１月１日
目を覚ますと、いつの間にか日が高く昇っていた。
初日の出を見逃してしまった。
やはり昨夜、除夜の鐘に合わせて繋がったまま腰を動かして年越しを迎えたのがいけなかったらしい。
年越しを迎えた後も夫との交合が止まらず、失神するように眠ってしまった。
とりあえず夫を起こし、互いに全裸で新年の挨拶を交わした。
生まれたままの姿で新年を迎え、「あけましておめでとうございます」。何かに使えるかもしれない。
それから私たちは着物に袖を通し、家を出た。
本来ならば初詣だが、それは明日イヤというほどできる。
だから今日は正月休みを堪能させてもらおう。
手始めに向かった先は、私の実家だった。
出かけたのが遅かったためか、すでに両親と妹が帰省した姉夫婦とともにお節をつついていた。
遅刻をわびつつ、夫とともに新年の挨拶をする。
しかし、姉と姉の旦那の様子が少しおかしかった。見ると、姉の尻尾が姉の旦那の腹に巻き付いていたのだ。
「これは私のもの！」と主張するようにだ。
姉としても、美人の妹二人が居る実家に、旦那を連れていくのだ。ああやって尻尾を巻き付け、周囲を威嚇しないと不安なのだろう。
そこまでしないと安心できないとは、同じ白蛇ながら独占欲が強すぎると思う。
誰もあなたの夫など狙いはしませんよ、姉さん。
そう口に出して言ったところで、姉は旦那をはなそうとはしないのだろう。
だが、問題は私の妹だ。夫とともに実家を訪れる度、妹はちらちらと私の夫に視線を向ける。きっと私の夫に気があるのだ。
確かに、私の夫は優しいし顔立ちもいいしいい香りがする。そんな夫と結ばれた私は幸せものだと思う。
しかし、いくら私が幸せに満ち溢れているといっても、家族相手でも幸せのお裾分けをしてやる必要はないはずだ。
だが、妹は私から幸せをかすめ取ろうと、夫の隣に座っている。
ことあるごとに妙に甘えた声で夫に話しかけ、時折肩や二の腕に触れたりしている。
やめろ。そうしていいのは私だけだ。そう、声を荒げて怒鳴ってやりたいが、私はぐっと我慢した。
久々に家族がそろっての団らんや、正月のめでたい雰囲気を壊したくないからだ。
だから私は、最低限の主張として、自分の尻尾を夫の腹に巻き付けておいた。
これで、誰が見ても彼が私の夫であることが伝わるはずだ。
しかしそれでも、妹は私の夫に話しかけ、夫もどこか楽しそうに応じていた。
やがて日が傾き、用意されていた料理がなくなる頃、姉夫婦がそろそろ帰ると言い出した。
確かに長居しすぎた。私たちも帰るとしよう。
姉とともに私も席を立ち、空になった食器を片づける。
そして、両親や姉夫婦、妹に挨拶をすませて、私たちは実家を後にした。
すでに日はだいぶ傾いており、時刻は夕刻であった。
昼食のはずだったお節のおかげで、私も夫も腹が膨れていた。
夫と、姉夫婦の仲がよすぎるだとか、他愛もない話をしているうちに、いつしか私たちは家についていた。
家は冷えきっていたが、それでもどこかほっとする。
それから私たちは、さっと風呂をすませ、歩いているうちに空いた小腹を満たすべく火鉢で餅を焼いたりして、元日の夜を過ごした。


そのうち、どちらからともなく布団を敷き、横になる。
昨夜の疲れはあったが、こうして夫と枕を並べて過ごす夜は未だに楽しく、眠るのが惜しいほどだった。
「今日はいろいろあったなあ」
明かりの消えた寝室で、夫が口を開いた。
「義姉さんとは･･･去年の正月ぶりだったな」
前に姉と会ってから、一年も経っていたのか。私は内心、驚いていた。
「そして義妹ちゃん、前にあったのはお盆のころなのに、大分大きくなっていたなあ」
そう。あの年頃の子は、数ヶ月で大きくなるのだ。
私もついこの間まで子供だと思っていたが、妹はいつの間にか女に目覚めており、私の夫を･･･
