連載小説
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(4)ゴーレム
トレジャーハンターというと、なかなか華々しいイメージがあるが、実のところ廃墟探索と金目の物あさりという、墓泥棒と変わらない仕事である。
王国から正式に認証された連中なら、前人未到の遺跡の調査チームに加えてもらえるだろう。だが俺たちのような自称やモグリは、調査済みの遺跡を管理と称してチェックする程度の仕事しかできないのだ。
そして今現在、俺が歩いているのもそんな遺跡の一つだった。
昔は盗賊が住み着き、いつしかジャイアントアントの巣と化し、勇者の働きによって駆除されて無人の廃墟と化した遺跡だ。
とは言う物の、俺にはただの浅い洞窟にしか見えなかったが。
「以上なーし」
いつものように、一通り内部を検分してから、俺はそう呟いた。
住み着いている者はおらず、以前の報告書との差異も存在しない。後はチェックの結果と現在の状態を報告書にまとめ、役人に提出するだけだ。
俺は踵を返し、洞窟の来た道を戻った。
だが、もうすぐ出口というところで、俺は足を止めた。
カンテラで照らした洞窟の壁面、脇道へと続く角に、何かが擦ったような痕が残っていたからだ。
調査を開始した時は刻まれていなかった。何ものかが入ったのだろうか?
俺は護身のため、腰に下げていた鉈を抜いて、脇道にゆっくりと足を踏み入れた。
足音をなるべく殺し、一歩一歩進んでいく。
ほどなくして、俺は脇道の行き止まりにたどり着いた。だが、俺の視界に映るのは、ただの洞窟の壁面だった。
気のせいだったか?
そう判断を下そうとした瞬間、俺の肩口に細かい土がぱらぱらと降ってきた。
落盤の可能性が脳裏に浮かぶよりも、何だ?という疑問が生じるよりも先に、俺を衝撃が襲う。
俺は手にしていたカンテラを思わず手放し、衝撃のまま仰向けに倒れ込んだ。
何が起こったのか把握するため、身を起こそうとする俺の胸に何かが乗っかる。
固く、重い何かだ。俺は深呼吸をして、動転してほぼ何も見えていなかった目に意識を合わせた。
カンテラの放つ光に、照らしだされたのは、ほぼ全裸の女の背中だった。
だが、その背中は土そのものと言っていい土褐色で、少なくとも生きている人間の退職ではなかった。
女をどけようと伸ばした掌に触れるのも、がさついた土の感触だ。
「対象の捕獲成功。残存魔力量、10%未満に低下」
彼女の背中越しに、やたら平坦かつ無感情な声が届く。
「主魔力源を補助魔力容器に切り替え、簡易型採取器にて主魔力容器への魔力蓄積を行う」
その一言の直後、俺のズボンが力任せに脱がされるのを感じた。
洞窟の冷えた空気に股間が晒され、背筋を冷気が走りのぼり、全身が小さく震える。
だが、冷気が肌に染み入ってくるより先に、萎えた肉棒がごぽりと何かに飲み込まれた。
熱く、滑る、泥のような何かだ。
胸の上に跨る土色の女は、背筋を伸ばしている。では、何に包まれているのだろう。
疑問が生じるが、ぬじゅりと蠢き始めた何かによって、それは消し飛ばされた。
熱とぬめりと絡み付きによって、肉棒が次第に屹立していく。
そして絡み付く泥状の何かは、屹立の凹凸に纏わりついてさらなる快感を生じさせた。
肌から染み入る僅かな冷気が快感の前に掻き消え、彼女の重みが興奮によって打ち消されていく。
そして膨れた裏筋を撫でまわされ、カリ首を擦られた瞬間、俺の興奮は頂点に至った。
「うぁ…あっ…!」
腹の中をくすぐられるような感覚と共に、興奮が白濁という形で放出される。
脈打ちながら放たれる体液を、彼女は無言で受け止めていた。
「……主魔力容器、15%まで回復…」
射精が収まると、彼女はそう無表情な声音で呟いた。
「主採取器の起動要件を満了。簡易型採取器による採取を中断し、主採取器で採取を続行する」
続く言葉とともに、股間を包む感覚から肉棒が引き抜かれ、彼女が俺を跨いだままくるりと向きを変えた。
