朝を過ぎ、昼と呼ぶにはやや早すぎるほどの時刻、グリズリーのウィナは途方に暮れていた。
友人の巣穴の出入り口から出ようとしたところで、腹がつかえてしまったのだ。
前に進もうにも尻がじゃまで、後ろに退こうにも腹が穴の縁に食い込む。
朝食を平らげ、出かけようとしたところでこうなってしまったのだ。
「おかしいよなあ･･･入るときは入れたのに･･･」
「それはね、キミが我が家の朝食をアホみたいに食べたからだよ」
ウィナのつぶやきに、やや高い声がいらついた様子で答えた。
「あぁ、キミか。こんにちは」
ウィナは視界に入ってきた、ワーラビットの友人に、のんきに挨拶した。
「なにを言っているんだキミは。私はさっきまでキミのオケツとにらめっこして、どうやってキミをここから出したものか考えていたんだよ。全く、勝手口がなかったら生き埋めだったよ」
ワーラビットは、ウィナに対してイラついた声でまくし立てると、ふと言葉を切った。
「それでウィナ。どうやってキミはここから出ていくつもりかい？」
「うーん、前に進んでも後ろに進んでもだめだったから、今度は両方いっぺんに動いてみるつもりさ」
「･･･ちなみに、両方の方向に向けていっぺんに動いたら、キミは前と後ろ、どっちに進むと思う？」
「両方だから、この場で動けないよ」
ウィナはワーラビットの問いかけに、ハハハ、と笑った。
「ウィナ･･･ここは私の家で、私の旦那さんの家だ。キミが自分の家で身動きがとれなくなったのならば、多少同情はする。だけどキミは、今ボクがどんな気分かわかるかい？」
「うーん、『お昼はなにを用意してあげようかしら』かなあ？」
「夕方までにキミを片づけないと、旦那さんを裏口から迎えることになる、だよ」
声に微かな震えを含めながら、彼女は正解を口にした。
「私の為にがんばってくれてる旦那さんを、裏口から迎えるというのがどういう気分かわかるかな？」
「うーん、確かにボクも正面玄関の方が好きだなあ。あぁそうだ、キミの家は裏口が大きいから、今日からそっちを正面玄関にすればいいんだよ」
「そういうことを言ってるんじゃないの。キミがじゃまだから、どうにかしたいって言ってるの」
ワーラビットは一通りそういうと、ため息混じりに頭を振った。
「はぁ･･･何でウィナが正面玄関から出ようとしたとき、止めなかったんだろう･･･」
「それは、キミもボクがこの穴を通り抜けられるって、信じていたからだろう？」
「黙れ熊の格好をしたオーク」
イラだちが頂点に達したのか、ワーラビットの口から異常に低い声が紡がれた。
すると、不意に二人の背後に新たな足音が近づいた。
「やあウィナ、マーチ、こんにちは」
ワーラビットとグリズリーが目を向けると、人間の少年がそこに立っているのに気がついた。
「こんにちは、シェス」
「おはよう、シェス」
「ウィナ、もう少ししたらお昼だよ？おはようじゃなくて、こんにちはじゃないの？」
少年が、グリズリーの挨拶にそう首を傾げた。
「ボクにはまだおはようだよ。だって、朝ご飯は食べたけど、お昼前のおやつがまだだもん」
「ウィナは食いしん坊さんだなあ」
少年は、グリズリーの返答にクスクス笑った。
「でも、マーチの玄関で止まってどうしたの？」
「それは･･･」
「それはねシェス、聞いてよ！ウィナが」
ワーラビットが、少年の問いかけに対し、まくし立てるように言った。
今朝方グリズリーが彼女の家を訪ね、朝食を要求したこと。
朝食を出してやったら、たらふくお変わりを要求したこと。