「綺麗になってたね」
夫の漏らした一言が、私の内心のくすぶりを燃え上がらせた。
「･･･！」
言葉もなく、ただ隣で横たわる夫に抱きつき、その口が余計な言葉を紡ぐ前に唇で塞ぐ。
「んぐ！？」
妹をほめる言葉は断ち切られ、代わりにくぐもった声が漏れた。
だが、私は夫の唇を吸いながら、彼の体に自分の蛇体を巻き付けていった。
腰から下、両足を縛り上げるように、私の蛇体が絡みついていく。
「んぶ･･･んむむ･･･！」
夫が何かを言おうとするかのようにうめき声を漏らすが、私は放さない。
蛇の尾を巻き付け、縛り上げたまま、唇を塞ぐ。
すると、蛇体を巻き付ける両足から、みし、と軋みのようなものが鱗越しに私の体に感じられた。
足の骨が締め付けに耐えかね、悲鳴を上げたのだ。
一瞬、このまま締め砕こうかという思いが、私の頭をよぎった。
そうすれば夫は自分の足で歩くことができなくなり、私が居なければほとんどのことができなくなるからだ。
だが、それはだめだ。夫が怪我をしたところなど、見たくもない。
私は脳裏をよぎった妖しい誘惑をはねのけ、蛇体に込めていた力を抜いた。
「んぅ･･･ふぅー･･･」
締め付けが弱まったためか、夫の鼻からほっと息が漏れ、私の頬をなでた。
痛みも感じていないようだ。だが、これで終わりではない。
私は、夫に抱きつき、巻き付いたまま、夫の体に自分のそれを擦りつけていった。
寝間着に押し込んだ乳房が、夫の胸をぐいぐいと押しながら擦る。
蛇体に並ぶすべすべとした鱗が、寝間着越しに、あるいは直接夫の足の肌をなでる。
そして、重なり合った私の腰と夫の腰が、力を込めて押しつけられる。
夫は、全身をなでる私の体に、徐々に興奮しているようだった。
その証に、私の下腹のあたりをなにやら固いものが押している。
「んぅ･･･んっ･･･！」
夫が、唇をふさがれたまま鼻にかかる妙に色っぽい吐息を漏らし、私に抱擁されたまま身をくねらせた。
布の下で固くそそり立つ何かが、私の下腹に当たる。
腕と蛇体の中に感じられる夫の心臓の鼓動と同じように、下腹を押す何かが脈打っている。
私は、夫が気持ちよくなっていることに内心喜びを覚えた。
昼間、夫の体に蛇体の先を巻き付けていたが、妹のちょっかいに対して夫は何の反応も示さなかった。
だが今、こうして夫は私に巻き付かれ、快感と興奮の証を私に押しつけている。
妹などに、私から夫を奪えるはずがないのだ。
私は、夫が私のものであり、私が夫のものであることに、頭の芯がしびれるような感覚を覚えながら、夫の唇を吸った。
細く、長い舌を夫の口内に差し入れ、舌や頬の裏はもちろん、歯茎や上顎の裏までもを愛撫していく。
「む･･･ん･･･！」
口内をチロチロと動き回る私の舌がくすぐったいのか、夫が小さく身じろぎする。
膝が私の蛇体に並ぶ、文字通り蛇腹状の鱗を圧迫した。鱗に覆われているせいで、少々擦られたぐらいではなにも感じない蛇体に、じんわりと甘い快感が生まれた。
「ん･･･」
私の喉の奥から自然と声が漏れ、夫の身動きをもっと感じようと、少しだけ蛇体の締め付けを強めた。
だが、私の下腹が夫の固いものを強く圧迫した瞬間、夫の全身に力がこもった。
しまった、と思い蛇体をゆるめようとした瞬間、夫の体が小さく震え、下腹のあたりに熱く濡れた感触が広がった。
夫が達してしまったのだ。
締め付けと接吻で限界に達していた夫に、下腹の圧迫でとどめを指してしまったのだ。
二人分の寝間着越しに下腹を濡らす感触に、私は後悔と申し訳なさが同時に胸の奥に芽生えるのを感じた。
本来ならば、私の口で弾けて精として取り込まれるべきだった白濁。
または、私の胎内にそそぎ込み、子となるべきだった精液。