カンテラの明かりに照らされたのは、ぞっとするほど美しい顔立ちをした土色の女だった。そして顔を支える首筋も、鎖骨から控えめな胸を通り、引き締まった腹から腰へと続く悩ましい曲線も、完璧であった。
彼女が動いていなければ、土で作った彫像だと思っているほどだ。
だが、彼女は俺を何の感情も浮かんでいない目で見おろし、掌に縦に裂けていた亀裂を閉ざして、自身が彫像などではないことを主張していた。
「簡易型採取器、収納終了」
俺の逸物が収まっていたであろう、掌の亀裂をふさぎ終えると、彼女は俺に見せつけるように股を開いて続けた。
「主採取器を起動します」
その一言ともに、つるりとした両足の付け根に亀裂が入り、左右に開いた。
にちゃりと糸を引きながら露になったそこは、ひくひくと微動し、土色であることを除けば完全に女性器そのものだった。
いや、泥で出来ていることを考えれば、もたらされる快感は人のそれ以上だろう。
「採取再開」
そんなことを呆然と考えていた俺の耳に、彼女の声が届いた。
直後彼女は、椅子にでも腰を下ろすかのような気軽さで、俺の腰の上に座った。
肉棒が亀裂に飲まれ、熱い泥にくるみこまれる。
熱く、滑り、ぐちゅぐちゅと蠢くそこは、泥沼のようだった。
屹立に妖しく絡み付き、逃すまいとする様子も、俺の意識に快感を注ぎ込んで、ずぶずぶと悦楽に沈み込ませていく様子も、泥沼のようだった。
「うぉ…お…!」
俺は流動する泥粘膜のもたらす快感に、吸い上げるような声を上げて射精を堪えた。
しかし、うねる泥は俺の我慢を意に介することなく、肉棒に絡み、吸い付き、まとわりつき、流動を続けた。
屹立の凹凸を泥が撫でさすり、快感を注ぎ込んでくる。
やがて、俺の意識を快感が見たし、止めの刺激とともに俺は二度目の絶頂を迎えた。
吸い上げられるようにして精液を放ち、身体を震わせる。
「…主魔力容器、25%まで回復…」
停滞した彼女の胎内の泥の流動に、つかの間の休息を味わう間もなく、彼女は続けた。
「採取続行」
再び、女の下腹に埋まる肉棒に、苛烈な責めが加えられる。
根元から先端へ流れ、渦を巻き、先端から根元へと流動する泥が、俺に快感を与え、精液を搾っていく。
「……主魔力容器、40%まで回復…」
「…主魔力容器、48%まで回復…」
「魔力容器、55%まで回復…」
「60%まで回復…」
射精を繰り返すたびに、彼女が平坦な口調で繰り返し、泥が俺を責めたてる。
そして、幾度目になるかしれないほど射精を繰り返し、絶頂を迎えても脈動するばかりで何もでなくなった頃、彼女はこうつぶやいた。
「72%まで回復…これ以上の採取は不可能のため、採取を中断する…」
その一言の後、彼女は俺から立ち上がり、俺は意識を手放した。


数ヶ月後、『異常なし』と報告した洞窟に、俺は再び足を踏み入れていた。
向かう先は入り口誓うの脇道の奥。仕事の時以外は、毎日のように通っていた
掲げたカンテラの明かりの中に、行き止まりで膝を抱えて座り込む土色の女の姿があった。
この女、ゴーレムは何故かこの洞窟を離れず、こうして待機を続けているのだ。
おそらく、体内の魔力が少なくなれば洞窟を離れて補給に向かうのだろうが、その恐れはなかった。
俺がこうして通っているのだから。
「…主魔力容器、残存魔力52%…補給を開始します」
彼女は俺の姿を認めると、そう呟いて立ち上がった。
俺は、カンテラを洞窟の地面に置いて、その場に寝転がった。
彼女に与え、彼女から貰うために。
11/05/11 22:57更新 / 十二屋月蝕
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■作者メッセージ
正直この辺りから、練習のはずだったのに辛くなってきた覚えがある。
ここを乗り越えれば、馬鹿は何者にも勝る馬鹿となる。
そう考えていた馬鹿であった。

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