そして、大きな裏口から入ってきたはずなのに、突然『ボクもあの穴ぐらい通れるよ』といいだして正面玄関に挑み、見事つっかえたこと。
それらを、ワーラビット本人の主観も交えて、彼女は少年に説明した。
「うわー、それは大変だったねえ」
「でしょう？おかげでボクはお昼のおやつを食べられなかったよ」
「私は正面玄関を塞がれているんだけどね」
困ったように言うウィナに、ワーラビットは怒りのこもった視線を向けた。
「とにかく、何とかして助けてあげないと」
「どうやって？」
シェスの言葉に、ワーラビットは問いかけた。
「魔物を集めて、みんなで引っ張るとか？」
「うん･･･それはいいかもしれない」
「じゃあ、森を回ってみんなに声をかけてくるよ」
「いや、私が代わりに出るよ。ワーラビットは、人間より足が速いからね」
「じゃあ、よろしくね、マーチ」
少年がそう頷くと、ワーラビットはくるりと向きを変えて、ぴょんぴょん跳ねていった。
「さーて、マーチが出かけている間に、僕たちもいろいろ試してみようか」
「うん」
グリズリーの側に少年は歩み寄ると、彼女の腹周りにふれてみた。
「うーん、がっちり食い込んじゃってるなあ･･･」
穴の縁は、グリズリーの毛に覆われた腹にしっかりと食い込んでおり、指一本入り込む隙間すらなかった。
通り抜けられると豪語した手前、グリズリーがあきらめることもできずにたどり着いた結果だとすれば、納得がいく。
「前には進めない？」
「だめだよ。ボクのお尻がつっかえてるから」
「じゃあ、後ろに下がってみようか。僕も引っ張ってみるから」
少年はワーラビットの家の裏に回ると、裏口から家の中に入った。
ベッドやテーブルの側を通り抜け、壁から生えたウィナの下半身に近づく。
『シェス？』
「ここだよ」
尻の向こう、壁から響いたややくぐもった声に、少年はやや大きい声で応じた。
「いい？足を引っ張るよ」
シェスは、グリズリーのふわふわとした毛に覆われた足を片方つかみ、持ち上げた。
「せーの！」
『うーん！』
シェスのかけ声と同時に、ウィナの声が響き、二人の体に力がこもる。
シェスはグリズリーの片足を引っ張り、ウィナは少年に引かれていないもう片方の足を地面に押し当て、踏ん張っていた。
ず、ず･･･と微かに土が擦れる音が響くが、ウィナの体はビクとも動かなかった。
「よいしょ･･･！」
『うーん･･･！うぅーん！』
二人はうなりながら力を込め、どうにかウィナの体を動かそうとしていた。
しかしついに少年の方が先に力つき、ウィナの毛に覆われた足首から指を離し、そのまま尻餅をついてしまった。
「うわっ･･･！」
『シェス？大丈夫？』
不意に響いた少年の声に、ウィナは足に込めていた力を緩めて、総称年に問いかけた。
「だ、大丈夫･･･ちょっと疲れて指が緩んだだけだから･･･」
少年は微かに痛む尻を擦りながら立ち上がると、グリズリーの尻に近づいた。
「うーん、やっぱり動いてないや･･･」
ウィナの尻は変わらず、土の壁から生えていた。
『どうしよう･･･』
「こうなったら、少しずつ前と後ろに動かして、穴をゆるめるんだ」
大きな蓋をはずす際に、少しずついろんな方向から力を込めるように、ウィナの体を前後に小さく動かして、がっちり食い込んだ腹をどうにかする。
そうすれば、ワーラビットが森の魔物を連れてかえってきたときに、楽に引き抜けるかもしれない。
『じゃあ、今度は前に進めばいいんだね？』
「うん」
ウィナの確認に少年は頷いた。
ウィナが前に動くと言うことは、シェスがやるべきサポートは、彼女を押すこと。