そのどちらにもできず、無駄に寝間着の中で漏らさせてしまったことを、私は悔やんでいた。
「ぷは･･･」
夫の体の力みがゆるんだところで、私は唇を離した。
そして、荒く呼吸を重ねる夫の寝間着をはだけ、白濁にまみれた肉棒を露出させた。
自身の放った体液にまみれる肉棒は、未だ屹立していた。
まだ大丈夫。
私は安堵感を覚えながら、自らも寝間着の帯をゆるめ、衣服に多い隠されていた下腹を露出させた。
肉棒の圧迫と、布地越しに感じた精の気配にへその下、蛇体との境に刻まれた私の女陰は、薄く口を開いていた。
「ああ･･･」
私は、指先で女陰のぬめりを確かめると、夫の屹立にむけて下腹を重ねた。
二人分の寝間着に隔てられていた屹立と女陰が直接ふれあい、濡れた音を立てて繋がる。
「･･･っ･･･！」
射精直後の肉棒を柔らかなぬめりを帯びた肉が包み込む感触に、夫が小さく仰け反った。
夫の背筋の反りは両足にも伝わり、蛇体の拘束を破らんばかりに力が込められる。
無論、両足にこもった力で蛇体がほどかれるという子とはなく、ただ内側からの圧迫感が甘い快感を生むだけだった。
だが、私は蛇体からの快感よりも心地よいものに耽溺しそうになっていた。
女陰に収まる、彼の屹立だ。
自身の白濁に塗れていたせいもあってか、夫を受け入れた瞬間から、脳の随が蕩けるような快感を覚えていた。
膣壁にふれる肉棒の表面、すなわち精液がおいしくてしょうがない。
女陰に味覚などないはずだというのに、私は肉棒の味に魅せられていた。
そして、肉棒自体の形を味わいながら、新鮮な白濁を注いでもらおうと、私は体を動かしていた。
蛇体を少しだけ締め付け、両腕で布団を支えながら、私は腰を前後に動かす。
濡れた膣壁が音を立てて肉棒を擦り、私と夫の体を震わせた。
手首ほどの太さもない肉の突起が、ほんの小さな亀裂を出入りする快感が、私と夫を支配していく。
ともすれば達してしまいそうな快感に、私たちは体を不規則にけいれんさせながら耐え、ただ抱きしめ合っていた。
そして、夫の二度目の限界が訪れ、直後私も意識を白く塗りつぶされていった。
それからのことは、ほとんど覚えていない。
上になり、下になりを繰り返しながら、つながり合っていたこと以外は。
だが、これで私は確かめることができた。
私から夫を奪えるものなど、誰もいないと言うことを。





１月２日
今日もいろんなことがあったが、ここに書く時間が惜しい。
夫に、夫が誰のものであるか教え込まねばならないからだ。
だから日記はおしまいにする。

■作者メッセージ
ヤンデレいいですよねヤンデレ。
ただ、すぐに刺したり監禁したり要介護上体にしようとしたりするようなテンプレヤンデレじゃなくて、単に愛が重すぎるだけのヤンデレ。
こう、自分に自身がなくて「相手は自分にゾッコン惚れ込んでる！」という確信が持てない故、相手との確かなつながりを求めた結果ヤンデレに走る。
いいじゃないですか。
ただ、ヤンデレに突入してしまったら、誰も彼も若干不幸気味になりますから、ヤンデレとイチャコラ介護されたいというのは妄想の中にとどめておきましょう。
自身のない人とつきあうときは、「あんたのこと好きだよ！」アピールを忘れずに。
ことあるごとにキスをしたりねだったりはもちろん、記念日はすべて覚えておき、毎年祝いましょう。
そして相手のスケジュールや好みはバッチリ暗記して、ことあるごとに待ちかまえたりプレゼントしたりするのです。
これぐらい好き好きアピールをすれば、相手もきっと愛されてるという実感を得て、安心するでしょう。
え？やめてくださいと言われた？
それは相手が愛された経験がないから、本物の愛にふれて戸惑っているのです。
もう少しがんばってみましょう。
いいですよね、ヤンデレ