連載小説
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(5)ジャイアントアント
森の中、道なき道を折れは進んでいた。
草をかき分け、枝をくぐり、木の根を跨ぎながら、ただただ進む。
この辺りの森には魔物が出るという話を聞いていたが、街道を進めない以上こうするしかなかった。
やがて、草をかき分けると、背の低い草ばかりが生えた場所に出た。
俺はその場に屈んで、生えている草を調べる。辺りに生えているのは、人や動物の踏みつけに強い、背の低い植物である。
これは、この辺りが獣道であることを示していた。
植物の生えぐワイから見ると、そこまで使われていない獣道であるらしい。
実に運がいい。使わせてもらうことにしよう。
俺は近辺の木々の様子と、木々の間から覗く太陽の位置から方角を定めると、獣道に沿って進み始めた。
この辺りの森は、国境になっている川を跨いでいるが、魔物が出るため警備も甘い。
森の長と国境を接する二国間で、森に立ち入った人間は自由にしていいという協定が結ばれているらしいが、見つからなければいいだけの話だ。
俺は国境向けて、獣道を進み続けた。
だが、辺りに注意を配る俺の耳に、俺の物とは違う足音が届いた。
とっさに足を止め、その場に屈み、耳に意識を集中させる。
二人、いや三人が規則正しく歩いているようだ。訓練を受けた兵士のようだ。
俺は胸中で焦りと疑問を覚えた。
ほぼ両国の不干渉地帯に等しいはずのこの森に、訓練された兵士がいるのだろう?俺を探しているのか?
だが、足音には特に焦りや急いでいる様子はなかった。隣国の兵士が侵略のため辺りを調べているのか、森の魔物が独自に組織した自警団が警邏しているのか。
いずれにせよ、俺がターゲットではないことは確実だ。
だが、見つかったらタダでは済まないことも確実であう。俺は獣道から草むらに入り、近づきつつある足音をやり過ごすことにした。
草を折らぬよう気をつけてかき分け、身を伏せる。
やがて、ガサガサという規則的な足音が、俺の前に近づいた。
呼吸を殺し、気配を可能な限り絶つ。だが、俺の努力も空しく、足音が止まった。
「ん?ん〜?」
疑問符の混じった女の声が一つ響き、スンスンと鼻が鳴った。
「人…?」
俺の臭いをかぎつけたのか、姿の見えぬ彼女はそう呟いた。
仲間に同意を求めるようにも聞こえたが、返答はなかった。
どういうことだ?相手は複数人ではないのか?
疑問が浮かぶが、それより先にすぐそばの何者かをどうにかする必要がある。飛び出して行って連中を倒すか、国境の川まで逃走して、川を泳いで森を抜けるか。
即断すべきところだったが、足音と推定される人数の差異に俺は判断を遅らせてしまった。
がさり、と黒い甲殻に覆われた手が草をかき分け、伏せる俺を手の主が覗きこんだ。
「あ、やっぱり人間だ」
額から二本の触角を生やした、髪の短い少女の姿をした魔物が、俺を目にしてそう言った。
「捕まえたっ!」
彼女は身を強張らせる俺をがっしりと捕まえると、ひょいと持ち上げた。
昆虫を思わせる甲殻に覆われているとはいえ、女の子に持ち上げられてしまったという事実に、俺は彼女が魔物であると再認識した。
「は、放してくれ…!」
「やだよ、わたしが見つけたんだもん」
逃れようとする俺を離すことなく、彼女は退いて草むらから俺を引きずりだした。
同時に、彼女の下半身が俺の目に入る。
彼女の腰から下にあったのは、蟻を思わせる大きく膨れた楕円形の黒い『腹』と、黒くて細い六本の脚だった。
ジャイアントアント、と呼ばれる魔物の特徴に、俺は複数の足音と人数の差異に対する理解を得た。
だが、そんなことが分かったところで、もう遅い。不意を打って襲撃すべきだったと悔やみつつ、俺は逃れようと少女の手を掴み、もがき続けた。