だが、少年は彼女の体を押そうとして、ふと手を止めた。
どこを押せばいいんだ？
『シェス？ボク、準備できたよ？』
「あ、ごめん･･･」
うっかり考えてしまった彼は、グリズリーに向けて謝ると、腹を決めた。
そして、決心が萎えぬうちに、彼女の大きな尻に手を当てた。
『ひゃ･･･！』
「ごめん･･･ここしか押せないから･･･」
グリズリーのうわずった声に、少年はそう謝った。
『う、うん･･･しょうがないなあ･･･じゃあ、いくよ･･･』
少年の謝罪に対し、ウィナは気を取り直すように言うと、音頭をとった。
『せーの･･･』
「よいしょぉ！」
ウィナのかけ声に合わせ、少年は彼女の尻をぐいと押した。
少年の小さな手のひらは、彼女の大きく丸い左右の尻に食い込んでいく。
足首を覆っていた毛の、ふわふわした感触とは異なる柔らかさが、彼の手に伝わった。
「よい、しょお！」
グリズリーの毛は柔らかく、その広い背中に背負ってもらった際に頬ずりさせてもらうと、そのまま眠ってしまいそうな安堵感を彼は覚えた。
だが、正面から抱きしめられたときに感じる柔らかさ、正確に言えば毛の向こうに感じる弾力は、少年を妙にドキドキとさせた。
「よい･･･しょお！」
今、ウィナの尻を押しながら少年が感じているのは、ドキドキとしたものだった。
正面から抱きしめられているわけでもなく、全身で寛恕を感じているわけでもない。
単に、尻を二つの手のひらで押しているだけだ。
だというのに、少年の心は妙に乱れていた。
「よい･･･しょ、お･･･！」
少年は一心に、胸の奥で生じるもやもややドキドキを押さえ込み、ただ彼女を押すことに集中していた。
ただ力を込めるだけ。ただ押すだけ。
それだけに彼は集中する。
「よい･･･！」
『シェ、シェス･･･』
幾度目になるかわからないかけ声を上げようとしたところで、ウィナが彼を呼んだ。
「え？なに？」
いつもとは違う何かを彼女の声音に感じたシェスは、そう彼女の名を呼んだ。
『その･･･こんな時に言うべきじゃないんだけど･･･もっと、優しく･･･』
「優しく、って･･･」
彼女のリクエストに、少年は戸惑った。
『ボクのお尻を、押すんじゃなくて･･･優しく揉んでほしいんだ･･･』
自分でも何と求めればいいのかいまいち定まっていなかったのか、ウィナは言葉を切りながらそう求めた。
「こ、こう･･･？」
少年は彼女の求めるまま、彼女の尻に触れたままだった指を動かした。
左右の大きな尻肉に、彼の指が浅く食い込む。
『ん、そんな感じ･･･ん･･･』
尻を揉まれる感触のためか、グリズリーの声に甘いものが宿った。
少年は、ウィナの語調の変化に胸が高鳴るのを感じながら、彼女の尻をもみ続けた。
指を食い込ませたまま手を動かし、尻の皮膚を撫でていく。
尻の奥の筋肉がこわばるのが、やや厚めの脂肪越しでも彼の指に感じられた。
だが、いくら太腿から続く筋肉が硬直しても、彼女の尻の柔らかさは変わらなかった。
『ん･･･んぅ･･･！』
ウィナの声が壁の向こうから低く響き、彼女の足がもどかしげにくねる。
心地よいが、何かが足りない。壁から生えるかの序の下半身は、操守要していた。
「･･････」
いつしか少年は、彼女の尻に目を釘付けにしながら、黙々と揉んでいた。
友達としてつきあってきたグリズリーの、想像すらしていなかった一面に気を取られているだけではない。
こうして、穴の中で初めて感じるウィナの匂いが、少年の意識を虜にしつつあるからだ。
