわいい！
３．合意と妥協と融和
全員の主張を統合した結果、デルエラさんは未婚のヘタレ処女だけど旦那が悪の女幹部プレイ好きの元勇者ショタで既に死別しており、他の女性にそんな思いをさせないためにお見合い業に勤しんでいる、と言うことが分かった。
正直、何の事だかわからないということが実情だ。
これはちょうど、どこかの諺にもある「箱の中のサイコロ」状態だ。
箱の中にサイコロを入れて揺すれば、箱のふたを開けてみるまでサイコロが何の目を出しているかは誰にもわからず、箱の中にはサイコロの全ての目が存在しているということである。
つまり、諸君がデルエラさんと直接接触して調査するまで、デルエラさんは既婚であり未婚であり、旦那はショタであり青年であり既に死別しており、想い人を失った傷を抱える女性であり必死に変わろうとしてる奥手のお嬢さんでもあるのだ。
デルエラさんが本当はどのような人物か。箱を開けてみるまで、さいころの目は分からないのである。
そして最後に、全員で一言言っておきたい。
デルエラさんかわいい！
12/04/10 19:11更新 / 十二屋月蝕