「んもう、暴れないでよ」
彼女は獣道に俺を横たえると、蟻の脚で俺の胸と腹と足を抑え、人の胴と蟻の腹の継ぎ目に掛けていたタオルを手に取った。
「ほら、じっとして」
彼女は俺の口と鼻を覆うように、俺の顔にタオルを巻き付けた。
柔らかな、微かに湿ったタオル地が俺の顔を覆い、吸う息に甘く酸っぱい香りを加える。
彼女が汗をたっぷりと拭ったタオルで、これが彼女の汗の香りだと気が付いた。
だが、汗の臭いをかがされるという行為に嫌悪を抱くよりも先に、甘酸っぱい香りが俺の頭を満たし、思考力を奪った。
何もかもが薄紙一枚隔てたように遠のき、どうでもよくなってしまう。
「ん、大人しくなったね」
彼女が俺の身体から蟻の脚をのけるが、俺は横たわったまま身動きを取らなかった。
取る必要がない、と考えたからだ。
「ふふふ、役得役得ー♪」
彼女はうれしげにそう言いながら向きを変え、俺の胸の上に膨れた蟻腹を置いて屈んだ。
そして、俺のズボンに手を掛け、股間を解放した。
ひんやりとした森の空気が、露わになった肉棒にまとわりつく。
「いただきまーす」
冷気によって肉棒が縮こまるより先に、彼女の頭が下がり、熱くぬめる何かに包みこまれた。
肉棒が咥えられた、と気が付くと同時に、彼女は肉棒に舌を絡め、吸った。
温もりと柔らかさに肉体が反応し、彼女の口内で肉棒が屹立して行った。
「ぷはっ…うふふ、美味しそ…」
彼女は勃起しきった肉棒を口から離すと、嬉しげに言った。
直後、ざらついた何かが肉棒の表側を、根元から先端へと撫で上げて行った。
柔らかく濡れたそれは、恐らく舌だろう。
彼女は俺の興奮をあおる様に、俺の肉棒を味わうように、舐め上げ続ける。
同時に、彼女も興奮しているように蟻腹のとがった先端の窄まりから、透明な液体が一筋流れだし、少しだけ緩んだ。
黒い甲殻に刻まれた亀裂が左右に広がり、桃色の肉が俺の目の前に晒される。
「んむ…!」
彼女の胎内が見えると同時に、彼女は俺の肉棒を再び咥えた。
そして音を立てて肉棒を吸う。彼女の頬の内側の肉が屹立に吸いつき、密着感を強める。
圧迫感と滑りが温もりと共に肉棒を責め立て、俺を射精へと導いていく。
その一方で、彼女の蟻腹の先端の亀裂はさらに広がり、桃色の肉の間からあふれ出す粘液の量も増した。
口と鼻を覆うタオル越しに、あふれ出す粘液の放つ甘い香りが俺の鼻腔へ届いた。
タオルに染み込む汗の香と相まって、彼女の放つ香りは俺の意識をますますぼんやりとさせていった。
魔物に対する恐怖や嫌悪が薄れ、少女に絶頂に導かれることに対する男としての自尊心が溶け崩れる。
股間から這い登る甘い刺激を、俺は深く息を吸いながら受け入れた。
甘酸っぱい香りが頭の中を満たし、腹の中で渦巻く欲望が迸る。
「んっ…!」
彼女は低く声を漏らしながら、口中で脈打つ肉棒が放つ精液を受け止めた。
唇を窄め、一滴ももらすまいと、放たれた先から嚥下していく。
精液を飲むたびに国んこくんと蠢く舌が俺に快感をもたらした。
また、目の前の彼女の亀裂も、俺が口中に精液を注ぐたびに、ひくひくと震えていた。
ほどなくして、俺の興奮がひと段落を迎え、射精が収まる。
彼女は尿道に残る精液を、肉棒を吸って啜り上げると、口中から屹立を解放した。
「はぁ…美味しかった…」
艶っぽい、妖しい色気を孕んだ声で、彼女がそう漏らした。
だが、彼女はまだ物足りないらしく、俺の眼前の亀裂は何かを求めるように開閉を繰り返し、粘液を滴らせている。
彼女は腰を上げると、六本の脚を操って向きを反転させ、俺と顔を見合わせた。
頬は桜色に染まり、その瞳はトロンと蕩けて、薄く開いた口は細かく震え、やや荒い息が出入りしていた。
興奮しているのだ。