ここはワーラビットの家で、ワーラビットの香りが染みついている。だというのに、彼女の尻の谷間から立ち上る香りや、肌にじんわりと浮かんだ汗の匂いは、それを塗り変えていくようであった。
それに加え、以前から『浴びるほど蜂蜜を食べたい』という野望を、ついに数日前に達成したウィナの毛からは、甘い香りが立ち上っていた。
グリズリーならば右手に染み着いているだけの、ハニービーの密の香りだ。
尻を揉まれることによって高ぶり、体毛に残っていた成分が揮発しているのだろうか。
蜜と汗と、グリズリー自身の匂い。その三つが、少年の理性を止めていた。
いつしか、少年の手も尻の谷間に迫りつつあった。
そしてついに、彼は尻の谷間を押し広げた。
『あぁ･･･！』
尻肉を掴まれ、広げられるという感触に、ウィナは声を漏らした。
だが少年は、かまうことなく彼女の両足の付け根をしげしげと見つめた。
微かにひくつくすぼまりに、その下に刻まれた亀裂。
亀裂からは透明な液体がにじんでおり、それが汗とも蜜とも異なる匂いを放っていた。
「･･･！」
少年は、グリズリーが放つメスの気配に、自信のオスを刺激された。
そして、本能の命ずるまま、彼はウィナの両足の付け根に顔を押し当てた。
『ひゃ、ひぃ！？』
股間の亀裂、女陰を這い回る舌の感触に、ウィナが声を上げる。
「･･･！･･･っ･･･！」
シェスはろくに息継ぎもせず、猛然とグリズリーの女陰をなめ続けた。
尻肉を押し広げていた指は、彼女の陰部に延び、亀裂の下部に埋もれる陰核を擦り、ひくつく窄まりを軽く叩いていた。
女の扱いなど知るはずもない子供だというのに、少年は己の欲するまま指と舌を動かしていた。
『ひゃ･･･あ･･･ひ、ぃ･･･！』
穴の外から、グリズリーのろくに意味もなさない言葉が紡がれ、彼女の膝がガクガクと揺れる。
少年は、女陰の奥から溢れる愛液を音を立ててすすり上げると、飲み込んだ。
興奮のため味などわからないが、いくらでも飲みたいという衝動がわき起こっていた。
少年は黙々とウィナの陰部を愛撫し、啜り続けていた。
『く･･･ふひゅん！･･･ふ、ぁ･･･！』
グリズリーが不意に上擦った大きなあえぎ声を漏らし、全身を揺らした。
同時に、彼女の女陰が大きくけいれんし、少年の顔に飛沫がかかった。
グリズリーが絶頂したのだ。だが、少年は啜るべき愛液の量が増えたと歓喜し、愛撫の手を弱めようともしなかった。
亀裂の縁を舌が這い回り、絶頂を迎えて敏感になったグリズリーを刺激が襲う。
『はひゃ･･･あ、まって･･･はひぃ！』
ウィナはそう少年に制止を求めるが、彼は止まらなかった。
既に少年の分身はズボンの下で痛いほどに屹立し、グリズリーへの愛撫の興奮だけで、下着どころかズボンに染みができている。
自分の状態に頓着しない彼が、グリズリーの様子を気にかけるだろうか。
答えは、ウィナ自身が身を持ってい知ることとなった。
『あ、あぁ･･･はひゅ、っひゅ･･･！まひゃ･･･！』
嬌声的に注ぎ込まれる快感に、グリズリーは半ば無理矢理二度目の絶頂へと導かれていった。


ワーラビットが森の魔物を引き連れて戻ってくるまで、もう少しかかりそうだった。

■作者メッセージ
壁から尻だけ出して、ヘイッ！カマン！
略して壁尻。
壁尻いいですよね、壁尻。なにがいいって、顔だとか人格だとかをいっさい隠して、陰部だけを露出しているっていう個人の否定感がいい。
できれば壁の向こうの人とは言葉も交わせないレベルだといい。
あと、熊のPooさんの劇場版で、壁尻エピソードがありましたけど、あの尻の丸みは犯罪的だと思う。