「今度は…こっち…」
彼女はそう言うと蟻腹を下に向け、開閉する先端の窄まりを俺の屹立の先端にあてがった。
温もりと口以上の柔らかさに、亀頭が膨れ上がり、亀裂を押し広げる。
「んく…!」
不意に広がった穴の入口に、彼女が声を漏らす。
「んん…!」
彼女はそのまま六本の脚を曲げて腰をおろし、蟻腹の中に屹立を収めていった。
亀頭が亀裂を押し広げ、カリ首が柔らかな肉に包まれ、幹の側面を亀裂の入口が締め付けていく。
そして、屹立の根元までを胎内に収めると、彼女は屹立を味わうように動きを止めた。
同時に、俺も肉棒を通じて彼女の内側を味わっていた。
蟻腹の中には柔らかな肉が詰まっており、滲みだす粘液と共に押し入ってきた屹立に絡みついてきた。
幾重にも折りたたまれ、狭い膣内に詰め込まれた柔らかい肉が、屹立の凹凸にまとわりつき、粘液を刷り込む。
ぞくぞくするような快感が俺の背筋から脳髄へと染み入っていった。
「ん…ふぅ…んっ…!」
彼女は桃色に染まった頬を更に赤らめながら、ゆっくりと腰を揺すり始めた。
屹立が肉壺を掻き回し、粘液がぐちゅぐちゅと音を立てる。
折り重なった襞を張りだした亀頭が掻き分け、膨れ上がった裏筋を柔肉が包みこむ。
射精した直後のせいで絶頂には至らなかったが、それでもかなりの快感が与えられた。
「んっ…んん…!」
彼女もまた快感を覚えているのか、漏れる声が次第に上擦った物になり、腰の振りも大きくなっていく。
彼女の興奮に合わせて、俺の快感と興奮もまた、大きくなっていく。
そして、彼女が大きく腰を回した瞬間、俺の興奮が弾けた。
限界を迎えた屹立が、粘膜の締め付けを押し開いて膨張し、白濁を奥へとほとばしらせた。
「……っ!」
体奥に注ぎ込まれた熱い体液に、彼女が背筋を仰け反らせて、声なく震える。
同時に、彼女の膣壁がきゅっと締まり、肉棒を締め付けた。
裏筋が押しつぶされ、尿道が狭まり、射精の勢いが増す。
迸る精液の勢いが彼女に快感を注ぎ、狭まり蠢動する膣に白濁の勢いと熱が増す。
快感を与え、与えられる無限円環を思わせる絶頂が、しばしの間続いた。
だが、ほどなくして俺の方が先に限界を迎え、肉棒が力を失った。
「…っはぁ、はぁはぁ…」
絶頂が終わり、全身を弛緩させて俺の上に倒れ込みながら、彼女が蕩けた瞳で虚空を見つめながら、荒い呼吸を繰り返した。


しばしの間を挟んで、彼女はようやく俺の上から起き上がった。
射精を経て一度萎え、包み込む膣肉の柔らかさに徐々に勃起しつつあった肉棒が、彼女の動きによって引き抜かれる。
名残惜しげに体液が糸を引くが、彼女は口を開いた。
「それじゃあ、私の分はこれでおしまい。後は、巣で…ね?」
言葉と共に彼女が俺の顔を覆うタオルをほどき、出会ったときと同じように腰に掛けた。
俺の呼気を満たしていた甘酸っぱい香りが掻き消え、胸中を空虚感が支配する。
「じゃ、行くよ…」
彼女はそう言うと、獣道に沿って歩き始めた。
俺はよろよろと立ち上がり、微かに鼻腔をくすぐる甘酸っぱい香りを追って、彼女の後を追い始めた。
もはや、他のことなどどうでもよかった。この香りと、快感さえあればいい。
俺は彼女から漂う香りを追って、獣道の先、さらなる巨大な香りの源に向けて、よろよろと進んだ。


11/05/11 22:58更新 / 十二屋月蝕
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■作者メッセージ
馬鹿は力尽きた。
正確に言えばこの先、ラミアの半ばで力尽きたのだ。
だが、未完成の物をここに乗せるわけにはいかないので、これでオワリとさせていただく

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